(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012583
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】急速換気可能な空気環境循環調整システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/00 20060101AFI20220107BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220107BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20220107BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20220107BHJP
F24F 7/00 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
F24F3/00 Z
F24F7/06 L
F24F7/10 Z
F24F7/08 Z
F24F7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114511
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000228028
【氏名又は名称】株式会社トルネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100111785
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 英房
(72)【発明者】
【氏名】松井 周生
【テーマコード(参考)】
3L053
3L056
3L058
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BD02
3L056BA01
3L058BD00
(57)【要約】
【課題】室内の空調された空気を吸い込んで清浄化し、これを送風して吹出先の室内の空気環境を整えるとともに、必要な場合に、清浄化した空気で急速な換気を行う。
【解決手段】室内空気Ainを取り込む取込口10と、外気AFinを取り込む外気取込口11と、前記各取込口10、11の後面にそれぞれ接続されて室内空気と外気を選択的に切り替える切替部60と、前記切替部により選択されて吸入した空気Ain、AFinの空気環境を調整して送出する空気調整部2と、前記空気調整部から送出された空気Aoutを室内に吹出す送出口40とを備え、前記切替部60は、通常は外気AFinを遮断して室内空気Ainを清浄化して送出口40に送り、急速な換気が必要な場合は室内空気Ainを遮断して外気AFinを清浄化して送出口40に送る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気(Ain)を取り込む取込口(10)と、
外気(AFin)を取り込む外気取込口(11)と、
前記各取込口(10、11)の後面にそれぞれ接続されて室内空気と外気を選択的に切り替える切替部(60)と、
前記切替部により選択されて吸入した空気(Ain、AFin)の空気環境を調整して送出する空気環境調整部(2)と、
前記空気環境調整部から送出された空気(Aout)を室内に吹出す送出口(40)と、を備え、
前記空気環境調整部(2)は、
吸入した空気(Ain、AFin)の粉塵を除去する空気清浄装置(20)と、前記空気清浄機と直列に接続されて空気の吸入及び吹出のために吸入側を減圧しおよび/または吹出側を加圧する送風装置(30)と、を含み、
前記室内空気取込口(10)と前記切替部(60)、前記外気取込口と前記切替部(60)、前記切替部と前記空気環境調整部(2)、及び前記空気環境部と送出口(40)との各相互間は気密となるように接続され、
前記切替部(60)は、
通常は外気(AFin)を遮断して室内空気(Ain)を清浄化して送出口(40)に送り、
急速な換気が必要な場合は室内空気(Ain)を遮断して外気(AFin)を清浄化して送出口(40)に送る空気環境循環調整システム(1A、1B)。
【請求項2】
(取込口複数バリエーション)
前記室内空気取込口(10)と前記外気取込口(11)はそれぞれ複数備えられ、
それらの各取込口(10、11)の後面に切替部(60)を備え、
前記切替部は、前記室内空気取込口(10)と前記外気取込口(20)を切り替えて室内空気(Ain)と外気(AFin)の選択的な取り込みを行う、請求項1に記載の空気環境循環調整システム。
【請求項3】
前記送出口(40)は複数備えられ、それらの送出口(40)の手前に分配部(62)を備えている、請求項1又は2に記載の空気環境循環調整システム(1B)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された空気環境循環調整システムを備え、室内空気を清浄化させながら循環させる住宅又は建物(80)であって、
排気ファン(70)と自然給気排気口(72)をさらに備えた住宅又は建物(80)。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載された空気環境循環調整システムを備え、一室から他室へ室内空気を清浄化させながら循環させる住宅又は建物(180)であって、
前記住宅又は建物は、排気ファン(70)と自然給気口(72)を備えた住宅又は建物(180)
。
【請求項6】
前記住宅(180)は、少なくとも2階建てあり、前記室内空気取込口(10)は最上階より下の階の部屋(181)に備えられ、前記送出口(40)は最上階の部屋(182)に備えられている、請求項5記載の住宅(180)。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載された空気環境循環調整システムに用いられる空気清浄ユニット(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の空気環境循環調整システム、特に、自然給気を行って機械排気をする比較的小規模な住宅における空気清浄を伴う空気環境循環調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の住宅の冷暖房方式は、部屋ごとに個別の空調機を設置し人が在室する部屋だけを冷暖房することが一般的であった。
一方、近年冷暖房に対するエネルギー消費を減少させるために住宅の気密性能や断熱性能の向上が図られるようになってきた。このような高気密・高断熱住宅では複数の部屋を備える住宅全体の空調を1台から2台の空調機で賄うことが可能となってきた(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
このため、一室を賄う空調能力があるエアコンを利用し、その温度調整された空気をさらに粉塵を除去して空気を清浄化し、それを他室に送り込んで、他室の空気環境を整えることが望まれるようになってきた。
【0004】
しかしながら、このような場合であっても、シックハウス対策等新鮮空気を給気するため24時間の換気が求められることがある。この種の換気は部屋ごとに一定量の排気風量を確保する必要があり、第1種~第3種の換気方式があるが、中でも自然給気を行って機械式の排気を行う方式(第3種換気)は、換気機器や自然換気などの条件が整いやすく、よく用いられている。
【0005】
加えて、近年では、室内での調理のあとに換気を求められることも多く、また、感染症対策のためなどに換気量を増加させることが望まれるようになってきた。
しかしながら、換気によって外気を取り込む際にはエネルギーのロスが生じるばかりか外気の粉塵を取り込むことになるため、これを防止する目的で外気の取入の際も粉塵を除去することが望まれるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-202460号公報
【特許文献2】特開2011-174674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的は、通常は、室内の空調された空気を吸い込んで清浄化し、これを送風して吹出先の室内の空気環境を整えるとともに、必要な場合に、急速な換気を行うことである。すなわち、住宅の一室における空調された空気を吸い込んで清浄化して送風し、送風した部屋の空気環境を整えながら、必要な場合に急速な換気が可能になる空気環境循環調整システムを提案することである。特に、床面積が比較的小さく(30坪以下程度)かつ第3種換気システムを採用している住宅に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(解決手段1)
本発明は、室内空気(Ain)を取り込む取込口(10)と、外気(AFin)を取り込む外気取込口(11)と、前記各取込口(10、11)の後面にそれぞれ接続されて室内空気と外気を選択的に切り替える切替部(60)と、前記切替部により選択されて吸入した空気(Ain、AFin)の空気環境を調整して送出する空気環境調整部(2)と、前記空気環境調整部から送出された空気(Aout)を室内に吹出す送出口(40)と、を備え、
前記空気環境調整部(2)は、吸入した空気(Ain、AFin)の粉塵を除去する空気清浄装置(20)と、前記空気清浄機と直列に接続されて空気の吸入及び吹出のために吸入側を減圧しおよび/または吹出側を加圧する送風装置(30)と、を含み、
前記室内空気取込口(10)と前記切替部(60)、前記外気取込口と前記切替部(60)、前記切替部と前記空気環境調整部(2)、及び前記空気環境部と送出口(40)との各相互間は気密となるように接続され、
前記切替部(60)は、通常は外気(AFin)を遮断して室内空気(Ain)を清浄化して送出口(40)に送り、急速な換気が必要な場合は室内空気(Ain)を遮断して外気(AFin)を清浄化して送出口(40)に送る空気環境循環調整システム(1A 、1B)である。
これにより、通常は、室内の空調された空気を吸い込んで清浄化し、これを送風して吹出先の室内の空気環境を整えるとともに、必要な場合に、換気を最優先して清浄な空気により急速な換気を行うことができる。したがって、通常は、エネルギーロスを少なくして清浄化した空気を循環させて空気環境を整えながら、換気が必要な際は、外気を清浄化して室内に導入し、換気効率を高めた空気環境を整えることができる。
【0009】
(解決手段2)
この場合、前記室内空気取込口(10)と前記外気取込口(11)はそれぞれ複数備えられ、それらの各取込口(10、11)の後面に切替部(60)を備え、前記切替部は、前記室内空気取込口(10)と前記外気取込口(20)を切り替えて室内空気(Ain)と外気(AFin)の選択的な取り込みを行うことが望ましい。切替部は、たとえば、ダクトの途中に送風を合流させるダクト合流部と前記ダクト合流部の前面側に送風を遮断するシャッター機構をそれぞれ設けるとよい。
このようにすると、空気環境を整える際に、循環させてエネルギーロスを少なくすることと急速に換気させることとを一つのシステムで任意に選択できることができる。
【0010】
(解決手段3)
この場合、前記送出口は複数備えられ、それらの送出口の手前に分配部を備えることが望ましい。分配部は、たとえば、ダクトの途中に送風を分岐するダクト分岐部と前記ダクト分岐部の後面側に送風を遮断するシャッター機構をそれぞれ設けるとよい。
このようにすると、空気環境を整えたい場所が複数であっても任意に選択することができる。
【0011】
(解決手段4)
本発明は、前記の記載された空気環境循環調整システムを備えている住宅又は建物(80)であって、排気ファン(70)と自然給気排気口(72)をさらに備えた住宅又は建物(80)である。
これにより、空気取込口のある部屋の空気を取り込み、さらに清浄化した空気を、空気環境を整えたい送出口のある部屋に送ることができる。
【0012】
(解決手段5)
本発明は、前記の記載された空気環境循環調整システムを備え、一室から他室へ室内空気を清浄化させながら循環させる住宅又は建物(180)であって、排気ファン(70)と自然給気排気口(72)を備えた住宅又は建物(180)である。
このようにすると、空気取込口のある部屋の空気を取り込み、さらに清浄化した空気を、空気環境を整えたい送出口のある別の部屋に送ることができる。
【0013】
(解決手段6)
この場合、前記住宅180は、少なくとも2階建てあり、前記室内空気取込口10は最上階より下の階の部屋(181)に備えられ、前記送出口(40)は最上階の部屋(182)に備えられていることが好ましい。
このようにすると、天候などの環境に左右されやすく屋根を通じて寒暖の影響を受けやすい最上階の部屋の空気環境を、このような温度変化の影響を比較的受けにくい最上階より下の階の部屋の温度の空気を清浄化して送ることにより、改善できる。
【0014】
(解決手段7)
本発明は、空気環境循環調整システムに用いられる空気清浄ユニットである。
これにより、空気環境システムに好適な空気清浄機を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のような構成により、空気環境を整えたい部屋に清浄化した空気を循環させて空気環境を整えることができるとともに、換気が必要な場合に清浄化した空気で急速に換気することを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施例である空気環境循環調整システム(実施例1)のシステム概念図である。
【
図2】実施例1に用いられる空気調整部の構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の空気清浄機を示す外観斜視図である。
【
図5】本発明の空気清浄機の内部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施例である空気環境循環調整システム(実施例2)のシステム概念図である。
【
図8】実施例2に用いられる空気調整部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
(空気環境循環調整システム)
図1に、本例の空気環境循環調整システム1Aのシステム概念を示す。
本例の空気環境循環調整システム1は、同図に示すように、一室の空気Ainを取り込む室内空気取込口10と、室外の空気AFinを取り込む外気取込口11と、前記各取込口10、11の後面に接続された切替部60と、切替部の後面に接続され各取込口10、11から取り込んだ空気Ain、AFinのいずれかの空気について空気環境を調整する空気調整部2と、この空気調整部2で調整した空気Aoutを送り出す送出口40を主要な構成とする。
【0019】
(空気調整部)
この空気調整部2は、空気清浄部20と送風部30とを備えている。空気清浄部20と送風部30は、直列になるように配置することができ、いずれを先後とすることもできる。室内空気の取込口10と切替部60、外気取込口11と切替部60、切替部と空気環境調整部2、及び空気環境部2と送出口40との各相互間は気密となるように接続され、たとえばダクト50(
図2など参照。)で気密となるように接続することができる。
【0020】
このようにすると、空気環境循環調整システム1Aで取り扱う空気は外部の空気と遮断することができ、室内空気の取込口10及び外気空気取込口11で取り込んだ空気Ain、AFinを調整した空気Aoutとして送出口40から送り出すことにより、室内空気を取り込んで清浄化し、これを送り出して循環させることができる。ダクトに切替部を備えれば、送風の分配や遮断ができ、室内空気の取込口10、外気取込口11と送出口40を任意に選択することができる。
【0021】
(切替部)
加えて、空気環境循環調整システム1Aは、外気取込口11と切替部60を有する。切替部60は、ダンパー機構61を備える。ダンパー機構61はダクト50の中間に備えられる空気流量のON-OFF制御を行う電動シャッター機構(開閉装置)61で、空気の通り道である風道を遮断・開放するものである。たとえば、ダクトの断面が円形の風道では、モータ(不図示)で風道の形に添った円形の羽根を風道に対し起立位置にさせて遮断し、寝かせた位置にして開放することが可能である。これらの操作は、空気清浄ユニットの操作パネル(不図示)のスイッチで行うようにしてもよい。
通常は、前記切替部60は、通常は外気AFinを遮断して室内空気Ainを清浄化して送出口40に送り、急速な換気が必要な場合は室内空気Ainを遮断して外気AFinを清浄化して送出口(40)に送ることができる。
【0022】
このようにすると、空気循環モードと急速換気モードを選択的に設定することができる。空気循環モードでは、空気環境を整える際に、循環させてエネルギーロスを少なくすることができる。一方、急速換気モードでは、空気循環よりも換気を優先し、外気を清浄化し、これを送出することによって急速に換気させることができる。空気環境循環調整システム1Aでは、切替部60において、室内空気の取り込みと外気の取り込みを切り替えることによりモードの切り替えを実現でき、すなわち、一つのシステムで任意に選択できる。
【0023】
たとえば、急速換気モードは、タイマーなどを用いて制御することによって、1時間に1回など定期的に換気をすることができる。また、換気量を計測して、一定時間に一定の換気量になるように切替部を制御することもできる。また、他のコンピュータなどから指令をもらって切り替えることもできる。この場合、コンピュータをインターネットに常時接続しておけば、IoT(Internet of Things)機器として作動させることができる。加えて、作動実績をインターネットに接続された他のコンピュータに送ることもできる。
【0024】
また、この空気環境調整システム1は、外部と空気交換が少ない建物、たとえば、高気密高断熱住宅などの室内間で空気を清浄化しながら循環させる空気環境循環調整システム1Aとして用いることができる。この場合は、先述のように、ダクト50で相互間を気密となるように接続することが好ましい。加えて、室内空気の取込口10を空気温度及び/または空気湿度を調整している部屋に備えれば、送出口40を設けた部屋の空気温度及び/または湿度を調整しながら、併せて清浄化した空気を送出することができる。
【0025】
このようにすると、空気温度及び/または空気湿度に加えて清浄化した空気Aoutをダクト50を介してどの部屋にでも送ることができるため、空気環境を整えたい部屋を任意に選択して空気環境を整えることができる。特に、高気密高断熱住宅では、住宅全体で高気密かつ高断熱であることから、住宅内部で空気を循環して空気環境を能率よく整えることができる。
さらに、既設の高気密高断熱住宅であっても、空気環境循環調整システム1Aを実装することにより、空気環境調整機能を付け加えることができる。空気環境調整システム1は、既存のシャフトや天井裏、場合によっては床下に設置して、室内空気の取込口10と送出口40を各部屋に設ければよく、さらに操作パネルを必要な個所に設けておけばよい。そのように設置することによって、各室の美観を損ねることもない。
以下、実施例にもとづいて、空気環境循環調整システム1A、1Bについて説明する。
【実施例0026】
図3に実施例1である空気環境循環調整システム1Aを示す。本例では、住宅80に空気環境システム3Bが実装されている。本例ではまず空気清浄部20で空気清浄を行ってから送風部30で空気を送り出している。これらは、先後が逆の配置でも差し支えない。
図2にシステム本体3Aの具体的構成を示す。
空気清浄部20は、後述の
図4に示すように、空気清浄ユニット20で構成されている。次いで、ダクト50を介して空気清浄部20の出側に送風部30が設けられている。送風部30は、所定の風量で送出口40から吹出すようにその調整を行う。送風による生じる負圧で室内空気の取込口10から空気Ainを吸い込むことができる。
【0027】
(空気清浄ユニット)
図4は、本例の空気清浄部20である空気清浄ユニット20の外観を示す模式斜視図である。空気清浄ユニット20は、後述のように、集塵のプレフィルターとして、防虫ネット部23の防虫ネット23aで比較的大きな粒子の塵埃をトラップし、その後、メンテパネル24の内部に配置されている電子式集塵フィルター24aでさらに細かい塵埃を捉えるものである。空気を吹込口21から吸い込み、吹出口22から清浄化した空気を吹出す。その筐体には、空気清浄ユニット20の運転・停止を行う電源スイッチ25が設けられている。なお、これと並列に、スイッチパネル(不図示)を設けることもできる。また、ユニット20の固定のための金具が4か所設けられている。これにより、床・壁に取り付けられた、ねじやアンカーを介して空気清浄ユニット20を固定することができる。
【0028】
図4に示すように、空気清浄ユニット20は、大きさが全幅779~798×奥行405×高さ220mm程度の大きさで、吸込口21と吹出口22は幅方向のそれぞれの端部に設けられており、これらの径100~150である。このため、ダクトを吸込口21及び吹出口22接続したときに高さ220mm内に収まり、建物内のシャフトや屋根裏、天井、床下などに設置しやすいコンパクトな形状を有している。
【0029】
図5(a)は、防虫ネット部23を引き出すとともに、メンテパネル24(
図4)を開けてその内部の空気清浄ユニット20を引き出した斜視図である。防虫ネット部23は、防虫ネット23aとそれを収納するセル枠23bを引き出すことができる。これに続く電子式集塵フィルター24aは、メンテパネル24を開けると防虫ネット23aに続いて備えられている。
【0030】
(プレフィルター:防虫ネット)
図5(b)は、セル枠23bから取り外した防虫ネット23aを示す。防虫ネット23aは、電子式集塵フィルター24aのプレフィルターとして設けられており、ポリプロピレン製の50メッシュ程度の荒い網目のフィルターである。おおむね四角錐台の形状をしており、セル枠23bに着脱自在に嵌めこまれている。防虫ネット部23は、取込口21のすぐ内側にあって取り込まれた空気Ainが最初に通過する。主として、目視可能な程度の浮遊する粒子を集塵する。おおむね粒子径が10~20μm以上のものをターゲットとしている。この防虫ネット23aはメンテナンスのため交換可能である。このため、防虫ネット部23の扉は開閉可能であり係止するためのラッチ機構が備えられている。
【0031】
(メインフィルター:電子式集塵フィルター)
電子式集塵フィルター24aは、防虫ネット部23により浮遊する粗い粒子が除去された後、さらに細かい粒子を除去するメインフィルターとして設けられている。主として、粒子径が0.3μm以上のものをターゲットとしている。たとえば、空気中の土埃、花粉、黄砂やPM2.5などの浮遊粒子である。
図5(b)に示す電子式集塵フィルター24aは、周知の2段荷電型電気集塵機と呼ばれるものであり、イオン化部と、集塵部と、その電源を主として構成される。イオン化部で浮遊粒子を帯電させ、帯電した浮遊粒子を集塵部の電極でクーロン力によりひきつけて集塵を行う。
このような電子式集塵フィルター24aは、イオン化線とイオン化電極との間、及び集塵電極板と集塵対電極板との間の空間を空気が通過できるので、ろ紙フィルターに比較して圧力損失が少なく、空気中の浮遊粒子を効率よく除去できる。たとえば、定格風量120~180m
3/hの際に定格圧力損失は18~20Paとなり、粒子0.3~0.5μmの集塵効率は、84%~96%となる。
加えて、電源とイオン化部との間に定電流制御部を設けるとともに、電源と集塵部との間に測定部を備えた電圧段階制御部および電圧変更部を設けて、段階的制御を行うことができる。この制御は、たとえば、特許第5545559号に記載されている。
【0032】
電子式集塵フィルター24aは、以上のような構成であるため、イオン化部におけるコロナ放電などを安定して継続でき、集塵部に湿気などの環境の変動や集塵の継続による集塵物などにより、火花放電などの異常放電が起きても、印加電圧を下げて速やかに正常な電界形成を再開して集塵作用を継続し、異常放電の原因が解消されると、印加電圧を上げて速やかに集塵作用を継続する。したがって、湿気や結露などの自然回復可能な場合のみならず、集塵物の堆積などの自然回復の困難な場合も含めて、全体として、集塵作用を高効率で運用でき、その上メンテナンス頻度を減らすことができる。
【0033】
(送風装置)
図6に送風装置30(送風部)を示す。送風装置30は、空気清浄ユニット20で清浄化された空気を吹出口32に接続されたダクト50内に押し込んで送出先の送出口40に送風するファンである。筐体に吸込口31と吹出口32を備えている。送風装置30が動作すると、その吸込口側に負圧が発生するため、空気Ainが空気清浄部20に流れ込むことができる。たとえば、120~180m
3/hの定格風量を有するファンを用いることができる。
【0034】
(本システムを備えた住宅)
図3(a)(b)は本例の空気環境循環調整システム1Aを備えた住宅80の1階のフロアプランである。住宅80の中央に玄関81aとホール81bがあり、その周囲に1階の各部屋81c、81d、82a、82b、82c、82dが設けられている。
【0035】
空気環境循環調整システム1Aは
図3に示すような住宅80、すなわち床面積が比較的小さく(30坪以下程度)かつ第3種換気システムを採用している住宅に好適である。その理由は、住宅80に示すように、第3種換気(すなわち、自然給気+機械排気方式)の住宅においては、壁面86に屋外の新鮮空気を取り込む外気取入口である自然給気排気口72が設置され、また、トイレ82bや洗面所82dの壁面86には排気ファン70が設けられている。排気ファン70の排気風量は1時間あたり住宅容積の半分の空気量以上に設定されている。天井高さを2.4mとすると、30坪の床面積の場合の換気風量は、1時間あたり約120m
3 となり、25坪の場合は1時間あたり約100m
3と計算される。
【0036】
システム本体3Aは、住宅80のシャフト84内に設けられている。室内空気の取込口10は、1階居室81の壁86に設けられ、送出口40も同様である。
居室81は、空調設備の吹出口(不図示)があると、夏季などは、その部屋の冷房能力を活用し、空調により温度及び/または湿度を調整した空気を取り込むことができる。
その場合、床に近い壁86に設けられた室内空気の取込口10から、空気Ainを取り込むと、比較的低い温度の空気を取り込むことが可能であり、また、比較的粉塵濃度の高い空気を取り込むことが可能である。そのような空気を取り込むと、空気環境の調整の効果が高くなり、また、空気循環を促すことが可能である。
また、送出口40は、同図に示すようになるべく階段83やドアなどに向けると清浄化した空気Aoutが住宅80内を移動しやすくなり、住宅80全体の空気の循環が促進される。このため、送出口40には、吹出しの方向を可変できる整流パネル(不図示)を取り付けることができる。
【0037】
(循環モード及び急速換気モード)
空気環境循環調整システム1Aは、循環モードと急速換気モードを選択できる。
(循環モード)
図3(a)に循環モードの場合の空気のフローを示す。システム本体3Aはシャフト84内に収納されている。通常は、循環モードで作動させることができる。この循環モードでは、システム本体3Aは、取込口10から室内空気Ainを取り込み、清浄化した空気を送出口40から送出する。
図2(a)に循環モードの場合のシステム本体3A内の実装状況と空気のフローを示す。同図に示すようにシステム本体3Aは、それぞれ気密に保たれダクトで接続された切替部60、空気清浄機ユニット20、送付装置30が収納されている。切替部60は、それぞれの空気を遮断できる電動シャッター機構61、61を備えている。循環モードでは、外気AFinは遮断され、室内空気Ainが取り込まれ、空気清浄ユニット20で清浄化されて、送風装置30により清浄化された空気Aoutが送出口40から室内に送出される。
【0038】
この循環モードの場合、24時間換気は、居室81cや和室82aなどの壁面86に設置された複数の外気取入口72から外気を取り入れ、トイレ82bや洗面所82dに設置された排気ファン70から排気を行う。その際の風量は前述のように 25坪の床面積の場合 1時間あたり100m3、30坪の床面積の場合は120m3となる。循環モード運転時は切替部60のAFin側 を閉じ、Ain側を開けて、送風装置30 と空気清浄機20による室内空気の清浄を行う循環モードとして動作する。送風装置30の送風能力で決定されるが、室内循環の風量は最大で1時間あたり200m3 に設定することができる。
【0039】
(急速換気モード)
図3(b)に急速換気モードの場合の空気のフローを示す。システム本体3Aはシャフト84内に収納されている。必要な場合に、急速換気モードで作動させることができる。この急速換気モードでは、システム本体3Aは、外気取込口11から外気AFinを取り込み、清浄化した空気を送出口40から送出する。
図2(b)に急速換気モードの場合のシステム本体3A内の実装状況と空気のフローを示す。同図に示すようにシステム本体3Aは、それぞれ気密に保たれダクトで接続された切替部60、空気清浄機ユニット20、送付装置30が収納されている。切替部60は、それぞれの空気を遮断できる電動シャッター機構61、61を備えている。急速換気モードでは、室内空気Ainは遮断され、外気AFinが取り込まれ、空気清浄ユニット20で清浄化されて、送風装置30により清浄化された空気Aoutが送出口40から室内に送出される。
【0040】
急速換気モード運転時は切替部の室内空気Ain側を閉じ、外気Aout側を開けて、室内空気Ainの代わりに外気(屋外の新鮮空気)を取り込み、送風装置30と空気清浄機20によって清浄化を行う。これにより、屋外の花粉や黄砂、PM2.5などを除去し、送出口40 から住宅80内に吹き出す。この際の吹出風量は送風装置30の送風能力から 先述のように1時間あたり200m3に設定することができる。この場合は、住宅80内が加圧される。24時間換気で使用する送風ファン70と外気取入口である自然給気排気口72から1時間あたり200m3が排気として住宅外に排出される。そうすると、換気量は25坪の場合100m3のところ200m3となり2倍に、30 坪の場合120m3のところ200m3となり約1.7倍に増加させることができる。
【0041】
(ダクト)
ダクト50は、室内空気の取込口10から吸い込んだ空気Ainを空気清浄ユニット20に送り、送風装置30を経て、清浄化した空気Aoutを送出口40から送出先の各室内に送出するものであり、気密であることが必要である。ダクト50に代えて住宅80の躯体に設けられた竪孔・シャフトなどの気密性を有する空間を利用して空気を送っても差し支えなく、また、そのような気密性を有する空間を一部利用してすべてをダクト50で接続しなくても差し支えない。
【0042】
このようにすると、住宅80では、一つの部屋81の室内空気の取込口10から吸入した空気Ainを清浄化しダクト50を利用して他の部屋の送出口40から吹出すことができる。したがって、ダクト50を介してどの部屋にでも清浄化した空気を送ることができるため、空気環境を整えたい部屋を任意に選択して空気を循環させて空気環境を整えることができる。
特に、高気密・高断熱住宅では、住宅全体で高気密かつ高断熱であることから、住宅内部で空気を循環して空気環境を能率よく整えることができる。さらに、新設の住宅のみならず、既設の住宅であっても、空気環境調整システム1を実装することにより、空気環境調整機能を付け加えることができる。
このようにすると、住宅180では、1階の一室181の室内空気の取込口10から取り込んだ空気Ain1をシステム本体3Bで清浄化しダクト50を利用して同じ部屋の送出口40aと2階の他室182の送出口40bからそれぞれ清浄化した空気Aout1、Aout2を吹出すことができる。したがって、一室181の室内空気の取込口10から取り込んだ空気を循環させて同室181及び他室182の空気環境を整えることができる。どの部屋を整えるかは選択することもできる。
特に、高気密・高断熱住宅では、住宅内部で空気を循環して空気環境を能率よく整えることができ、新設の住宅のみならず、既設の住宅であっても、このような空気環境循環調整機能を付け加えることができる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。その場合でも、本発明の範囲に含まれるものである。