(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125552
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、ウエハ-レベルパッケ-ジ、パネルレベルパッケ-ジおよび電子装置
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220822BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220822BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C08L63/00 B
C08K3/013
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023197
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕香
(72)【発明者】
【氏名】守谷 公雄
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AB053
4J002CC042
4J002CC052
4J002CC062
4J002CC072
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD121
4J002CH013
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
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4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK007
4J002DL006
4J002EN027
4J002EN028
4J002EU117
4J002EU118
4J002EW018
4J002EW178
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD203
4J002GQ01
4J002GQ05
4M109AA01
4M109BA07
4M109EA03
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB11
4M109EB13
4M109EB18
4M109EC04
(57)【要約】
【課題】基材の反りを低減することが可能であり、大面積の基板の封止に好ましく用いられる封止用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリロタキサンを含む粒子(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2)と、無機充填材(D)と、を含む、封止用樹脂組成物。ポリロタキサンを含む粒子(A)の平均粒径は好ましくは1~100μmである。封止用樹脂組成物の全固形分中のポリロタキサンを含む粒子(A)の比率は、好ましくは0.1~10質量%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリロタキサンを含む粒子(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2)と、
無機充填材(D)と、
を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記粒子(A)の平均粒径が1~100μmである、封止用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の全固形分中の前記粒子(A)の比率が、0.1~10質量%である、封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂(B)が、ビフェニル型エポキシ樹脂および/またはトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤(C1)がフェノ-ル樹脂を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤(C1)が、トリスフェニルメタン型フェノ-ル樹脂を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化促進剤(C2)が、リン系化合物を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を、175℃で4時間硬化させた硬化物の、50~70℃における平均線膨張係数CTE1が9.5ppm以下であり、
前記硬化物の、25℃における曲げ弾性率E1が20GPa以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
顆粒状、タブレット状またはシ-ト状である封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
ウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジの封止用である、封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているウエハ-レベルパッケ-ジ。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているパネルレベルパッケ-ジ。
【請求項13】
請求項11に記載のウエハ-レベルパッケ-ジを個片化して得られた電子装置。
【請求項14】
請求項12に記載のパネルレベルパッケ-ジを個片化して得られた電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、ウエハ-レベルパッケ-ジ、パネルレベルパッケ-ジおよび電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケ-ジ等の電子素子の製造方法の多様化に伴い、ウエハ-状態のままでパッケ-ジングまで行うウエハ-レベルパッケ-ジと呼ばれる半導体パッケ-ジ技術が盛んに検討されている。
ウエハ-レベルパッケ-ジとは、典型的には、ウエハプロセスにて再配線や電極形成、樹脂封止及びダイシングまでを全て行い、最終的にウエハ-を切断した半導体チップの大きさがそのままパッケ-ジの大きさとなるものをいう。
【0003】
ウエハ-レベルパッケ-ジの技術検討に伴い、比較的小さな半導体チップ1つ1つの封止ではない「大面積の基材の一括的な封止」に関する技術も検討されている。
【0004】
特許文献1には、特定の脂環式エポキシ化合物、室温で液状のエポキシ樹脂(左記の脂環式エポキシ化合物とは異なる)、酸無水物硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含有する半導体封止用樹脂組成物が記載されている。この組成物中の全エポキシ樹脂100質量部中に占める、上記特定の脂環式エポキシ化合物の配合量は、30~95質量部である。また、特許文献1には、この組成物を用いてウエハ-レベルパッケ-ジを封止することについて記載されている。
【0005】
特許文献2には、封止される対象の半導体素子の線膨張係数α1、封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α2、および基材の線膨張係数α3が、特定の不等式を満たすことを規定した半導体封止用基材付封止材が記載されている。また、特許文献2には、この封止材により、ウエハ-レベルパッケ-ジの如き大面積のパッケ-ジを封止することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-108367号公報
【特許文献2】特開2017-204558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ウエハ-レベルパッケ-ジの技術検討に伴い、「大面積の基材の封止」に関する技術が検討されている。
また最近、ウエハ-レベルパッケ-ジよりも更に大面積の封止を必要とする「パネルレベルパッケ-ジ」の検討も進められている。パネルレベルパッケ-ジとは、ウエハ-レベルパッケ-ジに用いる通常のウエハ(例えば12インチウェハ)よりも大きな「パネル状の基板」を用いて、電子装置を一括製造する技術である。
つまり、半導体パッケ-ジ等の製造において、大面積の基材を適切に封止する技術は今後ますます求められる傾向にある。
【0008】
しかし、封止用樹脂組成物により大面積の基板を封止する際には、基材の「反り」(基材全体が反って歪むこと)が、しばしば問題となる。これは、封止用樹脂組成物の収縮により応力が発生するためである。従来の小面積の基板の封止では問題とならなかった、この「反り」の低減が、大面積の基板の封止では求められる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、基材の反りを低減することが可能であり、大面積の基板の封止に好ましく用いられる封止用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0011】
本発明によれば、
ポリロタキサンを含む粒子(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2)と、
無機充填材(D)と、
を含む、封止用樹脂組成物
が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、
上記の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているウエハ-レベルパッケ-ジ
が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
上記の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているパネルレベルパッケ-ジ
が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
上記のウエハ-レベルパッケ-ジを個片化して得られた電子装置
が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、
上記のパネルレベルパッケ-ジを個片化して得られた電子装置
が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材の反りを低減することが可能な封止用樹脂組成物が提供される。本発明の封止用樹脂組成物は、大面積の基板の封止に好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されたウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジを得、そして個片化により電子装置を得る工程を模式的に示すものである。
【
図2】
図1とは別の、電子装置50を得る工程を模式的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に
図2以降において、
図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0019】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0020】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオ-ド、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0021】
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、ポリロタキサンを含む粒子(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2)と、無機充填材(D)と、を含む。
【0022】
粒子(A)が含むポリロタキサンとは、通常、開口を形成している環状分子と、環状分子の開口を貫通する直鎖状分子鎖と、直鎖状分子鎖の両端にそれぞれ結合した封鎖基とを備えるポリマ-であり、環状分子が直鎖状分子鎖に沿ってある程度自由に移動可能となっている。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上記のような特徴を有するポリロタキサンを含む粒子(A)を含むことで、封止用樹脂組成物の硬化物に応力がかかった際に、環状分子がスライドして応力を分散すると考えられる。すなわち、硬化物中の応力が分散されて、反りの低減につながると考えられる。
【0023】
本実施形態の封止用樹脂組成物が含みうる成分や、本実施形態の封止用樹脂組成物の性状などについて、以下で具体的に説明する。
【0024】
(ポリロタキサンを含む粒子(A))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、ポリロタキサンを含む粒子(A)を含む。
本明細書では、ポリロタキサンを含む粒子(A)を、単に「粒子(A)」とも記載する。
【0025】
前述のとおり、ポリロタキサンは、通常、開口を形成している環状分子と、環状分子の開口を貫通する直鎖状分子鎖と、直鎖状分子鎖の両端にそれぞれ結合した封鎖基とを備える。封鎖基によって、環状分子が直鎖状分子鎖から脱離することが防がれている。1本の直鎖状分子鎖は、1または2以上の環状分子の開口を貫通することができる。
【0026】
ポリロタキサン中の環状分子は、直鎖状分子鎖が貫通可能な開口を形成している分子であれば、特に限定されない。環状分子は、開口を貫通する直鎖状分子鎖から抜け出ることがなければ、共有結合によって完全に閉環していなくてもよい。
環状分子としては、例えば、シクロデキストリン、クラウンエ-テル、ベンゾクラウン、ジベンゾクラウン、ジシクロヘキサノクラウン、これらの誘導体又は変性体などを挙げることができる。環状分子は、好ましくはシクロデキストリン又はこれの誘導体若しくは変性体である。シクロデキストリンは、通常、α型、β型またはγ型である。
環状分子がシクロデキストリン又はこれの誘導体若しくは変性体である場合、シクロデキストリン中のヒドロキシ基の一部または全部は、何らかの基によって置換されていてもよい。
環状分子が直鎖状分子鎖により貫通される場合において、環状分子が直鎖状分子鎖に最大限に包接される量を1とした場合、包接される環状分子の相対量(モル比)の下限値は、例えば0.001、好ましくは0.01、より好ましくは0.1以上であり、上限値は、例えば0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。環状分子の包接量が上記範囲内にあることにより、直鎖状分子鎖上での環状分子の運動性が保たれやすい。
【0027】
環状分子は、以下のような置換基を有していてもよい。これら置換基は、、環状分子に直接結合しても、よいし、スペ-サ-(連結基)を介して結合してもよい。
(i)疎水性修飾基、例えば、アセチル基、ブチルエステル基、ヘキシルエステル基、オクタデシルエステル基、ポリカプロラクトン基、ポリ(δ-バレロラクトン)基、ポリ乳酸基、ポリアルキレンカ-ボネ-ト基、ポリプロピレングリコ-ル基、ポリテトラメチレングリコ-ル基、ポリアクリル酸メチル基、ポリアクリル酸エチルヘキシル基など。
(ii)-OH、-NH2、-COOHおよび-SHからなる群より選ばれる1または2以上
(iii)(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、ビニリデン基、無水マレイン酸含有官能基などの、重合性基
【0028】
ポリロタキサン中の直鎖状分子鎖は、環状分子を貫通しうる分子鎖であって、環状分子が直鎖状分子鎖上で移動可能である限り、特に限定されない。直鎖状分子鎖は、実質的に直鎖状の部分を含んでいればよく、分岐鎖又は環状の置換基等を有することも許容される。直鎖状の部分の長さや分子量は特に制限されない。
直鎖状分子鎖としては、例えば、アルキレン鎖、ポリエステル鎖、ポリエ-テル鎖、ポリアミド鎖、ポリアクリレート鎖が挙げられる。これらの中でも、直鎖状分子鎖自体の柔軟性の観点などから、ポリエステル鎖またはポリエ-テル鎖が好ましく、ポリエ-テル鎖がより好ましい。ポリエ-テル鎖として好ましくは、ポリエチレングリコ-ル鎖(ポリオキシエチレン鎖)などである。
直鎖状分子鎖の重量平均分子量は、例えば1,000以上、好ましくは3,000~100,000、より好ましくは6,000~50,000である
【0029】
ポリロタキサン中の封鎖基は、直鎖状分子鎖の両末端に配置され、直鎖状分子鎖が環状分子を貫通した状態を保持できる基である限り、特に限定されない。
封鎖基としては、環状分子の開口より大きな構造を有する基、イオン性の相互作用により環状分子の開口を通過し得ない基などが挙げられる。封鎖基として具体的には、アダマンチル基、シクロデキストリンを含む基、アントラセン基、トリフェニレン基、ピレン基、トリチル基及びこれらの異性体、誘導体などが挙げられる。
【0030】
直鎖状分子鎖上を環状分子が移動しやすくなる観点から、環状分子と直鎖状分子鎖との好ましい組み合わせは、シクロデキストリン又はその誘導体と、ポリエチレングリコ-ル鎖又はその誘導体との組み合わせである。この組み合わせは合成が比較容易であるというメリットもある。
【0031】
粒子(A)は、ポリロタキサンのみに基づき形成されていてもよいし、ポリロタキサンとポリロタキサン以外の素材に基づき形成されていてもよい。後者の場合、粒子(A)中のポリロタキサンの比率は、例えば1~80質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0032】
一例として。粒子(A)は、ポリロタキサン同士、または、ポリロタキサンとそれ以外の素材との架橋体を含む。
【0033】
粒子(A)がポリロタキサン同士の架橋体を含む場合の具体例としては、ポリロタキサンの環状分子が、前述の(iii)のような重合性基を有し、重合性基同士が架橋したものが考えられる。
【0034】
粒子(A)がポリロタキサンとそれ以外の素材との架橋体を含む場合、「それ以外の素材」としては、ポリロタキサンと共に架橋体を形成することができる材料であれば特に限定されない。「それ以外の素材」の具体例としては、(a)ポリオ-ル、(b)ポリイソシアネ-ト、(c)ラジカル重合性基を有する化合物、などを挙げることができる。
「それ以外の素材」が(a)ポリオ-ルおよび/または(b)ポリイソシアネ-トを含む場合、ポリロタキサンの環状分子には、前述の(i)疎水性修飾基;(ii)-OH、-NH2、-COOHおよび-SHから選択される官能基を有するのがよい。特に、(ii)から選択された官能基を有するのがよく、好ましくは-OHおよび/または-NH2を有する。
【0035】
(a)ポリオ-ルは、OH基を2以上有する物質である限り特に限定されない。ポリオ-ルとしては、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリエ-テルポリオ-ル、ポリエステルポリオ-ル、ポリオレフィンポリオ-ル、ポリシロキサンポリオ-ル、複数の種類のポリオ-ルのブロック共重合体またはグラフト体(例えば、ポリエ-テルポリオ-ルにポリエステルをブロック重合したポリオ-ル)、側鎖に水酸基を2以上有するポリマ-などを挙げることができる。
ポリオ-ルとしては、ポリエ-テルポリオ-ル、ポリエステルポリオ-ル、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、及びポリシロキサンポリオ-ルから選択されてなる少なくとも1種であるのが好ましい。
より具体的なポリオ-ルの例は、例えば、国際公開第2018/074404号の段落0028~0030などを参照されたい。
ポリオ-ルを用いる場合、1種のみを用いてもよく、複数種を併用してもよい。
ポリオ-ルの重量平均分子量は、例えば50~30,000、好ましくは250~10,000、より好ましくは250~8000である。
【0036】
(b)ポリイソシアネ-トは、イソシアネ-ト基を2以上有する化合物である限り特に限定されない。ポリイソシアネ-トは、公知の脂肪族、脂環族及び芳香族のイソシアネ-トであっても、新規に合成したものであってもよい。
ポリイソシアネ-トの例として、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネ-ト、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ-ト、リジンジイソシアネ-ト、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエ-ト、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カ-ボネ-ト、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエ-トイソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネ-ト(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネ-ト、メチルシクロヘキシレンジイソシアネ-ト(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロへキセン1,3-および/または1,4-フェニレンジイソシアネ-ト、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネ-ト(TDI)、粗製TDI、2,4'-および/または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、4,4'-ジイソシアナトビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジイソシアナトビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5-ナフチレンジイソシアネ-ト、m-および/またはp-キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネ-ト(TMXDI)など、並びに、これらの誘導体又は多量体などを挙げることができる
【0037】
(a)ポリオ-ルおよび/またはポリロタキサンと(b)ポリイソシアネ-トとの反応を促進するために、触媒、具体的にはウレタン化触媒を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N′,N′-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エ-テル、N,N-ジメチルエタノ-ルアミン、N,N-ジエチルエタノ-ルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5等の三級アミン類;酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸金属塩、スタナスオクトエ-ト、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンバ-サテ-ト、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛、ビスマストリオクテ-ト(2-エチルヘキサン酸)、オクチル酸アルミニウム等の有機金属化合物等が挙げられる。これらのうち少なくとも1の触媒を、架橋体の形成のために用いることが好ましい。使用量は、例えば、ポリオ-ルに対して0.001~5.0質量%である。
【0038】
架橋体の形成に際しては溶媒を用いてもよい。架橋体製造工程後、溶媒を除去するのが好ましい。溶媒は特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。
【0039】
(c)ラジカル重合性基を有する化合物としては、ラジカル重合開始剤によって発生したラジカル種の作用によって重合可能な官能基を有するものであれば、特に限定されない。ラジカル重合性基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、ビニリデン基、マレイン酸無水物・マレイミド含有官能基を挙げることができる。
「それ以外の素材」として(c)ラジカル重合性基を有する化合物を用いる場合、ポリロタキサンの環状分子はラジカル重合性基を有することが好ましい。
【0040】
(c)ラジカル重合性基を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、アクリルニトリル、アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリレート、イソホルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、メタクリロキシトリメトキシシランなどの単官能(メタ)アクリレート;
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ-ル200ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオ-ルジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノ-ルAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネ-トジオ-ルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリト-ルトリアクリレート、ジペンタエリスリト-ルポリアクリレート、トリメチロプロパントリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;スチレン、p-アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、p-スチレンスルフォン酸ナトリウムなどのスチレン誘導体;塩化ビニル、酢酸ビニル、N-ビニルアセトアミドメチルビニルケトン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシランなどのビニル化合物;N-メチルマレイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、1、6-ビス(マレイミド)ヘキサン、マレイン酸無水物、2、3-ジメチルマレイン酸無水物などのマレイン酸無水物・マレインイミド含有官能基;の側鎖にラジカル重合性基を付与した各種ポリマーなどを挙げることができる。
【0041】
粒子(A)の環状分子および/または(c)ラジカル重合性基を有する化合物のラジカル重合性基を重合させるため、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤の添加量としては、単量体混合物に対して、0.05~5質量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
熱重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、ラウロイルパ-オキサイド、t-ブチルパ-オキシイソブチレート、t-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエ-ト、t-ブチルパ-オキシネオデカノエ-ト、t-へキシルパ-オキシピバレート、ジイソプロピルパ-オキシジカ-ボネ-ト、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パ-オキシジカ-ボネ-ト等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、メチルフェニルグリオキシレート、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-フェニル-1,2-プロパン-ジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、2-メチル[4-(メチルチオ)フェニル]-2モルホリノ-1-プロパノン、ベンジル、ベンソインイソブチルエ-テル、2-クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキサド等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
粒子(A)は、その他、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤などの任意成分を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0045】
粒子(A)の平均粒径は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~90μm、さらに好ましくは5~60μmである。粒子(A)の平均粒径が適当であることにより,硬化物中で粒子(A)が均一に分散しやすくなると考えられる。その結果、硬化物中の応力がより分散されて、反りの一層の低減につながると考えられる。
【0046】
平均粒径については、粒子(A)が市販品である場合には、カタログ値を採用することができる。粒子(A)が市販品ではない、または市販品であってもカタログ値が不明である場合には、電子顕微鏡で撮影した粒子の画像中の、ランダムに選んだ少なくとも100個の粒子の円相当径を平均した値を採用することができる。
【0047】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、1のみの粒子(A)を含んでもよいし、2以上の粒子(A)を含んでもよい。
封止用樹脂組成物の全固形分中の粒子(A)の比率は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~8質量%、さらに好ましくは0.8~4質量%である。粒子(A)の比率が適当であることにより、他の性能を過度に損なうことなく、反り低減の効果を十分に得ることができる。
【0048】
(エポキシ樹脂(B))
エポキシ樹脂(B)としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有する(つまり、多官能の)モノマ-、オリゴマ-、ポリマ-全般を用いることができる。
エポキシ樹脂(B)は、特に、非ハロゲン化エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ-ルF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノ-ルF型エポキシ樹脂等のビスフェノ-ル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノ-ルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ-ルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノ-ルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノ-ルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノ-ルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノ-ルアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノ-ルアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエ-テル化して得られるエポキシ樹脂等のナフト-ル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノ-ル型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノ-ル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0050】
本実施形態では、エポキシ樹脂(B)は、特に、ビフェニル型エポキシ樹脂およびトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。また、これら2種のエポキシ樹脂を併用してもよい。
エポキシ樹脂(B)がこれらのいずれかを含むことにより、硬化成形時の適度な流動性を得つつ、封止用樹脂組成物の硬化後の機械強度や耐熱性などをより高めることができる。
【0051】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル構造を含むエポキシ樹脂全般を用いることができる。より具体的には、例えば、以下一般式(EP1)で表されるものを用いることができる。
【0052】
【0053】
一般式(EP1)中、
複数存在するRcは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基(例えば、メチル基)を表す。
n5は重合度を表し、その平均値は0~4である。
【0054】
トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、トリスフェニルメタン構造を含むエポキシ樹脂全般を用いることができる。より具体的には、例えば、以下一般式(EP2)で表されるものを用いることができる。
【0055】
【0056】
一般式(EP2)中、
複数存在するRgは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基(例えばメチル基)を表す。
N8は重合度を表し、その平均値は0~4である。
【0057】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の含有量の下限値は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上である。これにより、成形時の封止用樹脂組成物の流動性を適切に設定できる。したがって、充填性を向上できる。
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の含有量の上限値は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8.5質量%以下であることがさらに好ましい。通常、樹脂の線膨張率は、後述の無機充填材(D)のそれよりも大きい。よって、エポキシ樹脂の量を比較的少なくすることで、熱収縮をより低減されることができると考えられる。つまり、基材の反りを一層低減できると考えられる。
封止用樹脂組成物の「全固形分」とは、溶媒を除く全含有成分の合計を示す。
【0058】
(硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化剤(C1)および/または硬化促進剤(C2)を含む。
好ましくは、本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化剤(C1)と硬化促進剤(C2)の両方を含む。
【0059】
硬化剤(C1)としては、エポキシ樹脂を硬化させる性質を有するものとして知られている各種の化合物を挙げることができる。
【0060】
硬化剤(C1)は、好ましくは、フェノ-ル樹脂等のフェノ-ル系硬化剤を含む。フェノ-ル系硬化剤は、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点から好ましい。
フェノ-ル系硬化剤としては、一分子内にフェノ-ル性水酸基を2個以上有するモノマ-、オリゴマ-、ポリマ-等を挙げることができる。分子量、分子構造等は特に限定されない。
【0061】
フェノ-ル系硬化剤は、具体的には、フェノ-ルノボラック樹脂、クレゾ-ルノボラック樹脂、ビスフェノ-ルノボラック、フェノ-ル-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノ-ル樹脂;ポリビニルフェノ-ル;トリスフェニルメタン型フェノ-ル樹脂等の多官能型フェノ-ル樹脂;テルペン変性フェノ-ル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノ-ル樹脂等の変性フェノ-ル樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノ-ルアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフト-ルアラルキル樹脂等のフェノ-ルアラルキル型フェノ-ル樹脂;ビスフェノ-ルA、ビスフェノ-ルF、等のビスフェノ-ル化合物などが挙げられる。
【0062】
フェノ-ル系硬化剤としては、上記のうち、ノボラック型フェノ-ル樹脂及び多官能型フェノ-ル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0063】
ノボラック型フェノ-ル樹脂としては、上記のうち、フェノ-ルノボラック樹脂を用いることが好ましい。多官能型フェノ-ル樹脂としては、上記のうち、トリスフェニルメタン型フェノ-ル樹脂を含むことが好ましい。これにより、成形時における流動性を適切に調整することができる。したがって、充填性を向上させることができる。
トリスフェニルメタン型フェノ-ル樹脂としては、トリスフェニルメタン構造を含むフェノ-ル樹脂全般を用いることができる。より具体的には、例えば前述の一般式(EP2)において、芳香環に結合しているグリシジルオキシ基(-O-CH2-エポキシ基の構造部分)をヒドロキシ基に換えた構造の樹脂などを挙げることができる。
【0064】
フェノ-ル系硬化剤以外の硬化剤(C1)としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、触媒型の硬化剤などを挙げることができる。
アミン系硬化剤として具体的には、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物が挙げられる。
メルカプタン系硬化剤としては、ポリサルファイド、チオエステル、チオエ-テルなどのポリメルカプタン化合物が挙げられる。
触媒型の硬化剤としては、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノ-ルなどの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾ-ル、2-エチル-4-メチルイミダゾ-ルなどのイミダゾ-ル化合物;BF3錯体などのルイス酸等が挙げられる。
【0065】
封止用樹脂組成物が硬化剤(C1)を含む場合、封止用樹脂組成物は、硬化剤(C1)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
硬化剤(C1)の含有量の下限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、成形時に優れた流動性となり、充填性や成形性の向上が図られる。
硬化剤(C1)の含有量の上限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、電子装置としての耐湿信頼性や耐リフロ-性を向上させることができる。また、基材の反りの一層の抑制に寄与しうる。
【0066】
硬化促進剤(C2)は、エポキシ樹脂の硬化反応を促進させるものである限り特に限定されない。
硬化促進剤として具体的には、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン系化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾ-ル等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0067】
硬化促進剤(C2)は、好ましくは、リン系化合物を含む。リン系化合物の具体例としては、上記例示の硬化促進剤のうちリン原子を含むものを挙げることができる。本発明者らの知見によれば、リン系化合物は、程よい硬化促進能を有する。また、詳細は不明だが、特にリン系化合物と、後述の硬化遅延剤とを併用することで、急激な硬化が抑えられ、その結果として流動性が確保されると考えられる。
【0068】
封止用樹脂組成物が硬化促進剤(C2)を含む場合、封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(C2)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
硬化促進剤(C2)の含有量の下限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、成形時に優れた流動性となり、充填性や成形性の向上が図られる。
硬化促進剤(C2)の含有量の上限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、電子装置としての耐湿信頼性や耐リフロ-性を向上させることができる。また、基材の反りの一層の抑制に寄与しうる。
【0069】
(無機充填材(D))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材(D)を含む。
無機充填材(D)として具体的には、シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレ-、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。
【0070】
無機充填材(D)は、シリカを含むことが好ましい。シリカとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等を挙げることができる。これらの中でも特に溶融球状シリカが好ましい。
【0071】
無機充填材(D)は、通常、粒子である。粒子の形状は、略真球状であることが好ましい。
無機充填材(D)の平均粒径は、特に限定されないが、典型的には1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μmである。平均粒径が適当であることにより、硬化時の適度な流動性を確保すること等ができる。なお、平均粒径を比較的小さくする(例えば1~20μm)ことで、例えば、最先端のウエハ-レベルパッケ-ジにおける狭いギャップ部分への充填性を高めることも考えられる。
無機充填材(D)の平均粒径は、レ-ザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製の湿式粒度分布測定機LA-950)により体積基準の粒子径分布のデ-タを取得し、そのデ-タを処理することで求めることができる。測定は、通常、湿式で行われる。
【0072】
シリカ等の無機充填材(D)には、シランカップリング剤などのカップリング剤による表面修飾が行われていてもよい。これにより、無機充填材(D)の凝集が抑制され、より良好な流動性を得ることができる。また、無機充填材(D)と他の成分との親和性が高まり、無機充填材(D)の分散性が向上する。このことは、硬化物の機械的強度の向上や、マイクロクラックの発生抑制などに寄与すると考えられる。
表面修飾のためのカップリング剤としては、後述のカップリング剤(F)として挙げているもの等を用いることができる
【0073】
封止用樹脂組成物は、無機充填材(D)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
無機充填材(D)の含有量の下限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して55質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。無機充填材(D)の含有量を適度に多くすることにより、低吸湿性などを向上させ、電子装置の耐湿信頼性や耐リフロ-性をより効果的に向上させることができる。特に、無機充填材(D)を適度に多くして、相対的に樹脂成分(エポキシ樹脂や硬化剤など)を少なくすれば、理論上は硬化収縮が少なくなるため、反りを一層低減しうる。また特に、無機充填材(D)を適度に多くして、相対的に樹脂成分を少なくすることで、封止用樹脂組成物を硬化物とした後の熱膨張変化を小さくすることができる。熱膨張変化が小さいと、反りの「悪化」を抑えやすくなるため、好ましい。
無機充填材(D)の含有量の上限値は特に無いが、例えば、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることがさらに好ましい。無機充填材(D)の含有量を適度に少なくすることにより、成形時の流動性の低下にともなう成形性の低下等を抑制することが可能となる。
【0074】
(硬化遅延剤(E))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、好ましくは、硬化遅延剤(E)を含む。硬化遅延剤(E)の使用により、急激な硬化が抑えられ、その結果として反りが一層低減されると考えられる。
【0075】
使用可能な硬化遅延剤(E)は特に限定されない。例えば、特開2018-039981号公報に記載のラクトン系化合物、特開2009-298975号公報に記載のシラン系化合物、特開2001-098248号公報の特に段落0046に記載の化合物、などを挙げることができる。
【0076】
硬化遅延剤(E)は、以下一般式(e)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(e)において、Xは2価の有機基を表す。
【0077】
【0078】
Xの2価の有機基として具体的には、エチレン基やメチルエチレン基などの置換もしくは無置換の脂肪族基、フェニレン基およびナフタレン基などの置換もしくは無置換の芳香族基などが挙げられる。特に、1,2-フェニレン基や2,3-ナフタレン基などの芳香族基が好ましい。脂肪族基および芳香族基における置換基としては、メチル基、エチル基、ターシャリーブチル基、メトキシ基、エトキシ基および水酸基などが挙げられる。
【0079】
Xの2価の有機基に対する2つのOH基の置換位置については、2価の有機基中の互いに隣接する2つの炭素原子のそれぞれに、1つずつOH基が置換していることが好ましい(ベンゼン環であれば一位と二位、など)。
【0080】
一般式(e)で表される化合物として具体的には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(o-カテコール)、4-メチル-o-カテコール、4-エチル-o-カテコール、4-ブロモ-o-カテコール、5-クロロ-o-カテコール、4-ニトロ-o-カテコール、4-ターシャリーブチル-o-カテコール、4-アミノメチル-o-カテコール、4-ヒドロキシメチル-o-カテコールなどのカテコール類、2,3-ジヒドロキシナフタレン、7-メチル-2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび6-メチル-2,3-ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレン化合物、ピロガロール、没食子酸および没食子酸メチルなどのピロガロール化合物などの、隣接水酸基を有する置換または無置換の芳香族類が好ましい。中でも、2,3-ジヒドロキシナフタレンを用いた場合、硬化遅延成分の潜伏化効果がより良好になるために好ましい。
【0081】
ちなみに、本発明者らの知見として、一般式(e)で表される化合物と、硬化促進剤(C2)におけるリン系化合物とを併用することが、良好な硬化挙動の点で好ましい。詳細は不明であるが、一般式(e)で表される化合物の2つのヒドロキシ基が、リン原子に配位することが関係していると推測される。この「配位」のしやすさの関係で、前述のように、Xの2価の有機基に対する2つのOH基の置換位置については、2価の有機基中の互いに隣接する2つの炭素原子のそれぞれに、1つずつOH基が置換していることが好ましいと考えられる。
【0082】
硬化遅延剤(E)を用いる場合、1のみの硬化遅延剤(E)を用いてもよいし、2以上の硬化遅延剤(E)を用いもよい。
硬化遅延剤(E)を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.01~0.5質量%とすることができる。
【0083】
(カップリング剤(F))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、好ましくは、カップリング剤(F)を含む。
封止用樹脂組成物がカップリング剤(F)を含むことにより、例えば、基材との密着性の更なる向上や、組成物中での無機充填材(D)の分散性の向上などを図ることができる。無機充填材(D)の分散性が向上すると、最終的に得られる硬化物の均質性が向上する。これは硬化物の機械的強度の向上などに寄与しうる。
【0084】
カップリング剤(F)としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
より具体的には、以下を例示することができる。
【0085】
・シラン系カップリング剤
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネ-トプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等。
【0086】
・チタネ-ト系カップリング剤
イソプロピルトリイソステアロイルチタネ-ト、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェ-ト)チタネ-ト、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネ-ト、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネ-ト、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネ-ト、ビス(ジオクチルパイロホスフェ-ト)オキシアセテ-トチタネ-ト、ビス(ジオクチルパイロホスフェ-ト)エチレンチタネ-ト、イソプロピルトリオクタノイルチタネ-ト、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネ-ト、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネ-ト、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネ-ト、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェ-ト)チタネ-ト、イソプロピルトリクミルフェニルチタネ-ト、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネ-ト等。
【0087】
封止用樹脂組成物がカップリング剤(F)を含む場合、カップリング剤(F)を1種のみ含んでもよいし、2種以上のカップリング剤(F)を含んでもよい。
カップリング剤(F)の含有量の下限は特にないが、例えば、封止用樹脂組成物の全体に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。カップリング剤(F)の含有量をこれら下限値以上とすることにより、カップリング剤(F)を添加することによる効果を十分に得やすくなる。
カップリング剤(F)の含有量の上限は特にないが、封止用樹脂組成物の全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。カップリング剤(F)の含有量をこれら上限値以下とすることにより、封止成形時における封止用樹脂組成物の流動性が適当となり、より良好な充填性や成形性を得やすい。
【0088】
(その他の成分)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに必要に応じて、pH調整剤/イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、離型剤、低応力剤,酸化防止剤、重金属不活性化剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0089】
pH調整剤/イオン捕捉剤(イオンキャッチャ-、イオントラップ剤などとも呼ばれる)としては、例えば、ハイドロタルサイト、ビスマス酸化物やイットリウム酸化物などを挙げることができる。
pH調整剤および/またはイオン捕捉剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤および/またはイオン捕捉剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.05~0.3質量%、好ましくは0.1~0.2質量%である。
【0090】
難燃剤としては、無機系難燃剤(例えば水酸化アルミニウム等の水和金属系化合物、住友化学株式会社等から入手可能)、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤などを挙げることができる。
難燃剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
難燃剤を用いる場合、含有量に特に制限はないが、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば10質量%以下、好ましくは1質量%以下である。これら上限値以下とすることにより、パッケ-ジの電気信頼性を保持することができる。
【0091】
着色剤としては、具体的には、カ-ボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等が挙げられる。
着色剤を用いる場合、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0092】
離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
離型剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0093】
低応力剤としては、例えば、シリコ-ンオイル、シリコ-ンゴム、ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン等のポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコ-ル、ポリオレフィングリコ-ル、ポリ-ε-カプロラクトン等の熱可塑性エラストマ-、ポリスルフィドゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ちなみに、低応力剤の中にはケイ素原子を含むものがあるが、低応力剤は、通常、前述のカップリング剤(F)とは異なる成分である。
【0094】
低応力剤は、好ましくはシリコ-ンオイル等のシリコ-ン化合物を含む。具体的には、オルガノポリシロキサンなどを挙げることができる。オルガノポリシロキサンとしては、その構造中にエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基などの官能基を含むものが好ましく、カルボキシル基、エポキシ基またはポリエ-テル基を含むものがより好ましい。シリコ-ン化合物の市販品としては、例えば、ダウ・東レ社製のFZ-3730、BY-750などが挙げられる。
【0095】
低応力剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
低応力剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.5~1.0質量%とすることができる。
【0096】
(封止用樹脂組成物/硬化物の特性)
本実施形態の封止用樹脂組成物、および/または、その硬化物の特性を適切に設計することにより、一層の反りの低減、かつ/または、反り以外の各種性能を向上させうる。
【0097】
本実施形態の封止用樹脂組成物を、175℃で4時間硬化させた硬化物の、50~70℃における平均線膨張係数CTE1は、好ましくは9.5ppm以下、より好ましくは9.0ppm以下である。さらに好ましくは8.0ppm以下である。CTE1の下限は特に限定されないが、現実的な材料設計の観点から、例えば3ppm以上である。
CTE1の値が適当であることにより、例えば、一層の反りの低減が期待される。
【0098】
本実施形態の封止用樹脂組成物を、175℃で4時間硬化させた硬化物の、25℃における曲げ弾性率E1は、好ましくは20GPa以下である。E1が20GPa以下となるように封止用樹脂組成物を設計することで、硬化物中に蓄積する応力が十分に小さくなり、反りが一層低減されると考えられる。
E1の下限は特に限定されないが、例えば10GPa以上である。E1が10GPa以上となるように封止用樹脂組成物を設計することで、硬化物の物理的な強度が十分に担保されやすくなると思われる。
【0099】
ちなみに、従来、CTE1とE1はトレードオフの関係にあり、CTE1を十分に小さくしつつ、E1も小さくすることは難しかった。本実施形態においては、粒子(A)を用いることで、トレードオフを脱却している。
【0100】
(封止用樹脂組成物の製法)
本実施形態の封止用樹脂組成物の製法は、特に限定されない。例えば、上述の各成分を、公知のミキサ-等で混合し、さらにロ-ル、ニ-ダ-または押出機等の混練機で溶融混練し、そして冷却、粉砕することで製造することができる。
【0101】
より具体的には、上述の原料成分を混合して混合物を作製する混合工程(S1)と、混合物を成形する成形工程(S2)とにより、本実施形態の封止用樹脂組成物を得ることができる。以下、混合工程(S1)および成形工程(S2)について説明する。
【0102】
・混合工程(S1)
混合工程(S1)は、原料成分を混合し、混合物を作製する工程である。混合する方法は限定されず、用いられる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
混合工程としては、具体的には、上述の封止用樹脂組成物が含む原料成分を、ミキサ-などを用いて均一に混合する。次いで、ロ-ル、ニ-ダ-または押出機等の混練機で溶融混練し、混合物を作製する。
【0103】
・成形工程(S2)
上記の混合工程(S1)に、次いで、混合物を成形する成形工程(S2)を行う。
成形する方法としては限定されず、封止用樹脂組成物の形状に応じて、公知の方法を用いることができる。封止用樹脂組成物の形状としては限定されず、例えば、顆粒状、粉末状、タブレット状、シ-ト状などが挙げられる。封止用樹脂組成物の形状は、成形方法に応じて選択できる。
【0104】
顆粒状の封止用樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、溶融混練後、冷却した混合物を粉砕する工程が挙げられる。なお、例えば、顆粒状とした封止用樹脂組成物をふるい分けして、顆粒の大きさを調節してもよい。また、例えば、顆粒状とした封止用樹脂組成物を、遠心製粉法またはホットカット法などの方法で処理し、分散度または流動性などを調製してもよい。
また、粉末状とした封止用樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒状の封止用樹脂組成物とし、その後、その顆粒状の封止用樹脂組成物をさらに粉砕する工程が挙げられる。
また、タブレット状の封止用樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒状の封止用樹脂組成物とし、その後、その顆粒状の封止用樹脂組成物を打錠成型する工程が挙げられる。
また、シ-ト状の封止用樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、溶融混練し、その後、混合物を押出成形またはカレンダ-成形する工程が挙げられる。
【0105】
(封止用樹脂組成物の性状)
封止用樹脂組成物の性状は、粉砕したままのパウダ-状のもの、粉砕後にタブレット状に打錠成型したもの、粉砕したものを篩分したもの、遠心製粉法、ホットカット法などで適宜分散度や流動性等を調整した造顆方法により製造した顆粒状のもの等であることができる。
【0106】
別の態様として、封止用樹脂組成物はシ-ト状であってもよい。シ-ト状の封止用樹脂組成物は、大面積のウエハ-レベルパッケ-ジやパネルレベルパッケ-ジの封止に好都合と考えられる。シ-ト状の封止用樹脂組成物は、例えば、各成分を溶融混練したものを、押出成形またはカレンダ-成形することで得ることができる。または、各成分を適当な溶媒に溶解させたものを、熱可塑性フィルム上に塗工し、乾燥させることによっても得ることができる。
【0107】
<封止用樹脂組成物の使用法、ウエハ-レベルパッケ-ジ、パネルレベルパッケ-ジおよび電子装置>
本実施形態の封止用樹脂組成物を用いて、好ましくは、複数個の電子部品が一括して封止されたウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジを製造することができる。また、これらウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジを個片化(切断)することで、電子装置を得ることができる。
別の言い方として、本実施形態の封止用樹脂組成物は、ウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジの製造において、基材表面に配設された複数個の電子部品(半導体チップ等)を、一度に一括して封止する用途に好ましく適用される。
以下、図面を参照しつつ、電子装置の製造方法の例を説明する。念のため述べておくが、電子装置の製造方法は、以下の例に限定されない。
【0108】
図1は、本実施形態の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されたウエハ-レベルパッケ-ジまたはパネルレベルパッケ-ジを得、そして個片化により電子装置50を得る工程を模式的に示すものである。
【0109】
まず、配設工程として、基材10上に、不図示の複数の電子部品を配設する。これにより回路面21を形成する(
図1(a))。
基材10は、電子装置の分野で知られている各種の基材を用いることができる。なお、典型的には、回路面21にはSiNなどが露出している。
基材10の大きさ・形状は、例えば、直径12インチの円形状(ウエハ-レベルパッケ-ジの場合)、縦300~800mm、横300~800mmの略長方形状(パネルレベルパッケ-ジの場合)である。
【0110】
次いで、回路面21の上に、後述の半田ボ-ル96と電子部品とを電気的に接続するために、メタルポストなどのバンプ22を形成する(
図1(b))。
次いで、封止工程として、封止用樹脂組成物を用いて、回路面21を覆うように封止材層30を形成する(
図1(c))。
次いで、封止材層30を削ることで、封止材層30からバンプ22を露出させる(
図1(d))。なお、封止材層30を形成する際に、
図1(d)のように、バンプ22が露出するように封止材層30を形成する場合、封止材層30は削らなくてもよい。
次いで、配線工程として、バンプ22に半田ボ-ル96を接続する(
図1(e))。
次いで、個片化工程として、封止材層30及び基材10を切断し、電子装置50を得る(
図1(f))。切断にはダイシングブレ-ドやレ-ザなどを用いることができる。なお、個片化する電子装置50に接続されるバンプ22及び半田ボ-ル96の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0111】
図2は、
図1とは別の電子装置50を得る工程を模式的に示すものである。この工程は、いわゆるFaN-Out型パッケ-ジの電子装置の製造に好ましく適用されるものである。
【0112】
まず、配設工程として、犠牲材70の剥離層71の上に、複数の電子部品20を、互いに離間するように配設する(
図2(a))。
剥離層71としては、例えば、接着力の低い接着剤や、発泡剤を含む樹脂などを用いることができる。これにより、後述する剥離工程にて、剥離層71と、電子部品20及び封止材層30とを容易に剥離することができる。
【0113】
次いで、封止工程として、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、封止用樹脂組成物を用いて、剥離層71及び全ての電子部品20の表面を覆うように電子部品を封止する。これにより封止材層30を形成する(
図2(b))。
【0114】
次いで、剥離工程として、剥離層71を剥離する(
図2(c))。
剥離の方法は、例えば、加熱処理、電子線照射、紫外線照射などにより、熱発泡性粘着剤からなる剥離層71を発泡させることで行うことができる。また、剥離層71が、接着色の低い接着剤からなる場合、発泡などを行わずに剥離工程を行うことができる。
【0115】
次いで、配線工程として、再配線用絶縁樹脂層80を形成する(
図2(d))。
再配線用絶縁樹脂層80は、例えば、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィ-法などによりパタ-ンを形成し、硬化処理を行うことで形成される。感光性樹脂組成物としては、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサイド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などを含むものを用いることができる。なお、再配線用絶縁樹脂層80には、ビアホ-ル82を形成してもよい。
【0116】
さらに、配線工程として、例えば
図2(e)のように、再配線用絶縁樹脂層80の全面に給電層をスパッタ等の方法で形成し、その後、給電層の上にレジスト層を形成し、所定のパタ-ンに露光、現像し、さらにその後、電解銅メッキにてビア92、再配線回路94を形成することができる。次いで、レジスト層を剥離し、給電層をエッチングすることができる。
さらに、例えば
図2(f)のように、配線工程として、再配線回路94に半田ボ-ル96を搭載することができる。次いで、再配線回路94及び半田ボ-ル96の一部を覆うようにソルダ-レジスト層98を形成することができる。
【0117】
次いで、個片化工程として、封止材層30、再配線用絶縁樹脂層80及びソルダ-レジスト層98を切断し、個片化された電子装置を得る個片化工程を行う(
図2(g))。
電子装置50に含まれる電子部品20の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0119】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0120】
<封止用樹脂組成物の製造>
まず、後掲の表に記載の配合量(単位:質量部)の各成分を、常温でミキサーを用いて混合して混合物を得た。
次に、その混合物を、70℃以上100℃以下の温度で加熱混練した。
そして、常温まで冷却し、その後粉砕して、封止用樹脂組成物を得た。
【0121】
表に記載の各原料成分の詳細は以下のとおりである。
【0122】
(有機粒子:ポリロタキサンを含む粒子(A))
ポリロタキサン粒子1:ハヤビーズSPシリーズ(80μm)、早川ゴム株式会社から入手した、平均粒径(カタログ値)80μmのポリロタキサン含有架橋微粒子
ポリロタキサン粒子2:ハヤビーズSPシリーズ(50μm)、早川ゴム株式会社から入手した、平均粒径(カタログ値)50μmのポリロタキサン含有架橋微粒子
ポリロタキサン粒子3:ハヤビーズSBシリーズ(7μm)、早川ゴム株式会社から入手した、平均粒径(カタログ値)7μmのポリロタキサン含有架橋微粒子
【0123】
(エポキシ樹脂)
・YL6677:以下構造の、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(75質量%)とビフェニル型エポキシ樹脂(25質量%)の混合物(三菱ケミカル社製)
【0124】
【0125】
・YX-4000K:以下構造のビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製)
【0126】
【0127】
(硬化剤)
・HE910-20:トリスフェニルメタン型フェノール樹脂(エアー・ウォーター社製)
【0128】
(硬化促進剤)
・PP-360:トリフェニルホスフィン(ケイ・アイ化成株式会社製)
【0129】
(硬化遅延剤)
・2,3-ジヒドロキシナフタレン
【0130】
(無機充填材)
・TS12-079-5:マイクロン社製、平均粒径20μmの球状溶融シリカ
・SC-2500-SQ:アドマテックス社製、平均粒径0.6μmの球状溶融シリカ
・SC-5500-SQ:アドマテックス社製、平均粒径1.6μmの球状溶融シリカ
【0131】
(カップリング剤)
・CF-4083:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(ダウ・東レ株式会社製)
【0132】
(着色剤)
・カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、カーボン♯5)
【0133】
(イオン捕捉剤)
・DHT-4H:ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社、DHT-4H)
【0134】
(離型剤)
・WE-4:グリセリントリモンタン酸エステル(クラリアントジャパン株式会社、リコルブWE-4)
【0135】
<硬化物の作製と、硬化物の特性の測定>
(硬化物の作製)
まず、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分の条件で封止用樹脂組成物を金型に注入成形し、試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間の条件で熱処理し、その後放冷した以上により、評価用の硬化物を作製した。
なお、以下の各種評価のため、以下4種の金型を用いて、硬化物を作製した。
・線膨張係数の測定用:長さ15mm、縦3mm、横4.5mm
・曲げ弾性率の測定用:長さ80mm、縦4mm、横10mm
・ガラス転移温度の測定用:長さ20mm、幅10mm、厚み1.5mm
・成形収縮率の評価用:円盤状(直径90mm、厚み5mm)
【0136】
(硬化物の線膨張係数CTE1)
評価用の硬化物を、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス製、TMA7100)にセットし、温度範囲:-65℃から400℃、昇温速度:5℃/分の条件で測定した。
測定データを解析し、50~70℃における平均線膨張係数CTE1を求めた。
【0137】
(硬化物の曲げ弾性率)
評価用の硬化物について、テンシロン試験機を用いて、25℃における曲げ弾性率E1を、JIS K 6911に準じて求めた。
【0138】
(硬化物のガラス転移温度)
評価用の硬化物を、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)にセットし、温度範囲30℃から300℃、昇温速度5℃/分の条件で測定した。
貯蔵弾性率E'および損失弾性率E''を測定し、両者の比であるtanδ(E''/E')のピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
【0139】
<成形収縮率の評価>
成形収縮率の評価用のサンプル(円盤状)の直径をノギスで計測した。計測された直径と、成形に用いた金型の直径から、成形収縮率(%)を求めた。
【0140】
<反りの評価>
厚み0.775mm、直径300mm(12インチ)のシリコンウエハーの片面に、金型温度150℃、成形圧力6MPa、硬化時間5分の条件で、封止用樹脂組成物を圧縮成形した。このとき、成形樹脂厚は0.5mmとなるようにした。これにより、ウエハーレベルパッケージを得た。
得られたウエハーレベルパッケージを、樹脂面が上となるように平面上に置いた。そして、ウエハー上面の、予め定めておいた8点の、平面からの高さを測定した。そして、測定された高さの平均値を反り量とした
【0141】
封止用樹脂組成物の組成を表1に、測定/評価結果を表2に示す。
【0142】
【0143】
【0144】
実施例1~3においては、比較例1よりも反りが低減された。
実施例4および5においても、成形収縮率が比較例1より小さく、かつ、曲げ弾性率も比較例1より小さいことから、基材の反りを低減可能であると考えられる。