IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特開-電磁ダンパ 図1
  • 特開-電磁ダンパ 図2
  • 特開-電磁ダンパ 図3
  • 特開-電磁ダンパ 図4
  • 特開-電磁ダンパ 図5
  • 特開-電磁ダンパ 図6
  • 特開-電磁ダンパ 図7
  • 特開-電磁ダンパ 図8
  • 特開-電磁ダンパ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125799
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】電磁ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/03 20060101AFI20220822BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20220822BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220822BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20220822BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220822BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
F16F15/03 G
F16F9/20
F16F15/02 A
F16H25/22 Z
F16H25/20 Z
E04H9/02 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023595
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】馮 徳民
(72)【発明者】
【氏名】田中 良一
(72)【発明者】
【氏名】小松原 知将
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J062
3J069
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139BA10
2E139BA12
2E139BA52
2E139BC17
2E139BD35
2E139CA02
2E139CA11
2E139CA21
2E139CC02
3J048AA02
3J048AB08
3J048AC08
3J048AD20
3J048BA08
3J048BE08
3J048BE09
3J048DA01
3J048DA04
3J048EA38
3J062AB22
3J062AC07
3J062CD04
3J062CD22
3J069AA55
3J069DD13
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる。
【解決手段】シリンダ12と、シリンダ12の軸心上に往復移動可能に配置されシリンダ12の両端部から突出するロッド14とを備える電磁ダンパ10Aであって、シリンダ12の内周面に配置された第1磁石16と、ロッド14の外周面に配置された第2磁石18と、を備え、第1磁石16の半径方向内側と第2磁石18の半径方向外側とは異なる磁極を有し、第1磁石16および第2磁石18のうち少なくとも一方が電磁石で構成され、シリンダ12とロッド14の相対変位量を検知する検知部20と、相対変位量が所定値以上になった場合、電磁石に通電する制御部100とをさらに備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える電磁ダンパであって、
前記シリンダの内周面に配置された第1磁石と、
前記ロッドの外周面に配置された第2磁石と、を備え、
前記第1磁石の半径方向内側と前記第2磁石の半径方向外側とは異なる磁極を有し、
前記第1磁石および前記第2磁石のうち少なくとも一方が電磁石で構成され、
前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知する検知部と、
前記相対変位量が所定値以上になった場合、前記電磁石に通電する制御部と、をさらに備える、
ことを特徴とする電磁ダンパ。
【請求項2】
前記第1磁石は、前記シリンダの内周面全域にわたって設けられ、
前記第2磁石は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁ダンパ。
【請求項3】
前記第1磁石は、前記シリンダの軸心方向の一部で前記シリンダの内周面の全周にわたって設けられ、
前記第2磁石は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁ダンパ。
【請求項4】
シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える電磁ダンパであって、
前記シリンダの内周面および前記ロッドの外周面のうちの一方に配置された電磁石と、
前記シリンダの内周面および前記ロッドの外周面のうちの他方に配置された導体と、を備え、
前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知する検知部と、
前記相対変位量が所定値以上になった場合、前記電磁石に通電する制御部と、をさらに備える、
ことを特徴とする電磁ダンパ。
【請求項5】
前記シリンダに配置された前記電磁石または前記導体は、前記シリンダの内周面全域にわたって設けられ、
前記ロッドに配置された前記電磁石または前記導体は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の電磁ダンパ。
【請求項6】
前記シリンダに配置された前記電磁石または前記導体は、前記シリンダの軸心方向の一部で前記シリンダの内周面の全周にわたって設けられ、
前記ロッドに配置された前記電磁石または前記導体は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の電磁ダンパ。
【請求項7】
前記電磁ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を構成する免震建物に設置され、
前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、
それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、前記上部構造体に連結され、
他方の前記取り付け部材は、前記下部構造体に連結されている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の電磁ダンパ。
【請求項8】
前記取り付け部材は、前記シリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体と前記上部構造体に連結されている、
ことを特徴とする請求項7記載の電磁ダンパ。
【請求項9】
前記検知部は、前記シリンダおよび前記ロッドに設けられている、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項記載の電磁ダンパ。
【請求項10】
前記検知部は、前記免震建物に設けられ、前記免震建物の振動による前記下部構造体と前記上部構造体の相対変位量を検知することで、前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知する、
ことを特徴とする請求項7または8記載の電磁ダンパ。
【請求項11】
前記制御部は、前記相対変位量が前記所定値未満になった場合、前記電磁石への通電を停止する、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項記載の電磁ダンパ。
【請求項12】
前記制御部は、前記免震建物の振動が停止した場合、前記電磁石への通電を停止する、
ことを特徴とする請求項10記載の電磁ダンパ。
【請求項13】
前記ロッドは雄ねじ部を有し、前記シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、
前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されている、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項記載の電磁ダンパ。
【請求項14】
前記雄ねじ部は、前記ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、
前記シリンダは、前記シリンダの内周面を構成する筒状壁と、前記シリンダの軸心方向の両端を閉塞し前記ロッドが貫通された一対の端面壁とを有し、
前記雌ねじ部材は、前記シリンダの外面で前記ロッドの半部が位置する前記端面壁に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項13記載の電磁ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎(下部構造体)上に、複数のゴム板と鋼板とが重ね合わされた積層ゴムを設けると共に鉛プラグ等のエネルギ吸収手段を設け、それらの上で建物(上部構造体)を免震支持する免震建物が知られている。
このような免震建物において、通常の設計で想定する地震動を超える地震動(設計での想定を超える地震動)が生じた場合の建物(上部構造体)の過大な変位を制御する方法として、下部構造体と上部構造体との間に水平方向に延在するダンパをさらに設置する方法が考えられる。
しかしながら、非常に発生頻度、確率の低いと考えられる設計での想定を超える地震動に対応するためこのような方法にすると、より発生頻度、確率の高い地震に対してもダンパが減衰力を発揮してしまい、免震性能を低下させ、上部構造体へ不要な地震力を生じさせるという問題がある。
【0003】
そこで、免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有するダンパを設置する方法が考えられる(例えば特許文献1参照)。
特許文献1の油圧緩衝器(ダンパ)では、油が通過する通路と可変絞り機構を設け、ピストンの変位に応じて減衰力が変化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-269741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有するダンパは、その構成が複雑であるため、簡易な構成により設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させるダンパを用いることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる電磁ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える電磁ダンパであって、前記シリンダの内周面に配置された第1磁石と、前記ロッドの外周面に配置された第2磁石と、を備え、前記第1磁石の半径方向内側と前記第2磁石の半径方向外側とは異なる磁極を有し、前記第1磁石および前記第2磁石のうち少なくとも一方が電磁石で構成され、前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知する検知部と、前記相対変位量が所定値以上になった場合、前記電磁石に通電する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1磁石は、前記シリンダの内周面全域にわたって設けられ、前記第2磁石は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1磁石は、前記シリンダの軸心方向の一部で前記シリンダの内周面の全周にわたって設けられ、前記第2磁石は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える電磁ダンパであって、前記シリンダの内周面および前記ロッドの外周面のうちの一方に配置された電磁石と、前記シリンダの内周面および前記ロッドの外周面のうちの他方に配置された導体と、を備え、前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知する検知部と、前記相対変位量が所定値以上になった場合、前記電磁石に通電する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記シリンダに配置された前記電磁石または前記導体は、前記シリンダの内周面全域にわたって設けられ、前記ロッドに配置された前記電磁石または前記導体は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記シリンダに配置された前記電磁石または前記導体は、前記シリンダの軸心方向の一部で前記シリンダの内周面の全周にわたって設けられ、前記ロッドに配置された前記電磁石または前記導体は、前記ロッドの外周面全域にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記電磁ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を構成する免震建物に設置され、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、前記上部構造体に連結され、他方の前記取り付け部材は、前記下部構造体に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記取り付け部材は、前記シリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体と前記上部構造体に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記検知部は、前記シリンダおよび前記ロッドに設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記検知部は、前記免震建物に設けられ、前記免震建物の振動による前記下部構造体と前記上部構造体の相対変位量を検知することで、前記シリンダと前記ロッドの相対変位量を検知することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記制御部は、前記相対変位量が前記所定値未満になった場合、前記電磁石への通電を停止することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記制御部は、前記免震建物の振動が停止した場合、前記電磁石への通電を停止することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ロッドは雄ねじ部を有し、前記シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記雄ねじ部は、前記ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、前記シリンダは、前記シリンダの内周面を構成する筒状壁と、前記シリンダの軸心方向の両端を閉塞し前記ロッドが貫通された一対の端面壁とを有し、前記雌ねじ部材は、前記シリンダの外面で前記ロッドの半部が位置する前記端面壁に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、電磁ダンパにおいてシリンダの内周面とロッドの外周面とに少なくとも一方が電磁石で構成された第1磁石および第2磁石が配置され、シリンダとロッドの相対変位量が所定値以上になった場合に電磁石に通電することで、第1磁石および第2磁石に引力が働きロッドの移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0009】
また、第1磁石がシリンダの内周面の全周にわたって設けられ、第2磁石がロッドの外周面の全周にわたって設けられるように構成すると、設計での想定を超える地震動に対してより確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0010】
また、第1磁石がシリンダの軸心方向の一部でシリンダの内周面の全周にわたって設けられ、第2磁石がロッドの外周面の全周にわたって設けられるように構成すると、シリンダの軸心方向の一部における減衰力を他の部分より大きくすることができるという効果を奏する。
【0011】
また、本実施の形態の一実施の形態によれば、電磁ダンパにおいてシリンダの内周面およびロッドの外周面のうちの一方に電磁石が配置され、シリンダの内周面およびロッドの外周面のうちの他方に導体が配置され、シリンダとロッドの相対変位量が所定値以上になった場合に電磁石に通電することで、導体に流れる渦電流と電磁石の磁界との作用によって生じた抵抗力によりロッドの移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0012】
また、シリンダに配置された電磁石または導体がシリンダの内周面の全周にわたって設けられ、ロッドに配置された電磁石または導体がロッドの外周面の全周にわたって設けられるように構成すると、設計での想定を超える地震動に対してより確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0013】
また、シリンダに配置された電磁石または導体がシリンダの軸心方向の一部でシリンダの内周面の全周にわたって設けられ、ロッドに配置された電磁石または導体がロッドの外周面の全周にわたって設けられるように構成すると、シリンダの軸心方向の一部における減衰力を他の部分より大きくすることができるという効果を奏する。
【0014】
また、シリンダの軸心方向の一方の端部から突出したロッドの端部と、シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、それら取り付け部材のうちの一方の取り付け部材が上部構造体に連結され、他方の取り付け部材が下部構造体に連結されるように構成すると、設計での想定を超える地震動により上部構造体が下部構造体に対して変位を生じた場合に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0015】
また、取り付け部材がシリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で下部構造体と上部構造体にそれぞれ連結されるように構成すると、地震動により上部構造体が下部構造体に対して水平方向に移動した場合でも、電磁ダンパを水平方向に揺動させることができ、電磁ダンパの破損を回避する上で有利となる。
【0016】
また、検知部をシリンダおよびロッドに設けるように構成すると、シリンダとロッドとの間に他の部材が設けられることがなく、他の部材に妨げられることなくシリンダとロッドの相対変位量を検知する上で有利となる。
【0017】
また、検知部を免震建物に設け、免震建物の振動による下部構造体と上部構造体の相対変位量を検知することで、シリンダとロッドの相対変位量を検知するように構成すると、検知部を見易い位置に設置でき、点検や故障時の交換などのメンテナンス作業を簡易に行う上で有利となる。
【0018】
また、制御部により相対変位量が所定値未満になった場合に電磁石への通電を停止するように構成すると、シリンダとロッドの相対変位量が所定値未満になった場合には電磁ダンパによる減衰力を発揮させずに免震建物の免震性能を発揮させる上で有利となる。
【0019】
また、制御部により免震建物の振動が停止した場合に電磁石への通電を停止するように構成すると、設計での想定を超える地震動が長時間生じた場合に、免震建物の振動が停止するまで制御部が電磁石に通電し続けることで、設計での想定を超える地震動に対して連続して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0020】
また、ロッドが雄ねじ部を有し、シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されるように構成すると、第1磁石および第2磁石の磁力に他の場所と比較して弱い場所があった場合でも、ロッドが回転しながら移動するため、周方向において均等に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0021】
また、雄ねじ部は、ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、雌ねじ部材がシリンダの外面でロッドの半部が位置する端面壁に取り付けられているように構成すると、簡易な構成によってロッドが回転しながら移動できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施の形態にかかる電磁ダンパが設けられた免震建物を示す模式図である。
図2】第1の実施の形態にかかる電磁ダンパの構成図である。
図3】第1の実施の形態にかかる電磁ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。
図4】第1の実施の形態にかかる電磁ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。
図5】第2の実施の形態にかかる電磁ダンパの構成図である。
図6】第3の実施の形態にかかる電磁ダンパの構成図である。
図7】第4の実施の形態にかかる電磁ダンパの構成図である。
図8】第4の実施の形態にかかる電磁ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。
図9】第4の実施の形態にかかる電磁ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、免震建物は、下部構造体2(基礎)上で免震支持された上部構造体4(建物)であり、下部構造体2と上部構造体4との間に積層ゴム6と電磁ダンパ10Aが設置されている。
【0024】
積層ゴム6は、上部構造体4を支持しつつ、地震発生時には上部構造体4を水平方向に移動させることで、地震による地盤の揺れを上部構造体4に伝えにくくするアイソレータである。
図1の例では、アイソレータとして複数のゴム板と鋼板を交互に積み重ねた積層ゴムが用いられているが、この他にも、転がり支承や滑り支承等を利用したアイソレータであってもよい。
【0025】
電磁ダンパ10Aは、地震発生時に積層ゴム6によって水平方向に変位する上部構造体4の揺れに対して、水平方向の減衰力を発揮させるものである。
本実施の形態では、電磁ダンパ10Aを下部構造体2としての基礎と、上部構造体4としての建物のとの鉛直方向の間に設置した例を示すが、建物の低層部と上層部との間など建物の各階層の間に設置してもよいし、建物と建物の外周部に設けられた基礎との間で水平方向に設置してもよい。
【0026】
図2~4に示すように、電磁ダンパ10Aは、シリンダ12と、ロッド14と、第1磁石16と、第2磁石18と、検知部20と、一方の取り付け部材22と、他方の取り付け部材24と、制御部100とを備えている。
【0027】
シリンダ12は、シリンダ12の内周面を構成する円筒状の筒状壁1202と、シリンダ12の軸心方向の両端を閉塞しロッド14が貫通された円板状の一対の端面壁1204、1206とで構成された金属製の容器である。
一対の端面壁1204、1206のうちの一方の端面壁1204は、シリンダ12の一方の端部12Aを閉塞し、他方の端面壁1206は、シリンダ12の他方の端部12Bを閉塞している。
【0028】
ロッド14は、シリンダ12の軸心上に往復移動可能に配置され、シリンダ12の両端部にある第1端面壁1204および第2端面壁1206からそれぞれ突出する金属製の棒状部材である。
ロッド14は、図1に示す初期位置において、ロッド14の軸方向の中央部がシリンダ12の軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている。
【0029】
第1磁石16は、シリンダ12の筒状壁1202の内周面に配置され、通電される(電流が流れる)ことによって磁力を発生させる電磁石である。
本実施の形態の第1磁石16は、シリンダ12の一方の端部12Aから他方の端部12Bまでの筒状壁1202の内周面全域にわたって均一の厚さで設けられている。
【0030】
第2磁石18は、ロッド14の外周面に配置された電磁石である。
本実施の形態の第2磁石は、ロッド14の一方の端部14Aから他方の端部14Bまでの外周面全域にわたって均一の厚さで設けられている。
【0031】
本実施の形態では、第1磁石16および第2磁石18に引きつけ合う力(引力)を働かせることで、シリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を抑制させるものであるため、第1磁石16の半径方向内側と第2磁石18の半径方向外側とは異なる磁極を有している。
具体的には、第1磁石16の半径方向内側がS極であれば第2磁石18の半径方向外側がN極であって、第1磁石16の半径方向内側がN極であれば第2磁石18の半径方向外側がS極となっている。
【0032】
なお、本実施の形態では、第1磁石16および第2磁石18がともに電磁石である例を示したが、所定条件下で第1磁石16および第2磁石18の間で引力を働かせればよいため、第1磁石16および第2磁石18のうち少なくとも一方が電磁石で構成されていればよい。
すなわち、第1磁石16が電磁石で第2磁石18が永久磁石である構成、もしくは第1磁石16が永久磁石で第2磁石18が電磁石である構成としてもよい。この場合、電磁石で構成された磁石が通電されることで引力を働かせることができる。
【0033】
検知部20は、シリンダ12およびロッド14に設けられ、シリンダ12とロッド14の相対変位量を検知するものである。
本実施の形態では、例えば、検知部20は、変位センサ20Aと反射部材20Bとで構成され、光ビームを出射して反射光を受光する変位センサ20Aがシリンダ12の他方の端部12Bの内周面に設けられ、光ビームを反射する反射部材20Bがロッド14の中央近傍の外周面に設けられている。
したがって、変位センサ20Aが反射部材20Bに向けて光ビームを出射し、反射部材20Bで反射した光ビームを受光することで、変位センサ20Aから反射部材20Bまでの距離を測定することができる。
なお、変位センサ20Aをシリンダ12に、反射部材20Bをロッド14に設けた構成としているが、変位センサ20Aをロッド14に、反射部材20Bをシリンダ12に設けた構成としてもよい。
また、変位センサ20Aを後述の他方の取り付け部材24の円筒部2402の内周面に設け、反射部材20Bをロッド14の他方の端部14B近傍の外周面に設けた構成としてもよい。
また、本実施形態では、検知部20として光学式の変位センサを用いた例を示したが、距離を測定可能なセンサなどであれば特に限定されることはなく、光学式以外の他の形式の距離センサなどを用いてもよい。
【0034】
一方の取り付け部材22および他方の取り付け部材24は、金属製であって、電磁ダンパ10Aの両端部にそれぞれ設けられている。
すなわち、一方の取り付け部材22は、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Aから突出したロッド14の一方の端部14Aに取り付けられ、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Bにある第2端面壁1206に取り付けられている。
【0035】
図1に示すように、一方の取り付け部材22は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸4Bの周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸2Bの周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
具体的には、例えば、一方の取り付け部材22は、取り付け孔2202に揺動可能に挿通された軸4Bが、上部構造体4の下部に取り付けられた保持部材4Aで支持されることで、取り付け孔2202の中心を通る軸周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結されている。
【0036】
また、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部にある第2端面壁1206に取り付けられており、第2端面壁1206から軸心方向に突設された円筒部2402と、円筒部2402の端部に設けられた取り付け部2404とで構成されている。
円筒部2402は、ロッド14がX1方向に最大に移動した際にシリンダ12の第2端面壁1206から突出したロッド14が収容可能な長さを有して形成されている(図4参照)。
そして、他方の取り付け部材24は、取り付け部2404に設けられた取り付け孔2406に揺動可能に挿通された軸2Bが、下部構造体2の上部に取り付けられた保持部材2Aで支持されることで、取り付け孔2406の中心を通る軸周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
【0037】
なお、本実施の形態では、一方の取り付け部材22が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24が下部構造体2に連結されていたが、反対にして配置されていてもよい。すなわち、一方の取り付け部材22が下部構造体2に連結され、他方の取り付け部材24が上部構造体4に連結されるよう配置してもよい。
【0038】
制御部100は、検知部20により検知されたシリンダ12とロッド14の相対変位量に基づいて、電磁石である第1磁石16および第2磁石18への通電を制御する。
制御部100は、CPU、記憶部、インターフェース回路などを含むマイクロコンピュータを含んで構成されており、記憶部にはCPUが実行する制御プログラムが格納され、インターフェース回路を介して検知部20、第1磁石16、および第2磁石18が接続されている。
【0039】
本実施の形態では、制御部100は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値である長さL1以上になった場合、第1磁石16および第2磁石18に通電する。
すなわち、制御部100は、図1に示す初期位置からロッド14がX1方向に移動してシリンダ12に対して長さL1以上移動した場合、または初期位置からロッド14がX2方向に移動してシリンダ12に対して長さL1以上移動した場合、第1磁石16および第2磁石18に通電を開始する。
そして、制御部100は、ロッド14がさらにX1方向またはX2方向に移動しても、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上であるならば、すなわち相対変位量が長さL1以上で長さL1+L2までの場合、第1磁石16および第2磁石18に通電し続ける。
なお、図3は、電磁ダンパ10Aが最も縮んだ状態を示し、図4は、電磁ダンパ10Aが最も伸びた状態を示している。
【0040】
ここで、本実施の形態では、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、ロッド14がシリンダ12に対して軸心方向に移動する相対変位量が長さL1未満となっている。
また、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ロッド14がシリンダ12に対して軸心方向に移動する相対変位量が長さL1以上で長さL1+L2までとなっている。
【0041】
そして、制御部100は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値である長さL1未満になった場合、第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する。
すなわち、制御部100は、シリンダ12に対してX1方向に長さL1以上移動していたロッド14がX2方向に移動してシリンダ12に対して長さL1未満の移動になった場合、またはシリンダ12に対してX2方向に長さL1以上移動していたロッド14がX1方向に移動してシリンダ12に対して長さL1未満の移動になった場合、第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する。
【0042】
このように、制御部100は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1未満である場合は、第1磁石16および第2磁石18に通電しない。
そして、制御部100は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上になった場合は、第1磁石16および第2磁石18に通電する。
さらに、制御部100は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が再度長さL1未満になった場合は、第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する。
【0043】
次に、電磁ダンパ10Aの動作について説明する。
まず、発生頻度、確率が比較的高いと考えられる通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(図1参照)に移動すると、電磁ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動するが、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1未満となる。
また、発生頻度、確率が比較的高いと考えられる通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX2方向(図1参照)に移動すると、電磁ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX2方向に移動するが、同様に、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1未満となる。
このように、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1未満であった場合、制御部100が第1磁石16および第2磁石18に通電しないことにより、第1磁石16および第2磁石18は磁石の役割を果たさず、第1磁石16および第2磁石18は互いに引力を働かせることがない。
したがって、シリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を第1磁石16および第2磁石18によって抑制することがないため、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、電磁ダンパ10Aによる減衰力は発揮されず免震建物の免震性能を低下させることがない。
【0044】
次に、発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(図1参照)に移動すると、電磁ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動し、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1以上となる。
また、発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX2方向(図1参照)に移動すると、電磁ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX2方向に移動し、同様に、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1以上となる。
このように、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上になった場合、制御部100が第1磁石16および第2磁石18に通電することにより、第1磁石16および第2磁石18が磁石の役割を果たし、第1磁石16および第2磁石18は互いに引力が働く。
したがって、シリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を第1磁石16および第2磁石18によって抑制し、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、電磁ダンパ10Aによる減衰力を発揮させる。
【0045】
さらにロッド14がX1方向またはX2方向に移動し、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上であれば、制御部100が第1磁石16および第2磁石18に通電し続け、電磁ダンパ10Aによる減衰力を発揮させ続ける。
【0046】
そして、X1方向またはX2方向に移動していたロッド14がX2方向またはX1方向に戻り、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値である長さL1未満になった場合、制御部100が第1磁石16および第2磁石18への通電を停止すると、電磁ダンパ10Aによる減衰力が発揮されなくなり、免震建物の免震性能が発揮されることになる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、電磁ダンパ10Aにおいてシリンダ12の内周面とロッド14の外周面とに電磁石で構成された第1磁石16および第2磁石18が配置され、検知部20により検知されたシリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値(L1)以上になった場合、制御部100が電磁石である第1磁石16および第2磁石18に通電する。これにより、第1磁石16および第2磁石18に引力が働きロッド14の移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0048】
また、第1磁石16は、シリンダ12の内周面全域にわたって設けられ、第2磁石18は、ロッド14の外周面全域にわたって設けられているため、設計での想定を超える地震動に対してより確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0049】
また、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Aから突出したロッド14の一方の端部14Aと、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Bにそれぞれ取り付け部材22、24が取り付けられ、一方の取り付け部材22が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24が下部構造体2に連結されているため、設計での想定を超える地震動により上部構造体4が下部構造体2に対して変位を生じた場合に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0050】
また、一方の取り付け部材22および他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で、それぞれ下部構造体2と上部構造体4に連結されているため、地震動により上部構造体4が下部構造体2に対して水平でシリンダ12の軸心方向と交差する方向に移動した場合でも、電磁ダンパ10Aが揺動できるため、電磁ダンパ10Aの破損を回避しつつ電磁ダンパ10Aを機能させることができる。
【0051】
また、検知部20がシリンダ12およびロッド14に設けられているため、シリンダ12とロッド14との間に他の部材が設けられることがなく、他の部材に妨げられることなくシリンダ12とロッド14の相対変位量を検知する上で有利となる。
【0052】
また、制御部100がシリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値(L1)未満になった場合、電磁石である第1磁石16および第2磁石18への通電を停止するため、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値未満になった場合には電磁ダンパ10Aによる減衰力を発揮させずに免震建物の免震性能を発揮させる上で有利となる。
【0053】
(第1の実施の形態の変形例1)
第1の実施の形態では、電磁ダンパ10Aに検知部20を設けてシリンダ12とロッド14の相対変位量を検知する構成となっていたが、免震建物に検知部を設けた構成としてもよい。
【0054】
本変形例の検知部(不図示)は、免震建物を構成する上部構造体4および下部構造体2に設けられ、免震建物の振動による下部構造体2と上部構造体4の相対変位量を検知することで、シリンダ12とロッド14の相対変位量を検知する。
すなわち、検知部は、例えば、変位センサが上部構造体4に設けられ、反射部材が下部構造体2に設けられており、これによって下部構造体2と上部構造体4の相対変位量を検知することで、シリンダ12とロッド14の相対変位量を検知する。
【0055】
このような本変形例によれば、検知部を免震建物の上部構造体4および下部構造体2に設けることより、検知部を見易い位置に設置でき、点検や故障時の交換などのメンテナンス作業を簡易に行う上で有利となる。
【0056】
(第1の実施の形態の変形例2)
第1の実施の形態では、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1未満になった場合に制御部100が第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する構成となっていたが、免震建物の振動が停止した場合に制御部100が第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する構成としてもよい。
【0057】
本変形例では、例えば、免震建物に制御部100に接続された振動センサ(不図示)が設けられ、上部構造体4の振動量(例えば加速度)を検出する。
そして、制御部100により第1磁石16および第2磁石18が通電されたのち、振動センサの検知による上部構造体4の振動量によって免震建物の振動が停止したと判断され場合、制御部100は、第1磁石16および第2磁石18への通電を停止する。
【0058】
このような本変形例によれば、免震建物に振動センサを設け免震建物の振動が停止した場合に第1磁石16および第2磁石18への通電を停止することにより、設計での想定を超える地震動が長時間生じている場合に、免震建物の振動が停止するまで制御部100が第1磁石16および第2磁石18に通電し続けることで、設計での想定を超える地震動に対して連続して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0059】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の電磁ダンパ10Aでは、第1磁石16がシリンダ12の一方の端部12Aから他方の端部12Bまでの内周面全域に設けられていたのに対して、第2の実施の形態の電磁ダンパ10Bでは、第1磁石16Aがシリンダ12の軸心方向の一部でシリンダ12の内周面の全周にわたって設けられている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0060】
本実施の形態では、第1磁石16Aは、シリンダ12の軸心方向の一部でシリンダ12の内周面の全周にわたって
具体的には、図5に示すように、第1磁石16Aは、シリンダ12の中央部には設けておらず、シリンダ12の軸心方向の両端部でシリンダの内周面の全周にわたって、均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、第1磁石16Aをシリンダ12の軸心方向の両端部でシリンダ12の内周面の全周にわたって設けたことで、制御部100により第1磁石16Aおよび第2磁石18が通電された際に、シリンダ12の両端部側の減衰力を中央部より大きくすることができるという効果を奏する。
また、例えば、第1磁石16Aをシリンダ12の軸心方向の中央部の内周面の全周にわたって設ければ、制御部100により第1磁石16Aおよび第2磁石18が通電された際に、シリンダ12の中央部の減衰力を両端部より大きくすることができるという効果を奏する。
すなわち、第1磁石16Aをシリンダ12の軸心方向の任意の一部に設けることで、シリンダ12の軸心方向の任意の一部における減衰力を他の部分より大きくすることができる。
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態の電磁ダンパ10Aでは、ロッド14がシリンダ12の一対の端面壁1204、1206に貫通されていたのに対して、第3の実施の形態の電磁ダンパ10Cでは、さらにロッド30が雄ねじ部3002を有し、その雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有する雌ねじ部材32が配置されている点が異なっている。
【0063】
図6に示すように、本実施の形態の電磁ダンパ10Cは、シリンダ12と、ロッド30と、第1磁石16と、第2磁石18と、検知部20と、一方の取り付け部材22と、他方の取り付け部材24と、雌ねじ部材32と、制御部100とを備えている。
【0064】
ロッド30は、長手方向の一方の端部30A側の半部に雄ねじ部3002が設けられ、シリンダ12の軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置されている。
ロッド30は、シリンダ12の両端部にある第1端面壁1204および第2端面壁1206からそれぞれ突出する金属製の棒状部材であって、ロッド30の一方の端部30Aは、軸受け3004を介して一方の取り付け部材22に回転可能に支持され、また、第2端面壁1206でも回転可能に支持されている。
また、ロッド30は、第1の実施の形態と同様に、図1に示す初期位置において、ロッド30の軸方向の中央部がシリンダ12の軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている。
【0065】
雌ねじ部材32は、例えば、ボールねじで構成され、ロッド30の雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有し、回転不能に配置されている。
雌ねじ部材32は、シリンダ12の外面でロッド30の半部が位置する端面壁、すなわちシリンダ12の一方の端部12Aにある第1端面壁1204の外面に取り付けられ、雌ねじ部3202の軸心とロッド30の軸心とが一致している。
【0066】
このような本実施の形態の電磁ダンパ10Cは、ロッド30がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動する場合、雄ねじ部3002と雌ねじ部3202とを介してロッド3は正転しながらX1方向に移動する。
また、電磁ダンパ10Cは、ロッド30がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX1方向に移動する場合、雄ねじ部3002と雌ねじ部3202とを介してロッド30は逆転しながらX2方向に移動する。
【0067】
本実施の形態の電磁ダンパ10Cの地震動が生じた際の動作については、ロッド30がX1方向またはX2方向に移動するとき、雄ねじ部3002と雌ねじ部3202を介して回転しながら移動すること以外は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
本実施の形態では、ロッド30が雄ねじ部3002を有し、シリンダ12の軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有する雌ねじ部材32が回転不能に配置されている。このため、ロッド30が回転しながら移動するため、周方向において均等に減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、雄ねじ部3002がロッド30の長手方向の一方の端部30A側の半部に設けられ、雌ねじ部材32がシリンダ12の外面でロッド30の半部が位置する第1端面壁1204に取り付けられている。このため、簡易な構成によってロッド30が回転しながら移動できるという効果を奏する。
【0069】
本実施の形態では、ロッド30の一方の端部30Aの半部に雄ねじ部3002を有する構成としたが、ロッド30の一方の端部30Aから他方の端部30Bまで全て雄ねじ部3002を有する構成としてもよい。この場合、雌ねじ部材32をシリンダ12の他方の端部12Bにある第2端面1206壁の外面にも取り付けると、ロッド3を安定させて回転する上で有利となる。
【0070】
また、本実施の形態では、雌ねじ部材32をシリンダ12の一方の端部12Aにある第1端面壁1204の外面に取り付けた構成としたが、第1端面壁1204にロッド30の雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を設け、第1端面壁1204に雌ねじ部材32の機能を備えた構成にしてもよい。これにより、部品を削減してコストの削減を図る上で有利となる。
【0071】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態の電磁ダンパ10Aでは、第2磁石18がロッド14の外周面に配置されていたのに対して、第4の実施の形態の電磁ダンパ10Dでは、導体48がロッド14の外周面に配置されて構成されている点が異なっている。
【0072】
図7に示すように、導体48は、電気を通す銅板であって、ロッド14の外周面に配置されている。
本実施の形態の導体48は、ロッド14の一方の端部14Aから他方の端部14Bまでの外周面全域にわたって均一の厚さで設けられている。
【0073】
なお、本実施の形態では、導体48として銅板を用いた構成となっているが、電気を通すものであれば他の金属などを用いて構成してもよい。
また、本実施の形態では、電磁石である第1磁石16がシリンダの内周面に設けられ導体48がロッド14の外周面に設けられた例を示したが、導体がシリンダ12の内周面に設けられ電磁石がロッド14の外周面に設けられた構成としてもよい。
【0074】
制御部200は、検知部20により検知されたシリンダ12とロッド14の相対変位量に基づいて、電磁石である第1磁石16への通電を制御する。
制御部100は、第1の実施の形態と同様に構成されており、インターフェース回路を介して検知部20および第1磁石16に接続されている。
【0075】
第1の実施の形態の制御部100の通電対象は第1磁石16および第2磁石18であったのに対し、本実施の形態の制御部200の通電対象は第2磁石16であるが、通電および通電を停止するタイミングについては第1の実施の形態と同様に制御する。
すなわち、制御部200は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1未満である場合は、第1磁石16に通電しない。
そして、制御部200は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上になった場合は、第1磁石16に通電する。
さらに、制御部200は、シリンダ12とロッド14の相対変位量が再度長さL1未満になった場合は、第1磁石16への通電を停止する。
【0076】
本実施の形態では、制御部200により第1磁石16が通電されてる場合、シリンダ12に設けられた第1磁石16とロッド14に設けられた導体48の相対変位によって、導体48に電磁誘導による誘導起電力が生じて渦電流が流れる。この渦電流と第1磁石16の磁界とが作用して、第1磁石16と導体48との間には相対変位方向とは反対向きの抵抗力が生じ、この抵抗力が減衰力として作用する。
【0077】
本実施の形態の電磁ダンパ10Dの地震動が生じた際の動作については、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、通電対象が第1磁石16のみとなっている。
なお、図8は、電磁ダンパ10Dが最も縮んだ状態を示し、図9は、電磁ダンパ10Dが最も伸びた状態を示している。
【0078】
このように、本実施の形態によれば、電磁ダンパ10Dにおいてシリンダ12の内周面に電磁石である第1磁石16が配置され、ロッド14の外周面に導体48が配置され、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値(L1)以上になった場合、制御部200が電磁石である第磁石16に通電する。これにより、導体48に流れる渦電流と第1磁石16の磁界との作用によって生じた抵抗力によりロッド14の移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能を低下させることなく、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0079】
また、電磁石16は、シリンダ12の内周面全域わたって設けられ、導体48は、ロッド14の外周面全域にわたって設けられているため、設計での想定を超える地震動に対してより確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0080】
また、制御部200がシリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値(L1)未満になった場合、電磁石である第1磁石16への通電を停止するため、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値未満になった場合には電磁ダンパ10Dによる減衰力を発揮させずに免震建物の免震性能を発揮させる上で有利となる。
【0081】
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0082】
なお、第4の実施の形態の電磁ダンパ10Dにおいても、第1の実施の形態の変形例1と同様に、検知部を免震建物に設けた構成としてもよい。
また、第4の実施の形態の電磁ダンパ10Dにおいても、第1の実施の形態の変形例2と同様に、免震建物の振動が停止した場合に制御部200が第1磁石16への通電を停止する構成としてもよい。
【0083】
また、第4の実施の形態の電磁ダンパ10Dにおいても、第2の実施の形態の電磁ダンパ10Bと同様に、第1磁石をシリンダ12の軸心方向の一部でシリンダ12の内周面の全周にわたって設けた構成としてもよい。すなわち、例えば、第1磁石をシリンダ12の中央部には設けず、シリンダ12の両端部に設けた構成としてもよい。
これにより、シリンダ12の軸心方向の一部(両端部)における減衰力を他の部分より大きくすることができる。
【0084】
また、第4の実施の形態の電磁ダンパ10Dにおいても、第3の実施の形態の電磁ダンパ10Cと同様に、ロッド14に雄ねじ部を有し、その雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材をさらに配置し、ロッド14がX1方向またはX2方向に移動するとき、雄ねじ部と雌ねじ部を介して回転しながら移動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 下部構造体
2A 保持部材
4 上部構造体
4A 保持部材
6 積層ゴム
10A、10B、10C、10D 電磁ダンパ
12 シリンダ
12A 一方の端部
12B 他方の端部
1202 筒状壁
1204 第1端面壁
1206 第2端面壁
14、30 ロッド
14A、30A 一方の端部
14B、30B 他方の端部
16、16A 第1磁石
18 第2磁石
20 検知部
20A 変位センサ
20B 反射部材
22 一方の取り付け部材
2202 取り付け孔
24 他方の取り付け部材
2402 円筒部
2404 取り付け部
2406 取り付け孔
3002 雄ねじ部
32 雌ねじ部材
3002 雌ねじ部
3004 軸受け
48 導体
100、200 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9