(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125808
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220822BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305K
F16K31/06 305M
F16K11/044 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023605
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梶野 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓也
【テーマコード(参考)】
3H067
3H106
【Fターム(参考)】
3H067AA02
3H067CC32
3H067DD05
3H067FF17
3H067GG13
3H106DA07
3H106DA08
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB32
3H106DC02
3H106EE22
3H106EE34
3H106GB02
3H106KK17
(57)【要約】
【課題】消費電力の増大を招くことなく流体の流れの切換が可能で、大型化を招くことのない流体制御弁を構成する。
【解決手段】流体制御弁Aは、ハウジング10と、流入管11と、第1流出管12、第2流出管13と、磁性体製の制御弁体1と、筒状の電磁ソレノイド6とを備えている。電磁ソレノイド6に電流が供給された場合に、吸引力で制御弁体1を第1制御位置に保持して流入管11から第2流出管13への流体の流れを遮断し、流入管11から第1流出管12への流体の流れを許容する。電磁ソレノイド6に電流が供給されない場合に、流入管11から供給される流体の圧力で制御弁体1を、流体における流体の流動方向で第1制御位置より下流側の第2制御位置P2に位置させ、流入管11から第2流出管13への流体の流れを許容すると共に、流入管11から第1流出管12に対する流体の流れを遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に収容され流体の流れを制御する流体制御部と、
前記ハウジングの外部から前記流体制御部に前記流体を送る流入管と、
前記流体制御部で制御された前記流体を、前記流入管における前記流体の流動方向の延長方向に送り出す第1流出管と、
前記流体制御部で制御された前記流体を、前記流入管における前記流体の流動方向に対して分岐する方向に送り出す第2流出管と、を備え、
前記流体制御部が、前記ハウジングの内部に配置され前記流入管から供給される前記流体の流動方向の下流側に配置された磁性体製の制御弁体と、電流供給により前記制御弁体を、前記流体の流動方向と逆方向に移動させることを可能にする筒状の電磁ソレノイドと、を備え、
前記電磁ソレノイドに電流が供給された場合に、吸引力によって前記制御弁体を第1制御位置に保持することで、前記流入管から前記第2流出管への前記流体の流れを遮断すると共に、前記流入管から前記第1流出管への前記流体の流れを許容し、
前記電磁ソレノイドに電流が供給されない場合に、前記流入管から供給される前記流体の圧力によって前記制御弁体を、前記流体における前記流体の流動方向で前記第1制御位置より下流側の第2制御位置に位置させ、前記流入管から前記第2流出管への前記流体の流れを許容すると共に、前記流入管から前記第1流出管に対する前記流体の流れを遮断する流体制御弁。
【請求項2】
前記制御弁体は、前記流入管からの前記流体を前記第1流出管に対して直線的に送り出す位置に開口部を形成しており、
前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記開口部を開放し、前記制御弁体が、前記第2制御位置にある場合に前記開口部を閉塞する弁部材を備えている請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記開口部を閉塞する方向に、前記弁部材を付勢する付勢部材を更に備え、
前記付勢部材は、前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記流入管から供給される前記流体の圧力による前記弁部材の開放を許容し、前記制御弁体が前記第2制御位置にある場合に前記流入管から供給される前記流体の圧力に抗して前記弁部材を閉塞するように付勢力が設定されている請求項2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記弁部材を開放し、前記制御弁体が前記第2制御位置にある場合に前記弁部材を閉塞するように固定された状態で前記弁部材が備えられている請求項2に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを制御する流体制御弁として、複数の流路の間での流体の切換を可能にするものが特許文献1と、特許文献2とに記載されている。
【0003】
特許文献1には、バルブハウジングに1つの排出路と、2つの流路とが形成され、電磁ソレノイドが非駆動状態と駆動状態との切り換えられることにより弁ユニットを制御し、2つの流路のうちの1つからの流体を排出路に送る構成が記載されている。
【0004】
また、この特許文献1では、ハウジングの外部に電磁ソレノイドを備え、この電磁ソレノイドのアーマチュアの作動で弁ユニットの弁体の位置を制御する構成を有し、電磁ソレノイドが非駆動状態にある場合に、弁体を所定位置に保持するためのスプリングを備えている。
【0005】
特許文献2には、1つの流入路と、2つの流出路と、2つの流出路の一方に対して流入路からの流体を供給するように作動する弁体と、通電と非通電と切換により弁体を作動させるソレノイドとを備えた構成が記載されている。
【0006】
また、この特許文献2では、ハウジングの内部に2つの流出路の基端部(弁座)を対向する位置関係で配置し、これらの基端部の間で移動自在に弁体を設け、弁体を一方の基端部に押し付けるスプリングを備えている。弁体は磁性体を備えており、他方の基端部には弁体を吸着する磁性体を備え、この磁性体に磁束を流す電磁コイルをハウジングの外部に備えている。
【0007】
これにより、電磁コイルが通電されない状態では、スプリングの付勢力と流入路の流体の圧力とで、弁体を一方(第二流出路)の基端部(弁座)に密着させ、流入路からの流体を他方の流出路(第一流出路)に送る作動が行われる、これに対し、電磁コイルに通電する状態では、スプリングの付勢力と流入路の流体の圧力とに抗して弁体を他方(第一流出路)の基端部(弁座)に磁力で吸着させ、流入路からの流体を一方(第二流出路)の流出路に送る作動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0305569号明細書
【特許文献2】特開2019-183997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2の何れも電磁ソレノイドが、ハウジングの外部に配置されるため、制御弁の大型化に繋がるものであった。
【0010】
また、特許文献1,2では電磁ソレノイドに通電しない状況ではスプリングの付勢力によって弁体の位置を決める構成であり、電磁ソレノイドに通電した場合にはスプリングの付勢力に抗して弁体を作動させるために、電磁ソレノイドに供給する電流の増大を必要とし、消費電力の増大を招くことが懸念された。
【0011】
このような理由から、消費電力の増大を招くことなく流体の流れの切換が可能で、大型化を招くことのない流体制御弁が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る流体制御弁の特徴構成は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に収容され流体の流れを制御する流体制御部と、前記ハウジングの外部から前記流体制御部に前記流体を送る流入管と、前記流体制御部で制御された前記流体を、前記流入管における前記流体の流動方向の延長方向に送り出す第1流出管と、前記流体制御部で制御された前記流体を、前記流入管における前記流体の流動方向に対して分岐する方向に送り出す第2流出管と、を備え、前記流体制御部が、前記ハウジングの内部に配置され前記流入管から供給される前記流体の流動方向の下流側に配置された磁性体製の制御弁体と、電流供給により前記制御弁体を、前記流体の流動方向と逆方向に移動させることを可能にする筒状の電磁ソレノイドと、を備え、前記電磁ソレノイドに電流が供給された場合に、吸引力によって前記制御弁体を第1制御位置に保持することで、前記流入管から前記第2流出管への前記流体の流れを遮断すると共に、前記流入管から前記第1流出管への前記流体の流れを許容し、前記電磁ソレノイドに電流が供給されない場合に、前記流入管から供給される前記流体の圧力によって前記制御弁体を、前記流体における前記流体の流動方向で前記第1制御位置より下流側の第2制御位置に位置させ、前記流入管から前記第2流出管への前記流体の流れを許容すると共に、前記流入管から前記第1流出管に対する前記流体の流れを遮断する点にある。
【0013】
この特徴構成によると、電磁ソレノイドに電流が供給されることにより、制御弁体が第1制御位置に保持され、流入管から流体制御部に供給される流体は第2流出管への流れが遮断され、第1流出管への流れが許容される。これに対し、電磁ソレノイドに電流が供給されない状態では、流入管から作用する流体の圧力により制御弁体が第2制御位置に位置することで、流入管から流体制御部に供給される流体は第1流出管への流れが遮断され、第2流出管への流れが許容される。
また、この構成では、電磁ソレノイドがハウジングの内部に配置されるため、ハウジングの外部に電磁ソレノイドを配置する構成と比較して流体制御弁の小型化が可能となる。更に、この構成では、電磁ソレノイドに電流を供給し、制御弁体を第1制御位置に保持する際には流入管の流体から作用する圧力に抗して制御弁体を作動させるだけで済むため、例えば、制御弁体を第2制御位置に保持するスプリングを備えた構成のように、スプリングの付勢力に抗して制御弁体を作動させるように電磁ソレノイドの容量を増大させる必要がなく、電磁ソレノイドに供給する電流を増大させる必要もない。
従って、消費電力の増大を招くことなく流体の流れの切換が可能で、大型化を招くことのない流体制御弁が構成された。
【0014】
上記構成に加えた構成として、前記制御弁体は、前記流入管からの前記流体を前記第1流出管に対して直線的に送り出す位置に開口部を形成しており、前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記開口部を開放し、前記制御弁体が、前記第2制御位置にある場合に前記開口部を閉塞する弁部材を備えても良い。
【0015】
これによると、制御弁体が第1制御位置に保持されている場合には、制御弁体に形成された開口を制御弁体が開放するため、流入管からの流体を第1流出管に流すことが可能となる。また、制御弁体が第2制御位置にある場合には、制御弁体に形成された開口を弁部材が閉塞するため、流入管から第1流出管に向かう流体を遮断できる。
【0016】
上記構成に加えた構成として、前記開口部を閉塞する方向に、前記弁部材を付勢する付勢部材を更に備え、前記付勢部材は、前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記流入管から供給される前記流体の圧力による前記弁部材の開放を許容し、前記制御弁体が前記第2制御位置にある場合に前記流入管から供給される前記流体の圧力に抗して前記弁部材を閉塞するように付勢力が設定されても良い。
【0017】
これによると、制御弁体が、第1制御位置に保持されている場合には、付勢部材が、流入管から供給される流体の圧力により弁部材の開放を許し、制御弁体が第2制御位置にある場合には、流入管から供給される流体の圧力に抗して付勢部材が付勢力により弁部材を閉塞状態に保持できる。
【0018】
上記構成に加えた構成として、前記制御弁体が、前記第1制御位置に保持されている場合に前記弁部材を開放し、前記制御弁体が前記第2制御位置にある場合に前記弁部材を閉塞するように固定された状態で前記弁部材が備えられても良い。
【0019】
これによると、弁部材を固定状態に設けることにより、制御弁体が第1制御位置と第2制御位置との間で移動することに連係して、弁部材の閉塞と開放とを行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】制御弁体が第2制御位置に設定された流体制御弁の断面図である。
【
図2】制御弁体が第1制御位置に設定された流体制御弁の断面図である。
【
図4】制御弁体が第2制御位置に設定された別実施形態(a)の流体制御弁の断面図である。
【
図5】制御弁体が第1制御位置に設定された別実施形態(a)の流体制御弁の断面図である。
【
図6】制御弁体が第2制御位置に設定された別実施形態(b)の流体制御弁の断面図である。
【
図7】制御弁体が第1制御位置に設定された別実施形態(b)の流体制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1~
図3に示すように、内部に流体制御部Cを有するハウジング10と、ハウジング10の流体制御部Cに流体を供給する流入管11と、流体制御部Cから流体を送り出す直進流出管12(第1流出管の一例)、及び、分岐流出管13(第2流出管の一例)と、筒状の電磁ソレノイド6とを備えることで流体制御弁Aが構成されている。尚、後述するように、電磁ソレノイド6は筒状のコア6aを有するため、筒状の電磁ソレノイド6として説明している。
【0022】
この流体制御弁Aは、車両に備えたエンジンの冷却水(流体)をラジエータ(図示せず)に供給する流路中に配置され、冷却水(流体)の流れを制御するために用いられるものを想定している。また、この流体制御弁Aは、流入管11に供給される流体を、流体制御部Cにおいて直進流出管12と分岐流出管13との何れか一方に送り出す三方弁として機能する。
【0023】
ハウジング10は、樹脂材で成る流路軸芯Xを中心とする円筒状に成形され、このハウジング10に対し、樹脂材で成り流路軸芯Xと同軸芯の姿勢となる筒状の流入管11と、樹脂材で成り流路軸芯Xと同軸芯の姿勢となる筒状の直進流出管12と、樹脂材で成り流路軸芯Xに交差する姿勢の分岐流出管13とを有している。尚、分岐流出管13は、流路軸芯Xに対して直交する姿勢で形成されても良い。
【0024】
流体制御部Cは、
図2に示す第1制御位置P1と、
図1に示す第2制御位置P2との間で移動自在で鉄板材等の磁性体製の制御弁体1と、制御弁体1の位置を切り換える筒状の電磁ソレノイド6とを備えている。この構成から、電磁ソレノイド6に電流を供給する駆動状態と、電磁ソレノイド6に電流を供給しない非駆動状態との一方の選択により、制御弁体1が第1制御位置P1と第2制御位置P2との何れかに設定され、流入管11に供給される流体を、直進流出管12と分岐流出管13との何れか一方に送り出す制御を実現している。
【0025】
〔ハウジング〕
図1~
図3に示すように、流入管11を下側に配置し、直進流出管12を上側に配置した姿勢で流体制御弁Aの各部の詳細を説明する。
【0026】
前述したようにハウジング10は、流路軸芯Xを中心とした円筒状に形成されると共に、外測面の一部を外方に膨出させた膨出部14を一体的に形成している。この膨出部14の内部の膨出空間14aを流体制御部Cに連通させ、更に、膨出空間14aに連通するように膨出部14の外面に筒状の分岐流出管13が一体形成されている。
【0027】
流入管11は、基端側(
図1~
図3で上端側)にフランジ壁11aを一体形成しており、このフランジ壁11aをハウジング10の底面に対し溶着等の技術で連結している。また、直進流出管12の基端側(
図1~
図3で下端側)に直進流出管12より大径となるガイド筒部12aが一体的に形成され、このガイド筒部12aの下端位置に一体的にカバー壁12bが形成され、このカバー壁12bをハウジング10の上面から膨出部14に亘る領域を覆う位置に対し溶着等の技術により連結している。
【0028】
ハウジング10の内部の上部位置と、膨出部14の上部位置とに亘る空間に制御弁体1が収容され、この空間において流路軸芯Xに直交する姿勢で制御弁体1の外周部分に当接可能な弁座15が形成されている。この制御弁体1と前述した電磁ソレノイド6とで流体制御部Cが構成されている。
【0029】
〔流体制御部:制御弁体〕
制御弁体1は、鉄板材等の磁性材料で成り、
図1~
図3に示すように制御弁体1は、弁座15のうちハウジング10の内周部位に当接する円環状部分1aと、弁座15のうち膨出部14の内周部位に当接するように円環状部分1aから外方に突出する舌片状部分1bとが一体的に形成されている。
【0030】
この流体制御弁Aでは、円環状部分1aで弁座15に対向する部位と、舌片状部分1bで弁座15に対向する部位にゴムや樹脂で成る弁座シール16が備えられている。特に、
図2に示すように、電磁ソレノイド6が駆動され、吸引力によって制御弁体1が弁座15に当接する位置が第1制御位置P1となる。また、電磁ソレノイド6が非駆動状態にあり、流入管11から供給される流体の圧力によって制御弁体1が弁座15から離間する位置が、
図1に示す第2制御位置P2となる。
【0031】
制御弁体1のうち、ハウジング10の内部に収容される部位(円環状部分1a)の中央部に開口部1cが形成されている。開口部1cは、流路軸芯Xに沿う方向視において流路軸芯Xを中心とする円形であり、流路軸芯Xに沿う方向視において開口部1cの内径より大径で、制御弁体1の移動に伴い、開口部1cを開閉する弁部材2がハウジング10の内部に配置されている。
【0032】
特に、制御弁体1の板状部分の姿勢が流路軸芯Xに直交する姿勢となるように制御弁体1の全体の姿勢が設定され、これと同様に、弁部材2の板状部分の姿勢が流路軸芯Xに対して直交する姿勢に設定されている。
【0033】
弁部材2は、流路軸芯Xと平行姿勢となる複数のガイド体2aを外周部に設けており、この複数のガイド体2aを、前述したガイド筒部12aの内周面に対し流路軸芯Xに沿う方向に移動可能に接触させている。また、この弁部材2によって開口部1cを閉塞する方向に付勢する圧縮コイル型のスプリング3(付勢部材の一例)を、ガイド筒部12aの内部の領域に配置している。更に、弁部材2の外周には、制御弁体1のうち開口部1cより外側に接触する弁部材シール4を備えている。
【0034】
この弁部材シール4は、弁部材2の外周のうち、制御弁体1に対向する面に備えられるものと、ガイド筒部12aから、制御弁体1の方向に突出する位置に配置されたリング状部材12tに支持されるものとで構成されている。特に、リング状部材12tは、流路軸芯Xと平行する姿勢で上下方向に貫通する連通孔が形成され、リング状部材12tに対して弁部材シール4を形成する際には、金型を用いてゴム等を充填することにより、複数の貫通孔にゴム等が流れ、リング状部材12tの下面と上面とにゴム等で成る弁部材シール4が形成される。
【0035】
これにより、弁部材2の外周に形成された弁部材シール4は、制御弁体1の上面と、弁部材2の下面との間での冷却水のリークを抑制し、リング状部材12tに形成された弁部材シール4は、制御弁体1の上面とリング状部材12tの下面との間、及び、リング状部材12tの上面とカバー壁12bとの間での冷却水のリークを抑制する。
【0036】
この流体制御弁Aでは、制御弁体1が第1制御位置P1に保持されている場合に、流入管11から流入する流体の圧力によって弁部材2を移動させて開口部1cを開放し、制御弁体1が第2制御位置P2に位置する場合に、流入管11から流入する流体の圧力に抗して弁部材2で開口部1cを閉塞する位置に保持するようにスプリング3の付勢力が設定されている。
【0037】
この流体制御部Cでは、制御弁体1が第2制御位置P2に位置する場合にスプリング3が圧縮して密着状態に達するように構成することも可能であり、このように構成することにより、弁部材2による開口部1cの閉塞を確実に行える。
【0038】
〔流体制御部:電磁ソレノイド〕
電磁ソレノイド6は、流路軸芯Xを中心とする鉄材等の磁性体で構成される筒状のコア6aと、コア6aを取り囲む位置に配置されたコイル部6bと、流路軸芯Xに沿う領域でコア6aの外周に配置され鉄材等の性体で成るヨーク部6cとを備えている。また、これらコア6aと、コイル部6bと、ヨーク部6cとは、ハウジング10の成形時にインサートされることでハウジング10と一体化されている。
【0039】
筒状のコア6aは、流入管11から供給される流体を内部に直線的に流す位置に配置され、このコア6aのうち、流体の流動方向の下流側に大径となる吸着部6atが形成されている。この吸着部6atのうち、制御弁体1に対向する端面を弁座15と一致する位置に配置している。また、コイル部6bは、銅線等の良導体で成るコイル線を筒状で絶縁性材料で成るボビンに巻回している。
【0040】
ヨーク部6cは、コイル部6bに電流が供給された場合に、コア6aの下端から制御弁体1を介しコア6aの上端の吸着部6atに亘る領域に磁束が流れる磁気回路を形成する。また、磁気回路で漏れ磁束を抑制するためにヨーク部6cの端部と制御弁体1とを近接させるように、これらの位置関係が設定されている。
【0041】
〔実施形態の作用効果〕
この構成から、流入管11から供給される流体の圧力が流体制御部Cの制御弁体1に作用する状態において、電磁ソレノイド6のコイル部6bに電流を供給した場合には、コア6aの吸着部6atと制御弁体1との間に作用する磁力により、制御弁体1が、流入管11の流体から作用する圧力に抗して弁座15に密着し、
図2に示す第1制御位置P1に保持される。
【0042】
このように制御弁体1が第1制御位置P1に保持された場合には、流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が制御弁体1の舌片状部分1bで閉塞される。これと同時に、流入管11から供給される流体の圧力により制御弁体1の開口部1cから弁部材2が、スプリング3の付勢力に抗して離間し、開口部1cが開放されるため、分岐流出管13に流体が流れることなく、
図2に矢印で示すよう直進流出管12に流体が送り出される。
【0043】
また、弁部材2が作動する場合には、複数のガイド体2aが、ガイド筒部12aの内周面に摺接する状態で移動するため、弁部材2の板状部の姿勢が流路軸芯Xに対して直交する姿勢に維持される。
【0044】
これに対し、流入管11に流体の圧力が作用する状態で、電磁ソレノイド6が非駆動状態にある場合には、流入管11の流体から作用する圧力により制御弁体1が弁座15から浮き上がり、
図1に示す第2制御位置P2に位置することになる。
【0045】
このように制御弁体1が第2制御位置P2にある場合には、制御弁体1の開口部1cが、スプリング3の付勢力が作用する弁部材2により閉塞される。これと同時に、流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が開放するため、流入管11からの流体は、制御弁体1に沿って膨出部14に流れ、直進流出管12に流体を流すことなく、
図1に矢印で示すように分岐流出管13から送り出される。
【0046】
特に、この流体制御弁Aでは、流入管11から供給される流体の圧力を、制御弁体1の板状部分に対して垂直に作用するように、流体の流動方向と制御弁体1との姿勢が決められているため、制御弁体1を第2制御位置P2に維持するためのスプリング類を必要としない。このようにスプリング類の付勢力が制御弁体1に作用しないため、スプリング類の付勢力が作用する構成と比較すると、制御弁体1を第1制御位置P1に保持するために電磁ソレノイド6に供給する電流の増大の抑制を可能にしている。
【0047】
更に、制御弁体1が第1制御位置P1に保持されている場合と、制御弁体1が第2制御位置P2に位置する場合とにおいて、スプリング3から弁部材2に作用する付勢力が変化する現象を利用することで弁部材2の位置の切り換えを可能にしている。
【0048】
つまり、制御弁体1が第1制御位置P1に保持されている場合には、スプリング3が比較的弛緩した状態にあるため、流入管11から供給される流体の圧力によって弁部材2を開放方向に移動させる開口部1cを開放する。これに対し、制御弁体1が第2制御位置P2に位置する場合には、スプリング3が圧縮され付勢力が増大するため、流入管11から供給される流体の圧力によっては開口部1cを開放せずに弁部材2による開口部1cの閉塞状態を維持する。
【0049】
また、この構成では、電磁ソレノイド6がハウジング10の内部に配置されるため、例えば、ハウジング10の外部に電磁ソレノイド6を配置する構成と比較して流体制御弁Aの小型化が実現する。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0051】
(a)
図4、
図5に示すように、実施形態と同様に、流体制御弁Aは、ハウジング10と、流入管11と、直進流出管12(第1流出管の一例)と、分岐流出管13(第2流出管の一例)とを備えている。また、流体制御部Cは、第1制御位置P1と第2制御位置P2とに移動自在な磁性体製の制御弁体1と、制御弁体1の位置を切り換える筒状の電磁ソレノイド6とを備えている。
【0052】
この別実施形態(a)の流体制御弁Aでは、制御弁体1の円環状部分1aを、コア6aの吸着部6atの方向に突出させる加工により突出成形部1dを形成している。この突出成形部1dの外面が、電磁ソレノイド6のコア6aの大径部分に嵌合可能にされると共に、突出成形部1dの内面の凹状となる部位に弁部材2が入り込む状態で、開口部1cを閉塞できるように構成されている。
【0053】
弁部材2の外周には、流路軸芯Xと平行姿勢の筒状となるガイド体2aが一体形成され、これらのガイド体2aにスプリング3のコイル部分が挿入されるように構成されている。更に、ガイド体2aの突出端は、制御弁体1が第2制御位置P2に達した状態で直進流出管12のガイド筒部12aの内周の一部に形成された規制部12cに当接するように位置関係が設定されている。
【0054】
この別実施形態(a)では、実施形態と同様に、制御弁体1に対して弁座シール16が形成され、弁部材2の外周に制御弁体1のうち開口部1cより外側に接触する弁部材シール4を備えている。尚、この構成では、突出成形部1dの外周面と、コア6aの大径部分の内周面との何れかにシールを備えても良い。
【0055】
特に、制御弁体1のうち開口部1cより外側に、流路軸芯Xと平行する姿勢で上下方向に貫通する連通孔が形成され、制御弁体1に対して弁座シール16を形成する際には、金型を用いてゴム等を充填することにより、複数の貫通孔にゴム等が流れ、弁座シール16の下面と上面とにゴム等で成る弁座シール16が形成される。このように弁座シール16が形成されるため、弁座シール16は、制御弁体1の上面とカバー壁12bとの間での冷却水のリークを抑制し、制御弁体1の下面と弁座15との間での冷却水のリークを抑制する。
【0056】
これにより、この別実施形態(a)では、電磁ソレノイド6のコイル部6bに電流を供給し、
図5に示すように制御弁体1が第1制御位置P1に保持された場合には、制御弁体1の突出成形部1dの外周面が、コア6aの大径部分の内周面(吸着部6atの内周面)に嵌合する。また、第1制御位置P1では、流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が制御弁体1の舌片状部分1bで閉塞され、これと同時に、流入管11から供給される流体の圧力により、弁部材2が、スプリング3の付勢力に抗して制御弁体1の開口部1cから離間して開口部1cが開放される。その結果、分岐流出管13に流体が流れることなく、
図5に矢印で示すように直進流出管12に流体が送り出される。
【0057】
これに対し、電磁ソレノイド6のコイル部6bに電流が供給されない場合には、
図4に示すように、制御弁体1が、流入管11から供給される流体の圧力により弁部材2のガイド体2aが規制部12cに当接するように第2制御位置P2に移動し、流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が開放される。これと同時に、スプリング3から弁部材2に作用する付勢力が増大し、制御弁体1の開口部1cが弁部材2で閉塞される。その結果、直進流出管12に流体を送り出すことなく、
図4に矢印で示すように分岐流出管13に流体が送り出される。
【0058】
(b)
図6、
図7に示すように、実施形態と同様に、流体制御弁Aは、ハウジング10と、流入管11と、直進流出管12(第1流出管の一例)と、分岐流出管13(第2流出管の一例)とを備えている。また、流体制御部Cは、第1制御位置P1と第2制御位置P2とに移動自在な磁性体製の制御弁体1と、制御弁体1の位置を切り換える筒状の電磁ソレノイド6とを備えている。
【0059】
この別実施形態(b)の流体制御弁Aでは、実施形態と同様に、制御弁体1のうち、ハウジング10の内部に収容される部位(円環状部分1a)の中央部に開口部1cが形成されているが、弁部材2がハウジング10の内部に固定され、実施形態に記載したスプリング3を備えない点において、実施形態と構成が異なる。ただし、弁部材2の外周とガイド筒部12aの内周との間には、流体を直進流出管12に流すことを可能にする間隙Tが形成されている。
【0060】
この別実施形態(b)では、
図7に示すように制御弁体1が第1制御位置P1に保持される状態で弁部材2が、制御弁体1の開口部1cから離間することで開口部1cを開放する。また、
図6に示すように制御弁体1が第2制御位置P2に位置する状態で弁部材2が、制御弁体1の開口部1cを閉塞するように位置関係が設定されている。
【0061】
この別実施形態(b)では、前述した別実施形態(a)と同様に、制御弁体1に対して弁座シール16が形成され、弁部材2の外周に制御弁体1のうち開口部1cより外側に接触する弁部材シール4を備えている。
【0062】
特に、制御弁体1のうち開口部1cより外側に、流路軸芯Xと平行する姿勢で上下方向に貫通する連通孔が形成され、制御弁体1に対して弁座シール16を形成する際には、金型を用いてゴム等を充填することにより、複数の貫通孔にゴム等が流れ、弁座シール16の下面と上面とにゴム等で成る弁座シール16が形成される。このように弁座シール16が形成されるため、この弁座シール16は、制御弁体1の上面とカバー壁12bとの間での冷却水のリークを抑制し、制御弁体1の下面とコア6aの吸着部6at(弁座15でも良い)との間での冷却水のリークを抑制する。
【0063】
これにより、この別実施形態(b)では、電磁ソレノイド6のコイル部6bに電流を供給し、制御弁体1が第1制御位置P1にある状態では流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が制御弁体1の舌片状部分1bで閉塞される。これと同時に、弁部材2が制御弁体1の開口部1cから離間するためて開口部1cが開放される。その結果、分岐流出管13に流体が流れることなく、
図7に矢印で示すように間隙Tを通って直進流出管12に流体が送り出される。
【0064】
これに対し、電磁ソレノイド6のコイル部6bに電流が供給されない場合には、制御弁体1が、流入管11から供給される流体の圧力により第2制御位置P2に移動して保持され、流体制御部Cから膨出部14に連通する空間が開放される。これと同時に、制御弁体1の開口部1cが弁部材2で閉塞される。その結果、直進流出管12に流体を送り出すことなく、
図6に矢印で示すように分岐流出管13に流体が送り出される。
【0065】
(c)流体制御弁Aで制御する流体として、冷却水の他にオイルのように水以外を対象とする。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、流体制御弁に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 制御弁体
1c 開口部
2 弁部材
3 スプリング(付勢部材)
6 電磁ソレノイド
10 ハウジング
11 流入管
12 直進流出管(第1流出管)
13 分岐流出管(第2流出管)
C 流体制御部
P1 第1制御位置
P2 第2制御位置