(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125627
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05C 19/02 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
E05C19/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023319
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】長沼 健太
(57)【要約】
【課題】ピンが動作不良を起こすのを防止できるラッチ装置を提供する。
【解決手段】ラッチ装置は、ハウジング2と、ハウジング2に摺動可能に収容され、前端部に開閉体を保持するための保持部4を有する摺動部材3と、ハウジング2に対して摺動部材3を前方に付勢するばね15と、中央部17b及び中央部17bに対して略L字状に曲げられた両端部17a,17cを有するピン17と、を備える。ピン17の一端部17aが摺動部材3の穴12bに回転可能に嵌まる。ピン17の他端部17cがハウジング2に設けられた循環溝11(カム部6)に入る。摺動部材3に、ピン17の中央部17bと循環溝11(カム部6)との間に配置される本体部18aを有するカバー18を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに摺動可能に収容され、前端部に開閉体を保持するための保持部を有する摺動部材と、
前記ハウジングに対して前記摺動部材を前方に付勢するばねと、
中央部及び前記中央部に対して略L字状に曲げられた両端部を有するピンと、
を備え、
前記ピンの一端部が前記摺動部材又は前記ハウジングの一方の穴に回転可能に嵌まり、
前記ピンの他端部が前記摺動部材又は前記ハウジングの他方に設けられた循環溝に入るラッチ装置において、
前記摺動部材又は前記ハウジングの前記一方に、前記ピンの前記中央部と前記循環溝との間に配置される本体部を有するカバーを設けることを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ピンの一端部が前記摺動部材又は前記ハウジングの前記一方に対して軸方向に移動可能であり、
前記摺動部材又は前記ハウジングの前記一方には、前記ピンを前記循環溝に付勢するばねが設けられることを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、家具等における扉等の開閉体のロック位置を保持するラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扉等の開閉体のロック位置を保持するラッチ装置が知られている(特許文献1参照)。ラッチ装置は、開閉体を吸着等する保持部(マグネット又は一対のアーム等)を有する摺動部材を備える。開閉体は、ロック位置にある摺動部材に吸着等される。このラッチ装置において、ユーザがロック位置にある開閉体を押せば、開閉体が一旦後退した後、少量開く。少量開いた開閉体に手をかければ、開閉体を開くことができる。
【0003】
ラッチ装置は、ハウジングと、ハウジングに摺動可能に収容され、前端部に開閉体を保持する保持部(マグネット又は一対のアーム等)を有する摺動部材と、ハウジングに対して摺動部材を前方に付勢するばねと、中央部及び中央部に対して略L字状に曲げられた両端部と、を有するピンと、を備える。ピンの一端部が摺動部材の穴に回転可能に嵌まる。ピンの他端部がハウジングに設けられた循環溝に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のラッチ装置においては、摺動部材がロック位置にあるとき、ばねの力によって、ピンには引っ張り方向の力が働く。この力が原因で、耐用年数を超えてラッチ装置を使用すると、ピンが摺動部材の穴から抜ける方向に傾いたり、穴から抜けたりして、動作不良を起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ピンが動作不良を起こすのを防止できるラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに摺動可能に収容され、前端部に開閉体を保持するための保持部を有する摺動部材と、前記ハウジングに対して前記摺動部材を前方に付勢するばねと、中央部及び前記中央部に対して略L字状に曲げられた両端部を有するピンと、を備え、前記ピンの一端部が前記摺動部材又は前記ハウジングの一方の穴に回転可能に嵌まり、前記ピンの他端部が前記摺動部材又は前記ハウジングの他方に設けられた循環溝に入るラッチ装置において、前記摺動部材又は前記ハウジングの前記一方に、前記ピンの前記中央部と前記循環溝との間に配置される本体部を有するカバーを設けることを特徴とするラッチ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバーによってピンが循環溝に入るのを防止できるので、ピンが摺動部材又はハウジングの穴から抜ける方向に傾いたり、穴から抜けたりするのを防止できる。このため、ピンが動作不良を起こすのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のラッチ装置の外観斜視図である(
図1(a)は摺動部材のロック位置(閉じ位置)を示し、
図1(b)は摺動部材の少量開き位置を示す)。
【
図2】本実施形態のラッチ装置の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態のラッチ装置の縦断面図である(
図3(a)は摺動部材のロック位置(閉じ位置)を示し、
図3(b)は摺動部材の少量開き位置を示す)。
【
図4】本実施形態のラッチ装置のカバーの斜視図である。
【
図5】本実施形態のラッチ装置の摺動部材を示す図である(
図5(a)は摺動部材の底面側斜視図を示し、
図5(b)は
図5(a)のb-b線断面図を示す)。
【
図6】本実施形態のラッチ装置の摺動部材を示す図(ピンとカバーを摺動部材に取り付けた状態)である(
図6(a)は摺動部材の底面側斜視図を示し、
図6(b)は
図6(a)のb-b線断面図を示す)。
【
図7】本実施形態のラッチ装置のカム部の循環溝を示す図である(
図7(a)は循環溝の勾配を示し、
図7(b)は循環溝の平面図を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のラッチ装置を詳細に説明する。ただし、本発明のラッチ装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0011】
図1(a)(b)は、本発明の一実施形態のラッチ装置1の外観斜視図を示す。ラッチ装置1は、ハウジング2と、ハウジング2に対して摺動可能な摺動部材3と、を備える。ハウジング2は、建築物、家具等における枠、筐体等に取り付けられる。摺動部材3の前端部には、扉等の開閉体を保持するための保持部4が設けられる。
【0012】
図1(a)は、摺動部材3のロック位置を示す。開閉体には、保持部4に吸着される吸着板が設けられる。開閉体は、摺動部材3の保持部4に吸着されて、そのロック位置を保持する。ユーザが
図1(a)に示すロック位置にある摺動部材3を押すと、摺動部材3が一旦後退した後、
図1(b)に示す前端位置(少量開き位置)まで前方に移動する。少量開き位置にある開閉体に手をかければ、開閉体を開くことができる。
【0013】
以下にラッチ装置1の構成を説明する。
図2はラッチ装置1の分解斜視図を示す。
図3(a)(b)はラッチ装置1の縦断面図を示す。
【0014】
2はハウジングである。ハウジング2は、前方が開口する箱状に形成される。ハウジング2は、断面略U字状の本体部5と、本体部5の下端に取り付けられる板状のカム部6と、を備える。カム部6は、その後端部の突起6aが本体部5の後部壁に係合し、その前端部6bがかしめピン8によって本体部5に取り付けられる。カム部6には、循環溝11が形成される。循環溝11は後述する。
【0015】
9は、ハウジング2を建築物、家具等における枠、筐体等に取り付けるための取付けプレートである。ハウジング2は、取付けプレート9を介して枠、筐体等に取り付けられる。取付けプレート9は、ねじ等の締結部材によって枠、筐体等に固定される。ハウジング2は、取付けプレート9に着脱可能に取り付けられる。
【0016】
取付けプレート9の縁部9aには、ハウジング2(本体部5)の爪5aに係合する突起9a1が形成される。ハウジング2には、ロックレバー7が上下方向に移動可能に設けられる。ロックレバー7は、ばね10によってハウジング2に対して下方に付勢される(
図3(a)参照)。ハウジング2の爪5aを取付けプレート9の切欠き9a2に嵌め、ハウジング2を後方に摺動させると、ハウジング2の爪5aが取付けプレート9の突起9a1に係合し、ばね10の力によってロックレバー7が取付けプレート9の穴9bに嵌まる。これにより、ハウジング2が取付けプレート9に取り付けられる。ハウジング2を取付けプレート9から取り外す際は、ロックレバー7を持ち上げ、ハウジング2を前方に摺動させればよい。
【0017】
図2に示すように、摺動部材3は、断面四角状の扁平な本体部12と、本体部12の前端部に取り付けられる保持部4と、を備える。保持部4は、マグネット4aと、マグネット4aを挟む一対のヨーク4bと、を備える。ヨーク4bは、略T字形の板状であり、略四角形の本体部4b1と、本体部4b1から延設する延長部4b2と、を備える。本体部4b1の前後方向の両端には、マグネット4aを固定するための爪が設けられる。保持部4は、例えばかしめピン13によって本体部12に取り付けられる(
図3(a)参照)。
【0018】
15は、ハウジング2に対して摺動部材3を前方に付勢するばねである。16は、ばね受けである。摺動部材3の本体部12には、ばね15の前端部が挿入される穴12a(
図5(a)参照)が形成される。ばね受け16は、ハウジング2の後部壁に支持される。
【0019】
摺動部材3には、ピン17が回転可能に取り付けられる。ピン17は、中央部17bと、中央部17bに対して略L字状に曲げられた両端部17a,17cと、を備える。一端部17aと他端部17cは、互いに反対方向に曲げられる。一端部17aは、摺動部材3の穴12bに回転可能に嵌まる。一端部17aは、摺動部材3に対して軸方向(上下方向)に移動可能である。他端部17cは、カム部6の循環溝11に入る。
【0020】
摺動部材3には、ピン17の一端部17aと中央部17bを覆うカバー18が取り付けられる。カバー18は、板状であり、本体部18aと、本体部18aに対して曲げられた両端部18bと、を備える(
図4参照)。カバー18は、断面コ字状である。カバー18の両端部18bは、摺動部材3のスリット26a(
図5(a)参照)に嵌められる。カバー18は摺動部材3と一緒に移動可能である。カバー18はねじ等の締結部材によって摺動部材3に固定されていないが、締結部材によって摺動部材3に固定されてもよい。
【0021】
摺動部材3には、ピン17を循環溝11に付勢するばね21が設けられる。ばね21は、押圧体22を介してピン17の中央部17bを付勢する。押圧体22は、内周筒部22aと、外周筒部22bと、を備える(
図3(a)参照)。ばね21は、押圧体22の内周筒部22aと外周筒部22bとの間に収容される。
【0022】
図5(a)は、摺動部材3の本体部12の底面側斜視図を示す。本体部12の底面には、ピン17の一端部17aが嵌まる穴23が形成される。本体部12の底面には、穴23を中心にした扇形の切欠き24が形成される。ピン17の所定量以上の回転は、切欠き24の壁面によって制限される。切欠き24には、押圧体22が嵌まる穴25が形成される。
【0023】
摺動部材3の本体部12の底面には、カバー18の本体部18aの厚みに合わせた凹部26が形成される。凹部26には、カバー18の両端部18bが挿入されるスリット26aが形成される。
【0024】
図6は、摺動部材3の本体部12にピン17とカバー18を取り付けた状態を示す。ピン17の一端部17aと中央部17bは、カバー18によって覆われる。
図3(a)に示すように、カバー18の本体部18aは、ピン17の中央部17bと循環溝11(カム部6)との間に配置される。
【0025】
図6(a)に示すように、摺動部材3の本体部12の底面には、左右一対の突起12dが設けられる。突起12dは、カム部6の前後方向に延びる案内溝28(
図2参照)に嵌まる。ハウジング2に対する摺動部材3の摺動は、案内溝28によって案内される。案内溝28の前端部は、連結溝29によって連結される。連結溝29には、緩衝材30が配置される。緩衝材30は、本体部12の突起12dが当たったときの衝撃を緩和する。
【0026】
図7(a)(b)は、カム部6の循環溝11の詳細図を示す。
図7(b)は循環溝11の平面図、
図7(a)は循環溝11の勾配を示す図である。
図7(b)に示すように、循環溝11は、ハート形をしている。すなわち、循環溝11は、後方のM字形のカム溝31と、前方のV字形のカム溝32と、を備える。
【0027】
図7(a)に示すように、循環溝11は段差33a,33b,33c,33dを有する。
図7(a)(b)示すように、V字形のカム溝32を構成する溝32aは、後方に向かって上り勾配に形成される。M字形のカム溝31を構成する溝31aは、M字形のカム溝31の中央部(Yの位置)に向かって上り勾配に形成される。M字形のカム溝31を構成する溝31bは、後方に向かって上り勾配に形成される。V字形のカム溝32を構成する溝32bは、前方に向かって上り勾配に形成される。段差33a,33b,33c,33dにより、ピン17は順方向(時計方向)にのみ循環でき、逆方向に循環できなくなる。
【0028】
摺動部材3がロック位置にあるとき、
図7(b)に示すように、ピン17の他端部17c(以下、単にピン17という)はYの位置にある。ユーザが摺動部材3を押すと、ピン17がM字形のカム溝31の溝31bに入り、溝31bの端部に突き当たる。これ以上摺動部材3は後退できないので、摺動部材3を押す力を除いてやると、ばね15の力によって、ピン17はV字形のカム溝32の溝32bに入り、Zの位置を経由して、Vの位置まで前方に移動する。このとき、摺動部材3の突起12dが緩衝材30に突き当たり、これ以上摺動部材3は前進できなくなって停止する。これにより、
図3(b)に示す摺動部材3の少量開いた位置が保持される。
【0029】
再びユーザが摺動部材3を押すと、
図7(b)に示すように、ピン17がV字形のカム溝32の溝32aに入り、Wを経由して、M字形のカム溝31の溝31aに入り、溝31aの端部(Xの位置)に突き当たる。これ以上摺動部材3は後退できないので、摺動部材3を押す力を取り除いてやると、ばね15の力によってピン17はM字形のカム溝31の中央部(Yの位置)に落ち込んで前進できないようになる。これにより、摺動部材3のロック位置が保持される。
【0030】
図3(a)に示すように、摺動部材3がロック位置にあるとき、ばね15の力によって、ピン17には引っ張り方向の力が働く。この力が原因で、
図3(a)中の破線で示すように、ピン17が摺動部材3の穴12bから抜ける方向に傾いたり、穴12bから抜けたりして、動作不良を起こすおそれがある。しかし、ピン17の中央部17bと循環溝11との間には、カバー18の本体部18aが設けられるので、本体部18aによってピン17の一部が循環溝11に入るのを防止でき、ピン17が摺動部材3の穴12bから抜ける方向に傾いたり、摺動部材3の穴12bから抜けたりするのを防止できる。したがって、ピン17が動作不良を起こすのを防止できる。
【0031】
また、ピン17の一端部17aを摺動部材3に対して軸方向(上下方向)に移動可能にし、摺動部材3にピン17を循環溝11に付勢するばね21を設けるので、ピン17の動作をより安定させることができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0033】
上記実施形態では、ピンの一端部を摺動部材に対して軸方向(上下方向)に移動可能にしているが、ピンの一端部を摺動部材に対して軸方向に移動不可能にし、ピンのばね力を使ってピンの他端部を上下動させてもよい。
【0034】
上記実施形態では、摺動部材にピンを設け、ハウジングに循環溝を設けているが、摺動部材に循環溝を設け、ハウジングにピンを設けてもよい。
【0035】
上記実施形態では、摺動部材に保持部としてマグネットを用いているが、開閉体の突部を掴む一対のアームを用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…ラッチ装置
2…ハウジング
3…摺動部材
4…保持部
15…ばね
17…ピン
17a…ピンの一端部
17b…ピンの中央部
17c…ピンの他端部