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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125780
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220822BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220822BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220822BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220822BHJP
   H01G 11/00 20130101ALI20220822BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/13
H01M10/0566
H01M10/04 Z
H01G11/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023562
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
【テーマコード(参考)】
5E078
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB01
5E078BA07
5E078FA05
5E078FA25
5E078LA06
5H028AA05
5H028BB02
5H028BB04
5H028BB10
5H028CC11
5H028HH05
5H028HH09
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ03
5H029CJ13
5H029CJ16
5H029HJ03
5H029HJ15
5H050AA19
5H050BA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050GA03
5H050GA13
5H050GA18
5H050HA03
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】電極に占める活物質層の割合を低下させることなく、電極体への電解液の含侵速度が向上された二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、正極集電体52に正極活物質層54を備える正極シート50と、負極集電体62に負極活物質層64を備える負極シート60と、セパレータシート70と、を積層して電極体20を形成する形成工程S10と、電極体20を電池ケース30に収容し、電池ケース30に非水電解液10を注液して電池組立体を構築する構築工程S20と、電池組立体を充電する充電工程S30と、を含み、少なくとも構築工程S20以前において、正極活物質層54は積層方向Zにうねり形状を有し、うねりの溝深さは10μm以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の正極集電体に正極活物質層を備える正極シートと、長尺状の負極集電体に負極活物質層を備える負極シートと、長尺状のセパレータシートと、を積層して電極体を形成する形成工程と、
前記電極体を電池ケースに収容し、前記電池ケースに電解液を注液して電池組立体を構築する構築工程と、
前記電池組立体を充電する充電工程と、を含み、
少なくとも前記構築工程以前において、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくともいずれか一方は積層方向にうねり形状を有し、
前記うねりの溝深さは10μm以上である、二次電池の製造方法。
【請求項2】
充電された前記電池組立体を前記積層方向に所定の圧力で拘束し、前記うねりの溝深さを浅くする拘束工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記拘束工程において、前記所定の圧力は、前記うねり形状を有する前記正極活物質層および/または前記負極活物質層の表面を平坦にする圧力である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記うねりの溝深さは40μm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウムイオン二次電池等の二次電池では、初期充電の際に電解液(例えば非水電解液)の一部が分解され、負極活物質層の表面にその分解物を含む皮膜(即ち、Solid Electrolyte Interface膜、以下SEI膜とする。)が形成される。SEI膜は負極活物質層を保護する役割を果たすと共に、負極活物質層と非水電解液との界面を安定化し、電池の耐久性(例えばサイクル特性)を向上させ得る。
【0003】
正極シートと負極シートとセパレータシートとが積層された電極体を備える二次電池では、二次電池を作成する際に、電極体が収容された電池ケースに電解液を注液して電極体に電解液を含浸させる。ここで、二次電池の高容量化に伴って電極体が大型化し、電極体に電解液を含侵させるのに要する時間が長くなる傾向にある。
【0004】
電解液を電極体に含浸させることに関する従来技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、電極体に電解液を含侵させる時間を低減するために、電極体を構成する電極の活物質層にスリット状の空隙となる未塗布部を設けることが開示されている。また、特許文献2には、電解液の流路として負極活物質層と対面する部分に複数の溝が形成された負極集電銅箔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-35484号公報
【特許文献2】特開2014-212006号公報
【特許文献3】特開2016-58181号公報
【特許文献4】国際公開第2010/082257号
【特許文献5】国際公開第2010/082259号
【特許文献6】国際公開第2010/082260号
【特許文献7】特開2001-357836号公報
【特許文献8】特開2001-68085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、未塗布部が設けられることによって電極に占める活物質層の割合が低下してしまう。即ち、電極全体の空隙率が増加し、電極体の容量密度が低下してしまう。また、特許文献2では、集電体に溝を設けるため集電体の強度が低下してしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極に占める活物質層の割合を低下させることなく、電極体への電解液の含侵速度が向上された二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、長尺状の正極集電体に正極活物質層を備える正極シートと、長尺状の負極集電体に負極活物質層を備える負極シートと、長尺状のセパレータシートと、を積層して電極体を形成する形成工程と、前記電極体を電池ケースに収容し、前記電池ケースに電解液を注液して電池組立体を構築する構築工程と、前記電池組立体を充電する充電工程と、を含み、少なくとも前記構築工程以前において、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくともいずれか一方は積層方向にうねり形状を有し、前記うねりの溝深さは10μm以上である、二次電池の製造方法。
【0009】
上記構成では、構築工程において、正極活物質層および負極活物質層の少なくともいずれか一方は積層方向にうねり形状を有し、うねりの溝深さは10μm以上である。例えば、正極活物質層が上記うねり形状を有する場合、積層方向に関して正極シートの上方および下方にセパレータシートが配置されると、セパレータシートと正極活物質層とは接触するが、うねりの溝部分については、セパレータシートと接触しない。即ち、うねりの溝部分とセパレータシートとによって電解液が通過可能な流路が形成される。このため、注液された電解液はより速く正極活物質層の全体に含浸される。ここで、正極活物質層はうねり形状を有するが、正極集電体の単位面積当たりの正極活物質層の割合は全体に亘ってほぼ均一であり、十分な容量を確保することができる。
【0010】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、充電された前記電池組立体を前記積層方向に所定の圧力で拘束し、前記うねりの溝深さを浅くする拘束工程をさらに含む。例えば、正極活物質層が上記うねり形状を有する場合、拘束工程においてうねりの溝深さを浅くすることで、正極活物質層と負極活物資層との距離が均一化されて反応ムラを低減することができる。
【0011】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、前記拘束工程において、前記所定の圧力は、前記うねり形状を有する前記正極活物質層および/または前記負極活物質層の表面を平坦にする圧力である。うねり形状をなくすことにより、正極活物質層と負極活物資層との距離がより均一化されて反応ムラをより低減することができる。
【0012】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、前記うねりの溝深さは40μm以上である。これにより、電極体により速く電解液を含侵させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るリチウムイオン二次電の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の断面図である。
図3】一実施形態に係る構築工程以前の電極体の状態を示す断面図である。
図4A】一実施形態に係る正極シートの平面図である。
図4B】他の一実施形態に係る正極シートの平面図である。
図4C】他の一実施形態に係る正極シートの平面図である。
図5】一実施形態に係る拘束工程後の電極体の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。以下、二次電池の製造方法の一例としてリチウムイオン二次電池の製造方法を例に、本技術について説明する。なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(二次電池)100(図2参照)の製造方法は、電極体20を形成する形成工程S10と、電池組立体を構築する構築工程S20と、電池組立体を充電する充電工程S30と、電池組立体を拘束する拘束工程S40と、を含む。
【0017】
まず、形成工程S10について説明する。形成工程S10では、図3に示すように、正極シート50と、負極シート60と、セパレータシート70と、を積層して電極体20を形成する。
【0018】
図3に示すように、電極体20は、長尺状の正極シート50と、長尺状のセパレータシート70と、長尺状の負極シート60とが積層されている。本実施形態の電極体20は、捲回されている。詳細には、正極シート50は、長尺状の正極集電体52と、正極集電体52の片面または両面(本実施形態では両面)に、長手方向Lに沿って形成された正極活物質層54と、を含む。負極シート60は、長尺状の負極集電体62と、負極集電体62の片面または両面(本実施形態では両面)に、長手方向Lに沿って形成された負極活物質層64と、を含む。露出部52A,62Aは、電極体20の捲回軸の方向の両端部の各々に位置する。露出部52Aは、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分である。また、露出部62Aは、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分である。なお、電極体20は、捲回電極体でなく、正極、負極、およびセパレータが積層された積層電極体であってもよい。
【0019】
正極シート50および負極シート60には、従来のリチウムイオン二次電池に用いられているものと同様のものを特に制限なく使用することができる。典型的な一態様を以下に示す。
【0020】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0021】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64に含まれる負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。なかでも、黒鉛が好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であっても人工黒鉛であってもよく、非晶質炭素材料で被覆されていてもよい。負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0022】
セパレータシート70としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の多孔性シート(フィルム)が好適に使用され得る。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータシート70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0023】
図3に示すように、本実施形態の正極シート50は、積層方向Zにうねり形状を有する。より詳細には、正極シート50の正極集電体52および正極活物質層54は、積層方向Zにうねり形状を有する。うねりの溝深さhは、10μm以上である。うねりの溝深さhは、好ましくは例えば40μm以上100μm以下である。うねり形状は、例えば、上下にそれぞれ設けられたプレスローラの間に正極シート50を通し、下側のプレスローラを上方に持ち上げて加圧することによって形成される。うねりの溝深さhは、例えばレーザ変位計によってうねり形状を測定したときの表面の凹部と凸部との差が最大となる値である。うねりの溝間隔Pは、例えば、5mm以上10mm以下である。うねりの溝間隔Pは、例えばレーザ変位計によってうねり形状を測定したときの表面の凸部と凸部との間隔が最大となる値である。うねり形状を有する正極活物質層54は、長手方向Lに沿ってその厚み(積層方向Zの高さ)が凡そ一定である。図4Aに示すように、本実施形態の正極シート50では、うねり形状の凸部55は正極活物質層54の短手方向S(即ち長手方向Lと直交する方向)と平行に形成されている。なお、図4Bに示すように、うねり形状の凸部55は正極活物質層54の長手方向Lと平行に形成されていてもよいし、図4Cに示すように、うねり形状の凸部55は正極活物質層54の長手方向Lおよび短手方向Sに対して傾斜するように形成されていてもよい。なお、凸部55の延びる方向は、1つの正極シート50において複数あってもよい(即ち図4A図4Cの複合タイプ)。図3に示すように、正極シート50が上記うねり形状を有するため、正極シート50とセパレータシート70とが積層された状態において、正極活物質層54とセパレータシート70との間には電解液(非水電解液10)が流通可能な流路80が形成されている。なお、本実施形態では、上記うねり形状は、少なくとも構築工程S20以前(即ち少なくとも形成工程S10および構築工程S20)において存在する。
【0024】
次に、構築工程S20について説明する。構築工程S20では、電極体20を電池ケース30に収容し、電池ケース30に非水電解液10を注液して電池組立体を構築する。
【0025】
図2に示すように、電池ケース30の形状は、扁平な角形である。電池ケース30は、一側面に開口部30Hを有する箱型の本体31と、該本体31の開口部30Hを塞ぐ板状の蓋体32とを備える。電池ケース30の蓋体32には、外部接続用の正極外部端子42および負極外部端子44と、安全弁36とが設けられている。安全弁36は、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に、該内圧を開放する。また、電池ケース30の蓋体32には、非水電解液10を電池ケース30の内部に注入するための注液孔37が設けられている。電池ケース30の材質は、軽量で熱伝導性が良い材質が望ましい。一例として、本実施形態の電池ケース30の材質には、熱伝導性が高く且つ適度な剛性を有するアルミニウムが用いられている。しかし、電池ケース30の構成を変更することも可能である。例えば、電池ケース30として、可撓性を有するラミネートが用いられてもよい。
【0026】
構築工程S20では、図2に示すように、正極集電端子43は、正極集電体52の露出部52Aに接合される。正極集電端子43には、正極外部端子42が電気的に接続される。負極集電端子45は、負極集電体62の露出部62Aに接合される。負極集電端子45には、負極外部端子44が電気的に接続される。非水電解液10は、電池ケース30の蓋体32に形成された注液孔37を介して電池ケース30の内部(即ち本体31)に注液される。ここで、図3に示すように、電池ケース30に非水電解液10を注液するときには、正極シート50の正極活物質層54とセパレータシート70との間には非水電解液10が流通可能な流路80が形成されている。このため、注液された非水電解液10は、流路80を流れ、電極体20の全体に素早く含浸される。電池ケース30に非水電解液10が注液されると、注液孔37に封止部材38(図2参照)を溶接することにより注液孔37が封止される。これにより、電池組立体が構築される。非水電解液10は、通常、有機溶媒(非水溶媒)および支持塩含有する。
【0027】
非水溶媒は、リチウムイオン二次電池用電解液の非水溶媒として用いられている公知のものを使用することができ、その具体例としては、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられる。なかでも、カーボネート類が好ましい。カーボネート類(カーボネート系溶媒)の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。非水溶媒は、支持塩(電解質)を溶解する。
【0028】
支持塩は、主たる電解質として用いられ、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩が好適に用いられる。かかる支持塩の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されない。例えば、支持塩としてLiPFを用いる場合、LiPFのモル含有量は、0.5mol/L~3.0mol/L(好ましくは0.5mol/L~1.5mol/L、例えば1mol/L)に調整される。このように非水電解液中のLiPFの含有量を調整することによって、非水電解液中の総イオン含有量と電解液の粘性を適度なバランスにすることができるため、イオン伝導度を過度に低下させることなく、入出力特性を向上させることができる。
【0029】
次に、充電工程S30について説明する。充電工程S30では、電池組立体を充電する。充電工程S30では、電池組立体をSOCが100%になるまで充電する。充電工程S30では、電池組立体を例えば3.7Vから4.2Vになるまで充電する。
【0030】
次に、拘束工程S40について説明する。拘束工程S40では、充電された電池組立体を積層方向Zに所定の圧力で拘束する。これにより、正極シート50のうねりの溝深さh(図3参照)が浅くなる(例えば10μmより小さくなる)。好ましくは、上記所定の圧力は、うねり形状を有する正極活物質層54の表面を平坦にする圧力である。これにより、図5に示すように、正極シート50のうねりの溝深さhが実質的にゼロになり、正極活物質層54の表面が平坦になる。即ち正極活物質層54の全体に亘って正極活物質層54とセパレータシート70とが接触して非水電解液10が流通可能な流路80が消滅する。なお、電池組立体の拘束は、それぞれ単独で行ってもよいし、複数の電池組立体を積層方向に配列した状態で一括して拘束(即ちモジュール化)してもよい。
【0031】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0032】
本実施形態では、以下の手順に従って正極シートを作製した。まず、正極活物質としてのLiFePOと、導電材としてのABと、バインダとしてのPVdFとを、91:8:2の質量比で秤量し、NMPと混合・混練することで、正極用ペーストを調製した。このペーストを、正極集電体としての長尺状のアルミニウム合金箔(厚さ12μm)の表面に、片面当たりの目付け量が20mg/cmとなるように塗工幅230mmで両面に供給し、乾燥することにより、正極活物質層を備える正極シートを作製した。この正極シートを、上下にそれぞれ設けられたローラ径300mmのプレスローラの間に搬送速度2m/minで通し、下側のプレスローラを上方に持ち上げて加圧することによって、正極シートにうねり形状を形成した。下側のプレスローラが正極シートに加える圧力を適宜変更することによってうねりの溝深さを異ならせ、かつ、下側のプレスローラを上方に持ち上げるタイミングを適宜変更することによってうねりの溝間隔を異ならせて、複数の正極シート(例2~例6)を準備した。ここでは、うねり形状の凸部は正極シートの長手方向Lと平行になるように形成されている(図4B参照)。なお、例1に係る正極シートは、うねり形状のない平坦な正極活物質層を備える正極シートである。そして、これらの正極シートを幅50mm、長さ100mmに切り出して、1対のガラス板で挟み込んだ。そして、非水電解液としてのエチレンカーボネートにガラス板で挟み込まれた各正極シートの一端を浸し、浸し始めてから非水電解液が各正極シートの他端に到達するまでの時間(即ち注液時間)を測定した。測定結果を表1に示す。なお、表1の「注液時の拘束力」および「モジュール時の拘束力」において、「〇」はうねり形状をなくして正極活物質層の表面を平坦にする拘束力[MPa]が加わっていることを表し、「×」は当該拘束力が加わっていないことを表す。また、「注液時間」は例1に係る正極シートを基準としたときの割合で示す。また、「膨張率」はモジュール時の正極シートの厚みを測定し、正極集電体と正極活物質層との積算厚みと、実測値とのずれ率をうねり形状による膨張率とした。
【0033】
【表1】
【0034】
上述の表1に示すように、例2~例5の正極シートでは、注液時間が0.4以下となり非常に速く非水電解液が正極シート内を移動していた。即ち、非水電解液の含浸速度が速かった。なお、例6の正極シートでは、うねり形状が形成されているが注液時に拘束されていることにより、うねり形状が平坦化されてしまった結果、注液時間が1となった。以上より、注液時においてうねり形状が形成されていることにより、含浸速度が速くなることが確認された。また、うねりの溝深さhが40μm以上の場合には、注液時間が0.3となり、含浸速度がより速いことが確認された。なお、例5の正極シートでは、モジュール時に拘束されておらず膨張率が1.2となっていることから、注液時には正極活物質層に非水電解液が流通可能な流路が形成されていることが確認された。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定
するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、
変更したものが含まれる。
【0036】
上述した実施形態では、正極シート50のみが積層方向Zにうねり形状を有していたが、負極シート60も同様に積層方向Zにうねり形状を有していてもよい。即ち、負極シート60の負極集電体62および負極活物質層64は、積層方向Zにうねり形状を有していてもよい。あるいは、負極シート60のみが積層方向Zにうねり形状を有していてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、充電工程S30において、正極シート50がうねり形状を有した状態で電池組立体の充電が行われているが、電池組立体を積層方向Zに所定の圧力で拘束して、正極シート50のうねり形状を無くした後に充電を行ってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 非水電解液
20 電極体
30 電池ケース
50 正極シート
52 正極集電体
54 正極活物質層
60 負極シート
62 負極集電体
64 負極活物質層
70 セパレータシート
80 流路
100 リチウムイオン二次電池(二次電池)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5