(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125602
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】地盤と連結することで施工性と安全性を高めたボーリング機械
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
E02D1/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023279
(22)【出願日】2021-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高島 誠
(72)【発明者】
【氏名】伴 博史
(72)【発明者】
【氏名】清水谷 卓
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AB04
2D043BA08
2D043BB02
2D043BC01
(57)【要約】
【課題】
通常行われている地質調査では,パーカッション式ボーリング機械やロータリー式ボーリング機械が利用されているが,これらのボーリング機械で掘削行う場合に問題となる掘削孔の鉛直性を確保するために,ボーリング機械を載せる足場に三又や櫓を設置してボーリング機械を水平に配置する必要がある。
【解決手段】
地盤調査を実施する斜面(G)に対し,支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(7
2)をねじ込んで垂直反力を増加させ,その支持器具(7)に回転駆動部ガイド(1)を固定することで,足場を設置することなく,回転駆動部ガイド(1)の水平性の確保が可能となり,スパイラル状刺し込み体(7
2)を備えた支持器具(7)が礫を取り込んで回転駆動部ガイド(1)を安定することを可能としたボーリング機械の構成。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤調査を実施する傾斜地盤(G)に対し,支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(72)をねじ込んで垂直反力を増加させ,その支持器具(7)に回転駆動部ガイド(1)を固定することによって,足場を設置することなく,回転駆動部ガイド(1)の水平性の確保するように構成したことを特徴とするボーリング機械。
【請求項2】
地盤調査を実施する傾斜地盤(G)に対し,支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(72)をねじ込み,その支持器具(7)に回転駆動部ガイド(1)を固定することによって,三又や櫓を設置することなく,掘削孔の鉛直性を確保するように構成したことを特徴とするボーリング機械。
【請求項3】
地盤調査を実施する傾斜地盤(G)に対し,支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(72)をねじ込み,その支持器具(7)に回転駆動部(2)を固定することによって,垂直反力を増加させ,地盤(G)の状態に応じた給圧を与えて掘削を可能とし,従来型の掘削時に貫入が難しくなると作業員が体重をかけて作業を進める必要が無くなり,安全に作業することが可能となったボーリング機械。
【請求項4】
支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(72)の素材は鉄製とし,支持器具(7)のスパイラル状刺し込み体(72)の長さについては30cm~70cm,幅については10cm~15cm,ピッチについては,盛土における礫のサイズに合わせて10cm~20cmで可変させることが可能であり,礫を取り込んで回転駆動部ガイド(1)を安定できるようにしたことを可能とした請求項1~3のいずれか一項に記載のボーリング機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明では,地盤調査に用いられているハンドフィード式のボーリング機械の構造を利用し,通常の調査時にボーリング機械を載せる足場に三又や櫓を設置する作業に変えて,調査対象地山にスパイラル状の支持器具をねじ込み垂直反力を増加させることで,ボーリング機械の安定性を確保し,調査時の施工性と安全性を高めたボーリング機械を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
通常行われている地質調査では,パーカッション式ボーリング機械やロータリー式ボーリング機械が利用されている。
【0003】
これらのボーリング機械で掘削行う場合に問題となる掘削孔の鉛直性を確保するために,ボーリング機械を載せる足場に三又や櫓を設置してボーリング機械を水平に配置する必要がある。
【0004】
このような組み合わせで地盤調査を実施する場合,油圧によるハイドローリックフィード式ボーリング機械では重量が200kg以上と重いことから,クレーンが届かない調査箇所に運搬するのに多大な労力を必要としていた。
【0005】
また,ボーリング機械を水平にして,調査孔の鉛直性を確保するために三又や櫓を設置する必要があることから足場が必要であり,足場が設置できないような狭い箇所での調査ができない問題もある。
【0006】
一方で,盛土斜面での地盤調査では浅い深度の地盤状況を把握することが多いことから,簡易的なボーリング機械で地盤調査を行っている現状がある。
【0007】
このような作業に用いられる簡易ボーリング機械には,パーカッション式の電動の駆動部と地盤のコアサンプルを採取するコアチューブとが組み合わされている仕様のものがあり,打撃によって押し組むことから,無理に掘削を進めると採取されるコアが著しく圧縮することで減少することが問題となっている。
【0008】
また,掘削時に貫入が難しくなると作業員が体重をかけて掘削作業を進める必要があり,安全面での問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3101398号公報
【特許文献2】特開2017-122375号公報
【特許文献3】実用新案登録第3084405号公報
【0010】
上記特許文献1の発明の構成は,電動コアドリルを用いてサンプラーを備えたボーリングロッドを地中に圧下させてコアの採取及び標準貫入試験を行う地質調査用のボーリング装置であって,ロッドホルダーを備えたベース上に垂直の昇降用フレームを脱着自在に取り付け,同昇降用フレームに電動コアドリルを下向きにして昇降自在且つ脱着自在に取り付け,同電動コアドリルの回転部にサンプラーを備えたボーリングロッドをロッドホルダーに通じて脱着自在に連結し,電動コアドリルを下降してボーリングロッドを地中に圧下させる加圧レバーを設け,滑車を備えたやぐらがベースを囲むように配設し,同やぐらの滑車に電動ウインチのワイヤーを掛架し,同ワイヤーの先端部にボーリングロッドの上端部と連結する連結具を取り付けることを特徴とする地質調査用ボーリング装置である。
【0011】
これに対し,本発明においては,地盤調査に用いられているハンドフィード式のボーリング機械の構造を利用し,通常の調査時にボーリング機械を載せる足場に三又や櫓を設置する作業に変えて,調査対象地山にスパイラル状の支持器具をねじ込み垂直反力を増加させることで,ボーリング機械の安定性を確保し,調査時の施工性と安全性を高めたボーリング機械であることから上記特許文献1の発明と異なるものである。
【0012】
上記特許文献2の発明の構成は,ボーリング機械の支持については,支柱部の長手方向中央部に,ハンガーが取り付けられており,当該ハンガーには,脚部等と同様の構成とされた脚部の一方側の端部が当該ハンガーを中心として回転可能に取り付けられている構造である。また,脚部の他方側の端部は,アンカーによって調査地盤に固定されている。なお,本実施形態では,台座部もアンカーで調査地盤に固定されている。
【0013】
これに対し,本発明においては,特許文献2のように脚部とハンガーと台座部とアンカーによって調査地盤に保持せずに,調査対象地山にスパイラル状の支持器具をねじ込み垂直反力を増加させることで,ボーリング機械の安定性を確保し,調査時の施工性と安全性を高めたボーリング機械であることから上記特許文献2の発明と異なるものである。
【0014】
上記特許文献3の発明の構成は,人力で移動可能なように少なくとも2つの直径150mm以上の車輪を備えた走行台車上に延設された少なくとも2本のシャフト部材からなるガイド機構と,給進機構を備え,前記ガイド機構に係合してガイド機構の長さ方向に進退自在に移動するスライド機構と,前記スライド機構に脱着可能に搭載されて,先端部にドリルヘッドとを備え,掘削軸上方の空間が得られるように,掘削する対象地面に前記走行台車を起倒自在に固定して,前記ドリルヘッドにより,前記チャックに把持されたドリルロッドなどを介してコアチューブなどに打撃力及び回転力を作用させて,地質資料採取などを行うように構成したことを特徴としたポータブルドリルである。ポータブルドリルの固定は,打ち込み式の固定部材を利用している。
【0015】
これに対し,本発明においては,調査対象地山にスパイラル状の支持器具をねじ込み垂直反力を増加させることで,ボーリング機械の安定性を確保し,調査時の施工性と安全性を高めたボーリング機械であることから上記特許文献3のようにポータブルドリルの重量と打ち込み式の固定部材によって掘削時の垂直の反力を受け持つ仕様とは異なっているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで,本発明は地盤調査を実施する傾斜地盤に対し,スパイラル状の支持器具をねじ込み,その支持器具に回転駆動ガイド(リーダー部)を固定することによって,掘削時の垂直反力を増加させ,地盤調査時の施工性と安全性を高めることを可能としたボーリング機械を提供することにある。
【0017】
本発明の第1は,地盤と連結することで施工性と安全性を高めたボーリング機械において,地盤調査を実施する傾斜地盤に対し,支持器具のスパイラル状刺し込み体をねじ込み,その支持器具に駆動部を固定することによって,足場を設置することなく,駆動部の水平性の確保を可能としたものである。
【0018】
本発明の第2は,地盤と連結することで施工性と安全性を高めたボーリング機械において,地盤調査を実施する斜面に対し,支持器具のスパイラル状刺し込み体をねじ込み,その支持器具に駆動部を固定することによって,三又や櫓を設置することなく,掘削孔の鉛直性の確保を可能としたものである。
【0019】
本発明の第3は,地盤と連結することで施工性と安全性を高めたボーリング機械において,地盤調査を実施する斜面に対し,支持器具のスパイラル状刺し込み体をねじ込み,その支持器具に駆動部を固定することによって,垂直反力を増加させ,地盤の状態に応じた給圧を与えて掘削が可能となる。従来型では掘削時に貫入が難しくなると作業員が体重をかけて掘削作業を進める必要が無くなり,安全に作業することを可能としたものである。
【0020】
本発明の第4は,第1~第3の発明に係る地盤と連結することで施工性と安全性を高めたボーリング機械において,支持器具のスパイラル状刺し込み体については,素材は鉄製とし,スパイラル状刺し込み体の長さについては,30cm~70cm,幅については10cm~15cm,ピッチについては,盛土における礫のサイズに合わせて10cm~20cmで可変させることが可能であり,礫を取り込んで駆動部を安定できることを可能としたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記の構成であるから次の効果がある。地盤調査に用いられているハンドフィード式のボーリング機械の構造を利用し,通常の調査時にボーリング機械を載せる足場に三又や櫓を設置する作業に変えて,調査対象地山にスパイラル状の支持器具をねじ込み垂直反力を増加することで,ボーリング機械を安定させ,調査時の施工性と安全性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るボーリング機械の概略正面図である。
【
図2】
図1のスパイラル支持器具と回転駆動部ガイドを接続する箇所の拡大図である。
【
図4】
図1の支持兼回転体のピン孔にピンスパナを装着して,スパイラル状刺し込み体を地盤に埋め込み開始時の拡大図である。
【
図6】
図4の状態からスパイラル状刺し込み体を地盤に埋め込んで支持兼回転体を地盤に設置した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関わるスパイラル状の支持器具については,強度のある鉄製を標準とする。
【0024】
本発明に関わるボーリング機械については,200Vの減速機付きの駆動部を利用することを標準とする。
【実施例0025】
次に,本発明の実施例を説明する。
図1において,1は回転駆動部ガイドであり,柱型の高さ方向の中間部に回転駆動部を設け,下部1
1にスパイラル支持器具を具備する構造を有してある。2は回転駆動部であり,下部にコアチューブを設置し,回転駆動部で昇降できる構造になっている。3は回転駆動部ガイド1の昇降用ハンドルであり,回転駆動部2を介してコアチューブを昇降できるように設けてある。4は回転駆動部ガイド1に装着してコアチューブを支持する支持アームである。5はコアチューブであり,回転駆動部2で地盤Gを掘削できるようになっている。6は回転駆動部ガイド1とスパイラル支持兼回転体とをボルトで固定した連結部材である。
【0026】
図2及び
図3において,6
1は回転駆動部ガイドとスパイラル支持兼回転体を連結する部材である。6
2はスパイラル支持兼回転体と回転駆動部ガイドとスパイラル支持兼回転体とを固定する連結ボルトである。6
3は回転駆動部ガイド1の下部1
1とスパイラル支持兼回転体とを連結部材の本体6
1を固定するためのボルトである。
【0027】
7はスパイラル状刺し込み体と支持兼回転体の鉄製の支持器具である。71はスパイラル状刺し込み体の支持兼回転体であり,その素材は鉄製とし,スパイラル状刺し込み体72の長さについては,30cm~70cm,幅については10cm~15cm,ピッチについては,盛土における礫のサイズに合わせて10cm~20cmで可変させることが可能であり,礫を取り込んで回転駆動部ガイド1を安定できるようにしたことを可能としてある。
【0028】
また,上記の支持器具7のスパイラル状刺し込み体72は,その地盤調査を実施する傾斜地盤Gに対してねじ込んで垂直反力を増加させ,その支持器具7に回転駆動部ガイド1を固定することによって,足場を設置することなく,回転駆動部ガイド1の水平性の確保するようにしてある。
【0029】
さらに,上記の支持器具7は地盤調査を実施する傾斜地盤Gに対し,スパイラル状刺し込み体72をねじ込み,その支持兼回転体71を回転駆動部ガイド1に固定することによって,三又や櫓を設置することなく,掘削孔の鉛直性を確保するように構成してある。
【0030】
そして,スパイラル状刺し込み体72の基部7nを支持兼回転体71の上面7mにあけた孔76に差し込んで溶接又はカシメ等で連結固着して当該支持兼回転体71と一体化してある。73は,スパイラル状刺し込み体72の支持兼回転体7の内部であり,空洞となっている。74は,スパイラル状刺し込み体72の支持兼回転体7の台座75に取り付けて地盤Gに接地する足付きの設置用ボルトである。
【0031】
8はピンスパナ9を装入して引っ掛けるためのピン孔である。9はスパイラル状刺し込み体72の支持兼回転体の支持器具7を回転させるピンスパナである。10はスパイラル状刺し込み体72の支持兼回転体71と,回転駆動部ガイド1とスパイラル状刺し込み体の支持兼回転体71とをボルトで固定した連結部材6の取り付け時に回動調整できるようにした取付ボルト用の調整用弧状長孔である。
【0032】
次に,本発明の実施例を説明する。
【0033】
調査ボーリング実施時の手順については,以下により行う。
(1)
図4において,回転駆動部ガイド1から分離してある支持兼回転体7
1のスパイラル状刺し込み体7
2を地質調査対象となる地盤Gに位置決めする(未挿入状態)。
(2)
図4・
図5のようにピン穴8に引っ掛けたピンスパナ9を使って,スパイラル状刺し込み体7
2と支持兼回転体7
1を回転させることによって,スパイラル状刺し込み体7
2を地盤Gまでねじ込んで埋め込む。
(3)地盤Gにねじ込まれたスパイラル状刺し込み体7
2と支持兼回転体7
1の台座7
5との隙間を補正する足付きの補正ボルト7
4を調整することで地盤Gとの接地を馴染み良くする。
(4)地盤Gにねじ込まれたスパイラル状刺し込み体7
2と支持兼回転体7
1と回転駆動部ガイド1とスパイラル支持兼回転体7
1を連結する部材6
1をスパイラル支持兼回転体7
1を回転駆動部ガイド1とスパイラル支持兼回転体7
1とを連結するボルト6
2をボルト用弧状長孔10に通してねじ込んで固定する(
図3を参照)。
(5)回転駆動部ガイド1とスパイラル状刺し込み体支持兼回転体7
1を連結部材6
1とボルト6
2を介して連結する。
(6)上記の連結をする際,回転駆動部ガイド1の向きの微調整については,ボルト用弧状長孔10の長さ内においてスライドすることによって行う。
(7)また,回転駆動部2ガイド1の向きを大きく変えたい場合には,回転駆動部ガイドとスパイラル支持兼回転体を連結する部材6
1の回転駆動部ガイドとスパイラル支持兼回転体とをボルトで固定した連結部材6を取り付けるためのボルト6
3の4本のボルト孔の調整で向きの変更が可能である。
(8)回転駆動部2によってコアチューブ5を回転させながら,ハンドフィードによってコア採取する。
【0034】
[効果確認試験1]
令和2年に新潟県内において,支持器具のスパイラル状刺し込み体72の幅を可変させて製造し,製造歩留まりの良いピッチ10cm~20cmの幅のものを選定した。
【0035】
[効果確認試験2]
令和2年に静岡県内の盛土斜面において,支持器具7において,長さ50cmで幅10cm,ピッチ10cm~20cmの鉄製のスパイラル状刺し込み体72を地盤調査対象となる地盤Gにねじ込んで盛土中の礫の取り込みを確認した。
【0036】
[効果確認試験3]
令和2年に静岡県内の盛土傾斜地面Gにおいて,スパイラル状刺し込み体72を地盤調査対象となる地山にねじ込んだ後に,回転駆動部ガイド1・回転駆動部2・コアチューブ5・連結部材6・スパイラル状刺し込み体と支持兼回転体の支持器具7を備えたハンドフィード式のボーリング機械で試掘を実施した。
本発明は,地盤調査を実施する傾斜地盤に対し,支持器具のスパイラル状刺し込み体をねじ込み垂直反力を増加させ,その支持器具に回転駆動部ガイドを連結固定することによって,地盤調査時の施工性と安全性を高めることを可能とした。