(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125613
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/08 20060101AFI20220822BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20220822BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220822BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220822BHJP
【FI】
F21S8/08 200
F21S8/08 110
F21V14/04
F21V23/00 140
F21Y115:10
F21Y115:10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023294
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】安藤 香代子
(72)【発明者】
【氏名】福田 大海
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】器具の大型化を抑えつつ、照明と描画とを行うことができる照明器具を提供すること。
【解決手段】照射面を照明する照明光DAの照明用光源20を有した照明部10と、前記照射面に画像を描画する描画光DBの描画用光源40を有した描画部12と、を備えた照明器具であって、前記照明部10は、前記照明用光源20が光軸KAを前記照射面に向けて配置されており、前記描画部12は、前記描画用光源40が光軸KBを前記照明用光源20の光軸KAに対して傾斜する方向に向けて配置されており、前記描画用光源40の光を前記照射面に向けて反射する反射部材を備える構成とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射面を照明する照明光の照明用光源を有した照明部と、
前記照射面に画像を描画する描画光の描画用光源を有した描画部と、
を備えた照明器具であって、
前記照明部は、
前記照明用光源が光軸を前記照射面に向けて配置されており、
前記描画部は、
前記描画用光源が光軸を前記照明用光源の光軸に対して傾斜する方向に向けて配置されており、前記描画用光源の光を前記照射面に向けて反射する反射部材を備える
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記反射部材の向きの変更により前記描画光の照射位置が変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記描画部は、
前記描画用光源と前記反射部材の間に、前記画像に応じたパターンで前記描画用光源の光を通過させる光通過部を有するマスク部材と、
前記光通過部を通過した光を前記照射面に結像する結像レンズと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記描画用光源の発光面は、前記マスク部材の光通過部よりも大きく、
前記結像レンズの口径は、前記描画用光源の発光面よりも大きい
ことを特徴とする請求項3に記載の照明器具。
【請求項5】
前記描画用光源の光軸に対する前記マスク部材の回動により前記画像の向きを変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の照明器具。
【請求項6】
前記描画用光源の前記照射面の側に第1遮光手段を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の照明器具。
【請求項7】
前記描画部と前記照明部との間に第2遮光手段を備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の照明器具。
【請求項8】
前記描画光は白色光である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の照明器具。
【請求項9】
前記描画部は、
前記照射面における前記画像の周囲の少なくとも一部を前記画像の部分と異なる色の光で照らす
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の照明器具。
【請求項10】
前記照射面における前記画像の部分と前記画像の周囲との照度比が8:1以上であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の照明器具。
【請求項11】
前記照明部は、
前記描画部が前記描画光を出射しているとき、前記照射面における前記画像の周囲の少なくとも一部の照度を下げる、ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の照明器具。
【請求項12】
前記描画部は、
前記画像を1秒から3秒の間の点滅間隔で点滅表示する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の照明器具。
【請求項13】
前記照明部は、
前記画像の点滅表示に同期して、前記照射面の前記画像に応じた箇所の照度を下げる
ことを特徴とする請求項12に記載の照明器具。
【請求項14】
外部機器からの信号に基づいて、前記描画部を制御する制御部を備える
ことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の照明器具。
【請求項15】
前記照射面は、道路の路面であり、
前記描画部は、前記道路の交通方向と反対の方向に前記描画光を出射する
ことを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
車道や歩道などの路面に、交通に必要な画像を投影することで、ドライバーや歩行者に情報伝達や注意喚起を行うプロジェクタ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、路面を照明する第1光源と、表示光を照射する第2光源とを備え、路面を照明しつつ、表示光によって側溝の位置を表示することで、通行人の安全性を高めた照明器具も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-033071号公報
【特許文献2】特開2020-161423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明器具に画像を投影するプロジェクタを搭載すれば、照明器具を設置するだけで、路面に画像を投影することができる。しかしながら、路面に画像を投影するためには、画像投影用の光源やレンズなどを含む光学系において比較的長い距離が必要となる。このため、画像を投影する光学系を照明器具の中に配置しようとすると、照明器具が大型化してしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、器具の大型化を抑えつつ、照明と描画とを行うことができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、照射面を照明する照明光の照明用光源を有した照明部と、前記照射面に画像を描画する描画光の描画用光源を有した描画部と、を備えた照明器具であって、前記照明部は、前記照明用光源が光軸を前記照射面に向けて配置されており、前記描画部は、前記描画用光源が光軸を前記照明用光源の光軸に対して傾斜する方向に向けて配置されており、前記描画用光源の光を前記照射面に向けて反射する反射部材を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記照明器具において、前記反射部材の向きの変更により前記描画光の照射位置が変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記照明器具において、前記描画部は、前記描画用光源と前記反射部材の間に、前記画像に応じたパターンで前記描画用光源の光を通過させる光通過部を有するマスク部材と、前記光通過部を通過した光を前記照射面に結像する結像レンズと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記照明器具において、前記描画用光源の発光面は、前記マスク部材の光通過部よりも大きく、前記結像レンズの口径は、前記描画用光源の発光面よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記照明器具において、前記描画用光源の光軸に対する前記マスク部材の回動により前記画像の向きを変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記照明器具において、前記描画用光源の前記照射面の側に第1遮光手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記照明器具において、前記描画部と前記照明部との間に第2遮光手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記照明器具において、前記描画光は白色光である、ことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記照明器具において、前記描画部は、前記照射面における前記画像の周囲の少なくとも一部を前記画像の部分と異なる色の光で照らすことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記照明器具において、前記照射面における前記画像の部分と前記画像の周囲との照度比が8:1以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記照明器具において、前記照明部は、前記描画部が前記描画光を出射しているとき、前記照射面における前記画像の周囲の少なくとも一部の照度を下げる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記照明器具において、前記描画部は、前記画像を1秒から3秒の間の点滅間隔で点滅表示することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記照明器具において、前記照明部は、前記画像の点滅表示に同期して、前記照射面の前記画像に応じた箇所の照度を下げることを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記照明器具において、外部機器からの信号に基づいて、前記描画部を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記照明器具において、前記照射面は、道路の路面であり、前記描画部は、前記道路の交通方向と反対の方向に前記描画光を出射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、器具の大型化を抑えつつ、照明と描画とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る道路照明器具の設置態様を模式的に示す図である。
【
図2】道路照明器具の器具本体を底面側からみた斜視図である。
【
図4】仕切板および遮光板を外した状態の道路照明器具を底面側からみた斜視図である。
【
図5】仕切板および遮光板を外した状態の器具本体の底面図である。
【
図6】描画部が備える描画ユニットの構成を示す図である。
【
図7】上面カバーを開放した状態の道路照明器具1を上面側からみた斜視図である。
【
図8】描画光の色と表示画像の視認性との関係を調べた第1視認性調査の結果を示す図である。
【
図9】路面における表示画像とその周辺とのコントラストと、当該表示画像の視認性との関係を調べた第2視認性調査の結果を示す図である。
【
図10】路面に表示画像を点滅表示したときの点滅間隔と、当該表示画像の目立ち度との関係を調べた目立ち度調査の結果を示す図である。
【
図11】路面に表示画像を点滅表示したときの点滅間隔と、当該画像Mから受ける不快感との関係を調べた不快感調査の結果を示す図である。
【
図12】本発明の変形例に係る画像の描画態様を示す図である。
【
図13】本発明の変形例に係る道路照明器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る道路照明器具1の設置態様を模式的に示す図である。
道路照明器具1は、道路Rの道路脇RA(例えば路肩など)に立設された、所定高さ(例えば8メートルから10メートル)のポール2に支持された器具本体4と、当該ポール2の下部に設置された制御盤5と、を備え、器具本体4が道路Rの路面RBを照明光DAによって照明し、また路面RBの照明範囲内に所定の画像Mを描画光DBによって描画し、さらに当該描画を制御盤5から制御可能としたものである。
【0024】
図2は、道路照明器具1の器具本体4を底面側からみた斜視図である。
器具本体4は、底面視略矩形状を成す略箱型のケース体6を備え、当該ケース体6は長手方向の一端部(以下、先端部6Aという)を道路Rに向けた状態で、他端部(以下、後端部6Bという)がポール2の先端部2Aに結合される。より正確には、器具本体4は、ケース体6の先端部6Aと後端部6Bとを結ぶ中心線C(
図3:本実施形態ではケース体6の長手方向)が、概ね道路Rの交通方向RD(
図1)に直交する姿勢でポール2に支持される。
【0025】
図3は、器具本体4の底面図である。
器具本体4のケース体6は、照明光DAを出射する出射開口8が底面に開口し、当該出射開口8が透光性材料から成る透明なカバー部材(図示略)によって覆われている。
またケース体6には、照明光DAを出射する照明部10と、描画光DBを出射する描画部12が収められており、これら照明部10および描画部12が、ケース体6の底面視において出射開口8内に配置され、照明光DAおよび描画光DBがいずれも出射開口8を通して出射される。
【0026】
制御盤5は、描画部12の点灯を操作するための操作手段であり、ユーザ操作を受け付ける操作子(例えばスイッチなど)と、操作子の操作に応じて描画部12への電力を供給/遮断することで描画部12をオン/オフするオン/オフ回路と、を備えた装置であり、ポール2の内部であってユーザの手が届く、地面からの高さHA(
図1)内に設置されている。これによりユーザは、必要に応じて、制御盤5を操作して描画部12に通電することで当該描画部12を点灯して路面RBに画像Mを表示できる。
なお、描画部12をオン/オフさせる手法には、電力供給のオン/オフに限らず、公知の適宜の手法を用いることができる。また後述する描画用光源40の調光や点滅を制御する点灯制御回路を描画部12が備え、描画部12のオン/オフのみならず調光や点滅もユーザが制御盤5から制御可能にしてもよい。
【0027】
画像Mは、任意の記号や文字、文様、または、これらを適宜に組み合わせたものの画像である。例えば、災害発生時やアンダーパスの冠水時などに、避難誘導方向を示す矢印や、通行止めを通知する画像を画像Mとして表示することで、車両の運転者に通知することができる。また、逆走車や落下物、動物などへの注意喚起を促す画像を画像Mとして表示して、車両の運転者に通知することもできる。
【0028】
次いで、ケース体6の内部構造について詳述する。
ケース体6には、
図3に示すように、照明部10と描画部12とに内部の空間を仕切る仕切板14が設けられている。仕切板14は、ケース体6の中心線Cに対して略直交方向に延在することで、ケース体6の空間を先端部6Aの側と後端部6Bの側とに区画し、先端部6Aの側の区画空間に上記照明部10が設けられ、後端部6Bの側の区画空間に上記描画部12が設けられている。
【0029】
照明部10は、白色光を放射する1または複数(図示例では3つ)の照明用光源20と、レンズや反射鏡といった光制御素子(図示せず)とを備え、照明用光源20の放射光を光制御素子が制御することで所定配光の照明光DAを出射する。かかる照明部10は、
図2に示すように、照明光DAの光軸KAを照射面である路面RBに向けてケース体6に設けられている。本実施形態において、照明用光源20には発光素子の一例であるLEDであって、比較的高出力なCOB(Chip On Board)型LEDが用いられており、各COB型LEDの光軸が出射開口8の開口面に略直交するように当該開口面に対面配置されている。
【0030】
また、ケース体6の出射開口8には、後端部6Bの側を覆い隠す遮光板16が設けられており、この遮光板16で覆い隠された箇所に上記描画部12が設けられている。なお、当該遮光板16、または、当該遮光板16の遮光機能を、図示を省略したカバー部材に設けてもよい。
【0031】
図4は仕切板14および遮光板16を外した状態の道路照明器具1を底面側からみた斜視図であり、
図5は仕切板14および遮光板16を外した状態の器具本体4の底面図である。また
図6は描画部12が備える描画ユニット30の構成を示す図である。
描画部12は、車両のヘッドライトによって照射されても十分視認できる光量(本実施形態では路面描画照度が200lx)で路面RBに画像Mを描画するものであり、
図5および
図6に示すように、描画用光源40と、マスク部材42と、結像レンズ44と、ミラー46と、を含む描画ユニット30を備えている。
【0032】
描画用光源40は、白色光をビーム状に放射する光源である。本実施形態では、照明用光源20と同様に、所定の路面描画照度を実現するために、比較的高出力なCOB型LEDが描画用光源40に用いられている。
マスク部材42は、画像Mに対応したパターンで描画用光源40の光を通過させることで、当該画像Mに対応したパターン光を形成する光通過部43(
図7)が設けられた部材である。本実施形態では、画像Mに対応したパターンで打ち抜いた光通過部43を有した金属板がマスク部材42に用いられている。
結像レンズ44は、光通過部43によって得られたパターン光を路面RBに所定のサイズで結像することで画像Mを描画する例えば球面両凸レンズなどの単レンズである。この結像レンズ44は、光通過部43から結像レンズ44までの光路に沿った距離や、当該結像レンズ44から路面RBまでの光路に沿った距離、路面RBにおける画像Mのサイズといったパラメータに基づいて焦点距離などの各種の光学設計値が規定されている。
ミラー46は、結像レンズ44を通った光を路面RBに向けて反射する光学素子である。なお、図示例のミラー46は反射面形状が平面であるが、反射面形状は、例えば凹面や凸面などの適宜の形状に変更可能である。
【0033】
描画ユニット30は、
図6に示すように、これら描画用光源40、マスク部材42、結像レンズ44、およびミラー46が描画用光源40の光軸KBの上に配置されており、
図4に示すように、この光軸KBが出射開口8の開口面と略平行となる姿勢(すなわち照明用光源20の光軸KAに対して傾斜する姿勢)でケース体6に収められている。
【0034】
かかる描画ユニット30によれば、描画ユニット30における光軸KBが出射開口8の開口面と略平行であり、ミラー46によって描画光DBを反射して出射開口8から路面RBに出射する構成となっている。これにより、路面RBにおける画像Mの高輝度化、高コントラスト化のために描画ユニット30の光軸に沿った距離(以下、「光軸距離」という)が比較的長くなってもケース体6の厚みが増大することがない。すなわち、照明部10の照明用光源20などに合わせて厚みが設計された既存のケース体6に、その厚みが例えば3cmから4cm程度と比較的薄い場合でも、その厚みを変更することなく、高輝度化、高コントラスト化に有利な比較的光軸距離が長い描画ユニット30を組み込むことができる。
【0035】
これに加え、描画ユニット30は、マスク部材42とミラー46との間に結像レンズ44を備えるため、十分に大きなサイズの画像Mをクリアに描画でき、また、マスク部材42を変えることで簡単に画像Mを変更できる。
【0036】
また描画ユニット30において、描画用光源40の発光面40A(
図6)は、マスク部材42の光通過部43よりも大きく、なおかつ、結像レンズ44の口径は、描画用光源40の発光面40Aよりも大きくなっている。
なお、本実施形態において、描画用光源40の平面視円形の発光面40Aの直径は20mm、光通過部43の寸法は20mm×15mm、結像レンズ44の口径は35mm、描画用光源40とマスク部材42の間の光軸距離は10mm、マスク部材42と結像レンズ44の間の光軸距離は60mm(すなわち、描画用光源40と結像レンズ44の間の光軸距離は70mm)である。
これにより、光通過部43の全域を欠けることなく光が通過し、また光通過部43によって得られたパターン光の全てが結像レンズ44に入射して路面RBに結像されるため、任意形状の画像Mを欠けることなく、なおかつ、より高い輝度で描画できる。
【0037】
本実施形態において、描画ユニット30の描画用光源40は、
図5に示すように、放射光の出射方向Eを先端部6Aの側、すなわち照明部10に向けてケース体6内に設けられている。一方、上述の通り、ケース体6内は、仕切板14によって仕切られており、この仕切板14は、例えば金属材などの遮光性材料から形成されている。したがって、描画用光源40の側から照明部10への漏れ光が仕切板14によって遮蔽されることとなり、当該漏れ光に起因した迷光(路面RB以外を照らす光)の発生が抑えられる。
【0038】
さらに上述の通り、出射開口8には遮光板16が配置されており、
図3に示すように、この遮光板16は、出射開口8の後端部8Bから仕切板14の手前までの範囲を覆い、当該遮光板16で覆われた範囲に、描画ユニット30の少なくとも描画用光源40(本実施形態では、さらにマスク部材42および結像レンズ44)が配置されている。これにより、描画ユニット30において、少なくとも描画用光源40の路面RBの側が遮光板16で覆われることとなり、当該描画用光源40から直接、路面RBへ向かう光が遮光板16で遮光されるため、当該描画用光源40がグレア源となって眩しく感じるのを防ぐことができる。
【0039】
かかる描画ユニット30において、ミラー46は、
図3に示すように、遮光板16と仕切板14の間の隙間17に配置され、当該隙間17から描画光を路面RBに向けて反射する反射部材である。
前掲
図2に示すように、器具本体4は、ケース体6の外側に設けられ、回転操作を受け付ける回転操作部50と、当該回転操作部50の回転操作によって回転する回転軸51と、を有し、当該回転軸51にミラー46が結合されており、当該回転軸51の回転に応じてミラー46が回転し、描画光DBの反射方向が変化するように構成されている。したがって、ユーザは回転操作部50を回転操作することでミラー46による描画光DBの反射方向を可変し、路面RBにおける画像Mの描画位置を調整することができる。
【0040】
なお、遮光板16は、出射開口8の後端部8Bから仕切板14までを覆い、かつ、ミラー46の反射光を通す開口が面内に形成された構成であってもよい。
【0041】
図7は、上面カバー52を開放した状態の道路照明器具1を上面側からみた斜視図である。
本実施形態の道路照明器具1では、路面RBに描画された画像Mの向きも変更可能に構成されている。
具体的には、
図7に示すように、器具本体4は、ケース体6の上面の後端部6Bの側を覆う上開き式の上面カバー52を備える。器具本体4の内部には、描画用光源40と結像レンズ44との間であって、上面カバー52が開いたときに露出する位置にマスクフォルダ56(
図4)が設けられており、当該マスクフォルダ56にマスク部材42が挿脱自在に保持される。この場合において、マスク部材42は、マスクフォルダ56に脱落不能に係合する取付部材54に取り付けられた状態でマスクフォルダ56に装着される。そして、取付部材54には、光軸KB回りに回動させた状態でマスク部材42を取付可能となっており、これにより、当該マスク部材42の向き(すなわち、光通過部43の向き)の変更に応じて路面RBにおける画像Mの向きも変えられることとなる。
【0042】
次いで、描画ユニット30による画像Mの描画態様について更に詳述する。
【0043】
図8は、描画光DBの色と画像Mの視認性との関係を調べた第1視認性調査の結果を示す図である。
この第1視認性調査は、夜間に路面RBを白色の照明光DAによって照明した状態において、当該照明光DAで照射されている範囲内に描画された画像Mを複数の被験者が観測し、画像Mの視認性を「はっきり見える」、「やや見える」、「見えにくい」、「ほとんど見えない」、「全く見えない」の5段階で評価することで行い、
図8は、かかる評価結果を集計して得られたものである。
図8に示すように、描画用光源40の色が「白色」である場合、「赤色」、「青色」および「緑色」に場合に比べ、視認性が顕著に高まることが分かる。
そこで、本実施形態では、描画用光源40には、上述のように、白色光を放射する光源を用いることで画像Mの路面RBにおける視認性が高められている。
【0044】
図9は、路面RBにおける画像Mとその周辺とのコントラストと、当該画像Mの視認性との関係を調べた第2視認性調査の結果を示す図である。第2視認性調査の調査方法は第1視認性調査と同じである。またコントラストは、次式(1)によって求めた照度比である。ただし、この第2視認性調査では、描画用光源40を複数の点滅間隔で点滅させることで画像Mを点滅表示させた状態で調査を行っている。
【0045】
コントラスト=Sa/Sb (1)
ただし、Saは、路面RBにおける画像Mの部分の照度であり、Sbは画像Mの周囲MA(
図1)の路面RBの照度である。
【0046】
図9に示すように、画像Mの点滅間隔によらず、コントラストが「8」以上(すなわち、「8:1」以上)となると、コントラストが「8」よりも小さい場合に比べ、画像Mが見え易くなることが分かる。
そこで本実施形態では、コントラストが「8」以上となるように、照明部10の照明用光源20と描画部12の描画用光源40とのそれぞれの光出力が設定されている。具体的には、照明用光源20の光出力は、道路照明として要求される照度(以下、要求照度という)が得られる値に設定される。そして、この要求照度を(1)式に代入してコントラストが8倍以上となる、画像Mの表示箇所の照度Saを求め、描画用光源40の光出力は、この照度Saが得られる値に設定されている。
【0047】
図10は、路面RBに画像Mを点滅させたときの点滅間隔(点灯周期)と、当該画像Mの目立ち度との関係を調べた目立ち度調査の結果を示す図である。また
図11は、路面RBに画像Mをデューティ比50%で点滅表示したときの点滅間隔と、当該画像Mから受ける不快感との関係を調べた不快感調査の結果を示す図である。
なお、目立ち度調査は、第1視認性調査の調査方法において、被験者が画像Mの目立ち度を「気付き易い」、「やや気付き易い」、「普通」、「気付きにくい」、「気付けない」の5段階で評価することで行ったものである。また不快感調査は、第1視認性調査の調査方法において、被験者が画像Mから受ける不快感を「不快」、「やや不快」、「普通」、「許容できる」、「不快ではない」の5段階で評価することで行ったものである。
また、これら目立ち調査および不快感調査では、描画用光源40の光出力を変えることで上記コントラストを「2」、「8」および「300」に変え、それぞれのコントラストで調査を行っている。
【0048】
図10に示すように、いずれのコントラストにおいても、点滅間隔が短いほど気付き易いことが分かる。また、コントラストが比較的低い「2」の場合は、点滅間隔が3秒を上回ると画像Mに気付き難くなることが分かる。したがって、いずれのコントラストにおいても画像Mを気付かせるためには、点滅間隔は3秒以下である必要がある。
【0049】
一方、
図11に示すように、いずれのコントラストにおいても、点滅間隔が短くなるほど不快さを感じることが分かり、特に、コントラストが「300」の場合、点滅間隔が1秒を下回ると、不快感が顕著に増大することが分かる。したがって、いずれのコントラストにおいても画像Mを不快と感じさせないようにするためには、点滅間隔は1秒以上である必要がある。
【0050】
本実施形態では、これら目立ち調査結果および不快感調整結果に基づき、描画用光源40が1秒以上3秒以下の点滅間隔で点滅し、これにより、気付き易くも不快と感じないように画像Mを点滅表示するようになっている。
さらに、描画用光源40が点滅点灯することで消費電力および熱負荷が抑えられ、より光輝度の描画を実現できる。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0052】
本実施形態の道路照明器具1は、路面RBを照明する照明光DAの照明用光源20を有した照明部10と、路面RBに画像Mを描画する描画光DBの描画用光源40を有した描画部12と、を備えた照明器具である。照明部10は、照明用光源20が光軸KAを路面RBに向けて配置されている。また描画部12は、描画用光源40が光軸KBを照明用光源20の光軸KAに対して傾斜する方向に向けて配置されており、描画用光源40の放射光を路面RBに向けて反射するミラー46を備えている。
【0053】
かかる構成によれば、高輝度化および高コントラスト化を実現するために描画部12の光軸距離が比較的長くても、照明部10に対応して設計された既存のケース体6に、その厚みを変更することなく組み込むことができるため器具の大型化を招くことがなく、またケース体6の厚みが増すことによる意匠性の低下も招くことがない。
【0054】
本実施形態の道路照明器具1は、ミラー46による反射方向を変える回転操作部50を備えるため、ユーザは設置現場において回転操作部50を操作して画像Mの表示位置(照射位置)を簡単に調整することができ施工性が高められる。
【0055】
本実施形態の道路照明器具1において、上記描画部12は、描画用光源40とミラー46の間に、描画用光源40の光を画像Mに応じたパターンで通過させる光通過部43を有するマスク部材42と、光通過部43を通過した光を路面RBに結像する結像レンズ44と、を備える。
かかる構成によれば、結像レンズ44によって十分に大きなサイズでクリアな画像Mを描画でき、またマスク部材42を変えることで簡単に画像Mを変更できる。
【0056】
本実施形態の道路照明器具1において、描画用光源40の発光面40Aは、マスク部材42の光通過部43よりも大きく、結像レンズ44の口径は、描画用光源40の発光面40Aよりも大きい。
これにより、光通過部43の全域を欠けることなく光が通過し、また光通過部43の通過によって形成されたパターン光の全てが結像レンズ44に入射して路面RBに結像されるため、任意形状の画像Mを欠けることなく、なおかつ、より高い輝度で描画できる。
【0057】
本実施形態の道路照明器具1において、マスク部材42は、描画用光源40とミラー46の間に、光通過部43の向きを変更自在に保持されているため、ユーザは設置現場において光通過部43の向きを自在に変えることで、画像Mの向きを簡単に調整でき、施工性が高められる。
【0058】
本実施形態の道路照明器具1において、描画用光源40の路面RBの側に遮光板16を備える。
これにより、描画用光源40から直接、路面RBへ向かう光が遮光板16で遮光されるため、当該描画用光源40がグレア源となって眩しく感じるのを防ぐことができる。
【0059】
本実施形態の道路照明器具1において、描画部12と照明部10との間に、遮光性材料から形成された仕切板14を備えるため、描画部12の側から照明部10への漏れ光が仕切板14によって遮蔽され、当該漏れ光に起因した迷光の発生が抑えられる。
【0060】
本実施形態の道路照明器具1において、描画光DBが白色光であるため、画像Mの路面RBにおける視認性が高められる。
【0061】
本実施形態の道路照明器具1において、路面RBにおける画像Mの部分と画像Mの周囲MAとのコントラストが8以上であるため、画像Mの視認性がより高められる。
【0062】
本実施形態の道路照明器具1において、描画部12は、画像Mを1秒から3秒の間の点滅間隔で点滅表示するため、気付き易くも不快と感じないように画像Mを点滅表示することができる。
【0063】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形および応用が可能である。
【0064】
(変形例1)
上述した実施形態において、
図12に示すように、路面RBにおける画像Mの周囲MA(特に輪郭部)の少なくとも一部を画像Mの部分と異なる色の光で照らすことで、画像Mの視認性をより高めてもよい。画像Mの周囲MAを異なる色で照らすための手法は適宜である。例えば、透明板材の表面に光通過部43を形成し、当該光通過部43の輪郭の全周または一部に、色を変えるためのカラーフィルタを配置する。これにより、路面RBにおいて画像Mの輪郭MBの全部または一部の色が画像Mと異なり、より目立つようになる。なお、画像Mの輪郭MBの色は適宜であるが、前掲
図8に示される結果によれば、当該輪郭MBの色を「緑色」とすることで視認性が効果的に高められる。
【0065】
(変形例2)
上述した実施形態において、路面RBにおいて画像Mの周囲MAの少なくとも一部の照度を下げることで、画像Mのコントラストを高めてもよい。照度を下げるための手法は適宜であり、例えば、照明部10が複数の照明用光源20を備える場合、描画部12が描画光DBを出射しているときに、照明部10は、各照明用光源20を適宜に消灯や調光することで、照度を下げてもよい。
同変形例において、描画部12が画像Mを点滅表示している場合、照明部10は、当該点滅表示と同期して、画像Mの周囲MA(特に輪郭部)の少なくとも一部の照度を下げてもよい。
【0066】
(変形例3)
上述した実施形態において、道路照明器具1は、外部機器(例えば、ユーザが所持する携帯型電子機器や、各種のセンサ機器など)から発信された信号を受信する受信装置と、当該受信装置が受信した受信信号に基づいて描画部12の描画用光源40の点灯(オン/オフや、調光、点滅など)を制御する点灯制御回路(制御部)と、を器具本体4に設けてもよい。点灯制御回路には、公知または周知の回路を用いることができる。これにより、描画部12による画像Mの描画のオン/オフや描画態様を外部機器によって遠隔制御することができる。この場合において、道路照明器具1は、ポール2の下部に設けられた制御盤5を備えるか否かは適宜である。
【0067】
(変形例4)
上述した実施形態において、
図13に示すように、描画部12が道路Rの交通方向RDと反対の方向(すなわち逆走方向)に描画光DBを出射する構成でもよい。これにより、雨天時などに路面RBの表面の水膜などで描画光DBが反射し易くなった場合でも、交通方向RDに走行している車両の運転者に向けて(すなわちカウンター側から)描画光DBが路面RBで反射されるため、画像Mの視認性の低下を防止できる。
交通方向RDと反対の方向へ描画光DBを出射するための構成は適宜である。例えば同
図13に示すように、ミラー46の反射方向が、交通方向RDと反対の方向を向くように描画ユニット30を器具本体4に設けてもよい。
【0068】
(変形例4)
上述した実施形態において、描画用光源40が先端部6Aではなく後端部6Bの側に向けて光を放射する向きに描画ユニット30が器具本体4の中に設けられてもよい。
また、器具本体4において、先端部6Aの側に描画部12を設け、後端部6Bの側に照明部10を設けてもよい。
【0069】
(他の変形例)
本発明は、道路照明器具1に限らず、トンネル照明器具や街路灯、防犯灯、ダウンライトといった路面や地面、床面、壁面等を照明する任意の照明器具に適用可能である。
【0070】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0071】
1 道路照明器具(照明器具)
2 ポール
2A 先端部
4 器具本体
5 制御盤(操作手段)
8 出射開口
10 照明部
12 描画部
14 仕切板(第2遮光手段)
16 遮光板(第1遮光手段)
20 照明用光源
30 描画ユニット
40 描画用光源
40A 発光面
42 マスク部材
43 光通過部
44 結像レンズ
46 ミラー(反射部材)
51 回転軸(反射方向を変える手段)
54 取付部材
56 マスクフォルダ
DA 照明光
DB 描画光
KA 照明用光源の光軸
KB 描画用光源の光軸
M 画像
MA 画像の周囲
MB 画像の輪郭
R 道路
RB 路面
RD 交通方向