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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125704
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】交流電圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/257 20060101AFI20220822BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H02M5/257 A
H02J3/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023445
(22)【出願日】2021-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5G066
5H750
【Fターム(参考)】
5G066DA07
5G066EA01
5H750AA01
5H750AA03
5H750BA05
5H750CC06
5H750DD13
5H750DD22
5H750DD23
5H750FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交流電圧源に直列に電圧形インバータを挿入制御することにより、瞬停や停電動作も含めた交流電圧源の電圧変動や電圧波形ひずみが補償できる正弦波状の安定した交流安定化電源の小型軽量高効率を実現する多機能の交流安定化電源を提供する。
【解決手段】交流電圧制御電源において、交流電圧制御主回路構成部200は、交流電源と交流負荷の間に直列に電圧形インバータ回路を接続し、PWM制御により電圧形インバータ回路の直流電圧源を確保しながら、交流電圧変動分を補償する電圧の発生と、交流電圧のひずみ波成分を打ち消す波形補償電圧を発生させる各制御信号量を加え合わせてPWM制御信号として電圧形インバータ回路を働かせることにより、電力授受可能な直流電圧源を用いることなく小型軽量高効率で正弦波状の交流安定化出力を得ることができ、無停電電源動作としての構成にも有用な交流電圧制御システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源と負荷の間に直列に電圧形インバータを接続し、前記電圧形インバータの交流出力電圧を前記交流電圧源に重畳し、交流電圧制御に必要な進み電流を流すキャパシタを用いたLCフィルタ回路を介して前記負荷出力端に導く交流電圧制御回路において、前記電圧形インバータの直流電圧一定制御と交流出力電圧一定制御および交流出力電圧波形のひずみ補償制御を互いに独立した制御量として発生した各制御信号を加算した量を前記電圧形インバータのPWM制御信号として前記電圧形インバータを働かせることにより、簡単な主回路構成とその制御動作が負荷の軽重に影響されることの少ない正弦波状の安定した交流出力電圧が得られることを特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項2】
請求項1記載の交流電圧制御電源において、前記直流電圧を一定の直流電圧の基準値に一致するように直流電圧制御器の出力を前記交流電圧源あるいは前記交流出力電圧の位相を調整して得られる信号でスイッチング切り換えした信号量を前記PWM制御信号に加え前記電圧形インバータへの有効成分電力の授受量を制御して直流電圧源の確保とその動作電圧を制御することを特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項3】
請求項1および2記載の交流電圧制御電源において、前記負荷端の交流出力電圧の大きさが一定の交流電圧基準値に一致するように交流電圧制御器の出力を請求項2の前記スイッチング信号とほぼ90度位相差のある信号でスイッチング切り換えした信号量を前記PWM制御信号に加えることにより、前記電圧形インバータで発生した交流電圧を前記交流電圧源に重畳することにより、必要な交流出力電圧を得ることを特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項4】
請求項1から3記載の交流電圧制御電源において、前記負荷端の交流出力電圧波形のひずみ成分を抽出した信号を前記PWM制御信号に交流出力電圧波形のひずみが低減できる程度加えることにより正弦波状の交流出力電圧波形を得ることを特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項5】
請求項1から4記載の交流電圧制御電源において、請求項2記載の前記電圧形インバータの直流電圧一定制御機能と請求項4の交流出力電圧波形ひずみ補償制御により、正弦波状の交流出力電圧を得る波形制御を特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項6】
請求項1から5記載の交流電圧制御電源において、蓄電機能を有する直流電圧源を前記電圧形インバータに接続して、前記電圧形インバータを請求項3から5記載のPWMスイッチング制御をかけることにより、前記交流電圧源が停電などの電源異常が発生したときも前記電圧形インバータで安定した正弦波状の交流安定化出力電圧が得られる無停電機能動作をさせることができることを特徴とする交流電圧制御電源。
【請求項7】
請求項1から6記載の交流電圧制御電源において、前記電圧形インバータで零電圧出力動作をさせることにより、前記電圧形インバータのPWM制御出力動作モードから前記交流電圧源から直接的に前記LCフィルタ回路を通して前記負荷回路に導く動作モードに切り替えることができることを特徴とする交流電圧制御電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧源に直列に電圧形インバータを挿入制御することにより、瞬停や停電動作も含めた交流電圧源の電圧変動や電圧波形ひずみが補償できる正弦波状の安定した交流安定化電源の小型軽量高効率を特徴とする多機能の交流安定化電源に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
需要家での負荷変動や非線形負荷の増大と共に、商用交流電源の電圧の変動や電圧波形が歪むなどの電源品質の低下を招き、同じ系統に接続される周辺機器の誤動作や運転停止を招く恐れがあるので、電源の品質を保つための電源装置の開発が進んでいる。
【0003】
特に電源設備容量が小さな地域では、古くから交流自動電圧調整器とよばれる様々な交流安定化電源が開発され広く普及してきた。
【0004】
交流電圧変動に対する制御手法の基本的なものとしては、単巻変圧器を用い、出力電圧に応じて摺動位置を自動制御するものや、単巻変圧器のタップ切り換えによるものなどが古くから開発されてきた。
【0005】
これらの電圧補償装置は、出力容量に比べて交流電圧源の電圧変動幅に応じた容量で構成できる利点があるが、摺動制御やタップ切り換えによるものは制御応答があまり良くなく、交流電源電圧の波形ひずみに対しては何らの補償を行うことはできない。
【0006】
また、今日のパワーエレクトロニクス機器の普及発達により高効率で高機能の数多くの装置の普及が進むと共に、これら機器の高調波電流による電源電圧のひずみが周辺機器の誤動作を招くことなどが懸念されるようになり、機器からの高調波電流の発生を抑制するための規制値による管理や、電圧電流高調波を補償する装置の開発など様々な対策が講じられている。
【0007】
一方、近年のOA機器、パソコンなどの大量のデータを扱うコンピュータや一般のマイコン関連機器の著しい普及と共に、瞬停(低)さらには停電などの電源異常があった場合、データ喪失や機器の誤動作を招くなどの問題が懸念されることから、電源のバックアップを目的とした無停電電源装置なども用いられている。
【0008】
また、高調波電流規制に対応して高調波電流の発生を抑えた力率改善(PFC)回路内蔵の電気機器が数多く普及してきたため、電源のバックアップを目的とした方形波出力の無停電電源ではこうした機器に対応できないため、商用電源と同じ正弦波形で電圧変動の少ないより高品質の無停電電源装置が用いられるようになってきた。
【0009】
電源品質を保ちながら交流電源を整流後、PWM制御インバータにより交流出力を得るものは、制御的には比較的容易で、高い精度で高い応答性を有する正弦波の安定した出力電圧波形が得られるが、変換装置容量としては出力容量以上のものを必要となり、装置の大型化を招くとともに、数多くのスイッチ素子とスイッチング制御による運転効率の低下やスイッチングノイズ等の発生が懸念される。
【0010】
このため、小型軽量高効率の電源品質補償装置の開発が求められており、様々なものが開発されているが、その一つに交流電圧源に直列に電圧形インバータを接続して、それにより交流電圧変動や電圧波形ひずみを補償して交流電圧の安定化や波形改善を行わせるものがある。
【0011】
この方式は、交流電圧の変動分を補償するだけでよいために装置容量の低減に有効な手段となるが、負荷電流が流れることによる直列インバータ部での有効電力が処理できる直流電圧源をどう構成するかが課題となる。
【0012】
本発明の交流電圧制御電源においても、回路に直列接続する電圧形インバータを用いているが、直流電圧源の確保するために電力授受可能な直流電圧源を用いることなく、交流電圧変動分を補償する交流出力電圧の発生と、交流電圧のひずみ波成分を打ち消す波形補償電圧を発生させることができるので、装置の小型軽量化と高効率化の実現に有効な手段となっている。
【0013】
本発明の交流電圧制御電源は、さらに電圧形インバータの直流端子に蓄電池からDCDCコンバータを介して必要な直流電圧源を接続することにより、一般の無停電電源装置とは異なり、複雑なスイッチ切り換え制御を伴うことなく、インバータへのスイッチング信号だけで、通常の交流電圧源からの給電動作モードと停電時の無停電電源動作モードへの移行をさせることができるなど拡張性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願昭61-234309号
【特許文献2】特願平6-011898号
【特許文献3】特願2014-066697号
【特許文献4】特願平3-302264号
【特許文献5】実願平3-100439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(特許文献1)では、交流安定化電源のもっとも基本的な構成例であり、出力電圧の大きさを検出して、それが一定の基準値になるように単巻変圧器のブラシ位置を摺動させるもので、単巻変圧器による電圧調整を自動化したものであるが、応答性やブラシの摩耗の問題に加え、原理的に交流電圧波形に対するひずみ補正機能は有さない。
【0016】
(特許文献2)および(特許文献3)は、単巻変圧器のタップを切り換えることにより出力電圧の安定化を図ろうとするもので、摺動型のものに比べて安価に構成できるが、(特許文献2)ではタップ切り換えに継電器の消耗や応答性が懸念され、(特許文献3)は、電流双方向性の半導体スイッチが用いられていると共に、負荷電圧補償を必要としないときは、単巻変圧器へのスイッチをオフすることなどにより電力損失の低減を図っているが、タップ切り換え時にタップ間での短絡や回路による過電圧の発生が懸念される。
【0017】
(特許文献4)では、交流電源電圧の変動を直列電圧形インバータで補償するものであり、正弦波の交流基準電圧に出力電圧が一致するように直列電圧形インバータを働かせることを原理としており、出力電圧の安定化と同時に交流出力電圧波形を正弦波にする波形補償することができ、制御応答性、制御精度などで優れた特性が期待できる。
【0018】
しかしながら、負荷電流が電圧形インバータを通して流れるときの有効電力授受量に比例してインバータの直流コンデンサ電圧が大きく変動するなどの問題を生じる。
【0019】
この課題に対して、(特許文献4)では電圧形インバータの直流電圧源を交流電源から整流回路により得て、インバータにより発生した補償電圧を適当な電圧に変圧絶縁して交流電源電圧に重畳する回路構成をとっている。
【0020】
この制御方式は、交流電源電圧が低い場合には整流回路から電力を供給できるので問題はないが、高い場合はインバータが回生電力モードとなり直流電圧が上昇するため、過電圧抑制用の放電抵抗を接続するなどの対策が必要となり、大きな回路損失を伴うことから、(特許文献4)では直流電圧を検出し、基準正弦波の位相調整によって電圧上昇を抑える手法が採られている。
【0021】
一方、無停電電源装置の制御方式には交流電源が給電されている時に、常時無停電電源装置をバイパスして商用電源から負荷に直接給電していて、交流電源が停電等の異常時に、無停電電源装置の出力にリレー切り換え回路を設けて切り替える常時商用電源給電方式と、交流電圧源の状態にかかわらず、常時インバータの出力を負荷に接続する常時無停電電源給電方式がある。
【0022】
(特許文献6)は、常時インバータ給電方式で、インバータ異常時にインバータ出力から交流電圧源側に切り替える操作が採られているが、無停電電源用インバータの出力とバイパスされる交流電源電圧との間に電圧の違いがあると、スイッチ切り替える時点で、大きな電流が流れる恐れがあるので、両瞬時電圧が等しくなってから切り換えスイッチを投入する方式が採られているおり、切り換え動作の複雑化するとともに瞬断期間を生じるなどの課題がある
【0023】
また、無停電電源装置の出力を負荷に常時給電する方式は運転損失を招くため、交流電源が正常の場合は無停電電源をバイパスして交流電源から直接負荷に電力を供給する方式においても停電時には無停電電源から給電されるが、復電した時点で交流電源側に接続するときのリレーのスイッチ切り換え回路と切り換え制御のための複雑なスイッチシーケンスが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
図1は、本発明による交流電圧制御電源の制御システムであり、交流電圧源に対して電圧形インバータを直列に接続した後、進相用コンデンサCoとインダクタLoで構成されるLCフィルタ回路を介して交流負荷に接続し、交流電圧源ラインの位相をもとに電圧形インバータの直流動作電圧edを検出して、これが交流電圧制御で必要となる直流電圧以上の電圧に制御し、交流負荷にかかる正弦波の交流出力電圧の大きさが基準電圧Eorに一致するように電圧形インバータのPWM制御信号発生部から構成される。
【0025】
図2は、本発明による交流電圧制御電源の具体的な主回路構成例を示しており、電圧形インバータはスイッチ素子S1~S4で構成され、直流側にキャパシタCdが接続され、交流側の両端を一方は交流電源側、他方はLCフィルタ回路側に接続され、出力側のキャパシタCoの両端に交流負荷を接続する回路構成となっている。
【0026】
図3は、この主回路の単相等価回路を示しており、交流電源電圧esに電圧形インバータの交流出力電圧とインダクタLoの両端電圧exを重畳した合成電圧が交流出力電圧eoとなり、交流負荷に流れる電流ioとキャパシタCoの電流icとの和が電源ラインの電流isが流れる。
【0027】
図4は、本発明による交流電圧制御電源における無負荷時の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して90度進みの電流Icと等しい電源ラインの電流Isが流れ、電圧形インバータによって制御された電圧とインダクタの電圧降下の合成制御電圧Ex によって出力電圧Eoが制御される。
【0028】
出力電圧Eoが電源電圧より高い場合(Es1)と電源電圧より低い場合(Es2)の関係を示しており、電圧形インバータの制御電圧Exによって出力電圧Eoは電源電圧の上下にスカラー的に連続的に制御できることを示している。
【0029】
図5は、本発明による交流電圧制御電源における負荷時(力率1)の場合の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して、同相の電流Ioと90度進みの電流Icの合成電流として電源ラインの電流Isが流れ、Es1は電源電圧が出力電圧Eoより低い場合、Es2はEoより高い場合における電源電圧に対して、電圧形インバータとインダクタの両端電圧Exとの関係を示している。
【0030】
制御電圧Exが電源ライン電流Isに対して90度位相が進む制御電圧Ex1を発生するとき電源電圧Es1は出力電圧EoとEx1の合成ベクトルの大きさとなり、逆に90度遅れる位相で制御電圧Ex2を発生するときの電源電圧Es2は出力電圧EoとEx2の合成ベクトルの大きさで関係づけられる値となり、制御電圧ExをEx1からEx2に制御することによって、出力電圧Eoの大きさが電源電圧Esの上下に渡って制御できることを示している。
【0031】
ここで、制御電圧Exの位相は電圧形インバータを流れる電流Isの位相に対して90度の位相差の電圧を発生することによって、電圧形インバータ部での有効電力授受を生じないので、電圧形インバータでの電力授受は生じないため、キャパシタCdを接続するだけで電圧制御システムを構成できる点が本発明における電圧制御原理の最も特徴的な点である。
【0032】
しかし、実回路においては回路損失を伴うが、電圧形インバータを流れる電流Isと同相か逆相となる電圧成分を発生させると、有効電力の授受ができることから、電圧形インバータの直流電圧が一定の基準位置と一致するようにこの成分電圧を調整することで外部からの電力授受回路を設けることなく一定に制御することができる。
【0033】
このため、直流側にコンデンサCdのみ接続した電圧形インバータを回路に直列に接続するだけで、一定に制御された直流出力電圧のもとで、交流出力電圧を交流電源電圧の上下に渡って制御できる点が本発明の特筆できる特徴である。
【0034】
この制御原理に基づき、交流出力電圧を制御するためには、電圧形インバータの出力電圧の位相は電源ラインの電流Is位相に対して90度の位相差の制御電圧Exを発生させる必要があり、出力電圧Eoを電源電圧より高く制御する場合はEx1,低く制御する場合はEx2を発生させることにより必要な制御電圧Exを発生させる必要がある。
【0035】
本発明の交流電圧制御電源では、制御電圧Exの発生を電源ラインの電流Isを用いないで、交流電源電圧Esあるいは交流出力電圧Eoの交流電源ラインの電圧位相をもとに電圧形インバータのPWM制御システムを構成することにより、負荷電流の影響を受けにくいより安定な制御システムを構築することができる。
【0036】
本発明の交流電圧制御電源では、制御電圧Exを発生させる電圧形インバータのPWM制御信号として交流出力電圧制御ループと直流電圧制御ループからの制御量を合わせた制御量をもとにしていることから、最大負荷電流Ioにみあった進相コンデンサ電流Icとの合成電流となる電源電流Isの交流出力電圧との位相角φで決まる制御電圧Exの位相に近い位相でスイッチ切り換えした直流電圧制御信号量と、この制御角φと90度位相差のある位相でスイッチ切り換えした交流電圧制御信号量とを合わせた制御信号量をインバータのPWM制御信号に用いることで、直流電圧一定制御と交流出力電圧一定制御を満たす電圧Exで制御システムを働かせることができる。
【0037】
図6は、図5が制御電圧Exの位相が電源ラインの電流Isと丁度90度の位相差のある関係にあるときの位相関係を示しているのに対して、交流電圧制御における制御量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合と(b)大きい場合における動作ベクトルを示している、
【0038】
電源ラインの電流Isの位相に直交する制御電圧Exに対して、交流電圧制御における制御量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合や、(b)大きい場合は、電源ラインの電流Isの位相と直交しないため有効電力授受を伴うことになり直流電圧が上下することとなるが、直流電圧一定制御ループにより交流電圧制御の制御量による有効電力授受量を相殺する制御量を発生することとなり、それらの合成量から必要な制御量による制御電圧Exが決まる。
【0039】
同図において、電圧形インバータの交流電圧制御による制御量に対応した出力電圧ベクトルがcbあるいはceの長さのベクトルに対して、直流電圧一定制御による制御量に対応した出力電圧ベクトルがbaあるいはedの長さのベクトルとなり、それらのベクトル和として電圧制御量Ex1あるいはEx2が,電流位相φで決まる基準位相よりも(a)小さい場合、(b)大きい場合いずれも交流出力電圧制御で適切な電圧ベクトルを電圧形インバータで発生できることを示している。
【0040】
本発明の交流電圧制御電源は、直流電圧一定制御による制御量と交流電圧一定制御による制御量に加えて、交流出力電圧のひずみ波成分を検出して、これらの制御量にたたみ込むことにより交流出力電圧波形のひずみも同時に抑制することができる。
【0041】
本発明による交流電圧制御電源は、さらに電圧形インバータの直流側に蓄電機能を有する蓄電池をDCDCコンバータで必要な電圧に変換して接続することにより、容易に無停電電源として働かせることができる。
【0042】
図7は、本発明による交流電圧制御電源を無停電電源としての機能を付加した制御システムであり、交流電圧源で給電中は交流安定化電源として機能させ、交流電圧源が停電になると、蓄電池に接続したDCDCコンバータにより電圧形インバータの直流電圧を制御するとともに、交流電圧制御と波形改善の制御量でPWM制御することにより、停電時に安定した正弦波の交流出力電圧を得ることができる。
【0043】
なお、本発明による無停電動作においては、常時商用電源給電出力を負荷に接続し、停電時にインバータの出力にリレーで切り替える動作を伴うことなく、交流電圧源が停電を含め電圧低下時の電圧補償をかけることにより常時正弦波出力の交流安定化電源動作をさせることができる。
【0044】
図9は、本発明の交流電圧制御電源で無停電電源動作機能を持たせるときの二つの主回路状態を示したもので、同図(a)は交流電圧源が停電時の交流電圧制御電源の主回路状態、同図(b)は交流電圧源が給電時に無制御で交流電圧源を直接出力フィルタ、負荷に接続するときの主回路動作状態を示している。
【0045】
図10は、交流電圧源から負荷への直接給電モードとインバータ出力からの給電モードが交流電圧源の異常やインバータの異常によって切り換え動作の比較を示したもので、一般の無停電電源の場合(同図(a))と本発明による無停電電源の場合(同図(b))の構成例の比較を示している。
【0046】
同図(a)に示すようにリレー切り換え制御が行われるのに対し、本発明による交流電圧制御電源による無停電動作では、同図(b)に示すように電圧形インバータのスイッチング動作を交流出力と交流電圧源の電圧を重畳して負荷に給電する動作モードと、電圧形インバータを零電圧出力動作にして交流電圧源を直接負荷に接続する動作モードの切り替えがインバータのスイッチング信号だけで容易に行なえる。
【0047】
また、一般的な無停電電源のスイッチ切り換え動作、スイッチ切り換え前後における電位差の違いによる課題があるのに対して、本発明による無停電動作における動作切り換えにおいては、インバータのスイッチ動作を切り換えるだけで可能なため、切り換えに伴う問題は少ない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の交流電圧制御電源の構成ブロック図
図2】本発明の交流電圧制御電源の主回路構成例
図3】本発明の交流電圧制御電源の単相等価回路
図4】無負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図5】負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図6】交流電圧制御位相がずれているときの動作ベクトル図(フェーザー図)
図7】本発明の交流電圧制御電源による無停電電源の構成ブロック図
図8】本発明による無停電電源の主回路構成
図9】無停電電源給電時の回路と交流電圧源直接給電時の回路
図10】無停電電源給電と交流電圧源直接給電のスイッチ切り換え動作の比較
図11】本発明の交流電圧制御電源の制御システム
図12】本発明の無停電電源の制御システム
図13】進相キャパシタが小さいときの交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図14】負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図15】交流安定化電源動作時の拡大動作波形(Es<Eor)
図16】無停電電源動作時の拡大動作波形
図17】無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図18】無負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図19】交流電圧源スルー動作時の無停電電源動作の動作波形(Es=Eor)
図20】交流電圧源スルー動作時の拡大動作波形(Es=Eor)
【発明を実施するための形態】
【0049】
図11は、交流電圧源に対して直列に主回路の電圧形インバータを接続してそのPWM制御信号を制御信号発生部より得て、出力されるPWM出力電圧に対して進相電流を流すキャパシタCoとインダクタLoを通して構成したフィルタ回路の出力を交流負荷に接続することにより構成した本発明による交流電圧制御電源の制御システムを示している。
【0050】
制御信号発生部では、電圧形インバータの直流電圧一定制御部と交流出力電圧一定制御部および交流出力電圧のひずみ波成分を抽出してひずみ波補償制御部からの制御量の総和をもとにPWM制御信号を発生して電圧形インバータをスイッチング制御する制御システムとなっている。
【0051】
ここで、直流電圧一定制御部では交流電圧源の位相から全負荷電流時の位相に近い位相だけ位相シフトさせてスイッチ切り換えした制御量と交流電圧一定制御部では直流電圧一定制御に用いたスイッチ切り換え信号とほぼ90度位相差でスイッチ切り換えした制御量の和で電圧形インバータのスイッチング制御を行うことにより、交流出力電圧制御で必要な制御電圧を得ている。
【0052】
なお、ひずみ波補償制御部では、交流出力電圧波形のひずみ波成分が十分低減できる程度のゲインKに調整することで、交流電圧源がひずんでいても、直流一定電圧制御や交流出力電圧一定制御部でのスイッチ切り換えによる出力電圧波形ひずみが生じても一括して抑制制御することができる。
【0053】
次に、図12は本発明の交流電圧制御電源を無停電電源として働かせるときの主回路構成とその制御システムを示しており、電圧形インバータの直流キャパシタCdの両端に、蓄電池EB
からインダクタLBとスイッチ回路で構成したDCDCコンバータを介して接続し、DCDCコンバータでは無停電動作時に必要な直流電圧に制御する信号をDCDCコンバータへのスイッチング信号として与えると共に、交流出力電圧一定制御部からのスイッチング信号を電圧形インバータに与えることにより、無停電電源動作をさせることができる。
【0054】
なお、交流電圧源の電圧の大きさで給電動作モードか停電動作モードを切り換え、給電動作モードでは交流電圧制御信号には直流電圧一定制御信号が交流電圧一定制御信号と合わせた信号量でPWM制御するが、停電動作モードでは、DCDCコンバータの制御ループによって停電時の動作電圧を確保するための直流電圧一定制御にスイッチ制御する制御システムによって無停電電源動作を実現している。
【実施例0055】
本発明の交流電圧制御電源の実施例として、波形ひずみを含む交流電圧源が給電状態から停電状態を経て復電し給電状態に戻る過程における無停電電源動作を含む交流安定化電源としての制御特性をシミュレーション解析により確認する。
【0056】
シミュレーション解析における交流電圧制御電源の主回路定数は、電圧形インバータの直流コンデンサCd=1000uF,交流フィルタ回路のインダクタンスLa=100uH,キャパシタンスCa=100uF、交流負荷抵抗値Ro=50オーム、蓄電池の電圧EB=24V, DCDCコンバータのインダクタンスLB=200uHとし、制御信号発生における直流基準電圧は給電時Edr=50V,停電時Edr=150Vに設定し、交流基準電圧実効値はEor=100Vとした。
【0057】
そして、交流電圧制御電源の安定化電源としての制御特性と波形改善特性を検証するため、交流電圧源は正弦波電圧のピークが85%でカットされた波形とし、交流電圧源の大きさEsとしては交流出力の基準電圧Eorより±10%程度変化させてシミュレーション解析を行った。
【0058】
図13図14は、ピーク値が108V程度のひずみ波の交流電圧es (Es<Eor) がt=0.7sで停電し、t=1.3s後に復電させたとき動作波形であり、電圧形インバータの直流動作電圧が給電時はEB=50V、停電時にはEB=150Vに制御され、電圧形インバータの交流出力電圧vxsが交流電圧源に重畳しLCフィルタを通した出力電圧eoおよび交流電圧源の電圧esと交流出力電圧eoの各実効値 (Es,Eo)の変化を示した制御動作波形である。
【0059】
図13は、LCフィルタにおける進相キャパシタCoの値がCo=10 uFと小さく設定した時の結果であり、進み電流が小さいため、直流電圧Edが25V程度と低く、直流電圧一定制御が十分効かず本発明の制御効果が出せていないことが確認できる。
【0060】
これに対して、図14以降に示すシミュレーション結果はCoの値を最大負荷電流以上の電流が流れる値Co=100 uFに設定したときの結果で、本発明による所期の電圧制御効果が得られている。
【0061】
図14の動作波形から、交流出力電圧eoは、交流電圧源esが停電状態になっても電圧形インバータによる無停電電源動作のためほぼ無瞬断の交流電圧波形が出力されており、交流出力電圧eoの実効値Eoは給電状態、停電状態に関係なく出力電圧は基準値Eor=100Vに一致しており、交流安定化電源としての動作が確認できる。
【0062】
図15は、給電時の制御区間の動作波形を拡大して示したもので、ピーク値付近がカットされている交流電圧源es (Es>Eor) に対し交流出力電圧波eoは正弦波形に波形改善された交流安定化電源(AVR)としての動作できていることが確認できる。
【0063】
図16は、交流電圧源が停電状態になったときの制御区間の動作波形を拡大して示したもので、電圧形インバータの直流動作電圧EBが高く制御されることにより、PWM制御により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形eoが得られ、無停電電源動作(UPS)ができていることが分かる。
【0064】
この後、交流電圧源が復電したときの動作波形は直流動作電圧が基準電圧に一致する定常状態になると停電前と同じ正弦波形に波形改善された交流安定化電源としての動作できていることが確認できる。
【0065】
図17は、ピーク値が144V程度のひずみ波の交流電圧es(Es>Eor)の交流電圧源に対して同様のシミュレーション解析を行った結果であり、交流出力電圧eoは給電状態、停電状態にかかわらずほぼ一定の安定化出力(Eo=Eor)が得られていることが確認される。
【0066】
図18は、図17と同じ交流電圧源に対して、無負荷状態における動作波形を示しており、負荷の軽重に係わらず、本発明による交流電圧制御電源が安定に動作できることが確認できる。
【0067】
これは、本発明による制御システムの構成が、直流電圧一定制御ループと交流出力電圧一定制御ループにおけるスイッチ切り換え信号を交流電流によらず、交流ライン電圧の信号から得ていることによるものと考えられる。
【0068】
図19は、ピーク値が110V程度のひずみ波の基準値とほぼ等しい交流電圧源esの(Es=~Eor) に対して,給電時には電圧形インバータをスルー動作させて交流電圧源から直接負荷に接続し、停電時には電圧形インバータの出力を負荷にインバータのスイッチ信号によって切り替えたときの動作波形を示している。
【0069】
図20は給電時の制御動作波形を拡大したもので、交流電圧制御動作をかけていないため、ひずみ波で低い電圧の交流電圧源esが直接負荷に出力されている様子が分かる。
【0070】
なお、停電時においては、電圧形インバータが無停電電源として動作により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形が得られていることを示している。
【符号の説明】
【0071】
100 … 交流電圧源
200 … 交流電圧制御主回路構成部
210 … 電圧形インバータ
220 … LCフィルタ部
230 … DCDCコンバータ部
300 … 交流負荷部
400 … 交流電圧制御信号発生部
410 … 直流電圧一定制御信号発生部
420 … 交流電圧一定制御信号発生部
430 … 交流電圧実効値検出部
440 … 交流出力電圧のひずみ波成分検出部
450 … PWM制御信号発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源と負荷の間に電圧形インバータをPWMスイッチング制御することにより得られるPWM制御電圧源とLCフィルタ回路を直列に接続して、前記交流電圧源と前記PWM制御電圧源の電圧を直列接続することにより、前記LCフィルタ回路を介して前記負荷の両端にかかる交流出力電圧の波形と大きさを制御するため、
前記交流電圧源の基準電圧からの増減変動を抑制制御できるように、前記LCフィルタ回路のキャパシタによる進みの電流を流し、前記電圧形インバータの直流電圧を交流電圧制御で必要な大きさの前記PWM制御電圧源を発生させるに必要な一定の直流電圧基準値に制御するための直流電圧一定制御と前記交流出力電圧を一定の交流電圧基準値に制御する交流出力電圧一定制御部および前記交流出力電圧波形のひずみ波成分を検出した量の比例量を制御信号量とし、ひずみ率が基準値以下となるように比例ゲインを制御するひずみ波補償制御部からの互いに独立した制御信号量を用いて構成する制御システムにおいて
前記直流電圧一定制御部では、前記直流電圧が前記直流電圧基準値に一致するように比較制御する直流電圧制御器の出力を前記交流電圧源の電圧あるいは前記交流出力電圧の位相を前記負荷に流れる全負荷電流時の位相に近い位相に調整して得られる信号の正負波形でスイッチング切り換えした量を制御信号量とし
前記交流出力電圧一定制御部では、前記交流出力電圧が一定の基準値に一致するように比較制御する交流電圧制御器の出力を前期直流電圧一定制御部における前記スイッチング切り換えした信号に対して90度の位相差のある信号の正負波形でスイッチング切り換えした量を制御信号量とすることにより
前記電圧形インバータの直流回路部に特別な有効電力授受部を設ける必要のない簡単な主回路構成で、かつ前記制御システムが線路電流によらないで構成でき、前記負荷の軽重に影響されることも少なく、波形ひずみや電圧変動のある前記交流電圧源に対して、基準値以下のひずみ率で電圧値を設定基準値に制御することができ、正弦波状の安定な交流出力電圧が得られることを特徴とする交流電圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の交流電圧制御装置において、蓄電機能を有する直流電圧源あるいは前記直流電圧源に対してDCDCコンバータを介して電圧制御した直流電圧源を前記電圧形インバータに接続して、
前記交流電圧源が瞬低や瞬停あるいは停電などの瞬時電圧異常が発生したとき、前記電圧形インバータを前期直流電圧一定制御部からの制御信号量を用いずに、前記交流電圧一定制御部からの制御信号量のみでPWMスイッチング制御をかけることにより、前期交流電源の異常が発生したときも正弦波状の安定した交流電圧が得られる動作モードと
前記交流電圧源の電源の異常が収まったときには、前記電圧形インバータを零電圧出力スイッチング動作をさせて、_前記交流電圧源から前記LCフィルタ回路を通して直接的に前記負荷に接続することにより、前記交流電圧源の交流電圧が得られる動作モードに切り換えることにより、
付加的なリレー切り換え回路を設ける必要のない無停電電源装置としての機能動作をさせることができることを特徴とする交流電圧制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧源に直列に電圧形インバータを挿入制御することにより、瞬停や停電動作も含めた交流電圧源の電圧変動や電圧波形ひずみが補償できる正弦波状の安定した交流安定化電源の小型軽量高効率を特徴とする多機能の交流安定化電源に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
需要家での負荷変動や非線形負荷の増大と共に、商用交流電源の電圧の変動や電圧波形が歪むなどの電源品質の低下を招き、同じ系統に接続される周辺機器の誤動作や運転停止を招く恐れがあるので、電源の品質を保つための電源装置の開発が進んでいる。
【0003】
特に電源設備容量が小さな地域では、古くから交流自動電圧調整器とよばれる様々な交流安定化電源が開発され広く普及してきた。
【0004】
交流電圧変動に対する制御手法の基本的なものとしては、単巻変圧器を用い、出力電圧に応じて摺動位置を自動制御するものや、単巻変圧器のタップ切り換えによるものなどが古くから開発されてきた。
【0005】
これらの電圧補償装置は、出力容量に比べて交流電圧源の電圧変動幅に応じた容量で構成できる利点があるが、摺動位置制御やタップ切り換えによるものは制御応答があまり良くなく、交流電源電圧の波形ひずみに対しては何らの補償を行うことはできない。
【0006】
また、今日のパワーエレクトロニクス機器の普及発達により高効率で高機能の数多くの装置の普及が進むと共に、これら機器の高調波電流による電源電圧のひずみが周辺機器の誤動作を招くことなどが懸念されるようになり、機器からの高調波電流の発生を抑制するための規制値による管理や、電圧電流高調波を補償する装置の開発など様々な対策が講じられている。
【0007】
一方、近年のOA機器、パソコンなどの大量のデータを扱うコンピュータや一般のマイコン関連機器の著しい普及と共に、瞬停(低)さらには停電などの電源異常があった場合、データ喪失や機器の誤動作を招くなどの問題が懸念されることから、電源のバックアップを目的とした無停電電源装置なども用いられている。
【0008】
また、高調波電流規制に対応して高調波電流の発生を抑えた力率改善(PFC)回路内蔵の電気機器が数多く普及してきたため、電源のバックアップを目的とした方形波出力の無停電電源ではこうした機器に対応できないため、商用電源と同じ正弦波形で電圧変動の少ないより高品質の無停電電源装置が用いられるようになってきた。
【0009】
電源品質を保ちながら交流電源を整流後、PWM制御インバータにより交流出力を得るものは、制御的には比較的容易で、高い精度で高い応答性を有する正弦波の安定した出力電圧波形が得られるが、変換装置容量としては出力容量以上のものが必要となり、装置の大型化を招くとともに、数多くのスイッチ素子とスイッチング制御による運転効率の低下やスイッチングノイズ等の発生が懸念される。
【0010】
このため、小型軽量高効率の電源品質補償装置の開発が求められており、様々なものが開発されているが、その一つに交流電圧源に直列に電圧形インバータを接続して、それにより交流電圧変動や電圧波形ひずみを補償して交流電圧の安定化や波形改善を行わせるものがある。
【0011】
この方式は、交流電圧源の電圧変動やひずみ波による基準波形からの変動成分を補償するだけでよいために装置容量の低減に有効な手段となるが、負荷電流が流れることによる直列インバータ部での有効電力が処理できる直流電圧源をどう構成するかが課題となる。
【0012】
本発明の交流電圧制御装置においても、回路に直列接続する電圧形インバータを用いているが、直流電圧源確保するために特別な電力授受_回路を設けることなく、交流電圧変動分を補償する_電圧源の発生と、交流電圧源の電圧のひずみ波成分を打ち消す波形補償電圧を発生させることができるので、装置の小型軽量化と高効率化の実現に有効な手段となっている。
【0013】
本発明の交流電圧制御装置は、さらに電圧形インバータの直流端子に蓄電池からDCDCコンバータを介して必要な直流電圧源を接続することにより、一般の無停電電源装置とは異なり、複雑なスイッチ切り換え制御を伴うことなく、インバータへのスイッチング信号だけで、通常の交流電圧源からの給電動作モードと停電時の無停電電源動作モードへの移行をさせることができるなど拡張性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願昭61-234309号
【特許文献2】特願平6-011898号
【特許文献3】特願2014-066697号
【特許文献4】特願平3-302264号
【特許文献5】特開2007-244188号
【特許文献6】実願平3-100439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(特許文献1)では、交流安定化電源のもっとも基本的な構成例であり、出力電圧の大きさを検出して、それが一定の基準値になるように単巻変圧器のブラシ位置を摺動させるもので、単巻変圧器による電圧調整を自動化したものであるが、応答性やブラシの摩耗の問題に加え、原理的に交流電圧波形に対するひずみ補正機能は有さない。
【0016】
(特許文献2)および(特許文献3)は、単巻変圧器のタップを切り換えることにより出力電圧の安定化を図ろうとするもので、摺動型のものに比べて安価に構成できるが、(特許文献2)_はタップ切り換えに継電器の消耗や応答性が懸念され、(特許文献3)は、電流双方向性の半導体スイッチが用いられていると共に、負荷電圧補償を必要としないときは、単巻変圧器へのスイッチをオフすることなどにより電力損失の低減を図っているが、タップ切り換え時にタップ間での短絡や回路による過電圧の発生が懸念される。
【0017】
(特許文献4)および(特許文献5)では、交流電源電圧の変動を直列電圧形インバータで補償するものであり、いずれも正弦波の交流基準電圧に出力電圧が一致するように直列電圧形インバータを働かせることを原理としており、出力電圧の安定化と同時に交流出力電圧波形を正弦波にする波形補償することができ、制御応答性、制御精度などで優れた特性が期待できる。
【0018】
しかしながら、交流負荷電流が電圧形インバータを通して流れるときの有効電力授受量に比例してインバータの直流コンデンサ電圧が大きく変動するなどの問題を生じる。
【0019】
この課題に対して、(特許文献4)では電圧形インバータの直流電圧源を交流電源から整流回路により得て、インバータにより発生した補償電圧を適当な電圧に変圧絶縁して交流電源電圧に直列接続する回路構成をとっている。
【0020】
この制御方式は、交流電源電圧が低い場合には整流回路から電力を供給できるので問題は少ないが、高い場合はインバータが回生電力モードとなり直流電圧の上昇を招くため、過電圧抑制用の放電抵抗を接続するなどの対策が必要となり、このことは大きな回路損失を伴うことになることから、(特許文献4)では直流電圧を検出し、基準正弦波の位相調整によって電圧上昇を抑える手法が採られている。
【0021】
これに対して、(特許文献5)は交流負荷出力端に接続したキャパシタの進み電流により、交流電圧源の電圧の増減変動に対しても、直列電圧形インバータ部で有効電流を伴うことなく、インバータの直流動作電圧を一定に保つと同時に、PWM制御により必要とする補償電圧を発生させる制御手法が採られている。
【0022】
これにより、(特許文献5)では、直列電圧形インバータ部での有効電力授受を除くことができるため、電圧形インバータだけで直流動作電圧を一定に保つと同時に、PWM制御により必要とする(特許文献4)で必要としていた交流電圧源からの整流回路やインバータの出力電圧を交流電源電圧と直列接続するときの変圧器等は一切不要とすることができ、主回路構成が簡単化でき、装置の小型軽量化が期待できる。
【0023】
しかし、(特許文献5)では、交流電流を検出してシステムを構成しているため、流れる電流が小さくなったときの制御演算回路における乗算結果が、不確かなものとなるため、軽負荷時における制御の安定性が懸念される。
【0024】
また、(特許文献5)では、電圧形インバータの直流電圧制御で交流電圧源の位相を補正し、発生させた正弦波交流電圧波形を交流基準波形として用い、交流出力電圧波形と比較制御することにより行っているため、基準正弦波を発生させるための関数発生器が必要となり、関数発生器からの交流波形の瞬時値制御が必要となるなど、制御システムの構成が難しいなどの課題がある。
【0025】
次に、情報化社会の今日、コンピュータシステムの電源が一時的に喪失すると、各種OA機器やパソコンなどのデータが失われる危険性が増大していることから、交流電圧源に瞬停(低)や停電異常があった場合の対策として、無停電電源装置が広く用いられるようになっている。
【0026】
ここで、無停電電源装置の制御方式には交流電源が給電されている時に、常時無停電電源装置をバイパスして商用電源から交流負荷に直接給電していて、交流電源が停電等の異常時に、無停電電源装置の出力にリレー切り換え回路を設けて切り替える常時商用電源給電方式と、交流電圧源の状態にかかわらず、常時インバータの出力を交流負荷に接続する常時無停電電源給電方式がある。
【0027】
(特許文献6)は、常時インバータ給電方式で、インバータ異常時にインバータ出力から交流電圧源側に切り替える操作が採られているが、無停電電源用インバータの出力とバイパスされる交流電源電圧との間に電圧の違いがあると、スイッチ切り替える時点で、大きな電流が流れる恐れがあるので、両瞬時電圧が等しくなってから切り換えスイッチを投入する方式が採られているおり、切り換え動作複雑化するとともに瞬断期間を生じるなどの課題がある
【0028】
また、無停電電源装置の出力を交流負荷に常時給電する方式は運転損失を招くため、交流電圧源が正常の場合は無停電電源をバイパスして交流電源から直接交流負荷に電力を供給する方式においても停電時には無停電電源から給電されるが、復電した時点で交流電源側に接続するときのリレーのスイッチ切り換え回路と切り換え制御のための複雑なスイッチシーケンスが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
図1は、本発明による交流電圧制御装置の制御システムであり、交流電圧源に対して電圧形インバータを直列に接続した後、進相用コンデンサCoとインダクタLoで構成されるLCフィルタ回路を介して交流負荷に接続し、電圧形インバータをPWM制御することにより、交流出力電圧を制御する。
【0030】
電圧形インバータの制御部は、電圧形インバータを働かせるための直流動作電圧を一定に制御する制御信号発生部と交流出力電圧の大きさ制御する制御信号発生部および出力波形ひずみを検出して抑制制御する制御信号発生部とで構成される。
【0031】
ここで、本発明による交流電圧制御装置では、直流電圧制御部および交流電圧制御信号部において、各電圧制御器からの出力を交流電圧源の電圧位相をもとに電圧形インバータのPWM制御信号を得ている。
【0032】
このため、交流電流検出に基づく軽負荷時の動作が懸念される(特許文献5)に対して、本発明による交流電圧制御装置では、被御交流電圧源の電圧位相検出に基づいて制御システムを構成することができるため、負荷の軽重による制御動作の不安定さの課題を克服することができる。
【0033】
また、本発明による交流電圧制御装置では、(特許文献5)の関数発生器を用いた交流量の瞬時値比較制御による制御システムとは異なり、後述するが直流電圧一定制御部および交流電圧一定制御部では各一定の直流基準値と各検出量との比較制御によってPWM制御信号を発生させる制御方式によっているため制御システムの構成が容易であり制御動作の安定性にも優れている。
【0034】
図2は、本発明による交流電圧制御装置の具体的な主回路構成例を示しており、電圧形インバータはスイッチ素子S1~S4直流側のキャパシタCdで構成され、交流側出力の一方は交流電圧源側、他方はLCフィルタ回路側に接続され、回路インダクタLoを経た出力側のキャパシタCoの両端に交流負荷が接続される回路構成となっている。
【0035】
図3は、この主回路の単相等価回路を示しており、交流電源電圧esに電圧形インバータの交流出力電圧とインダクタLoの両端電圧による合成電圧exが交流出力電圧eoとなり、交流負荷に流れる電流ioとキャパシタCoの電流icとの和が電源ラインの電流isが流れる。
【0036】
図4は、本発明による交流電圧制御装置における無負荷時の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して90度進みの電流Icと等しい電源ラインの電流Isが流れ、電圧形インバータによって制御された電圧とインダクタの電圧降下による合成電圧である回路電流と直交するリアクタンス電圧Exと、被制御交流電圧Es1,Es2と交流出力電圧Eoの関係を示している。
【0037】
そして、出力電圧Eoが電源電圧より高い場合(Es1<Eo)と電源電圧より低い場合(Es2>Eo)いずれの場合もリアクタンス電圧Exによって出力電圧Eoは電源電圧(Es1,Es2)の上下に渡ってスカラー的に連続的に制御できることを示している。
【0038】
図5は、本発明による交流電圧制御装置における負荷時(力率1)の場合の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して、同相の電流Ioと90度進みの電流Icの合成電流として電源ラインの電流Isが流れ、Es1は電源電圧が出力電圧Eoより低い場合(Es1<Eo)、Es2はEoより高い場合(Es1>Eo)における交流電圧源の電圧Esに対する電圧形インバータとインダクタの合成電圧であるリアクタンス電圧Exとの関係を示している。
【0039】
リアクタンス電圧Exが電源ライン電流Isに対して90度位相が進む電圧_を発生するとき電源電圧Es1は出力電圧EoとEx1の合成ベクトルの大きさとなり、逆に90度遅れる位相で制御電圧Ex2を発生するときの電源電圧Es2は出力電圧EoとEx2の合成ベクトルの大きさで関係づけられる値となり、リアクタンス電圧ExをEx1からEx2に制御することによって、出力電圧Eoの大きさが電源電圧Esの上下に渡って制御できることを示している。
【0040】
ここで、リアクタンス電圧Exの位相は電圧形インバータを流れる電流Isの位相に対して90度の位相差の電圧を発生することによって、電圧形インバータ部での有効電力授受生じないので、電圧形インバータでの電力授受生じないため、直流側にキャパシタCdを接続した電圧形インバータを接続するだけで電圧制御システムを構成できる点が本発明における電圧制御原理の最も特徴的な点である。
【0041】
しかし、実回路においては回路損失を伴うが、電圧形インバータを流れる電流Isと同相か逆相となる電圧成分を発生させると、有効電力の授受ができることから、電圧形インバータの直流電圧が一定の基準位置と一致するようにこの成分電圧の大きさを調整することで外部からの電力授受回路を設けることなく直流電圧を一定に制御することができる。
【0042】
このため、直流側にコンデンサCdのみ接続した電圧形インバータを回路に直列に接続するだけで、一定に制御された直流出力電圧のもとで、交流出力電圧Eoを交流電源電圧Esの上下に渡って制御できる点が本発明の特筆できる特徴である。
【0043】
この制御原理に基づき、交流出力電圧を制御するためには、電圧形インバータの出力電圧の位相は電源ラインの電流Is位相に対して90度の位相差を有するリアクタンス電圧Exを発生させる必要があり、出力電圧Eoを電源電圧より高く制御する場合はEx1,低く制御する場合はEx2を発生させる_必要がある。
【0044】
本発明の交流電圧制御装置では、リアクタンス電圧Exの発生を電源ラインの電流Isを用いないで、交流電源電圧Esあるいは交流出力電圧Eoの交流電源ラインの電圧位相をもとに電圧形インバータのPWM制御システムを構成することにより、負荷電流の影響を受けにくいより安定な制御システムを構築することができる。
【0045】
本発明の交流電圧制御装置では、このリアクタンス電圧Exを発生させる電圧形インバータのPWM制御信号として交流出力電圧制御ループと直流電圧制御ループからの制御信号量を合わせ加算した制御信号量をもとにしていることから、最大負荷電流Ioにみあった進相コンデンサ電流Icとの合成電流となる電源電流Isの交流出力電圧との位相角φで決まる制御電圧Exの位相に近い位相でスイッチ切り換えした直流電圧制御信号量と、この制御角φと90度位相差のある位相でスイッチ切り換えした交流電圧制御信号量とを合わせた制御信号量をインバータのPWM制御信号に用いることで、直流電圧一定制御と交流出力電圧一定制御を満たす電圧Exで制御システムを働かせることができる。
【0046】
図6は、図5リアクタンス電圧Exの位相が電源ラインの電流Isと丁度90度の位相差のある関係にあるときの位相関係を示しているのに対して、交流電圧制御における制御信号量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合と(b)大きい場合における動作ベクトルを示している、
【0047】
電源ラインの電流Isの位相に直交するリアクタンス電圧Exに対して、交流電圧制御における制御信号量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合や、(b)大きい場合は、電源ラインの電流Isの位相と直交しないため有効電力授受を伴うことになり直流電圧が上下することとなるが、直流電圧一定制御ループにより交流電圧制御の制御信号量による有効電力授受量を相殺する制御信号量を発生することとなり、それらの合成量から必要な制御信号量によるリアクタンス電圧Exが発生することとなる。
【0048】
同図において、電圧形インバータの交流電圧制御による制御信号量に対応した出力電圧ベクトルがcbあるいはceの長さのベクトルに対して、直流電圧一定制御による制御信号量に対応した出力電圧ベクトルがbaあるいはedの長さのベクトルとなり、それらのベクトル和として電圧制御量Ex1あるいはEx2が,電流位相φで決まる基準位相よりも(a)小さい場合、(b)大きい場合いずれも交流出力電圧制御で適切な電圧ベクトルを電圧形インバータで発生できることを示している。
【0049】
本発明の交流電圧制御装置は、直流電圧一定制御による制御信号量と交流電圧一定制御による制御信号量に加えて、交流出力電圧のひずみ波成分を検出して、これらの制御信号量にたたみ込むことにより交流出力電圧波形のひずみも同時に抑制することができる。
【0050】
本発明による交流電圧制御装置は、さらに電圧形インバータの直流側に蓄電機能を有する蓄電池をDCDCコンバータで必要な電圧に変換して接続することにより、容易に無停電電源として働かせることができる。
【0051】
図7は、本発明による交流電圧制御装置を無停電電源としての機能を付加した制御システムであり、交流電圧源で給電中は交流安定化電源として機能させ、交流電圧源が停電になると、蓄電池に接続したDCDCコンバータにより電圧形インバータの直流電圧を制御するとともに、交流電圧制御と波形改善の制御信号量でPWM制御することにより、停電時に安定した正弦波の交流出力電圧を得ることができる。
【0052】
図8は、本発明による交流電圧制御装置を無停電電源として動作させるときの電圧形インバータとDCDCコンバータを含む具体的な主回路構成を示している。
【0053】
なお、本発明による無停電動作においては、常時は商用電源給電出力を交流負荷に接続し、停電時にインバータの交流出力にリレーで切り換える一般に用いられている方式によることなく、交流電圧源が停電や瞬低(停)を含め交流電圧源の電圧の電圧低下時の電圧補償をかけることにより常時正弦波出力の交流安定化電源動作をさせることができる。
【0054】
図9は、本発明の交流電圧制御装置で無停電電源動作機能を持たせるときの二つの主回路状態を示したもので、同図(a)は停電により交流電圧源の電圧が零電圧となったときの交流電圧制御装置の主回路状態、同図(b)は交流電圧源が給電状態で交流電圧制御や波形制御を必要としない無制御のときの動作モードを示しており、交流電圧源から直接出力フィルタを介して交流負荷に接続するときの主回路動作状態を示している。
【0055】
図10は、交流電圧源から交流負荷への直接給電モードとインバータ出力からの給電モードが交流電圧源の異常やインバータの異常によって切り換え動作の比較を示したもので、一般の無停電電源の場合(同図(a))と本発明による無停電電源の場合(同図(b))の構成例の比較を示している。
【0056】
一般的な無停電電源では、同図(a)に示すようにリレー切り換え制御が行われるのに対し、本発明による交流電圧制御装置による無停電電源動作では、同図(b)に示すように電圧形インバータのスイッチング動作を交流出力と交流電圧源の電圧を直列接続して交流負荷に給電する動作モードと、電圧形インバータを零電圧出力動作にして交流電圧源を直接交流負荷に接続する動作モードの切り換えがインバータのスイッチング信号だけで容易に行なえる。
【0057】
また、一般的な無停電電源_は、スイッチ切り換え前後における電位差の違いによる突入電流が流れる恐れが_あるのに対して、本発明による無停電動作における動作切り換えにおいては、インバータのスイッチ動作を切り換えるだけで可能なため、切り換えに伴う問題は少ない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の交流電圧制御装置の構成ブロック図
図2】本発明の交流電圧制御装置の主回路構成例
図3】本発明の交流電圧制御装置の単相等価回路
図4】無負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図5】負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図6】交流電圧制御位相がずれているときの動作ベクトル図(フェーザー図)
図7】本発明の交流電圧制御装置による無停電電源の構成ブロック図
図8】本発明による無停電電源の主回路構成
図9】無停電電源給電時の回路と交流電圧源直接給電時の回路
図10】無停電電源給電と交流電圧源直接給電のスイッチ切り換え動作の比較
図11】本発明の交流電圧制御装置の制御システム
図12】本発明の無停電電源の制御システム
図13】進相キャパシタが小さいときの交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図14】負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図15】交流安定化電源動作時の拡大動作波形(Es<Eor)
図16】無停電電源動作時の拡大動作波形
図17】無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図18】無負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図19】交流電圧源スルー動作時の無停電電源動作の動作波形(Es=Eor)
図20】交流電圧源スルー動作時の拡大動作波形(Es=Eor)
【発明を実施するための形態】
【0059】
図11は、交流電圧源に対して直列に主回路の電圧形インバータを接続してそのPWM制御信号を制御信号発生部より得て、出力されるPWM出力電圧に対して進相電流を流すキャパシタCoとインダクタLoを通して構成したフィルタ回路の出力を交流負荷に接続することにより構成した本発明による交流電圧制御装置の制御システムを示している。
【0060】
制御信号発生部では、電圧形インバータの直流電圧一定制御部と交流出力電圧一定制御部および交流出力電圧のひずみ波成分を抽出して制御するひずみ波補償制御部からの制御信号量の総和をもとにPWM制御信号を発生して電圧形インバータをスイッチング制御する制御システムとなっている。
【0061】
ここで、直流電圧一定制御部では、前記直流電圧が前記直流電圧基準値に一致するように比較制御する直流電圧制御器の出力を交流電圧源の電圧あるいは交流出力電圧の位相を負荷に流れる全負荷電流時の位相に近い位相に調整して得られる信号の正負波形でスイッチング切り換えした量を制御信号量とし
交流出力電圧一定制御部では、交流出力電圧が一定の基準値に一致するように比較制御する交流電圧制御器の出力を直流電圧一定制御部に用いたスイッチング切り換えした信号に対して90度の位相差のある信号の正負波形でスイッチング切り換えした量を制御信号量として、ひずみ波補償制御部からの制御信号量と共に、それらは互いに独立した制御量であるために加算して電圧形インバータのPWM制御制御信号としている。
【0062】
なお、ひずみ波補償制御部では、交流出力電圧波形のひずみ波成分が十分低減でき、波形ひずみ率が基準値以下となるように比例ゲインK調整することで、制御信号量を得ているため、交流電圧源がひずんでいても、直流一定電圧制御や交流出力電圧一定制御部でのスイッチ切り換えによる出力電圧波形ひずみが生じても一括して抑制制御することができる。
【0063】
次に、図12は本発明の交流電圧制御装置を無停電電源として働かせるときの主回路構成とその制御システムを示しており、電圧形インバータの直流キャパシタCdの両端に、蓄電池EBからインダクタLBとスイッチ回路で構成したDCDCコンバータを介して接続し、DCDCコンバータでは無停電動作時に必要な直流電圧に制御する信号をDCDCコンバータへのスイッチング信号として与えると共に、交流出力電圧一定制御部からのスイッチング信号を電圧形インバータに与えることにより、無停電電源動作をさせることができる。
【0064】
なお、交流電圧源の電圧の大きさで給電動作モードか停電動作モードを切り換え、給電動作モードでは交流電圧制御信号には直流電圧一定制御信号が交流電圧一定制御信号と合わせた制御信号量でPWM制御するが、停電動作モードでは、DCDCコンバータの制御ループによって停電時の動作電圧を確保するための直流電圧一定制御にスイッチ制御する制御システムによって無停電電源動作を実現している。
【実施例0065】
本発明の交流電圧制御装置の実施例として、波形ひずみを含む交流電圧源が給電状態から停電状態を経て復電し給電状態に戻る過程における無停電電源動作を含む交流安定化電源としての制御特性をシミュレーション解析により確認する。
【0066】
シミュレーション解析における交流電圧制御装置の主回路定数は、電圧形インバータの直流コンデンサCd=1000uF,交流フィルタ回路のインダクタンスLa=100uH,キャパシタンスCa=100uF、交流負荷抵抗値Ro=50オーム、蓄電池の電圧EB=24V, DCDCコンバータのインダクタンスLB=200uHとし、制御信号発生における直流基準電圧は給電時Edr=50V,停電時Edr=150Vに設定し、交流基準電圧実効値はEor=100Vとした。
【0067】
そして、交流電圧制御装置の安定化電源としての制御特性と波形改善特性を検証するため、交流電圧源は正弦波電圧のピークが85%でカットされた波形とし、交流電圧源の大きさEsとしては交流出力の基準電圧Eorより±10%程度変化させてシミュレーション解析を行った。
【0068】
図13図14は、ピーク値が108V程度のひずみ波の交流電圧es (Es<Eor) がt=0.7sで停電し、t=1.3s後に復電させたとき動作波形であり、電圧形インバータの直流動作電圧が給電時はEB=50V、停電時にはEB=150Vに制御され、電圧形インバータの交流出力電圧vxsが交流電圧源に直列接続しLCフィルタを通した出力電圧eoおよび交流電圧源の電圧esと交流出力電圧eoの各実効値 (Es,Eo)の変化を示した制御動作波形である。
【0069】
図13は、LCフィルタにおける進相キャパシタCoの値がCo=10 uFと小さく設定した時の結果であり、進み電流が小さいため、直流電圧Edが25V程度と低く、直流電圧一定制御が十分効かず本発明の制御効果が出せていないことが確認できる。
【0070】
これに対して、図14以降に示すシミュレーション結果はCoの値を最大負荷電流以上の電流が流れる値Co=100 uFに設定したときの結果で、本発明による所期の電圧制御効果が得られている。
【0071】
図14の動作波形から、交流出力電圧eoは、交流電圧源esが停電状態になっても電圧形インバータによる無停電電源動作のためほぼ無瞬断の交流電圧波形が出力されており、交流出力電圧eoの実効値Eoは給電状態、停電状態に関係なく出力電圧は基準値Eor=100Vに一致しており、交流安定化電源としての動作が確認できる。
【0072】
図15は、給電時の制御区間の動作波形を拡大して示したもので、ピーク値付近がカットされている交流電圧源es (Es>Eor) に対し交流出力電圧波eoは正弦波形に波形改善された交流安定化電源(AVR)としての動作できていることが確認できる。
【0073】
図16は、交流電圧源が停電状態になったときの制御区間の動作波形を拡大して示したもので、電圧形インバータの直流動作電圧EBが高く制御されることにより、PWM制御により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形eoが得られ、無停電電源動作(UPS)ができていることが分かる。
【0074】
この後、交流電圧源が復電したときの動作波形は直流動作電圧が基準電圧に一致する定常状態になると停電前と同じ正弦波形に波形改善された交流安定化電源としての動作できていることが確認できる。
【0075】
図17は、ピーク値が144V程度のひずみ波の交流電圧es(Es>Eor)の交流電圧源に対して同様のシミュレーション解析を行った結果であり、交流出力電圧eoは給電状態、停電状態にかかわらずほぼ一定の安定化出力(Eo=Eor)が得られていることが確認される。
【0076】
図18は、図17と同じ交流電圧源に対して、無負荷状態における動作波形を示しており、負荷の軽重に係わらず、本発明による交流電圧制御装置が安定に動作できることが確認できる。
【0077】
これは、本発明による制御システムの構成が、直流電圧一定制御ループと交流出力電圧一定制御ループにおけるスイッチ切り換え信号を交流電流によらず、交流ライン電圧の信号から得ていることによるものと考えられる。
【0078】
図19は、ピーク値が110V程度のひずみ波の基準値とほぼ等しい交流電圧源esの(Es=~Eor) に対して,給電時には電圧形インバータをスルー動作させて交流電圧源から直接交流負荷に接続し、停電時には電圧形インバータの出力を交流負荷にインバータのスイッチ信号によって切り替えたときの動作波形を示している。
【0079】
図20は給電時の制御動作波形を拡大したもので、交流電圧制御動作をかけていないため、ひずみ波で低い電圧の交流電圧源esが直接交流負荷に出力されている様子が分かる。
【0080】
なお、停電時においては、電圧形インバータが無停電電源として動作により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形が得られていることを示している。
【符号の説明】
【0081】
100 … 交流電圧源
200 … 交流電圧制御主回路構成部
210 … 電圧形インバータ
220 … LCフィルタ部
230 … DCDCコンバータ部
300 … 交流負荷部
400 … 交流電圧制御信号発生部
410 … 直流電圧一定制御信号発生部
411 … 直流電圧一定制御用位相推移部
420 … 交流電圧一定制御信号発生部
421 … 直流電圧一定制御用90度位相推移部
430 … 交流電圧実効値検出部
440 … 交流出力電圧のひずみ波成分検出部
450 … PWM制御信号発生部
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源と負荷の間に電圧形インバータをPWMスイッチング制御することにより得られるPWM制御電圧源とLCフィルタ回路を直列に接続して、前記交流電圧源と前記PWM制御電圧源の電圧を直列接続することにより、前記LCフィルタ回路を介して前記負荷の両端にかかる交流出力電圧の波形と大きさを制御するため、
前記交流電圧源の基準電圧からの増減変動を抑制制御できるように、前記LCフィルタ回路のキャパシタによる進みの電流を流し、前記電圧形インバータの直流電圧を交流電圧制御で必要な大きさの前記PWM制御電圧源を発生させるに必要な一定の直流電圧基準値に制御するための直流電圧一定制御部と前記交流出力電圧を一定の交流電圧基準値に制御する交流出力電圧一定制御部および前記交流出力電圧波形のひずみ波成分を検出した量の比例量を制御信号量とし、ひずみ率が基準値以下となるように比例ゲインを制御するひずみ波補償制御部からの互いに独立した制御信号量を用いて構成する制御システムにおいて
前記直流電圧一定制御部では、前記直流電圧が前記直流電圧基準値に一致するように比較制御する直流電圧制御器の出力を前記交流電圧源の電圧の位相を前記負荷に流れる全負荷電流時の位相に近い位相に調整して得られる信号でスイッチング切り換えした量を制御信号量とし
前記交流出力電圧一定制御部では、前記交流出力電圧が一定の基準値に一致するように比較制御する交流電圧制御器の出力を前記直流電圧一定制御部における前記スイッチング切り換えした信号に対して90度の位相差のある信号でスイッチング切り換えした量を制御信号量とすることにより

前記制御システムが線路電流によらないで構成でき、波形ひずみや電圧変動のある前記交流電圧源に対して、基準値以下のひずみ率で電圧値を設定基準値に制御することができ、正弦波状の安定な交流出力電圧が得られることを特徴とする交流電圧制御システム
【請求項2】
請求項1記載の交流電圧制御装置において、蓄電機能を有する直流電圧源あるいは前記直流電圧源に対してDCDCコンバータを介して電圧制御した直流電圧源を前記電圧形インバータに接続して、
前記交流電圧源が瞬低や瞬停あるいは停電が発生したとき、前記電圧形インバータで PWMスイッチング制御をかけることにより、前期交流電源の異常が発生したときも正弦波状の安定した交流電圧が得られる動作モードと

前記交流電圧源の電源の異常が収まったときには、前記電圧形インバータを零電圧出力スイッチング動作をさせて、前記交流電圧源から前記LCフィルタ回路を通して直接的に前記負荷に接続することにより、前記交流電圧源の交流電圧が得られる動作モードに切り換えることにより、
付加的なリレー切り換え回路を設ける必要のない無停電電源装置としての機能動作をさせることができることを特徴とする交流電圧制御システム
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧源に直列に電圧形インバータを挿入制御することにより、瞬停や停電動作も含めた交流電圧源の電圧変動や電圧波形ひずみが補償できる正弦波状の安定した交流安定化電源の小型軽量高効率を特徴とする多機能の交流安定化電源に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
需要家での負荷変動や非線形負荷の増大と共に、商用交流電源の電圧の変動や電圧波形が歪むなどの電源品質の低下を招き、同じ系統に接続される周辺機器の誤動作や運転停止を招く恐れがあるので、電源の品質を保つための電源装置の開発が進んでいる。
【0003】
特に電源設備容量が小さな地域では、古くから交流自動電圧調整器とよばれる様々な交流安定化電源が開発され広く普及してきた。
【0004】
交流電圧変動に対する制御手法の基本的なものとしては、単巻変圧器を用い、出力電圧に応じて摺動位置を自動制御するものや、単巻変圧器のタップ切り換えによるものなどが古くから開発されてきた。
【0005】
これらの電圧補償装置は、出力容量に比べて交流電圧源の電圧変動幅に応じた容量で構成できる利点があるが、摺動位置制御やタップ切り換えによるものは制御応答があまり良くなく、交流電源電圧の波形ひずみに対しては何らの補償を行うことはできない。
【0006】
また、今日のパワーエレクトロニクス機器の普及発達により高効率で高機能の数多くの装置の普及が進むと共に、これら機器の高調波電流による電源電圧のひずみが周辺機器の誤動作を招くことなどが懸念されるようになり、機器からの高調波電流の発生を抑制するための規制値による管理や、電圧電流高調波を補償する装置の開発など様々な対策が講じられている。
【0007】
一方、近年のOA機器、パソコンなどの大量のデータを扱うコンピュータや一般のマイコン関連機器の著しい普及と共に、瞬停(低)さらには停電などの電源異常があった場合、データ喪失や機器の誤動作を招くなどの問題が懸念されることから、電源のバックアップを目的とした無停電電源装置なども用いられている。
【0008】
また、高調波電流規制に対応して高調波電流の発生を抑えた力率改善(PFC)回路内蔵の電気機器が数多く普及してきたため、電源のバックアップを目的とした方形波出力の無停電電源ではこうした機器に対応できないため、商用電源と同じ正弦波形で電圧変動の少ないより高品質の無停電電源装置が用いられるようになってきた。
【0009】
電源品質を保ちながら交流電源を整流後、PWM制御インバータにより交流出力を得るものは、制御的には比較的容易で、高い精度で高い応答性を有する正弦波の安定した出力電圧波形が得られるが、変換装置容量としては出力容量以上のものが必要となり、装置の大型化を招くとともに、数多くのスイッチ素子とスイッチング制御による運転効率の低下やスイッチングノイズ等の発生が懸念される。
【0010】
このため、小型軽量高効率の電源品質補償装置の開発が求められており、様々なものが開発されているが、その一つに交流電圧源に直列に電圧形インバータを接続して、それにより交流電圧変動や電圧波形ひずみを補償して交流電圧の安定化や波形改善を行わせるものがある。
【0011】
この方式は、交流電圧源の電圧変動やひずみ波による基準波形からの変動成分を補償するだけでよいために装置容量の低減に有効な手段となるが、負荷電流が流れることによる直列インバータ部での有効電力が処理できる直流電圧源をどう構成するかが課題となる。
【0012】
本発明の交流電圧制御装置においても、回路に直列接続する電圧形インバータを用いているが、直流電圧源を確保するために特別な電力授受回路を設けることなく、交流電圧変動分を補償する電圧源の発生と、交流電圧源の電圧のひずみ波成分を打ち消す波形補償電圧を発生させることができるので、装置の小型軽量化と高効率化の実現に有効な手段となっている。
【0013】
本発明の交流電圧制御装置は、さらに電圧形インバータの直流端子に蓄電池からDCDCコンバータを介して必要な直流電圧源を接続することにより、一般の無停電電源装置とは異なり、複雑なスイッチ切り換え制御を伴うことなく、インバータへのスイッチング信号だけで、通常の交流電圧源からの給電動作モードと停電時の無停電電源動作モードへの移行をさせることができるなど拡張性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願昭61-234309号
【特許文献2】特願平6-011898号
【特許文献3】特願2014-066697号
【特許文献4】特願平3-302264号
【特許文献5】特開2007-244188号
【特許文献6】実願平3-100439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(特許文献1)では、交流安定化電源のもっとも基本的な構成例であり、出力電圧の大きさを検出して、それが一定の基準値になるように単巻変圧器のブラシ位置を摺動させるもので、単巻変圧器による電圧調整を自動化したものであるが、応答性やブラシの摩耗の問題に加え、原理的に交流電圧波形に対するひずみ補正機能は有さない。
【0016】
(特許文献2)および(特許文献3)は、単巻変圧器のタップを切り換えることにより出力電圧の安定化を図ろうとするもので、摺動型のものに比べて安価に構成できるが、(特許文献2)はタップ切り換えに継電器の消耗や応答性が懸念され、(特許文献3)は、電流双方向性の半導体スイッチが用いられていると共に、負荷電圧補償を必要としないときは、単巻変圧器へのスイッチをオフすることなどにより電力損失の低減を図っているが、タップ切り換え時にタップ間での短絡や回路による過電圧の発生が懸念される。
【0017】
(特許文献4)および(特許文献5)では、交流電源電圧の変動を直列電圧形インバータで補償するものであり、いずれも正弦波の交流基準電圧に出力電圧が一致するように直列電圧形インバータを働かせることを原理としており、出力電圧の安定化と同時に交流出力電圧波形を正弦波にする波形補償することができ、制御応答性、制御精度などで優れた特性が期待できる。
【0018】
しかしながら、交流負荷電流が電圧形インバータを通して流れるときの有効電力授受量に比例してインバータの直流コンデンサ電圧が大きく変動するなどの問題を生じる。
【0019】
この課題に対して、(特許文献4)では電圧形インバータの直流電圧源を交流電源から整流回路により得て、インバータにより発生した補償電圧を適当な電圧に変圧絶縁して交流電源電圧に直列接続する回路構成をとっている。
【0020】
この制御方式は、交流電源電圧が低い場合には整流回路から電力を供給できるので問題は少ないが、高い場合はインバータが回生電力モードとなり直流電圧の上昇を招くため、過電圧抑制用の放電抵抗を接続するなどの対策が必要となり、このことは大きな回路損失を伴うことになることから、(特許文献4)では直流電圧を検出し、基準正弦波の位相調整によって電圧上昇を抑える手法が採られている。
【0021】
これに対して、(特許文献5)は交流負荷出力端に接続したキャパシタの進み電流により、交流電圧源の電圧の増減変動に対しても、直列電圧形インバータ部で有効電流を伴うことなく、インバータの直流動作電圧を一定に保つと同時に、PWM制御により必要とする補償電圧を発生させる制御手法が採られている。
【0022】
これにより、(特許文献5)では、直列電圧形インバータ部での有効電力授受を除くことができるため、電圧形インバータだけで直流動作電圧を一定に保つと同時に、PWM制御により必要とする(特許文献4)で必要としていた交流電圧源からの整流回路やインバータの出力電圧を交流電源電圧と直列接続するときの変圧器等は一切不要とすることができ、主回路構成が簡単化でき、装置の小型軽量化が期待できる。
【0023】
ここで、無停電電源装置の制御方式には交流電源が給電されている時に、常時無停電電源装置をバイパスして商用電源から交流負荷に直接給電していて、交流電源が停電等の異常時に、無停電電源装置の出力にリレー切り換え回路を設けて切り替える常時商用電源給電方式と、交流電圧源の状態にかかわらず、常時インバータの出力を交流負荷に接続する常時無停電電源給電方式がある。
【0024】
(特許文献6)は、常時インバータ給電方式で、インバータ異常時にインバータ出力から交流電圧源側に切り替える操作が採られているが、無停電電源用インバータの出力とバイパスされる交流電源電圧との間に電圧の違いがあると、スイッチ切り替える時点で、大きな電流が流れる恐れがあるので、両瞬時電圧が等しくなってから切り換えスイッチを投入する方式が採られているおり、切り換え動作複雑化するとともに瞬断期間を生じるなどの課題がある
【0025】
また、無停電電源装置の出力を交流負荷に常時給電する方式は運転損失を招くため、交流電圧源が正常の場合は無停電電源をバイパスして交流電源から直接交流負荷に電力を供給する方式においても停電時には無停電電源から給電されるが、復電した時点で交流電源側に接続するときのリレーのスイッチ切り換え回路と切り換え制御のための複雑なスイッチシーケンスが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
図1は、本発明による交流電圧制御装置の制御システムであり、交流電圧源に対して電圧形インバータを直列に接続した後、進相用コンデンサCoとインダクタLoで構成されるLCフィルタ回路を介して交流負荷に接続し、電圧形インバータをPWM制御することにより、交流出力電圧を制御する。
【0027】
電圧形インバータの制御部は、電圧形インバータを働かせるための直流動作電圧を一定に制御する制御信号発生部と交流出力電圧の大きさ制御する制御信号発生部および出力波形ひずみを検出して抑制制御する制御信号発生部とで構成される。
【0028】
ここで、本発明による交流電圧制御装置では、直流電圧制御部および交流電圧制御信号部において、各電圧制御器からの出力を交流電圧源の電圧位相をもとに電圧形インバータのPWM制御信号を得ている。
【0029】
図2は、本発明による交流電圧制御装置の具体的な主回路構成例を示しており、電圧形インバータはスイッチ素子S1~S4と直流側のキャパシタCdで構成され、交流側出力の一方は交流電圧源側、他方はLCフィルタ回路側に接続され、回路インダクタLoを経た出力側のキャパシタCoの両端に交流負荷が接続される回路構成となっている。
【0030】
図3は、この主回路の単相等価回路を示しており、交流電源電圧esに電圧形インバータの交流出力電圧とインダクタLoの両端電圧による合成電圧exが交流出力電圧eoとなり、交流負荷に流れる電流ioとキャパシタCoの電流icとの和が電源ラインの電流isが流れる。
【0031】
図4は、本発明による交流電圧制御装置における無負荷時の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して90度進みの電流Icと等しい電源ラインの電流Isが流れ、電圧形インバータによって制御された電圧とインダクタの電圧降下による合成電圧である回路電流と直交するリアクタンス電圧Exと、被制御交流電圧Es1,Es2と交流出力電圧Eoの関係を示している。
【0032】
そして、出力電圧Eoが電源電圧より高い場合(Es1<Eo)と電源電圧より低い場合(Es2>Eo)のいずれの場合もリアクタンス電圧Exによって出力電圧Eoは電源電圧(Es1,Es2)の上下に渡ってスカラー的に連続的に制御できることを示している。
【0033】
図5は、本発明による交流電圧制御装置における負荷時(力率1)の場合の動作ベクトル図(フェーザー図)を示しており、出力電圧Eoに対して、同相の電流Ioと90度進みの電流Icの合成電流として電源ラインの電流Isが流れ、Es1は電源電圧が出力電圧Eoより低い場合(Es1<Eo)、Es2はEoより高い場合(Es1>Eo)における交流電圧源の電圧Esに対する電圧形インバータとインダクタの合成電圧であるリアクタンス電圧Exとの関係を示している。
【0034】
リアクタンス制御電圧Exが電源ライン電流Isに対して90度位相が進む電圧_を発生するとき電源電圧Es1は出力電圧EoとEx1の合成ベクトルの大きさとなり、逆に90度遅れる位相で制御電圧Ex2を発生するときの電源電圧Es2は出力電圧EoとEx2の合成ベクトルの大きさで関係づけられる値となり、リアクタンス制御電圧ExをEx1からEx2に制御することによって、出力電圧Eoの大きさが電源電圧Esの上下に渡って制御できることを示している。
【0035】
ここで、リアクタンス制御電圧Exの位相は電圧形インバータを流れる電流Isの位相に対して90度の位相差の電圧を発生することによって、電圧形インバータ部での有効電力授受が生じないので、電圧形インバータでの電力授受も生じないため、直流側にキャパシタCdを接続した電圧形インバータを接続するだけで電圧制御システムを構成できる点が本発明における電圧制御原理の最も特徴的な点である。
【0036】
しかし、実回路においては回路損失を伴うが、電圧形インバータを流れる電流Isと同相か逆相となる電圧成分を発生させると、有効電力の授受ができることから、電圧形インバータの直流電圧が一定の基準位置と一致するようにこの成分電圧の大きさを調整することで外部からの電力授受回路を設けることなく直流電圧を一定に制御することができる。
【0037】
このため、直流側にコンデンサCdのみ接続した電圧形インバータを回路に直列に接続するだけで、一定に制御された直流出力電圧のもとで、交流出力電圧Eoを交流電源電圧Esの上下に渡って制御できる点が本発明の特筆できる特徴である。
【0038】
この制御原理に基づき、交流出力電圧を制御するためには、電圧形インバータの出力電圧の位相は電源ラインの電流Is位相に対して90度の位相差を有するリアクタンス制御電圧Exを発生させる必要があり、出力電圧Eoを電源電圧より高く制御する場合はEx1,低く制御する場合はEx2を発生させる必要がある。
【0039】
本発明の交流電圧制御装置では、リアクタンス制御電圧Exの発生を電源ラインの電流Isを用いないで、交流電源電圧Esあるいは交流出力電圧Eoの交流電源ラインの電圧位相をもとに電圧形インバータのPWM制御システムを構成することにより、負荷電流の影響を受けにくいより安定な制御システムを構築することができる。
【0040】
本発明の交流電圧制御装置では、このリアクタンス制御電圧Exを発生させる電圧形インバータのPWM制御信号として交流出力電圧制御ループと直流電圧制御ループからの制御信号量を合わせ加算した制御信号量をもとにしていることから、最大負荷電流Ioにみあった進相コンデンサ電流Icとの合成電流となる電源電流Isの交流出力電圧との位相角φで決まる制御電圧Exの位相に近い位相でスイッチ切り換えした直流電圧制御信号量と、この制御角φと90度位相差のある位相でスイッチ切り換えした交流電圧制御信号量とを合わせた制御信号量をインバータのPWM制御信号に用いることで、直流電圧一定制御と交流出力電圧一定制御を満たす電圧Exで制御システムを働かせることができる。
【0041】
図6は、図5がリアクタンス制御電圧Exの位相が電源ラインの電流Isと丁度90度の位相差のある関係にあるときの位相関係を示しているのに対して、交流電圧制御における制御信号量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合と(b)大きい場合における動作ベクトルを示している、
【0042】
電源ラインの電流Isの位相に直交するリアクタンス制御電圧Exに対して、交流電圧制御における制御信号量の位相角が制御電圧Exのそれよりも(a)小さい場合や、(b)大きい場合は、電源ラインの電流Isの位相と直交しないため有効電力授受を伴うことになり直流電圧が上下することとなるが、直流電圧一定制御ループにより交流電圧制御の制御信号量による有効電力授受量を相殺する制御信号量を発生することとなり、それらの合成量から必要な制御信号量によるリアクタンス制御電圧Exが発生することとなる。
【0043】
同図において、電圧形インバータの交流電圧制御による制御信号量に対応した出力電圧ベクトルがcbあるいはceの長さのベクトルに対して、直流電圧一定制御による制御信号量に対応した出力電圧ベクトルがbaあるいはedの長さのベクトルとなり、それらのベクトル和として電圧制御量Ex1あるいはEx2が,電流位相φで決まる基準位相よりも(a)小さい場合、(b)大きい場合いずれも交流出力電圧制御で適切な電圧ベクトルを電圧形インバータで発生できることを示している。
【0044】
本発明の交流電圧制御装置は、直流電圧一定制御による制御信号量と交流電圧一定制御による制御信号量に加えて、交流出力電圧のひずみ波成分を検出して、これらの制御信号量にたたみ込むことにより交流出力電圧波形のひずみも同時に抑制することができる。
【0045】
本発明による交流電圧制御装置は、さらに電圧形インバータの直流側に蓄電機能を有する蓄電池をDCDCコンバータで必要な電圧に変換して接続することにより、容易に無停電電源として働かせることができる。
【0046】
図7は、本発明による交流電圧制御装置を無停電電源としての機能を付加した制御システムであり、交流電圧源で給電中は交流安定化電源として機能させ、交流電圧源が停電になると、蓄電池に接続したDCDCコンバータにより電圧形インバータの直流電圧を制御するとともに、交流電圧制御と波形改善の制御信号量でPWM制御することにより、停電時に安定した正弦波の交流出力電圧を得ることができる。
【0047】
図8は、本発明による交流電圧制御装置を無停電電源として動作させるときの電圧形インバータとDCDCコンバータを含む具体的な主回路構成を示している。
【0048】
なお、本発明による無停電動作においては、常時は商用電源給電出力を交流負荷に接続し、停電時にインバータの交流出力にリレーで切り換える一般に用いられている方式によることなく、交流電圧源が停電や瞬低(停)を含め交流電圧源の電圧の電圧低下時の電圧補償をかけることにより常時正弦波出力の交流安定化電源動作をさせることができる。
【0049】
図9は、本発明の交流電圧制御装置で無停電電源動作機能を持たせるときの二つの主回路状態を示したもので、同図(a)は停電により交流電圧源の電圧が零電圧となったときの交流電圧制御装置の主回路状態、同図(b)は交流電圧源が給電状態で交流電圧制御や波形制御を必要としない無制御のときの動作モードを示しており、交流電圧源から直接出力フィルタを介して交流負荷に接続するときの主回路動作状態を示している。
【0050】
図10は、交流電圧源から交流負荷への直接給電モードとインバータ出力からの給電モードが交流電圧源の異常やインバータの異常によって切り換え動作の比較を示したもので、一般の無停電電源の場合(同図(a))と本発明による無停電電源の場合(同図(b))の構成例の比較を示している。
【0051】
一般的な無停電電源では、同図(a)に示すようにリレー切り換え制御が行われるのに対し、本発明による交流電圧制御装置による無停電電源動作では、同図(b)に示すように電圧形インバータのスイッチング動作を交流出力と交流電圧源の電圧を直列接続して交流負荷に給電する動作モードと、電圧形インバータを零電圧出力動作にして交流電圧源を直接交流負荷に接続する動作モードの切り換えがインバータのスイッチング信号だけで容易に行なえる。
【0052】
また、一般的な無停電電源_は、スイッチ切り換え前後における電位差の違いによる突入電流が流れる恐れが_あるのに対して、本発明による無停電動作における動作切り換えにおいては、インバータのスイッチ動作を切り換えるだけで可能なため、切り換えに伴う問題は少ない。

【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の交流電圧制御装置の構成ブロック図
図2】本発明の交流電圧制御装置の主回路構成例
図3】本発明の交流電圧制御装置の単相等価回路
図4】無負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図5】負荷時のベクトル図(フェーザー図)と出力電圧制御原理
図6】交流電圧制御位相がずれているときの動作ベクトル図(フェーザー図)
図7】本発明の交流電圧制御装置による無停電電源の構成ブロック図
図8】本発明による無停電電源の主回路構成
図9】無停電電源給電時の回路と交流電圧源直接給電時の回路
図10】無停電電源給電と交流電圧源直接給電のスイッチ切り換え動作の比較
図11】本発明の交流電圧制御装置の制御システム
図12】本発明の無停電電源の制御システム
図13】進相キャパシタが小さいときの交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図14】負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es<Eor)
図15】交流安定化電源動作時の拡大動作波形(Es<Eor)
図16】無停電電源動作時の拡大動作波形
図17】無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図18】無負荷時の無停電電源動作を含む交流安定化電源の動作波形(Es>Eor)
図19】交流電圧源スルー動作時の無停電電源動作の動作波形(Es=Eor)
図20】交流電圧源スルー動作時の拡大動作波形(Es=Eor)
【発明を実施するための形態】
【0054】
図11は、交流電圧源に対して直列に主回路の電圧形インバータを接続してそのPWM制御信号を制御信号発生部より得て、出力されるPWM出力電圧に対して進相電流を流すキャパシタCoとインダクタLoを通して構成したフィルタ回路の出力を交流負荷に接続することにより構成した本発明による交流電圧制御装置の制御システムを示している。
【0055】
制御信号発生部では、電圧形インバータの直流電圧一定制御部と交流出力電圧一定制御部および交流出力電圧のひずみ波成分を抽出して制御するひずみ波補償制御部からの制御信号量の総和をもとにPWM制御信号を発生して電圧形インバータをスイッチング制御する制御システムとなっている。
【0056】
ここで、直流電圧一定制御部では、前記直流電圧が前記直流電圧基準値に一致するように比較制御する直流電圧制御器の出力を交流電圧源の電圧の位相を負荷に流れる全負荷電流時の位相に近い位相に調整して得られる信号でスイッチング切り換えした量を制御信号量とし
交流出力電圧一定制御部では、交流出力電圧が一定の基準値に一致するように比較制御する交流電圧制御器の出力を直流電圧一定制御部に用いたスイッチング切り換えした信号に対して90度の位相差のある信号でスイッチング切り換えした量を制御信号量として、ひずみ波補償制御部からの制御信号量と共に、それらは互いに独立した制御量であるために加算して電圧形インバータのPWM制御制御信号としている。
【0057】
なお、ひずみ波補償制御部では、交流出力電圧波形のひずみ波成分が十分低減でき、波形ひずみ率が基準値以下となるように比例ゲインKを調整することで、制御信号量を得ているため、交流電圧源がひずんでいても、直流一定電圧制御や交流出力電圧一定制御部でのスイッチ切り換えによる出力電圧波形ひずみが生じても一括して抑制制御することができる。
【0058】
次に、図12は本発明の交流電圧制御装置を無停電電源として働かせるときの主回路構成とその制御システムを示しており、電圧形インバータの直流キャパシタCdの両端に、蓄電池EBからインダクタLBとスイッチ回路で構成したDCDCコンバータを介して接続し、DCDCコンバータでは無停電動作時に必要な直流電圧に制御する信号をDCDCコンバータへのスイッチング信号として与えると共に、交流出力電圧一定制御部からのスイッチング信号を電圧形インバータに与えることにより、無停電電源動作をさせることができる。
【0059】
なお、交流電圧源の電圧の大きさで給電動作モードか停電動作モードを切り換え、給電動作モードでは交流電圧制御信号には直流電圧一定制御信号が交流電圧一定制御信号と合わせた制御信号量でPWM制御するが、停電動作モードでは、DCDCコンバータの制御ループによって停電時の動作電圧を確保するための直流電圧一定制御にスイッチ制御する制御システムによって無停電電源動作を実現している。
【実施例0060】
本発明の交流電圧制御装置の実施例として、波形ひずみを含む交流電圧源が給電状態から停電状態を経て復電し給電状態に戻る過程における無停電電源動作を含む交流安定化電源としての制御特性をシミュレーション解析により確認する。
【0061】
シミュレーション解析における交流電圧制御装置の主回路定数は、電圧形インバータの直流コンデンサCd=1000uF,交流フィルタ回路のインダクタンスLa=100uH,キャパシタンスCa=100uF、交流負荷抵抗値Ro=50オーム、蓄電池の電圧EB=24V, DCDCコンバータのインダクタンスLB=200uHとし、制御信号発生における直流基準電圧は給電時Edr=50V,停電時Edr=150Vに設定し、交流基準電圧実効値はEor=100Vとした。
【0062】
そして、交流電圧制御装置の安定化電源としての制御特性と波形改善特性を検証するため、交流電圧源は正弦波電圧のピークが85%でカットされた波形とし、交流電圧源の大きさEsとしては交流出力の基準電圧Eorより±10%程度変化させてシミュレーション解析を行った。
【0063】
図13図14は、ピーク値が108V程度のひずみ波の交流電圧es (Es<Eor) がt=0.7sで停電し、t=1.3s後に復電させたとき動作波形であり、電圧形インバータの直流動作電圧が給電時はEB=50V、停電時にはEB=150Vに制御され、電圧形インバータの交流出力電圧vxsが交流電圧源に直列接続しLCフィルタを通した出力電圧eoおよび交流電圧源の電圧esと交流出力電圧eoの各実効値 (Es,Eo)の変化を示した制御動作波形である。
【0064】
図13は、LCフィルタにおける進相キャパシタCoの値がCo=10 uFと小さく設定した時の結果であり、進み電流が小さいため、直流電圧Edが25V程度と低く、直流電圧一定制御が十分効かず本発明の制御効果が出せていないことが確認できる。
【0065】
これに対して、図14以降に示すシミュレーション結果はCoの値を最大負荷電流以上の電流が流れる値Co=100 uFに設定したときの結果で、本発明による所期の電圧制御効果が得られている。
【0066】
図14の動作波形から、交流出力電圧eoは、交流電圧源esが停電状態になっても電圧形インバータによる無停電電源動作のためほぼ無瞬断の交流電圧波形が出力されており、交流出力電圧eoの実効値Eoは給電状態、停電状態に関係なく出力電圧は基準値Eor=100Vに一致しており、交流安定化電源としての動作が確認できる。
【0067】
図15は、給電時の制御区間の動作波形を拡大して示したもので、ピーク値付近がカットされている交流電圧源es (Es>Eor) に対し交流出力電圧波eoは正弦波形に波形改善された交流安定化電源(AVR)としての動作できていることが確認できる。
【0068】
図16は、交流電圧源が停電状態になったときの制御区間の動作波形を拡大して示したもので、電圧形インバータの直流動作電圧EBが高く制御されることにより、PWM制御により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形eoが得られ、無停電電源動作(UPS)ができていることが分かる。
【0069】
この後、交流電圧源が復電したときの動作波形は直流動作電圧が基準電圧に一致する定常状態になると停電前と同じ正弦波形に波形改善された交流安定化電源としての動作できていることが確認できる。
【0070】
図17は、ピーク値が144V程度のひずみ波の交流電圧es(Es>Eor)の交流電圧源に対して同様のシミュレーション解析を行った結果であり、交流出力電圧eoは給電状態、停電状態にかかわらずほぼ一定の安定化出力(Eo=Eor)が得られていることが確認される。
【0071】
図18は、図17と同じ交流電圧源に対して、無負荷状態における動作波形を示しており、負荷の軽重に係わらず、本発明による交流電圧制御装置が安定に動作できることが確認できる。
【0072】
これは、本発明による制御システムの構成が、直流電圧一定制御ループと交流出力電圧一定制御ループにおけるスイッチ切り換え信号を交流電流によらず、交流ライン電圧の信号から得ていることによるものと考えられる。
【0073】
図19は、ピーク値が110V程度のひずみ波の基準値とほぼ等しい交流電圧源esの(Es=~Eor) に対して,給電時には電圧形インバータをスルー動作させて交流電圧源から直接交流負荷に接続し、停電時には電圧形インバータの出力を交流負荷にインバータのスイッチ信号によって切り替えたときの動作波形を示している。
【0074】
図20は給電時の制御動作波形を拡大したもので、交流電圧制御動作をかけていないため、ひずみ波で低い電圧の交流電圧源esが直接交流負荷に出力されている様子が分かる。
【0075】
なお、停電時においては、電圧形インバータが無停電電源として動作により出力電圧の基準値Eor=100Vの正弦波出力電圧波形が得られていることを示している。



【符号の説明】
【0076】
100 … 交流電圧源
200 … 交流電圧制御主回路構成部
210 … 電圧形インバータ
220 … LCフィルタ部
230 … DCDCコンバータ部
300 … 交流負荷部
400 … 交流電圧制御信号発生部
410 … 直流電圧一定制御信号発生部
420 … 交流電圧一定制御信号発生部
430 … 交流電圧実効値検出部
440 … 交流出力電圧のひずみ波成分検出部
450 … PWM制御信号発生部
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11