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特開2022-125742細胞分注装置に用いられる吐出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125742
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】細胞分注装置に用いられる吐出システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20220822BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023505
(22)【出願日】2021-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591055975
【氏名又は名称】水戸工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515300583
【氏名又は名称】株式会社伸和精工
(71)【出願人】
【識別番号】518321532
【氏名又は名称】株式会社アノード
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】子安 輝久
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029HA01
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】分注装置を用いて細胞を分注する際に分注によって分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制する。
【解決手段】細胞分注装置100に設置され、細胞を載置可能な凹部を設けたマイクロプレートPを設置する載置部10の上方に移動可能に設けられ、細胞および細胞を培養する培養液を収容する内部空間41を設けた筒状部材40と、内部空間に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間から側方に吐出可能な流路を含む第1流路部61と、第1流路部よりも重力方向における下方に設けられ、内部空間に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間から側方に吐出可能な流路を含む第2流路部62と、第1流路部と第2流路部の流路における先端側において第1流路部からの流体と第2流路部からの流体が合流する合流箇所S1を備えた第3流路部63と、を有する細胞分注装置に用いられる吐出システムである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞分注装置に設置され、細胞を載置可能な凹部を設けたプレート部を設置する部位の上方に移動可能に設けられ、前記細胞および前記細胞を培養する培養液を収容する内部空間を設けた収容部と、
前記内部空間に収容された前記細胞および前記培養液の少なくともいずれかを前記内部空間から側方に流通可能な流路を含む第1流路部と、
前記第1流路部よりも重力方向における下方に設けられ、前記内部空間に収容された前記細胞および前記培養液の少なくともいずれかを前記内部空間から側方に流通可能な流路を含む第2流路部と、
前記第1流路部と前記第2流路部の先端側において前記第1流路部からの流体と前記第2流路部からの流体が合流する合流箇所を備えた第3流路部と、を有する細胞分注装置に用いられる吐出システム。
【請求項2】
前記第3流路部は、前記重力方向に沿って延在する請求項1に記載の細胞分注装置に用いられる吐出システム。
【請求項3】
前記内部空間において水平方向に移動可能であって、移動によって前記内部空間の容積を変化させる押し出し部をさらに備える請求項1または2に記載の細胞分注装置に用いられる吐出システム。
【請求項4】
前記収容部は、前記内部空間を構成する半閉空間を含む筒状部材を備え、
前記筒状部材と接続され、前記第1流路部、前記第2流路部、および前記第3流路部を構成する空洞形状を形成した接続部材をさらに有する請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞分注装置に用いられる吐出システム。
【請求項5】
前記収容部は、前記内部空間を構成する半閉空間を含む筒状部材を備え、
前記筒状部材に取り付けられ、前記第1流路部、前記第2流路部、および前記第3流路部を設けた配管部材をさらに有する請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞分注装置に用いられる吐出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分注装置に用いられる吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を一定量自動で吐出する装置に分注装置がある。分注装置は医療等の分野において利用される。分注装置に関する従来の技術には、シリンジの略下方に位置するディッシュに、シリンジに収容した培地溶液などの液体をノズルから吐出(分注)するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-186803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、分注装置を用いて分注を行うと、ショット数(細胞の吐出回数)が増えるに従い、溶液中に含まれる細胞の濃度が減少する点に着目している。
【0005】
本発明は、分注装置を用いて細胞を分注する際に分注を繰り返すにつれて分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、細胞分注装置に用いられる吐出システムである。吐出システムは、収容部と、第1流路部と、第2流路部と、第3流路部と、を有する。収容部は、細胞分注装置に設置され、細胞を載置可能な凹部を設けたプレート部を設置する部位の上方に移動可能に設けられ、細胞および細胞を培養する培養液を収容する内部空間を設けている。第1流路部は、内部空間に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間から側方に流通可能な流路を含む。第2流路部は、第1流路部よりも重力方向における下方に設けられ、内部空間に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間から側方に流通可能な流路を含むように構成している。第3流路部は、第1流路部および第2流路部の先端側において第1流路部からの流体と第2流路部からの流体が合流する合流箇所を備えるように構成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る細胞分注装置に用いられる吐出システムによれば、分注装置を用いて細胞を分注する際に分注を繰り返すことによって分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る細胞分注装置を示す概略斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の正面図である。
図4図1に係る細胞分注装置において載置部に載置したプレート等に細胞を分注(吐出)する吐出システムを示す断面図である。
図5図4の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。
【0010】
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る細胞分注装置100を示す概略斜視図、図2図1の側面図、図3図1の正面図である。図4図1に係る細胞分注装置100において載置部10に載置したマイクロプレートP等に細胞を分注(吐出)する吐出システムを示す断面図である。
【0014】
なお、図面では直交座標系を表記している。Xは細胞分注装置100の幅方向に沿い、幅方向Xと称する。Yは細胞分注装置100の奥行方向に沿い、奥行方向Yと称する。Zは細胞分注装置100の高さ方向に沿い、高さ方向Zと称する。
【0015】
本実施形態に係る細胞分注装置100は、一例として医療や理化学の分野において利用することができる。細胞分注装置100は、図1図4に示すように載置部10と、移動部20と、設置部30と、筒状部材40(収容部に相当)と、流路部50と、押し出し部80と、を有する。筒状部材40、流路部50および押し出し部80は吐出システムを構成する。以下、詳述する。
【0016】
<載置部10>
載置部10は、分注の対象となる細胞を載置するための器具を載置させる。載置部10は、平坦に構成しており、載置部10には細胞分注装置100に設置され、細胞を載置可能な複数の凹部として2方向に穴を設けたマイクロプレートP(プレート部に相当)などを載置することができる。載置部10は本実施形態においてマイクロプレートPを奥行方向Yに移動可能に構成している。
【0017】
ただし、マイクロプレートPに対して設置部30、筒状部材40、流路部50および押し出し部80の相対的な位置を調整できれば載置部は奥行方向Yなどに移動可能でなくてもよい。また、載置部10に載せる器具としては上述した凹部を複数備えるマイクロプレートのようなプレート部以外にもシャーレ等のように凹部が一つのようなプレート部であってもよい。
【0018】
また、載置部10はマイクロプレートPなどを加温するために内部にヒーターなどを内蔵することができる。
【0019】
<移動部20>
移動部20は、設置部30、筒状部材40、流路部50および押し出し部80をプレート部に対して相対的に移動させるために設けられる。移動部20は、図1等に示すように垂直ステージ21と、第1水平ステージ22と、第2水平ステージ23と、を備える。
【0020】
垂直ステージ21は、第1水平ステージ22と第2水平ステージ23と、を高さ方向Zに移動させる。第1水平ステージ22は、第2水平ステージ23を幅方向Xに移動させるように構成している。第2水平ステージ23は、本実施形態において設置部30、筒状部材40、流路部50および押し出し部80を奥行方向Yに移動可能に構成している。ただし、マイクロプレートPに対して設置部30、筒状部材40、流路部50および押し出し部80の相対的な位置を調整できれば第2水平ステージ23は奥行方向Yに移動可能でなくてもよい。
【0021】
垂直ステージ21、第1水平ステージ22、第2水平ステージ23は、設置部30、筒状部材40、流路部50、および押し出し部80を幅方向X、奥行方向Y、および高さ方向Zに移動できれば、具体的な構成は特に限定されない。一例として、垂直ステージ21、第1水平ステージ22、および第2水平ステージ23は、不図示のモーター、ラックとピニオン等を含むように構成できる。
【0022】
<設置部30>
設置部30は、筒状部材40、流路部50、および押し出し部80を移動可能に構成している。具体的に言えば、設置部30は、本実施形態において流路部50とともに筒状部材40を取り付け、筒状部材40に対して押し出し部80を移動可能に構成している。
【0023】
筒状部材40は、流路部50とともに設置部30に対して溶接などによって接合したり、ねじ等によって設置部30にマウントしたりするように構成できる。押し出し部80は、設置部30に不図示のモーターやラックなどを搭載し、押し出し部80にラックと係合可能なピニオン等を設けることによって筒状部材40に対して奥行方向Yに移動可能に構成している。
【0024】
このように構成することによって、筒状部材40の内部空間41の容積を減少させて内部空間41に収容された細胞および培養液を含む溶液を、流路部50を通じて外部に吐出することができる。
【0025】
<筒状部材40>
筒状部材40は、マイクロプレートPの上方において移動可能に設けられる。筒状部材40は、細胞および細胞を培養する培養液を組み合わせた溶液を収容する内部空間41を設けるように構成している。
【0026】
筒状部材40の内部空間41は半閉空間となるように構成している。筒状部材40は、図4に示すように流路部50を構成する接続部材60と接続し、押し出し部80の先端側(プランジャ部81)を収容することによって閉空間を形成するように構成している。
【0027】
筒状部材40を用いることによって、使用者が使いたい量の細胞をほぼ使い切るように細胞および培養液を含む溶液を吐出することができる。
【0028】
筒状部材40は、本実施形態において先端側に接続部材60との係合部42としてねじ形状を設けて接続部材60を接続し、設置部30との取り付け箇所を2か所設け、底面を備えない円柱形状に構成している。また、筒状部材40は、本実施形態において奥行方向Yに延在するように構成している。
【0029】
ただし、細胞および培養液を含む溶液を収容し、設置部30に取り付けることができれば、接続部材との接続態様、設置部との取り付け箇所の数や位置、および筒状部材の形状は上記に限定されない。例えば、筒状部材は、円柱以外にも多角柱を含むように構成した
り、幅方向Xに延在するように構成したりしてもよい。
【0030】
<流路部50>
流路部50は、筒状部材40に収容された細胞および培養液の溶液を載置部10に吐出させる流路を構成する。流路部50は、本実施形態において図4に示すように接続部材60と、ニードル70と、を備える。
【0031】
<接続部材60>
接続部材60は、図4に示すように第1流路部61と、第2流路部62と、第3流路部63と、シール部64と、取り付け部65、66と、を備える。接続部材60は筒状部材40と接続され、第1流路部61、第2流路部62、および第3流路部63を構成する空洞形状を形成するように構成している。
【0032】
第1流路部61は、内部空間41に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間41から側方に流通可能な流路を含むように構成している。
【0033】
第2流路部62は、第1流路部61よりも重力方向における下方に設けられ、内部空間41に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間41から側方に流通可能な流路を含むように構成している。
【0034】
第3流路部63は、図4に示すように第1流路部61と第2流路部62の流路における先端側において第1流路部61からの流体と第2流路部62からの流体が合流する合流箇所S1を備えるように構成している。
【0035】
第1流路部61および第2流路部62は、本実施形態において細胞分注装置100を水平面に設置した設置状態において水平方向(奥行方向Y)に延在し、第3流路部63は設置状態において垂直方向(高さ方向Z)に沿うように構成している。言い換えれば、第3流路部63は、重力方向における下方に沿って延在するように構成している。
【0036】
ただし、筒状部材40から細胞および培養液をよどみなく比較的円滑に流通させることができれば、第1流路部および第2流路部は水平方向に対して数度程度傾斜していてもよいし、第3流路部は垂直方向に対して数度程度傾斜していてもよい。
【0037】
また、第1流路部61、第2流路部62、および第3流路部63の長手方向に交差(直
交)する断面形状は、本実施形態において真円形状に構成している。ただし、細胞と培養
液の溶液をよどみなく流通できれば、第1流路部、第2流路部、および第3流路部の断面の具体的な形状は真円に限定されない。上記以外にも断面形状は真円以外の円形状や矩形などの多角形を含んでもよい。
【0038】
シール部64は、接続部材60における筒状部材40との接続部位に設けられる。シール部64は、本実施形態において筒状部材40との接続部位の外周にOリングなどを設けることによって構成している。ただし、接続部材と筒状部材を接続した際に筒状部材に収容された細胞および培養液の溶液をシールできれば、具体的な構成はOリングに限定されない。
【0039】
取り付け部65は、接続部材60における筒状部材40との取り付け部位を構成する。取り付け部65は、本実施形態において上述のように筒状部材40の係合部42に設けたねじ形状(おねじ)と螺合可能なねじ形状(めねじ)を設けることによって構成している。
【0040】
ただし、筒状部材と接続部材を一体にして細胞および培養液の溶液を収容する閉空間を
形成できれば、取り付け部の具体的な構成はおねじとめねじの組み合わせに限定されない。
【0041】
取り付け部66は、接続部材60と、ニードル70との取り付け部位を構成する。取り付け部66は、本実施形態においてニードル70の係合部72と篏合可能な筒形状に構成している。
【0042】
ただし、取り付け部66は接続部材をニードルと接続できれば、接続の具体的態様は上記に限定されず、篏合以外にも取り付け部65等と同様にねじの螺合によって接続するように構成してもよい。
【0043】
<ニードル70>
ニードル70は、筒状部材40から接続部材60の第1流路部61または第2流路部62を通じ、第3流路部63を流通した細胞および培養液を外部に吐出する。ニードル70は、図4に示すように長尺部71と、係合部72と、を備える。
【0044】
長尺部71は、筒状部材40から第1流路部61または第2流路部62を経て第3流路部63を流通した細胞および培養液の溶液を流通させ、先端部からマイクロプレートPなどの外部に吐出する。
【0045】
係合部72は、接続部材60の第3流路部63を経た細胞および培養液の溶液を長尺部71に流通させるように接続部材60の取り付け部66に接続する部位として構成している。係合部72は、本実施形態において接続部材60の取り付け部66を構成する中空の筒形状と篏合する中空の内壁面を備えるように構成している。
【0046】
<押し出し部80>
押し出し部80は、筒状部材40の内部空間41を水平方向に移動可能であって、移動によって内部空間41の容積を変化させるように構成している。押し出し部80は、図4に示すようにプランジャ部81と、駆動部82と、を備える。プランジャ部81は、先端側を内部空間41に配置することによって接続部材60とともに内部空間41を閉空間に構成する。駆動部82は、筒状部材40の内部空間41の容積が変化するようにプランジャ部81を移動させるモーター、ラック、ピニオンなどの構成を含む。
【0047】
また、押し出し部80は、細胞および培養液が第1流路部61および第2流路部62以外の部位に流通しないようにプランジャ部81の先端側にゴムやエラストマー等のシールが可能な部材(図示省略)を含むように構成できる。
【0048】
また、細胞分注装置100は、CPUなどのプロセッサ、RAM、ROM、補助記憶部などの記憶部を備えた制御部(図示省略)と、使用者により操作可能なボタンなどを含む操作部と、を含む。
【0049】
制御部の記憶部には、操作部の操作に応じて筒状部材40に対する押し出し部80のプランジャ部81を一定量、押し出す(進退移動させる)プログラムを記憶させることができる。これにより、使用者が操作部のボタンなどを適宜押下することで押し出し部80のプランジャ部81を動作させて筒状部材40の内部空間41に収容された細胞と培養液を含む溶液をニードル70から外部のマイクロプレートPに吐出することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る細胞分注装置100は、筒状部材40と、第1流路部61と、第2流路部62と、第3流路部63と、を有する。筒状部材40は、細胞分注装置100に設置され、細胞を載置可能な凹部を設けたマイクロプレートPを設置す
る載置部10の上方に移動可能に設けられ、細胞および細胞を培養する培養液を収容する内部空間41を設けるように構成している。
【0051】
第1流路部61は、内部空間41に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間41から側方に吐出可能に構成している。第2流路部62は、第1流路部61よりも重力方向における下方に設けられ、内部空間41に収容された細胞および培養液の少なくともいずれかを内部空間41から側方に吐出可能に構成している。
【0052】
第3流路部63は、第1流路部61と第2流路部62の流路における先端側において第1流路部61からの流体と第2流路部62からの流体が合流する合流箇所S1を含むように構成している。
【0053】
培養液に混合した細胞をシリンジのような筒状部材から吐出する場合、吐出して間もなくは培養液に細胞が比較的均一に分散して存在するものの、吐出を繰り返すことによって時間が経過して培養液の中で細胞の沈降が進行する。これにより、吐出した初期の時点では培養液に細胞が含まれるものの、時間の経過によって吐出した培養液に細胞が含まれなくなる虞がある。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る細胞分注装置100は、第1流路部61だけでなく第2流路部62が第1流路部61に対して重力方向における下方に位置するように構成している。そのため、時間の経過とともに細胞が培養液の中で沈降していったとしても、沈降した細胞を第2流路部62から外部に吐出することができる。
【0055】
これにより、細胞分注装置100によって分注する際に、分注を繰り返すことによって、分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制することができる。
【0056】
また、第3流路部63は、重力方向に沿って延在するように構成している。このように構成することによって、第1流路部61および第2流路部62を経た細胞が流路の途中で留まることなく、または留まることを抑制したうえで外部であるマイクロプレートP等に吐出することができる。
【0057】
また、細胞分注装置100は、内部空間41において水平方向に移動可能であって、移動によって内部空間41の容積を変化させる押し出し部80を備えるように構成している。このように構成することによって、筒状部材40の内部空間41に収容された培養液に含まれる細胞を内部空間41に留めずに、または留めることを抑制したうえで外部であるマイクロプレートP等に吐出することができる。
【0058】
また、細胞分注装置100は、収容部として内部空間41を構成する半閉空間を含む筒状部材40を備える。細胞分注装置100は、筒状部材40と接続され、第1流路部61、第2流路部62、および第3流路部63を構成する空洞形状を形成する接続部材60を有するように構成している。
【0059】
このように構成することによって、細胞分注装置を用いて細胞を分注する際に分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されることなく、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。図5図4の変形例を示す細胞分注装置100aにおいてマイクロプレートP等に細胞を分注する吐出システムを示す断面図である。
【0061】
上記では図4に示すように筒状部材40が底面を備えず、接続部材60と接続し、押し
出し部80の先端側を内部空間41に配置することによって、細胞および培養液の溶液を収容する閉空間が形成されると説明した。
【0062】
ただし、これに限定されず、流路部は筒形状の側面とともに筒形状の底面の少なくとも一部を構成する筒状部材40aを備え、筒状部材40aに第1流路部、第2流路部、および第3流路部を形成する配管部材60aを取り付けるように構成してもよい。
【0063】
配管部材60aは、第1流路部、第2流路部、および第3流路部を形成できれば、具体的な構成は特に限定されないが、一例として第1側方部61a、第2側方部62a、および縦部63aを含むことができる。
【0064】
配管部材60aは、篏合等によって筒状部材40aから突出した中空の筒形状に取り付け可能に構成している。第1側方部61aは、第1流路部を構成し、筒状部材40aの底面部から設置状態において側方に延在するように構成している。
【0065】
第2側方部62aは第2流路部を構成し、第1側方部61aと同様に筒状部材40aの底面部から突出した中空の筒形状に取り付けられ、設置状態において側方に延在するように構成している。縦部63aは第1流路部と第2流路部と連通する第3流路部を構成し、第1側方部61aと第2側方部62aからの流体が合流する合流箇所S2を備え、第1側方部61aから第2側方部62aを越えて下方に延在するように構成している。
【0066】
このように構成することによっても、細胞分注装置100aを用いて細胞を分注する際に分注を繰り返すにつれて分注される溶液中に含まれる細胞数の経時的な減少を抑制することができる。
【0067】
また、細胞分注装置を構成する制御部の記憶部には操作部の操作によって筒状部材に対して押し出し部のプランジャ部を一定量移動させるプログラムが予め記憶されていると説明した。ただし、溶液に含まれる細胞数が分注を繰り返すことによって経時的に減少することを抑制できれば、押し出し部のプランジャ部の押し出し量を調整する具体的態様は上記に限定されない。
【0068】
上記以外にも押し出し部の押し出し量は、カメラなどで筒状部材の内部空間を撮像し、撮像した画像を解析して内部空間における細胞の分布を確認(測定)したうえで調整するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 載置部、
20 移動部、
30 設置部、
40、40a 筒状部材(吐出システム)、
50 流路部(吐出システム)、
60 接続部材(吐出システム)、
60a 配管部材(吐出システム)、
61 第1流路部、
61a 第1側方部(第1流路部)、
62 第2流路部、
62a 第2側方部(第2流路部)、
63 第3流路部、
63a 縦部(第3流路部)、
70 ニードル(吐出システム)、
80 押し出し部(吐出システム)、
100 細胞分注装置、
P マイクロプレート(プレート部)、
S1、S2 合流箇所。

図1
図2
図3
図4
図5