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特開2022-125277マイクロ流体チャネルを使用してマイクロ粒子のバルク選別を行う方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125277
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】マイクロ流体チャネルを使用してマイクロ粒子のバルク選別を行う方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
G01N15/14 A
G01N15/14 K
G01N15/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109612
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2019551924の分割
【原出願日】2017-12-13
(31)【優先権主張番号】15/377,869
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516280462
【氏名又は名称】ナモセル インク.
【氏名又は名称原語表記】NAMOCELL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジュンユ
(57)【要約】
【課題】別々のマイクロ粒子からなるグループ、及び個別マイクロ粒子の両方の選別を迅速且つ効率的に行うことに用いることが可能なマイクロ流体選別の方法及び装置を提供すること。
【解決手段】個別マイクロ粒子(例えば、細胞)の選別及び隔離を行う方法及び装置であって、この選別及び隔離は、マイクロ粒子のグループを、望ましい特性(例えば、蛍光ラベルなどのラベル、形状、サイズ等)を有する1つ以上のマイクロ粒子を含むグループにバルク選別することと、その後に、個別マイクロ粒子を、この所望の特性を有する個別粒子と選別することと、により実施される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ粒子をバルク選別する方法であって、
流体で囲まれたマイクロ粒子のグループを第1のスイッチの検出領域内まで通すステップであって、前記マイクロ粒子グループ内の複数のマイクロ粒子が、前記検出領域内で、前記検出領域を通る前記マイクロ粒子グループの流れの方向に垂直に隣接して配置されている、前記通すステップと、
前記検出領域内で前記複数のマイクロ粒子を同時に検査して、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有する場合にこれを検出するステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有する場合には、前記マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通し、そうでない場合には、前記マイクロ粒子グループを前記第1のスイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップと、
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、一列縦隊配列で第2のスイッチに通し、前記第2のスイッチの検出領域に通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記第2のスイッチの検出領域内で検出された場合には、前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記第2のスイッチの第2の試料出口流路内まで通すステップと、前記マイクロ粒子グループ中の、前記所定の特性を有しないマイクロ粒子を前記第2のスイッチの廃棄物出口流路内まで通すステップと、によって実施される前記隔離するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記スイッチは流動スイッチである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同時に検査する前記ステップは、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有していて、前記スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の前記流量を変化させる前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む流体を追加するか減らすステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
同時に検査する前記ステップは、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有していて、前記スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップを含み、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路内まで通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給し、そうでなく、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記スイッチを介して前記廃棄物出口流路内まで通すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、前記第1のスイッチを含む前記第2のスイッチに通すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ粒子グループを前記検出領域内まで通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを、前記スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記廃棄物出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、前記試料出口流路に沿う流体流に対する抵抗より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ粒子グループは細胞のグループである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出される所定の特性は、形状、サイズ、及び蛍光強度のうちの1つ以上から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体を所定の圧力又は圧力範囲まで加圧するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を、前記第2のスイッチの前記試料出口から定量供給するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法であって、
流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを流動スイッチ内まで通すステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、前記流動スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記流動スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又は
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記流動スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給するステップであって、前記廃棄物出口流路内の静的流体圧力が前記試料出口流路内の静的流体圧力より低い、前記ステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、隔離流動スイッチに通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記隔離流動スイッチ内に存在する場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む前記流体が前記隔離流動スイッチ内をほぼ前記第4の流量で移動している場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子は前記隔離流動スイッチから定量供給される、前記隔離するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを含む前記隔離流動スイッチに通すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチを含む前記隔離流動スイッチに通すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロ粒子グループを通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記廃棄物出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、前記試料出口流路に沿う流体流に対する抵抗より大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロ粒子グループ中の前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有することを検出するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の前記流量を変化させる前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む流体を追加するか減らすステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロ粒子グループは細胞のグループである、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロ粒子グループ中の前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有することを検出するステップを更に含み、前記所定の特性は、形状、サイズ、及び蛍光強度のうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体を所定の圧力又は圧力範囲まで加圧するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記流体が前記流動スイッチに入る前に前記流体の脱ガス処理を行うステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロ粒子グループを通す前記ステップは、細胞の複数の層を前記流動スイッチに通すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法であって、
流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを第1の流動スイッチ内まで通すステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、前記第1の流動スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記第1の流動スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記第1の流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又は
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記第1の流動スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを、前記第1の流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給するステップと、
を含み、
前記廃棄物出口流路内の静的流体圧力が前記試料出口流路内の静的流体圧力より低く、
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチ又は前記第1の流動スイッチのいずれかを含む隔離流動スイッチに通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記隔離流動スイッチ内に存在する場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む前記流体が前記隔離流動スイッチ内をほぼ前記第4の流量で移動している場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子は前記隔離流動スイッチから定量供給される、前記隔離するステップ
を更に含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
文献の引用
本明細書中において言及される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的且つ個別に示されて組み込まれる場合と同程度に、全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本明細書では、マイクロ粒子を自動で選別して定量供給するマイクロ粒子(例えば、単一細胞)選別装置の為の使い捨てカートリッジについて記載する。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプの細胞及び他の同様の小粒子を区別する為に、フローサイトメトリが用いられる。従来のフローサイトメータは、一般に、通常は石英で作られる、光学的に透明なフローセルを含み、個別に識別される細胞のストリームがこのフローセルの中央チャネルに流される。フローセルチャネルを通る細胞ストリームの動きは、無細胞シース液によってフローセルチャネルの中央長手軸まで流体力学的に同伴され、無細胞シース液は、細胞ストリームを同心円状に取り囲み、フローセルチャネル通過時には細胞ストリームとともに流れる。各細胞は、フローセルチャネルの細胞インタロゲーションゾーンを通過する際に、集束放射線ビーム(例えば、レーザ)を照射される。レーザビームは、各細胞に当たると、その細胞のモルフォロジ、密度、屈折率、及びサイズで決まるパターンで散乱する。更に、レーザビームのスペクトル特性は、選択された細胞に関連付けられた特定の蛍光色素を励起するように働くことが可能であり、これが当てはまりうるのは、細胞のDNAがそのような蛍光色素であらかじめ染色されている場合、又は蛍光色素分子が、選択されたタイプの細胞に、直接であれ、中間物を介してであれ、抱合されている場合である。光学フローセルの周囲に戦略的に配置された光検出器が、各細胞によって散乱した光と、励起された蛍光色素から発せられた蛍光とを電気信号に変換するように働き、この電気信号は、適切に処理されれば、照射された細胞を識別するように働く。各細胞に対して行われる光散乱及び蛍光の測定に加えて、幾つかのフローサイトメータが更に、フローセル通過時の各細胞の特定の物理的特性及び/又は電気的特性を測定することによって各細胞を特徴付ける。これらの細胞を選別することにより、光学フローセルを既に通過し、識別されている細胞の中から特定の関心対象細胞(例えば、異常細胞)を選択的に取り除いて収集することが可能である。様々な選別手法が開発されており、これには、1つ又は少数の細胞を含む液滴を形成して偏向することを必要とする方法が含まれる。
【0004】
例えば、細胞を選別する構成要素は、フローセルから出る、細胞を同伴するシース液から液滴のストリームを生成する為に、フローセルを振動させるように働く圧電素子を含んでよい。理想的には、各液滴は単一細胞のみを含み、この細胞は、そのような細胞に対して行われたばかりの光散乱及び蛍光の測定によって細胞タイプに関して特徴化されている。そして液滴ストリームの各液滴は、帯電したプレートのペアの間を通過する際に静電的に帯電し、帯電した各液滴は、静電的に帯電した偏向プレートのペアの間を通過する際に収集容器に向かって選択的に偏向され(或いは偏向されず)、そのようなプレートは、関心対象の液滴(及び細胞)を偏向する時点でのみ、液滴を偏向する極性に帯電する。偏向プレートの瞬時極性は、光学フローセルからの細胞測定信号を処理する細胞特徴化処理装置によって決定される。
【0005】
細胞のようなマイクロ粒子のそのような選別は、生物学的研究及び医学的応用において非常に重要である。フローサイトメトリの代替として、マイクロ流体選別がある。細胞は、集束放射線ビーム(例えば、レーザ)が照射されている間、一列縦隊でマイクロ流体チャネルを流れる。細胞の蛍光信号が光検出器によって検出される。細胞は、ある種の物理的な力によって選別されて異なるマイクロ流体チャネルに入り、例えば、ガスインパルスによって(例えば、米国特許第4,175,662号、米国特許出願公開第2011/0030808号)、圧電ビームによって引き起こされるインパルス液圧力によって(例えば、米国特許第7,392,908号)、又は磁歪ゲートによって(例えば、米国特許第7,160,730号)、光学力によって(例えば、米国特許第8,426,209号、米国特許第7,745,221号、米国特許第7,428,971号、米国特許出願公開第2008/0138010号)、音響力によって(例えば、米国特許第8,387,803号、米国特許出願公開第2013/0192958号、米国特許出願公開第2012/0160746号)、磁気力によって(例えば、米国特許第8,071,054号、米国特許第7,807,454号、米国特許第6,120,735号、米国特許第5,968,820号、米国特許第5,837,200号)、又は誘電泳動力によって(例えば、米国特許第8,454,813号、米国特許第7,425,253号、米国特許第5,489,506号、米国特許出願公開第2012/0103817号)行われる。これらの例では、細胞はマイクロ流体チャネルから離れない。細胞の選別が風力で行われる(風力選別である)従来のフローサイトメータと異なり、マイクロ流体選別は、流体流で行われる選別(流動選別)である。マイクロ流体選別装置は全て、従来のフローサイトメータと比べて非常に低い圧力で動作する。従って、マイクロ流体選別装置は、細胞に対して、より穏やかである。又、マイクロ流体選別装置は、概して、従来のフローサイトメータよりも複雑ではなく高価でもない。しかしながら、ほとんどのマイクロ流体選別装置の選別速度は、典型的には、従来のフローサイトメータ の選別速度より2桁以上低い。最近では、シリコンマイクロチップで作られた高周波流体弁を用いた次世代型マイクロ流体選別装置が米国特許出願公開第2015/0367346号に記載されており、これは、従来のフローサイトメータと同等の速度で(或いは潜在的には、従来のフローサイトメータをしのぐ速度でも)選別を行うことが可能である。
【0006】
これは、マイクロ流体選別が流動選別だからである。これは液滴を生成しない。従って、これは単一細胞の捕捉には使用できない。更に、既知の細胞選別機構の大多数が、混ざり合った細胞を2つ以上の集団に選別することに重点を置いている。米国特許第3,710,933号に記載されている、静電力による液滴選別は、選別された個別細胞を所定の場所にリアルタイムで送達する為の好ましい機構である。残念なことに、液滴選別は、典型的には、選別された個別細胞の、比較的広い面積(例えば、直径が5mmを超える面積)への送達に限られ、直径が5mmより小さい面積に対しては、送達精度が非常に低くなる。これは、液滴の移動速度が典型的には1m毎秒を超えていて、(例えば、静電力を用いて)直径が5mm未満の面積に液滴の狙いを精密につけることが非常に困難である為であり、特に液滴の速度が一定でない為である。例えば、現時点で利用可能な液滴細胞選別装置(例えば、BD ARIA III)は、個別細胞を96ウェル細胞培養プレートに直接選別することが可能であり、各ウェルの面積は直径が約6.5mmであって、精度が70%である。しかしながら、直径が約3mmである384ウェル細胞培養プレートに個別細胞を選別することは現実的ではない。
【0007】
これに対して、少量の液体を正確な位置に送達する、商用利用可能な技術がある。例えば、FLEXDROP(パーキンエルマー(Perkin Elmer))は、少量の液体を、直径が1mm未満の面積の正確な位置に送達することが可能な液体定量供給装置である。残念なことに、そのような液体定量供給装置は細胞を選別できない。
【0008】
フローセル又はカートリッジを使用してマイクロ粒子を処理する従来のシステムは、典型的には、1つの再利用可能なカートリッジを頼りにして試料を処理する。ある程度の時間が経過しないと、試料カートリッジは交換されない。つまり、多くの場合、1つのカートリッジが交換されるのは、何千ではないとしても何百もの試料を処理してからである。事例によっては、フローセル又はカートリッジは、故障しない限り、交換されない。再利用可能カートリッジは、多数の、マイクロリットル以下の容積のチャネルと、フローサイトメトリシステムの他の部分に接続する為のポートと、試料、並びに場合によっては溶剤、緩衝剤、及び/又は生体媒質を保持するリザーバと、を含む。従来のシステムでは、新しい試料を装填する前に、カートリッジを含む各構成要素をフラッシュしなければならない。フラッシュサイクルによって前の運転の試料及び流体媒質のほとんどが除去されるが、それでも時間とともに残留物が、チャネル内だけでなく、接続ポートや入口や出口にも蓄積する可能性がある。カートリッジ内に残留物が蓄積すると、カートリッジチャネルに流す流体流量が不正確になる可能性がある。チャネル内に残留物が蓄積すると、マイクロ流体の検出及び選別が不正確になる可能性もある。時間とともに汚染リスクが高まり、選別精度が低下することに加えて、現行のフローサイトメトリは多数の試料を処理することが必要であり、その場合、1回の運転のたびにカートリッジを洗浄することが合計で膨大な時間損失になる可能性がある。
【0009】
別々のマイクロ粒子からなるグループ、及び個別マイクロ粒子の両方の選別を迅速且つ効率的に行うことに用いることが可能なマイクロ流体選別の方法及び装置を提供することが有利であろう。又、選別カートリッジを使用のたびに洗浄することが不要になるであろう使い捨ての選別カートリッジを提供することも有用であろう。更に、その使い捨てカートリッジ選別装置が、カートリッジがマイクロ粒子選別過程における1回限りの使用の構成要素であることを実現可能にする、大量生産する上でのコスト効率もよい、シンプルな設計であれば有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
全般的には、本明細書では、マイクロ粒子(例えば、細胞)を選別する装置、及びマイクロ粒子を選別する方法について記載している。
【0012】
変形形態によっては、本明細書では、個別マイクロ粒子(例えば、細胞)の選別及び隔離を行う方法及び装置について記載しており、この選別及び隔離は、マイクロ粒子のグループを、望ましい特性(例えば、蛍光ラベルなどのラベル、形状、サイズ等)を有する1つ以上のマイクロ粒子を含むグループにバルク選別することと、その後に、個別マイクロ粒子を、この所望の特性を有する個別粒子と選別することと、により実施される。
【0013】
例えば、マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法が、流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを第1のスイッチの検出領域内まで通すステップであって、マイクロ粒子グループ内の複数のマイクロ粒子が、検出領域内で、検出領域を通るマイクロ粒子グループの流れの方向に垂直に隣接して配置されている、上記通すステップと、検出領域内で複数のマイクロ粒子を同時に検査して、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有する場合にこれを検出するステップと、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有する場合には、マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通し、マイクロ粒子グループを試料出口流路から外に定量供給し、そうでない場合には、マイクロ粒子グループを第1のスイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップと、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子をマイクロ粒子グループから隔離するステップであって、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、一列縦隊配列で第2のスイッチに通し、第2のスイッチの検出領域に通すステップと、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子が第2のスイッチの検出領域内で検出された場合には、その少なくとも1つのマイクロ粒子を第2のスイッチの第2の試料出口流路内まで通すステップと、マイクロ粒子グループ中の、所定の特性を有しないマイクロ粒子を第2のスイッチの廃棄物出口流路内まで通すステップと、によって実施される、隔離するステップと、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子を、第2のスイッチの試料出口から定量供給するステップと、を含んでよい。
【0014】
概して、スイッチはマイクロ流体選別スイッチであってよい。例えば、スイッチは、流動スイッチ(後で詳述)、ガスインパルススイッチ、液圧力(圧電ビーム)スイッチ、磁歪ゲート(スイッチ)、光学力スイッチ、音響力スイッチ、磁気力スイッチ、誘電泳動力スイッチ等であってよい。
【0015】
スイッチが流動スイッチの場合、流動スイッチは、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、スイッチ内に存在する場合に、マイクロ粒子グループを囲む流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させることが可能である。マイクロ粒子グループを囲む流体の流量を変化させるステップは、マイクロ粒子グループを囲む流体を追加するか減らすステップを含んでよい。流動スイッチが使用される場合、廃棄物出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、試料出口流路に沿う流体流に対する抵抗より大きくてよい。
【0016】
例えば、変形形態によっては、同時に検査するステップは、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、スイッチ内に存在する場合に、マイクロ粒子グループを囲む流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップを含んでよく、マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通すステップは、マイクロ粒子グループを囲む流体がスイッチ内をほぼ第2の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通して、マイクロ粒子グループを試料出口流路から外に定量供給し、そうでなく、マイクロ粒子グループを囲む流体がスイッチ内をほぼ第1の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループをスイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップを含む。
【0017】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、マイクロ粒子グループが同時に選別されることが可能であり、1つの(又は複数の)検出器で同時にインタロゲートされることが可能である。例えば、マイクロ粒子グループ全体を照明する為に、レーザスキャン/照明検出器が使用されてよい。例えば、検出器の照明範囲は、直径がマイクロ粒子の平均直径の2倍超であってよく(例えば、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、9倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、20倍超、25倍超、30倍超等であってよく)、且つ/又は、幅がマイクロ粒子の平均直径の2倍超であってよい(例えば、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、9倍超、10倍超、11倍超、12倍超、13倍超、14倍超、15倍超、20倍超、25倍超、30倍超等であってよい)。例えば、マイクロ粒子は細胞を意味してよく、細胞の平均直径が約10μmであってよく(例えば、約5μm、10μm、12μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm等であってよく)、検出器の照明(例えば、レーザ光)は、直径が20~100μmであってよく(例えば、10~500μm、20~300μm、30~400μm、25~250μm等、又はこれらの間の任意の範囲であってよく)、幅は直径と同等か、直径より狭くてよい。
【0018】
典型的には、検出領域を含むマイクロ流体チャネルは、マイクロ粒子が検出領域を、一列縦隊で通過するか(単一細胞を検出及び/又は分離する場合)、或いは、本明細書に記載のように、ほぼ検出チャネル内の流動方向を横切る面内を、横方向及び縦方向を含めて互いに隣り合って配列されたマイクロ粒子グループとして通過するように構成されてよい。例えば、マイクロ粒子グループを通すことは、検査及び選別を同時に行う為に細胞の複数の「層」を同時に流動スイッチに通すことを含んでよい。従って、複数のマイクロ粒子が同時に照明されることが可能であり、1つ以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つの)検出器が、並行して、又は同時に照明されているグループ中のたとえ1つのマイクロ粒子でも所望の特性(例えば、蛍光)を有する場合には、そのグループ全体が、検出器領域を通過するマイクロ粒子のストリームから選別及び分離されて試料出口流路に入り、それ以外のグループが廃棄物経路(廃棄物出口流路)に入れられるような感度を有するように構成されてよい。そして、選択されたマイクロ粒子グループは、より小さなグループとして、又は単一のマイクロ粒子として検査されてよい。カートリッジが使用される場合は、同じカートリッジ、又は別のカートリッジが使用されてよい。例えば、同じカートリッジは、試料出口流路に送られたマイクロ粒子を再循環させて検出領域に戻すことが可能であるが、(例えば、希釈によって、又は後述のように合理化流体経路を活性化することによって)マイクロ粒子をより小さいグループに限定する可能性があり、或いは、選択されたマイクロ粒子を同じカートリッジの別の検出チャネルに誘導する可能性がある。代替又は追加として、マイクロ粒子は、第2のカートリッジにロードされてよく、そこでは、個別に選別されてよく、或いは、より小さいグループに選別されてよい。本明細書に記載の装置はいずれも、ユーザがグループ選別及び/又は個別マイクロ粒子選別の間で選択することを可能にしうる。グループマイクロ粒子選別と個別マイクロ粒子選別との間でトグルすることにより、合理化流体をオン/オフすることが可能であり、且つ/又は検出器領域中の流体にかかる圧力を変化させることが可能であり、且つ/又は検出器領域の形状及び/又はサイズを変更することが可能であり、且つ/又は選択の経路を変更することが可能である。変形形態によっては、グループ選別か個別マイクロ粒子選別かは、使用されるカートリッジに基づいて選択されてよい。
【0019】
既述のように、本明細書に記載の方法及び装置はいずれも、少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離するステップを含む選別を複数回反復することを含んでよく、少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離するステップは、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、第1のスイッチを含む第2のスイッチに通すステップを含む。
【0020】
概して、本明細書に記載の装置及び方法は、マイクロ粒子を選別して分離するカートリッジ(例えば、取り外し可能且つ/又は交換可能なカートリッジ)を使用することを含んでよい。例えば、マイクロ粒子グループを検出領域内まで通すステップは、マイクロ粒子グループを、例えば流動スイッチである(ただし、これに限定されない)スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含んでよい。
【0021】
既述のように、概して、マイクロ粒子グループは細胞のグループであってよい。変形形態によっては、マイクロ粒子は細胞のクラスタであってよい。マイクロ粒子は任意のタイプの細胞であってよく、例えば、血球(又は他の循環細胞、例えば、赤血球、白血球等)、がん細胞、組織培養細胞等であってよい。
【0022】
マイクロ粒子は、任意の適切な所定の特性(所定の特性の組み合わせを含む)に基づいて選択/検出されてよい。例えば、検出される所定の特性は、形状、サイズ、及び蛍光強度のうちの1つ以上から選択されてよい。同じ特性に対応する、且つ/又は異なる複数の特性に対応する複数の検出器が使用されてよく、例えば、異なる複数の光波長に対応する複数の蛍光検出器が使用されてよく、且つ/又は異なる複数の感度閾値に対応する複数の蛍光検出器が使用されてよい。
【0023】
本明細書に記載の方法及び装置のいずれにおいても、マイクロ粒子グループを囲む流体は、所定の圧力又は圧力範囲まで加圧されてよい。
【0024】
全般的には、本明細書に記載の方法及び装置は、流動スイッチを使用して、マイクロ粒子を選別して隔離することに重点を置いているが、当然のことながら、本明細書に記載のグループ選別及び単一細胞隔離の方法、並びに記載されている他の原理及び手法の全てが、他の選別手法(スイッチ)とともに使用されてよい。
【0025】
既述のように、全般的には、本明細書に記載の方法及び装置は、マイクロ粒子グループを選別することが可能であり、この選別を繰り返して個別マイクロ粒子を隔離することが可能である。隔離は、グループ選別と別個に行われてよく、或いは、グループ選別と組み合わせて行われてよい。
【0026】
例えば、(例えば、流動スイッチを使用して)マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法が、流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを流動スイッチ内まで通すステップと、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、流動スイッチ内に存在する場合に、マイクロ粒子グループを囲む流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、マイクロ粒子グループを囲む流体が流動スイッチ内をほぼ第1の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループを流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又はマイクロ粒子グループを囲む流体が流動スイッチ内をほぼ第2の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループを、流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、マイクロ粒子グループを試料出口流路から外に定量供給するステップであって、廃棄物出口流路内の静的流体圧力が試料出口流路内の静的流体圧力より低い、上記ステップと、を含んでよい。本方法は更に、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子をマイクロ粒子グループから隔離するステップであって、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、隔離流動スイッチに通すステップと、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子が隔離流動スイッチ内に存在する場合に、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体が隔離流動スイッチ内をほぼ第4の流量で移動している場合に、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子は隔離流動スイッチから定量供給される、上記隔離するステップを含んでよい。
【0027】
少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離するステップは、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、流動スイッチを含む隔離流動スイッチに通すステップを含む。少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離するステップは、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチを含む隔離流動スイッチに通すステップを含む。マイクロ粒子グループを通すステップは、マイクロ粒子グループを、流動スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含む。本明細書に記載の方法はいずれも、流体がスイッチ(例えば、流動スイッチ)に入る前に流体の脱ガス処理を行うステップを含んでよい。
【0028】
例えば、マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法が、流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを第1の流動スイッチ内まで通すステップと、マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、第1の流動スイッチ内に存在する場合に、マイクロ粒子グループを囲む流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、マイクロ粒子グループを囲む流体が第1の流動スイッチ内をほぼ第1の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループを第1の流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又はマイクロ粒子グループを囲む流体が第1の流動スイッチ内をほぼ第2の流量で移動している場合には、マイクロ粒子グループを、第1の流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、マイクロ粒子グループを試料出口流路から外に定量供給するステップと、を含んでよく、廃棄物出口流路内の静的流体圧力が試料出口流路内の静的流体圧力より低く、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子をマイクロ粒子グループから隔離するステップであって、試料出口から定量供給されるマイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチ又は第1の流動スイッチのいずれかを含む隔離流動スイッチに通すステップと、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子が隔離流動スイッチ内に存在する場合に、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体が隔離流動スイッチ内をほぼ第4の流量で移動している場合に、所定の特性を有する少なくとも1つのマイクロ粒子は隔離流動スイッチから定量供給される、上記隔離するステップを更に含んでよい。
【0029】
上述のように、本明細書では、フローサイトメトリ装置とともに使用可能な取り外し可能(且つ、変形形態によっては使い捨ての)カートリッジと、それらをマイクロ粒子の選別及び保持に使用することに関連する方法と、についても記載している。これらのカートリッジは、「選別」カートリッジと呼ばれてよい。概して、カートリッジは、可動部分がなくてよく、それでも、細胞などのマイクロ粒子の特定の特徴に基づいて、それらのマイクロ粒子を効果的に分離することが可能である。カートリッジは、一般に平らで薄くてよく(例えば、厚さが10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、0.1~10mm、0.1~8mm、0.1~6mm、1~5mm等であってよく)、特に流体を含む領域の上で平らで薄くてよい。遠位端領域は、一般に、(例えば、平行な側面に対して90~180度(例えば、91~150度、100~140度等)の角度である面を有する)くさび形又は矢形であってよい。カートリッジは、マイクロ粒子(例えば、細胞)を含む試料溶液が挿入されることが可能なポート(例えば、開口部)を通してロードされてよく、例えば、カートリッジボディは、流体ネットワークと流体連通している試料保持器領域を含んでよい。
【0030】
概して、本明細書に記載のカートリッジは、流動スイッチを制御してカートリッジ内でマイクロ粒子を選別する選別装置(機器又はシステム)の一部として使用されてよい。流動スイッチは、(例えば、カートリッジのマイクロ流体チャネル内の)マイクロ粒子の流量、及び/又はチャネル内のマイクロ粒子を囲む流体の流量に基づいて、マイクロ粒子を差動的に選別することに使用されてよい。従って、これらの変形形態では、カートリッジは、流動スイッチカートリッジと呼ばれてよい。カートリッジは、受動的であって、典型的には能動スイッチを全く含まないが、選別装置からカートリッジに入るポートのうちの1つ以上のポートに流体を通すことの作用を受ける。従って、概して、本明細書に記載のカートリッジは、カートリッジの1つ以上の(例えば、複数の)ポートが(例えば、ガスケット又は他の流体密封接続を介して)選別装置の相補的なポート及び流体経路とインタフェース又は接続するように、選別装置と結合されてよい。流体封止材は、選別装置の一部、及び/又はカートリッジの一部であってよい。例えば、幾つかの変形形態では、流体封止材はエラストマ封止材である。幾つかの変形形態では、流体封止材はガスケット(例えば、Oリング等)である。ガスケットは、カートリッジの表面(例えば、上面)を封止する為に選別装置に組み込まれてよい。
【0031】
選別装置(これはベースユニットと呼ばれてよい)には、カートリッジが挿入されて保持されることが可能なカートリッジ受け入れ部分(例えば、スロット、チャンバ等)が含まれ、カートリッジ受け入れ部分は、カートリッジの様々なポートが流体入口/出口経路と結合されるように、且つ、光学検出及び/又は画像化システム(例えば、レーザ画像化システム、例えば、側方分散レーザ画像化システム)を使用して、細胞がカートリッジの(例えば、マイクロ流体チャネル内の)画像化領域を通って動くときにこれを検出することが可能であるように含まれる。カートリッジ内の、ポートの配列、並びに流体ネットワーク内の流体チャネルの寸法及び位置は、カートリッジが選別用流体スイッチとして動作する上で非常に重要でありうる。
【0032】
例えば、カートリッジの流体ネットワークは、選別装置によって能動的に制御されて切り替わるように構成されてよく、これによって、選別装置は、カートリッジ(流動スイッチ)を通って流れる流体を、カートリッジ内の流体の流量に基づいて差動的に方向付けることが可能である。更に、これらの流動スイッチは、識別及び制御部分、例えば、光学検出及び/又は画像化システムとの組み合わせで使用されてよく、これによって、所定の特性を有するマイクロ粒子がカートリッジの所定の画像化領域内にあるときにこれを特定することが可能であり、これによって、選別装置は、マイクロ粒子を運ぶ流体の流量を上げて(又は下げて)カートリッジ内のマイクロ粒子を選別することが可能である。従って、本明細書に記載のカートリッジは、物質がカートリッジを通過する際の物質の流量に基づいて、カートリッジからの2つ(以上)の出力の間で物質を選別するスイッチとして動作することが可能である。具体的には、本明細書に記載のカートリッジは、選別装置との組み合わせで差動流動選別を達成することが可能であり、これは、各出力を通る流動に対する抵抗の差、並びにカートリッジの各出力と流動スイッチ集合領域又は選別領域との間のインタフェースにおける様々な静的流体圧力に基づいて達成可能である。
【0033】
本明細書に記載のカートリッジと選別装置との組み合わせは、典型的には、カートリッジの集合領域又は交点領域と呼ばれてよい選別領域から出ている異なる複数のチャネル(例えば、廃棄物流路及び試料出口流路)に接続された少なくとも2つの出口を使用して動作する。カートリッジと選別装置との動作時には、出口流路及び廃棄物流路は、差動流動抵抗を有してよく、各出口流路は異なる静的流体圧力を有してよい。幾つかの変形形態では、低流量時には(例えば、流量が低いほうの閾値を下回る場合には)、カートリッジから出る流れは廃棄物流路を通り、選別装置の廃棄物貯蔵領域と結合された第1のポートから外に出る。選別装置は、少量の吸引力を印加するように構成されてよく(例えば、低いほうの負圧値(1psi、0.9psi、0.8psi、0.7psi、0.6psi、0.5psi、0.4psi、0.3psi、0.2psi、0.1psi等)と高いほうの負圧値(0.5psi、0.6psi、0.7psi、0.8psi、0.9psi、1psi、1.1psi、1.2psi、1.3psi、1.4psi、1.5psi等)との間の吸引力であって、低いほうの負圧値が常に高いほうの負圧値より小さく、例えば、0.5~0.9psiである吸引力を印加するように構成されてよく)、高いほうの流量(例えば、高いほうの閾値を上回る流量)では、(例えば、選別されたマイクロ粒子を運ぶ)カートリッジからの流出は、出口(液滴定量供給)流路を通って液滴定量供給ポートから外に出てよい。具体的には、廃棄物流路(例えば、「低流量」流路)の静的流体圧力は出口流路(例えば、「高流量」流路)の静的流体圧力より低くてよく、液滴定量供給ポートに結合された出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、第1の(廃棄物)ポートに結合された廃棄物流路に沿う流体流に対する抵抗より小さくてよい。従って、選別装置は、カートリッジ内で選別を実施することが可能であり、これは、物質(例えば、流体で囲まれたマイクロ粒子)が廃棄物流路から出口流路(例えば、試料出口流路)に切り替えられるように、カートリッジ内の流体の流量を変更することによって、具体的には、第2のポートから、選別領域に接続された入口流路への流体の流量を変更することによって可能である。
【0034】
本明細書に記載のカートリッジはいずれも、カートリッジを流動スイッチとして動作させるように構成された選別装置に結合された場合に、細胞選別及び細胞定量供給を同時に達成する為に、マイクロ流体構造及びミリ流体構造の両方を収容してよい。例えば、カートリッジ内の流体の流動抵抗及び/又は静的流体圧力、並びに流量は、カートリッジ内の、且つ変形形態によっては装置内のマイクロ流体構造又はマクロ流体構造によって操作されてよい。
【0035】
更に、本明細書に記載のカートリッジはいずれも、カートリッジ内の流体の流量の乱れ(例えば、乱流のような、流量の意図的でない変化、又は管理されていない変化)を防ぐ機能を含んでよい。更に、これらのシステムはいずれも、泡を除去する為、又は泡の形成を防ぐ為に、脱ガス剤を含んでよい。更に、流動スイッチを通る流路は、乱流を防ぐか低減するように構成されてよい。
【0036】
例えば、本明細書では、マイクロ粒子選別装置用の取り外し可能カートリッジについて記載しており、カートリッジは、上面と底面とそれらの間の厚さとを有する細長ボディと、カートリッジの遠位端近くの上面にある第1のポートであって、細長ボディの中線を通って延びる長手軸内にある第1のポートと、上面にある第2のポートであって、上記長手軸に沿って存在し、第1のポートから1~3mm離れている第2のポートと、上面にあって、第1のポートから14~16mm離れて、上記長手軸に対して20~60度の角度で配置される任意選択の第3のポートと、上面にあって、第1のポートから14~16mm離れて、上記長手軸に対して-20~-60度の角度で配置される任意選択の第4のポートと、上面と底面との間でカートリッジの遠位端から延びている液滴定量供給ポートと、第1及び第2(並びに任意選択の第3及び第4)のポートと結合された、細長ボディ内の流体ネットワークと、を含み、流体ネットワークは、細長ボディ内を通って試料保持領域と選別領域との間で延びているマイクロ流体チャネルと、選別領域と液滴定量供給ポートとの間の出口流路と、選別領域と第1のポートとの間で細長ボディを通って延びている廃棄物流路と、を含み、0.5~0.9psiの負圧が第1のポートにかかっている場合に、廃棄物流路の流動抵抗が定量供給流路(例えば、定量供給流路の定量供給出口部分)の流体抵抗より大きい。
【0037】
概して、第1のポートは、廃棄物ポートと呼ばれてよく、カートリッジの遠位端又はその近くに位置してよく、(例えば、ガスケットを介して)選別装置の廃棄物経路に結合されてよい。本明細書に記載のポートはいずれも、任意の適切な寸法の(例えば、円形、楕円形、正方形等の)アパーチャ又は開口部であってよい。例えば、廃棄物ポートは、直径が0.8mm前後(例えば、0.5~1.5mm)であってよい。これらのポートはいずれも、カートリッジの上面に対し、面一であってよく、又は凹んでいてよく、又は突き出ていてよい(例えば、突出していてよい)。
【0038】
第2のポートは、入口ポートと呼ばれてよく、カートリッジが選別装置と結合された場合に、選別装置内で弁のある流体源(例えば、媒質源)と結合されてよい。(任意選択の)第3及び第4のポートは、合理化流体ポートと呼ばれてよく、選別装置内でガスケット又は他の封止材を介して流体源(例えば、媒質源)と結合されてもよい。カートリッジの構成によっては、細胞カートリッジは、第1及び第2のポートだけを含んでよく、第3又は第4のポートは含まなくてよい。例えば、カートリッジは、任意選択で、シース液なしで運用されてよい。
【0039】
概して、本明細書に記載の装置は、カートリッジが選別装置と結合されている場合に、廃棄物流路の流動抵抗が定量供給流路(例えば、選別領域の下流の、定量供給流路の定量供給出口流路部分)の流動抵抗より大きくなるように構成されている。これを実現する為には、廃棄物流路の断面積が、定量供給出口流路の断面積より小さくなければならない。これは特に、カートリッジが選別装置と結合されていて、0.5~0.9psiの負圧が第1のポートにかかっていて、廃棄物流路の流動抵抗が定量供給流路(例えば、定量供給流路の定量供給出口流路部分)の流動抵抗より大きくなることが望ましい場合に当てはまる。例えば、第1のポートと第2のポートの間隔が開きすぎていると(例えば、間隔が3~4mmより大きいと)、廃棄物流路の流動抵抗が大きすぎる場合があり、或いは、過度に大きな負圧が必要になる場合があり、カートリッジは、廃棄物流路と定量供給流路(定量供給流路の定量供給出口流路部分)との間で適正な選別を行わず、装置が運転されなくなることが分かっている。或いは、第1、第2、第3、及び第4のポートの配列によっては、廃棄物流路の流動抵抗が小さくなりすぎる可能性があり、その結果、空気が定量供給流路から廃棄物流路に引き込まれる可能性がある。理想的には、(例えば、選別装置が、第2のポート、従って、入口流路に入って選別領域を通る流量を増やしたことによって)マイクロ粒子が定量供給流路に選別されない場合には、定量供給出口流路から流体が排出されてはならない。
【0040】
例えば、廃棄物流路の最小断面積が定量供給流路の最小断面積より小さければ、上述のようなカートリッジの適正な運用には特に有利であろう。例えば、廃棄物流路と入口流路との最小断面積の比は、0.05~0.5であってよい。
【0041】
これらの変形形態のいずれにおいても、カートリッジは、(マイクロ粒子を有する)流体をカートリッジ試料保持領域にロードする為の、試料保持領域と流体連通している試料ロードポートを上面に含んでよい。試料保持領域は、試料保持領域と流体連通しているベントポートを上面に含んでもよい。
【0042】
概して、マイクロ流体チャネルは、カートリッジの長手軸に沿って延びてよく、任意の適切な断面積及び断面形状を有してよい。例えば、チャネルの断面は、円形、矩形、正方形、楕円形、その他であってよい。マイクロ流体チャネルの断面積は、0.2平方ミリメートル未満であってよい(例えば、0.001~0.2平方ミリメートルであってよい)。
【0043】
概して、カートリッジは、第2のポートと選別領域との間に入口流路を含んでよい。既述のように、第2のポートと交点領域(例えば、カートリッジの検出領域)との間の光学的に透明な領域をスキャンする検出器(例えば、レーザ検出器又は他の光学式検出器)によって、マイクロ流体チャネル内でマイクロ粒子が検出された場合に、入口流路は、マイクロ流体チャネル経路全体にわたって流体を与える為に使用されてよい。入口流路は、出口流路の反対側に位置してよく、これら2つの流路は、断面形状及び/又は断面積が同等又は同一であってよい。これらの流路は、マイクロ流体流路ではなくミリ流体流路であってよい。例えば、これらの流路の断面積は、マイクロ流体チャネルの断面積の約5~100倍(例えば、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍等)である。
【0044】
追加される流体チャネルは、試料流体、及び/又は試料流体内の粒子(細胞等)がマイクロ流体チャネルに沿って選別領域に向かって移動する際に、それらをガイド及び/又はセンタリングすることにも使用されてよい。例えば、これらのカートリッジはいずれも、含まれた場合には細長ボディ内を通って第3のポートとマイクロ流体チャネルの間に延びる第1の合理化流路であって、マイクロ流体チャネルと交点領域で交差する第1の合理化流路と、細長ボディ内を通って第4のポートとマイクロ流体チャネルの間に延びる第2の合理化流路であって、マイクロ流体チャネルと交点領域で交差する第2の合理化流路と、を含んでよい。
【0045】
光学的に透明な領域(検出領域)は、典型的には、マイクロ流体チャネルが入口流路と交差する選別領域と、(例えば、選別領域から0.5~10mmの)交点領域との間にある。
【0046】
試料保持領域は、概して、上面と底面との間にあってよい。
【0047】
液滴定量供給ポートは、典型的には、カートリッジの遠位端(又は遠位端領域)から延びており、従って、他のポートに対して90度の角度にあってよい。液滴定量供給ポートは、カートリッジの遠位端から延びるカニューレを含んでよい。例えば、液滴定量供給ポートは、カートリッジの遠位端から延びるカニューレを含んでもよく、更に、カートリッジの遠位端は、カニューレの長軸に対して95~160度(例えば、約110~150度等)の角度にある側壁のペアの間に位置してよい。
【0048】
これらの変形形態のいずれにおいても、廃棄物流路の流動抵抗は、定量供給出口流路の流動抵抗の約2倍から約40倍であってよい。
【0049】
例えば、マイクロ粒子選別装置用の取り外し可能カートリッジが、上面と底面とそれらの間の厚さとを有する細長ボディと、カートリッジの遠位端近くの上面にある第1のポートであって、細長ボディの中線を通って延びる長手軸内にある第1のポートと、上面にある第2のポートであって、上記長手軸に沿って存在し、第1のポートから1~3mm離れている第2のポートと、上面にあって、第1のポートから14~16mm離れて、上記長手軸に対して20~60度の角度で配置される第3のポートと、上面にあって、第1のポートから14~16mm離れて、上記長手軸に対して-20~-60度の角度で配置される第4のポートと、上面と底面との間でカートリッジの遠位端から延びている液滴定量供給ポートと、マイクロ粒子を含む流体を保持するように構成された試料保持領域と、第1、第2、第3、及び第4のポートと結合された、細長ボディ内の、マイクロ流体及びミリ流体のハイブリッドネットワークと、を含み、マイクロ流体及びミリ流体のネットワークは、細長ボディ内を通って試料保持領域と選別領域との間で延びているマイクロ流体チャネルと、第2のポートと選別領域との間の入口流路と、選別領域と液滴定量供給ポートとの間の定量供給出口流路と、細長ボディ内を通って選別領域と第1のポートとの間で延びている廃棄物流路と、細長ボディ内を通って第3のポートとマイクロ流体チャネルの間に延びる第1の合理化流路であって、マイクロ流体チャネルと交点領域で交差する第1の合理化流路と、細長ボディ内を通って第4のポートとマイクロ流体チャネルの間に延びる第2の合理化流路であって、マイクロ流体チャネルと交点領域で交差する第2の合理化流路と、を含んでよく、0.5~0.9psiの負圧が第1のポートにかかっている場合には、廃棄物流路の流動抵抗が定量供給流路の流動抵抗より大きい。
【0050】
本明細書に記載の使い捨て選別カートリッジは、所定の特性に基づいて、マイクロ粒子の混合物を含む試料を選別することが可能である。特定の特性を有するマイクロ粒子をチャネルで運んで収集することを支援する為に、液圧力及びガス圧力が印加される。適切な大きさの力をかければたいていのものを動かすことが可能であるが、意外なことに、かなりシンプルなネットワーク内でわずかな大きさの正及び負の力をかけることによって、細胞のようなマイクロ粒子の選別を精密に行うことが可能であり、これは、本明細書に記載のカートリッジにより可能である。
【0051】
概して、試料が使い捨て選別カートリッジの主流路に沿って移動する際に、個々のマイクロ粒子が互いに離れ始め、単独で主流路に沿って移動する。主流路に対して対称に配置されていて、対応するフローサイトメトリ装置内に保持されているリザーバに接続されている側方流動チャネルが、流体の流量を更に制御することにより、マイクロ粒子を確実に個別マイクロ粒子として主流路に沿って移動させることが可能である。
【0052】
主流路に沿う検出器領域で、通過するマイクロ粒子がインタロゲートされ、各マイクロ粒子が特定の特性を有するかどうかが判定される。検出器からの信号が選別装置によって解析される(選別装置は、本明細書ではフローサイトメトリ装置と呼ばれてもよい)。1つ以上のマイクロ粒子が所定の特性を有する場合は、フローサイトメトリ装置の制御装置がマイクロ粒子を保持するプロトコルを開始する。この場合、所望のマイクロ粒子は検出器を通過すると、選別領域に遭遇する。第2のポート(入口ポート)は、フローサイトメトリ装置内に保持されたリザーバに流体的に接続されており、リザーバは、マイクロ粒子が検出された時点で、又は検出された後に流動が開始されるようにタイミング設定された追加の流体流又は正圧を供給することが可能であり、具体的には、マイクロ粒子を、定量供給流路(例えば、定量供給流路の定量供給出口流路部分)、従って、液滴定量供給ポートに入るように駆動することが可能であり、所望の粒子が検出されない場合には、フローサイトメトリ装置は、第2のポートを通って定量供給流路に入る流体流を与えず、その代わりに、マイクロ流体経路から、第1のポートに結合されている廃棄物流路に入る流動が継続され、この流動は、フローサイトメトリ装置から負圧を受けて、廃棄物質をカートリッジから取り除くことが可能である。第2のポートは定量供給流路と流体連通しており、定量供給流路の断面積は、主マイクロ流体チャネル(流路)の断面積より大きい。
【0053】
本発明の新規な特徴は、後述の特許請求の範囲において具体的に明記されている。本発明の原理が利用される例示的実施形態を説明する後述の詳細説明と、以下の添付図面とを参照することにより、本発明の特徴及び利点がよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】カートリッジを含まない選別装置を概略的に示す図である。
図2A】モノリシック流動スイッチの一実施形態を示す図である。
図2B図3Aの流動スイッチの断面図である。
図3図2A及び2Bに示されたような流動スイッチの別の変形形態を示す図であり、ソース、廃棄物、及び定量供給の各チャネル(チューブ)が取り付けられていることを示す図である。
図4A】取り外し可能カートリッジの上面図である。
図4B図4Aのカートリッジの底面図である。
図5図4A及び4BのカートリッジのX-Y面の断面図である。
図6図4A及び4BのカートリッジのY-Z面の断面図である。
図7A】例示的寸法を含む、カートリッジの別の例を示す図である。
図7B】例示的寸法を含む、図7のカートリッジの側面図である。
図8図7Aのカートリッジを通る断面の拡大図であって、流体ネットワークのうちの、選別領域及び合理化流動チャネルを含む部分を示す図である。
図9A】本明細書に記載のカートリッジの遠位端の側部の断面図である。
図9B図9に示されたような断面の等角図である。
図10】本明細書に記載のカートリッジを使用して、どのようにしてマイクロ粒子が選別され、保持又は廃棄されるかを示すフローチャートである。
図11】マイクロ粒子(例えば、細胞)が個別に選別されるべく一列縦隊で通されるマイクロ流体チャネルの一例を示す図である。
図12】本明細書に記載の、マイクロ粒子が同時に選別されるべくバルクで(マイクロ粒子のグループで)通されるマイクロ流体チャネルの一例を示す図である。
図13A】乃至
図13B】本明細書に記載のバルク選別方法を用いて細胞を選別及び定量供給する一方法を示す図であり、この例では、細胞のグループが、注入流による流体スイッチを使用して選別される。
図14】本明細書に記載のようにバルク選別を実施する為のカートリッジの一例1400を概略的に示す図である。
図15】米国特許第4,175,662号を出典とする例を示す図であって、ガスインパルスによる選別を示す図である。
図16】米国特許第8,387,803号を出典とする例を示す図であって、本明細書に記載のバルク選別に使用可能な音響的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本明細書では、マイクロ流体を用いて、別々のマイクロ粒子からなるグループ、及び個別マイクロ粒子の両方の選別を行う装置及び方法について説明する。本明細書では又、グループ及び/又は個別マイクロ粒子(例えば、細胞)の選別に使用可能なカートリッジについて説明する。
【0056】
本明細書に記載の装置及び機器は、流量に基づく選別を、例えば、流動スイッチを使用して行うことが可能であるが、変形形態によっては、本明細書に記載のこれらの素子及び装置は、流動スイッチの使用に限定されない。本明細書に記載の実施例のほとんどは、流動スイッチの文脈で提示されているが、当然のことながら、他の選別手法(例えば、他のマイクロ流体選別手法)も使用されてよい。
【0057】
例えば、本明細書に記載のカートリッジのほとんどは、マイクロ粒子のグループを選別すること、及び/又は個別マイクロ粒子を選別して隔離することの為のマイクロ流体選別カートリッジであり、これらは流動スイッチを含んでよい。例えば、本明細書では、カートリッジ内で、マイクロ粒子を取り囲む流体の流量(速度及び方向)に基づいて選別を行うことが可能なマイクロ粒子選別装置のカートリッジについて説明する。本明細書に記載のカートリッジは、試料保持領域から中央マイクロ流体チャネルを通るマイクロ粒子を選別する為に、経路長、直径(断面積)、及び相対位置を含む、制御された寸法を有する流体経路の平衡配置を使用してよい。
【0058】
本明細書に記載のカートリッジは、例えば、本願発明者等による、参照によってその全内容が本明細書に組み込まれている、2014年3月17日に出願された米国特許第8,820,538号、件名「粒子選別の方法及び装置(METHOD AND APPARATUS FOR PARTICLE SORTING)」に記載されている流動スイッチと同様の流動スイッチの一部として動作するように適合されている。流動スイッチは、取り外し可能カートリッジと、そのカートリッジを受けることが可能なフローサイトメトリ装置(「選別装置」)との間で分割されることが可能である。カートリッジと選別装置との間のインタフェースは、流動スイッチの動作を可能にする上で重要である。特に、液滴定量供給ポートに対して90度である単一面(例えば、「上」面)におけるポートの配置と、カートリッジ内のマイクロ流体及びミリ流体のハイブリッドネットワークの配置とが重要である場合がある。驚くべきことに、本明細書に記載の配置から外れた配置はうまくいかないことがわかっている。これは、廃棄物流路と定量供給流路との間を流れる為に必要な、抵抗間の平衡、及び/又は、選別装置の動作中のこれらの流路内の静的流体圧力が、流動スイッチの動作を可能にする範囲内にない為である。
【0059】
図1~3は、米国特許第8,820,538号に記載の流動スイッチを含むマイクロ流体選別システムを示す。本明細書に記載の総合システム及びカートリッジの両方が、少なくとも1つの入口と少なくとも2つの出口とを含む交番流体流路を使用し、交番流体流路は、流動スイッチシステムに入る流量を変化させることによって実現される。幾つかの変形形態では、流動スイッチは、少なくとも2つの入口と少なくとも2つの出口とを含む。一方の流路(例えば、廃棄物流路)が低い流量で維持されてよく、この場合、一方の流動出口の圧力が他方の流動出口の圧力より低く保持される。一方の流動出口の圧力が他方の流動出口の圧力に比べて低く維持されてよく、これは、例えば、一方の流動出口の開口を他方の流動出口の開口に比べて低くすることによって行われる。他方の流路は高い流量で維持されてよく、この場合、一方の流動出口の流動抵抗が他方の流動出口の流動抵抗より低い。
【0060】
概して、本明細書に記載の装置(例えば、カートリッジ)は、任意の適切なマイクロ粒子を選別することに使用されてよく、そのようなマイクロ粒子として、単一細胞、細胞のクラスタ、無機粒子、又は他の任意の物体があり、それらは典型的にはサイズが小さい(例えば、<10μm、<20μm、<50μm、<100μm、<200μm、<0.5mm、<1mm、<100μm等である)。
【0061】
選別は、検出器によって制御されてよく、検出器は、ソース流体と呼ばれることがある、カートリッジに供給された流体中のマイクロ粒子を検出する。マイクロ粒子検出サブシステムは、ソース流体がカートリッジ中を流れる前、又は流れる際にソース流体を連続的又は離散的にモニタリングして、1つ以上の所定の特性を有するマイクロ粒子がカートリッジのターゲット検出領域内にあるときにこれを特定することが可能である。例えば、本システムは、細胞の形状、細胞のサイズ、細胞のモルフォロジ、又は細胞上の/細胞に貼られたラベル(例えば、蛍光ラベルが貼られた細胞の蛍光強度)に基づいて選別を行うように構成されてよい。所望の特性を有するマイクロ粒子が識別されると、このマイクロ粒子は、主流の「廃棄物」出口(例えば、低流量出口)ではなく定量供給出口(例えば、高流量出口)に向けられるように、マイクロ粒子の周囲の溶液の流量を変更されることによって選別されてよい。カートリッジに入る(又はカートリッジ内の)試料入口は、所定の特性を有するマイクロ粒子が検出領域内(例えば、マイクロ粒子検出サブシステムの視野内)に離散的に現れるように構成されてよい。試料入口チャネルは、マイクロ粒子を一度に1つだけ通すように適合又は構成されてよく、これは、例えば、狭いチャネル領域、特に、マイクロ粒子検出サブアセンブリの視野内にある領域を含めることによって行われる。代替又は追加として、マイクロ粒子を含む試料流体は、視野内のマイクロ粒子の出現が比較的珍しい(例えば、低確率である)ように希釈されてよい。
【0062】
既述のように、本明細書に記載のカートリッジは、典型的には、マイクロ流体チャネルがカートリッジの長軸に沿って延びており、カートリッジが複数のマイクロ流体チャネルであってよい。1つ以上の入口流体経路が、選別領域において、マイクロ流体経路を横切ってよい。流体(試料流体)は、カートリッジが選別装置に結合されたときに、選別装置によって決定される流量で、流路内で駆動されてよく、部分的に、圧力によって、例えば、空気ポンプで与えられる空気圧によって、駆動されてよい。本システムは、カートリッジの異なる複数の領域内の流体圧力を調整するフィードバックを含んでよく、且つ/又は、特にソース流体入力を含む選別装置だけを含んでよい。
【0063】
概して、カートリッジ内では、1つの廃棄物流体経路の流体抵抗が定量供給流体経路の流体抵抗より高いことによって、流体流量に基づく差動スイッチングが実現されてよい。更に、出口流路の、カートリッジの選別領域の近くの(例えば、出口経路に入ってすぐの)領域の静水圧が異なってよい。例えば、1つの出口の(第1のポートなどのポート、廃棄物ポート、又は液滴定量供給ポートにつながる)開口が、それ以外の出口の開口より低くてよく、これによって、カートリッジの出口間で静水圧が異なる。
【0064】
概して、本明細書に記載のカートリッジは、任意の適切な材料で作られてよく、例えば、ガラス、ポリカーボネート、その両方の組み合わせ、又は他の何らかの材料で作られてよい。説明されるカートリッジのどのポートも、断面形状が円形、楕円形、三角形、矩形、その他であってよい。
【0065】
図1は、米国特許第8,820,538号に記載の流動スイッチの一例を示す。図1では、細胞などのマイクロ粒子がボトル14に貯蔵される。ボトル16は液体のみを収容し、細胞選別の場合には、細胞媒質又は生理食塩水緩衝剤(リン酸緩衝生理食塩水など)を収容する。両ボトルは、マイクロダイヤフラムガスポンプ10によって加圧される。ボトル14内及びボトル16内の圧力は、圧力調整器12によって調整される。ボトル14内及びボトル16内の圧力は、0~30psiであってよい。一実施形態では、ボトル14内及びボトル16内の圧力は2psiである。ボトル14は、シリコーンチューブを介して、流動スイッチ22の一方の入口に直接接続されている。ボトル14が加圧されると、ボトル14内の液体が、シリコーンチューブを通って流動スイッチ22に絶え間なく流入する。ボトル16は、シリコーンチューブを介して、流動スイッチ22の他方の入口に接続されている。ボトル16から流動スイッチ22への液体の流れは、ソレノイド弁20によって制御される。細胞が流動スイッチ22を通って流れると、それらの細胞は、顕微鏡レンズ24と結合されたカメラを通して可視化される。同時に、細胞の蛍光強度が光電子倍増管(PMT)28で測定される。細胞が既定の基準(サイズ、形状、蛍光強度等)を満たさない場合、ソレノイド弁20は閉じたままである。細胞は、流動スイッチから流出して廃棄物ボトル18に入る。細胞が既定の基準を満たすと、ソレノイド弁20が短時間だけ開く。媒質が流動スイッチ22に流入する。媒質のほとんどが試料チャネル32から流出する。この媒質の流れによって、標的細胞が試料チャネル32のノズルから外に運ばれる。このようにして、単一細胞の選別と定量供給が同時に達成される。
【0066】
この例での細胞の選別及び定量供給が成功するかどうかは、このモノリシック流動スイッチの具体的な設計次第でありうる。図2Aの概略図を参照すると、この例では、流動スイッチの2つの流動入口34及び38が、それぞれ、入口流路40及び42につながっており、2つの流動出口32及び36が、それぞれ、流動スイッチの出口流路46及び44につながっている。入口流路及び出口流路は全て、共通集合領域58に集まる。入口34はボトル14につながっており、入口38はボトル16につながっている。マイクロ粒子が試料入口流路40を通って流動スイッチに流入する。更なる流体がフラッシュ入口流路42を流れることにより、流動スイッチ内のマイクロ粒子を取り囲む流体の流量が低流量から高流量へと変化する。出口32は試料チャネル51につながっており、出口36は、廃棄物容器(ボトル)につながる廃棄物チャネル53につながっている。流動スイッチは、マイクロ流体流チャネルとマクロ流体流チャネルの両方を収容している。試料入口流路40は、マイクロ流体チャネルである。フラッシュ入口流路42、廃棄物流路44、及び試料出口流路46は、マクロ流体チャネルである。一実施形態では、試料入口流路40は、矩形断面のガラス毛管で作られており、断面の寸法が30μm×300μm(H×W)である。一実施形態では、フラッシュ入口流路42、廃棄物流路44、及び試料出口流路46は、1片のポリカーボネートから作られている。フラッシュ入口流路42、廃棄物流路44、及び試料出口流路46の断面は円形であってよい。一実施形態では、フラッシュ入口流路42及び試料出口流路46の直径が400μmである。廃棄物流路44の直径は300μmである。試料入口流路40、フラッシュ入口流路42、廃棄物流路44、及び試料出口流路46は、流動スイッチ58の中央に集まっている。
【0067】
細胞の選別を実現する為には少なくとも2つの流動出口がなければならず、1つは必要な細胞(試料細胞)用であり、もう1つは不要な細胞(廃棄物細胞)用である。2つの流動出口の間で流路を切り替える方法としては、2つの流動出口の間で流動抵抗を弁によって切り替えるのが簡単である。例えば、流路A及び流路Bには、それぞれ、弁A及び弁Bがある。液体が流路Bを通らず流路Aだけを通って流れるようにするには、単純に、流路Aの弁Aをオンにし、流路Bの弁Bをオフにする。しかしながら、2つの流路出口に制御可能な弁を2つ有することは、大きなデッドボリュームが生じることになる。この為、そのような方法は細胞選別装置ではめったに用いられない。これまで、細胞選別を実施する為に行われてきたのは、両出口流路を開いたままにして、ある程度の大きさの物理的外力(例えば、背景技術の項に記載された機械力、音響力、液圧力、光学力、磁気力、誘電泳動力、又は静電力)を標的細胞に直接加えて、標的細胞を一方の流路から他方の流路に動かすことである。これに対し、本明細書に記載の流動スイッチでは、両出口流路が開いていて(図3)、流路の切り替えに外力が用いられない。2つの流路の間の切り替えは、流動スイッチに入る流量を単純に切り替えることによって実施可能である。図3では、モノリシック流動スイッチの別の例が示されており、細胞は、試料入口流路40を通って流動スイッチに流入する。媒質がシリコーンチューブ54を通って流動スイッチに流入することが弁20によって阻止された場合、流動スイッチに流入するのは細胞の流れだけである。通常、細胞は、廃棄物流路44又は試料出口流路46のいずれかを通って、流動スイッチの2つの出口から流出してよい。しかしながら、流動スイッチは、廃棄物チャネル開口部52が試料チャネル開口部50より下になるように組み立てられている。廃棄物チャネル開口部52と試料チャネル開口部51との間の距離は、図3のDである。一実施形態では、Dは70mmである。マイクロ流体チャネル40を通る細胞の流量は低い。一実施形態では、細胞の流量は20μl毎分である。廃棄物チャネル53の断面積は、試料入口流路40の断面積より格段に大きい為、細胞が廃棄物チャネル53を流れることによって引き起こされる圧力低下は、典型的には、図3の静的水圧Dより小さい。従って、細胞は廃棄物流路44に流入するだけであり、最終的に廃棄物になる。試料出口流路46に流入して試料チャネル51から出る細胞はない。細胞は、試料入口流路40を流れる間に、デジタル高速度カメラで検査され、その蛍光強度が検査窓41(図2B)を通してPMTで測定される。細胞が既定の基準(サイズ、形状、蛍光強度等)を満たすと、ある程度の遅延の後に弁20が開き、媒質がシリコーンチューブ54を通って流動スイッチに流入する。流動スイッチに入る媒質の流量は、細胞流の流量より格段に大きい。一実施形態では、媒質の流量は500μl毎分である。シリコーンチューブ54の直径は、廃棄物チャネル53の直径より大きい。一実施形態では、シリコーンチューブ54の直径は0.762mmであり、一方、シリコーンチューブ52の直径は0.30mmである。シリコーンチューブ54を通って流動スイッチに入る大きな流れによって、流動パターンが変化する。ほとんどの媒質が試料出口流路46に流入し、試料チャネル51から流出する。これは、試料チャネル51の流動抵抗が廃棄物チャネル53の流動抵抗より小さい為である。試料出口流路46に入る媒質の動きによって、標的細胞も試料出口流路46に入って試料チャネル51から出るように動く。弁20は、標的細胞が試料チャネル51から定量供給されることが可能な時間だけ開く。一実施形態では、弁20は25ミリ秒にわたって開く。このように、単一細胞の選別及び定量供給は、流動スイッチの流量を20μl毎分から520μl毎分に変化させることによって達成される。標的細胞は、試料チャネル51を通る液滴として流動スイッチから定量供給される為、定量供給される液滴の位置は、1mm未満の精度まで精密に制御されることが可能である。
【0068】
弁20が閉じていると、廃棄物流路44内の圧力は、試料出口流路46内の圧力より低い。これは、廃棄物チャネル53の開口部52が試料チャネル51の開口部50より下にある為である。廃棄物流路44内の圧力が試料出口流路46内の圧力より低いことは、廃棄物チャネル53の開口部を試料チャネル51の開口部よりも下に置かずに、廃棄物ボトル18を真空ポンプにつなぐことによっても達成可能である。
【0069】
取り外し可能なマイクロ粒子選別カートリッジ
概して、本明細書に記載の取り外し可能なマイクロ粒子選別カートリッジは、薄い材料片にエッチングされた流体チャネルのネットワークを含む。適切な材料として、プラスチック、ガラス、又は他の透明ポリマーがあってよい。幾つかの例では、流体チャネルは、レーザエッチング、熱エンボス加工、又は射出成形によってカートリッジボディにエッチングされる。流体チャネルは、立方形、円筒形、又は他の実現可能な形状及び寸法であってよい。典型的には、流体チャネルは、ほぼ数千平方ミクロンから1万平方ミクロンのオーダーである。カートリッジのボディに流体チャネルがエッチングされた後、使い捨て選別カートリッジの上面に、蒸発及び試料喪失を防ぐ上部カバーがかぶせられてよい。上部カバーは、接着手段又は他の結合方法によって使い捨て選別カートリッジに結合されてよい。
【0070】
図4A~6を参照すると、使い捨て選別カートリッジの一例示的実施形態100が示されている。カートリッジ100は、ほぼ矩形の、薄く、平らな形状であり、カートリッジの第1の端部102及びカートリッジの第2の端部104を有する。概して、使い捨て選別カートリッジ100の寸法は、長さが5~10cm(例えば、7~9cm)、幅が約1~4cm(例えば、約2.5cm)、高さが約2~6mm(例えば、約4mm)である。これらの寸法は、変更しても選別カートリッジの機能性には必ずしも影響せず、使い捨て選別カートリッジ100の最適寸法は、使用されるフローサイトメトリ装置の機能によって限定されてよい。幾つかの変形形態では、カートリッジ100は、カートリッジの第2の端部104が対称なテーパ形状であってよい。この対称なテーパ形状の端部は、使い捨て選別カートリッジ100が、液滴定量供給出口136をセンタリングした状態で、フローサイトメトリシステム内に適正にぴったりフィットすることを可能にすることができる。
【0071】
概して、カートリッジ100は、(図5の内部断面図に見える)試料コンパートメント110を含んでよい。試料コンパートメント110は試料ロード用開口部112を含んでもよく、試料ロード用開口部112は、ユーザが従来式のピペットでマイクロ粒子試料をロードすることを可能にする。試料コンパートメント110は更に、ベント114を含んでよい。場合によっては、使い捨て選別カートリッジ100が、対応するフローサイトメトリ装置内にあるときに、試料ロード用開口部112及び/又はベント114は、(ガスケットを介して)選別装置内の空気加圧システムに封止及び/又は結合されてよい。図に示された例では、試料コンパートメント110は、その、カートリッジの第1の端部102に近い位置からカートリッジの第2の端部104に向かってテーパ形状になっており、これによって、試料を流体ネットワークに入れること、並びに試料内のマイクロ粒子の分離プロセスを開始することの為に、試料を配置することが可能である。
【0072】
試料コンパートメント110は、主マイクロ流体チャネル120と流体連通している。図示された例のマイクロ流体チャネル120は、選別カートリッジ100のほぼ長さ全体にわたって直線経路として延びている。概して、マイクロ流体チャネル120は、試料が試料コンパートメントからカートリッジ100の長さに沿ってカートリッジの第2の端部104に引き寄せられることを可能にする。マイクロ流体チャネル120は、液体を保持するように構成されている。幾つかの例では、マイクロ流体チャネル120は矩形断面を有しており、その寸法は、約50~1000μm×約5~200μmである。他の例では、マイクロ流体チャネル120の断面は、断面積が同等である他の適切な形状であってよい。幾つかの例では、マイクロ流体チャネル120に沿っての試料の送り出しを支援する為に、フローサイトメトリ装置によって、わずかな正圧(例えば、1~2psi)が試料ロード用開口部又はベント114にかけられてよい。
【0073】
2つの流れ調節チャネル122(本明細書では合理化流路とも呼ばれる)が両方ともマイクロ流体チャネル120と流体連通している。図に示すように、両方の流れ調節チャネル122が、ポート126、126’に終点がある、流れ調節チャネルの第1の端部124、124’を含む。この第3のポート126及び第4のポート126’は、(ガスケット又は他の封止材を介して)選別装置内の流体源につながっていてよい。従って、流体ポート126、126’は、2つの対称な流れ調節チャネル122、122’を、フローサイトメトリ装置内に保持されている流体リザーバと結合していてよく、これによって、検出及び選別の為に、試料コンパートメント110からカートリッジのマイクロ流体チャネルに沿って移動する試料に流体を集中させることが適用される。流れ調節チャネルは、交点領域121において主チャネル120に集まっている。図に見られるように、2つの流れ調節チャネル122、122’は、マイクロ流体チャネル120に対して対称に配置されている。この例では、2つの流れ調節チャネルは更に、断面積がマイクロ流体チャネル120とほぼ同じである。別の例では、2つの流れ調節チャネル122は、断面積がマイクロ流体チャネル120と異なってよい。運用時には、流体は、2つの流れ調節チャネルを通って送り出されて、試料がマイクロ流体チャネル120に沿って流れる際に、試料をマイクロ流体チャネル120に沿ってセンタリングすることが可能である。2つの流れ調節チャネルを流体が別々の流量で動くことが可能であろうが、2つの流れ調節チャネルは、流量が同じであることがより一般的である。2つの流れ調節チャネルの流量は、マイクロ粒子が一度に1つずつ、マイクロ流体チャネル120を1列になって動くように調節されてよい。本明細書に記載のカートリッジはいずれも、流れ調節チャネルを含まなくてよい(マイクロ粒子を正しく選別する為には、1つ以上の流れ調節チャネルは必須ではない)。
【0074】
典型的には、2つの流れ調節チャネルとマイクロ流体チャネル120との交点を過ぎてすぐの場所に検出器領域150(図8)が配置される。検出器領域150は、カートリッジを通しての光学的検出を可能にするように構成されてよい。従って、この領域(及び/又はカートリッジ全体)は、検出に用いられる波長に対して透明であってよい。従って、検出器領域150は、カートリッジがフローサイトメトリ装置と係合したときにフローサイトメトリ装置の検出器と位置合わせされる、光学的に透明な領域であってよい。検出器領域150は、マイクロ流体チャネル120に沿ってこの領域を通過するマイクロ粒子を検出して、それらが所定の特性(例えば、サイズ、形状、光学的特性、その他)を有するかどうかを判定することを可能にするように構成されてよい。そして、フローサイトメトリ装置の検出器で検知される各マイクロ粒子の情報は、そのマイクロ粒子が所定の特性を有するかどうかに基づくものであってよく、この情報によって、流体流を一時的に第2のポート130(入口ポート)、従って、定量供給流路に振り向けることが制御され、これによって、識別されたマイクロ粒子が上述のように出口流路134に進路変更されて収集される。
【0075】
選別装置では、検出器がマイクロ粒子をインタロゲートする時刻と流体流を振り向ける時刻との間に遅延が設けられてよい。選別装置は、カートリッジの特定のジオメトリに基づくこの遅延に合わせて動作するように構成されてよい。
【0076】
図4A及び5に示されるように、第2の流体ポート130が定量供給流路131に流れ込んでおり、定量供給流路131は、2つの流れ調節チャネル122の交点より遠位側に、マイクロ流体チャネル120に沿って位置する選別領域133においてマイクロ流体チャネルと遭遇する。第2のポート130は、対応するフローサイトメトリ装置に結合するように構成されており、選別領域は更に、マイクロ流体チャネル120と流体連通している定量供給流路134に開口している。定量供給流路134の終点は液滴定量供給ポート136である。運用時には、マイクロ粒子が所定の特性を有していると判定された場合に、流体(例えば、緩衝剤、生体媒質)がフローサイトメトリ装置によって、あらかじめ計算された流量で第2の(入口)ポートに振り向けられて、マイクロ粒子を定量供給流路134に入れ、液滴定量供給ポート136から出して、収集容器に入れることが可能である。マイクロ粒子が所定の特性を有していないと判定された場合には、第2のポート130を通ってカートリッジに入る流量が選別装置によってストップされてよく、これにより、(「拒否された」マイクロ粒子を含む)流れが、第1の(廃棄物)ポート140に向かう、マイクロ流体チャネル120の延長部である廃棄物流体経路915に流入することが可能になる。廃棄物流体経路の、第1のポートと連通している部分は、直径が大きくなっていてよく、これは図8、9A、及び9Bに詳細に示されている。幾つかの例では、入口流路131は、断面積がマイクロ流体チャネル120の断面積より大きい。より具体的には、入口流路130の断面積は、マイクロ流体チャネル120の断面積の約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、30倍、50倍などである。図から分かるように、試料収集チャネル(定量供給流路134)は、カートリッジの遠位端に向かって曲がって延びて、液滴定量供給ポート136につながってよい。
【0077】
第1のポート140は、廃棄物流路915の廃棄物出口144につながってよい。第1の(廃棄物)ポート140は、フローサイトメトリ装置と結合されてよい。フローサイトメトリ装置は、第1のポート140を通して、これも絶え間なく圧力(例えば、負圧)をかけてよい。概して、第1のポート140は、断面の直径が第2のポート130以上であってよい。
【0078】
図7A及び7Bは、図4A~6に示された変形形態と似ているが、例示的寸法を含んでいる。
【0079】
図8は、合理化流体経路805、805’とマイクロ流体チャネルとの関係を示す。具体的には、第3のポート801及び第4のポート801’が示されていて、これらは、上面(最上面)において、カートリッジの長くて薄いボディの中線を通る長軸801に対して角度α(約20~60度)で配置されている。第3のポート(流体合理化ポート)及び第4のポート(流体合理化ポート)は、第1の(廃棄物)ポート140から距離811(約14~16mm)の間隔を置いて配置されてよい。これらの合理化流体経路は、第3及び第4のポートにつなげられてよく、交点領域844においてマイクロ流体チャネル120と対称に交差してよい。
【0080】
図9A及び9Bでは、カートリッジの遠位端の、それぞれ、断面図及び断面斜視図が、廃棄物(第1の)ポート140と定量供給(第2の)ポート130との空間的な関係を示す。この例では、第1のポートの直径903が、第2のポート911の直径より大きい(例えば、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍)。これら2つのポートは、中線長手軸801に沿って距離905だけ隔てられており、これは、典型的には1~3mmである。検出領域150は、マイクロ流体チャネルに沿って、第2のポートと、合理化流体経路805とマイクロ流体チャネル120との交点領域と、の間にある。この例では、液滴定量供給出口は、カートリッジの遠位端から延びるカニューレ869を含む。
【0081】
個別マイクロ粒子のグループ選別及び隔離
上述のように、本明細書に記載の方法及び装置はいずれも、個別マイクロ粒子(例えば、単一細胞又は細胞のグループ)の選別、又は選別と定量供給に使用されてよい。必要とされているのは、マイクロ粒子(例えば、細胞)を高速で(理想的には、毎秒100,000個を超える速度で)選別することが可能であって、更に、非常に希少なマイクロ粒子(例えば、がん患者の血液中の循環腫瘍細胞、或いは妊婦の血液中の循環胎児細胞)を隔離することも可能な、シンプルな装置である。このようなケースでは、希少細胞の頻度は、100万個に1個から10億個に1個である場合がある。これらの極めて希少な細胞を直接隔離することは、典型的には選別速度が低すぎる現行の細胞選別装置では達成できない。現在利用可能な選別方法では、細胞1103が選別装置の選別領域内を、照明及び検出1105の為にマイクロ流体チャネルの流動方向1107に、一列縦隊で1つずつ動くことが必要である(例えば、図11を参照)。これらの装置及び方法では、典型的には、各個別細胞が1つずつ、レーザでインタロゲートされて選別されるように、一列縦隊配置の各細胞の間隔が十分あることが必要である。このように「1つずつ」選別することで、細胞を選別する速度が大幅に制限される。本明細書に記載の細胞選別方法の幾つかの変形形態では、マイクロ流体チャネル内で細胞を1つずつではなくバルクで動かしてよい。細胞は、1つずつではなく、数百個又は数千個からなるグループとして連続的に集束レーザビームを通過することが可能であり、これによって、選別速度が劇的に高まる。例えば、図12を参照すると、レーザ照射源1205を含む検知領域を大規模な細胞グループ1202が通過する様子が概略的に示されており、この検知領域では、グループ内の細胞のうちの1つ以上が所定の特性を有するかどうかを判定する為に、1つ以上の検出器で細胞グループの同時インタロゲーションを行うことが可能でありうる。細胞をバルクで選別することにより、選別可能な細胞の数が劇的に増える。この方法は特に、極めて希少な細胞(例えば、循環腫瘍細胞、或いは循環胎児細胞)を隔離することに有用である。図12では、ほとんどの細胞(灰色)は、照射された際に蛍光信号を有しない、不要な細胞である。標的細胞の一例1209を、黒で着色して示す。標的細胞がインタロゲーション領域(レーザ1205)を通過すると、この細胞は強い蛍光信号を発生させうる。本明細書に記載の流動選別の方法及び装置を使用すると、標的細胞1209を単一液滴(例えば、約1μlの液滴)中に捕捉することが可能である。図13A及び13Bは、標的細胞の検出及び捕捉の様子を示す。簡単に言うと、図13Aでは、細胞のバルクが、マイクロ流体チャネルを流動方向1307に動いている。標的細胞が検出領域(レーザビーム1305)を通過すると、標的細胞は蛍光信号を発生させる。蛍光信号を発生させない(又は十分高い強度の信号を発生させない)不要な細胞(灰色の細胞)は、流動方向1307に通過し続ける。これに対し、検出領域1305内の細胞グループから蛍光信号が検出されると、選別装置は、分離(及び/又は定量供給)の為に試料出口流路1308を開いて、その細胞グループの進路を、試料出口流路1308に入るように変更する。後述されるように、任意の適切な弁(例えば、音響弁、電気/磁気弁等)が使用されてよいが、図13A及び13Bの例では流動弁が示されている。図13Bに示されるように、この例では、流動弁は注入流1311を(変形形態によっては短い遅延の後に)短時間開く。標的細胞が注入流エリア1313に入るときだけ弁が開くように、遅延が含まれ、計算されてよい。注入流1311は、標的細胞を、グループ内の隣接細胞とともに、ノズルから外に定量供給してよい。細胞選別が行われるが、完全な選別はまだ達成されていない。そして、更なる隔離ステップが実施されてよく、これは、ただちに(例えば、カートリッジの別の部分で、又は同じ検出領域に再度通して)、又は順次に、例えば別のカートリッジを使用して、実施されてよい。多少の不要な細胞(灰色の細胞)が標的細胞(黒色の細胞)に付いてくるとしても、多数の細胞を短時間で選別することが可能である。図13A及び13Bには、1つの層の細胞がマイクロ流体チャネルを通過する様子だけが示されている。実際には、複数の層の細胞が同時にマイクロ流体チャネルを通過することが可能であり、これによって、選別速度を更に高めることが可能である。例えば、マイクロ流体チャネルの寸法は、標的マイクロ粒子の直径の4倍超(幅)×標的マイクロ粒子の直径の2倍超(奥行)(例えば、約100μm×20μm、120μm×30μm、150μm×50μm、200μm×60μm等)であってよい。注入流路の直径は、例えば、150μmであってよい。未希釈血液は、典型的には、マイクロリットル当たり3×10個の赤血球を含む。未希釈血液試料がマイクロ流体チャネルを0.5μL毎秒の速度で通過すると、全体の選別速度は、3×10×0.5=1.5×10個毎秒になりうる。これは、現行の選別方法より10倍以上速い。マイクロ流体チャネルの断面が約150μm×50μmで長さが20mmの場合、流量が0.5μl毎秒に達するのに必要な圧力は約1psiでよい。注入流の直径がチャネルの幅(例えば、150μm)と同じであれば、全部で約3000個の不要な細胞が、必要な細胞と一緒に捕捉されることになる。このバルク選別方法では、純粋な細胞集団は得られないが、それでも、非常に希少な細胞の濃縮を非常に高速に行うことが可能である。得られたバルク選別試料を1つずつの選別により再度選別することによって、純粋な細胞の隔離を達成することが可能である。
【0082】
ここに記載されたバルク選別は、多数の不要な細胞の中から極めて希少な細胞を隔離することに好適である。標的細胞が希少であるほど、高い濃縮率を達成することが可能である。例えば、3×10個の赤血球を含む1mlの血液中に標的細胞が1個だけある場合、現行の選別方法(最大選別速度が100,000個毎秒)を用いると、これらの細胞を全て選別し終わるのに8時間を要するであろう。本明細書に記載のバルク選別を0.5μL毎秒で用いると、3×10個中に1個を3000個中に1個に濃縮するのに要する時間はわずか33分ほどであろう。これは、100万倍の濃縮を33分で行うことである。後続の1つずつの選別による単一標的細胞の隔離(例えば、本明細書に記載のように、合理化流体を使用して、且つ/又は単純に流体を十分希釈して、選別された細胞グループを検出マイクロ流体チャネルに通すことによる隔離)は、毎秒20個の細胞の選別速度であれば2分で行うことが可能であり、これは、バルク選別の間に各必要細胞に対して不要細胞が3000個しかない為である。最初の試料(例えば、1mlの血液)中の標的細胞の数が多いと、濃縮率が急激に低下する可能性がある。例えば、1mlの血液(3×10個の細胞)中にN個の標的細胞がある場合、濃縮率は1×10/Nである。循環がん細胞又は循環胎児細胞のいずれかの場合、典型的には、1mlの血液中の細胞はわずか数個である。従って、バルク選別により、10億個の細胞を10分で選別して100万倍の濃縮に達することが可能である。従って、本明細書に記載のバルク選別方法はいずれも、標的細胞の濃度(N)が非常に希少な場合(例えば、同時に選別される細胞のグループのサイズが、各グループに標的細胞が1つでも含まれることが希であるように十分に調整されている場合)に特に好適である。各グループに標的細胞が含まれる確率が高い場合には、本明細書に記載のバルク選別方法は有利ではないと考えられる。例えば、試料をそれぞれがx個のマイクロ粒子からなる任意のグループに分けた場合、x個のマイクロ粒子からなる各グループが標的細胞を有する確率が約zパーセントであれば、本明細書に記載のバルク選別手法を適用することが有利であると考えられ、zパーセントは50%未満(例えば、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満等)である。典型的には、標的細胞が希少であるほど、濃縮率の増え幅が大きくなる。
【0083】
バルク選別速度を更に高めることが可能であり、これは、マクロ流体チャネルにかけられる圧力を単純に増やすこと、及び/又は、マイクロ流体チャネルの長さを減らすことによって可能である。(検出/検知領域を含む)マイクロ流体チャネルの長さを20mmから10mmに減らすと、流量を1μL毎秒に増やすことが可能である。従って、細胞の選別速度は毎秒300万個に増える。或いは、マイクロ流体チャネルの寸法を変更せずに、圧力を1psiから2psiに増やすことによっても、細胞の選別速度が毎秒300万個に増える。
【0084】
標的細胞に付いてくる不要な細胞の数は、注入流の断面積に比例しうる。注入流の断面積が小さいほど、グループ内の不要な細胞が少なくなり、従って、標的細胞に付いてくる不要な細胞が少なくなって、濃縮率が高くなる。
【0085】
図14は、本明細書に記載の、流体弁を使用してバルク選別を行うように構成されたマイクロ流体カートリッジの一例を示す。この例は、上述の、図4A~9Bに示された、取り外し可能なマイクロ粒子選別カートリッジによく似ている。比較すると、最も重要な違いは、図14に示されたバルク選別マイクロ流体カートリッジが、一列縦隊の細胞の選別に使用可能なシース流路を含まないことである(図8に示された合理化流体経路805、805’と比較されたい)。代替として、図4A~9に示された同じカートリッジが使用されてよいが、その場合、合理化流路からはいかなる流体も与えられない。
【0086】
既述のように、本明細書に記載のバルク選別手法は、任意の適切なタイプのマイクロ流体選別手法に適用されてよい。例えば、図15(出典はゾルド(Zold))に示された米国特許第4,175,662号(ゾルド(Zold))には、一列縦隊の方法で用いられるガスインパルス選別手法が記載されており、これは標的細胞を偏向するものであり、それは、電極ペア1520及び1518からガスインパルスを発生させて、チャネル1560の中央に流体力学的に集束された流体ストリームを偏向することによって行われる。粒子がチャネルの中央を1つずつ動いている為、個別粒子は、毎秒400~500ビードの選別速度で選別されるように偏向されてよい。この手法は、例えば、チャネルの中央をバルクで動く粒子グループを選別するように装置を構成することによって修正されてよい。この手法によって、選別速度を数百倍から数千倍にすることが可能である。米国特許第7,392,908号(フレージャー(Frazier))にも、流体力学的集束シース流体が記載されており、これは、各粒子がインパルス発生器によって選別されることが可能なように、選別チャンバの中央を流体が1つずつ動くようにするものである。フレージャー(Frazier)に記載のように粒子ストリームを選別の為に一列縦隊に方向付けるのではなく、本明細書に記載のように標的が検出されたときにバルクの粒子グループを通過させ、バルクの粒子全体をずらすことにより、たとえずれがインパルス発生器による場合でも、選別速度を数百倍から数千倍に高めることが可能である。
【0087】
同様に、米国特許第8,387,803号(トールスルンド(Thorslund))には、音響定在波を使用して、2つのチャネルの間で粒子を動かすことが記載されており、この場合も一列縦隊の粒子の使用が記載されている。図16(出典はトールスルンド(Thorslund))は、一列縦隊選別を用いるそのような装置の一構成を示している。1636が発生させる音響定在波を印加することによって、粒子の横方向の動きが達成された。粒子をバルクで動かせば、選別速度を数百倍から数千倍に高めることが可能である。
【0088】
いかなる種類のマイクロ流体選別装置でも、バルク選別のスループットは、マイクロ流体チャネル内をバルク粒子が動いている速度、並びに選別中の押し退け容積の大きさに依存しうる。バルク粒子がチャネル内を動く速度が高いほど、選別速度が高くなりうる。押し退け容積が大きいほど、選別速度が高くなりうる。押し退け容積が大きいほど、選別速度が高くなりうるのは、それだけ多くの粒子を押し退け容積に詰めることが可能な為である。本明細書に記載の変形形態のいずれにおいても、照明/検出サイズ(例えば、レーザビームスポット)は、粒子のグループが動くチャネル領域全体をカバーするように細長い形状であることが可能である。更に、レーザ強度を、細長い検出領域(例えば、レーザビームスポット領域)の全体にわたって均一に分散させることが可能である。これは、例えば、シルクハット形状のレーザビームを発生させることによって達成可能である。均一なレーザ強度は、マイクロ流体チャネルの壁によって引き起こされる内部屈折によっても発生させることが可能である。
【0089】
カートリッジの使用方法
本明細書に記載の方法は、バルク流体試料に含まれるマイクロ粒子を選別する方法であり、選別は、本明細書に記載のいずれかのカートリッジと選別装置(例えば、本明細書に記載のフローサイトメトリ装置)との組み合わせにより、マイクロ粒子の所定の特性に基づいて行われてよい。所定の特性は、サイズ、形状、固有モルフォロジ、蛍光強度、元々の光学品質又は実験室で後から導入された光学品質、その他であってよい。本明細書に記載のカートリッジ100を使用するマイクロ粒子選別方法のエレガントさ及びシンプルさは、使い捨て選別カートリッジ100の長さ方向のチャネル及び入口の固有の配置に基づいている。
【0090】
カートリッジ100は、流体媒質に含まれるマイクロ粒子の選別に使用されてよい。マイクロ粒子は、細胞、細胞の塊、又は他の粒子であってよく、有機的でも無機的でもよい。典型的には、マイクロ粒子は、500μm未満、50μm未満、5μm未満等である。
【0091】
概して、マイクロ粒子の選別方法は、流体試料にかけられる力の大きさを調節すること、並びに、流体チャネルを通る流体流量を調節することを通して力の方向性を調節することを含む。所定の特性を有するマイクロ粒子の選別と、その後の捕捉及び保持とを行うカートリッジの動作の概略フローチャートを図10に示す。概して、試料が最初に、ステップ401で、使い捨て選別カートリッジ100の試料ロード用開口部112から試料コンパートメント110に投入される。試料コンパートメント110は、約数マイクロリットル、数十マイクロリットル、又は数百マイクロリットルの試料を保持することが可能である。試料が試料コンパートメント110にロードされて運転が開始されると(ステップ403)、第1の入口140を通して主チャネル120に初期負圧がかけられてよい。その後、試料は、毛管動作が加わって、マイクロ流体チャネル120に沿って移動してよい。幾つかの例では、マイクロ流体チャネル120の最初の部分からの試料の送り出しを支援する為に、試料ロード用開口部112及び/又はベントにわずかな正圧をかけることが実現可能であってもよい。
【0092】
任意選択で、本方法は、いずれかのバルク選別を選択すること(例えば、マイクロ粒子のグループを選別するか、個別マイクロ粒子を選別するかを選択すること)を含んでよい。例えば、幾つかの変形形態では、マイクロ粒子は、検出器405を含むマイクロ流体チャネル内に一列縦隊配列で配置されてよい。流体試料がマイクロ流体チャネル120に沿ってカートリッジの第1の端部102からカートリッジの第2の端部104まで移動する際に、流体試料をマイクロ流体チャネル120に沿ってセンタリングする為に、(インタロゲートされるマイクロ粒子試料に応じて)緩衝剤、溶剤、又は生体媒質などの流体が、2つの流れ調節チャネル122から導入されてよい(ステップ405)。標的試料がマイクロ流体チャネル120を所望の流量で動くこと、並びに各マイクロ粒子が個々にマイクロ流体チャネル120に沿って動くことをもたらす流量を達成する為に、フローサイトメトリ装置に保持されているリザーバ(図示せず)が加圧されてよい。流体ネットワークの様々なチャネルを通る流体流量は、流体の初期流量、流体流量が既知である場合の初期点からの距離、並びに流体が流れているチャネルの断面の直径に基づいてよい。同様に、圧力の大きさが計算されてもよい。
【0093】
図から分かるように、主チャネル120に沿う単一場所に終点がある2つの流れ調節チャネル122は、主チャネル120に対する空間的配置が同一である。別の例では、2つの流れ調節チャネル122は、主チャネル120に対して非対称であってよく、且つ/又は長さが異なってよく、且つ/又は断面積が異なってよい。ここに示されている例では、2つの流れ調節チャネル122は、チャネル120に対して等しい鋭角を成す。ここに示されている構成では、2つの流れ調節チャネル122は、主チャネル120に対して約45°の角度を成す。この構成が好ましいのは、角度が45°より小さいか大きいと、チャネル120においてマイクロ粒子を適切にセンタリングすることができない可能性がある為である。更に、2つの流れ調節チャネル122の配置及び寸法が同一である為、1つの制御でこれらのチャネルを通る流量を制御することが可能であり、これによって、装置全体の制御及び/又はプログラムが更にシンプルになる。運用時には、2つの流れ調節チャネル122は、主チャネル120に沿って一度に1つのマイクロ粒子が移動するように、主チャネル120に等しい流体流を供給する。或いは、マイクロ粒子は、マイクロ流体チャネルをグループ単位で伝達されてよい(例えば、図12及び13A~13Bを参照)。
【0094】
既述のとおり、検出領域150は、2つの流れ調節チャネル122とマイクロ流体チャネル120との交点と、選別領域との間に位置する。マイクロ粒子の選別は、本装置を使用して、検出領域150で指示される(ステップ407)。フローサイトメトリ装置は、流体ストリーム内のマイクロ粒子がマイクロ流体チャネル120に沿って検出領域150を通過する際に、検出領域150から信号を受けて、それらをインタロゲートする(ステップ413)。検出器は、試料流体のストリームを連続的にモニタリングすることが可能であり、或いは流体試料の流量に基づいて離散的な期間だけモニタリングすることが可能である。照会されたマイクロ粒子が所定の特性を有することが検出器によって明らかにされると、本装置は、第2のポートを通り、定量供給流路に沿う流れを活性化することによって、そのマイクロ粒子を捕捉することが可能である(ステップ413)。本システムは、あるマイクロ粒子が試料レセプタクルに送られるかどうかを検出器が決定する時点と、フローサイトメトリ装置の制御装置が、そのマイクロ粒子を液滴定量供給ポートから定量供給する為に、第2のポートを開いて流体を通す時点との間に遅延時間があってよい。
【0095】
第1の(廃棄物)ポートは更に、所定の特性を有しないマイクロ粒子を引き込むように機能する。廃棄物経路は、マイクロ流体チャネルと1列に並んでおり(そうなっていなくてもよいが)、廃棄物ポートにつながっている。マイクロ粒子が廃棄物に移動することを意図されている場合には、マイクロ粒子は、選別領域を通って廃棄物流体経路に入り、廃棄物ポートから出る。所定の特性を有しないマイクロ粒子が定量供給流路に入るのを防ぐ為に、第1のポートにわずかな負圧がかけられてよい。廃棄物溶液を廃棄物ポートに運ぶ為に(ステップ425)、わずかな負圧(例えば、0.2~4psi)が連続的又は断続的にかけられてよい。
【0096】
所望の特性(例えば、蛍光)を有する粒子グループ又は単一粒子が、収集423、又は更なる処理(例えば、単一細胞又はより小さな細胞グループの隔離455、455’)の為に、試料出口流路419に向けられてよい。例えば、収集された試料は、更なる隔離の為に、同じカートリッジ又は別の(新たな)カートリッジ455に再ロードされてよく、これは、例えば、それらの試料を、一列縦隊方式405でマイクロ流体チャネルに通すことによって行われてよい。幾つかの変形形態では、試料を一列縦隊で通して液滴の定量供給時(419)に隔離する為に、試料は、第2のマイクロ流体チャネル455’に直接接続されてよい。
【0097】
上述のように、使い捨て選別カートリッジは、フローサイトメトリに使用される、現時点で利用可能なカートリッジに対し、多くの利点を有する。この使い捨て選別カートリッジは、シンプルである為、製造コストが比較的低くなる。流体経路上の様々な箇所でごくわずかの正圧及び負圧をかけることを連係させることにより、マイクロ粒子の混合物を、特定の特性に基づいて精密に選別することが可能である。従って、新しい試料での運転が必要になるたびにカートリッジを交換することが、コスト効率が良いであろう。
【0098】
本明細書において、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に(on)」あると言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接していてよく、或いは、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直接上に(directly on)」あると言及された場合、介在する特徴及び/又は要素は存在しない。又、当然のことながら、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている(connected)」、「取り付けられている(attached)」、又は「結合されている(coupled)」と言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接続されているか、取り付けられているか、結合されていてよく、或いは、介在する特徴又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に、「直接接続されている(directly connected)」、「直接取り付けられている(directly attached)」、又は「直接結合されている(directly coupled)」と言及された場合、介在する特徴又は要素は存在しない。そのように記載又は図示された特徴及び要素は、1つの実施形態に関して記載又は図示されているが、他の実施形態にも当てはまってよい。又、当業者であれば理解されるように、ある構造又は特徴が別の特徴に「隣接して(adjacent)」配置されていて、その構造又は特徴が言及された場合、その言及は、隣接する特徴と部分的に重なり合うか、隣接する特徴の下層となる部分を有してよい。
【0099】
本明細書において使用された術語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の限定を意図したものではない。例えば、本明細書において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、当然のことながら、「comprises(含む)」及び/又は「comprising(含む)」という語は、本明細書で使用された際には、述べられた特徴、手順、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであり、1つ以上の他の特徴、手順、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらの集まりの存在又は追加を排除するものではない。本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連付けられて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のアイテムのあらゆる組み合わせを包含するものであり、「/」と略記されてよい。
【0100】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方の(over)」、「上方の(upper)」などのような空間的に相対的な語句は、本明細書では、図面に示されるような、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明する場合に説明を簡単にする為に使用されてよい。当然のことながら、この空間的に相対的な語句は、使用時又は操作時の器具の、図面で描かれる向きに加えて、それ以外の向きも包含するものとする。例えば、図面内の器具が反転された場合、別の要素又は特徴の「下に(under)」又は「真下に(beneath)」あると記載された要素は、その別の要素又は特徴の「上に(over)」方向づけられることになる。従って、例えば、「下に(under)」という語句は、「上に(over)」及び「下に(under)」の両方の向きを包含しうる。本装置は、他の方向づけ(90度回転又は他の方向づけ)が行われてよく、それに応じて、本明細書で使用された空間的に相対的な記述子が解釈されてよい。同様に、「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」、「垂直方向の(vertical)」、「水平方向の(horizontal)」などの用語は、本明細書では、特に断らない限り、説明のみを目的として使用される。
【0101】
「第1の」及び「第2の」という語句は、本明細書では様々な特徴/要素(手順を含む)を説明する為に使用されてよいが、これらの特徴/要素は、文脈上矛盾する場合を除き、これらの語句によって限定されるべきではない。これらの語句は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別する為に使用されてよい。従って、本発明の教示から逸脱しない限り、第1の特徴/要素が後述時に第2の特徴/要素と称されてもよく、同様に、第2の特徴/要素が後述時に第1の特徴/要素と称されてもよい
【0102】
本明細書及び後続の特許請求の範囲の全体を通して、別段に記述しない限りは、「含む(comprise)」という後、及びその変形である「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などは、方法及び物品(例えば、装置(device)及び方法を含む構成及び装置(apparatus))において様々な構成要素が相互連帯して使用されてよいことを意味する。例えば、「含む(comprising)」という語は、述べられた全ての要素又はステップの包含を意味するものであって、他のあらゆる要素又はステップの排除を意味するものではないことを理解されたい。
【0103】
一般に、本明細書に記載の装置及び方法はいずれも、包括的であると理解されるべきであるが、構成要素及び/又はステップの全て又は一部が代替として排他的であってよく、且つ、様々な構成要素、ステップ、副構成要素、又は副ステップで「構成される(consisting of)」、或いは代替として「本質的に構成される(consisting essentially of)」と表現されてよい。
【0104】
実施例において使用される場合も含め、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているように、且つ、特に断らない限り、あらゆる数値は、「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語句が前置されているものとして読まれてよく、たとえ、その語句が明示的に現れていなくても、そのように読まれてよい。「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語句は、大きさ及び/又は位置を示す場合に、記載された値及び/又は位置が、妥当な予想範囲の値及び/又は位置に収まっていることを示す為に使用されてよい。例えば、数値は、述べられた値(又は値の範囲)の±0.1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±2%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±5%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±10%の値であってよく、他のそのような値であってよい。本明細書に記載のいかなる数値範囲も、そこに包含される全ての副範囲を包含するものとする。
【0105】
ここまで様々な例示的実施形態を説明してきたが、特許請求の範囲によって示される本発明の範囲から逸脱しない限り、様々な実施形態に対して、幾つかある変更のいずれが行われてもよい。例えば、記載された各種方法ステップが実施される順序は、代替実施形態では変更されてよい場合が多く、代替実施形態によっては、1つ以上の方法ステップがまとめてスキップされてもよい。装置及びシステムの様々な実施形態の任意選択の特徴が、実施形態によっては含まれてよく、実施形態によっては含まれなくてよい。従って、上述の説明は、主に例示を目的としたものであり、特許請求の範囲に明記されている本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0106】
本明細書に含まれる実施例及び具体例は、本発明対象が実施されうる具体的な実施形態を、限定ではなく例示として示す。言及されたように、他の実施形態が利用されたり派生したりしてよく、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的な、或いは論理的な置換又は変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書においては、個別に参照されてよく、或いは、「本発明」という言い方でまとめて参照されてよく、「本発明」という言い方で参照することは、あくまで便宜上であって、本出願の範囲を、実際には2つ以上が開示されていても、いずれか1つの発明又は発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。従って、本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、この、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように作られた任意の構成で置き換えてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものである。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の複数の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的な記載がない他の実施形態が明らかになるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ粒子をバルク選別する方法であって、
流体で囲まれたマイクロ粒子のグループを第1のスイッチの検出領域内まで通すステップと、
前記検出領域内で前記複数のマイクロ粒子を同時に検査して、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有する場合にこれを検出するステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有する場合には、前記マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通し、そうでない場合には、前記マイクロ粒子グループを前記第1のスイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップと、
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、一列縦隊配列で第2のスイッチに通し、前記第2のスイッチの検出領域に通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記第2のスイッチの検出領域内で検出された場合には、前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記第2のスイッチの第2の試料出口流路内まで通すステップと、前記マイクロ粒子グループ中の、前記所定の特性を有しないマイクロ粒子を前記第2のスイッチの廃棄物出口流路内まで通すステップと、によって実施される前記隔離するステップと、
を含む方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
本明細書に含まれる実施例及び具体例は、本発明対象が実施されうる具体的な実施形態を、限定ではなく例示として示す。言及されたように、他の実施形態が利用されたり派生したりしてよく、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的な、或いは論理的な置換又は変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書においては、個別に参照されてよく、或いは、「本発明」という言い方でまとめて参照されてよく、「本発明」という言い方で参照することは、あくまで便宜上であって、本出願の範囲を、実際には2つ以上が開示されていても、いずれか1つの発明又は発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。従って、本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、この、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように作られた任意の構成で置き換えてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものである。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の複数の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的な記載がない他の実施形態が明らかになるであろう。
〔付記1〕
マイクロ粒子をバルク選別する方法であって、
流体で囲まれたマイクロ粒子のグループを第1のスイッチの検出領域内まで通すステップであって、前記マイクロ粒子グループ内の複数のマイクロ粒子が、前記検出領域内で、前記検出領域を通る前記マイクロ粒子グループの流れの方向に垂直に隣接して配置されている、前記通すステップと、
前記検出領域内で前記複数のマイクロ粒子を同時に検査して、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有する場合にこれを検出するステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有する場合には、前記マイクロ粒子グループを試料出口流路内まで通し、そうでない場合には、前記マイクロ粒子グループを前記第1のスイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップと、
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、一列縦隊配列で第2のスイッチに通し、前記第2のスイッチの検出領域に通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記第2のスイッチの検出領域内で検出された場合には、前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記第2のスイッチの第2の試料出口流路内まで通すステップと、前記マイクロ粒子グループ中の、前記所定の特性を有しないマイクロ粒子を前記第2のスイッチの廃棄物出口流路内まで通すステップと、によって実施される前記隔離するステップと、
を含む方法。
〔付記2〕
前記スイッチは流動スイッチである、付記1に記載の方法。
〔付記3〕
同時に検査する前記ステップは、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有していて、前記スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップを含む、付記1に記載の方法。
〔付記4〕
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の前記流量を変化させる前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む流体を追加するか減らすステップを含む、付記3に記載の方法。
〔付記5〕
同時に検査する前記ステップは、前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有していて、前記スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップを含み、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路内まで通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給し、そうでなく、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記スイッチを介して前記廃棄物出口流路内まで通すステップを含む、付記1に記載の方法。
〔付記6〕
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、前記第1のスイッチを含む前記第2のスイッチに通すステップを含む、付記1に記載の方法。
〔付記7〕
前記マイクロ粒子グループを前記検出領域内まで通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを、前記スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含む、付記1に記載の方法。
〔付記8〕
前記廃棄物出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、前記試料出口流路に沿う流体流に対する抵抗より大きい、付記1に記載の方法。
〔付記9〕
前記マイクロ粒子グループは細胞のグループである、付記1に記載の方法。
〔付記10〕
前記検出される所定の特性は、形状、サイズ、及び蛍光強度のうちの1つ以上から選択される、付記1に記載の方法。
〔付記11〕
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体を所定の圧力又は圧力範囲まで加圧するステップを更に含む、付記1に記載の方法。
〔付記12〕
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を、前記第2のスイッチの前記試料出口から定量供給するステップを更に含む、付記1に記載の方法。
〔付記13〕
マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法であって、
流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを流動スイッチ内まで通すステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、前記流動スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記流動スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又は
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記流動スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給するステップであって、前記廃棄物出口流路内の静的流体圧力が前記試料出口流路内の静的流体圧力より低い、前記ステップと、
を含む方法。
〔付記14〕
前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、隔離流動スイッチに通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記隔離流動スイッチ内に存在する場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む前記流体が前記隔離流動スイッチ内をほぼ前記第4の流量で移動している場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子は前記隔離流動スイッチから定量供給される、前記隔離するステップを更に含む、付記13に記載の方法。
〔付記15〕
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを含む前記隔離流動スイッチに通すステップを含む、付記13に記載の方法。
〔付記16〕
前記少なくとも1つのマイクロ粒子を隔離する前記ステップは、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチを含む前記隔離流動スイッチに通すステップを含む、付記13に記載の方法。
〔付記17〕
前記マイクロ粒子グループを通す前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを、前記流動スイッチを収容するカートリッジに通すステップを含む、付記13に記載の方法。
〔付記18〕
前記廃棄物出口流路に沿う流体流に対する抵抗は、前記試料出口流路に沿う流体流に対する抵抗より大きい、付記13に記載の方法。
〔付記19〕
前記マイクロ粒子グループ中の前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有することを検出するステップを更に含む、付記13に記載の方法。
〔付記20〕
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の前記流量を変化させる前記ステップは、前記マイクロ粒子グループを囲む流体を追加するか減らすステップを含む、付記13に記載の方法。
〔付記21〕
前記マイクロ粒子グループは細胞のグループである、付記13に記載の方法。
〔付記22〕
前記マイクロ粒子グループ中の前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記所定の特性を有することを検出するステップを更に含み、前記所定の特性は、形状、サイズ、及び蛍光強度のうちの1つ以上から選択される、付記13に記載の方法。
〔付記23〕
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体を所定の圧力又は圧力範囲まで加圧するステップを更に含む、付記13に記載の方法。
〔付記24〕
前記流体が前記流動スイッチに入る前に前記流体の脱ガス処理を行うステップを更に含む、付記13に記載の方法。
〔付記25〕
前記マイクロ粒子グループを通す前記ステップは、細胞の複数の層を前記流動スイッチに通すステップを含む、付記13に記載の方法。
〔付記26〕
マイクロ粒子をバルク選別して定量供給する方法であって、
流体に囲まれたマイクロ粒子のグループを第1の流動スイッチ内まで通すステップと、
前記マイクロ粒子グループ中の少なくとも1つのマイクロ粒子が所定の特性を有していて、前記第1の流動スイッチ内に存在する場合に、前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体の流量を第1の流量から第2の流量に変化させるステップと、
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記第1の流動スイッチ内をほぼ前記第1の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを前記第1の流動スイッチを介して廃棄物出口流路内まで通すステップ、又は
前記マイクロ粒子グループを囲む前記流体が前記第1の流動スイッチ内をほぼ前記第2の流量で移動している場合には、前記マイクロ粒子グループを、前記第1の流動スイッチを介して、試料出口流路内まで通して、前記マイクロ粒子グループを前記試料出口流路から外に定量供給するステップと、
を含み、
前記廃棄物出口流路内の静的流体圧力が前記試料出口流路内の静的流体圧力より低く、 前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を前記マイクロ粒子グループから隔離するステップであって、前記試料出口から定量供給される前記マイクロ粒子グループを、第2の流動スイッチ又は前記第1の流動スイッチのいずれかを含む隔離流動スイッチに通すステップと、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子が前記隔離流動スイッチ内に存在する場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む流体の流量を第3の流量から第4の流量に変化させるステップと、によって実施され、これによって、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子を囲む前記流体が前記隔離流動スイッチ内をほぼ前記第4の流量で移動している場合に、前記所定の特性を有する前記少なくとも1つのマイクロ粒子は前記隔離流動スイッチから定量供給される、前記隔離するステップ
を更に含む、
方法。
【外国語明細書】