(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125763
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】分析装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220822BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/38 110
H02J3/38 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023539
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA01
5G066AA09
5G066AD04
5G066AE09
5G066HB02
5G066HB03
(57)【要約】
【課題】各方式を採用する分散形電源の接続状況を分析する分析装置、および、プログラムを提供する。
【解決手段】分析装置A1において、配電系統Cの系統周波数を検出する周波数検出部11と、周波数検出部11が検出した系統周波数fを記憶部3に記録させる記録制御部14と、系統周波数fの変化率Δfを算出する変化率算出部12と、変化率Δfが変化したタイミングを変化点として検出する変化点検出部13と、変化点検出部13が検出した複数の変化点の間で記録された系統周波数fに基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源B1および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源B2の配電系統Cでの接続状況を分析する分析部16とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統に関する電気的な特性を検出する検出部と、
前記検出部が検出した検出値を記憶部に記録させる記録制御部と、
前記検出値の変化率を算出する変化率算出部と、
前記変化率が変化したタイミングを変化点として検出する変化点検出部と、
前記変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された検出値に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の前記配電系統での接続状況を分析する分析部と、
を備える分析装置。
【請求項2】
前記変化点検出部は、第1の変化点と、その後の第2の変化点と、さらにその後の第3の変化点とを検出し、
前記分析部は、前記第1の変化点と前記第2の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記配電系統全体の合計容量に対する前記新型電源の合計容量の割合である新型割合を推定し、前記第2の変化点と前記第3の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記配電系統全体の合計容量に対する前記従来型電源の合計容量の割合である従来型割合を推定する、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記変化点検出部が前記第3の変化点を検出しなかった場合は、
前記分析部は、前記第1の変化点と前記第2の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記第2の変化点が所定時刻より前であれば前記新型割合を推定し、前記第2の変化点が前記所定時刻より後であれば前記従来型割合を推定する、
請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記配電系統の系統電圧の周波数を前記検出値として検出する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記検出値とは異なる第2検出値を検出する第2検出部と、
前記第2検出値を前記記憶部に記録させる第2記録制御部と、
前記第2検出値の変化率を算出する第2変化率算出部と、
前記第2検出値の変化率が変化したタイミングを変化点として検出する第2変化点検出部と、
前記第2変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された第2検出値に基づいて、前記配電系統での前記従来型電源および前記新型電源の接続状況を分析する第2分析部と、
を備え、
前記分析部の分析結果と前記第2分析部の分析結果とに基づいて、分析を行う、
請求項1ないし4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
コンピュータを、
配電系統に関する電気的な特性を検出する検出部と、
前記検出部が検出した検出値を記憶部に記録させる記録制御部と、
前記検出値の変化率を算出する変化率算出部と、
前記変化率が変化したタイミングを変化点として検出する変化点検出部と、
前記変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された検出値に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の前記配電系統での接続状況を分析する分析部と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、分散形電源のパワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、0.5秒以上1秒以内(低圧配電線との連系の場合)にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、パワーコンディショナを配電系統から瞬時に切り離すように定められており、一般的には、0.1秒以上0.2秒以内に切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を代表とする能動信号を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを用いた場合でも、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-93020号公報
【特許文献2】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統か否かは、各方式を採用する分散形電源の接続状況を把握することで確認できる。しかしながら、このような接続状況を把握する方法は、従来提案されていなかった。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、各方式を採用する分散形電源の接続状況を分析する分析装置、および、プログラムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される分析装置は、配電系統に関する電気的な特性を検出する検出部と、前記検出部が検出した検出値を記憶部に記録させる記録制御部と、前記検出値の変化率を算出する変化率算出部と、前記変化率が変化したタイミングを変化点として検出する変化点検出部と、前記変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された検出値に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の前記配電系統での接続状況を分析する分析部とを備える。
【0010】
なお、「電気的な特性」には、電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、および周波数などが含まれる。また、所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数なども含まれる。また、「検出部が検出した検出値」には、電圧、電流、電力、および周波数などの大きさだけでなく、偏差(基準からの変化量)および変化率なども含まれる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記変化点検出部は、第1の変化点と、その後の第2の変化点と、さらにその後の第3の変化点とを検出し、前記分析部は、前記第1の変化点と前記第2の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記配電系統全体の合計容量に対する前記新型電源の合計容量の割合である新型割合を推定し、前記第2の変化点と前記第3の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記配電系統全体の合計容量に対する前記従来型電源の合計容量の割合である従来型割合を推定する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記変化点検出部が前記第3の変化点を検出しなかった場合は、前記分析部は、前記第1の変化点と前記第2の変化点との間で記録された検出値に基づいて、前記第2の変化点が所定時刻より前であれば前記新型割合を推定し、前記第2の変化点が前記所定時刻より後であれば前記従来型割合を推定する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記配電系統の系統電圧の周波数を前記検出値として検出する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出値とは異なる第2検出値を検出する第2検出部と、前記第2検出値を前記記憶部に記録させる第2記録制御部と、前記第2検出値の変化率を算出する第2変化率算出部と、前記第2検出値の変化率が変化したタイミングを変化点として検出する第2変化点検出部と、前記第2変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された第2検出値に基づいて、前記配電系統での前記従来型電源および前記新型電源の接続状況を分析する第2分析部とを備え、前記分析部の分析結果と前記第2分析部の分析結果とに基づいて、分析を行う、前記記憶部は、さらに前記第2検出値を記録する。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供されるプログラムは、コンピュータを、配電系統に関する電気的な特性を検出する検出部と、前記検出部が検出した検出値を記憶部に記録させる記録制御部と、前記検出値の変化率を算出する変化率算出部と、前記変化率が変化したタイミングを変化点として検出する変化点検出部と、前記変化点検出部が検出した複数の変化点の間で記録された検出値に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の前記配電系統での接続状況を分析する分析部として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、変化点検出部は、検出値の変化率が変化したタイミングを変化点として検出する。そして、分析部は、複数の変化点の間で記録された検出値に基づいて、前記配電系統での従来型電源および新型電源の接続状況を分析する。これにより、分析された従来型電源および新型電源の接続状況に基づいて、電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統であるか否かの判断が可能である。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る分析装置を説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す配電系統が停電状態になって、各パワーコンディショナが単独運転状態になったときの、系統周波数の変化を示すタイムチャートである。
【
図3】
図1に示す配電系統Cが停電状態になって、各パワーコンディショナが単独運転状態になったときの、系統周波数の変化を示すタイムチャートである。
【
図4】制御部1が行う分析処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【
図5】第2実施形態に係る分析装置を説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る分析装置A1を説明するためのブロック図であり、配電系統Cの全体構成を示している。
【0021】
配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷L、従来型電源B1、新型電源B2、および電圧センサ9が接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。従来型電源B1は、従来型能動的方式のうち検出のために無効電力を注入するタイプの単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。無効電力を注入する従来型能動的方式には、例えば、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式などがある。従来型電源B1は、周波数変動に対して正帰還で周波数をシフトさせるように無効電力を注入する。なお、従来型電源B1の単独運転検出装置の検出方式は限定されない。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続されている。なお、
図1においては、負荷Lは、代表して1個だけ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続している各パワーコンディショナが単独運転状態になる。
【0022】
電圧センサ9は、配電系統Cの電圧を検出し、検出した電圧信号を分析装置A1に入力する。なお、電圧センサ9の配置位置は限定されない。また、電圧センサ9は、分析装置A1の専用でなくてもよく、いずれかの従来型電源B1または新型電源B2のパワーコンディショナの制御用の電圧センサを利用してもよいし、配電系統Cに接続されたその他の電力機器の電圧センサを利用してもよい。
【0023】
分析装置A1は、停電が発生したときに、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。具体的には、分析装置A1は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて配電系統Cの電圧の周波数(以下では、「系統周波数」とする)を検出し、停電が発生したときの系統周波数の変化に基づいて、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。
【0024】
停電が発生した場合、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させて系統周波数を変化させ、検出した系統周波数が閾値を超えた場合に単独運転を検出する。分析装置A1は、このときの系統周波数の変化に基づいて、従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。従来型電源B1の単独運転検出装置と新型電源B2の単独運転検出装置とでは、系統連系規程で定められている停電発生から切り離しまでの期限が異なる。したがって、従来型電源B1および新型電源B2が、それぞれ、配電系統Cにどれだけ接続されているかによって、系統周波数の変化は異なる。
【0025】
図2および
図3は、
図1に示す配電系統Cが停電状態になって、各パワーコンディショナが単独運転状態になったときの、系統周波数の変化を示すタイムチャートである。各図の横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、各図の縦軸は系統周波数を示している。なお、本明細書で参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0026】
図2(a)は、配電系統C全体の合計容量に対する従来型電源B1の合計容量の割合(以下では、「従来型割合」とする)、および、配電系統C全体の合計容量に対する新型電源B2の合計容量の割合(以下では、「新型割合」とする)がともに大きい場合を示している。配電系統C全体の合計容量には、従来型電源B1の合計容量、新型電源B2の合計容量、および、その他の電源の合計容量が含まれる。その他の電源には、例えば、周波数変動に対して正帰還で周波数をシフトさせるように無効電力を注入する方式ではない従来型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源、および、発電機などが含まれる。
【0027】
停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇または下降させる。
図2(a)では、系統周波数が上昇した場合を示している。なお、
図2(b)~(d)および
図3(a)、(b)の各図でも、系統周波数が上昇する場合を示す。新型電源B2は、一般的に、停電から0.1秒以上0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、停電発生から無効電力が急速に注入され、系統周波数は急速に上昇する。よって、
図2(a)に示すように、系統周波数は、停電発生(点a参照)から急速に上昇している。また、新型電源B2は、0.2秒以内に単独運転を検出して、無効電力の注入を停止するので、このとき、系統周波数の変化率(
図2における波形の傾きに相当)は減少する。ただし、従来型電源B1は無効電力の注入を継続しているので、変化率の減少幅は限定的である。したがって、
図2(a)に示すように、系統周波数は、経過時間が時間T1から時間T2までの間(点b参照)で、変化率が減少している。本実施形態では、時間T1が0.1秒であり、時間T2が0.2秒であるが、時間T1および時間T2は限定されない。そして、従来型電源B1は、1秒以内に単独運転を検出して、無効電力の注入を停止するので、このときも、系統周波数の変化率は減少する。そして、すべての従来型電源B1が無効電力の注入を停止して、配電系統Cに電力が供給されなくなると、配電系統Cの電圧が検出されなくなるので、系統周波数も検出されなくなる。したがって、
図2(a)に実線で示すように、系統周波数は、経過時間が時間T3から時間T4までの間(点c参照)で、下降に転じて、その後検出されなくなる。なお、
図2(a)に破線で示すように、系統周波数の変化は様々で、点cから下降するのではなく上昇を継続する場合もある。しかし、いずれかの従来型電源B1が無効電力の注入を停止したことで、系統周波数の変化率は減少する。本実施形態では、時間T3が0.5秒であり、時間T4が1秒であるが、時間T3および時間T4は限定されない。そして、1秒までに、すべての従来型電源B1が無効電力の注入を停止して、系統周波数が検出されなくなる。
【0028】
図2(b)は、従来型割合が小さく、新型割合が大きい場合を示している。
図2(b)に示すように、この場合の系統周波数は、
図2(a)の場合と同様に、停電発生(点a)から急速に上昇しており、点bまでの変化率が大きい。一方、点bで変化率が減少した後、点cで変化率が減少するまでの変化率は、
図2(a)の場合と比較して小さい。
【0029】
図2(c)は、従来型割合が大きく、新型割合が小さい場合を示している。
図2(c)に示すように、この場合の系統周波数は、停電発生(点a)から急速に上昇しているが、点bまでの変化率が、
図2(a)の場合と比較して小さい。一方、点bで変化率が減少した後、点cで変化率が減少するまでの変化率は、
図2(a)の場合と同程度である。
【0030】
図2(d)は、従来型割合および新型割合がともに小さい場合を示している。
図2(d)に示すように、この場合の系統周波数は、停電発生(点a)から急速に上昇しているが、点bまでの変化率が、
図2(a)の場合と比較して小さい。また、点bで変化率が減少した後、点cで変化率が減少するまでの変化率も、
図2(a)の場合と比較して小さい。
【0031】
図2(a)~(d)から分かるように、新型割合が大きい場合に、点aと点bとの間の変化率が大きくなる。また、従来型割合が大きい場合に、点bと点cとの間の変化率が大きくなる。したがって、停電が発生して、単独運転状態が発生した時に、点a(停電発生による系統周波数の変化点)と点b(新型電源B2の停止による系統周波数の変化率の変化点)との間の変化率、すなわち、主に新型電源B2の無効電力注入による系統周波数の変化率に基づいて、新型割合を推定できる。また、点bと点c(従来型電源B1の停止による系統周波数の変化率の変化点)との間の変化率、すなわち、従来型電源B1の無効電力注入による系統周波数の変化率に基づいて、従来型割合を推定できる。
【0032】
図3(a)は、配電系統Cに、従来型電源B1が接続されておらず、新型電源B2だけが接続されている場合を示している。
図3(a)に示すように、この場合の系統周波数は、
図2(a)の場合と同様に、停電発生(点a)から変化率が変化する変化点(点b)まで、急速に上昇している。しかし、従来型電源B1が接続されていないので、点bで変化率が大幅に減少する。そして、すべての新型電源B2が無効電力の注入を停止して、配電系統Cに電力が供給されなくなると、配電系統Cの電圧が検出されなくなるので、系統周波数も検出されなくなる。この場合、
図2(a)~(d)に示す点cの変化点は検出されない。また、この場合も、点aと点bとの間の変化率に基づいて、新型割合を推定できる。
【0033】
図3(b)は、配電系統Cに、新型電源B2が接続されておらず、従来型電源B1だけが接続されている場合を示している。
図3(b)に示すように、この場合の系統周波数も、停電発生(点a)から急速に上昇している。しかし、新型電源B2が接続されていないので、変化率が、
図2(a)~(d)および
図3(a)の場合と比較して小さく、
図2(a)の点bと点cとの間の変化率と同程度である。そして、時刻T1と時刻T2との間で変化率は変化せず、
図2(a)~(d)に示す点bの変化点は検出されない。一方、時刻T3と時刻T4との間(点c)で、従来型電源B1が無効電力の注入を停止するので、変化率が変化する。そして、すべての従来型電源B1が無効電力の注入を停止して、配電系統Cに電力が供給されなくなると、配電系統Cの電圧が検出されなくなるので、系統周波数も検出されなくなる。この場合、点aと点cとの間の変化率に基づいて、従来型割合を推定できる。
【0034】
分析装置A1は、制御部1、入力部2、記憶部3、および表示部4を備えている。
【0035】
入力部2は、入力ポートによって実現されており、電圧センサ9が検出した電圧信号を受け付け、デジタル信号に変換して、制御部1に出力する。
【0036】
記憶部3は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどのメモリによって実現されており、各種プログラムおよびデータがあらかじめ記憶されている。なお、記憶部3に記憶された各種プログラムおよびデータは、読み取り可能な記憶媒体に記憶された各種プログラムおよびデータを読み出して記憶したものであってもよいし、通信回線を介して外部のコンピュータからダウンロードして記憶したものであってもよい。また、記憶部3は、制御部1が算出した系統周波数を記録する。
【0037】
表示部4は、ディスプレイを備えており、制御部1から入力される分析結果を、当該ディスプレイに表示する。
【0038】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)などによって実現されており、分析装置A1の制御を行う。制御部1は、記憶部3に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、制御処理を行う。本実施形態では、制御部1は、制御プログラムに応じた演算処理を行って、入力部2から入力される電圧信号に基づいて系統周波数を算出し、記憶部3への系統周波数の記録および読み出しを行い、分析結果を表示部4に表示させる。制御部1は、機能構成として、周波数検出部11、変化率算出部12、変化点検出部13、記録制御部14、停電判定部15、および分析部16を備えている。
【0039】
周波数検出部11は、配電系統Cの系統周波数fを検出する。周波数検出部11は、入力部2から入力される電圧信号に基づいて、周波数を検出する。周波数検出部11は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部11の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部11は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。なお、本実施形態では、周波数検出部11は、微細な変動や検出誤差を排除するために、検出した周波数の所定時間の平均値を算出し、算出した平均値を系統周波数fとして出力する。周波数検出部11は、検出した系統周波数fを、変化率算出部12に出力する。周波数検出部11が本発明の「検出部」に相当し、系統周波数fが本発明の「検出値」に相当する。
【0040】
変化率算出部12は、周波数検出部11が検出した系統周波数fに基づいて、系統周波数の変化率Δfを算出する。変化率Δfは、系統周波数fの単位時間当たりの変化量である。周波数検出部11が検出した系統周波数fは、記憶部3に所定時間分記憶されており、変化率算出部12は、記憶されている所定時間分の系統周波数fに基づいて変化率Δfを算出する。なお、変化率Δfの算出方法は限定されない。
【0041】
変化点検出部13は、変化率Δfが変化したことを検出し、その変化のタイミングを変化点として検出する。変化点検出部13は、変化率算出部12から入力される変化率Δfを閾値と比較し、変化率Δfが閾値を超えたときに変化率Δfが変化したと判断する。変化点検出部13は、
図2に示す点a、点b、および点cを検出するための機能構成である。変化率Δfと比較される閾値は、いずれの変化点を検出するかにより異なり、また、直前の変化率Δfによっても異なる。変化率Δfは、例えば、直前の変化率Δfである変化率Δfxを中心として設定された範囲(Δfx-Δx≦Δf≦Δfx+Δx)を超えたときに、変化したと判断される。Δxは、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて、適切な値が設定される。なお、変化率Δfの変化を判断する方法は限定されない。停電発生前は系統周波数fは一定であるので、変化率Δfは、ほぼ「0」である。したがって、停電発生(
図2における点a)の検出は、停電発生識別のための閾値Δf
0に基づいて、変化率Δfが範囲(-Δf
0≦Δf≦Δf
0)を超えたか否かで判断される。変化点検出部13は、変化率ΔfがΔf
0より大きくなったか、または、-Δf
0より小さくなった場合に、停電が発生して変化率Δfが変化したと判断する。Δf
0は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて、適切な値が設定される。なお、変化点検出部13は、系統周波数fが、基準値f
0(例えば50Hzまたは60Hz)を中心として設定された範囲(f
0-f
1≦f≦f
0+f
1)を超えたときに、停電が発生して系統周波数fが変化を開始した(変化率Δfが変化した)と判断してもよい。f
1は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて、適切な値が設定される。
【0042】
記録制御部14は、変化点検出部13での変化の検出に応じて、記憶部3への系統周波数fの記録を制御する。具体的には、記録制御部14は、停電発生による系統周波数fの変化点(
図2に示す点a)を検出したときに、系統周波数fの記録を開始する。また、記録制御部14は、新型電源B2の停止による系統周波数の変化率Δfの変化点(
図2に示す点b)を検出したときに、系統周波数fの記録を一旦終了し、記憶領域を変更して、系統周波数fの記録を再開する。また、記録制御部14は、従来型電源B1の停止による系統周波数の変化率Δfの変化点(
図2に示す点c)を検出したときに、系統周波数fの記録を終了する。これにより、点aから点bまでの間の系統周波数fと、点bから点cまでの間の系統周波数fとが区別されて、記憶部3に記録される。
【0043】
停電判定部15は、実際に停電が発生したか否かを判定する。停電判定部15は、入力部2から電圧信号が入力されなくなった場合に、停電が発生したと判定する。なお、停電判定部15は、他の方法で停電が発生したか否かを判定してもよい。停電判定部15が、停電が発生していないと判定した場合、変化点検出部13による停電発生(点a)の検出は誤検出であったと判断され、記録制御部14は、記憶部3に記録された系統周波数fのデータを消去する。一方、停電判定部15が、停電が発生したと判定した場合、記憶部3に記録された系統周波数fのデータを用いて、分析部16が分析を行う。
【0044】
分析部16は、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。分析部16は、記憶部3に記録された系統周波数fに基づいて、従来型割合および新型割合を推定する。より具体的には、分析部16は、点aから点bまでに記録された系統周波数fに基づいて新型割合を推定し、点bから点cまでに記録された系統周波数fに基づいて従来型割合を推定する。
【0045】
本実施形態では、分析部16は、点aから点bまでに記録された系統周波数fに基づいて、点aと点bとの間の変化率Δfabを算出する。分析部16は、例えば、点aおよび点bの周辺で記録されたものを除外した各系統周波数fから変化率を算出し、算出された複数の変化率の平均値を算出して変化率Δfabとする。点aおよび点bの周辺で記録された系統周波数fは、変化率の過渡状態での検出値なので、これを除外することで、定常状態になったときの変化率を算出できる。なお、変化率Δfabの算出方法は限定されない。分析部16は、算出した変化率Δfabに基づいて、新型割合を推定する。分析部16は、例えば、変化率Δfabにあらかじめ設定された係数を乗算することで、新型割合を推定する。係数は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて、適切な値が設定される。なお、新型割合の推定方法は限定されない。
【0046】
また、分析部16は、点bから点cまでに記録された系統周波数fに基づいて、点bと点cとの間の変化率Δfbcを算出する。分析部16は、例えば、点bおよび点cの周辺で記録されたものを除外した各系統周波数fから変化率を算出し、算出された複数の変化率の平均値を算出して変化率Δfbcとする。点bおよび点cの周辺で記録された系統周波数fは、変化率の過渡状態での検出値なので、これを除外することで、定常状態になったときの変化率を算出できる。なお、変化率Δfbcの算出方法は限定されない。分析部16は、算出した変化率Δfbcに基づいて、従来型割合を推定する。分析部16は、例えば、変化率Δfbcにあらかじめ設定された係数を乗算することで、従来型割合を推定する。係数は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて、適切な値が設定される。なお、従来型割合の推定方法は限定されない。
【0047】
なお、分析部16は、記憶部3に記録された系統周波数fから
図2のようなグラフを作成し、画像認識技術によって、当該グラフから新型割合および従来型割合を推定してもよい。分析部16は、推定した新型割合および従来型割合を、表示部4に表示させる。
【0048】
図4は、制御部1が行う分析処理を説明するためのフローチャートの一例である。分析処理は、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析するための処理であり、停電発生時に従来型割合および新型割合を推定する。分析処理は、分析装置A1が起動されたときに実行が開始される。
【0049】
まず、系統周波数fが取得される(S1)。具体的には、周波数検出部11が、入力部2から入力される電圧信号に基づいて、系統周波数fを検出する。次に、変化率Δfが算出される(S2)。具体的には、変化率算出部12が検出された系統周波数fに基づいて変化率Δfを算出する。次に、停電が発生したか否かが判別される(S3)。具体的には、変化点検出部13が、変化率Δfが範囲(-Δf
0≦Δf≦Δf
0)を超えたか否かを判別する。これは、
図2の点aの検出に相当する。変化率Δfが範囲(-Δf
0≦Δf≦Δf
0)内であり、停電が発生していないと判別された場合(S3:NO)、ステップS1に戻って、ステップS1~S3の処理が繰り返される。
【0050】
変化率Δfが範囲を超えて、Δf0<ΔfまたはΔf<-Δf0となり、停電が発生したと判別された場合(S3:YES)、回数をカウントするための変数Xが「0」であるか否かが判別される(S4)。変数Xは、分析処理の開始時に「0」に初期化されている。変数Xが「0」である場合(S4:YES)には、系統周波数fの記録が開始される(S5)。具体的には、記録制御部14が系統周波数fの記憶部3への記録を開始する。変数Xが「0」でない場合(S4:NO)には、すでに記録が開始されているので、ステップS5の処理は行われない。
【0051】
次に、変化率Δfの変化点が検出されたか否かが判別される(S6)。具体的には、変化点検出部13が、変化率Δfが
図2の点bを検出するための閾値を超えたか否かを判別する。変化率Δfの変化点が検出されない場合(S6:NO)、変数Xが1増加される(S7)。次に、変数Xが閾値X
1を超えたか否かが判別される(S8)。閾値X
1は、新型電源B2の単独運転検出装置の切り離し期限(
図2におけるT2であり、例えば0.2秒)が経過したか否かを判別するための値であり、切り離し期限に応じた数が設定されている。なお、変数Xを増加させて閾値と比較する代わりに、時間を計時して時間が経過したか否かを判別してもよい。変数Xが閾値X
1を超えていない場合(S8:NO)、ステップS1に戻って、ステップS1~S8の処理が繰り返される。
【0052】
ステップS6において、変化率Δfの変化点が検出された場合(S6:YES)、系統周波数fの記録が一旦終了されて、再開される(S9)。具体的には、記録制御部14が系統周波数fの記憶部3への記録を一旦終了し、記憶領域を変更して、系統周波数fの記録を再開して、ステップS10に進む。一方、ステップS8において、変数Xが閾値X1を超えた場合(S8:YES)、新型電源B2の単独運転検出装置の切り離し期限までに変化率Δfが変化しなかったので、新型電源B2が接続されていないと判断される。この場合、ステップS9の処理が行われず、すなわち、系統周波数fの記録が継続され、ステップS10に進む。次に、系統周波数fが取得され(S10)、変化率Δfが算出される(S11)。
【0053】
次に、変化率Δfの変化点が検出されたか否かが判別される(S12)。具体的には、変化点検出部13が、変化率Δfが
図2の点cを検出するための閾値を超えたか否かを判別する。変化率Δfの変化点が検出されない場合(S12:NO)、変数Xが1増加される(S13)。次に、変数Xが閾値X
2を超えたか否かが判別される(S14)。閾値X
2は、従来型電源B1の単独運転検出装置の切り離し期限(
図2におけるT4であり、例えば1秒)が経過したか否かを判別するための値であり、従来型電源B1の単独運転検出装置の切り離し期限までの時間に応じた数が設定される。変数Xが閾値X
2を超えていない場合(S14:NO)、ステップS11に戻って、ステップS10~S14の処理が繰り返される。
【0054】
ステップS12において、変化率Δfの変化点が検出された場合(S12:YES)、系統周波数fの記録が終了される(S15)。具体的には、記録制御部14が系統周波数fの記憶部3への記録を終了する。また、ステップS14において、変数Xが閾値X2を超えた場合(S14:YES)、従来型電源B1の単独運転検出装置の切り離し期限までに変化率Δfが変化しなかったので、従来型電源B1が接続されていないと判断される。この場合も、系統周波数fの記録が終了される(S15)。次に、実際に停電が発生したか否かが判定される(S16)。具体的には、停電判定部15が、実際に停電が発生したか否かを判定する。停電が発生した場合(S16:YES)、従来型割合および新型割合が推定され、従来型割合および新型割合が表示部4に表示されて(S17)、分析処理は終了する。具体的には、分析部16が、記憶部3に記録された系統周波数fに基づいて、従来型割合および新型割合を推定する。
【0055】
新型電源B2が接続されていない場合、
図3(b)に示すように、時刻T1と時刻T2との間では変化点が検出されないので、ステップS8で「YES」に進んで、系統周波数fの記録が終了されずに継続される。そして、ステップS12で変化率Δfの変化点(
図3(b)の点c参照)が検出されたときに(S13:YES)記録が終了される。つまり、点aが検出された後、次の変化点に相当する点cが検出されるのは、時刻T2より後である。この場合、ステップS17では、記録された系統周波数fに基づいて、従来型割合のみが推定される。一方、従来型電源B1が接続されていない場合でも、
図3(a)に示すように、時刻T1と時刻T2との間で変化点が検出されるので、ステップS6で変化率Δfの変化点(
図3(a)の点b参照)が検出されて「YES」に進み、系統周波数fの記録が一旦終了される。その後、系統周波数fの記録が再開され、時刻T3と時刻T4との間では変化点が検出されないので、ステップS14で「YES」に進んで、記録が終了される。つまり、点aが検出された後、次の変化点に相当する点bが検出されるのは、時刻T2より前である。この場合、ステップS17では、点bまでに記録された系統周波数fに基づいて、新型割合のみが推定される。本実施形態においては、時刻T2が、本発明の「所定時刻」に相当する。
【0056】
ステップS16において、停電が発生していない場合(S16:NO)、ステップS3での停電検出が誤検出だったので、記憶部3に記録された系統周波数fが消去され(S18)、変数Xが「0」に初期化されて(S19)、ステップS1に戻る。なお、
図4のフローチャートに示す処理は一例であって、制御部1が行う分析処理は上述したものに限定されない。
【0057】
なお、分析装置A1は、汎用的なコンピュータにプログラムをインストールしたものであってもよいし、専用の装置であってもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る分析装置A1の作用効果について説明する。
【0059】
本実施形態によると、変化点検出部13は、変化率Δfが変化したことを検出し、その変化のタイミングを変化点として検出する。そして、分析部16は、停電発生による系統周波数fの変化点(
図2に示す点a)から、新型電源B2の停止による系統周波数の変化率Δfの変化点(
図2に示す点b)までに記録された系統周波数fに基づいて、新型割合を推定する。また、分析部16は、点bから、従来型電源B1の停止による系統周波数の変化率Δfの変化点(
図2に示す点c)までに記録された系統周波数fに基づいて、従来型割合を推定する。これにより、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析できるので、配電系統Cが電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統であるか否かの判断が可能である。例えば、新型割合が大きい場合は、電圧フリッカ現象が発生しやすくなっているので、当該配電系統Cの管理者は、各単独運転検出装置が注入する無効電力を減少させるように調整するという対応を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態によると、変化点検出部13が3番目の変化点を検出できない場合、分析部16は、2番目の変化点が検出されたのが時刻T2より後である場合は、記録された系統周波数fに基づいて、従来型割合のみを推定する。また、分析部16は、2番目の変化点が検出されたのが時刻T2より前である場合は、記録された系統周波数fに基づいて、新型割合のみを推定する。これにより、分析部16は、配電系統Cに新型電源B2が接続されていない場合でも従来型割合を推定でき、配電系統Cに従来型電源B1が接続されていない場合でも新型割合を推定できる。
【0061】
また、本実施形態によると、分析装置A1は、配電系統Cの系統周波数fの変化率Δfに基づいて分析を行う。従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、単独運転を検出するために、周波数偏差に応じた無効電力を注入することで系統周波数fをより変化させる。したがって、従来型電源B1および新型電源B2の接続状況の分析に用いる電気的な特性として、系統周波数fは好適である。
【0062】
なお、本実施形態においては、分析装置A1は、周波数検出部11が検出した、配電系統Cの電圧の周波数である系統周波数fに基づいて、分析を行う場合について説明したが、これに限られない。分析装置A1は、配電系統Cの電流または電力の周波数を用いてもよい。また、分析装置A1は、配電系統Cの電圧、電流、および電力(有効電力、無効電力)などの電気的な特性に基づいて、分析を行ってもよい。また、分析装置A1は、3次、5次、7次などの所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数などに基づいて、分析を行ってもよい。また、分析装置A1は、検出された電圧、電流、電力、および周波数などの大きさを検出した検出値に限定されず、偏差(基準からの変化量)および変化率などを用いてもよい。
【0063】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る分析装置A2を説明するためのブロック図であり、配電系統Cの全体構成を示す図である。同図において、第1実施形態に係る分析装置A1(
図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る分析装置A2は、2種類の検出値を用いて分析を行う点で分析装置A1と異なる。
【0065】
分析装置A2の制御部1は、電圧検出部21、第2変化率算出部22、第2変化点検出部23、第2記録制御部24、および第2分析部26をさらに備えている。
【0066】
電圧検出部21は、配電系統Cの電圧実効値vを検出する。電圧検出部21は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。電圧検出部21は、検出した電圧実効値vを、第2変化率算出部22に出力する。本実施形態では、電圧検出部21が本発明の「第2検出部」に相当し、電圧実効値vが本発明の「第2の検出値」に相当する。なお、電圧検出部21は、電圧の最大値または平均値などを検出してもよい。
【0067】
第2変化率算出部22は、変化率算出部12と同様の機能構成であり、電圧検出部21が検出した電圧実効値vに基づいて、電圧実効値の変化率Δvを算出する。第2変化点検出部23は、変化点検出部13と同様の機能構成であり、変化率Δvが変化したことを検出し、その変化のタイミングを変化点として検出する。第2記録制御部24は、記録制御部14と同様の機能構成であり、第2変化点検出部23での変化の検出に応じて、記憶部3への電圧実効値vの記録を制御する。第2分析部26は、分析部16と同様の機能構成であり、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。
【0068】
制御部1は、分析部16による分析結果と、第2分析部26による分析結果とに基づいて、総合的な分析結果を決定し、表示部4に表示させる。例えば、制御部1は、分析部16が推測した新型割合と第2分析部26が推測した新型割合との平均値を算出して、算出した平均値を新型割合として出力する。また、制御部1は、分析部16が推測した従来型割合と第2分析部26が推測した従来型割合との平均値を算出して、算出した平均値を従来型割合として出力する。なお、制御部1による総合的な分析結果の算出方法は限定されない。
【0069】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によると、制御部1は、系統周波数fに基づく分析結果と、電圧実効値vに基づく分析結果とに基づいて、総合的な分析結果を決定できる。これにより、分析装置A2は、より信頼性の高い分析結果を出力できる。
【0070】
なお、本実施形態においては、制御部1が系統周波数fに基づく分析と電圧実効値vに基づく分析を行う場合について説明したが、これに限られない。制御部1は、他の電気的な特性に基づいて、分析を行ってもよい。また、制御部1は、3種類以上の電気的な特性に基づいて、分析を行ってもよい。
【0071】
本発明に係る分析装置およびプログラムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る分析装置およびプログラムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0072】
A1,A2:分析装置、11:周波数検出部、12:変化率算出部、13:変化点検出部、14:記録制御部、16:分析部、21:電圧検出部、22:第2変化率算出部、23:第2変化点検出部、24:第2記録制御部、26:第2分析部、B1:従来型電源、B2:新型電源、C:配電系統