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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125512
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】トルク検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
G01L3/10 301L
G01L3/10 301J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023128
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 顕秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩行
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において偏心誤差が抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた磁歪式トルクセンサを提供する。
【解決手段】励振回路9によりトルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が第一トルク検出部及び第二トルク検出部に各々入力され、出力処理回路10で第一トルク検出部及び第二トルク検出部から各々出力された出力信号をトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分波して取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理をおこなって専らトルク成分を検出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第一トルク検出部と、
前記被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第二トルク検出部と、
トルク感度が高く回転ノイズ成分も含まれるトルク検知用周波数F1とトルク感度は低く、回転ノイズ成分が大きく含まれるノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が前記第一トルク検出部及び第二トルク検出部に各々入力される励振回路と、
前記第一トルク検出部及び第二トルク検出部から各々出力された出力信号をトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分波して取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理を行なって専らトルク成分を検出する出力処理回路と、を含むトルク検出センサ。
【請求項2】
前記出力処理回路は、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2の差動処理を行なう前に、振幅演算処理回路によりトルク成分f1と回転ノイズ成分f2に含まれる回転ノイズ成分の振幅を合わせる演算処理が行われる請求項1記載のトルク検出センサ。
【請求項3】
前記第一トルク検出部は、第一コア及び第二コアを有し、前記第一コアに周方向に複数形成された第一ティースと前記第二コアに周方向に複数形成された第二ティースが積層されて前記第一ティース及び前記第二ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲にコイルが各々巻かれており、各コイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、
前記第二トルク検出部は、第三コア及び第四コアを有し、前記第三コアに周方向に複数形成された第三ティースと前記第四コアに周方向に複数形成された第四ティースが積層されて前記第三ティース及び前記第四ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲に巻かれたコイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が第二コアと第四コアが対向するように隣接配置されている請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【請求項4】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが同磁極に励磁される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトルク検出センサ。
【請求項5】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが異磁極に励磁される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトルク検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定誤差低減機能を有する磁歪式トルク検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸等の被検出体に作用するトルクを非接触で検出する方法として、磁歪式のトルク検出装置がある。例えば、歪みを検出する被検出体となる軸(シャフト)の表面に、磁歪特性を増加させる表面処理(たとえば、メッキまたは溝加工等)を施し、磁歪効果を測定することによってトルクを検出する。磁歪効果の測定は、シャフトと同軸に巻かれたコイルを配置し、インピーダンスの大きさに基づくビラリ効果により発生したシャフトの透磁率の変化を読み取ることによって行われる。
【0003】
例えば車両のトランスミッションとプロペラシャフトの間に設けられるトルク検出センサは、シャフトに取り付けられた磁歪環の磁界変化を磁気センサで検出して制御装置に出力し、シャフトに掛かるトルクを求める。このトルク検出センサの出力には、規則的ムラが生じている。具体的には図14のトルク波形図に示すように、無負荷状態で回転する場合においてもトルク成分に回転ノイズ成分が重畳するうえに、負荷状態で回転する場合にもトルク成分に回転ノイズ成分が重畳することを示している。この規則的ムラを取り除くため、シャフトの回転数及び磁気センサで検出されたトルク変動成分を共振回路に供給し、共振回路でトルク変動成分から規則的ムラ成分を取り出し、規則的ムラ成分を回転数若しくは回転角と対応させて、トルク検出センサで検出された検出トルクを補正するようになっている(特許文献1:特開2005-91296号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-91296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した磁歪式トルク検出センサにおいては、回転軸に生じたトルクの歪みによる磁気抵抗の変化をトルクに換算するものである。このため、回転軸の偏心や真円度の低下により、回転トルク計測時にトルク成分以外の不要信号(以下「回転ノイズ」という)が重畳して発生し、トルク計測精度が低下する。
このため、特許文献1に示すようにシャフトの回転数を検出して回転ノイズを除去する方法が提案されている。しかしながら、共振回路でトルク変動成分から回転ノイズを取り除くように補正しているが、回転数に同期するトルク成分まで取り除くことになり、トルク計測精度の向上を実現できない。
【0006】
トルク検出軸(シャフト)に用いられる軸材料は、励磁される周波数によってその材料ごとに周波数特性を有することが知られている。そこで、トルク検出軸の材料特性に準じたトルク感度が高い周波数と回転ノイズの影響を受けやすい複数周波数を重畳した励振用重畳信号の入力と出力信号からトルク成分と回転ノイズ成分を取り出して差動処理により回転ノイズ成分を可及的に除去できることを見い出して以下の発明を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において偏心誤差が抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた磁歪式トルク検出センサを提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第一トルク検出部と、前記被検出体の周囲に設けられた複数の環状コアと、該複数の環状コアから千鳥配置で複数突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電することにより励磁されたティースと対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される第二トルク検出部と、トルク感度が高く回転ノイズ成分も含まれるトルク検知用周波数F1とトルク感度は低く、回転ノイズ成分が大きいノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が前記第一トルク検出部及び第二トルク検出部に各々入力される励振回路と、前記第一トルク検出部及び前記第二トルク検出部から各々出力された出力信号をトルク検知用周波数F1‘成分とノイズ検知用周波数F2‘に分波して取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理を行なって専らトルク成分を検出する出力処理回路と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、励振回路によりトルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が第一トルク検出部及び第二トルク検出部に各々入力され、出力処理回路で第一トルク検出部及び第二トルク検出部から各々出力された出力信号をトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分波して取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理を行なって専らトルク成分を検出するので、トルク検知用出力信号からノイズ検知用出力信号を差動処理することで回転ノイズを除去して精度の高いトルク信号を抽出することができる。
【0009】
前記出力処理回路は、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2の差動処理を行なう前に、振幅演算処理回路によりトルク成分f1と回転ノイズ成分f2に含まれる回転ノイズ成分の振幅を合わせる演算処理が行われると、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理する際に回転ノイズ成分が可及的に除去され、トルク成分f1のみを精度よく抽出することができる。
【0010】
前記第一トルク検出部は、第一コア及び第二コアを有し、前記第一コアに周方向に複数形成された第一ティースと前記第二コアに周方向に複数形成された第二ティースが積層されて前記第一ティース及び前記第二ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲にコイルが各々巻かれており、各コイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、前記第二トルク検出部は、第三コア及び第四コアを有し、前記第三コアに周方向に複数形成された第三ティースと前記第四コアに周方向に複数形成された第四ティースが積層されて前記第三ティース及び前記第四ティースが周方向に千鳥配置で突設され、各ティースの周囲に巻かれたコイルに通電することにより励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成され、前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が第二コアと第四コアが対向するように隣接配置されていてもよい。
この場合被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を高精度で検出することができる。
【0011】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが同磁極に励磁されると、トルク検出部どうしを跨ぐ磁路が被検出体の軸心方向に形成されることはなく、検出感度を低下させることはない。
【0012】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、対称面を介して軸心方向に隣接するティースどうしが異磁極に励磁されると、トルク検出部どうしを跨ぐ磁路が被検出体の軸心方向に形成されるが、トルク検出には寄与しない磁路成分であるため、検出感度に影響しない。
【発明の効果】
【0013】
被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において回転ノイズが抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた磁歪式トルク検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の磁歪式トルク検出センサの正面図、右側面図、矢印Y-Y方向断面図及び斜視図である。
図2図1の複数のティースに巻かれたコイルの結線図である。
図3図1のコアの周方向に突設されたティースの配置及び通電により形成される磁路の説明図である。
図4図3の他例に係るコアの周方向に突設されたティースの配置及び通電により形成される磁路の説明図である。
図5図1の磁歪式トルク検出センサのトルク検出回路のブロック構成図である。
図6】トルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2の関係を示すグラフ図である。
図7図5のトルク検出回路の他例に係るブロック構成図である。
図8】実施例2のコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図9図8のティース間に形成される磁路の説明図である。
図10】実施例2に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図11図10のコア磁極間に形成される磁路の説明図である。
図12】他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
図13図12のティース間に形成される磁路の説明図である。
図14】無負荷及び負荷状態のトルク検出センサの出力波形を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る磁歪式トルク検出センサの概略構成について図1乃至図4を参照して説明する。被検出体の一例としては、逆磁歪効果が大きい材料が好ましい。例えば、逆磁歪効果が高い材料として、パーメンジュール、Fe-Al(アルフェル)、Fe-Nix(パーマロイ)および球状黒鉛鋳鉄( JIS :FCD70 ) などがある。尚、逆磁歪効果とは、磁性体に外部から応力を加えると磁気特性が変化する現象である。また、被検出体Sには、必要に応じて磁性焼鈍を予め施しておくと、詳しくは後述するが被検出体Sに作用するトルクを好適に検出できる。また、非磁性材料であっても金属磁性材料を溶射等してコーティングしたり、磁性円筒を軸に圧入したりすることでトルク検出することが可能となる。尚、被検出体は、円柱状であるがこれに限定されない。被検出体は、外形が円柱状であれば、内部の構造は問わない。例えば、内径が軸方向において一定である円筒状、または内径が軸方向に位置により異なっている円筒状であってもよい。また、被検出体Sは、回転することが予定されているものであってもよいし、予定されていないものであってもよい。更には、被検出体は、中実な軸材料でもよいし、空芯状の筒体であってもよい。
【0016】
トルク検出センサ7の一例について図1を参照して説明する。トルク検出センサ7は、被検出体Sの周囲に複数箇所で対峙する第一ティース3a1と第二ティース3a2に巻き付けられた第一コイル5a、第二コイル5bに通電して被検出体Sとの間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型のトルク検出センサである。
【0017】
図1Cにおいて、第一トルク検出部7aは、環状の第一コア2a-1,環状の第二コア2a-2に周方向に複数の第一ティース3a1,第二ティース3a2が径方向内側に向けて突設されている。第一コア2a-1と第二コア2a-2は筒状の中間コア2c1の両側開口より嵌め込まれて第一ティース3a1と第二ティース3a2が千鳥配置となるよう組み付けられている。各第一ティース3a1,第二ティース3a2の周囲には第一インシュレータ4a1,第二インシュレータ4a2が各々嵌め込まれ、同一の通電回路に接続された第一コイル5aが各々巻かれており、各第一コイル5aに通電することにより隣接する第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。
【0018】
第二トルク検出部7bは、環状の第三コア2b-1,環状の第四コア2b-2に周方向に複数の第三ティース3b1,第四ティース3b2が径方向内側に向けて突設されている。第三コア2b-1と第四コア2b-2は筒状の中間コア2c2の両側開口より嵌め込まれて、第三ティース3b1と第四ティース3b2が千鳥配置となるように組み付けられている。各第三ティース3b1,第四ティース3b2の周囲には第三インシュレータ4b1,第四インシュレータ4b2が各々嵌め込まれ、同一の通電回路に接続された第二コイル5bが各々巻かれており、各第二コイル5bに通電することにより周方向隣接する第三ティース3b1,第四ティース3b2が異磁極に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。
【0019】
上記第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが第二コア2a-2と第四コア2b-2が中間コア2c3を介して対向するように隣接配置されている。第一ティース3a1の第一コア2a-1の周方向の位相と第三ティース3b1の第三コア2b-1の周方向の位相が同一となるように組み付けられている。また、第二ティース3a2の第二コア2a-2の周方向の位相と第四ティース3b2の第四コア2b-2の周方向の位相が同一となるように組み付けられている。
【0020】
即ち、第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2(環状コア2)は図6の展開図に示すように、被検出体Sの軸心方向(図の上下方向)と直交する対称面M(図1B,C参照)を中心に第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが鏡面配置となるように積層されている。
【0021】
図1C,Dにおいて、第一コア2a-1には環状のコアバック部2a1に径方向内側に向かって突設された第一ティース3a1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第一ティース3a1には筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4a1が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。第二コア2a-2には環状のコアバック部2a2に径方向内側に向かって突設された第二ティース3a2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第二ティース3a2には筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4a2が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。第一コア2a-1と第二コア2a―2は、第一ティース3a1と第二ティース3a2が周方向に+45度位相がずれて積層されるようになっている(図3コア展開図上段参照)。
【0022】
図1Cにおいて、第三コア2b-1は、第一コア2a-1と同様に環状のコアバック部2b1に径方向内側に向かって突設された第三ティース3b1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第三ティース3b1には筒状の絶縁樹脂製の第三インシュレータ4b1が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。第三コア2b-1と第四コア2b―2は、第三ティース3b1と第四ティース3b2が周方向に-45度位相がずれて積層されるようになっている(図3コア展開図下段参照)。
また、第四コア2b-2には環状のコアバック部2b2に径方向内側に向かって突設された第四ティース3b2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第四ティース3b2には筒状の絶縁樹脂製の第四インシュレータ4b2が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。
【0023】
図1B,Cに示すように、筒状の中間コア2c1の両端開口に第一コア2a-1及び第二コア2a-2が嵌め込まれて組み付けられている。筒状の中間コア2c2の両端開口には第三コア2b-1及び第四コア2b-2が嵌め込まれて組み付けられている。
【0024】
また、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bとは中間コア2c3を介して隣接配置されている。即ち、中間コア2c1及び第二コア2a-2と中間コア2c2及び第四コア2b-2は、環状の中間コア2c3の両側に重ね合わせて接着等より一体に組み付けられる。
【0025】
中間コア2c1は第一コア2a-1と第二コア2a-2間の磁路を形成し、中間コア2c2は第三コア2b-1と第四コア2b-2間に磁路を形成している。中間コア2c3は、第二ティース3a2の周囲に第一コイル5a、第四ティース3b2の周囲に第二コイル5bを巻くスペースを確保するスペーサとなっている。
尚、中間コア2c1,2c2,2c3には径方向内側に向かうティースは設けられていない。
【0026】
第一トルク検出部7aにおいて互いに隣り合う第一ティース3a1,第二ティース3a2は周方向に+45度位相が異なるように千鳥配置で積層されている。また、第二トルク検出部7bにおいて隣り合う第三ティース3b1,第四ティース3b2は周方向に-45度位相が異なるように千鳥配置で積層されている。
【0027】
このため、図3のコアの展開図に示すように、第一トルク検出部7aの第一コア2a-1,第二コア2a-2に周方向に千鳥配置で形成された第一ティース3a1,第二ティース3a2と、第二トルク検出部7bの第三コア2b-1,第四コア2b-2に周方向に千鳥配置で形成された第三ティース3b1,第四ティース3b2が対称面Mを中心として鏡面配置で積層されている。尚、NA及びSAを囲む長枠Eは第一ティース3a1及び第二ティース3a2間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。同様にNB及びSBを囲む長枠Eは第三ティース3b1及び第四ティース3b2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。
【0028】
上記構成によれば、第一トルク検出部7aの第一コイル5aに通電することにより隣接する第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極(N極又はS極)に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が形成される。また、第二トルク検出部7bの第二コイル5bに通電することにより隣接する第三ティース3b1,第四ティース3b2が異磁極(N極又はS極)に励磁されて対向する被検出体Sとの間で軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路が形成される。よって、被検出体Sの全周にわたって圧縮応力及び引張応力の発生を検出することができる。
【0029】
また、隣接配置される第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが環状コア2の周方向のティース配置が互いに同一となっている。即ち、図3のコアの展開図において、第一トルク検出部7aの第一コア2a-1に形成された第一ティース3a1と第二トルク検出部7bの第三コア2b-1形成された第三ティース3b1の周方向の位相が互いに同一となっており、第二コア2a-2に形成された第二ティース3a2と第四コア3b-2に形成された第四ティース3b2の周方向の位相が互いに同一となっている。
【0030】
図2A,B,Cは、環状コア2(2a-1,2a-2又は2b-1,2b-2)の展開図において各ティース3(第一ティース3a1及び第二ティース3a2)に巻かれた第一コイル5a、第二コイル5bに対する通電パターンの一例を示している。図中の黒いラインは第一コイル5a及び第二コイル5bであり、図中では省略されている。また、第一コイル5a、第二コイル5bをティース3に巻く向きを反対にすることで励磁する極を変更している。環状コア2に周方向に千鳥配置で突設された複数の第一ティース3a1及び第二ティース3a2のうち同一の通電回路に直列に接続される第一コイル5a、第二コイル5bが巻かれたティースは、周方向に隣接するN極とS極が交互に励磁されることが好ましい。これにより、同一の通電回路に直列に接続される第一コイル5a、第二コイル5bが巻かれた周方向に隣接する第一ティース3a1及び第二ティース3a2がN極とS極に交互励磁さえすれば、複数コイルに対して例えば以下に説明するように一筆書き状に連続して配線することもでき、配線バリエーションが増えて配線も容易に行える。
【0031】
図2Aは、第一ティース3a1と第二ティース3a2とでジグザグ状に通電する通電回路6及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-SA-NA-NA-…)を例示する。図2Bは、第一ティース3a1と第二ティース3a2とで矩形波状に通電する通電回路6及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-NA-SA-NA-…)を例示する。図2Cは、第一ティース3a1に周方向に通電してからUターンして第二ティース3a2に周方向に通電する通電回路6及び第一ティース3a1と第二ティース3a2に形成される磁極(-SA-NA-SA-NA-…)を例示する。図2A~Cに示すいずれの通電パターンにおいても、トルク検出に最も寄与する磁路は、周方向に位相差±45度で配置された第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に形成される磁路である。
【0032】
また、図3に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、対称面Mを介して軸心方向に隣接する第二ティース3a2と第四ティース3b2が同磁極に励磁されると、対称面Mを介して軸心方向に対称位置にある第二ティース3a2と第四ティース3b2は同磁極となるため、対称面Mを跨いで第二コア2a-2と第四コア2b-2の間に磁路が形成されることはない。
【0033】
また、図4に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、対称面Mを介して軸心方向に隣接する第二ティース3a2と第四ティース3b2が異磁極(N極又はS極)に励磁されると、対称面Mを介して軸心方向に対称位置にある第二ティース3a2と第四ティース3b2は異なる磁極となるため対称面Mを跨いで第二コア2a-2と第四コア2b-2の間に磁路が形成されるが、トルク検出にはほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
尚、図3図4において、環状コア2(第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2)の周方向に形成される異磁極(NA,SA)(NB,SB)間に周方向に形成される磁路は、トルク検出にはほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
【0034】
ここで、図1の磁歪式トルク検出センサのトルク検出回路のブロック構成図について図5を参照して説明する。
トルク検出回路8は、トルク検出センサ7(第一トルク検出部7a、第二トルク検出部7b)にトルク検出用の励振信号を入力する励振回路9(発振回路)と、トルク検出センサ7からの出力信号からトルク成分を抽出する出力処理回路10を備えている。
【0035】
励振回路9は、周波数の異なる2つの励振周波数(トルク検知用周波数F1、ノイズ検知用周波数F2)を重畳した励振用重畳信号(数十kHz)を生成して、トルク検出センサ7(CCW:第一トルク検出部7a、CW:第二トルク検出部7b)に各々入力する。後述するようにトルク検知用周波数F1は、トルク感度が高く回転ノイズも含まれる所要の周波数が選択される。またノイズ検知用周波数F2は、トルク感度は低く回転ノイズ成分が大きく含まれる所要の周波数が選択される。
【0036】
図6は、トルク検出センサ7の発振周波数別の出力信号レベルを示すグラフ図である。グラフ線V1は、回転ノイズのピークツーピーク電圧変化を示すノイズレベルを示しており、グラフ線V2は、一定トルク印加時の出力電圧変化(トルク変化)を示す。
トルク検知用周波数F1は、トルク感度が高く回転ノイズも含まれる所要の周波数(グラフ線V2:例えば20kHz)が選択される。またノイズ検知用周波数F2は、トルク感度は低く、回転ノイズ成分が大きい所要の周波数(グラフ線V1:例えば27kHz)が選択される。基本的にトルク検知用周波数F1は、グラフ線V2(トルク変化の出力電圧)上で最も高い出力電圧となる周波数、ノイズ検知用周波数F2は、グラフ線V1(ノイズ変化の出力電圧)上で最も高い出力電圧となる周波数、またはその周辺の周波数が選択されるがそれに限定されるものではない。また、測定対象に応じてトルク感度、ノイズ除去の優先度を変更することも可能であり、その場合は、トルク検知用周波数F1は、グラフ線V2上でその優先度に適した周波数、ノイズ検知用周波数F2は、グラフ線V1上でその優先度に適した周波数を選択することで実現する。
なお、図6の発振周波数別の出力信号レベルを示すグラフ図は製造時の検査でトルク検出部一つ一つ測定して作成しても良いし、ロット毎に測定しても良い。
【0037】
図5において、出力処理回路10は第一トルク検出部7a及び第二トルク検出部7bから各々出力された出力信号をトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分波する分波回路10a,10bと、分波されたトルク検知用周波数F1‘どうしの差分を出力する比較回路10c,分波されたノイズ検知用周波数F2‘どうしの差分を出力する比較回路10d、比較回路10c,10dの出力をDC変換する整流回路10e,10f、整流されたトルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理(f1-f2)する差動処理回路10gを備えている。なお、トルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘は、励振回路9で生成されたトルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2と周波数は同じであるが、トルク検出センサ7により印可されたトルク成分、回転ノイズ成分が含まれた信号である。
【0038】
比較回路10cにおいて、第一トルク検出部7a(CCW)の出力電圧と第二トルク検出部7b(CW)の出力電圧の差動処理が行われる。比較回路10dにおいて、第一トルク検出部7a(CCW)の出力電圧と第二トルク検出部7b(CW)の出力電圧の差動処理が行われるので、ノイズ検知用周波数F2に含まれる被検出体Sの偏心誤差をキャンセルすることができる。
更に、差動処理回路10gにおいて整流回路10e,10fで整流されたトルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理することで、差動処理後の出力信号は、回転ノイズ成分f2が除去されたトルク成分f1のみが抽出されるのでトルク測定精度を高めることができる。
【0039】
上記構成によれば、励振回路9によりトルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が第一トルク検出部7a(CCW)及び第二トルク検出部7b(CW)に各々入力され、出力処理回路10で第一トルク検出部7a(CCW)及び第二トルク検出部7b(CW)から各々出力された出力信号を分波してトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分けて取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理を行なって専らトルク成分f1を検出するので、回転ノイズ成分f2を除去して精度の高いトルク信号を抽出することができる。
よって、被検出体Sの全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において回転ノイズが抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた磁歪式トルク検出センサ7を提供することができる。
【0040】
図7は、図5のトルク検出回路8の他例に係るブロック構成図である。励振回路9は図5と同様であるが、出力処理回路10の構成が若干異なる。
即ち、整流されたトルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理回路10gで差動処理する前にこれらに含まれる回転ノイズ成分どうしの振幅をf1とf2で合わせておく演算処理が行われる。即ち、高速フーリエ変換処理(FFT)回路10hで振幅演算し可変利得アンプ10iで利得調整を行なってトルク成分f1と回転ノイズ成分f2に含まれる回転ノイズ成分の振幅を合わせておく(振幅演算処理回路)。これにより、差動処理回路10gで整流されたトルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理する際に回転ノイズ成分f2が可及的に除去され、トルク成分f1のみを精度よく抽出することができる。
【0041】
次に他例に係る磁歪式トルク検出センサについて、図8乃至図13を参照して説明する。被検出体Sは、逆磁歪効果が大きい材料が好ましく、中実な軸材料でもよいし、中空状の中空軸等であってもよいのは同様である。尚、展開図においては、複数のコア2a,2b,2cが組み合わされたものを単に環状コア2と表記して説明するものとする。
【0042】
図8に示すように、環状コア2に第一ティース3a1及び第二ティース3a2が周方向に千鳥配置で複数突設されている。第一ティース3a1と第二ティース3a2が周方向に45度位相が異なるように組み付けられている。第一ティース3a1どうしの環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3a2bどうしの環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている。また、各第一ティース3aには筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4aが嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。各第二ティース3bには筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4bが嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。
【0043】
図8は、環状コア2の展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。図8において、第一ティース3a1の周囲に巻かれた第一コイル5aと第二ティース3a2の周囲に巻かれた第二コイル5bは巻方向が反対に巻かれている。また、第一コイル5a及び第二コイル5bが直列に接続された複数の通電回路を備えている。具体的には、第一通電回路6a(図8上段破線)は、第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aから周方向に+45度の位相差を有する第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bから+45度の位相差を有する他の第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aへ通電する。なお、より正確には第一ティース3a1の被検出体と対向する先端部と第二ティース3a2の被検出体と対向する先端部が中間コア2cを介して周方向に+45度の位相差を有するように積層されている。この第一通電回路6a(図8上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図8下段)される。
【0044】
また、第二通電回路6b(図8上段実線)は、第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aから-45度の位相差を有する第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3a2に巻かれた第二コイル5bから-45度の位相差を有する他の第一ティース3a1に巻かれた第一コイル5aへ通電する。この第二通電回路6b(図8上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図1下段)が各々形成される。また、第一通電回路6aを形成するコイルをコイルAとし、第二通電回路6bを形成するコイルをコイルBとすると、図中NAはコイルAによりN極に励磁されたティース、SAはコイルAによりS極に励磁されたティースを表示するものとし、同様に図中NBはBコイルによりN極に励磁されたティース、SBはBコイルによりS極に励磁されたティースを表示するものとする。より正確には被検出体Sと対向するティースの先端部がN極またはS極に励磁される。N極に励磁されるかS極に励磁されるかはAコイル及びBコイル(第一コイル5a及び第二コイル5b)の巻く向きを反対にすれば実現することができる。
【0045】
また、図8下段に示すNA及びSAを囲む長枠E1、NB及びSBを囲む長枠E2は、第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。尚、千鳥配置された第一ティース3a1と第二ティース3a2は、コイルが巻かれていないものが存在しても良い。
以上説明したトルク検出センサ7は、被検出体Sの周囲に複数箇所で対峙する第一ティース3a1と第二ティース3a2に巻き付けられた第一コイル5a、第二コイル5bに通電して被検出体Sとの間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型のトルク検出センサが用いられる。
【0046】
図9は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3aがN極に励磁され、第二ティース3bがS極に励磁される複数の磁路を示す。NA及びSAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図2の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、NB及びSBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図2の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路はコアの周方向に交互に形成されている(長枠E1,E2参照)。
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は同磁極(N極)であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も同磁極(S極)となるため、トルク検出に必要な磁路成分(±45度)のみが形成されるため、トルク検出が効率よく実現することができる。
【0047】
上記トルク検出センサ7の第一通電回路6a及び第二通電回路6bに図5又は図7に示すトルク検出回路8が各々接続されている。励振回路9(発振回路)によりトルク検知用周波数F1とノイズ検知用周波数F2が重畳された励振用重畳信号が第一通電回路6a(CCW)及び第二通電回路6b(CW)に各々入力され、出力処理回路10で第一通電回路6a(CCW)及び第二通電回路6b(CW)から各々出力された出力信号を分波してトルク検知用周波数F1‘とノイズ検知用周波数F2‘に分けて取り出し、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2とで差動処理をおこなって専らトルク成分f1を検出する。これにより、回転ノイズ成分f2を可及的に除去して精度の高いトルク信号を抽出することができる。
【0048】
また出力処理回路10は、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2の差動処理を行なう前に、振幅演算処理回路によりトルク成分f1と回転ノイズ成分f2に含まれる回転ノイズ成分f2の振幅を合わせる処理が行われると、トルク成分f1と回転ノイズ成分f2を差動処理する際に回転ノイズ成分f2が除去され、トルク成分f1のみを精度よく抽出することができる。
【0049】
図10図8の他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3a2どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている点は図8と同様である。図10上段において、第一通電回路6a(図10上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図10下段)される。また、第二通電回路6b(図10上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図10下段)が各々形成される。図8と異なるのは、第一ティース3a1に巻かれる第一コイル5aと第二ティース3a2に巻かれる第二コイル5bの巻方向が反対になっている。よって、第一ティース3a1がS極に励磁され、第二ティース3a2がN極に励磁されている。図10下段に示すSA及びNAを囲む長枠E1及びSB及びNBを囲む長枠E2は、第一ティース3a1及び第二ティース3a2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。
【0050】
なお、図10では長枠E2は2つ例示しているが両方とも第一ティース3a1がSB、第二ティース3a2がNBの組み合わせである。別の例としては、1つの長枠E2を第一ティース3a1がSB、第二ティース3a2がNBの組み合わせ、別の長枠E2を第一ティース3a1がNB、第二ティース3a2がSBの組み合わせのもので構成しても良い。それ以外にも1つの長枠E1を第一ティース3a1がSA、第二ティース3a2がNAの組み合わせ、別の長枠E2を第一ティース3a1がNA、第二ティース3a2がSAの組み合わせのもので構成しても良い。このように長枠E1と長枠E2内で第一ティース3a1と第二ティース3a2をN極に励磁するかS極に励磁するかは自由である。
【0051】
図11は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1がS極又はN極に励磁され、第二ティース3a2がN極又はS極に励磁される複数の磁路を示す。SA及びNAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図11の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、SB及びNBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図11の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路は環状コア2の周方向に交互に形成されている。
【0052】
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は異なる磁極であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も異なる磁極となるため、図8と異なり、図11の周方向に隣接する第一ティース3a1間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NB-SA)が各々形成される。しかしながら、これらの磁路はトルク検出にほとんど寄与しない磁路成分である。そのため、検出感度にはほとんど影響しない。
【0053】
図12は他例に係るコアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置され、第二ティース3a2どうしが環状コア2の周方向の位相が同一となるように配置されている点は同様である。図12において、第一通電回路6a(図12上段破線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(図12下段)される。また、第二通電回路6b(図12上段実線)への通電により第一ティース3a1と第二ティース3a2との間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(図12下段)が各々形成される。SA及びNAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(図12の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、SB及びNBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(図12の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。図8図10と異なるのは、+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路はコアの周方向に交互に形成されていない(長枠E1,E2参照)。
【0054】
図13は第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3a1がコアの周方向にN極とS極に交互励磁され、第二ティース3a2がコアの周方向にS極とN極に交互励磁される。
この場合、周方向に隣合う第一ティース3a1の極性は異なる磁極であり、周方向に隣合う第二ティース3a2の極性も異なる磁極となるため、第一ティース3a1と第二ティース3a2間に形成される±45度に傾斜する磁路の他に、図13の周方向に隣接する第一ティース3a1間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NA-SA),(NB-SB)が各々形成される。また、周方向に隣接する第二ティース3b間にN極からS極に向かう矢印方向の磁路(NA-SA),(NB-SB)が各々形成される。しかしながら、これらの磁路はトルク検出にほとんど寄与しない成分であるため検出感度にはほとんど影響しない。
【0055】
以上説明したように、被検出体Sの全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路において回転ノイズが抽出されることなくトルク成分のみが抽出されて測定精度を高めた磁歪式トルク検出センサ7を提供することができる。
【0056】
本実施例に係るトルク検出センサ7は、被検出体Sが、中実状の軸であると中空軸のいずれのトルクを検出することができる。また、環状コア2及びティース3は積層タイプについて説明したが、これに限定されるものではなく、ブロック状の磁性材料を切削、ワイヤーカットなどにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 トルク検出部 2 環状コア 2a,2a-1 第一コア 2a-2,2b 第二コア 2a1,2a2,2b1,2b2 コアバック部 2b-1 第三コア 2b-2 第四コア 2c,2c1,2c2,2c3 中間コア 3a1 第一ティース 3a2 第二ティース 3b1 第三ティース 3b2 第四ティース 4a 第一インシュレータ 4b 第二インシュレータ 5a 第一コイル 5b 第二コイル 6 通電回路 6a 第一通電回路 6b 第二通電回路 7 トルク検出センサ 7a 第一トルク検出部 7b 第二トルク検出部 8 トルク検出回路 9 励振回路 10 出力処理回路 10a,10b 分波回路 10c,10d 比較回路、10e,10f 整流回路、10g 差動処理回路 10h 高速フーリエ変換処理(FFT)回路 10i 可変利得アンプ S 被検出体
図1
図2
図3
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図7
図8
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図10
図11
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