IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京製綱株式会社の特許一覧

特開2022-125591落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法
<>
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図1
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図2
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図3
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図4
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図5
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図6
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図7
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図8
  • 特開-落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125591
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20220822BHJP
   E01F 15/06 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
E01D19/10
E01F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023263
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】堀 辰嘉
(72)【発明者】
【氏名】大野 将志
【テーマコード(参考)】
2D059
2D101
【Fターム(参考)】
2D059GG29
2D059GG57
2D101CA07
2D101EA02
2D101FA13
2D101FA25
2D101FA34
2D101FB12
(57)【要約】
【課題】橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を、低コスト、短工期で引き留めるための施設、工法の提供。
【解決手段】地中に埋設される埋設部12と、地表に突出する頭部11と、頭部11に形成され、落下防止用ワイヤー2の端末部が挿通される穴部と、当該穴部に挿通された前記端末部を係止する係止部13と、を備える落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1によって、落下防止用ワイヤー2の端末を引き留めることにより、低コスト化、短工期化を図る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を引き留めるための鋼管杭であって、
地中に埋設される埋設部と、
地表に突出する頭部と、
前記頭部に形成され、前記落下防止用ワイヤーの端末部が挿通される穴部と、
前記穴部に挿通された前記端末部を係止する係止部と、
を備えることを特徴とする落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項2】
前記穴部が複数形成されており、又は、前記穴部が長孔として形成されており、
前記係止部が、前記頭部に対する接触角度を異ならせた複数の係止部材から、選択可能であることにより、前記端末部の取り付け角度を変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項3】
前記係止部が、前記端末部が挿通される際に前記穴部に入る側に設けられる第1の座金部材と、前記穴部から出る側に設けられる第2の座金部材と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項4】
前記第1の座金部材と前記第2の座金部材が、前記端末部を係止するためのプレート部と、前記プレート部と前記頭部の間に配されるスペーサー部と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項5】
前記頭部が円筒状の部材であり、前記スペーサー部の、前記頭部と接触する接触面が、前記円筒状の形状に沿うような湾曲部を有することを特徴とする請求項4に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項6】
前記係止部よりも下の位置に下部フランジ部が形成されることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項7】
前記係止部よりも上の位置に上部フランジ部が形成されることを特徴とする請求項6に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭によって、落下防止用ワイヤーの端末が引き留められていることを特徴とする橋梁。
【請求項9】
橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を引き留めるための工法であって、
橋梁の両端部付近に鋼管杭を打設するステップと、
前記鋼管杭の頭部に、前記落下防止用ワイヤーの端末部を締結するステップと、
を有することと特徴とする落下防止用ワイヤーの引留め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に設けられている落下防止用ワイヤーの端末を引き留めるための落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭、これを用いた橋梁、及び、落下防止用ワイヤーの引留め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁においては、車両の積荷などが橋梁から落下することを防止するための落下物防止柵や、防音のための防音フェンス等の、道路付属物が設けられており、この道路付属物が橋梁から落下することを防止するため、落下防止用ワイヤーが備えられている。
特許文献1では、このような落下防止用ワイヤーに関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-328677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
落下防止用ワイヤーの係留は、橋梁の中間部においては、特許文献1の図8にも示されているように、壁高欄の外側面に対して金具を用いて固定する等して行われている。しかし橋梁の両端部においては、壁高欄に対する係留ができない場合があり、この場合、橋梁の両端部付近における法面等に、コンクリート基礎を打設して、当該コンクリート基礎に対して金具を用いて固定するようにしていた。
しかしながら、コンクリートの打設や養生のためにコストや時間がかかるという問題があり、特に法面などの傾斜地でこれを行う場合にはさらに手間のかかるものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を、低コスト、短工期で引き留めるための施設、工法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を引き留めるための鋼管杭であって、地中に埋設される埋設部と、地表に突出する頭部と、前記頭部に形成され、前記落下防止用ワイヤーの端末部が挿通される穴部と、前記穴部に挿通された前記端末部を係止する係止部と、を備えることを特徴とする落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0007】
(構成2)
前記穴部が複数形成されており、又は、前記穴部が長孔として形成されており、前記係止部が、前記頭部に対する接触角度を異ならせた複数の係止部材から、選択可能であることにより、前記端末部の取り付け角度を変更可能であることを特徴とする構成1に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0008】
(構成3)
前記係止部が、前記端末部が挿通される際に前記穴部に入る側に設けられる第1の座金部材と、前記穴部から出る側に設けられる第2の座金部材と、を備えることを特徴とする構成1又は2に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0009】
(構成4)
前記第1の座金部材と前記第2の座金部材が、前記端末部を係止するためのプレート部と、前記プレート部と前記頭部の間に配されるスペーサー部と、を備えることを特徴とする構成3に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0010】
(構成5)
前記頭部が円筒状の部材であり、前記スペーサー部の、前記頭部と接触する接触面が、前記円筒状の形状に沿うような湾曲部を有することを特徴とする構成4に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0011】
(構成6)
前記係止部よりも下の位置に下部フランジ部が形成されることを特徴とする構成1から5の何れかに記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0012】
(構成7)
前記係止部よりも上の位置に上部フランジ部が形成されることを特徴とする構成6に記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭。
【0013】
(構成8)
構成1から7の何れかに記載の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭によって、落下防止用ワイヤーの端末が引き留められていることを特徴とする橋梁。
【0014】
(構成9)
橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を引き留めるための工法であって、橋梁の両端部付近に鋼管杭を打設するステップと、前記鋼管杭の頭部に、前記落下防止用ワイヤーの端末部を締結するステップと、を有することと特徴とする落下防止用ワイヤーの引留め方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭によれば、橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を、低コスト、短工期で引き留めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る実施形態の橋梁を示す概略図
図2】落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭の頭部部分を示す図
図3】落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭の頭部部分を示す図
図4】係止部材(第1の座金部、第2の座金部)を示す図
図5】別の係止部材(第1の座金部、第2の座金部)を示す図
図6】落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭の頭部部分を示す図
図7】実施形態の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭の性能試験の試験方法を説明する概略図
図8】性能試験の様子を示す写真
図9】性能試験の様子を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態の橋梁の本発明に関連する部分を示す概略図である。
本実施形態の橋梁100は、車が落下しないようにするためのコンクリート防護柵である壁高欄3と、橋梁から物が落ちることを防止するために壁高欄3に設けられた落下物防止柵4と、落下物防止柵4が落下することを防止するための落下防止用ワイヤー2と、落下防止用ワイヤー2の端末を引き留めるために、橋梁の両端部付近に打設された落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1と、を備える。
本願における“橋梁”とは、河川橋、陸上橋、高架橋、跨道橋、跨線橋、海上橋、歩道橋等を含むが、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1以外の、橋梁の構成は、従来と同様である(任意のものであってよい)ため、ここでの詳しい説明を省略する。
なお、以下、橋梁の長手方向(図1中の左右方向)を“橋延在方向”という。
【0019】
落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1は、
鋼管杭として打設されることで、地中に埋設される埋設部12と、
地表に突出する頭部11と、
頭部11に形成され、落下防止用ワイヤー2の端末部が挿通される穴部H1、H2(図2,3参照)と、
穴部H1、H2に挿通された端末部を係止する係止部13と、
係止部13よりも下の位置に形成される下部フランジ部14Aと、
係止部13よりも上の位置に形成される上部フランジ部14Bと、
を備える。
本実施形態の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1は、基本態様としては、頭部11と埋設部12が連続した1本の円筒状の鋼管杭である。
【0020】
図2は、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1の頭部11部分(特に係止部13部分)を説明するための、一部を断面的に示した図である。
落下防止用ワイヤー2は、その端末処理として、ネジエンド(ロープの端末にかしめて締結される金具であって、ロープ端部をネジにするもの)21が取り付けられ、さらにカプラー22でネジ棒23が接続されている。これによって落下防止用ワイヤー2の端部が形成されている。
本実施形態では、落下防止用ワイヤー2の端部の構成を上記のものとしているが、これに限られるものではなく、下記で説明する係止部13(座金部材13Aのプレート部131)に対して固定することができる任意の構成であってよい。
【0021】
図3は、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1の頭部11部分を示す図であり、橋延在方向に沿った方向から見た穴部H1、H2を示す図である。
図2、3に示されるように、本実施形態では、穴部H1、H2は長孔であり、橋延在方向の両端となる箇所に配される。
穴部H1、H2は、頭部11の直径との関係において、図2中のθが0°~30°の範囲にできるような寸法にて形成される。即ち、図2のように、挿入側(図2の右側)の穴部H1と、出る側(図2の左側)の穴部H2に挿通される落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θが、0°~30°の範囲で調整できるように穴部H1、H2の高さ方向の寸法が形成される。
ここでは、挿入側(図2の右側)の穴部H1と、出る側(図2の左側)の穴部H2が同じ寸法で形成されるものを例としているが、何れか一方のみを長孔として、他方はほぼ丸穴とするものであってもよい。即ち本実施形態では、何れの穴部H1、H2についても長孔であり、従ってこれに挿通される落下防止用ワイヤー2の端末部の上下方向の位置を、両サイドで調整することが可能である。一方、何れか一方についてのみ長孔として上下方向の位置調整を可能とし、他方については略丸穴として上下方向の位置調整ができないものであってもよい。略丸穴側を支点として、長孔側で上下方向の位置調整することで、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θを0°~30°の範囲で調整し得るものである。なお支点側においても落下防止用ワイヤー2の端末部が0°~30°の範囲で入ることを許容する必要があるため、厳密には長孔となる。
また、ここでは穴部H1、H2を長孔とすることで、落下防止用ワイヤー2の端末部の上下方向の位置を調整可能とするものを例としているが、これに限られるものではない。例えば、穴部H1、H2の何れか若しくは両方を、上下方向に複数形成される略丸穴とし、挿通する穴の選択によって落下防止用ワイヤー2の端末部の上下方向の位置を調整可能とするもの等であってもよい。
【0022】
図4は、係止部13を構成する座金部材(係止部材)13Aを示す図(各平面図)である。
係止部13は、落下防止用ワイヤー2の端末部が挿通される穴部H1側に設けられる第1の座金部材と、穴部H2側に設けられる第2の座金部材と、を有する。本実施形態においては、第1の座金部材と第2の座金部材は、図4に示される同じ座金部材13Aで構成される。座金部材13Aを、第1の座金部材と第2の座金部材で上下逆にして使用するものである。
座金部材13Aは、落下防止用ワイヤー2の端末部を係止するためのプレート部131と、プレート部131と頭部11の間に配されるスペーサー部132と、を備える。プレート部131の略中央部には、落下防止用ワイヤー2の端末部が挿通される穴H3が形成されている。
図4(b)に示されるように、スペーサー部132の、頭部11と接触する接触面が、頭部11の円筒状の形状に沿うような湾曲部を有している。これにより、頭部11の側面に局部的に荷重がかかるようなことが抑制され、鋼管が局部的に凹んで座屈してしまうといったことを抑制することができる。
本実施形態では、プレート部131やスペーサー部132の外形が、平面視において矩形状のものであるが(図4(a)参照)、円形状など、任意の形状のものであってよい。
【0023】
また、スペーサー部132は、プレート部131と頭部11の相対角度を調整する部材である。図4で示される座金部材13Aは、頭部11に対してプレート部131が30°傾くように構成されているものである。図2からも理解されるように、頭部11に対するプレート部131の角度は、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θと同様であり、スペーサー部132は、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θを規定しているものである。
係止部13を構成する座金部材(係止部材)は、頭部11に対する接触角度を異ならせた複数の部材が用意される。図5には、そのようなものの一例を示した。図5(a)は、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θが0°となる座金部材13B、図5(b)は、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θが15°となる座金部材13Cをそれぞれ示している。なお、本実施形態では、座金部材として、0°、15°、30°の3種類を用意するものを例としているが、4種類以上の座金部材を用意しておくものであってもよいし、2種類あるいは1種類のみとするものであってもよい。
【0024】
上部フランジ部14Bと、下部フランジ部14Aは、それぞれ頭部11の外周に嵌るリング状の部材が溶接などによって固着されることで形成される。本実施形態における上部フランジ部14Bと下部フランジ部14Aは、平面視でその外形が矩形状のものであるが、円形状など、任意の形状のものであってよい。
図1に示されるように、下部フランジ部14Aは係止部13よりも下の位置に形成され、上部フランジ部14Bは係止部13よりも上の位置に形成されるため、上下のフランジの間に係止部13が位置する構成となる。
フランジ部が形成される箇所では、鋼管の厚さがフランジの幅の分だけ増加するものとみなすことができる。これにより、仮に落下防止用ワイヤーに生じた張力に基づいて係止部13にかかった力によって、局所的に鋼管に変形が生じた(断面形状が円形でなくなる)ような場合でも、その変形の範囲を上下のフランジの間に留めるようにすることができる。
フランジ部は鋼管の強度向上に資すると共に、鋼管の設計を容易にし得る効果もある。下部フランジ部14Aを設けることにより、下部フランジ部14Aよりも下の部分の強度計算においては、下部フランジ部14Aの位置に荷重がかかる固定端モーメントとして考えればよい(計算を単純化できる)ため、鋼管の設計が容易になるものである。
【0025】
図6は、頭部11の先端に嵌められるキャップ部材を説明するための図である。
同図に示されるように、頭部11の先端にはキャップ部材15が設けられる。キャップ部材15には、頭部11の内部に挿入される脚部151が形成されており、脚部151と頭部11を貫通してボルト止めされることで、キャップ部材15が頭部11に取り付けられる。
【0026】
次に、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1による、落下防止用ワイヤー2の端末の引留め方法に関して概略説明する。なお、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1を除く橋梁100については、落下防止用ワイヤー2の端末処理を含めて、既に施工済みであるものとする。
先ず、橋梁100の両端部付近における適切な場所に鋼管杭を打設する。鋼管杭は、鋼管に穴部H1、H2が形成され、上部フランジ部14Bと、下部フランジ部14Aが溶接されている状態のものである。鋼管杭の打設は、一般的な杭打機を用いて簡単に施工することができる。
次に、図2に示されるように、2つの座金部材13Aを、第1の座金部材と第2の座金部材として上下逆に配しつつ、落下防止用ワイヤー2の端末部を、穴部H1、H2とプレート部131の穴H3に挿通し、それぞれにおいてナットNで締結することで、頭部11に落下防止用ワイヤー2の端末部を締結する。また、キャップ部材15を頭部11に取り付ける。
以上のように、比較的簡便且つ短時間の作業にて落下防止用ワイヤー2の端末を締結することができる。
【0027】
なお、橋梁100の構造等に基づく、落下防止用ワイヤー2の位置の相違や、現場の状況に基づく落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1の打設位置の相違などの影響によって、落下防止用ワイヤー2の角度(落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θ)が変化する。
本実施形態の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1によれば、施工現場で決まる落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θに対し、座金部材13A~13Cの中から最も適当なものを選択して、落下防止用ワイヤー2の端末部の取り付け角度を変更することができる。
落下防止用ワイヤー2の角度と、端末部の角度θに大きなズレがあると、落下防止用ワイヤー2とネジエンド21との接合部において、ワイヤーが屈曲して応力がかかってしまい、好ましくないが、本実施形態の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1によれば、このような問題を抑制できる。
【0028】
以上のごとく、本実施形態の橋梁100(落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1)によれば、橋梁に設けられている柵などの道路付属物が落下することを防止するための落下防止用ワイヤーの端末を、低コスト、短工期で引き留めることができる。落下防止用ワイヤーを引き留めるためにコンクリート基礎を打設するようなものに比較して、省スペースで落下防止用ワイヤーを引き留めることができる。
また、落下防止用ワイヤーの角度に合わせた適切な施工を簡便に行うことができる。
加えて、下部フランジ部を備えることによって鋼管の設計が容易になり、上部フランジ部と下部フランジ部を備えることによって、鋼管の強度が向上されている。
【0029】
なお、本実施形態では、落下防止用ワイヤーが1本であるもの例としているが、落下防止用ワイヤーが複数本であってもよい。
この際に複数本の落下防止用ワイヤーを1本の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭に締結するようにしてもよいし、各落下防止用ワイヤー毎にそれぞれ落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭を設ける(即ち、複数本の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭を打設する)ものであってもよい。複数本の落下防止用ワイヤーを1本の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭に締結する場合、頭部に、落下防止用ワイヤーを挿通する穴部と、落下防止用ワイヤーを係止する係止部を、それぞれ複数形成する等すればよい。
【0030】
本実施形態では、落下防止用ワイヤーが、落下物防止柵の落下を防止するためのものである場合を例としたが、落下防止用ワイヤーは、その他の任意の道路付属物(例えば防音フェンス等)の落下を防止させるものであってよい。
【0031】
本実施形態では、落下防止用ワイヤー2の端末部の角度θの調節範囲が0°~30°であるものを例としているが、これ以外の範囲にまで調節可能とするものであってもよい。ただし、角度が大きくなってくると、かかる荷重の垂直成分(即ち、杭を引き抜く力)が大きくなるため好ましくない。この観点から水平面に対して±30°以下であることが好ましい。
【0032】
なお、落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭に用いる鋼管は、必要な耐力を満足するものであれば、任意の鋼管を利用することができる。即ち、長さ、肉厚、直径、材質などの仕様は、必要な耐力を満足す得る範囲で適宜選択すればよい。円管に限られるものではなく、角管等であっても構わない。また、内部にセメントミルク等の充填物を充填するものや2重管を用いるもの等であっても勿論よい。
【0033】
次に、実施形態の落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1について行った性能試験について説明する。
図7には、当該試験の試験方法の概略を示した。図7に示されるように、実施形態で説明した落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1を打設してワイヤロープ2を引留め、回転支持部材を用いてワイヤロープ2の角度を所定角度にしつつ、ロードセルを介して油圧ジャッキ(不図示)でワイヤロープ2を牽引する試験を行った。
表1に、鋼管杭1の鋼管サイズや、ワイヤロープの仕様等の試験条件を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
試験時にワイヤロープに発生させる張力は以下の通りとした。
使用荷重(P)=規格破断荷重(RBS)kN/(安全率(F)×2)
φ6.3:規格破断荷重19.9KN/(安全率(F)×2)=9.95kN
φ8.0:規格破断荷重32.1KN/(安全率(F)×2)=16.05kN
φ12.0:規格破断荷重72.3KN/(安全率(F)×2)=36.15kN
なお、表1中の”落下防止用ワイヤ端部用PL(角度)”は、使用した座金部材を示すものであり、0°は座金部材13B(図5(a))、30°は座金部材13A(図4)のものをそれぞれ示す。
【0036】
表2及び表3に試験結果を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
図8図9には、試験の実施の様子を示す写真の一部を示した。
図8(a)は、試験条件を鋼管杭:φ114.3mm×t6mm×2400mm、ワイヤロープ:φ6.3mm、ワイヤロープ取付け角度:24°とした場合の、試験前の状態であり、図8(b)は、試験後の状態の写真である。
図9(a)は、試験条件を鋼管杭:φ114.3mm×t6mm×2400mm、ワイヤロープ:φ6.3mm、ワイヤロープ取付け角度:0°とした場合の、試験前の状態であり、図9(b)は、試験後の状態の写真である。
【0040】
試験の結果、何れの条件においても、各ワイヤロープの引張荷重に対して、杭の変位及び残留変位は僅かであり許容範囲であった。
落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭1が、十分な性能を有しており、従来工法であるコンクリート基礎と同等の性能を発揮することが示された。
【符号の説明】
【0041】
100...橋梁
1...落下防止用ワイヤー端末引留用鋼管杭
11...頭部
12...埋設部
13...係止部
13A...座金部材(係止部材)
131...プレート部
132...スペーサー部
14A...下部フランジ部
14B...上部フランジ部
1...
2...落下防止用ワイヤー
4...落下物防止柵(道路付属物)
H...穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9