(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125483
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】情報表示装置、情報処理装置、情報表示方法、情報処理方法、情報表示プログラム及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20220822BHJP
G09G 3/30 20060101ALI20220822BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G09G3/20 670J
G09G3/20 641P
G09G3/20 670H
G09G3/30 K
H04N5/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023082
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 茂
【テーマコード(参考)】
5C058
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
5C058AA13
5C058BA05
5C080AA07
5C080CC03
5C080DD03
5C080DD14
5C080DD26
5C080JJ02
5C080JJ05
5C080JJ07
5C380AA03
5C380AB31
5C380AB33
5C380AB34
5C380BA02
5C380BB21
5C380BD03
5C380CF13
5C380CF56
5C380CF57
5C380DA02
5C380DA39
5C380DA53
5C380EA02
5C380FA07
5C380FA19
5C380FA21
5C380GA17
5C380HA03
5C380HA06
(57)【要約】
【課題】発光素子の動作時間内において経時劣化による発光素子の輝度の低下を補正する場合に、発光素子の輝度が、要求に応じた輝度よりも低下するのを防ぐことを目的とする。
【解決手段】情報表示装置であって、複数の発光素子の発光により情報を表示する表示部と、発光素子に対して要求される目標輝度又は目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部と、発光素子の動作開始後に、発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために発光素子の出力量を目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、発光素子の動作開始時に、目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で発光素子を発光させる発光制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子の発光により情報を表示する表示部と、
前記発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部と、
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の前記動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御部と
を備える、情報表示装置。
【請求項2】
前記発光素子の経時劣化から予測される、前記動作開始後の所定のタイミングにおける目標残存輝度に基づいて、前記初期補正出力量を決定する初期補正出力量決定部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記初期補正出力量決定部により決定された前記初期補正出力量で前記発光素子を発光させる、請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記発光素子に対して要求される目標寿命をさらに取得し、
前記初期補正出力量決定部は、前記発光素子の経時劣化から予測される前記目標寿命における前記目標残存輝度に基づいて、前記初期補正出力量を決定する、請求項2に記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記初期補正出力量決定部は、
前記動作開始から前記目標寿命までの期間における前記経時劣化補正における発光輝度の出力量の変化率と、前記動作開始から前記目標寿命までの期間に実行される前記経時劣化補正の回数と、に基づいて、前記経時劣化補正により加速された輝度の低下の程度である加速劣化度を特定し、
前記加速劣化度に基づいて、前記初期補正出力量を決定する、
請求項3に記載の情報表示装置。
【請求項5】
前記発光制御部は、前記動作開始から前記経時劣化補正のタイミングまでに経過した経過時間における前記経時劣化から予測される表示輝度に基づいて、前記経時劣化補正のタイミングにおける、前記発光素子の出力量を補正する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報表示装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記経時劣化補正のタイミングと、前記経時劣化補正の回数と、をさらに取得し、
前記初期補正出力量決定部は、前記経時劣化補正のタイミングと、前記経時劣化補正の回数と、に基づいて、前記初期補正出力量を特定する、請求項2に記載の情報表示装置。
【請求項7】
前記経時劣化補正の回数が第1の回数である場合の前記初期補正出力量は、前記経時劣化補正の回数が前記第1の回数よりも多い第2の回数である場合の前記初期補正出力量よりも小さい、請求項6に記載の情報表示装置。
【請求項8】
情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部と、
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定部と
を備える情報処理装置。
【請求項9】
複数の発光素子の発光により情報を表示する表示ステップと、
前記発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得ステップと、
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の前記動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御ステップと
を含む、情報表示方法。
【請求項10】
情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得ステップと、
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定ステップと
を含む、情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部、及び
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の前記動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御部
として機能させるための情報表示プログラム。
【請求項12】
コンピュータを、
情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部、及び
前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定部
として機能させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置、情報処理装置、情報表示方法、情報処理方法情報表示プログラム及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光素子の発光により情報を表示する情報表示装置においては、発光素子の経時劣化により、発光素子の発光輝度が低下することが知られている。これに対し、特許文献1には、経時劣化に伴う発光輝度の低下を補うように、発光素子の発光光度を高める技術が開示されている。具体的には、発光素子の発光光度に対し、経時劣化後の相対発光量の逆数を乗じることにより得られる発光光量に応じた電流で発光素子を動作させることで、輝度の低下を補う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように発光輝度の電流値をより大きい値に補正した場合には、発光素子においては、設定された電流値に対応した経時劣化以上に劣化が進み、輝度の低下も加速する。これに対し、従来技術においては、このような電流値の補正に伴い加速する劣化を考慮した発光制御が行われていないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みなされたもので、発光素子の動作時間内において経時劣化による発光素子の輝度の低下を補正する場合に、発光素子の輝度が、要求に応じた輝度よりも低下するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の情報表示装置は、複数の発光素子の発光により情報を表示する表示部と、前記発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部と、前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の前記動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御部とを備える。
【0007】
本発明の他の形態は、情報処理装置であって、情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部と、前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定部とを備える。
【0008】
本発明の他の形態は、情報表示方法であって、複数の発光素子の発光により情報を表示する表示ステップと、前記発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得ステップと、前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の前記動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御ステップと、を含む。
【0009】
本発明の他の形態は、情報処理方法であって、情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得ステップと、前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定ステップと、を含む。
【0010】
本発明の他の形態は、情報表示プログラムであって、コンピュータを、情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部、及び前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記発光素子の動作開始時に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量で前記発光素子を発光させる発光制御部として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の他の形態は、情報処理プログラムであって、コンピュータを、情報表示装置に用いられる発光素子に対して要求される目標輝度又は前記目標輝度に換算可能な目標出力量を取得する取得部、及び前記発光素子の動作開始後に、前記発光素子の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために前記発光素子の出力量を前記目標輝度から定まる出力量よりも高くする経時劣化補正が少なくとも1回実行される場合に、前記目標輝度に対応した出力量よりも大きい出力量を前記発光素子の前記動作開始時の初期補正出力量として決定する初期補正出力量決定部として機能させるためのプログラムである。
【0012】
以上説明した本発明の構成によれば、発光素子の目標寿命までの動作期間内に少なくとも1回、経時劣化による発光素子の輝度の低下を補正する場合には、発光素子の運転開始時の初期補正出力量を、目標輝度に対応した出力量よりも大きい値に設定する。これにより、経時劣化以上の輝度の低下が生じた場合であっても、発光素子の輝度が、要求に応じた輝度よりも低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態にかかる情報表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】経時劣化テーブル経時劣化補正率テーブルのデータ構成例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る情報表示システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】発光素子の動作時間と表示輝度の関係の概念図である。
【
図9】設定補正率と加速劣化率の関係を示すグラフを示す図である。
【
図10】経時劣化補正の回数と、経時劣化と、加速劣化と、の関係を示すグラフを示す図である。
【
図11】経時劣化補正の回数と、加速劣化率の関係を示すグラフを示す図である。
【
図12】経時劣化後の残存輝度と加速劣化後の残存輝度の関係を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明者の知見)
まず、従来技術に対する発明者の知見について、
図8~
図12を参照しつつ説明する。
図8は、発光素子の動作時間と表示輝度の関係の概念図である。
図8のグラフの横軸は動作時間、縦軸は発光素子の表示輝度を示す。なお、表示輝度は、見かけの輝度であり、例えば、発光素子が発光した状態で測定される輝度である。一方、設定輝度は、当該輝度で発光するように設定される制御値(目標輝度)である。発光素子の経時劣化により表示輝度は低下するため、初期の時点では、表示輝度は設定輝度と同一の値となるが、時間の経過とともに、表示輝度は低下し、表示輝度と設定輝度の差分は大きくなっていく。以下においては、制御値と実際の輝度値とを区別すべく、このように表示輝度と設定輝度とを定義する。
【0015】
ここで、動作時間は、発光素子が動作を開始してからの経過時間である。グラフ上の実線L11は、従来技術に示される発光素子の動作開始後の発光輝度の時間変化を示す。発光素子が、設定輝度に応じた電流値に設定されて動作を開始すると、発光素子は、動作時間の経過と共に劣化し、表示輝度が低下する。実線L11の動作期間0~t1の間において、表示輝度の低下がみられる。以下においては、このような動作時間の経過に起因する発光素子の劣化を経時劣化と称し、経時劣化に伴う表示輝度の低下の程度を経時劣化率と称する。経時劣化率は、(式1)で定義される。すなわち、経時劣化率は、表示輝度の低下がない場合に最大値1.0となり、表示輝度の低下が進むにつれて0に近付く値である。なお、経時劣化率は、経時劣化の程度を示す指標値、すなわち経時劣化度の一例である。なお、経時劣化率は、発光素子の材質など発光素子の特性にもよるが、主として発光素子の動作電流に依存する。
(経時劣化率)=(経時劣化により低下した表示輝度)/(設定輝度)…(式1)
【0016】
さらに、経時劣化により低下した表示輝度を目標輝度に補正する技術が従来から知られている(例えば、特許第2532222号公報参照)。設定輝度まで表示輝度が上昇するように電流値を上げるというものである。この技術によれば、発光素子の経時劣化により表示輝度が低下した場合に、設定された電流値に対し経時劣化率の逆数を乗じた値を新たな設定値とすることで、表示輝度を目標輝度まで上げることができる。例えば、目標輝度が4300cd/m
2で、動作時間t1における経時劣化率が0.75だったとする。また、10mAの電流で4300cd/m
2の輝度が得られるとする。この場合、(式2)により、動作時間t1において発光素子に対して設定すべき補正電流値は、13.33mAとなる。
10mA×(1/0.75)=13.33mA …(式2)
以下においては、このように、経時劣化により低下した表示輝度を目標輝度になるように表示輝度の設定値を上げる補正を経時劣化補正と称する。動作時間t1において、電流値を10mAから13.33mAまで増加させることにより、
図8に示す実線L11のように、動作時間t1において、表示輝度を目標輝度まで上昇させることができる。その後の動作時間t2においても同様の考え方に基づき、経時劣化補正を行うことにより、表示輝度を目標輝度まで上昇させるというものである。このように、経時劣化補正の度に表示輝度を目標輝度に戻すことを目指したものである。
【0017】
これに対し、発明者は、経時劣化補正を行った場合には、発光素子をより高い電流で動作させることに起因して、発光素子が経時劣化以上の速度で劣化することを見出した。
図8に示す動作時間t1において経時劣化補正を行った場合には、動作時間t1以降において経時劣化以上に劣化が進むため、2回目の経時劣化補正では目標輝度まで表示輝度を上昇させることができない。この様子を示すのが点線L12である。このように、動作時間t1以降における表示輝度は、経時劣化から予測される表示輝度よりも低下する。
【0018】
以下、このように、経時劣化補正による電流値の上昇に起因した、経時劣化よりも加速した劣化を加速劣化と称する。また、加速劣化に伴う表示輝度の低下の程度を加速劣化率と称する。加速劣化率は、(式3)で定義される。加速劣化率は、加速劣化がない場合に最大値1.0となり、加速劣化が進むにつれて0に近付く値である。なお、加速劣化率は、加速劣化の程度を示す指標値、すなわち加速劣化度の一例である。なお、加速劣化率は、発光素子の特性にもよるが、主として発光素子の動作電流を増加させる(補正する)割合に依存する。
(加速劣化率)=(加速劣化により低下した表示輝度)/(設定輝度) …(式3)
【0019】
図9は、設定補正率と加速劣化率の関係を示すグラフである。
図9のグラフの横軸は設定補正率を示し、縦軸は加速劣化率を示す。ここで、設定補正率は、(式4)により得られる値であり、設定変更前後の発光素子の電流値(または発光素子の輝度値)から定まる値である。加速劣化率は、補正率が1.0の場合に最大値1.0となり、補正率が大きくなるにつれて0に近付く値である。
(設定補正率)=(設定変更後の電流値)/(設定変更前の電流値) …(式4)
図9の実線L2は、設定補正率と加速劣化率とのシミュレーションにより得られたものである。このように、加速劣化率は、設定補正率に基づいて、一意に定まることがわかった。
【0020】
図10は、経時劣化補正の回数と、経時劣化と、加速劣化と、の関係を示すグラフを示す図である。グラフの横軸は動作時間(hrs)、縦軸は残存輝度(cd/m
2)を示す。ここで、残存輝度は、経時劣化及び又は加速劣化に起因して表示輝度が低下した場合の、低下後の表示輝度である。なお、以下においては、発光素子の動作開始からx時間の時点を、単に「x時間の時点」と称する。
【0021】
図10のグラフには、発光素子の動作開始後に異なる回数の経時劣化補正を行った場合のそれぞれの残存輝度がプロットされている。なお、
図10のグラフ上の残存輝度を示す各点は、シミュレーションにより得られた値である。シミュレーションにおいては、
図9に示す設定補正率と加速劣化率の関係を利用している。シミュレーションにおいては、発光素子を設定輝度4300cd/m
2で6万時間動作させることとした。6万時間の間に経時劣化補正を行う回数を、1回、2回、3回、4回、・・・と変化させた場合の残存輝度を求めた。いずれの場合も、経時劣化補正は、等時間間隔で行うこととした。すなわち、例えば、経時劣化補正が1回の場合には、3万時間を1区間とし、3万時間の時点で1回の補正が行われるものとした。また、経時劣化補正が2回の場合には、2万時間を1区間とし、2万時間が経過する度、すなわち2万時間の時点と、4万時間の時点で経時劣化補正が行われるものとした。なお、
図10のグラフには、グラフの見やすさの観点から、経時劣化補正を行わない場合と、経時劣化補正を1回、2回、5回、9回行った場合を示し、3回、4回に対応したプロットは省略している。
【0022】
図10のグラフにおいて、点P0は、発光素子の動作開始時の設定輝度(目標輝度)を示す。「x」で示す点P10は、経時劣化補正が行われなかった場合の残存輝度を示している。四角で示す点P20、P21は、経時劣化補正が1回行われた場合の残存輝度を示している。三角で示す点P30、P31、P32は、経時劣化補正が2回行われた場合の残存輝度を示している。逆三角形で示す点P40、P41、P42、P43、P44、P45は、経時劣化補正が5回の場合の残存輝度を示している。丸で示す点は、P50~P59は、経時劣化補正が9回の場合の残存輝度を示している。
【0023】
図10において、経時劣化補正が行われなかった場合の6万時間の時点での残存輝度を示す点P10と点P0とを通る直線L3は、経時劣化に応じた残存輝度の低下の様子を示している。このように、経時劣化に対応した残存輝度は、時間に比例して低下する。経時劣化補正が1回行われた場合には、1回目の経時劣化補正が行われるまで、すなわち3万時間の時点までは、劣化の要因は経時劣化のみとなるため、残存輝度は、直線L3に沿って低下する。しかし、経時劣化補正が行われると、経時劣化補正に起因して、発光素子の劣化が加速する。3万時間の時点で経時劣化補正が行われると、以降は加速劣化が生じ、6万時間の時点での残存輝度は、点P21となる。すなわち、6万時間の時点での残存輝度は、点P10よりも低下する。
【0024】
経時劣化補正が2回行われた場合には、1回目の経時劣化補正まで、すなわち2万時間の時点までは、残存輝度は、直線L3に沿って低下するが、以降は、加速劣化が生じるため、直線L3を下回って残存輝度が低下する。この場合、6万時間の時点での残存輝度はP32となる。さらに、残存輝度P32は、経時劣化補正が1回の場合の残存輝度P21よりも低い値である。同様に、9回まで経時劣化補正の回数を増やしていったところ、6万時間の時点における残存輝度は、経時劣化補正の回数の増加に伴い低下した。
【0025】
経時劣化補正においては、例えば、5回経時劣化補正が行われる場合には、5回の補正それぞれにおいて異なる補正電流値が設定される。このため、各タイミングにおける経時劣化補正に対して、加速劣化の程度が異なってくる。このため、目標寿命までに複数回の経時劣化補正を行う場合には、各経時劣化補正に起因した加速劣化の累積が、目標寿命における加速劣化率となる。
【0026】
図11は、経時劣化補正の回数と、各回数における6万時間の時点での加速劣化率の関係を示すグラフを示す図である。経時劣化補正の回数が増えるほど、加速劣化率は減少する。しかしながら、加速劣化率が減少する程度は回数が増えるにつれて小さくなっており、経時劣化補正が5回以上では、加速劣化率はほぼ一定とみなせることがわかった。曲線L4は、最小二乗法により
図9のグラフのプロットから得られた近似式である。
【0027】
図12は、経時劣化後の残存輝度と加速劣化後の残存輝度の関係を概念で示すグラフを示す図である。
図12のグラフの横軸は動作時間(hrs)、縦軸は残存輝度(cd/m
2)を示す。以下、発光素子の目標輝度が4300cd/m
2、目標寿命が6万時間に設定されており、発光素子の経時劣化率から動作時間が6万時間の時点における経時劣化後の残存輝度が3000cd/m
2の場合を例に説明する。直線L51は、経時劣化に対応した残存輝度の時間変化を示している。直線L52は、加速劣化に対応した残存輝度の時間変化を示している。ここで、直線L52は、経時劣化補正を5回行う場合の加速劣化に対応した残存輝度の時間変化を示している。
【0028】
直線L51に示されるように、経時劣化に対応した、6万時間の時点での残存輝度が3000cd/m2であるところ、加速劣化が生じた場合には、直線L52で示すように、52000時間の時点で残存輝度が既に3000cd/m2まで低下してしまう。このため、発光素子に対し、目標寿命において残存輝度3000cd/m2という条件が要求される場合に、従来技術の経時劣化補正を行った場合には、この要求を満足することができない。このように、経時劣化補正を行うことにより、目標寿命を満足できず、発光素子の交換時期が早まってしまう。
【0029】
これに対し、発明者は、加速劣化に対応した目標寿命における残存輝度が、目標寿命(6万時間)において要求される残存輝度(3000cd/m
2)となるように、動作開始時点における設定輝度をより高い値とすることに想到した。以下、動作開始時点の設定輝度を初期設定輝度と称する。
図12に示す直線L53は、初期設定輝度S1を4300cd/m
2よりも高い値S2に補正した場合の、加速劣化に対応した残存輝度の時間変化を示している。このように、初期設定輝度をより高い値に補正することで、目標寿命(6万時間)において要求される残存輝度(3000cd/m
2)を満足することができる。以下、このように、初期設定輝度をより高い値にする補正を、初期補正と称する。以下に説明する情報表示装置は、初期設定輝度に対し初期補正を行う。なお、補正後の設定輝度S2をどのように決定するかについては、後に詳述する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる情報表示装置10の構成を示すブロック図である。情報表示装置10は、上述のように発光素子に対し経時劣化に応じた経時劣化補正を行う場合に加速劣化を加味した制御を行う。情報表示装置10は、制御部11と、記録媒体12と、表示部13と、ユーザI/F部14と、時計部15と、を備える。制御部11は、CPUとRAMとROM等を備えたコンピュータであり、記録媒体12やROMに格納される各種プログラムを実行する。
【0031】
記録媒体12は、各種情報及び各種プログラムを格納する。記録媒体12は例えば、経時劣化テーブル121及び経時劣化補正率テーブル122を格納する。
図2は、経時劣化テーブル121及び経時劣化補正率テーブル122のデータ構成例を示す図である。
【0032】
図2に示すように、経時劣化テーブル121は、動作開始からの経過時間、すなわち動作時間と、動作時間における経時劣化率Deとを対応付けて格納する。さらに、動作時間と経時劣化率Deの関係は、設定輝度により異なるため、経時劣化テーブル121には、複数の設定輝度それぞれについての、動作時間と経時劣化率Deとが対応付けて格納されている。制御部11は、経時劣化テーブル121を参照することにより、設定輝度と動作時間とに基づいて、動作時間における経時劣化率Deを特定することができる。なお、他の例としては、動作時間と経時劣化率の関係を示す関数が設定輝度毎に記録媒体12に格納されており、制御部11は、この関数を用いることにより、設定輝度と動作時間とに基づいて、動作時間における経時劣化率Deを特定してもよい。この場合には、記録媒体12に経時劣化テーブル121は格納されていなくてもよい。なお、経時劣化テーブル121には、発光素子131の特性と設定輝度に応じた値が格納されているものとする。
【0033】
経時劣化補正率テーブル122は、経時劣化率Deと経時劣化補正率Ceとを対応付けて格納する。制御部11は、経時劣化補正率テーブル122を参照することにより、経時劣化率Deから経時劣化補正率Ceを特定することができる。なお、前述の通り、経時劣化補正率Ceは、経時劣化補正に係る電流値の補正量の指標値である。経時劣化補正率Ceは、経時劣化率Deの逆数である。すなわち、経時劣化補正率Ceは、最小値を1とし、その値が高いほどより補正の程度が大きいことを示す。他の例としては、制御部11は、経時劣化補正率テーブル122を参照するのに替えて、経時劣化率Deの逆数を求めることにより、経時劣化補正率Ceを特定してもよい。この場合には、記録媒体12に経時劣化補正率テーブル122は格納されていなくてもよい。
【0034】
説明を
図1に戻す。表示部13は、複数の発光素子131とドライバ回路132とを備える。発光素子131は、LED(発光ダイオード:light emitting diode)である。表示部13に含まれる複数の発光素子131は、1色、2色又は3色のLEDであってもよい。ドライバ回路132は、発光素子131の発光を制御する。具体的には、ドライバ回路132は、制御部11から入力された電流値で、発光素子131を発光させる。ユーザI/F部14は、ユーザが指示を入力し、また、ユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、画像や音声の出力部及びユーザによる指示の入力部を備えている。時計部15は、時刻をカウントする。
【0035】
情報表示プログラム110は、情報表示装置10のコンピュータを、取得部111、初期補正出力量決定部112及び発光制御部113として機能させるためのプログラムである。取得部111、初期補正出力量決定部112及び発光制御部113の処理は、制御部11のCPUが情報表示プログラム110を実行することにより実現される。すなわち、以下において、取得部111、初期補正出力量決定部112及び発光制御部113が行うものとして記載する処理は、制御部11により実行される処理である。
【0036】
取得部111は、発光素子131に対して要求される目標輝度、目標寿命、目標残存輝度及び補正回数取得する。ここで、目標輝度は、動作開始時の設定輝度(初期設定輝度)と等しいものとする。本実施形態の取得部111は、目標輝度を取得するが、これに替えて目標輝度に換算可能な目標出力量を取得してもよい目標寿命は、発光素子131が動作可能な期間の終了時点である。目標残存輝度は、目標寿命における残存輝度である。補正回数については後述する。
【0037】
初期補正出力量決定部112は、発光素子131の初期補正出力量を決定する。ここで、初期補正出力量とは、発光素子131の初期、すなわち動作開始時の出力量であり、目標輝度に対応した目標出力量から補正された後の出力量である。本実施形態においては、出力量は、輝度で示すものとし、これを初期補正輝度と称する。ただし、出力量は、輝度又は輝度に換算可能な値であればよく、輝度に換算可能な電流値や電力量であってもよい。本実施形態の情報表示装置10においては、目標輝度に替えて、初期補正輝度が発光素子131に設定されることで、初期補正が行われる。
【0038】
ここで、初期補正輝度について説明する。
図12を参照しつつ説明したように、経時劣化と加速劣化による残存輝度が目標残存輝度を満足するためには、発光素子131の設定輝度、すなわち初期の設定輝度を目標輝度よりも高い値とすればよい。初期補正出力量決定部112は、この初期の設定輝度を初期補正輝度として求める。発光制御部113は、発光素子131の発光を制御する。以下、各部の処理について説明する。
【0039】
図3は、制御部11により実行される劣化補正処理を示すフローチャートである。
図4は、劣化補正処理の説明図である。劣化補正処理は、情報表示装置10の使用者や管理者などにより、使用開始にあたり電源が投入されたタイミングで実行される処理である。ここで、使用者とは、情報表示装置10の購入者であり、管理者は、情報表示装置10の販売側又は使用者側のメンテナンスを担当する人物である。なお、以下においては、
図10を参照しつつ説明したように、目標輝度Ls4300cd/m
2、目標寿命6万時間、経時劣化補正の回数(以下、補正回数と称する)が5回の場合を例に説明する。ここで経時劣化補正の5回目は5万時間のタイミングであり、6万時間は経時劣化補正の5回目からさらに1万時間経過後のタイミングである。
【0040】
まず、取得部111は、ユーザI/F部14を介して、目標輝度Ls、目標寿命Te、目標残存輝度Let及び補正回数を取得する(ステップS100)。目標輝度Ls、目標寿命Te、目標残存輝度Let及び補正回数は、いずれも、ユーザI/F部14を介して使用者や管理者などにより入力される。補正回数についてはユーザI/F部の設定画面において、情報表示装置10のメーカが推奨する5回をイニシャル設定として表示されるものとする。さらに、目標輝度Ls、目標寿命Te、及び目標残存輝度Letについてもイニシャル設定として表示されるものとする。イニシャル設定を活用するか、又は任意の値を入力するかは使用者の判断による。イニシャル設定値は購入者である使用者が自らの発注仕様(購入仕様)を購入の都度入力する手間を省くためのものである。即ち、少なくともイニシャル設定値は使用者の購入仕様に沿った内容でイニシャル設定されているものとする。なお、取得部111は、目標輝度Ls、目標寿命Te及び目標残存輝度Let及び補正回数を取得すればよく、取得方法は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、情報表示装置10は、通信部を備え、取得部111は、通信部を介して外部装置から、目標輝度Ls、目標寿命Te及び目標残存輝度Let及び補正回数を取得してもよい。
【0041】
ここで、補正回数について説明する。
図10及び
図11を参照しつつ説明したように、加速劣化の程度は、経時劣化補正の回数に依存する。一方で、情報表示装置10が販売された後で、経時劣化補正が行われるタイミングは設定されておらず、使用者又は管理者が任意のタイミングで任意の回数、経時劣化補正を行うことが想定されている。したがって、加速劣化率が最小(加速劣化の程度が最大)となる場合を基準として初期補正を行うのが好ましい。加速劣化率が最小となる場合に対応した初期補正が行われれば、経時劣化補正の回数が最大回数より少ない場合も、目標寿命において要求される残存輝度を満足できるためである。
【0042】
ところで、
図11を参照しつつ説明したように、加速劣化率は、経時劣化補正の回数が増加するほど減少する傾向にある。一方、目標寿命(6万時間)において要求される目標残存輝度(3000cd/m
2)は経時劣化率では0.7である。補正回数を決めるにあたっては、ヒトの目の視認性における輝度変化を識別できない変化率に留める必要がある。一般的にはヒトが識別できる輝度対比は0.05以上とされている。経時劣化率0.7は0.3の輝度の変化幅であることから、輝度対比0.05で除すると6段階の等間隔ステージとなる。即ち、経時劣化補正回数(輝度切替回数)は5回が最大と言える。
【0043】
経時劣化補正回数が6回以上から無限大(リアルタイム補正)まで増加すると、この増加に伴い目標寿命における残存輝度が減少し、設定された目標残存輝度である3000cd/m2との差が大きくなっていく。すなわち、残存輝度が、目標寿命における目標残存輝度(3000cd/m2)を満足できない。
【0044】
そこで、本実施形態の情報表示装置10においては、経時劣化補正が5回の場合を基準回数とし、基準回数がイニシャル設定として表示されることとした。なお、ここで、5回の経時劣化補正は、等時間間隔で行われるものと仮定した。
【0045】
続く、ステップS102~ステップS118の処理は、初期補正出力量を決定するための処理である。まず、初期補正出力量決定部112は、補正回数と目標寿命から、目標寿命までの動作期間を、補正回数に1を加えた数の区間に等分割する(ステップS102)。そして、初期補正出力量決定部112は、各区間の時間、すなわち区間動作時間を特定する。補正回数5回、目標寿命6万時間の場合、6万時間が6区間に等分割される。すなわち、区間動作時間は1万時間となる。これにより、6つの区間が生成される。本実施形態においては、動作開始から1万時間までを初期区間、1万時間から2万時間までを第1区間、2万時間から3万時間までを第2区間、3万時間から4万時間までを第3区間、4万時間から5万時間までを第4区間、5万時間から6万時間までを第5区間と称する。また、経時劣化補正のタイミングを補正タイミングと称する。さらに、1万時間を1回目の補正タイミング、2万時間を2回目の補正タイミング、3万時間を3回目の補正タイミング、4万時間を4回目の補正タイミング、5万時間を5回目の補正タイミングと称する。
【0046】
次に、初期補正出力量決定部112は、各補正タイミングにおける経時劣化率Dei(iは=1,…,n:nは補正回数)及び目標寿命における経時劣化率Detを特定する(ステップS104)。上記の例に係る1回目~5回目の補正タイミングに対しては、それぞれに対応した経時劣化率De1~De5が特定される。具体的には、初期補正出力量決定部112は、経時劣化テーブル121のうち、ステップS100で取得した目標輝度Lsのテーブルを参照することで、補正タイミング毎の経時劣化率De1~De5を特定する。経時劣化テーブル121から得られた経時劣化率De1~De5を
図4に示す。目標輝度4300cd/m
2、1回目の補正タイミング1万時間に対し、経時劣化率De1「0.95」が特定される。同様に、2回目の補正タイミング2万時間に対して、経時劣化率De2「0.90」が特定される。
【0047】
次に、初期補正出力量決定部112は、ステップS104において特定した、各補正タイミングの経時劣化率Deiに基づいて、各補正タイミングの経時劣化補正率Ceiを特定する(ステップS106)。具体的には、初期補正出力量決定部112は、経時劣化補正率テーブル122を参照し、ステップS104において特定した各補正タイミングの経時劣化率Deiに対応付けられている経時劣化補正率Ceiを各補正タイミングの経時劣化補正率Ceiとして特定する。
図4に示すように、例えば1回目の補正タイミングの経時劣化率De1から1回目の補正タイミングの経時劣化補正率Ce1が特定される。
【0048】
上記の例に係る1回目~5回目の補正タイミングそれぞれの経時劣化補正率Ce1~Ce5は、経時劣化率De1~De5それぞれに基づいて特定される。例えば、第1回目の補正タイミングの経時劣化率De1「0.95」に対し、経時劣化補正率Ce1「1.053」が特定される。同様に、2回目の補正タイミングの経時劣化率De2「0.90」に対し、経時劣化補正率Ce2「1.111」が特定される。
【0049】
次に、初期補正出力量決定部112は、ステップS106において特定した、各補正タイミングの経時劣化補正率Ceiに基づいて、対応する各補正タイミングの補正電流値Ieiを特定する(ステップS108)。ここで、補正電流値Ieiは、経時劣化を補正するために設定される電流値である。初期補正出力量決定部112は、発光素子が目標輝度に対応した電流値に対し、各補正タイミングの経時劣化補正率Ceiを乗じることで、各補正タイミングの補正電流値Ieiを得る。
【0050】
例えば、目標輝度4300cd/m
2に対応した電流値が10mAであるとする。この場合、上記の例に係る1回目~5回目の補正タイミングそれぞれの経時劣化補正率に10(mA)を乗じた値が各補正タイミングの補正電流値Ie1~Ie5として特定される。
図4に示すように、例えば、1回目の補正タイミングの経時劣化補正率Ce1「1.0526」に10を乗じることで補正電流値Ie1「10.526mA」が特定される。同様に2回目の補正タイミングの経時劣化補正率Ce2「1.111」に10を乗じることで補正電流値Ie2「11.11mA」が特定される。
【0051】
次に、初期補正出力量決定部112は、ステップS108において特定した、各補正タイミングの補正電流値Ieiに基づいて、対応する各補正タイミングの区間補正率Heiを特定する(ステップS110)。ここで、区間補正率Heiとは、1回前の補正タイミングの補正電流値に対する、ある補正タイミングの補正電流値の割合である。すなわち、区間補正率Heiは、i回目の補正タイミングの補正電流値を(i-1)回目の補正タイミングの補正電流値で除した値であり、(式5)で定義される。
(区間補正率Hei)
=(補正電流値Iei)/(補正電流値Ie(i-1)) …(式5)
すなわち、ある補正タイミングの区間補正率Heiは、当該補正タイミングの補正電流値とその直前の補正タイミングの補正電流値とにおいて変化がない場合に最小値1.0となり、その差が大きくなるほど大きい値となる。
【0052】
上記の例に係る1回目~5回目の補正タイミングそれぞれの区間補正率He1~He5が特定される。
図4に示すように、例えば、3回目の補正タイミングの補正電流値Ie3は、3回目の補正タイミングの補正電流値を2回目の補正タイミングの補正電流値で除した値である。ただし、動作開始から1回目の補正タイミングまでは経時劣化補正が行われず、加速劣化がない。したがって、動作開始時の補正タイミングの区間補正率及び1回目の補正タイミングのHe1はいずれも「1.0000」となる。
【0053】
区間補正率He1は、初期区間における電流補正の程度を表すが、1回目の補正タイミングまでの電流は目標輝度に応じた電流値(上記例では10mA)のままであることから、1回目の補正タイミングにおける区間補正率He1は1.0000の固定値となる。その後、1回目の補正タイミングで補正電流値Ie1の10.526mAに調整され、第1区間がスタートする。
【0054】
2回目の補正タイミングの区間補正率He2について説明する。区間補正率He2は第2区間の電流補正の程度を表す。第2区間は補正電流値Ie2でスタートする。区間補正率He2は、(式5)に基づき、(式6)から1.0556となる。なお、3回目以降の補正タイミングの区間補正率Heiは、区間補正率He2と同様に特定することができる。
He=(Ie2)/(Ie1)
=11.111/10.526
=1.0556 …(式6)
【0055】
次に、初期補正出力量決定部112は、ステップS110において特定した、各補正タイミングの区間補正率Heiに基づいて、対応する各補正タイミングの区間加速劣化率Keiを特定する(ステップS112)。区間加速劣化率Keiは、区間補正率Heiの電流値の補正(電流値の増加)に起因した発光素子の劣化の程度である。区間補正率Heiと区間加速劣化率Keiとの関係は、
図9を参照しつつ説明した、設定補正率と加速劣化率との関係に一致する。そこで、初期補正出力量決定部112は、
図9を参照しつつ説明した、設定補正率と加速劣化率との関係に基づいて、区間加速劣化率Keiを求める。より具体的には、初期補正出力量決定部112は、
図9に示すグラフに対応した関数を利用して、設定補正率に区間補正率Heiを代入することで、得られる加速劣化率を区間加速劣化率Keiとして得る。
【0056】
上記1回目~5回目の補正タイミングそれぞれに対して、区間加速劣化率Ke1~Ke5が特定される。
図4に示すように、例えば、1回目の補正タイミングにおける区間補正率He1は「1.0000」の固定値であることから、区間加速劣化率Ke1は「1.000」である。2回目の補正タイミングの区間加速劣化率Ke2は、区間補正率He2「1.0556」より「0.9377」と特定される。3回目の補正タイミングの区間加速劣化率Ke3は、区間補正率He3「1.0589」より「0.9342」と特定される。
【0057】
次に、初期補正出力量決定部112は、ステップS112において特定した、各補正タイミングの区間加速劣化率Keiに基づいて、対応する各補正タイミングの累積加速劣化率Aeiを特定する(ステップS114)。区間加速劣化率Keiは、(i-1)回目の補正タイミングからi回目の補正タイミングまでの期間における加速劣化率であるのに対し、累積加速劣化率Aeiは、動作開始からi回目の補正タイミングまでの期間における加速劣化率である。初期補正出力量決定部112は、(式7)により、累積加速劣化率Aeiを特定する。
(累積加速劣化率Aei)
=(累積加速劣化率Ae(i-1))×(区間加速劣化率Kei) …(式7)
すなわち、i回目の補正タイミングにおける累積加速劣化率Aeiは、(i-1)回目(直前)の補正タイミングの累積加速劣化率Ae(i-1)にi回目の補正タイミングの区間加速劣化率Keiを乗じた値である。
【0058】
累積加速劣化率Aeiは、(i-1)回目の補正タイミングにおける累積加速劣化率Ae(i-1)及びi回目の補正タイミングにおける区間加速劣化率Keiがともに「1.0000」の場合に、最大値「1.0000」となり、区間加速劣化率が大きくなるにつれて0に近付く値である。累積加速劣化率Aeiは、補正タイミング間の各区間における発光素子の補正電流に依存する。
【0059】
累積加速劣化率Aeiは、経時劣化補正を行った場合に、発光素子をより高い電流で動作させることに起因して、発光素子が経時劣化以上の速度で劣化する程度を示す指標値、すなわち加速劣化度の一例である。
【0060】
1回目の補正タイミングにおける累積加速劣化率Ae1について説明する。動作開始から1回目の補正タイミングまでの期間では、電流は設定値のままである。したがって、1回目の補正タイミングにおける区間加速劣化率Ke1は、「1.0000」である。また、1回目の累積加速劣化率Ae1は経時劣化率De1である。
【0061】
上記の例に係る1回目~5回目の補正タイミングに対しては、それぞれに対応した累積加速劣化率Ae1~Ae5が特定される。例えば、1回目の補正タイミングの累積加速劣化率Ae1は、経時劣化率De1と等しいことから「0.9500」となる。また、2回目の補正タイミングの累積加速劣化率Ae2は、(式7)を利用し((式8)により)、「0.8908」となる。
(累積加速劣化率Ae2)
=(累積加速劣化率Ae1)×(区間加速劣化率Ke2)
=0.9500×0.9377
=0.8908 …(式8)
【0062】
ステップS114においては、初期補正出力量決定部112はさらに、n回目の累積加速劣化率Aenに対し、(式7)と同様の演算により、目標寿命における累積加速劣化率Aetを特定する。
(累積加速劣化率Aet)
=(累積加速劣化率Ae(n-1))×(区間加速劣化率Ken) …(式9)
なお、目標寿命においては電流値の補正は行われないことから、最後の補正タイミングの補正電流値に対する目標寿命までの動作時間における経時劣化率Deを区間加速劣化率Kenとして用いることとする。
【0063】
上記の例においては、目標寿命における累積加速劣化率Aetは、(式9)を利用し((式10)により)、「0.6669」となる。
(累積加速劣化率Aet)
=(累積加速劣化率Ae5)
×(13.333mA、動作時間(目標寿命)6万時間における経時劣化率Det(Ien))
=0.7171×0.93
=0.6669 …(式10)
【0064】
次に、初期補正出力量決定部112は、オフセット率Fsを特定する(ステップS116)。オフセット率Fsは、初期補正の程度に相当する値である。オフセット率Fsは、目標寿命における累積加速劣化率Aetに対する目標寿命における経時劣化率Detの割合であり、(式11)により求めることができる。ここで、経時劣化率Detは、設定輝度に対応した劣化率である。
Fs=Det/Aet ・・・(式11)
上記のように、経時劣化率Detが「0.70」、累積加速劣化率Aetが「0.6669」の場合には、オフセット率Feは、(式11)を利用し((式12)により)、「1.05」となる。
Fs=0.70/0.6669=1.05 …(式12)
【0065】
次に、初期補正出力量決定部112は、初期補正輝度Lscを特定する(ステップS118)。初期補正輝度Lscは、運転開始時の設定輝度であり、目標輝度(本来の設定輝度)に対して初期補正を行った後の値である。初期補正出力量決定部112は、目標輝度と、オフセット率Fsと、に基づいて、(式13)により初期補正輝度Lscを特定する。
Lsc=Ls×Fs …(式13)
上記のように、目標輝度4300cd/m2、オフセット率1.05の場合には、(式13)を利用し((式14)により)、初期補正輝度Lscは、4515cd/m2となる。
Lsc=4300(cd/m2)×1.05=4515(cd/m2) …(式14)
【0066】
次に、初期補正出力量決定部112は、初期補正輝度Lscを設定する(ステップS120)。すなわち、初期補正出力量決定部112は、初期補正輝度Lscを記録媒体12等の記録部に格納する。以上のように、初期補正出力量決定部112は、目標寿命における経時劣化率及び加速劣化率の関係に基づいて、初期補正輝度Lscを求めることができる。ここで、初期補正輝度Lscは、
図12に示す直線L53の点S2の設定輝度に対応する。
【0067】
図5は、動作制御処理を示すフローチャートである。発光制御部113は、ユーザI/F部14を介して開始指示を取得すると、動作制御処理を開始する。動作制御処理は、発光素子131の動作を制御する処理である。発光制御部113は、まず発光素子131の初期補正輝度Lscを設定し、初期補正輝度Lscでの発光(動作)を開始する(ステップS200)。上記の例のように、目標輝度として4300cd/m
2が与えられた場合には、発光素子131は、初期状態においては、4515cd/m
2で発光を開始する。
【0068】
次に、発光制御部113は、時計部15を参照し、動作開始からの経過時間、すなわち動作時間のカウントを開始する(ステップS202)。次に、発光制御部113は動作期間処理を行う(ステップS204)。動作期間処理は、動作期間中において、補正タイミングに経時劣化補正を行うよう制御する制御処理である。
【0069】
図6は、動作期間処理を示すフローチャートである。発光制御部113は、動作時間を参照し、当該処理の時点が補正タイミングか否かを判定する(ステップS300)。補正タイミングでない場合には(ステップS300でN)、発光制御部113は、動作期間処理を終了し、処理をステップS206(
図5)へ進める。補正タイミングの場合には(ステップS300でY)、発光制御部113は、経時劣化テーブル121を参照し、補正タイミングTmiにおける経時劣化率Deiを特定する(ステップS302)。例えば、
図4の例において、3回目の補正タイミング、すなわちTm3が「3万時間」の場合には、経時劣化率De3として「0.85」が特定される。
【0070】
次に、発光制御部113は、経時劣化補正率テーブル122を参照し、経時劣化率Deiに基づいて、経時劣化補正率Ceiを特定する(ステップS304)。例えば、経時劣化率De3が「0.85」の場合、経時劣化補正率Ce3として「1.176」が特定される。次に、発光制御部113は、初期補正輝度Lsc及び経時劣化補正率Ceiに基づいて、経時劣化補正輝度Lsciを特定する(ステップS306)。具体的には、発光制御部113は、初期補正輝度Lscに経時劣化補正率Ceiを乗じた値を、経時劣化補正輝度Lsciとして特定する。例えば、初期補正輝度Lscが「4515」、経時劣化補正率Ce3が「1.176」の場合には、(式14)により、経時劣化補正輝度Lsciとして「5310cd/m
2」が特定される。次に、発光制御部113は、経時劣化補正輝度Lsciを発光素子131の設定輝度として設定し、発光輝度を発光させ(ステップS308)、その後処理をステップS206(
図5)へ進める。
【0071】
図5のステップS206において、発光制御部113は、動作時間が目標寿命Teに達したか否かを判定する。目標寿命に達した場合には(ステップS206でY)、発光制御部113は、発光素子131の交換を報知し(ステップS208)、動作制御処理を終了する。目標寿命に達していない場合には(ステップS206でN)、発光制御部113は、処理をステップS204へ進める。なお、ステップS204の処理は、一定時間おきに実行されればよい。
【0072】
以上のように、発光素子131の動作開始後に、発光素子131の経時劣化に伴う輝度の低下を補うために、発光素子131の出力量(輝度、電流値等)を目標輝度から定まる出力量よりも高くする輝度補正が少なくとも1回実行されるとする。この場合、発光制御部113は、発光素子131の運転開始時に、目標輝度に対応した出力量よりも大きい初期補正出力量(初期補正輝度Lsc)で発光素子131を発光させる。これにより、本実施形態の情報表示装置10は、目標寿命までの運転期間内に経時劣化による発光輝度の低下を補正する場合に、発光素子の輝度が、要求に応じた輝度よりも低下するのを防ぐことができる。
【0073】
さらに、本実施形態の初期補正出力量決定部112は、目標寿命Teにおける目標残存輝度Letに基づいて、初期補正出力量を決定する。これにより、目標残存輝度Letを満たすような初期補正出力量を決定することができる。
【0074】
また、初期補正輝度Lscを加速劣化が生じても、輝度が目標輝度を下回らないようにするためには、例えば、初期補正輝度Lscよりも大きい輝度にすることも考えられる。しかしながら、初期補正輝度Lscを大きくし過ぎると、加速劣化が急激に進み、目標寿命Teにおける目標残存輝度Letを満足することができない。これに対し、情報表示装置10により決定された初期補正輝度Lscは、目標輝度Lsからの増加分は1割に満たない程度である。これにより、初期の輝度が高い値になったことに起因した加速劣化を無視できる程度に抑えることができる。さらには、このように、必要以上に輝度を高くしないことで、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0075】
さらに、初期補正輝度Lscを設定し、発光素子131の動作が開始した後は、従来と同様に経時劣化に応じた補正を行えばよいので、動作開始後の制御を変更する必要がない。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態に係る情報表示システム1の構成を示すブロック図である。第2の実施形態の情報表示システム1は、情報処理装置20と、情報表示装置30とを備えている。第2の実施形態においては、情報処理装置20が、情報表示装置30の表示部33の発光素子331の初期補正輝度Lscを決定し、これをユーザI/F部24としてのディスプレイに表示する。
【0077】
情報処理装置20は、制御部21と、記録媒体22と、ユーザI/F部24とを備える。記録媒体22は、経時劣化テーブル221及び経時劣化補正率テーブル222を格納する。経時劣化テーブル221及び経時劣化補正率テーブル222は、それぞれ第1の実施形態において
図1を参照しつつ説明した経時劣化テーブル121及び経時劣化補正率テーブル122と同様である。
【0078】
また、制御部21は、情報処理プログラム210を実行する。情報処理プログラム210は、情報処理装置20のコンピュータを、取得部211、初期補正出力量決定部212及び表示処理部213として機能させるためのプログラムである。取得部211及び初期補正出力量決定部212の機能は、それぞれ第1の実施形態の取得部111及び初期補正出力量決定部112の機能と同様である。制御部21は、第1の実施形態において説明した劣化補正処理のうちステップS100~ステップS118を実行する。そして、表示処理部213は、初期補正出力量決定部212により決定された初期補正輝度LscをユーザI/F部24としてのディスプレイに表示する。
【0079】
情報表示装置30は、制御部31と、記録媒体32と、表示部33と、ユーザI/F部34と、時計部35と、を備える。表示部33は、発光素子331と、ドライバ回路332と、を備える。情報表示装置30は、第1の実施形態の情報表示装置10とほぼ同様である。以下、情報表示装置30について、第1の実施形態の情報表示装置10と異なる点を主に説明する。
【0080】
制御部31は、情報表示プログラム310を実行する。情報表示プログラム310は、情報表示装置30のコンピュータを、発光制御部313として機能させるためのプログラムである。発光制御部313の機能は、第1の実施形態の発光制御部113の機能とほぼ同様である。
【0081】
第2の実施形態においては、使用者又は管理者等が情報処理装置20のディスプレイに表示された初期補正輝度Lscを確認し、これをユーザI/F部34としての入力部を介して情報表示装置30に入力する。これに対し、制御部31の発光制御部313は、初期補正輝度Lscを発光素子331の初期の設定値として設定する。その後は、発光制御部313は、第1の実施形態において
図5を参照しつつ説明した動作制御処理を実行することで、発光素子331の動作中の輝度の制御を行う。
【0082】
なお、他の例としては、情報処理装置20と情報表示装置30がネットワークを介して通信可能な場合には、情報処理装置20は、初期補正輝度Lscを情報表示装置30へ送信ししてもよい。この場合、情報表示装置30は、ネットワークを介して受信した初期補正輝度Lscを発光素子331に対して設定してもよい。
【0083】
第2の実施形態の情報表示システム1においても、目標寿命Teまでの運転期間内に経時劣化による発光輝度の低下を補正する場合に、発光素子の輝度が、要求に応じた輝度よりも低下するのを防ぐことができる。
【0084】
(変形例)
本実施形態においては、取得部111は、目標輝度Tsを取得することとしたが、目標輝度Tsに替えて、目標輝度Tsに換算可能な値を取得してもよい。ここで、目標輝度Tsに換算可能な値としては、電流値や電力値などが挙げられる。これらの値を取得した場合には、制御部11は、これらの値を目標輝度Tsに換算し、劣化補正処理を行えばよい。
【0085】
同様に、本実施形態に係る初期補正出力量決定部112は、発光素子131の初期の電流値を決定したが、決定される値は電流値に限定されるものではない。初期補正出力量決定部112は、表示輝度に換算可能な値を決定すればよく、例えば表示輝度を決定してもよい。この場合には、発光制御部113は、表示輝度を実現するための電流値で発光素子131を発光させればよい。表示輝度に換算可能な値としては、他には電圧や電力が挙げられる。
【0086】
本実施形態においては、発光制御部113は、初期補正出力量決定部112により決定された初期補正輝度Lscを設定することとした。ただし、発光制御部113は、目標輝度Lsよりも高い輝度を設定すればよく、設定される輝度は、初期補正輝度Lscに限定されるものではない。他の例としては、発光制御部113は、例えば、経時劣化補正を行う場合には、目標輝度に対し任意の値を乗じた値を初期補正輝度としてもよい。
【0087】
また、初期補正出力量決定部112は、所定のタイミングにおける目標残存輝度を満たすように初期補正出力量を決定すればよく、目標残存輝度に対応するタイミングは目標寿命に限定されるものではない。他の例としては、取得部111は、運転開始から目標寿命の半分の時点における目標残存輝度を取得し、初期補正出力量決定部112は、目標寿命の半分の時点における目標残存輝度に基づいて初期補正出力量を決定してもよい。
【0088】
劣化補正処理は、情報表示装置10の出荷前及び出荷後のいずれにおいて実行されてもよい。出荷前に劣化補正処理が実行される場合には、情報表示装置10は、発光素子131に対し、初期補正輝度Lscが設定された状態で出荷される。したがって、出荷後は、情報表示装置10は、従来の経時劣化補正に応じた制御を行えばよい。
【0089】
また、他の例としては、取得部111は、経時劣化補正のタイミングと経時劣化補正の回数とを取得し、初期補正出力量決定部112は、タイミングと回数とに基づいて、初期補正輝度を決定してもよい。経時劣化補正の回数が同じであっても、経時劣化補正のタイミングが異なる場合には、加速劣化の程度が異なることに対応したものである。さらに、この場合において、初期補正出力量決定部112は、補正回数が多いほどより大きい値を初期補正出力量として決定する。なお、初期補正出力量決定部112は、少なくとも第1の回数に対して決定される第1の初期補正出力量として、第2の回数に対して決定される第2の初期補正出力量よりも小さい値を決定すればよい。ここで、第2の回数は第1の回数よりも多い回数であるものとする。
【0090】
本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、他の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムで実現される方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…情報表示システム、10、30…情報表示装置、11、21、31…制御部、12、22、32…記録媒体、13、33…表示部、14、24、34…ユーザI/F部、15、35…時計部、20…情報処理装置、30…情報表示装置、110、310…情報表示プログラム、111、211…取得部、112、212…初期補正出力量決定部、113、313…発光制御部、121、221、321…経時劣化テーブル、122、222、322…経時劣化補正率テーブル、131、331…発光素子、132、332…ドライバ回路、210…情報処理プログラム、213…表示処理部