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特開2022-125599搬送資材を覆うカバー、およびカバーを含む資材搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125599
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】搬送資材を覆うカバー、およびカバーを含む資材搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/02 20060101AFI20220822BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220822BHJP
【FI】
G05B9/02 B
G05D1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023274
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】森山 湧志
【テーマコード(参考)】
5H209
5H301
【Fターム(参考)】
5H209AA09
5H209BB09
5H209BB13
5H209FF08
5H209HH04
5H209JJ01
5H209JJ03
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG06
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】搬送ロボットによる資材搬送の安全性を向上させること。
【解決手段】資材を自動搬送するロボットを緊急停止させるための治具として、ロボットによって牽引される荷台上に搭載された資材を覆うカバーが提供される。このカバーは、可撓性のシート、シート上に取り付けられた少なくとも一つの衝突センサ、および制御装置を備える。制御装置はシート上に配置され、少なくとも一つの衝突センサと電気的に接続される。前記制御装置は、少なくとも一つの衝突センサが衝撃を感知した際、または少なくとも一つの衝突センサが断線した際、ロボットに対し、ロボットの動作を停止するための命令を無線送信するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットによって牽引される荷台上に搭載された資材を覆うカバーであり、
可撓性のシート、
前記シート上に取り付けられた少なくとも一つの衝突センサ、および
前記シート上に配置され、前記少なくとも一つの衝突センサと電気的に接続される制御装置を備え、
前記制御装置は、前記少なくとも一つの衝突センサが衝撃を感知した際、または前記少なくとも一つの衝突センサが断線した際、前記ロボットに対し、前記ロボットの動作を停止するための命令を無線送信するように構成されるカバー。
【請求項2】
前記少なくとも一つの衝突センサは、互いに着脱可能なように電気的に接続される複数の衝突センサを含む、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記シートは、
前記制御装置が配置される領域、および
前記少なくとも一つの衝突センサが配置され、前記領域と一体化されて前記領域から延伸する少なくとも一つのフラップを有する、請求項1に記載のカバー。
【請求項4】
前記少なくとも一つのフラップは、前記領域を介して互いに離隔する複数のフラップを含む、請求項3に記載のカバー。
【請求項5】
前記少なくとも一つのフラップは第1から第nのフラップを含み
前記少なくとも一つの衝突センサは第1から第nの衝突センサを含み、
前記第1から第nの衝突センサから選択される第kの衝突センサは、前記第1から第nのフラップから選択される第kのフラップ上に取り付けられ、
前記第kの衝突センサは、前記第1から第nの衝突センサから選択される第(k+1)の衝突センサと着脱可能なように電気的に接続され、
nは1より大きい自然数であり、kは1から(n-1)の自然数から選択される変数である、請求項4に記載のカバー。
【請求項6】
前記少なくとも一つの衝突センサは、複数のセンサスイッチを含むテープ状センサであり、
前記テープ状センサの一端と他端は、いずれも前記複数のフラップから選択される一つの上に設けられる、請求項4に記載のカバー。
【請求項7】
前記シートは、隣接する前記フラップを互いに固定する固定治具をさらに有する、請求項4に記載のカバー。
【請求項8】
前記少なくとも一つの衝突センサは複数の衝突センサを含み、
前記制御装置はさらに、隣接接続される前記衝突センサ間で断線が生じた際、前記ロボットに対して前記命令を無線送信するように構成される、請求項1に記載のカバー。
【請求項9】
前記制御装置は第1のスイッチを備え、前記第1のスイッチが操作された際に前記命令を前記ロボットに無線通信するように構成される、請求項1に記載のカバー。
【請求項10】
前記制御装置は第2のスイッチを備え、前記第2のスイッチが操作された際、前記動作を再開する命令を前記ロボットに対して無線通信するように構成される、請求項1に記載のカバー。
【請求項11】
前記制御装置は音声出力部を備え、前記少なくとも一つの衝突センサが前記衝撃を感知した際に音声出力部から音を出力させるように構成される、請求項1に記載のカバー。
【請求項12】
前記ロボット、および請求項1に記載のカバーを含む資材搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、自動搬送される荷台上に搭載された資材を覆うカバーに関する。あるいは、本発明の実施形態の一つは、荷台を自動搬送するロボットと上記カバーを含む資材搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の技術開発が進み、例えば工事現場や建設現場などにおいて資材が搭載された荷台(台車)を自動搬送する搬送ロボットが開発されるに至っている。例えば特許文献1に開示された搬送ロボットは、資材が搭載された荷台の下に潜り込んだ後に荷台を持ち上げ、この状態で自動走行する。搬送ロボットを自動走行させながら資材を搬送することで、資材搬送のための人的資源が節約できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-59460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、搬送ロボットによる資材搬送の安全性を向上させることを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、搬送ロボットを緊急停止させるための治具、およびこの治具を有する搬送システムを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、ロボットによって牽引される荷台上に搭載された資材を覆うカバーである。このカバーは、可撓性のシート、シート上に取り付けられた少なくとも一つの衝突センサ、および制御装置を備える。制御装置はシート上に配置され、少なくとも一つの衝突センサと電気的に接続される。前記制御装置は、少なくとも一つの衝突センサが衝撃を感知した際、または少なくとも一つの衝突センサが断線した際、ロボットに対し、ロボットの動作を停止するための命令を無線送信するように構成される。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、資材が搭載された荷台を牽引するロボット、および資材を覆うカバーを含む資材搬送システムである。カバーは、可撓性のシート、シート上に取り付けられた少なくとも一つの衝突センサ、および制御装置を備える。制御装置はシート上に配置され、少なくとも一つの衝突センサと電気的に接続される。前記制御装置は、少なくとも一つの衝突センサが衝撃を感知した際、または少なくとも一つの衝突センサが断線した際、ロボットに対し、ロボットの動作を停止するための命令を無線送信するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る実施形態により、自動搬送ロボットによる資材搬送の際、資材の衝突や荷崩れなどの事故に迅速に対応して自動搬送ロボットの移動を速やかに停止させることができる。このため、資材搬送における安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一つであるカバーの使用態様を示す模式的斜視図。
図2】本発明の実施形態の一つであるカバーの模式的側面図と上面図。
図3】本発明の実施形態の一つであるカバーに設けられる衝撃センサの模式的上面図と端面図。
図4】本発明の実施形態の一つであるカバーの制御装置のブロック図、および本発明の実施形態の一つである資材搬送システムに含まれるロボットのブロック図。
図5】本発明の実施形態の一つであるカバーに含まれる衝撃センサと制御装置の一部の等価回路図。
図6】本発明の実施形態の一つである資材搬送システムに含まれるロボットの模式的上面図と側面図。
図7】本発明の実施形態の一つであるカバーの模式的上面図。
図8】本発明の実施形態の一つであるカバーの模式的上面図。
図9】本発明の実施形態の一つであるカバーの模式的上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一または類似の構造を有する複数の要素をそれぞれ区別して表記する際には、符号の後にハイフンと自然数を付す。同一または類似の構造を有する複数の要素を纏めて表記する際には、符号のみを用いる。
【0011】
1.カバーの構成
本発明の実施形態の一つに係る治具であるカバー100の使用態様を表す模式的斜視図と側面図をそれぞれ図1図2(A)に、カバー100の模式的上面図を図2(B)に示す。これらの図に示すように、カバー100は、自動搬送ロボット(以下、単にロボットと記す)150によって牽引される荷台104上に搭載された資材102を覆うように構成される。資材102に制約はなく、例えば建設現場や工事現場などで使用される各種材料、工具、装置でもよく、あるいはオフィスで使用される紙や段ボール、机、いすなどの各種事務用品でもよい。あるいは、レストランで本発明の実施形態を適用する場合には、食材や調理器具のみならず、テーブルや椅子、提供される料理などでもよい。図1に示す例では、ビルの外壁に用いられるパネルに例示される平板状の資材102が示されている。図1に示されるように、資材102の大きさは荷台104よりも大きくてもよい。すなわち、水平面における荷台104の天板106の占有面積よりも大きな占有面積を有していてもよい(図1図2(A)参照)。
【0012】
カバー100は、可撓性のシート110、少なくとも一つの衝撃センサ112、および制御装置130を含む。少なくとも一つの衝撃センサ112は複数の衝撃センサ112を含んでもよい。
【0013】
1-1.シート
シート110は資材102を覆うような大きさ、形状を有することができ、綿や麻などの天然繊維、またはポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどに例示される人工高分子を含む。シート110は可視光を透過するように構成されてもよく、可視光を透過しないように構成されてもよい。シート110は資材102の全体を覆うような形状と大きさを有してもよいが、資材102の一部を覆うように構成されてもよい。好ましくは、資材102の上側を覆うとともに、荷台104が移動する際に障害物と衝突し得る部分を覆うように構成、配置される。例えば図1図2(A)に示すように資材102の全体形状が直方体と見做せる場合には、その上面を覆うとともに、各側面の全体または一部を覆うように構成、配置される。
【0014】
したがって、図2(B)に示すように、シート110は、資材102の上面を覆う領域110aを有するとともに、資材102の側面(横側)を覆う少なくとも一つのフラップ110bを備えてもよい。フラップ110bは、領域110aと一体化され、領域110aから延伸する。少なくとも一つのフラップ110bは、領域110aを介して互いに離隔する複数のフラップ110bを含んでもよい。複数のフラップ110bを有する場合に、その数は任意に設定できる。例えば図2(B)に示すように、複数のフラップ110bは四つのフラップ(第1のフラップ110b-1、第2のフラップ110b-2、第3のフラップ110b-3、第4のフラップ110b-4)を有することができる。この場合、一対のフラップ(例えば第1のフラップ110b-1と第3のフラップ110b-3、または第2のフラップ110b-2と第4のフラップ110b-4)が領域110aを挟持するように配置すればよい。フラップ110bを設けることで、シート110の一部を領域110aから下に垂れ下げることができるため、障害物と衝突する可能性の高い資材102の側面を覆い、かつ、資材102の側面の間(すなわち、角)でシート110が水平方向にはみ出すことを防ぐことができる。
【0015】
1-2.衝撃センサ
カバー100を構成する衝撃センサ112は、シート110の一方の面に取り付けられ、制御装置130と電気的に接続される。例えば図1から図2(B)に示すように、衝撃センサ112はフラップ110bに取り付けられる。フラップ110bの取り付けは、接着剤を用いてシート110に半恒久的に行ってもよく、図示しない面ファスナーを用いて取り付けてもよい。すなわち、フック上に起毛されたテープとループ状に起毛されたテープの一方をシート110に、他方を衝撃センサ112に設け、これらのテープを接触させてシート110に衝撃センサ112を取り付けてもよい。この方法を適用することで、衝撃センサ112の着脱が可能となる。
【0016】
衝撃センサ112は、テープ状のセンサであり、図3(A)の上面図と図3(A)の鎖線A-A´に沿った模式的端面図(図3(B))に示すように、長手方向に延伸する下部電極118、下部電極118の上に位置する複数の上部電極122、下部電極118と上部電極122を絶縁し、これらを互いに離隔させるスペーサ120、および下部電極118、上部電極122、スペーサ120を封止する封止部材116を基本的な構成として備える。複数の上部電極122は、一つの上部電極として一体化されていてもよい。下部電極118は、共通電極115Aと電気的に接続され、複数の上部電極122は、センシング電極115Bと電気的に接続される。なお、説明を簡便化するために、以下、共通電極115Aおよびセンシング電極115Bを総じて衝撃センサ112の取出し配線115とも呼ぶ。
【0017】
衝撃センサ112に衝撃が加わると、図3(B)に示すように、この衝撃の力によって封止部材116が変形し、上部電極122と下部電極118が接触して導通する。したがって、各上部電極122およびこれと重なる下部電極118の一部は、これらの電極間の導通状態と非導通状態を切り替えるセンサスイッチSWとして機能する(図3(A)参照)。
【0018】
図2(B)に示すように、衝撃センサ112を複数用いる場合には、各フラップ110bに配置することができる。換言すると、衝撃センサ112とフラップ110bをともにn個設け、第1からnのフラップ110bにそれぞれ第1からnの衝撃センサ112を配置することができる。この場合、複数の衝撃センサ112を電気的に直列に接続し、一つのテープ状のセンサを構成してもよい。すなわち、第kの衝突センサを第(k+1)の衝突センサと電気的に接続してもよい。ここで、nは1よりも大きい自然数であり、kは1から(n-1)から選択される変数である。図2(B)で示される例では、第4のフラップ110b-4に設けられ、電気的に制御装置130から最も遠い第4の衝撃センサ112-4は二線式のテープ状センサであり、図3(C)に示すように、一方の端部に取出し配線115が設けられ、他方の端部には、上部電極122と並列に接続される抵抗128が設けられる。一方、他の衝撃センサ112(第1の衝撃センサ112-1から第3の衝撃センサ112-3)は図3(A)に例示される四線式のテープ状センサであり、両端部から取り出される取出し配線115によって隣接する衝撃センサ112または制御装置130と電気的に接続される。
【0019】
隣接する衝撃センサ112同士の接続は、半恒久的に行ってもよく、あるいは図2(B)に示すように、隣接する衝撃センサ112が電気的、物理的に着脱可能なように行ってもよい。この場合、例えば第2から第(n-1)の衝撃センサ112の両端部に互いに嵌合するプラグ126とタップ124を形成し、第1の衝撃センサ112-1の一方の端部と第nの衝撃センサ112-nの一方の端部にそれぞれタップ124またはプラグ126を設ければよい。第1の衝撃センサ112-1の他方の端部は、配線114を介して制御装置130と電気的に接続される。なお、取出し配線115、抵抗128、プラグ126、およびタップ124は衝撃センサ112に着脱可能なように構成されてもよい。
【0020】
1-3.制御装置
(1)構成
制御装置130は、衝撃センサ112からの信号または電流を検知し、衝撃センサ112に衝撃が与えられたか否かを判断するとともに、ロボット150と無線通信を行うように構成される。具体的には、制御装置130は、衝撃センサ112が設けられるシート110の面と同一の面に配置され、配線114を介して衝撃センサ112と電気的に接続される(図2(B))。好ましくは、制御装置130はシート110の中央に配置される。この配置により、制御装置130を確実に資材102上に配置できるとともに、いずれの方向からも制御装置130を手動で操作することができる。制御装置130はシート110と接着剤などを用いて取り付けられてもよく、あるいは面ファスナーを用いて取り付けてもよい。あるいは、制御装置130はシート110に固定しなくてもよい。
【0021】
制御装置130のブロック図の一例を図4(A)に示す。制御装置130は、制御装置130の全体を制御するための制御部140を有し、制御部140はバッテリー142に接続されて電力の供給を受ける。制御装置130はさらに、第1のスイッチ132、第2のスイッチ134、送信部136を有する。制御装置130は、任意の構成として音声出力部138をさらに備えてもよい。
【0022】
制御部140は、例えばマイクロコンピュータで構成することができ、マイクロコンピュータは、中央演算ユニット(CPU)、リードオンリメモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などによって構成されるメモリ部、および周辺回路などによって構成される。制御部140は衝撃センサ112と接続され、衝撃センサ112からの信号または電流に基づいて衝撃センサ112の状態を判断するようにプログラミングされる。
【0023】
バッテリー142は制御装置130を動作させるための電力を供給する構成要素であり、乾電池に例示される一次電池でもよく、あるいはリチウムイオン電池などの可逆的充放電が可能な二次電池でもよい。
【0024】
送信部136は、図示しないアンテナを含み、制御部140からの命令に従い、ロボット150に対してロボット150の動作を停止させるための命令(以下、停止命令)を送信するように構成される。
【0025】
第1のスイッチ132は、好ましくは制御装置130の上面に設けられ(図1から図2(B)参照)、ロボット150の動作を停止させるための停止ボタンとして機能する。このため、制御部140は、第1のスイッチ132の操作によって入力される信号を受信すると、停止命令を生成し、送信部136に対してこの停止命令をロボット150に無線送信させるように構成される。
【0026】
一方、第2のスイッチ134も、好ましくは制御装置130の上面に設けられる。第2のスイッチ134は、停止命令によって動作が停止したロボット150の機能を回復させ、ロボット150が自走可能な状態にするためのスイッチである。このため、制御部140は、第2のスイッチ134の操作によって入力される信号を受信すると、ロボット150の停止状態を解除して再び自走可能な状況に復帰させるための命令(復帰命令)を生成し、送信部136に対してこの復帰命令をロボット150に無線送信させるように構成される。
【0027】
上述したように、制御部140は衝撃センサ112からの信号または電流に基づいて衝撃センサ112の状態を判断するようにプログラミングされる。具体的には、衝撃センサ112に力が加わってセンサスイッチSWが導通した場合、衝撃センサ112が断線または短絡した際、あるいは互いに接続される二つの衝撃センサ112の間の電気的接続が切断された際、停止命令を生成し、送信部136に対して停止命令をロボット150に送信させるように構成される。このため、資材102と障害物の衝突に起因してセンサスイッチSWが導通した場合、あるいは衝撃センサ112が断線した場合、速やかにロボット150を停止させることができる。あるいは、資材102の荷崩れに起因して隣接する衝撃センサ112の接続が切断されると、制御部140からの停止命令によって速やかにロボット150を停止させることができる。このため、障害物との衝突や荷崩れを原因とする事故を防止する、またはこの事故による被害を最小限に留めることができる。
【0028】
(2)動作例
衝撃センサ112を介して得られる情報に基づいて制御装置130がロボット150の動作を制御する一例を以下に述べる。ここでは、図2(B)に示すように、複数の衝撃センサ112を直列に接続し、複数のフラップ110bのそれぞれに一つの衝撃センサ112が配置したケースを挙げて説明する。
【0029】
隣接する衝撃センサ112は、互いに電気的に接続される。この時に複数の衝撃センサ112が形成する等価回路の一例を図5(A)に示す。この図に示すように、等価回路内で制御装置130に最も近い第1の衝撃センサ112-1では、複数のセンサスイッチSWが並列に接続される。第1の衝撃センサ112-1の一つの端部に位置する取出し配線115(図3(A)参照)の一方は、プラグ126とタップ124を介して隣接する衝撃センサ(第2の衝撃センサ112-2)の一方の端部の取出し配線115と接続される。第2の衝撃センサ112-2の他方の端部の取出し配線115は、第3の衝撃センサ112-3の一方の端部の取出し配線115と接続される。第3の衝撃センサ112-3も第2の衝撃センサ112-2と同様の方式で第2と第3の衝撃センサ112-3に接続される。制御装置130から電気的に最も遠い第4の衝撃センサ112-4は二線式のテープ状センサであり、その取出し配線115は第3の衝撃センサ112-3の取出し配線115に接続され、他方の端部に抵抗128が設けられる(図3(C)参照)。
【0030】
第1の衝撃センサ112-1の他方の端部に位置する取出し配線115の共通電極115Aは、制御装置130内の接地端子GNDに接続され、センシング電極115Bは抵抗Rを介して定電位端子Vconstに接続されるとともに入力端子Vinに接続される。定電位端子Vconstに印加される電圧は、例えば3V以上20V以下の範囲から選択すればよい。抵抗139と抵抗128の抵抗値R、Rは、衝撃センサ112の大きさなどによって適宜調整すればよく、例えば100Ω以上1MΩ以下の範囲から選択すればよい。好ましくは、センサスイッチSWの導通状態における抵抗値よりも十分に大きい(例えば10倍以上50倍以下)抵抗値を選択する。抵抗値RとRは互いに同一でもよく、異なってもよい。図示しないが、入力端子Vinと接地端子GNDの間には、これらの間の電圧値または電流値を測定するための電圧計または電流計が設けられる。
【0031】
各衝撃センサ112に衝撃が与えられず、隣接する衝撃センサ112間の接続が維持されている状態では、定電位端子Vconstに接続される抵抗139と、センシング電極115Bとが接続されるノードNの電位は、下部電極118や取出し配線115の抵抗を無視すると、定電位端子Vconstの電位と接地端子GNDの電位の差が二つの抵抗128、139によって分圧された値となる。例えば定電位端子Vconstと接地端子GNDの電位がそれぞれ5Vと0Vであり、抵抗値RとRが同一であれば、ノードNの電位は2.5Vとなる。
【0032】
一方、ロボット150による資材102の自動搬送中、資材102が障害物と接触し、複数の衝撃センサ112のいずれかに含まれるセンサスイッチSWが導通するケースを想定する(図5(B))。この場合、導通状態のセンサスイッチSWの抵抗が抵抗128の抵抗よりも十分に小さくなるため、抵抗139は短絡状態となる。その結果、ノードNの電位は接地電位の電位と同じとなる。したがって、ノードN(入力端子Vin)の電位が接地電位の電位と同じ電位(例えば0V)となった際に停止命令を生成して送信するように制御装置130の制御部140をプログラミングすることで、資材102が障害物と衝突した際、速やかにロボット150の動作を停止させることができる。なお、導通状態のセンサスイッチSWの抵抗は、衝突の度合いにより不安定な抵抗値になる場合がある。したがって、ロボット150の動作を停止させるかを判断するための入力端子Vinが検出する電位を判定するための閾値を設けることが好ましい
【0033】
次に、資材102が荷崩れした場合を想定する。荷崩れの原因としては、資材102の障害物との接触のみならず、資材102に掛かる水平方向または鉛直方向の加速度などが考えられる。荷崩れに起因して隣接する衝撃センサ112間の電気的接続が切断されると(図5(C))、定電位端子Vconstと接地端子GNDの接続が切断される。その結果、ノードNの電位は定電位端子Vconstの電位と同一またはほぼ同一となる。したがって、ノードNの電位が定電位端子Vconstの電位と同じ電位(例えば5V)となった際に停止命令を生成して送信するように制御装置130の制御部140をプログラミングすることで、荷崩れが生じた際に速やかにロボット150の動作を停止させることができる。
【0034】
2.ロボット
本発明の実施形態に係るカバー100は、ロボット150と組み合わせることで、本発明の実施形態の一つである資材搬送システムを構成する。自走可能なロボット150の構成は任意であるが、一例として、図6(A)に示すように、筐体152、一対のクローラ154、一つまたは複数の連結ピン156を有することができる。筐体152内にはロボット150を制御するための種々の部品が収容される。例えば図4(B)のブロック図の一例に示すように、コントローラ160とともに、コントローラ160に電源を供給するバッテリー162、コントローラ160によって制御され、クローラ154を動作せる駆動モータ164、制御装置130からの信号を無線で受信する通信モジュール166、操作することでロボット150の動作を停止させるための緊急停止ボタン168などが筐体152内に配置される。通信モジュール166はさらに、コントローラ160を制御するための無線通信機器(図示しない)と無線通信可能なように構成される。任意の構成として、ロボット150は、自走時に音を出力し、ロボット150の接近を周知させるためのスピーカを備えてもよい。図示しないが、ロボット150は、周囲の障害物の位置や距離を測定するためのセンサ、ロボット150の位置を判断するためのセンサやエンコーダなどを備えてもよい。
【0035】
一対のクローラ154は、例えばキャタピラ(無限軌道)であり、駆動モータ164によって回転する。クローラ154を同一方向に回転させることでロボット150が前進または後退する。一方、クローラ154を異なる方向に回転させることで、位置をほぼ変えることなくロボット150をその位置で回転(旋回)させることができる。なお、ロボット150を移動させるための機構はキャタピラに限らず、車輪でもよい。
【0036】
連結ピン156もコントローラ160によって制御され、コントローラ160の命令に従って昇降する。図6(B)に示すように、ロボット150は、昇降ピンが下がった状態では最上部が荷台104の天板106の底面よりも低くなるように構成される。このため、ロボット150は荷台104の下に潜り込むことができる。図示しないが、天板106の底面には、連結ピン156と嵌合する溝および/または凹部が設けられており、連結ピン156をこの溝または凹部に嵌合させた状態で上昇させることで、荷台104を持ち上げることができる。その結果、図6(C)に示すように、天板106に連結されるキャスタ108が床または地面から離隔する。この状態でロボット150を自走させることで、キャスタ108が床または地面と干渉することなく荷台104と資材102を搬送することができる。
【0037】
通信モジュール166が受信した停止命令を含む信号はコントローラ160に送られる。コントローラ160はこの停止命令を受け取ると、駆動モータ164の動作を停止し、この停止状態は、復帰命令を受信するまで維持される。一方、通信モジュール166を介して復帰命令を含む信号を受信すると、駆動モータ164を動作させる、あるいは駆動モータ164を動作可能な状態へ移行させる。
【0038】
なお、ロボット150が自走するための方法に制約はない。例えば、ロボット150が検知可能なルートを予め床面に形成し、ロボット150をこのルートに沿って自走させてもよい。あるいは、自走ルートをコントローラ160にプログラミングし、このプログラムされたルートに沿ってロボット150を自走させてもよい。あるいは、搬送先の情報を入力し、各種センサから得られる情報に基づいてコントローラ160にルートを決定させてもよい。
【0039】
3.変形例
カバー100の構成は、上述した構成に限られない。例えば図7(A)に示すように、領域110aを介して隣接するフラップ110bにバックル144を設けてもよい。バックル144はメス部144aとオス部144bによって構成され、これらが噛み合うことで着脱可能なように互いに固定される。メス部144aが隣接するフラップ110bの一方に、オス部144bが隣接するフラップ110bの他方に設けられる。メス部144aとオス部144bは、ともにベルト146を介してフラップ110bに接続される。バックル144は、メス部144aとオス部144bの一方または両方からフラップ110bまでの距離が調整できるための開口を有してもよい。バックル144を設けることで、フラップ110bがはためくことが防止されると同時に資材102を固定することができるため、資材102の荷崩れを効果的に防止することができる。
【0040】
あるいは、図7(B)に示すように、シート110は、可撓性のロープ149を固定できる開口148を有してもよい。隣接するフラップ110bのロープ149を用いて資材102を固定することができるため、資材102の荷崩れを効果的に防止することができる。
【0041】
衝撃センサ112の形状や配置も上述したそれらに限られない。例えば図8(A)に示されるように、カバー100は複数のフラップ110bに亘って設けられる衝撃センサ112を一つまたは複数備えてもよい。この場合、衝撃センサ112の両端部が異なるフラップ110b上に位置してもよく、図8(B)に示すように、同一のフラップ110b上に位置するように衝撃センサ112を配置してもよい。
【0042】
あるいは図9に示すように、複数の衝撃センサ112がそれぞれ独立に制御装置130に接続されるようにカバー100を構成してもよい。このような構成を用いることで、障害物と接触した衝撃センサ112を特定することができるため、資材102が障害物と接触した位置あるいは面を特定することができる。
【0043】
複数の衝撃センサ112がそれぞれ独立に制御装置130に接続される場合、障害物と接触した際にロボット150を一時的に逆走させるように制御装置130を構成してもよい。すなわち、衝撃センサ112の一つが障害物と接触してノードNの電位変化を検出した場合、停止命令を含む信号を送信する前に、反応した衝撃センサ112に対して反対方向にロボット150を進めるための命令(逆走命令)を生成し、この逆走命令を含む信号をロボット150に対して送信するよう、制御部140をプログラミングしてもよい。この場合、停止命令を含む信号は、逆走命令を含む信号を送信した後に送信すればよい。逆走距離は任意であり、例えば5cm以上1m以下の範囲から適宜選択すればよい。
【0044】
通常、AGVであるロボット150にも緊急停止のためのスイッチやボタンが取り付けられる。本実施形態のロボット150にも、緊急停止ボタン168を設けることができる。しかしながら、上述したように、ロボット150は荷台104の下に潜り込んだ状態で荷台104を牽引するため、動作中のロボット150に取り付けられた緊急停止ボタン168を操作することは必ずしも容易ではない。特に資材102が大きく、荷台104の天板106からはみ出した状態では、緊急停止ボタンの操作はさらに困難となる。
【0045】
しかしながら、本発明に係る実施形態では、資材102が障害物と接触・衝突する、あるいは荷崩れするなどの事故が発生した際、ロボット150を停止させるためのスイッチである第1のスイッチ132は、資材102を覆うシート110の上に配置されるため、容易に第1のスイッチ132を操作することができる。さらに、第1のスイッチ132の操作が無い場合でも、資材102の障害物との衝突や荷崩れが生じて衝撃センサ112が反応する、断線する、または隣接する衝撃センサ112が断線した場合でも、制御装置130から停止命令を含む信号がロボット150に無線送信され、ロボット150が自動的に停止する。このため、本発明の実施形態の一つであるカバー100を用いることで、確実に危険を回避し、事故による被害を最小限に留めることができる。
【0046】
本発明の実施形態として上述した種々の実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0048】
100:カバー、102:資材、104:荷台、106:天板、108:キャスタ、110:シート、110a:領域、110b:フラップ、110b-1:第1のフラップ、110b-2:第2のフラップ、110b-3:第3のフラップ、110b-4:第4のフラップ、112:衝撃センサ、112-1:第1の衝撃センサ、112-2:第2の衝撃センサ、112-3:第3の衝撃センサ、112-4:第4の衝撃センサ、114:配線、115:取出し配線、115A:共通電極、115B:センシング電極、116:封止部材、118:下部電極、120:スペーサ、122:上部電極、124:タップ、126:プラグ、128:抵抗、130:制御装置、132:第1のスイッチ、134:第2のスイッチ、136:送信部、138:音声出力部、139:抵抗、140:制御部、142:バッテリー、144:バックル、144a:メス部、144b:オス部、146:ベルト、148:開口、149:ロープ、150:ロボット、152:筐体、154:クローラ、156:連結ピン、160:コントローラ、162:バッテリー、164:駆動モータ、166:通信モジュール、168:緊急停止ボタン
図1
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図9