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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125549
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】フーリエ変換赤外分光光度計
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/45 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
G01J3/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023190
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】村松 尚
(72)【発明者】
【氏名】丸野 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】森谷 直司
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020CA12
2G020CB05
2G020CC22
2G020CC55
2G020CD16
2G020CD35
(57)【要約】
【課題】より正確なインターフェログラムを取得することができるフーリエ変換赤外分光光度計を提供する。
【解決手段】フーリエ変換赤外分光光度計1は、主干渉計6と、コントロール干渉計7と、赤外検出器19と、コントロール光検出器34と、ブロック型ビームスプリッタ30とを備える。ブロック型ビームスプリッタ30は、ビームスプリッタ13とコントロール光検出器34との間に配置されている。コントロール光検出器34の光軸は、コントロール干渉光21iの光軸21pに対して傾いている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む主干渉計と、
コントロール光を出力するコントロール光源と、前記ビームスプリッタと、前記固定鏡と、前記移動鏡とを含むコントロール干渉計と、
前記主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または前記試料で反射される赤外干渉光を検出する赤外検出器と、
前記コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出するコントロール光検出器と、
前記コントロール干渉光の光路上に配置されており、かつ、前記ビームスプリッタと前記コントロール光検出器との間に配置されているブロック型ビームスプリッタとを備え、
前記コントロール光検出器の入射面の法線は、前記コントロール干渉光の光軸に対して傾いている、フーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項2】
前記コントロール光の前記光路上に配置されているコリメート光学系または位相板の少なくとも一つをさらに備え、
前記コリメート光学系は、少なくとも一つのレンズを含み、かつ、前記コントロール光源と前記ビームスプリッタとの間に配置され、
前記位相板は、前記移動鏡と前記ビームスプリッタとの間または前記固定鏡と前記ビームスプリッタとの間に配置され、
前記コリメート光学系または前記位相板の前記少なくとも一つの光軸は、前記コントロール光の光軸に対して傾いている、請求項1に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項3】
前記ブロック型ビームスプリッタと前記コントロール光検出器との間に配置されているアパーチャをさらに備える、請求項1または請求項2に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項4】
前記コントロール光検出器の前記入射面の前記法線は、前記コントロール干渉光の前記光軸に対して、0.5°以上5.0°以下傾いている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項5】
赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む主干渉計と、
コントロール光を出力するコントロール光源と、前記ビームスプリッタと、前記固定鏡と、前記移動鏡とを含むコントロール干渉計と、
前記主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または前記試料で反射される赤外干渉光を検出する赤外検出器と、
前記コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出するコントロール光検出器と、
前記コントロール光の光路上に配置されているコリメート光学系または位相板の少なくとも一つとを備え、
前記コリメート光学系は、前記コントロール光源と前記ビームスプリッタとの間に配置され、
前記位相板は、前記移動鏡と前記ビームスプリッタとの間または前記固定鏡と前記ビームスプリッタとの間に配置され、
前記コリメート光学系または前記位相板の前記少なくとも一つの光軸は、前記コントロール光の光軸に対して傾いている、フーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項6】
前記コリメート光学系または前記位相板の前記少なくとも一つは、前記コリメート光学系を含み、
前記コリメート光学系は、第1レンズと、第2レンズと、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置されているアパーチャとを含む、請求項2または請求項5に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【請求項7】
前記コリメート光学系または前記位相板の前記少なくとも一つの前記光軸は、前記コントロール光の前記光軸に対して0.5°以上5.0°以下傾いている、請求項2、請求項5または請求項6に記載のフーリエ変換赤外分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フーリエ変換赤外分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平2-253103号公報(特許文献1)に開示されたフーリエ変換赤外分光光度計は、二光束干渉計を構成する、赤外光源とビームスプリッタと固定鏡と移動鏡とを備える。二光束干渉計には、固定鏡または移動鏡の向きを測定するためのレーザ光が導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-253103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、より正確なインターフェログラムを取得することができるフーリエ変換赤外分光光度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様のフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、ブロック型ビームスプリッタとを備える。主干渉計は、赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出力するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。ブロック型ビームスプリッタは、コントロール干渉光の光路上に配置されており、かつ、ビームスプリッタとコントロール光検出器との間に配置されている。コントロール光検出器の入射面の法線は、コントロール干渉光の光軸に対して傾いている。
【0006】
本開示の一態様のフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、コリメート光学系または位相板の少なくとも一つとを備える。主干渉計は、赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出力するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つは、コントロール光の光路上に配置されている。コリメート光学系は、コントロール光源とビームスプリッタとの間に配置される。位相板は、移動鏡とビームスプリッタとの間または固定鏡とビームスプリッタとの間に配置される。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸は、コントロール光の光軸に対して傾いている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のフーリエ変換赤外分光光度計によれば、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略図である。
図2】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
図3】実施の形態の変形例のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
図4】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
図5】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計に含まれる第1コントロール光検出器の光検出面の概略拡大平面図である。
図6】実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計の概略部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
図1から図6を参照して、実施の形態のフーリエ変換赤外分光光度計1を説明する。フーリエ変換赤外分光光度計1は、主干渉計6と、コントロール干渉計7と、赤外検出器19と、コントロール光検出器34と、ミラー角度調整器45と、ミラー駆動装置47と、コントローラ50と、スペクトル作成器60とを主に備える。フーリエ変換赤外分光光度計1は、ブロック型ビームスプリッタ30をさらに備えてもよい。フーリエ変換赤外分光光度計1は、コリメート光学系22または位相板27の少なくとも一つをさらに備えてもよい。フーリエ変換赤外分光光度計1は、アパーチャ25,42,43をさらに備えてもよい。
【0011】
主干渉計6は、試料3のパワースペクトルを測定するための赤外干渉光11iを生成する。図1を参照して、主干渉計6は、赤外光源10と、ビームスプリッタ13と、固定鏡14と、移動鏡15とを含む。主干渉計6は、コリメート鏡12をさらに含んでもよい。
【0012】
赤外光源10は、赤外光11を出力する。赤外光源10は、例えば、セラミック光源である。コリメート鏡12は、赤外光11をビームスプリッタ13に向けて反射するとともに、赤外光11をコリメートする。
【0013】
ビームスプリッタ13は、赤外光11を、固定鏡14に向かう第1赤外光11jと、移動鏡15に向かう第2赤外光11kとに分割する。ビームスプリッタ13は、固定鏡14で反射された第1赤外光11jと、移動鏡15で反射された第2赤外光11kとを合波する。主干渉計6(ビームスプリッタ13)は、第1赤外光11jと第2赤外光11kとの間の干渉光である赤外干渉光11iを生成して、赤外干渉光11iを、試料3及び赤外検出器19に向けて出力する。
【0014】
ミラー駆動装置47は、移動鏡15に接続されている。ミラー駆動装置47は、移動鏡15を、ビームスプリッタ13に近づく方向と、ビームスプリッタ13から遠ざかる方向とに移動させて、移動鏡15を往復運動させる。ミラー駆動装置47は、例えば、リニアガイド(図示せず)と、ボイスコイルモータ(図示せず)とを含んでもよい。リニアガイドは、レール(図示せず)と、移動鏡15が取りつけられておりかつレールをスライドするスライダ(図示せず)とを含む。ボイスコイルモータは、スライダをレールに沿ってスライドさせる。
【0015】
移動鏡15が動く際に、移動鏡15の向き(移動鏡15の法線方向)が変動することがある。移動鏡15の向きの変動は、赤外干渉光11iの強度及び位相を変化させて、赤外検出器19で検出されるインターフェログラムを劣化させる。そのため、移動鏡15の向きの変動を補償するように、移動鏡15または固定鏡14の向きを調整する必要がある。ミラー角度調整器45は、移動鏡15または固定鏡14の向きを調整する。本実施の形態では、ミラー角度調整器45は、固定鏡14に設けられており、固定鏡14の向き(固定鏡14の法線方向)を調整する。ミラー角度調整器45は、移動鏡15に設けられてもよく、移動鏡15の向き(移動鏡15の法線方向)を調整してもよい。ミラー角度調整器45は、例えば、ピエゾ素子を含むアクチュエータである。具体的には、鏡の向きは、ピエゾ素子の形状を変化させることによって調整され得る。
【0016】
主干渉計6(ビームスプリッタ13)から出力された赤外干渉光11iは、集光鏡17で反射及び集光されて、試料室4内に配置されている試料3に入射する。赤外干渉光11iは、試料3を通過する。赤外干渉光11iは、試料3で反射されてもよい。試料3を通過するまたは試料3で反射される赤外干渉光11iは、集光鏡18で反射及び集光されて、赤外検出器19に入射する。赤外検出器19は、主干渉計6で生成され、かつ、試料3を通過または試料3で反射される赤外干渉光11iを、インターフェログラムとして検出する。インターフェログラムは、移動鏡15の移動に伴って生成される。赤外検出器19は、例えば、MCT検出器である。
【0017】
コントロール干渉計7は、移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きを測定するためのコントロール干渉光21iを生成する。図1を参照して、コントロール干渉計7は、コントロール光源20と、ビームスプリッタ13と、固定鏡14と、移動鏡15とを含む。
【0018】
コントロール光源20は、コントロール光21を出力する。コントロール光源20は、例えば、ヘリウムネオン(He-Ne)レーザまたは半導体レーザのようなレーザ光源である。コントロール光21は、例えば、レーザビームである。
【0019】
コリメート光学系22は、コントロール光21の光路上に配置されており、かつ、コントロール光源20とビームスプリッタ13との間に配置される。コリメート光学系22は、少なくとも一つのレンズ(例えば、第1レンズ23、第2レンズ24)を含む。コリメート光学系22は、コントロール光21をコリメートする。
【0020】
図2に示されるように、コリメート光学系22の光軸22pは、コントロール光21の光軸21pに対して傾いている。コントロール光源20から出力されるコントロール光21の一部が、コリメート光学系22の少なくとも一つのレンズの表面で反射されて、迷光が発生する。この迷光は、コントロール光源20の出射面で反射されて、コントロール光検出器34に向かう。コリメート光学系22の光軸22pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、コリメート光学系22の光軸22pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを防止する。
【0021】
コリメート光学系22の光軸22pは、コントロール光21の光軸21pに対して、例えば、0.5°以上の角度α傾いている。コリメート光学系22の光軸22pは、コントロール光21の光軸21pに対して、1.0°以上の角度α傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。特定的には、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することが、より確実に防止され得る。コリメート光学系22の光軸22pは、コントロール光21の光軸21pに対して、例えば、5.0°以下の角度αで傾いている。コリメート光学系22の光軸22pは、コントロール光21の光軸21pに対して、4.0°以下の角度αで傾いてもよい。そのため、コリメート光学系22が小型化されて、フーリエ変換赤外分光光度計1が小型化される。
【0022】
コリメート光学系22は、ビームエキスパンダであってもよい。すなわち、コリメート光学系22は、コントロール光21をコリメートするとともに、コントロール光21のビーム径を拡大してもよい。そのため、コントロール干渉計7からコントロール光源20への迷光が除去されて、コントロール干渉光21iにハーモニクスが重畳することが防止され得る。移動鏡15の速度及び固定鏡14または移動鏡15の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡15の位置をより正確に検出することができる。具体的には、コリメート光学系22は、第1レンズ23と第2レンズ24とを含んでもよい。コリメート光学系22は、図1及び図2に示されるケプラー型ビームエキスパンダであってもよいし、ガリレオ型ビームエキスパンダであってもよい。
【0023】
コリメート光学系22は、アパーチャ25をさらに含んでもよい。コントロール光21の一部がコリメート光学系22の少なくとも一つのレンズの表面で反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャ25は、迷光が、コントロール光源20の出射面に到達する迷光を低減させるまたは無くす。そのため、アパーチャ25は、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、より確実に低減させるまたは無くす。特定的には、アパーチャ25は、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを防止する。
【0024】
図1及び図2に示されるように、アパーチャ25は、第1レンズ23と第2レンズ24との間に配置されてもよい。特定的には、アパーチャ25は、コリメート光学系22の光軸22p上における、第1レンズ23及び第2レンズ24の焦点位置に配置されてもよい。図3に示されるように、アパーチャ25は、コントロール光21の光軸21p上において、コリメート光学系22に対してコントロール光源20の側に配置されてもよい。
【0025】
図1に示されるように、鏡26は、コリメート光学系22から出力されたコントロール光21を、ビームスプリッタ13に向けて反射する。鏡26は、赤外光11中に配置されてもよい。鏡26によって遮断される赤外光11を減少させるために、鏡26のサイズは、赤外光11のビーム径より小さい。コントロール光21は、赤外光11と平行に進んで、ビームスプリッタ13に入射する。コントロール光21の光軸21pは、赤外光11の光軸11pに平行である。コントロール光21のビーム径は、赤外光11のビーム径より小さい。
【0026】
ビームスプリッタ13は、コントロール光21を、固定鏡14に向かう第1コントロール光21jと、移動鏡15に向かう第2コントロール光21kとに分割する。ビームスプリッタ13は、固定鏡14で反射された第1コントロール光21jと、移動鏡15で反射された第2コントロール光21kとを合波する。コントロール干渉計7(ビームスプリッタ13)は、第1コントロール光21jと第2コントロール光21kとの間の干渉光であるコントロール干渉光21iを生成して、コントロール干渉光21iを赤外検出器19に向けて出力する。
【0027】
位相板27は、コントロール光21の光路上に配置されている。位相板27は、固定鏡14とビームスプリッタ13との間に配置されている。位相板27は、移動鏡15とビームスプリッタ13との間に配置されてもよい。位相板27は、例えば、ビームスプリッタ13に対向する表面27aと、表面27aとは反対側の表面27bとを含む。表面27bは、鏡(例えば、固定鏡14)に対向している。位相板27は、例えば、八分の一波長板(λ/8板)である。位相板27は、例えば、直線偏光を有するコントロール光21(第1コントロール光21j)を、円偏光を有するコントロール光21(第1コントロール光21j)に変換する。
【0028】
図4を参照して、位相板27の光軸27pは、コントロール光21の光軸21pに対して傾いている。コントロール光21の一部が位相板27の表面27aで反射されて、迷光が発生する。位相板27の光軸27pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、位相板27の光軸27pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを防止する。
【0029】
鏡(例えば、固定鏡14)で反射されたコントロール光21の一部が位相板27の表面27bで反射されて、迷光が発生する。迷光は、鏡(例えば、固定鏡14)で反射されて、コントロール光検出器34に向かう。位相板27の光軸27pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、位相板27の光軸27pをコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを防止する。
【0030】
位相板27の光軸27pは、コントロール光21の光軸21pに対して、例えば、0.5°以上の角度β傾いている。位相板27の光軸27pは、コントロール光21の光軸21pに対して、1.0°以上の角度β傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。特定的には、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することが、より確実に防止され得る。位相板27の光軸27pは、コントロール光21の光軸21pに対して、例えば、5.0°以下の角度β傾いている。位相板27の光軸27pは、コントロール光21の光軸21pに対して、4.0°以下の角度β傾いてもよい。そのため、フーリエ変換赤外分光光度計1が小型化される。
【0031】
コントロール干渉計7(ビームスプリッタ13)から出力されたコントロール干渉光21iは、赤外干渉光11iと平行に進んで、鏡28に入射する。鏡28は、赤外干渉光11i中に配置されてもよい。鏡28によって遮断される赤外干渉光11iを減少させるために、鏡28のサイズは、赤外干渉光11iのビーム径より小さい。コントロール干渉光21iのビーム径は、赤外干渉光11iのビーム径より小さい。コントロール干渉光21iは、鏡28で反射されて、コントロール光検出器34に入射する。
【0032】
コントロール光検出器34は、コントロール干渉計7で生成されるコントロール干渉光21iを検出する。具体的には、コントロール光検出器34は、第1コントロール光検出器35と、第2コントロール光検出器38とを含む。
【0033】
ブロック型ビームスプリッタ30は、コントロール干渉光21iの光路上に配置されており、かつ、ビームスプリッタ13とコントロール光検出器34との間に配置されている。鏡28で反射されたコントロール干渉光21iは、ブロック型ビームスプリッタ30に入射する。ブロック型ビームスプリッタ30は、例えば、偏光ビームスプリッタである。ブロック型ビームスプリッタ30は、コントロール干渉光21iを、第1コントロール干渉光21sと第2コントロール干渉光21tとに分割する。ブロック型ビームスプリッタ30が偏光ビームスプリッタである場合、第1コントロール干渉光21sは、例えば、コントロール干渉光21iのs偏波成分であり、第2コントロール干渉光21tは、例えば、コントロール干渉光21iのp偏波成分である。
【0034】
ブロック型ビームスプリッタ30は、透明ブロック31,32と、偏光分離膜のような光分離膜33とを含む。光分離膜33は、例えば、誘電体多層膜である。光分離膜33は、透明ブロック31と透明ブロック32との間に設けられている。ブロック型ビームスプリッタ30は、表面30a,30bを含む。第1コントロール干渉光21sは、表面30aから第1コントロール光検出器35に向けて出射する。表面30aは、例えば、コントロール干渉光21i(第1コントロール干渉光21s)の光軸21pに垂直である。第2コントロール干渉光21tは、表面30bから第2コントロール光検出器38に向けて出射する。表面30bは、例えば、コントロール干渉光21i(第2コントロール干渉光21t)の光軸21pに垂直である。
【0035】
第1コントロール光検出器35は、第1コントロール干渉光21sを検出する。図5及び図6を参照して、第1コントロール光検出器35は、受光素子36と、外囲体37とを含む。
【0036】
受光素子36は、第1コントロール干渉光21sが入射する光検出面36sを含む。受光素子36の光検出面36sは、第1コントロール光検出器35の光検出面である。受光素子36は、例えば、フォトダイオードである。より具体的には、受光素子36は、複数の光検出素子35a,35b,35c,35dを含む複数分割フォトダイオード(例えば、四分割フォトダイオード)であってもよい。複数の光検出素子35a,35b,35c,35dは、単一の半導体基板上に形成されてもよい。
【0037】
受光素子36は、外囲体37内に配置されている。外囲体37は、例えば、受光素子36を封止する封止部材であってもよいし、受光素子36を収容するケースであってもよい。第1コントロール光検出器35は、第1コントロール干渉光21sが入射する入射面35iを含む。第1コントロール光検出器35の入射面35iは、例えば、外囲体37の入射面である。第1コントロール光検出器35の入射面35iは、例えば、封止部材の入射面またはケースの光入射窓である。
【0038】
第2コントロール光検出器38は、第2コントロール干渉光21tを検出する。図5及び図6を参照して、第2コントロール光検出器38は、受光素子36と、外囲体40とを含む。
【0039】
受光素子39は、第2コントロール干渉光21tが入射する光検出面39sを含む。受光素子39の光検出面39sは、第2コントロール光検出器38の光検出面である。受光素子36は、例えば、フォトダイオードである。より具体的には、受光素子39は、例えば、単一の光検出素子を含む単素子フォトダイオードであってもよい。
【0040】
受光素子39は、外囲体40内に配置されている。外囲体40は、例えば、受光素子39を封止する封止部材であってもよいし、受光素子39を収容するケースであってもよい。第2コントロール光検出器38は、第2コントロール干渉光21tが入射する入射面38iを含む。第2コントロール光検出器38の入射面38iは、例えば、外囲体40の入射面である。第2コントロール光検出器38の入射面38iは、例えば、封止部材の入射面またはケースの光入射窓である。
【0041】
図6を参照して、コントロール光検出器34(第1コントロール光検出器35、第2コントロール光検出器38)の入射面(例えば、入射面35i,38i)の法線(例えば、法線35p,38p)は、コントロール干渉光21iの光軸21pに対して傾いている。コントロール干渉光21iの一部がコントロール光検出器34の入射面で反射されて、迷光が発生する。迷光は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面(例えば、表面30a,30b)で反射されて、コントロール光検出器34に向かう。コントロール光検出器34の入射面の法線をコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、コントロール光検出器34の入射面の法線をコントロール光21の光軸21pに対して傾けることは、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを防止する。
【0042】
コントロール光検出器34(第1コントロール光検出器35、第2コントロール光検出器38)の入射面(例えば、入射面35i,38i)の法線(例えば、法線35p,38p)は、コントロール干渉光21iの光軸21pに対して、例えば、0.5°以上の角度傾いている。コントロール光検出器34の入射面の法線は、コントロール干渉光21iの光軸21pに対して、1.0°以上の角度傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34の光検出面(光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。特定的には、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することが、より確実に防止され得る。コントロール干渉光21iの光軸21pに対して、例えば、5.0以下の角度傾いている。コントロール光検出器34の入射面の法線は、コントロール干渉光21iの光軸21pに対して、4.0°以下の角度傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34とブロック型ビームスプリッタ30とを含むレーザ検出光学系が小型化されて、フーリエ変換赤外分光光度計1が小型化される。
【0043】
具体的には、第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pは、第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して傾いている。第1コントロール干渉光21sの一部が第1コントロール光検出器35の入射面35iで反射されて、迷光が発生する。迷光は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面30aで反射されて、第1コントロール光検出器35に向かう。第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pを第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して傾けることは、第1コントロール光検出器35の光検出面(光検出面36s)における迷光と第1コントロール干渉光21sとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pを第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して傾けることは、迷光が第1コントロール光検出器35の光検出面に入射することを防止する。
【0044】
第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pは、第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して、例えば、0.5°以上の角度γ傾いている。第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pは、第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して、1.0°以上の角度γ傾いてもよい。そのため、第1コントロール光検出器35の光検出面(光検出面36s)における迷光と第1コントロール干渉光21sとの間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。特定的には、迷光が第1コントロール光検出器35の光検出面に入射することが、より確実に防止され得る。第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pは、第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して、例えば、5.0°以下の角度γ傾いている。第1コントロール光検出器35の入射面35iの法線35pは、第1コントロール干渉光21sの光軸21pに対して、4.0°以下の角度γ傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34とブロック型ビームスプリッタ30とを含むレーザ検出光学系が小型化されて、フーリエ変換赤外分光光度計1が小型化される。
【0045】
第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pは、第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して傾いている。第2コントロール干渉光21tの一部が第2コントロール光検出器38の入射面38iで反射されて、迷光が発生する。迷光は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面30bで反射されて、第2コントロール光検出器38に向かう。第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pを第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して傾けることは、第2コントロール光検出器38の光検出面(光検出面39s)における迷光と第2コントロール干渉光21tとの間の重なりを、低減させるまたは無くす。特定的には、第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pを第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して傾けることは、迷光が第2コントロール光検出器38の光検出面に入射することを防止する。
【0046】
第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pは、第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して、例えば、0.5°以上の角度δ傾いている。第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pは、第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して、1.0°以上の角度δ傾いてもよい。そのため、第2コントロール光検出器38の光検出面(光検出面39s)における迷光と第2コントロール干渉光21tとの間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。特定的には、迷光が第2コントロール光検出器38の光検出面に入射することが、より確実に防止され得る。第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pは、第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して、例えば、5.0°以下の角度δ傾いている。第2コントロール光検出器38の入射面38iの法線38pは、第2コントロール干渉光21tの光軸21pに対して、4.0°以下の角度δ傾いてもよい。そのため、コントロール光検出器34とブロック型ビームスプリッタ30とを含むレーザ検出光学系が小型化されて、フーリエ変換赤外分光光度計1が小型化される。
【0047】
アパーチャ42,43が、ブロック型ビームスプリッタ30とコントロール光検出器34との間に配置されてもよい。コントロール干渉光21iの一部がコントロール光検出器34の入射面(例えば、入射面35i,38i)で反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャ42,43は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面(例えば、30a,30b)に到達する迷光を低減させるまたは無くす。そのため、アパーチャ42,43は、コントロール光検出器34の光検出面(例えば、光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりをより確実に低減させるまたは無くす。特定的には、アパーチャ42,43は、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することを、より確実に防止する。
【0048】
具体的には、アパーチャ42は、ブロック型ビームスプリッタ30と第1コントロール光検出器35との間に配置されてもよい。第1コントロール干渉光21sの一部が第1コントロール光検出器35の入射面35iで反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャ42は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面30aに到達する迷光を低減させるまたは無くす。そのため、アパーチャ42は、第1コントロール光検出器35の光検出面(光検出面36s)における迷光と第1コントロール干渉光21sとの間の重なりをより確実に低減させるまたは無くす。特定的には、アパーチャ42は、迷光が第1コントロール光検出器35の光検出面に入射することを、より確実に防止する。
【0049】
アパーチャ43は、ブロック型ビームスプリッタ30と第2コントロール光検出器38との間に配置されてもよい。第2コントロール干渉光21tの一部が第2コントロール光検出器38の入射面38iで反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャ43は、ブロック型ビームスプリッタ30の表面30bに到達する迷光を低減させるまたは無くす。そのため、アパーチャ43は、第2コントロール光検出器38の光検出面(光検出面39s)における迷光と第2コントロール干渉光21tとの間の重なりをより確実に低減させるまたは無くす。特定的には、アパーチャ43は、迷光が第2コントロール光検出器38の光検出面に入射することを、より確実に防止する。
【0050】
コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサまたは電気回路の少なくとも一つで構成されている。コントローラ50は、ミラー角度調整部51と、信号加算部52と、ミラー位置検出部53と、ミラー速度調整部56とを含む。コントローラ50は、例えば、プロセッサがコントローラ50の記憶部(図示せず)に格納されているプログラムを実行することによって、ミラー角度調整部51と、信号加算部52と、ミラー位置検出部53と、ミラー速度調整部56との機能を実現してもよい。
【0051】
ミラー角度調整部51は、コントロール光検出器34の出力に基づいて、ミラー角度調整器45の動作を制御して、鏡(例えば、固定鏡14)の向きを調整する。具体的には、ミラー角度調整部51は、例えば、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号の位相が一致するように、鏡(例えば、固定鏡14)の向きを調整する。こうして、移動鏡15が動く際に生じる移動鏡15の向きの変動が補償される。赤外検出器19で検出されるインターフェログラムを改善することができる。
【0052】
ミラー位置検出部53は、コントロール光検出器34の出力に基づいて、移動鏡15の移動方向及び位置を検出する。具体的には、ミラー位置検出部53は、波形整形器54と、アップ/ダウンカウンタ55を含む。信号加算部52は、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号を加算して、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第1コントロール光検出器35の第1出力信号を受信するとともに、第2コントロール光検出器38から第2コントロール光検出器38の第2出力信号を受信する。波形整形器54は、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を、第1パルス列信号に変換する。波形整形器54は、第2コントロール光検出器38の第2出力信号を、第2パルス列に変換する。
【0053】
アップ/ダウンカウンタ55は、波形整形器54から、第1パルス列信号と第2パルス列信号とを受信する。アップ/ダウンカウンタ55は、第1パルス列信号の第1位相と第2パルス列信号の第2位相との間の位相関係から、移動鏡15の移動方向を特定する。例えば、第1パルス列信号の第1位相が第2パルス列信号の第2位相より90°進んでいる場合には、アップ/ダウンカウンタ55は、ビームスプリッタ13から離れる方向を、移動鏡15の移動方向として特定する。第1パルス列信号の第1位相が第2パルス列信号の第2位相より90°遅れている場合には、アップ/ダウンカウンタ55は、ビームスプリッタ13から遠ざかる方向を、移動鏡15の移動方向として特定する。また、アップ/ダウンカウンタ55で計数されるパルス列信号のパルス数は、移動鏡15の位置に依存している。ミラー位置検出部53は、アップ/ダウンカウンタ55によって得られる移動鏡15の移動方向とパルス列信号のパルス数とから、移動鏡15の位置を特定する。
【0054】
ミラー速度調整部56は、ミラー駆動装置47を制御して、移動鏡15の移動速度を調整する。具体的には、ミラー速度調整部56は、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または信号加算部52で得られる第1コントロール光検出器35の第1出力信号の周波数が一定になるように、ミラー駆動装置47を制御する。こうして、ミラー速度調整部56は、移動鏡15を、一定速度で移動させる。
【0055】
スペクトル作成器60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサまたは電気回路の少なくとも一つで構成されている。コントローラ50とスペクトル作成器60とは、一台のコンピュータで構成されてもよい。スペクトル作成器60は、サンプルホールド部61と、アナログデジタル変換部62と、フーリエ変換演算部63とを含む。スペクトル作成器60は、例えば、プロセッサがコントローラ50の記憶部(図示せず)に格納されているプログラムを実行することによって、サンプルホールド部61と、アナログデジタル変換部62と、フーリエ変換演算部63との機能を実現してもよい。
【0056】
スペクトル作成器60は、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムから、試料3のパワースペクトルを作成する。具体的には、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または第2パルス列信号が、サンプルホールド部61に入力される。サンプルホールド部61は、第1パルス列信号または第2パルス列信号によって規定されるタイミングで、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムをサンプリングする。アナログデジタル変換部62は、サンプリングされたインターフェログラムをデジタル変換する。フーリエ変換演算部63は、デジタル変換されたインターフェログラムをフーリエ変換する。こうして、試料3のパワースペクトルが得られる。
【0057】
[フーリエ変換赤外分光光度計1の動作]
移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きの測定の際の、フーリエ変換赤外分光光度計1の動作を説明する。移動鏡15が移動している間、移動鏡15の位置及び速度並びに固定鏡14または移動鏡15の向きは、リアルタイムでモニターされる。
【0058】
ブロック型ビームスプリッタ30は、コントロール干渉計7から出力されるコントロール干渉光21iを、第1コントロール干渉光21sと第2コントロール干渉光21tとに分割する。第1コントロール光検出器35は、第1コントロール干渉光21sを検出する。第2コントロール光検出器38は、第2コントロール干渉光21tを検出する。ミラー角度調整部51は、例えば、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号の位相が一致するように、鏡(例えば、移動鏡15)の向きを調整する。
【0059】
信号加算部52は、第1コントロール光検出器35に含まれる複数の光検出素子35a,35b,35c,35dの出力信号を加算して、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第1コントロール光検出器35の第1出力信号を受信するとともに、第2コントロール光検出器38から第2コントロール光検出器38の第2出力信号を受信する。波形整形器54は、第1コントロール光検出器35の第1出力信号を、第1パルス列信号に変換する。波形整形器54は、第2コントロール光検出器38の第2出力信号を、第2パルス列に変換する。
【0060】
アップ/ダウンカウンタ55は、波形整形器54から、第1パルス列信号と第2パルス列信号とを受信する。アップ/ダウンカウンタ55は、第1パルス列信号の第1位相と第2パルス列信号の第2位相との間の位相関係から、移動鏡15の移動方向を特定する。また、ミラー位置検出部53は、アップ/ダウンカウンタ55によって得られる移動鏡15の移動方向とパルス列信号のパルス数とから、移動鏡15の位置を特定する。
【0061】
ミラー速度調整部56は、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または信号加算部52で得られる第1コントロール光検出器35の出力信号の周波数が一定となるように、ミラー駆動装置47を制御する。こうして、ミラー速度調整部56は、移動鏡15を、一定速度で移動させる。
【0062】
試料3のパワースペクトルの測定の際の、フーリエ変換赤外分光光度計1の動作を説明する。
【0063】
主干渉計6から出力される赤外干渉光11iは、試料3を通過するまたは試料3で反射される。赤外検出器19は、試料3を通過または試料3で反射される赤外干渉光11iを、インターフェログラムとして検出する。インターフェログラムは、移動鏡15の移動に伴って生成される。スペクトル作成器60は、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムから、試料3のパワースペクトルを作成する。
【0064】
具体的には、ミラー位置検出部53で得られる第1パルス列信号または第2パルス列信号が、サンプルホールド部61に入力される。サンプルホールド部61は、第1パルス列信号または第2パルス列信号によって規定されるタイミングで、赤外検出器19で検出されたインターフェログラムをサンプリングする。アナログデジタル変換部62は、サンプリングされたインターフェログラムをデジタル変換する。フーリエ変換演算部63は、デジタル変換されたインターフェログラムをフーリエ変換する。こうして、試料3のパワースペクトルが得られる。
【0065】
[変形例]
コリメート光学系22の光軸22p、位相板27の光軸27pまたはコントロール光検出器34の入射面(入射面35i,38i)の法線(法線35p,38p)の少なくとも一つが、コントロール光21またはコントロール干渉光21iの光軸21pに対して傾けられてもよい。第2コントロール光検出器38も、複数の光検出素子を含む複数分割フォトダイオードを含んでもよい。第2コントロール光検出器38が複数分割フォトダイオードである場合、信号加算部52は、第2コントロール光検出器38に含まれる複数の光検出素子の出力信号を加算して、第2コントロール光検出器38の第2出力信号を得る。ミラー位置検出部53は、信号加算部52から第2コントロール光検出器38の第2出力信号を受信する。位相板27は、八分の一波長板(λ/8板)に限られず、四分の一波長板(λ/4板)または半波長板(λ/2板)などであってもよい。
【0066】
[本実施の形態の作用]
本実施の形態によれば、コリメート光学系22、位相板27またはコントロール光検出器34の少なくとも一つで迷光が発生しても、コントロール光検出器34の光検出面(例えば、光検出面36s,39s)における迷光とコントロール干渉光21iとの間の重なりを、低減させるまたは無くすことができる。特定的には、迷光がコントロール光検出器34の光検出面に入射することが防止され得る。コントロール光検出器34からの出力信号に基づいて、移動鏡15の速度及び固定鏡14または移動鏡15の向きをより正確に設定することが可能になるとともに、移動鏡15の位置をより正確に検出することが可能になる。その結果、より経時変化が少なく安定したインターフェログラムを取得することができる。より経時変化が少なく安定したパワースペクトルを取得することができる。
【0067】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0068】
(第1項)一態様に係るフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、ブロック型ビームスプリッタとを備える。主干渉計は、赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出力するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。ブロック型ビームスプリッタは、コントロール干渉光の光路上に配置されており、かつ、ビームスプリッタとコントロール光検出器との間に配置されている。コントロール光検出器の入射面の法線は、コントロール干渉光の光軸に対して傾いている。
【0069】
コントロール干渉光の一部がコントロール光検出器の入射面で反射されることによって、迷光が発生する。迷光は、ブロック型ビームスプリッタの表面で反射されて、コントロール光検出器に向かう。コントロール光検出器の入射面の法線をコントロール干渉光の光軸に対して傾けることは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりを、低減させるまたは無くすことができる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0070】
(第2項)第1項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計は、コリメート光学系または位相板の少なくとも一つをさらに備える。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つは、コントロール光の光路上に配置されている。コリメート光学系は、コントロール光源とビームスプリッタとの間に配置される。位相板は、移動鏡とビームスプリッタとの間または固定鏡とビームスプリッタとの間に配置される。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸は、コントロール光の光軸に対して傾いている。
【0071】
フーリエ変換赤外分光光度計がコリメート光学系を備えている場合には、フーリエ変換赤外分光光度計は、以下の効果を奏する。コントロール光の一部がコリメート光学系の少なくとも一つのレンズの表面で反射されることによって、迷光が発生する。迷光は、コントロール光源の出射面で反射されて、コントロール光検出器に向かう。コリメート光学系の光軸をコントロール光の光軸に対して傾けることは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりを、低減させるまたは無くすことができる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0072】
フーリエ変換赤外分光光度計が位相板を備えている場合には、フーリエ変換赤外分光光度計は、以下の効果を奏する。コントロール光の一部が位相板の表面で反射されることによって、迷光が発生する。位相板の光軸をコントロール光の光軸に対して傾けることは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりを、低減させるまたは無くすことできる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0073】
(第3項)第1項または第2項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計は、ブロック型ビームスプリッタとコントロール光検出器との間に配置されているアパーチャをさらに備える。
【0074】
コントロール干渉光の一部がコントロール光検出器の入射面で反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャは、ブロック型ビームスプリッタの表面に到達する迷光を、低減させるまたは無くすことできる。そのため、アパーチャは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりをより確実に低減させるまたは無くすことできる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0075】
(第4項)第1項から第3項のいずれか一項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、コントロール光検出器の入射面の法線は、コントロール干渉光の光軸に対して、0.5°以上5.0°以下傾いている。
【0076】
コントロール干渉光の一部がコントロール光検出器の入射面で反射されることによって、迷光が発生する。迷光は、ブロック型ビームスプリッタの表面で反射されて、コントロール光検出器に向かう。コントロール光検出器の入射面の法線は、コントロール干渉光の光軸に対して、0.5°以上傾いている。そのため、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。コントロール光検出器の入射面の法線は、コントロール干渉光の光軸に対して、5.0°以下傾いている。そのため、フーリエ変換赤外分光光度計が小型化され得る。
【0077】
(第5項)一態様に係るフーリエ変換赤外分光光度計は、主干渉計と、コントロール干渉計と、赤外検出器と、コントロール光検出器と、コリメート光学系または位相板の少なくとも一つとを備える。主干渉計は、赤外光を出力する赤外光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。コントロール干渉計は、コントロール光を出力するコントロール光源と、ビームスプリッタと、固定鏡と、移動鏡とを含む。赤外検出器は、主干渉計で生成され、かつ、試料を通過または試料で反射される赤外干渉光を検出する。コントロール光検出器は、コントロール干渉計で生成されるコントロール干渉光を検出する。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つは、コントロール光の光路上に配置されている。コリメート光学系は、コントロール光源とビームスプリッタとの間に配置される。位相板は、移動鏡とビームスプリッタとの間または固定鏡とビームスプリッタとの間に配置される。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸は、コントロール光の光軸に対して傾いている。
【0078】
フーリエ変換赤外分光光度計がコリメート光学系を備えている場合には、フーリエ変換赤外分光光度計は、以下の効果を奏する。コントロール光の一部がコリメート光学系の少なくとも一つのレンズの表面で反射されることによって、迷光が発生する。迷光は、コントロール光源の出射面で反射されて、コントロール光検出器に向かう。コリメート光学系の光軸をコントロール光の光軸に対して傾けることは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりを、低減させるまたは無くすことができる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0079】
フーリエ変換赤外分光光度計が位相板を備えている場合には、フーリエ変換赤外分光光度計は、以下の効果を奏する。コントロール光の一部が位相板の表面で反射されることによって、迷光が発生する。位相板の光軸をコントロール光の光軸に対して傾けることは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりを、低減させるまたは無くすことができる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0080】
(第6項)第2項または第5項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、コリメート光学系または位相板の少なくとも一つは、コリメート光学系を含む。コリメート光学系は、第1レンズと、第2レンズと、第1レンズと第2レンズとの間に配置されているアパーチャとを含む。
【0081】
コントロール光の一部がコリメート光学系の少なくとも一つのレンズの表面で反射されることによって、迷光が発生する。アパーチャは、コントロール光源の出射面に到達する迷光を低減させるまたは無くすことができる。そのため、アパーチャは、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりをより確実に低減させるまたは無くすことができる。そのため、移動鏡を移動させている間、コントロール光検出器からの出力信号に基づいて、移動鏡の速度及び固定鏡または移動鏡の向きをより正確に設定することができるととともに、移動鏡の位置をより正確に検出することができる。フーリエ変換赤外分光光度計は、より正確なインターフェログラムを取得することができる。
【0082】
(第7項)第2項、第5項または第6項に記載のフーリエ変換赤外分光光度計では、コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸は、コントロール光の光軸に対して0.5°以上5.0°以下傾いている。
【0083】
コントロール光の一部がコリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸の表面で反射されることによって、迷光が発生する。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸はコントロール光の光軸に対して、0.5°以上傾いている。そのため、コントロール光検出器の光検出面における迷光とコントロール干渉光との間の重なりが、より確実に低減するまたは無くなる。コリメート光学系または位相板の少なくとも一つの光軸はコントロール光の光軸に対して、5.0°以下傾いている。そのため、フーリエ変換赤外分光光度計が小型化され得る。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 フーリエ変換赤外分光光度計、3 試料、4 試料室、6 主干渉計、7 コントロール干渉計、10 赤外光源、11 赤外光、11i 赤外干渉光、11j 第1赤外光、11k 第2赤外光、11p 光軸、12 コリメート鏡、13 ビームスプリッタ、14 固定鏡、15 移動鏡、17,18 集光鏡、19 赤外検出器、20 コントロール光源、21 コントロール光、21i コントロール干渉光、21j 第1コントロール光、21k 第2コントロール光、21p 光軸、21s 第1コントロール干渉光、21t 第2コントロール干渉光、22 コリメート光学系、22p 光軸、23 第1レンズ、24 第2レンズ、25 アパーチャ、26,28 鏡、27 位相板、27a,27b 表面、27p 光軸、30 ブロック型ビームスプリッタ、30a,30b 表面、31,32 透明ブロック、33 光分離膜、34 コントロール光検出器、35 第1コントロール光検出器、35a,35b,35c,35d 光検出素子、35i 入射面、35p 法線、36 受光素子、36s 光検出面、37 外囲体、38 第2コントロール光検出器、38i 入射面、38p 法線、39 受光素子、39s 光検出面、40 外囲体、42,43 アパーチャ、45 ミラー角度調整器、47 ミラー駆動装置、50 コントローラ、51 ミラー角度調整部、52 信号加算部、53 ミラー位置検出部、54 波形整形器、55 アップ/ダウンカウンタ、56 ミラー速度調整部、60 スペクトル作成器、61 サンプルホールド部、62 アナログデジタル変換部、63 フーリエ変換演算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6