(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125619
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】液状油性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/893 20060101AFI20220822BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20220822BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20220822BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220822BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220822BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220822BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61K8/893
A61K8/891
A61K8/25
A61K8/06
A61Q17/04
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023307
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】杉原 めぐみ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB46
4C083CC02
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】疎水処理シリカ粉末の再分散性が良好である液状油性化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(a)~(c)を含む、化粧料:(a)揮発性シリコーン油 5.0~60質量%;(b)疎水処理シリカ粉末 0.1~10質量%;(c)下記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーン 0.05~5.0質量%:
式(I)中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し;R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し;pは10~120の数であり;qは1~11の数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)~(c)を含む、液状油性化粧料:
(a)揮発性シリコーン油 5.0~60質量%;
(b)疎水処理シリカ粉末 0.1~10質量%;
(c)下記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーン 0.05~5.0質量%:
【化1】
式(I)中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し;R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し;pは10~120の数であり;qは1~11の数である。
【請求項2】
前記疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量が、1.0ml/g以上である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記揮発性シリコーン油が、直鎖ジメチコンである、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
(e)紫外線散乱剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
(f)皮膜形成剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
油中水型である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記疎水処理シリカ粉末が、シリコーン処理されたシリカ粉末である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記ポリグリセリン変性シリコーンが、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
使用時に振とうして再分散させる再分散型化粧料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸油性粉末を含む液状油性化粧料に関し、特に、吸油性粉末として疎水処理シリカ粉末を用いた液状油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油相が連続相を形成している液状油性化粧料、例えば油中水型組成物は、化粧料として広く用いられており、特に化粧持ち効果に優れていることから、特にサンスクリーン・下地化粧料・ファンデーションとして使用するのに適している。
【0003】
一般的に、液状油性化粧料において、伸びの良さや塗布のしやすさ等の使用感触の向上を目的として、粘度を低く調整することがおこなわれている。しかし、特に粘度の低い化粧料おいては、粉末等が沈降してしまい不均一となる場合がある。このような場合には、低粘度であっても粉末が沈降しないような工夫を行うか(特許文献1)、化粧料を使用する直前に、容器を振とうすることによって沈降した粉末を再分散させ、組成物を再び均一な状態に戻して塗布するという方法が用いられている(特許文献2)。
【0004】
また、化粧料には目的に応じて様々な粉末が用いられるが、皮脂による化粧崩れを防止する目的では、皮脂を吸収する粉末、例えば球状有機粉体等が配合されている(特許文献3及び4)。
【0005】
より具体的には、例えば、特許文献4では、次の成分(A)、(B)、(C)及び(H):(A)スクワランの吸油量が1.0g/g以上、吸水量が1.0g/g以下の球状有機粉体 0.1~10質量%、(B)皮膜形成剤 0.1~10質量%、(C)揮発性油 5~60質量%、(H)水 5~70質量%を含有する油中水型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4566124号公報
【特許文献2】特開2007-217393号公報
【特許文献3】特開2005-97246号公報
【特許文献4】国際公開第2019/111831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、これまでに、油性化粧料、特に低粘度の油中水型化粧料中に、皮脂を吸収する粉末として無機粉粉体であるシリカを疎水化して配合したものを化粧料に関しては、十分に検討されていなかった。
【0008】
これに対して、本発明者らは、疎水処理シリカ粉末を用いた液状油性化粧料に注目した。
【0009】
しかしながら、本発明者らの鋭意研究によって、疎水処理シリカ粉末を用いる場合には、分散性が悪いという問題を生じることが分かった。
【0010】
特に、上記のように、粘度を低く調整された液状油性化粧料では、油相に分散されている疎水処理シリカ粉末は、沈降しやすい傾向がある。疎水処理シリカ粉末が沈殿した場合には、振とうして疎水処理シリカ粉末を再分散させる必要がある。しかしながら、疎水処理シリカ粉末を用いると、振とうして再分散させる際の分散性(本願では、それを「再分散性」と定義する)も悪いということが分かった。
【0011】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、疎水処理シリカ粉末の再分散性が良好である液状油性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0013】
〈態様1〉
下記成分(a)~(c)を含む、液状油性化粧料:
(a)揮発性シリコーン油 5.0~60質量%;
(b)疎水処理シリカ粉末 0.1~10質量%;
(c)下記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーン 0.05~5.0質量%:
【化1】
式(I)中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し;R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し;pは10~120の数であり;qは1~11の数である。
〈態様2〉
前記疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量が、1.0ml/g以上である、態様1に記載の化粧料。
〈態様3〉
前記揮発性シリコーン油が、直鎖ジメチコンである、態様1又は2に記載の化粧料。
〈態様4〉
(e)紫外線散乱剤を更に含む、態様1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様5〉
(f)皮膜形成剤を更に含む、態様1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様6〉
油中水型である、態様1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様7〉
前記疎水処理シリカ粉末が、シリコーン処理されたシリカ粉末である、態様1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様8〉
前記ポリグリセリン変性シリコーンが、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3である、態様1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様9〉
使用時に振とうして再分散させる再分散型化粧料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、疎水処理シリカ粉末の再分散性が良好である液状油性化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《液状油性化粧料》
本発明の液状油性化粧料(以下、単に「本発明の化粧料」とも称する)は、下記成分(a)~(c)を含む:
(a)揮発性シリコーン油 5.0~60質量%;
(b)疎水処理シリカ粉末 0.1~10質量%;
(c)下記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーン 0.05~5.0質量%:
【化2】
式(I)中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し;R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し;pは10~120の数であり;qは1~11の数である。
【0016】
上述したように、油性化粧料、特に低粘度の油中水型化粧料中に、疎水処理シリカ粉末を用いる場合には、再分散性が悪いという問題が分かった。これは、疎水処理シリカ粉末は、親水性であるシリカ粉末の表面に疎水化処理を施したものであるため、粉末の表面の一部が親水的な状態で、それによって油相中で凝集することによると推測される。
【0017】
この問題を解決するために、本発明者らは、その鋭意研究により、上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンを配合することによって、疎水処理シリカ粉末に対して特異的に再分散性が良好となることを見出した。理論に限定されるものではないが、これは、揮発性シリコーン油中において、分散剤として用いられる上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンと疎水処理シリカ粉末との親和性が、このポリグリセリン変性シリコーンと揮発性シリコーン油との親和性に比べて大きく、それによって、振とうして再分散させる際にも、このポリグリセリン変性シリコーンが疎水処理シリカ粉末の表面に維持されて、疎水処理シリカ粉末を揮発性シリコーン油中に分散させる機能を発揮できるからと考えられる。
【0018】
これに対して、他の一般的な分散剤は、疎水処理シリカ粉末に対する親和性が十分ではないか、あるいは疎水処理シリカ粉末をシリコーン油に分散させる能力が十分ではないと考えられる。
【0019】
なお、上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンは、従来では、シリコーン系界面活性剤として、例えば酸化チタン等の金属酸化物粒子を分散するために使用できることが知られているが、本発明のように再分散の観点で使用することは示唆されていなかった。また、後述する比較例8に示すように、シリコーン処理酸化チタン等の金属酸化物粒子を再分散させる際に、上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンを本発明と同様に配合した場合においても、再分散性をよくすることはできないことが分かった。
【0020】
〈(a)揮発性シリコーン油〉
本発明の化粧料は、(a)揮発性シリコーン油を含む。揮発性シリコーン油を含むことによって、例えばべたつきを抑制することができ、また化粧料を皮膚に塗布した後に重ねてメイクアップ化粧料を塗布した際の均一性を向上することもできる効果が得られる。
【0021】
なお、本発明において、「揮発性」とは、大気圧下、105℃で3時間放置したときの揮発分が5%超を呈するものを意図する。本発明の効果をより発揮させる観点から、揮発性の指針となる揮発分としては、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、80%以上、又は100%であることが好ましい。また、本開示において「不揮発性」とは、105℃で3時間放置したときの揮発分が5%以下を呈するものを意図する。なお、ここで、揮発分は、ガラスシャーレにろ紙をのせ、試料約0.2gを滴下し、重量法により測定した重量変化率の値を指す。
【0022】
本発明において、揮発性シリコーン油としては、例えばジメチコン等が挙げられるが、これには限定されない。また、揮発性シリコーン油は、鎖状のものであってもよく、環状のものであってもよい。更に、鎖状の揮発性シリコーン油は、直鎖のものであってもよく、分岐鎖のものであってもよく、特に直鎖のものが好ましい。
【0023】
また、揮発性シリコーン油の粘度は、例えば0.7cs~3.0csであってよい・
【0024】
また、揮発性シリコーン油としては、市販のものを用いることができる。市販の揮発性シリコーン油としては、例えば信越化学工業株式会社製のシリコーンKF-96A-2cs(ジメチコン)、シリコーンKF-96A-1.5cs(ジメチコン)、及びシリコンKF56(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の化粧料において、1種又は2種以上の揮発性シリコーン油を用いることができる。本発明の化粧料における揮発性シリコーン油の含有量は、伸びを向上させる観点、べたつきを抑制する観点、又は化粧料を皮膚に塗布する均一性を向上させる観点から、化粧料の全量に対して、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上、25質量%以上、26質量%以上、27質量%以上、28質量%以上、29質量%以上、又は30質量%以上であってよく、また60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0026】
〈(b)疎水処理シリカ粉末〉
本発明の化粧料は、(b)疎水処理シリカ粉末を含む。本発明の化粧料は、疎水処理シリカ粉末を含むことによって、皮脂を吸収できるため、皮脂による化粧崩れを防止できる。
【0027】
本発明において、疎水処理シリカ粉末とは、シリカ粉末の表面を疎水処理したものを指す。ここで、疎水処理は、例えばジメチコンやメチコン等のシリコーン系処理であってよい。本発明の効果をより発揮させる観点から、疎水処理シリカ粉末は、シリコーン処理されたシリカ粉末であることが好ましい。
【0028】
本発明において、シリカ粉末としては、多孔質のシリカ粒子であってもよく、表面に凹凸があるシリカ粒子であってよいが、皮脂の吸収効果を向上させる観点から、多孔質のシリカ粒子であることが好ましい。また、シリカ粒子の形状は、特に限定されず、例えば真球状、略球状、又は回転楕円体状等であってよい。また、シリカ粒子は、崩壊性シリカ粒子、特に指のせん断力で壊れるシリカ粒子であってよい。
【0029】
また、疎水処理シリカ粉末の平均粒子径は、特に限定されず、例えば1~30μmであってよい。なお、本発明において、平均粒子径は、SEM又はTEMによって観察される一次粒子の投影面積円相当径として算出することができる。
【0030】
本発明において、疎水処理シリカ粉末の吸油量は、1gあたりの疎水処理シリカ粉末がオレイン酸を吸収できる量(ml)(すなわち、「オレイン酸の吸油量(ml/g)」)によって評価される。なお、オレイン酸は、皮脂中の代表的な不飽和遊離脂肪酸である。本発明において、疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量は、1.0ml/g以上、1.1ml/g以上、1.2ml/g以上、1.3ml/g以上、1.4ml/g以上、1.5ml/g以上、1.6ml/g以上、1.7ml/g以上、1.8ml/g以上、1.9ml/g以上、2.0ml/g以上、2.1ml/g以上、2.2ml/g以上、又は2.3ml/g以上であってよく、また5.0ml/g以下であってよい。なお、疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量は、例えば「JIS-K JIS K 5101-13-1日本工業規格 顔料試験方法-第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法」を参照して、求めることができる。
【0031】
また、疎水処理シリカ粉末としては、市販のものを用いてよい。市販の疎水処理シリカ粉末としては、例えば三好化成株式会社製のSA-SA-705(製品名)が挙げられるが、これには限定されない。
【0032】
本発明の化粧料において、1種又は2種以上の疎水処理シリカ粉末を用いることができる。本発明の化粧料における疎水処理シリカ粉末の含有量は、皮脂の吸収効果を向上させる観点から、化粧料の全量に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、5.0質量%以上、5.5質量%以上、6.0質量%以上、6.5質量%以上、7.0質量%以上、7.5質量%以上、又は8.0質量%以上であってよく、また10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、又は6.0質量%以下であってよい。
【0033】
〈(c)ポリグリセリン変性シリコーン〉
本発明の化粧料は、(c)ポリグリセリン変性シリコーンを含む。上述したように、本発明の化粧料は、このポリグリセリン変性シリコーンを含むことによって、疎水処理シリカ粉末の再分散性を向上させることができる。なお、ポリグリセリン変性シリコーンは、下記式(I)で示される。
【化3】
式(I)中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し;R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し;pは10~120の数であり;qは1~11の数である。
【0034】
上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンは、例えば、ポリグリセリンジアリルエーテルと片末端水素化ジメチルポリシロキサンの混合液中に塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液を加え、これを加熱・反応させ、ここに塩酸水溶液を添加し、過熱加水分解した後、重曹水を加えて中和した後、精製し、エバポレーションして得ることができる。なお、本発明にかかるポリグリセリン変性シリコーンは、この製造方法に限定されるものではない。
【0035】
本発明にかかるポリグリセリン変性シリコーンとしては、例えば、化粧品表示名称で定義されるビスブチルジメチコンポリグリセリル-3等が挙げられるが、これには限定されない。
【0036】
また、上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンは、市販のものを用いてよい。
【0037】
本発明の化粧料において、1種又は2種以上の上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンを用いることができる。本発明の化粧料における上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンの含有量は、疎水処理シリカ粉末の再分散性を向上させる観点から、化粧料の全量に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2.0質量%以上、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.8質量%以上、3.0質量%以上、3.2質量%以上、又は3.5質量%以上であってよく、また5.0質量%以下、4.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0038】
〈その他の成分〉
本発明の化粧料は、上述した成分(a)~(c)を、合計で、化粧料の全量に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上含んでよい。また、本発明の化粧料は、上述した成分(a)~(c)以外に、その他の成分を更に含んでよい。以下では、その他の成分について例示的に説明するが、本発明の化粧料を限定するものではない。
【0039】
〈(d)水〉
本発明の化粧料は、(d)水を含んでよい。水としては、化粧料に使用可能な水、例えばイオン交換水等を用いてよい。
【0040】
本発明の化粧料において、水が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、5.0質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、22質量%以上、25質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、32質量%以上、35質量%以上、38質量%以上、40質量%以上、42質量%以上、又は45質量%以上であってよく、また70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0041】
((e)紫外線散乱剤)
本発明の化粧料は、紫外線散乱剤を更に含んでよい。紫外線散乱剤は、紫外線を散乱又は遮蔽する効果を奏する。
【0042】
紫外線散乱剤としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、又はこれらを混合した粉末等が挙げられるが、これらに限定されない。また、酸化チタン及び酸化亜鉛は、例えば10~50nmの粒子径を有する微粒子酸化チタン及び酸化亜鉛であってよい。更に、酸化チタン及び酸化亜鉛は、表面処理されたものであってよい。ここで、表面処理としては、例えば脂肪酸処理及び脂肪酸エステル処理等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
また、紫外線散乱剤としては、市販のものを用いることができる。
【0044】
本発明の化粧料において、紫外線散乱剤が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、又は6.0質量%以上であってよく、また25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0045】
((f)皮膜形成剤)
本発明の化粧料は、皮膜形成剤を更に含んでよい。皮膜形成剤は、化粧もち効果を奏することができる。
【0046】
皮膜形成剤としては、例えばフッ素変性シリコーン樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、あるリルシリコーン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。また、皮膜形成剤は、25℃で固体状であってもよく、固体状の場合には溶剤に溶解して使用してよい。
【0047】
また、皮膜形成剤としては、市販のものを用いることができる。市販の皮膜形成剤としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のフルオロシリコーンレジンX66-C8636(トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸/ジメチコン)等が挙げられるが、これには限定されない。
【0048】
本発明の化粧料において、皮膜形成剤が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、また10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、又は4質量%以下であってよい。なお、皮膜形成剤が溶剤に溶解された場合にはその固形分としての含有量が前記範囲内であってよい。
【0049】
(界面活性剤)
上述した上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーンは、分散剤として機能するシリコーン系界面活性剤一種であるが、本発明の化粧料は、それ以外の界面活性剤、例えば乳化剤として機能する界面活性剤を更に含んでよく、例えば、シリコーン系界面活性剤又はポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤を更に含んでよい。
【0050】
ここで、上記式(I)で示されるポリグリセリン変性シリコーン以外のシリコーン系界面活性剤としては、例えばポリエール鎖が側鎖に位置するポリエーテル変性シリコーン(以下、単に「ポリエーテル変性シリコーン」とも称する)、又はポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
これらの界面活性剤として、具体的には、化粧品表示名称で定義されるPEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられるが、これらに限定さない。
【0052】
また、これらの界面活性剤の市販品としては、信越化学工業社製のKF-6017、KF-6028、及びKF-6038等が挙げられるが、これらに限定さない。
【0053】
(不揮発性シリコーン油)
本発明の化粧料は、上述した揮発性シリコーン油以外の油分、例えば不揮発性シリコーン油を更に含んでよい。不揮発性シリコーン油として、例えば市販品のシリコーンKF-96A-6T(ジメチコン)等の上述した揮発性シリコーン油以外のシリコーン油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
また、不揮発性シリコーン油が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば1.0~10質量%であってよい。
【0055】
(水溶性成分)
本発明の化粧料は、例えば低級アルコール等の水溶性成分を更に含んでよい。低級アルコールとしては、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノール等挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
また、水溶性成分が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば1.0~10質量%であってよい。
【0057】
(紫外線吸収剤)
本発明の化粧料は、紫外線吸収剤を更に含んでよい。紫外線吸収剤としては、例えば安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、及び4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
また、紫外線吸収剤が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば1.0~10質量%であってよい。
【0059】
(色剤)
本発明の化粧料は、色剤を更に含んでよい。色剤としては、例えば赤色酸化鉄又はチタン酸鉄等の赤色系顔料、黄色酸化鉄又は黄土等の黄色系顔料、黒色酸化鉄等の黒色系顔料、マンゴバイオレット等の紫色系顔料、酸化クロム等の緑色系顔料、紺青等の青色系顔料、及びこれらを混合したもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
また、色剤が含まれる場合のその含有量は、化粧料の全量に対して、例えば0.001~10質量%であってよい。
【0061】
上述したほか、本発明の化粧料は、本発明の効果を損なわない限り、通常の化粧料に使用可能な成分、例えば防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、又は皮膚賦活剤等も更に含んでよい。
【0062】
〈形態〉
本発明の化粧料は、使用時に振とうして再分散させる再分散型化粧料であってよい。
【0063】
また、本発明の化粧料は、油中水型であってよい。油中水型の化粧料は、保湿性や耐水性の観点から好ましい。
【0064】
ここで、油中水型の化粧料は、通常の方法により製造することができる。より具体的には、以下の手順により本発明の化粧料を製造してよい。すなわち、25℃程度の所定の温度において、混合した油相成分(揮発性シリコーン油、及び随意に添加する皮膜形成剤等)に、粉体相(疎水処理シリカ粉末、及び必要に随意に添加する紫外線散乱剤や色剤等)を添加して、分散する。その後、水相成分(水、及び随意に添加する水溶性成分)を添加し、撹拌することにより油中水型の化粧料を得る。
【0065】
また、本発明の化粧料は、乳液、化粧下地、リキッドファンデーション、又は日焼け止め等の化粧料等に適用してよい。また、本発明の化粧料は、単品のみの使用においても、リキッドファンデーションやパウダーファンデーション・白粉等の粉体化粧料の重ね付けにおいても使用することができる。
【0066】
〈粘度〉
本発明の化粧料の粘度は、伸びの良さと、塗布のしやすさを向上させる観点から、例えば10000mPa・s以下、又は8000mPa・s以下であってよく、また、塗布時の液垂れを抑制する観点から、100mPa・s以上であってよい。なお、本発明において、化粧料の粘度は、例えばBL型粘度計(VS-A型 芝浦システム株式会社製、30℃)を用いて、ローター3号により12rpm、1分間の測定条件で測定してよい。
【実施例0067】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、含有量は質量%で示す。
【0068】
下記の表1及び2に示す実施例及び比較例の化粧料を常法により調製し、得られた各化粧料について、再分散性を以下の基準に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0069】
(再分散性の評価)
各実施例及び比較例の化粧料に対して、日立製作所製の遠心分離機(himac CF702)を用いて遠心分離を行った後の各化粧料の状態を評価した。評価基準は、以下のとおりである:
A:上下10回振とうしたときに、粒子の沈降がない;
B:上下10回振とうしたときに、粒子の一部が沈降している;
C:上下10回振とうしたときに、粒子の大部分(目視で半分以上)が沈降している。
【0070】
【0071】
なお、表1における「その他の共通成分」は、下記表2に示す。
【0072】
【表2】
表1から明らかなように、実施例1~3の化粧料は、いずれも再分散性が良好であることが分かった。
【0073】
これに対して、「ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3」が含まれていない比較例1~7は、いずれも再分散性が悪いことが分かった。また、比較例2~7では、「ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3」の代わりに、他の活性剤を配合しても再分散性を改善できないことが分かった。
【0074】
また、比較例8では、「ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3」を用いて、本発明の疎水処理シリカ粉末の代わりに「シリコーン処理酸化チタン」を分散したところ、再分散性が悪いことが分かった。
【0075】
(疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量の測定)
実施例で用いた疎水処理シリカ粉末(シリコーン処理シリカ)に対して、「JIS-K JIS K 5101-13-1日本工業規格 顔料試験方法-第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法」を参考にして、オレイン酸の吸油量を測定した。
【0076】
より具体的には、100gの疎水処理シリカ粉末を測り取り、精製あまに油の代わりにオレインを用いて、疎水処理シリカ粉末の吸油量を測定した。
【0077】
測定した結果、実施例で用いた疎水処理シリカ粉末のオレイン酸の吸油量は、240~250ml/100gであることが分かった。
【0078】
(粘度の測定)
実施例1~3の化粧料に対して、BL型粘度計(VS-A型 芝浦システム株式会社製、30℃)を用いて、ローター3号により12rpm、1分間の測定条件で測定した。その結果、実施例1~3の化粧料の粘度はいずれも、2000mPa・sであった。
【0079】
〈処方例〉
以下では、本発明の化粧料の処方例を挙げるが、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。
【0080】
処方例 サンスクリーン
成分 含有量(質量%)
水 残分
エタノール 6.0%
揮発性ジメチコン 22%
不揮発性ジメチコン 4.0%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3.0%
トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸/ジメチコン
2.6%
PEG-10ジメチコン 0.9%
ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3 1.0%
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5.0%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5%
脂肪酸処理酸化チタン 1.0%
脂肪酸エステル処理酸化亜鉛 6.0%
シリコーン処理シリカ 5.0%
ポリヒドロキシ酪酸 0.1%
ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸) 0.1%
フェノキシエタノール 0.5%
合計 100%