(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125708
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】歯科模型用の印象材浴の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/34 20060101AFI20220822BHJP
A61C 9/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61C13/34 Z
A61C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023451
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】517044384
【氏名又は名称】株式会社E-Joint
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】藤川 知
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯科用アナログを設置するための歯科用模型(例えば顎部分モデル)を製造するための印象材浴の製造方法や印象材浴を用いた歯科用模型の製造方法を提供する。
【解決手段】患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを解析し,患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得る工程と,患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具に相当するデータをアナログ保持具のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得る工程と,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて,印象材浴の3次元データを得る工程と,印象材浴の3次元データに基づいて,印象材浴を製造する工程と,を含む,歯科模型用の印象材浴の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科模型用の印象材浴の製造方法であって,
患者の口腔内にスキャン用治具(21)を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを解析し,患者の口腔内にスキャン用治具(21)を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得るスキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,
前記患者の口腔内にスキャン用治具(21)を設置した状態の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具(21)に相当するデータをアナログ保持具(13)のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得るアナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,
前記アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて,印象材浴の3次元データを得る印象材浴データ取得工程と,
前記印象材浴の3次元データに基づいて,印象材浴を製造する印象材浴製造工程と,を含む,
歯科模型用の印象材浴の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科模型用の印象材浴の製造方法であって,
患者の口腔内にスキャン用治具(21)を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを得るスキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程をさらに含み,
前記スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程における前記患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータは,前記スキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程において取得されたものである,
歯科模型用の印象材浴の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科模型用の印象材浴の製造方法であって,
前記アナログ保持具(13)は,
歯科用アナログ(3)を保持するための保持部本体(5)と,
前記保持部本体(5)と連結し,アナログガイド(7)と接続するためのアナログガイド用接続部(9)とを有し,
顎部分モデル(11)に対し,前記アナログガイド(7)を介して,前記歯科用アナログ(3)を植立するために用いられる,
歯科模型用の印象材浴の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の歯科模型用の印象材浴の製造方法であって,
前記アナログガイド(7)は,
前記顎部分モデル(11)に対し,前記歯科用アナログ(3)を植立するために用いられ,
前記顎部分モデル(11)に設置可能な形状を有するアナログガイド本体(15)と,
前記アナログガイド本体(15)に設けられ,前記アナログ保持治具(13)のアナログガイド用接続部と接続されて,前記アナログ保持治具(13)に保持された前記歯科用アナログ(3)を前記顎部分モデル(11)のアナログ設置位置に向けさせるための,アナログ保持治具接続部(17)と,を有する,
歯科模型用の印象材浴の製造方法。
【請求項5】
歯科用模型の製造方法であって,
請求項1に記載の歯科模型用の印象材浴の製造方法に基づいて印象材浴を得る工程と,
前記印象材浴を用いて歯科模型を製造するための歯科模型製造工程と,を含む,歯科用模型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,歯科模型用の印象材浴の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6208905号公報には,スキャン用治具が記載されている。このようにインプラントを製造する際に,スキャン用治具を用いることは知られている。例えば,特許第6161048号公報に記載されるように,インプラントを製造する際に,歯科用アナログ(インプラントアナログ)が用いられる。歯科用アナログを顎部分モデルに設置する際に,歯科用アナログの角度や位置の調整が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6208905号公報
【特許文献2】特許第6161048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため,歯科用アナログを設置するための歯科用模型(例えば顎部分モデル)を製造するための印象材浴の製造方や印象材浴を用いた歯科用模型の製造方法が望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
最初の発明は,歯科模型用の印象材浴の製造方法に関する。
【0006】
この方法は,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを解析し,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得るスキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,
患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具21に相当するデータをアナログ保持具13のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得るアナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,
アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて,印象材浴の3次元データを得る印象材浴データ取得工程と,
印象材浴の3次元データに基づいて,印象材浴を製造する印象材浴製造工程と,を含む。
【0007】
この方法は,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを得るスキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程をさらに含むものが好ましい。
そして,スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程における患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータは,スキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程において取得されたものであることが好ましい。
【0008】
この方法は,アナログ保持具13が,
歯科用アナログ3を保持するための保持部本体5と,
保持部本体5と連結し,アナログガイド7と接続するためのアナログガイド用接続部9とを有し,
顎部分モデル11に対し,アナログガイド7を介して,歯科用アナログ3を植立するために用いられるものが好ましい。
【0009】
この方法は,アナログガイド7が,
顎部分モデル11に対し,歯科用アナログ3を植立するために用いられ,
顎部分モデル11に設置可能な形状を有するアナログガイド本体15と,
アナログガイド本体15に設けられ,アナログ保持治具13のアナログガイド用接続部と接続されて,アナログ保持治具13に保持された歯科用アナログ3を顎部分モデル11のアナログ設置位置に向けさせるための,アナログ保持治具接続部17と,を有する者が好ましい。
【0010】
次の発明は,歯科用模型(例えば顎部分モデル11)の製造方法に関する。この方法は,上記した歯科模型用の印象材浴の製造方法に基づいて印象材浴を得る工程と,印象材浴を用いて歯科模型を製造するための歯科模型製造工程と,を含む。
【0011】
次の発明は,プログラムに関する。このプログラムは,コンピュータに,スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,印象材浴データ取得工程と,を実行させるためのプログラムである。
【0012】
次の発明は,コンピュータに基づく,歯科模型用の印象材浴のデータ取得システムに関する。このシステムは,スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,印象材浴データ取得工程と,を実行する。
換言すれば,このシステムは,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを解析し,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得るためのスキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得手段工程と,
患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具21に相当するデータをアナログ保持具13のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得るアナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得手段と,
アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて,印象材浴の3次元データを得る印象材浴データ取得手段と,を有するシステムである。
【発明の効果】
【0013】
歯科用アナログを設置するための歯科用模型(例えば顎部分モデル)を製造するための印象材浴の製造方や印象材浴を用いた歯科用模型の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は,印象材浴作成用のデータを取得し,印象材浴を製造した後に,歯科模型を製造する工程の例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は,スキャン用治具が埋立された患者の顎部分の3Dスキャン画像の例を示す概念図である。
【
図5】
図5は,アナログガイドにアナログ保持治具を装着した様子を示す概念図である。
【
図6】
図6は,歯科用アナログ,アナログ保持治具及びアナログガイドを装着した様子を示す概念図である。
【
図7】
図7は,歯科用アナログをアナログ保持治具に装着し,アナログガイドを用いて,顎部分モデルに歯科用アナログを植立した様子を示す概念図である。
【
図8】
図8は,口腔内スキャンデータの例を示す図である。
【
図9】
図9は,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データを示す図である。
【
図10】
図10は,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データ(模型図)である。
【
図11】
図11は,印象材浴データの作成画面の例を示す図面である。
【
図12】
図12は,得られた印象材浴の3次元構造データである。
【
図13】
図13は,アナログ保持具が装着された印象材浴の例を示す図面に代わる写真である。
【
図14】
図14は,歯科用アナログが装着された印象材浴を示す図面に代わる写真である。
【
図15】
図15は,印象材浴を用いて歯科模型(顎モデル)を得る様子を示す図面に代わる写真である。
【
図16】
図16は,歯科模型の例を示す図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0016】
図1は,印象材浴作成用のデータを取得し,印象材浴を製造した後に,歯科模型を製造する工程の例を示すフローチャートである。この歯科模型の製造方法は,
スキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程(S101)と,
スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程(S102)と,
アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程(S103)と,
印象材浴データ取得工程(S104)と,
印象材浴製造工程(S105)と,
歯科模型製造工程(S106)とを含む。
【0017】
スキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程(S101)
スキャン用治具設置状態口腔内スキャンデータ取得工程は,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを得るための工程である。例えば,特許第6208905号公報には,スキャン用治具が記載されている。このようにインプラントを製造する際に,スキャン用治具を用いることは知られている。また,口腔内のスキャンデータを取得することは,通常の歯科医院でも行われている。
【0018】
このようにして,スキャン用治具21が埋立された患者の顎部分23の3D(3次元)スキャン画像25を得ることができる。得られたデータは,適宜,スキャナと接続されたコンピュータの記憶部に記憶される。スキャン用治具21は,例えば特許第6208905号公報に記載された通り,公知である。ヒト又は模型に歯科用インプラントのインプラント体又は中間構造体が埋入されている。歯科用インプラントに,スキャン用治具を装着する。そのうえで,スキャナ,レントゲン撮影やCT等を用いて,スキャン用治具を撮影する。このようにして,システムは,スキャン用治具21が埋立された患者の顎部分23の3Dスキャン画像25を取得することができる。
【0019】
図2は,スキャン用治具が埋立された患者の顎部分の3Dスキャン画像の例を示す概念図である。
【0020】
スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程(S102)
スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程は,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内スキャンデータを解析し,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得るための工程である。先の工程で撮影した情報は,コンピュータへ送信され,そのコントラスト等から,スキャン領域の頂点部分が求められる。すると,コンピュータには,あらかじめヘッド部の各側面に関する情報(例えば,側面を構成する多角形の形状,隣接する側面,面積,位置,及び角度)が記憶されている。コンピュータは,求めた頂点位置の情報から,撮影した画像に含まれる頂点がヘッド部分のどの頂点であるかを求める。そのうえで,適宜,各頂点によって形成される多角形の面積を比較し,頂点の解析が正しいことを確認する。コンピュータは,頂点の位置に関する情報から,スキャン用治具の位置や方向を求めるとともに,それと連結されている歯科用インプラントの位置や方向を求めることができる。このようにして,コンピュータは,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データを得ることができる。
【0021】
なお,このデータを用いれば,アナログガイドを製造できる。先の工程で,システムは,顎部分情報と治具部分情報とを得ている。得られた情報は,適宜記憶部に記憶される。システムは,記憶部からプログラムを読み出し,記憶部から顎部分情報と治具部分情報とを読み出して,プログラムの指令に基づいて,演算部に演算処理を行わせ,アナログガイドの製造情報を取得する。顎部分情報には,インプラントを埋入する部位に隣接する歯冠部の形状に関する情報や位置情報が含まれている。これらの情報を用いて,システムは,アナログガイド7(PUDホルダー)の全体の大きさや歯冠係合部12,14の形状を求める。また,治具部分情報には,インプラントを埋入する部位と隣接する歯冠部の位置情報や,インプラントを埋入する方向に関する情報が含まれる。これらの情報を用いて,システムは,アナログガイド7(PUDホルダー)におけるアナログ保持治具接続部17の設計情報を得ることができる。すると,システムは,アナログガイド7(PUDホルダー)の全体の大きさや歯冠係合部12,14の形状に関する情報とアナログ保持治具接続部17の設計情報とから連結部の情報を求めることができる。このようにして,システムは,アナログガイドの製造情報を取得できる。
【0022】
次にアナログガイドの製造情報を用いてアナログガイド7を製造することができる。例えば,システムは,3Dプリンタを含む。システムは,アナログガイドの製造情報を用いて,3Dプリンタ部にアナログガイド7を製造させる。このようにして,システムは,アナログガイド7を製造できる。また,システムは,切削加工機を有しており,アナログガイドの製造情報を用いて,切削加工機に切削加工を行わせることで,アナログガイド7を製造させてもよい。
【0023】
アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程(S103)
アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程は,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具21に相当するデータをアナログ保持具13のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得るための工程である。アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データは,患者の口腔内にスキャン用治具21の代わりに,アナログ保持具13が設置された場合における患者の口腔内の3次元データである。
【0024】
図3は,アナログ保持治具の概念図である。アナログ保持治具は,歯科用アナログ3を保持し,顎部分モデル11に対してアナログガイド7を介して歯科用アナログ3を植立するために用いられる装置(ピックアップデバイス:PUD)である。歯科用アナログは,インプラントアナログともよばれる治具である(特許第6161048号公報参照)。
図3に示される通り,アナログ保持治具13は,歯科用アナログ3を保持するための保持部本体5と,保持部本体5と連結し,アナログガイド7と接続するためのアナログガイド用接続部9とを有する。
【0025】
図3の例では,保持部本体5は,筒状の胴体部と,胴体部の上部に位置し,胴体部よりも径が小さい係合部2とを有している。係合部2は,歯科用アナログ3に挿入され,歯科用アナログ3を固定できる。
【0026】
図3の例では,アナログガイド用接続部9は,保持部本体5のうち歯科用アナログ3を係合する係合部2と反対側の端部に接続されている。アナログガイド用接続部9は,円盤状のすそ部分4と,すそ部分から外周方向に飛び出た突起部6とを有している。すそ部分は,多段階の円盤状(中心部に近づくほど径が小さくなる円盤上部分を2以上有する形状)であってもよい。アナログガイド用接続部9のすそ部分4と突起部6とは,アナログガイド7に存在するこれらに対応した窪みを有するアナログ保持治具接続部17と,係合する。すると,アナログガイド7にアナログ保持治具13が固定される。
【0027】
アナログ保持治具13(ピックアップデバイス:PUD)は,ある程度の強度を有する公知の材質(例:プラスチック)を用いて製造できる。アナログ保持治具13(PUD)は,歯科用アナログを顎部分モデルに植立するために用いる。このため,アナログ保持治具13(PUD)のサイズは,顎の大きさや歯の部位の大きさを考慮して適宜調整すればよい。アナログ保持治具13は,ある程度の強度を有するものであればよく,公地の材料(例えば,ステンレスなどの金属やプラスチック)を用いて,適宜製造すればよい。
【0028】
図4は,アナログガイドの概念図である。アナログガイド7は,顎部分モデル11などの歯科模型に対し,歯科用アナログ3を植立するために用いられる装置(ピックアップガイドホルダー:PUDホルダー)である。
図4に示される通り,アナログガイド7は,アナログガイド本体15とアナログ保持治具接続部17と,を有する。以下では,額部分モデルに基づいてアナログガイドについて説明する。
【0029】
アナログガイド本体15は,顎部分モデル11に設置可能な形状を有する部位である。アナログガイド本体15は,アナログ保持治具接続部17の他,歯科用アナログ3を挿入し,インプラントを埋入する部位に隣接する歯冠部の全部又は一部に係合する歯冠係合部12,14と,歯冠係合部12,14とアナログ保持治具接続部17とを連結する連結部16とを有する。顎部分モデル11の歯冠部に歯冠係合部12,14が係合することで,アナログガイドが顎部分モデル11に固定される。すると,アナログ保持治具接続部17も顎部分モデル11に対して固定され,アナログ保持治具13や歯科用アナログ3も顎部分モデル11に対して固定される。このようにアナログガイド本体15は,対象となる患者(または患者の顎モデル)のインプラント埋入部やそれに隣接する歯の形状を反映した形状であることが好ましい。
【0030】
アナログ保持治具接続部17は,アナログガイド本体15に設けられ,アナログ保持治具13のアナログガイド用接続部9と接続されて,アナログ保持治具13に保持された歯科用アナログ3を顎部分モデル11のアナログ設置位置に向けさせるための部位である。アナログ保持治具接続部17は,アナログ保持治具13のアナログガイド用接続部9のすそ部分4と突起部6に対応した窪みを有する。アナログ保持治具接続部17にアナログガイド用接続部9がはまり,アナログ保持治具13がアナログガイド7に固定される。
【0031】
アナログガイド7(PUDホルダー)は,ある程度の強度を有する公知の材質(例:プラスチック)を用いて製造できる。アナログガイド7(PUDホルダー)は,アナログ保持治具接続部17を1つのみ有するものであってもよい。また,インプラントを複数設ける場合には,アナログガイド7(PUDホルダー)は,アナログ保持治具接続部17を2つ以上有するものであってもよい。アナログガイド7(PUDホルダー)のサイズは,顎の大きさ,歯の部位の大きさ及びアナログ保持治具接続部の数を考慮して適宜調整すればよい。
【0032】
図5は,アナログガイドにアナログ保持治具を装着した様子を示す概念図である。
図5に示すように,アナログ保持治具接続部17にアナログガイド用接続部9がはまり,アナログ保持治具13がアナログガイド7に固定される。
【0033】
図6は,歯科用アナログ,アナログ保持治具及びアナログガイドを装着した様子を示す概念図である。
【0034】
図7は,歯科用アナログ3をアナログ保持治具13に装着し,アナログガイド7を用いて,顎部分モデル11に歯科用アナログ3を植立した様子を示す概念図である。
【0035】
先の工程で,患者の口腔内にスキャン用治具21を設置した状態の患者の口腔内の3次元データが得られている。一方,コンピュータの記憶部には,アナログ保持具13の3次元データが記憶されている。コンピュータは,複数のアナログ保持具13の形状を記憶したアナログ保持具用のデータベースを有していてもよい。コンピュータは,例えば,スキャン用治具21の形状に対応したアナログ保持具13をアナログ保持具用のデータベースから自動的に選択してもよい。また,例えば,歯科医や歯科技工士が,コンピュータの入力部を用いて,アナログ保持具用のデータベースからアナログ保持具13を選択する情報をコンピュータに入力してもよい。すると,選択情報に基づいて,アナログ保持具用のデータベースからアナログ保持具13の形状情報が読み出される。
【0036】
読み出されたアナログ保持具13の形状情報を用いて,コンピュータが,スキャン用治具21に相当するデータをアナログ保持具13のデータに置き換え,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データを得ることができる。このようにして得られたアナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データは,適宜コンピュータの記憶部に記憶される。
【0037】
印象材浴データ取得工程(S104)
印象材浴データ取得工程は,アナログ保持具置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて,印象材浴の3次元データを得るための工程である。印象材浴は,内部に空洞を有しており,その空洞に印象材を入れて固化させ,固化させた印象材を取り除くことで,模型を得るための容器である。
【0038】
先の工程で,アナログ保持具13が設置された場合における患者の口腔内の3次元データが得られている。コンピュータは,この3次元データを適宜読み出して,この3次元データを用いて,アナログ保持具13を含む口腔内の印象材浴を製造するための3次元データを得る。具体的には,アナログ保持具13が設置された場合における患者の口腔内の3次元データにおいて,アナログ保持具13,歯肉,隣接歯が存在している部分を空洞に変換するようなデータ変換処理を行う。その処理は,顎模型を得る場合は,アナログ保持具13を含む口腔内全体や,下顎又は上顎全体であってもよい。また,アナログ保持具13やその隣接歯部分のみであってもよいし,所定の体積部分のみについて,データ変換処理を行ってもよい。そのようにすれば,印象材浴に関する3次元データを得ることができる。えら得た印象材浴に関する3次元データは,適宜コンピュータの記憶部に記憶されてもよい。
【0039】
印象材浴製造工程(S105)
印象材浴製造工程は,印象材浴の3次元データに基づいて,印象材浴を製造するための工程である。先の工程で,印象材浴に関する3次元データが得られている。3Dプリンタなど,3次元データに基づいて,模型を製造する技術は公知である。例えば,コンピュータの記憶部から印象材浴に関する3次元データを読み出す。そして,読み出した印象材浴に関する3次元データを用いて,印象材浴を製造する。このようにして,印象材浴を得ることができる。印象材浴の素材は,3Dプリンタの素材を適宜用いればよい。
【0040】
歯科模型製造工程(S106)
歯科模型製造工程は,印象材浴を用いて歯科模型を製造するための工程である。インレーやクラウンなど,印象材浴を用いて,模型を製造する技術は公知である。このため歯科技工において公知の方法を用いて,歯科模型を製造すればよい。このようにして,歯科模型を得ることができる。
【0041】
得られた歯科模型を用いることで,歯科医は,歯科用アナログを設置するための事前検討や事前練習を容易に行うことができることとなる。
【0042】
コンピュータは,入力部,出力部,制御部,演算部及び記憶部を有しており,各要素は,バスなどによって接続され,情報の授受を行うことができるようにされている。例えば,記憶部には,制御プログラムが記憶されていてもよいし,各種情報が記憶されていてもよい。入力部から所定の情報が入力された場合,制御部は,記憶部に記憶される制御プログラムを読み出す。そして,制御部は,適宜記憶部に記憶された情報を読み出し,演算部へ伝える。また,制御部は,適宜入力された情報を演算部へ伝える。演算部は,受け取った各種情報を用いて演算処理を行い,記憶部に記憶する。制御部は,記憶部に記憶された演算結果を読み出して,出力部から出力する。このようにして,各種処理が実行される。
【0043】
この明細書は,コンピュータに上記した各工程を行わせるためのプログラムや,そのプログラムを記憶した情報記録媒体,上記の各工程を行うコンピュータに基づく印象材浴データ取得システム,印象材浴の製造システム,及び歯科用模型の製造システムをも提供する。
そのようなプログラムは,例えば,コンピュータに,スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,印象材浴データ取得工程と行わせることにより印象材浴の3次元データを得るためのプログラムである。また,そのようなシステムは,コンピュータに基づくシステムであって,スキャン用治具設置状態口腔内3次元データ取得工程と,アナログ保持具置換後口腔内3次元データ取得工程と,印象材浴データ取得工程と行うことにより,印象材浴の3次元データを得るためのシステムや,さらに得られた印象材浴の3次元データに基づいて印象材浴を得たり,さらに歯科用模型を製造したりするものであってもよい。
【実施例0044】
以下,実施例を用いて本発明を具体的に説明する。患者の口腔内にスキャン用治具(特許第6208905号)を設置する。患者の口腔内にスキャン用治具を設置した状態で,患者の口腔内をスキャンし,患者の口腔内スキャンデータ(光学印象)を得る。
図8は,口腔内スキャンデータの例を示す図である。
【0045】
次に,患者の口腔内スキャンデータを解析する。これにより,インプラントを設置する位置の3次元情報を得る。また,インプラントを設置する部位の周囲の歯肉や歯の3次元情報を得る。このようにして,患者の口腔内におけるスキャン用治具を設置した際の患者の口腔内の3次元データを得る。例えば,システムは,スキャン用治具の3次元データが記憶されている。これと口腔内スキャンデータとをアライン(重ね合わせ)処理することで,口腔内の3次元情報のほか,口腔内におけるスキャン用治具の3次元データを解析できる。
【0046】
スキャン用治具を設置した際の患者の口腔内の3次元データにおいて,スキャン用治具に相当するデータをアナログ保持具データ(PUDデータ)に置き換える。このようにして,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データを得る。
図9は,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データを示す図である。
図10は,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データ(模型図)である。このようにシステムは,PUD置換後の患者の口腔内を3次元的にモデリングできる。
【0047】
PUD置換後の患者の口腔内の3次元データに基づいて印象材浴(DigiPoCoホルダー)のデータを得る。
図11は,印象材浴データの作成画面の例を示す図面である。例えば,印象材浴の位置情報がシステムに入力される。すると,入力された位置に印象材浴の3次元データが存在することとなる。その領域に,PUD置換後の患者の口腔内の3次元データが存在すれば,演算処理を行うことにより,印象材浴のデータを得ることができる。この処理の案は,ブール演算である。PUD置換データのうちインプラントを設置する箇所の凹凸を反映した,印象材浴(DigiPoCoホルダー)のデータを得る。このデータは,アナログ保持具(PUD)用の3次元データをあらかじめ反映させている。このように印象材浴は,アナログ保持具(PUD)を設置するための部位があらかじめ設けられていてもよい。
【0048】
図12は,得られた印象材浴の3次元構造データである。印象材浴(DigiPoCoホルダー)のデータに基づいて,印象材浴(DigiPoCoホルダー)を作成する。3Dプリンタを用いて印象材浴を作成してもよい。また,印象材浴のデータに基づいて,ワックスディスクを削り出して,印象材浴を作成してもよい。
【0049】
この例では,印象材浴(DigiPoCoホルダー)に,アナログ保持具(PUD)を装着した。
図13は,アナログ保持具が装着された印象材浴の例を示す図面に代わる写真である。このようにして,アナログ保持具(PUD)が装着された印象材浴(DigiPoCoホルダー)を得る。
【0050】
次に,アナログ保持具(PUD)が装着された印象材浴(DigiPoCoホルダー)のアナログ保持具(PUD)にアナログを締結する。
図14は,歯科用アナログが装着された印象材浴を示す図面に代わる写真である。このようにして,アナログが締結された印象材浴(DigiPoCoホルダー)を得る。
【0051】
アナログが締結された印象材浴(DigiPoCoホルダー)に印象材を注入する。印象材を固化させる。固化した印象材を印象材浴(DigiPoCoホルダー)から取り外す。
図15は,印象材浴を用いて歯科模型(顎モデル)を得る様子を示す図面に代わる写真である。このようにして,歯科模型を得ることができる。
図16は,歯科模型の例を示す図面に代わる写真である。