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  • 特開-大容量放水システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125488
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】大容量放水システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 99/00 20100101AFI20220822BHJP
   A62C 3/06 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A62C99/00
A62C3/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023093
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA04
2E189BA05
(57)【要約】
【課題】大型の屋外貯蔵タンク火災により効果的に消火活動を可能にすると共に、常駐する人員の数を削減可能にする大容量放水システムを提供する。
【解決手段】大容量送水車両1、送水ホース3、放射砲4、有線ドローン5およびドローン管理手段6を有する大容量放水システムであって、有線ドローン5が、大容量放水システムの略中央の上空50m以上の高さにおいて、送水ホース3および/または放射砲4から放射された放水範囲の通常映像および20倍以上の映像を撮影する手段を有し、得られた映像をドローン管理手段6に送り、監視可能にすることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大容量送水車両、送水ホース、放射砲、有線ドローンおよびドローン管理手段を有する大容量放水システムであって、前記有線ドローンが、前記大容量放水システムの略中央の上空50m以上の高さにおいて、前記送水ホースおよび/または放射砲から放射された放水範囲の通常映像および20倍以上の映像を撮影する手段を有し、得られた映像を前記ドローン管理手段に送り監視する、大容量放水システム。
【請求項2】
更に泡消火薬剤の混合手段を有する、請求項1に記載の大容量放水システム。
【請求項3】
前記有線ドローンが、少なくとも1500m先の映像を撮影する手段を有する、請求項1または2に記載の大容量放水システム。
【請求項4】
前記有線ドローンが、前記送水ホースおよび前記放水範囲の状況を並行して撮影する手段を有する、請求項1~3のいずれかに記載の大容量放水システム。
【請求項5】
前記ドローン管理手段が、前記放水範囲の状況がタンク火災消火のフットプリント理論に適合するかの判定機能を有する、請求項1~4のいずれかに記載の大容量放水システム。
【請求項6】
前記映像は、解像度が3840×2160ピクセルの4K画像である、請求項1~5のいずれかに記載の大容量放水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量放水システムに関し、大型の屋外貯蔵タンク火災を消火する大容量放水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油コンビナートや火力発電所に備えられた大型の屋外貯蔵タンクに火災が発生すると、大量の泡消火薬剤を長時間にわたり、かつ効果的に放射する消火活動が求められる。これに備え、常時、所定人数の消防隊を編成しておかなければならない。例えば、送水ホース200mごとに監視要員を配置することが求められ、大容量放水車両から放射砲まで敷設する送水ホースの長さが3000mのときは、送水ホースの監視要員に15人配置する必要があり、統括者、大容量放水車両(ポンプ)および放射砲の操作要員と共に、3交代制でこれら人員を常に確保するには多大な労力とコストがかかっている。
【0003】
一方、大型の屋外貯蔵タンク火災の消火方法として、泡放射フットプリント理論(例えば、特許文献1を参照)などが知られている。しかし、直径約100m、高さ約22mの屋外貯蔵タンク(浮き屋根式)に対し放射された泡消火薬剤が、タンク頂上においてどのような範囲に到達しているかを正確に把握することは極めて困難であり、統括者をはじめとする消防隊員の経験と判断に頼らざるを得ないのが現状である。
【0004】
このため、大型の屋外貯蔵タンク火災に対し消火活動をより効果的に行うと共に、常駐する人員の数を削減可能な大容量放水システムの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3448303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大型の屋外貯蔵タンク火災により効果的に消火活動を可能にすると共に、常駐する人員の数を削減可能にする大容量放水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成する大容量放水システムは、大容量送水車両、送水ホース、放射砲、有線ドローンおよびドローン管理手段を有する大容量放水システムであって、前記有線ドローンが、前記大容量放水システムの略中央の上空50m以上の高さにおいて、前記送水ホースおよび/または放射砲から放射された放水範囲の通常映像および20倍以上の映像を撮影する手段を有し、得られた映像を前記ドローン管理手段に送り監視することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の大容量放水システムによれば、大容量放水システムの略中央の上空50m以上、好ましくは80m以上の高さから有線ドローンが長時間にわたり連続して、通常映像または20倍以上の映像を撮影するにより、放射された水および泡消火薬剤がタンク頂上のどの範囲に到達しているかを時々刻々に把握することができ、消火活動をより効率的に行うことができる。また、送水ホースの上空から、結合の不具合や漏れを観察することができるので、送水ホースの保全のために配置する人員を削減することができる。
【0009】
大容量放水システムは、更に泡消火薬剤の混合手段を有することにより、大型の屋外貯蔵タンク火災に対処することができる。
【0010】
前記有線ドローンは、少なくとも1500m先、好ましくは2000m以上先の映像を撮影する手段を有するとよく、大容量放水車両から放射砲まで3000mの送水ホースが敷設された場合でも、送水ホースの上空から、結合の不具合や漏れを観察することができる。
【0011】
前記有線ドローンは、前記送水ホースおよび前記放水範囲の状況を並行して撮影する手段を有するとよく、送水ホースの状況と、泡消火薬剤の到達状況とを同時に把握することができる。
【0012】
前記ドローン管理手段は、前記放水範囲の状況がタンク火災消火のフットプリント理論に適合するかの判定機能を有することが好ましい。
【0013】
前記映像は、解像度が3840×2160ピクセルの4K画像であるとよく、送水ホースの状況および泡消火薬剤の到達状況をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の大容量放水システムの概要を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、更に詳しく本発明の大容量放水システムについて、図面(図1)を参照して説明する。
【0016】
大容量放水システムは、大容量送水車両1、送水ホース3、放射砲4、有線ドローン5およびドローン管理手段6からなり、泡消火薬剤搭載車両2および/または遠隔制御手段7および/または水中ポンプ8を有することができる。
【0017】
大容量送水車両1は、水中ポンプ8、消火栓等から供給された大量の水を、送水ホース3により、放射砲4へ送り、放射砲4から屋外貯蔵タンクT等の火災現場に向けて、水が放射される。重油等を貯蔵した屋外貯蔵タンクT等の火災に対しては泡消火薬剤を用いた消火が有効であり、大容量送水車両1は、泡消火薬剤搭載車両2から供給された泡消火薬剤と水とを混合する手段を有するとよい。この泡消火薬剤の混合手段は、通常の屋外貯蔵タンク火災に用いられるものであればよい。
【0018】
大容量放水システムは有線ドローン5を有し、有線ドローン5は、広範囲に展開される大容量放水システムにおける略中央の上空50m以上の高さ、好ましくは80m以上、より好ましくは100m以上の高さを、少なくとも消火活動の開始から終了までの間、飛行することができる。有線ドローン5を備えることにより、長時間にわたる連続飛行を可能にし、高鮮鋭の映像を時間差なく取得することができる。なお、有線ドローン5の飛行位置は、大容量放水システムの略中央の上空に限定されるものではなく、必要に応じ大容量送水車両1の上空から放射砲4の上空まで、敷設された送水ホース3にほぼ沿うように適宜、移動することができる。
【0019】
有線ドローン5は、大容量放水システムの略中央の上空から、送水ホース3の状況および/または放射砲4から放射された放水範囲を、通常映像および20倍以上の映像を撮影する手段を有する。上空50m以上の高さから撮影するため、映像は20倍以上、好ましくは25倍以上、より好ましくは30倍以上の倍率で撮影するのがよい。このような倍率で撮影することにより、送水ホース3の結合の不具合や漏れを観察することができる。また、送水ホース3の上空を飛んでいるときでも、水および泡消火薬剤が放射された範囲を詳細に観察することができる。
【0020】
有線ドローン5は、少なくとも1500m先の地上映像を撮影する手段を有することが好ましく、より好ましくは2000m以上の遠方、更に好ましくは2500m以上の遠方の映像を撮影する手段を有するとよい。このように遠方の撮影を可能にすることにより、大容量放水システムの略中央の上空から、大容量送水車両1および水中ポンプ8の付近から放射砲4までの状況を把握することができる。また、例えば有線ドローン5が、放射砲4の上空を飛行しているときでも、送水ホース3から大容量送水車両1までを観察することができる。
【0021】
有線ドローン5は、送水ホース3の上空および放射砲4の放水範囲の状況を並行して撮影する手段を有するとよい。より好ましくは、送水ホース3の上空および放射砲4の放水範囲の状況を同時に観察できるとよい。このような撮影手段としては、複数の撮影カメラを搭載することや広視野のレンズを備えたカメラを搭載する等、通常の行われる手段を用いることができる。
【0022】
得られた映像をドローン管理手段6に送り、ドローン管理手段6がこれを監視する手段を有する。ドローン管理手段6は、大型/小型の各種モニター、コンピュータおよびソフトウェアを用いた画像処理手段等により、監視することができる。その監視情報に基づき、遠隔制御手段7を介して、大容量送水車両1のポンプを操作したり、放射砲4を操作したりすることができる。また、送水ホース3の全長にわたる監視により、ホースの不具合や漏れを検知し迅速かつ的確に処置することができる。
【0023】
有線ドローン5からドローン管理手段6に送信される映像は、高鮮鋭のものが好ましく、例えば、解像度が1920×1080ピクセルの2K画像、3840×2160ピクセルの4K画像、7680×4320の8K画像が挙げられ、なかでも3840×2160ピクセルの4K画像がより好ましい。
【0024】
大容量放水システムは、コンピュータおよびソフトウェアを用いた画像処理手段等により、放射砲4の放水範囲が、タンク火災消火のフットプリント理論に適合するかの判定機能を有することが好ましい。その判定結果に基づき、遠隔制御手段7を介して、放射砲4を操作し放水範囲を調整したり、大容量送水車両1のポンプを操作し水量を調整することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 大容量送水車両
2 泡消火薬剤搭載車両
3 送水ホース
4 放射砲
5 有線ドローン
6 ドローン管理手段
7 遠隔制御手段
8 水中ポンプ
T 屋外貯蔵タンク
図1