(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125442
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】マスク装具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023025
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】521070773
【氏名又は名称】稲留 万喜峰
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】稲留 万喜峰
(57)【要約】
【課題】 鼻とマスクとの間に空間を確保し、鼻及びその周辺部分のマスクとの接触面積を少なくするだけでなく、マスクに対する簡易な着脱が可能なマスク装具を提供する。
【解決手段】 マスク20に用いられるマスク装具10は細い鋼線により一体的に形成され、マスク装具10の中央上部を鋼線により逆U字状に形成した係止部12が構成し、このU字の凹部にマスク本体22の上端部22Bを挟み込み可能とする。係止部12の下端部分からは、係止部12を挟んだ両側にマスク当接部14が延び、マスク当接部14が利用者Hの顔と対向するマスク本体22の内面側部分22Aに接している。マスク当接部14の両端部分から一対の連接部18が顔方向に直線的に伸び、利用者Hの鼻Nと接し得る一対の接鼻部16に繋がる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の口と鼻およびこれらの周辺を覆い得るマスクに用いられるマスク装具であって、
マスクの端部に着脱可能に装着できる係止部と、
係止部に対して交差する方向に延び、利用者の顔と対向するマスクの内面側に接するマスク当接部と、
マスク当接部から離れて位置しかつ利用者の鼻と接し得る接鼻部と、
を含むマスク装具。
【請求項2】
マスク当接部が係止部を挟んで両側に延びると共に、直線的に伸びる連接部がマスク当接部と接鼻部との間を接続する請求項1に記載のマスク装具。
【請求項3】
合成樹脂材料あるいは金属材料により一体的に形成される請求項1又は請求項2に記載のマスク装具。
【請求項4】
鼻と接する弾性部材が接鼻部に装着された請求項1から請求項3のいずれかに記載のマスク装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔の皮膚にマスクが直接接するのに伴う利用者の負担を軽減し得るマスク装具に関し、特に不織布製のマスクを使用する際に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般にマスクは、利用者の鼻や口およびこれらの周辺を覆うものであり、医療従事者などが利用する他、花粉などを防ぐためや風邪をひいた際に利用されていた。しかし、最近の新型コロナウイルス感染からマスクが品薄状態となったりするほど、多くの人が日常生活で常時使用するようになっている。そして、マスクは、利用者の鼻や口およびこれらの周辺を覆うマスク本体のほか、このマスク本体の左右に設けられて利用者の耳に掛けられる耳掛け部を有した構造のものが一般的である。
【0003】
令和2年になってから上記の感染防止の観点から日常生活にてマスクが必需品となっているものの、マスクの内の特に不織布製のマスクの繊維質が皮膚に長時間当たることで、例えば不快感や汗による蒸れを生じるだけなく、過敏性皮膚炎等の発症リスクを生ずることがあった。
【0004】
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の懸念に伴って、通勤時だけでなく職場でも常時マスクを装着することを求められることが一般的になっている。この結果として、長時間のマスクの装着が必須となり、マスクの利用者にとって非常に煩わしく大変な負担ともなっていた。
【0005】
次に、従来技術のマスクについて説明する。
まず、下記特許文献1には、内側のシートと外側のフィルターシートを重ね、中央で2つの外側のフィルターシートを凸形状の外縁部で溶着してキャップ状の空間を形成し、内側のシートで鼻腔や口に当たらない開口部を形成するマスクが開示されている。特許文献2には、マスク本体1内側の鼻と口の間に当接する部分に鼻より高い棒状の仕切りパッド2を備えることで、口の周りの空間と鼻の周りの空間を分離するマスクが開示されている。
【0006】
特許文献3には、マスク本体20を2枚構成とし、1枚は通気性の高い不織布を用いた外側シート30で、もう1枚を鼻・口を挿入する開口部を有する高伸縮性の内側シートとするマスクが開示されている。特許文献4には、第1装着部11と第2装着部12を右側のつる106と左側のつる107に沿って移動させることで、覆い部20が鼻と口を覆う通常使用状態と覆い部20を鼻と口から離す待機使用状態とを得るマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-194203号公報
【特許文献2】特開2011-30809号公報
【特許文献3】特開2015-8767号公報
【特許文献4】実用新案登録3227832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記したこれら特許文献1~4によれば、鼻や口の周辺部分とマスクとの間に空間を確保できるものの、これら特許文献1~4の技術では構造が複雑となり、高コストとならざるを得ないだけでなく、簡易にマスクを交換することも困難であり、結果として一般に普及し難いものしかなかった。
【0009】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、鼻とマスクとの間に空間を確保し、鼻及びその周辺部分のマスクとの接触面積を少なくするだけでなく、マスクに対する簡易な着脱が可能なマスク装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、利用者の口と鼻およびこれらの周辺を覆い得るマスクに用いられるマスク装具であって、
マスクの端部に着脱可能に装着できる係止部と、
係止部に対して交差する方向に延び、利用者の顔と対向するマスクの内面側に接するマスク当接部と、
マスク当接部から離れて位置しかつ利用者の鼻と接し得る接鼻部と、
を含む。
【0011】
請求項1に係るマスク装具は、利用者の口と鼻およびこれらの周辺を覆い得るマスクに用いられ、マスクの端部に着脱可能に装着できる係止部を有するだけでなく、この係止部に対して交差する方向に延びるマスク当接部がマスクの内面側に接する構造となっている。また、マスク当接部から離れて位置する接鼻部が利用者の鼻と接し得ることとなる。
【0012】
したがって、本請求項のマスク装具鼻によれば、鼻およびその周辺部分とマスクとの間に空間を確保し、これら個所のマスクとの接触面積を少なくできる結果として、マスクの利用者の不快感や汗蒸れや長時間装着に起因する過敏性皮膚炎等の発症リスクを軽減することができる。
【0013】
他方、衛生上の観点からマスクをたびたび交換するような使い切りマスクの場合でも、マスクの端部に着脱可能に装着できる係止部をマスク装具が有していることから、マスク装具を使用済みのマスクから取り外して新たなマスクに簡易に再装着可能ともなる。
【0014】
以上より、本請求項に係るマスク装具は、鼻やその周辺部分とマスクとの間に確実に空間を確保し、これら鼻やその周辺部分のマスクとの接触面積を最小化できる。さらに、マスクに容易に着脱できるので、マスク装具を使用済みのマスクから取り外して、新たなマスクに再装着が可能となると共に、上記のように簡易な構造とされていることから低コストで製造可能ともなる。
【0015】
請求項2では、マスク当接部が係止部を挟んで両側に延びると共に、直線的に伸びる連接部がマスク当接部と接鼻部との間を接続する。このため、係止部を挟んで両側に延びるマスク当接部と接鼻部との間を直線的に伸びつつ接続する連接部が存在することで、接鼻部と相まって利用者の鼻およびその周辺部分を確実にマスクから離すことが可能となる。
【0016】
請求項3では、合成樹脂材料あるいは金属材料により一体的にマスク装具が形成される。このため、ともに低コストでマスク装具を製造可能な合成樹脂材料あるいは金属材料により一体的にマスク装具を製造することで、低コストで簡易な構造のマスク装具を確実に提供することができる。
【0017】
請求項4では、鼻と接する弾性部材が接鼻部に装着される。このため、弾性部材を介してマスク装具が鼻と接するので、鼻の皮膚が保護されるに伴い、マスクの利用者の不快感や汗蒸れや長時間装着に起因する過敏性皮膚炎等の発症リスクをより一層軽減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマスク装具によれば、鼻とマスクとの間に空間を確保し、鼻及びその周辺部分のマスクとの接触面積を少なくするだけでなく、マスクに対する簡易な着脱が可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマスク装具が適用されたマスクで口と鼻およびその周辺を覆っている利用者を示す側面図であって、マスクを一部破断した状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマスク装具が適用されたマスクで口と鼻およびその周辺を覆っている利用者を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るマスク装具が適用されたマスクの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るマスク装具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るマスク装具について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態のマスク装具10が適用されるマスク20は、
図1及び
図2に示すように、内面側部分22Aが利用者Hの口Mと鼻Nおよびこれらの周辺を覆い得る不織布により形成されたマスク本体22を有する他、このマスク本体22の左右に相互に対称形状の耳掛け部24が取り付けられていて、利用者Hの耳にこの耳掛け部24が掛けられる構造とされている。
【0021】
他方、
図3及び
図4に示すように、このマスク20に用いられるマスク装具10は、ワイヤー材などの細い金属材料とされる鋼線により一体的に形成されている。そして、マスク装具10の中央上部をこの鋼線により逆U字状に形成した係止部12が構成していて、このU字の凹部にマスク本体22の上端部22Bを挟み込むことが可能となっている。このため、この係止部12を用いることで、マスク本体22における中央の上端部22Bに、マスク装具10を装着できるようになっている。
【0022】
この係止部12の下端部分からは、
図3及び
図4に示すマスク当接部14が係止部12に対して交差する直交方向であって係止部12を挟んだ両側に延びていて、このマスク当接部14が利用者Hの顔Fと対向するマスク本体22の内面側部分22Aに接している。さらに、マスク当接部14の両端部分から連接部18がそれぞれ45度程度曲がって利用者Hの顔方向に直線的に伸びていて、利用者Hの鼻Nと接し得る一対の接鼻部16にそれぞれこれら一対の連接部18が繋がっている。このように連接部18がマスク当接部14と一対の接鼻部16との間を接続していることで、一対の接鼻部16がマスク当接部14から離れて位置するだけでなく、利用者Hの鼻Nの両側とこれら接鼻部16が確実に接し得るようになる。
【0023】
この結果として、接鼻部16が一対存在するのに伴って、マスク本体22に装着された本実施形態のマスク装具10は、これら一対の接鼻部16で利用者Hの鼻Nを挟むようになることで、利用者Hの顔Fに対するマスク装具10の位置が安定的に保持される。
【0024】
次に、本実施形態におけるマスク装具10の作用を以下に説明する。
本実施形態に係るマスク装具10は、利用者Hの口Mと鼻Nおよびこれらの周辺を覆い得るマスク20に用いられ、マスク本体22の上端部22Bに着脱可能に装着できる係止部12に対して直交する方向に両側に延びるマスク当接部14が、マスク本体22の内面側部分22Aに接している。また、直線的に伸びる連接部18がマスク当接部14と接鼻部16との間を接続しているのに伴い、マスク当接部14から離れて位置するこの接鼻部16が、利用者Hの鼻Nと接し得ることとなる。
【0025】
以上より、係止部12を挟んで両側に延びるマスク当接部14と利用者Hの鼻Nに接する接鼻部16との間を直線的に伸びて接続する連接部18が存在することで、接鼻部16と相まって利用者Hの鼻Nの周辺を確実にマスク本体22の内面側部分22Aから離すことが可能となる。
【0026】
したがって、マスク当接部14と接鼻部16との間で、鼻N及びその周辺部分とマスク20との間に空間を確保し、これら鼻N及びその周辺部分とマスク本体22の内面側部分22Aとの接触面積を最小化し、利用者Hの不快感や汗蒸れや長時間装着に起因する過敏性皮膚炎等の発症リスクを軽減することができる。
さらには、不織布とされるマスク本体22との間の隙間を閉じる機能を有する図示しない器具との併用をすることにより、呼吸空間の確保とともにメガネ装着時におけるくもり防止効果を高めることもできる。
【0027】
他方、衛生上の観点からマスクをたびたび交換するような使い切りマスクの場合でも、マスクの端部に着脱可能に装着できる係止部12をマスク装具10が有していることから、マスク装具10を使用済みのマスクから取り外して新たなマスクに簡易に再装着可能ともなる。
【0028】
以上より、本実施形態に係るマスク装具10は、鼻Nの周辺部分とマスク本体22との間に確実に空間を確保し、鼻N及びその周辺部分のマスク本体22の内面側部分22Aとの接触面積を最小化できる。さらに、マスクに容易に着脱できるので、マスク装具10を使用済みのマスクから取り外して、新たなマスクに再装着が可能となるだけでなく、上記のように簡易な構造とされていることから、低コストで製造可能ともなる。
【0029】
なお、上記実施形態では、マスク装具10が金属材料により一体的に形成されているが、具体的には、硬鋼線、ステンレス鋼線、ピアノ線等の鉄系合金による鋼線だけでなく、銅線、黄銅線、アルミニウム線等の他の金属材料であっても良い。さらにはマスク装具10は金属材料だけでなく、ポリアセタールやABS樹脂等の合成樹脂材料により一体的に形成しても良い。
【0030】
また、上記実施形態では、マスクのマスク本体を不織布としたが、他の材質としても良く、例えば、布やウレタン等によりマスク本体を形成しても良い。さらに、鼻と接する接鼻部にシリコン製の保護マット等の弾性部材を装着することもできる。このことで弾性部材を介してマスク装具が鼻と接するので、鼻の皮膚が保護されるようになる。
【0031】
他方、上記実施形態では、逆U字状に形成した係止部12の凹部にマスク本体22の上端部22Bを挟み込むこととしたが、係止部をマスク本体22に刺すことで、マスク装具10を装着するようにしても良い。
【0032】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、マスクの他にさまざまな産業分野に適用可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10 マスク装具
12 係止部
14 マスク当接部
16 接鼻部
18 連接部
20 マスク
22 マスク本体
24 耳掛け部
H 利用者
M 口
N 鼻
F 顔