(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125848
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】面構造、面構造の製造方法、および、面構造用木製部材
(51)【国際特許分類】
E04C 2/26 20060101AFI20220822BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20220822BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220822BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20220822BHJP
E04C 2/38 20060101ALI20220822BHJP
E04B 1/14 20060101ALI20220822BHJP
E04B 1/61 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
E04C2/26 P
E04B1/16 B
E04B1/16 E
E04B5/02 B
E04B5/02 E
E04C2/30 L
E04C2/30 V
E04C2/38 M
E04B1/14
E04B1/61 504
E04B1/61 502L
E04B1/61 502N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023660
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 純太朗
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 章弘
【テーマコード(参考)】
2E125
2E162
【Fターム(参考)】
2E125AA57
2E125AE01
2E125AE16
2E125AG03
2E125BB02
2E162BA05
2E162BB01
2E162CA01
2E162CC01
2E162GB07
(57)【要約】
【課題】階高を低くすることができる面構造、面構造の製造方法、および、面構造用木製部材を提供する。
【解決手段】面構造20は、面構造用木製型枠21に対してセメント系材料を打設することにより製造される。面構造20は、木製下面材25と、木製下面材25の上面25aに接続される木製リブ材26と、木製リブ材26の上端に接続されて、木製下面材25の上方に間隔を空けて設けられるセメント系面材22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製下面材と、
前記木製下面材の上面に接続される木製リブ材と、
前記木製リブ材の上端に接続されて、前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるセメント系面材と、を備える
面構造。
【請求項2】
前記セメント系面材と前記木製リブ材とは、
一端が前記セメント系面材に埋設され、他端が前記木製リブ材に埋設された第1埋設材で接続されている
請求項1に記載の面構造。
【請求項3】
前記木製下面材と前記木製リブ材とは、
一端が前記木製下面材に埋設され、他端が前記木製リブ材に埋設された第2埋設材で接続されている
請求項1または2に記載の面構造。
【請求項4】
前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されており、
前記木製リブ材は、
隣り合う2つの部分下面材の境界部分に設けられて、前記2つの部分下面材の各々に対して連結される連結リブ材を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の面構造。
【請求項5】
前記木製リブ材は、
一対の第1木製リブ材である第1木製リブ材群を有し、
前記セメント系面材は、
前記木製リブ材の上端に接続されるセメント系上面部と、
前記セメント系上面部から垂下して前記第1木製リブ材群の隣り合う前記第1木製リブ材の間に位置するセメント系垂下部と、を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の面構造。
【請求項6】
前記セメント系垂下部と前記木製下面材は、
一端が前記セメント系垂下部に埋設され、他端が前記木製下面材に埋設された第3埋設材で接続されている
請求項5に記載の面構造。
【請求項7】
前記木製リブ材は、
前記第1木製リブ材群を複数有し、
隣り合う前記第1木製リブ材群の間に設けられている第2木製リブ材を有する
請求項5または6に記載の面構造。
【請求項8】
前記セメント系面材の下面に木製受面材を有する
請求項1~7のいずれか一項に記載の面構造。
【請求項9】
前記面構造は、前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記セメント系面材を備える面構造体ユニットを並設したものであり、
隣り合う面構造体ユニットのセメント系面材が連結されている
請求項1~8のいずれか一項に記載の面構造。
【請求項10】
木製下面材の上面に木製リブ材を接続するリブ材接続工程と、
前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるように、前記木製リブ材の上端に木製受面材を接続する受面材接続工程と、
前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記木製受面材を型枠としてセメント系材料を打設して、前記木製受面材の上面に支持されるセメント系面材を形成する打設工程と、を備える
面構造の製造方法。
【請求項11】
前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されており、
前記リブ材接続工程は、
隣り合う2つの部分下面材の境界部分に木製リブ材を配置して、前記2つの部分下面材の各々に対して当該木製リブ材を連結する部分下面材連結工程を含む
請求項10に記載の面構造の製造方法。
【請求項12】
前記木製リブ材は、一対の第1木製リブ材である第1木製リブ材群を複数有し、隣り合う前記複数の第1木製リブ材群の間に設けられている第2木製リブ材を有し、
前記リブ材接続工程では、前記第1木製リブ材群と、前記第2木製リブ材と、を前記木製下面材に接続し、
前記受面材接続工程では、
前記第1木製リブ材群を除いて前記木製受面材を設け、
前記打設工程では、
前記木製下面材、前記第1木製リブ材群、前記第2木製リブ材、および、前記木製受面材を型枠としてセメント系材料を打設して、前記木製受面材の上面に支持されるセメント系上面部と、前記セメント系上面部から垂下して前記第1木製リブ材群の隣り合う前記第1木製リブ材の間に位置するセメント系垂下部と、を有するセメント系面材を形成する
請求項10または11に記載の面構造の製造方法。
【請求項13】
前記打設工程では、面構造の設置場所でセメント系材料を打設する
請求項10~12のいずれか一項に記載の面構造の製造方法。
【請求項14】
前記面構造は、前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記セメント系面材を備える面構造体ユニットを並設したものであり、
前記打設工程では、前記面構造体ユニットの設置場所とは異なる場所でセメント系材料を打設し、
前記面構造体ユニットを前記設置場所まで搬送する搬送工程を備える
請求項10~12のいずれか一項に記載の面構造の製造方法。
【請求項15】
前記搬送工程の実施後、隣り合う面構造体ユニットのセメント系面材を連結する連結工程を備える
請求項14に記載の面構造の製造方法。
【請求項16】
建物の床を構成する面構造用木製部材であって、
前記床は、
木製下面材と、
前記木製下面材の上面に接続される木製リブ材と、
前記木製リブ材の上端に接続されて、前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるセメント系面材と、を備えるものであり、
前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されており、
前記木製リブ材は、
隣り合う2つの部分下面材の境界部分に設けられて、前記隣り合う部分下面材の各々に対して連結される連結リブ材を含む
面構造用木製部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床に適用される面構造、面構造の製造方法、および、面構造の製造時に用いられる面構造用木製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の床として、セメント系部材と木材とによって構成される面構造が用いられている。例えば特許文献1の面構造は、所定の間隔を空けて並設された複数の木製棒状部材と、複数の木製棒状部材に支持されて複数の棒状部材の上方に位置する面状のセメント系部材とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の面構造は、剛性・耐力が不足するため、金属製の小梁に架設された状態で設置されている。このため、小梁の分だけ階高が高くなりやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する面構造は、木製下面材と、前記木製下面材の上面に接続される木製リブ材と、前記木製リブ材の上端に接続されて、前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるセメント系面材と、を備える。
【0006】
上記課題を解決する面構造の製造方法は、木製下面材の上面に木製リブ材を接続するリブ材接続工程と、前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるように、前記木製リブ材の上端に木製受面材を接続する受面材接続工程と、前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記木製受面材を型枠としてセメント系材料を打設して、前記木製受面材の上面に支持されるセメント系面材を形成する打設工程と、を備える。
【0007】
上記課題を解決する面構造用木製部材は、建物の床を構成する面構造用木製部材であって、前記床は、木製下面材と、前記木製下面材の上面に接続される木製リブ材と、前記木製リブ材の上端に接続されて、前記木製下面材の上方に間隔を空けて設けられるセメント系面材と、を備えるものであり、前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されており、前記木製リブ材は、隣り合う2つの部分下面材の境界部分に設けられて、前記隣り合う部分下面材の各々に対して連結される連結リブ材を含む。
【0008】
上記構成によれば、木製下面材とセメント系面材とが一体化して挙動するため、面構造の高剛性化・高耐力化を図ることができる。これにより、面構造を小梁などで支持する必要がなくなることから、建物の階高を低くすることができる。
【0009】
上記構成の面構造において、前記セメント系面材と前記木製リブ材とは、一端が前記セメント系面材に埋設され、他端が前記木製リブ材に埋設された第1埋設材で接続されていることが好ましい。これにより、セメント系面材と木製リブ材とをより強固に接続することができる。
【0010】
上記構成の面構造において、前記木製下面材と前記木製リブ材とは、一端が前記木製下面材に埋設され、他端が前記木製リブ材に埋設された第2埋設材で接続されていることが好ましい。これにより、木製下面材と木製リブ材とをより強固に接続することができる。
【0011】
上記構成の面構造は、前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されており、前記木製リブ材は、隣り合う2つの部分下面材の境界部分に設けられて、前記2つの部分下面材の各々に対して連結される連結リブ材を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成の面構造の製造方法は、前記木製下面材が、複数の部分下面材によって構成されている場合、前記リブ材接続工程は、隣り合う2つの部分下面材の境界部分に木製リブ材を配置して、前記2つの部分下面材の各々に対して当該木製リブ材を連結する部分下面材連結工程を含むことが好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、木製下面材が複数の部分下面材で構成されている場合に、木製リブ材を利用して、隣り合う2つの部分下面材を連結することができる。
上記構成の面構造において、前記木製リブ材は、一対の第1木製リブ材である第1木製リブ材群を有し、前記セメント系面材は、前記木製リブ材の上端に接続されるセメント系上面部と、前記セメント系上面部から垂下して前記第1木製リブ材群の隣り合う前記第1木製リブ材の間に位置するセメント系垂下部と、を有することが好ましい。
【0014】
上記構成の面構造の製造方法において、前記木製リブ材は、一対の第1木製リブ材である第1木製リブ材群を複数有し、隣り合う前記複数の第1木製リブ材群の間に設けられている第2木製リブ材を有し、前記リブ材接続工程では、前記第1木製リブ材群と、第2木製リブ材と、を前記木製下面材に接続し、前記受面材接続工程では、前記第1木製リブ材群を除いて前記木製受面材を設け、前記打設工程では、前記木製下面材、前記第1木製リブ材群、前記第2木製リブ材、および、前記木製受面材を型枠としてセメント系材料を打設して、前記木製受面材の上面に支持されるセメント系上面部と、前記セメント系上面部から垂下して前記第1木製リブ材群の隣り合う前記第1木製リブ材の間に位置するセメント系垂下部と、を有するセメント系面材を形成することが好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、セメント系面材がセメント系垂下部を有することにより、面構造のさらなる高剛性化・高耐力化を図ることができる。
上記構成の面構造において、前記セメント系垂下部と前記木製下面材は、一端が前記セメント系垂下部に埋設され、他端が前記木製下面材に埋設された第3埋設材で接続されていることが好ましい。これにより、セメント系垂下部と木製下面材とをより強固に接続することができる。
【0016】
上記構成の面構造において、前記木製リブ材は、前記第1木製リブ材群を複数有し、隣り合う前記第1木製リブ材群の間に設けられている第2木製リブ材を有することが好ましい。これにより、隣り合うセメント系垂下部の間の部分における強度低下を抑えることができる。
【0017】
上記構成の面構造は、前記セメント系面材の下面に木製受面材を有することが好ましい。これにより、上面を上方に向けて木製下面材を載置した状態でセメント系材料を打設したとしても、木製リブ材の間の空間へのセメント系材料の流入が抑えられる。これにより、セメント系材料の打設を容易に行うことができる。
【0018】
上記構成の面構造は、前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記セメント系面材を備える面構造体ユニットを並設したものである場合、隣り合う面構造体ユニットのセメント系面材が連結されていることが好ましい。これにより、面構造に作用した荷重を複数の面構造体ユニットで受けることができる。
【0019】
上記構成の面構造の製造方法において、前記打設工程では、面構造の設置場所でセメント系材料を打設してもよい。この構成によれば、連続するセメント系面材によって構成可能な面構造の大きさについての自由度を高めることができる。
【0020】
上記構成の面構造の製造方法において、前記面構造が、前記木製下面材、前記木製リブ材、および、前記セメント系面材を備える面構造体ユニットを並設したものである場合、前記打設工程では、前記面構造体ユニットの設置場所とは異なる場所でセメント系材料を打設し、前記面構造体ユニットを前記設置場所まで搬送する搬送工程を備えていてもよい。この構成によれば、天候に左右されずに打設工程を行うことができる。
【0021】
上記構成の面構造の製造方法は、前記搬送工程の実施後、隣り合う面構造体ユニットのセメント系面材を連結する連結工程を備えることが好ましい。これにより、面構造に作用した荷重を複数の面構造体ユニットで受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態における面構造の基本構造を示す図であって、(a)1a-1aにおける面構造の断面図、(b)1b-1bにおける面構造の断面図、(c)1c-1cにおける面構造の断面図。
【
図2】第1実施形態において、
図1(a)の一点鎖線2で囲まれた部分を示す拡大図。
【
図3】第1実施形態において、面構造の第1製造方法を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態において、面構造の第1製造方法を説明するための図であって、(a)木製下面材配置工程が完了した状態を示す図、(b)リブ材接続工程が完了した状態を示す図、(c)架設部リブ材接続工程が完了した状態を示す図、(d)第1埋設材接続工程が完了した状態を示す図、(e)受面材接続工程が完了した状態を示す図。
【
図5】第1実施形態において、面構造の第2製造方法を説明するための図であって、(a)5a-5aにおける面構造用木製部材の断面図、(b)5b-5bにおける面構造用木製部材の断面図、(c)5c-5cにおける面構造用木製部材の断面図。
【
図6】第1実施形態において、面構造の第2製造方法を示すフローチャート。
【
図7】第1実施形態において、面構造の第3製造方法を説明するための図であって、(a)7a-7aにおける面構造体ユニットの断面図、(b)7b-7bにおける面構造体ユニットの断面図、(c)7c-7cにおける面構造体ユニットの図。
【
図8】第1実施形態において、面構造の第3製造方法を示すフローチャート。
【
図9】第1実施形態において、連結工程を説明するための図であって、(a)位置合わせ後の状態を示す端面図、(b)棒状材が連結孔に挿入された状態を示す端面図、(c)充填材が形成された状態を示す端面図。
【
図10】第2実施形態における面構造の基本構造を示す図であって、(a)10a-10aにおける断面図、(b)10b-10bにおける断面図。
【
図11】第2実施形態における面構造の基本構造を示す図であって、(a)11a-11aにおける断面図、(b)11b-11bにおける断面図。
【
図12】第2実施形態において、
図10(a)の一点鎖線12で囲まれた部分を示す拡大図。
【
図13】変形例において、1b-1bにおける面構造の断面図。
【
図14】第1実施形態の変形例について、木製受面材の接続構造を示す断面図。
【
図15】第2実施形態の変形例について、木製受面材の接続構造を示す断面図。
【
図16】変形例において、1c-1cにおける面構造の一部を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1~
図9を参照して、面構造、面構造の製造方法、および、面構造用木製部材の第1実施形態について説明する。
【0024】
図1を参照して、第1実施形態の面構造の基本構造について説明する。
図1(a)~
図1(c)に示すように、面構造20は、建物を構成する複数の柱16に支持される床を構成する。建物は、下階から順に、床が設置されたのち、その床に対して上階の床を支持する複数の柱16が固定されることにより構築される。
【0025】
以下では、
図1(a)に示す面構造20を基準として、上下方向が規定されている。また、
図1(a)を基準として左右方向が規定されているとともに
図1(b)における上下方向を内外方向という。本実施形態において、各階の柱16は、
図1(b)に示す4つの柱16のほか、これら4つの柱16の左側および右側にも内外方向に並ぶ一対の柱16が設けられている。
図1(a)および
図1(b)は、それら複数の柱16に支持される床の一部を一点鎖線で囲んで示している。
【0026】
面構造20は、二重床構造をなしている。面構造20は、面構造用木製型枠21とセメント系面材22とを備える。面構造用木製型枠21は、木製下面材25、木製リブ材26、架設部形成リブ材27、および、木製受面材28を有し、面構造用木製型枠21は、各種木材に対して各種金属部材を打ち込むことにより製造される。セメント系面材22は、面構造用木製型枠21にセメント系材料を打設することにより形成される。セメント系面材22は、セメント系上面部29とセメント系架設部30とを有する。
【0027】
木製下面材25は、二重床構造の下面部である。木製下面材25は、上面視において、複数の柱16の間の領域を覆っている。木製下面材25は、上面25aが柱16の上面16aと面一となるように設けられている。本実施形態において、木製下面材25は、左右方向に並設された複数の部分下面材31で構成されている。部分下面材31は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)板である。互いに隣り合う4つの柱16で囲まれる領域は、本実施形態では、左右方向で隣り合う2つの部分下面材31で覆われる。
【0028】
木製リブ材26は、木製下面材25の上面25aに接続されている。木製リブ材26は、断面矩形状の木材である。本実施形態において、木製リブ材26は、左右方向に所定の間隔を空けて内外方向に延びるように設けられている。
【0029】
木製リブ材26の一部は、隣り合う2つの部分下面材31を連結する連結リブ材32である。
図1(b)において、左右方向における中央に位置する木製リブ材26、最も左側に位置する木製リブ材26、最も右側に位置する木製リブ材26は、連結リブ材32である。
【0030】
架設部形成リブ材27は、木製下面材25の上面25aに接続されている。架設部形成リブ材27は、木製リブ材26と略等しい高さを有する断面矩形状の木材である。架設部形成リブ材27は、上面視において、左右方向で隣り合う柱16を内外方向で挟むように、複数の柱16の内側および外側を左右方向に延びている。架設部形成リブ材27は、セメント系架設部30の打設空間を形成する。
【0031】
木製受面材28は、木製の板材で構成される。木製受面材28は、セメント系材料の打設時に必要となる部材である。なお、木製受面材28は、面構造20の強度に対する寄与度が低い部材である。木製受面材28は、セメント系面材22のうちのセメント系上面部29の下面に当接している。一部の木製受面材28は、上面視において複数の柱16の内側に位置している。残りの木製受面材28は、上面視において複数の柱16の外側に位置している。
【0032】
一部の木製受面材28は、木製リブ材26の上端と複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27の上端とに対して、下地材33を介して接続されている。この木製受面材28は、その板面が木製リブ材26の上面および架設部形成リブ材27の上面と面一となるように配置される。この木製受面材28は、木製リブ材26および複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27の間の領域を上方から覆っている。
【0033】
残りの木製受面材28は、複数の柱16の外側に位置する架設部形成リブ材27の上端に接続されている。この木製受面材28は、その板面が架設部形成リブ材27の上面と面一となるように配置される。この木製受面材28は、架設部形成リブ材27に接続された木製の支持リブ材34によって支持されている。木製受面材28は、複数の柱16の外側の領域を上方から覆っている。木製受面材28は、外側の端部が複数の柱16の外側に位置する壁部(図示せず)などに接するように設けられる。
【0034】
セメント系上面部29は、面構造20の上面部である。セメント系上面部29は、木製下面材25の上方に間隔を空けて設けられている。具体的には、木製リブ材26および架設部形成リブ材27の高さと略等しい間隔を空けて設けられている。セメント系上面部29は、外側の各端部が壁部(図示せず)などに接するように設けられている。セメント系架設部30は、本実施形態では、左右方向に並んだ柱16に架設されている。
【0035】
図2に示すように、セメント系上面部29と各木製リブ材26とは、第1埋設材35で接続されている。第1埋設材35は、上下方向に延びる金属製の棒状材である。第1埋設材35は、例えば、ラグスクリューボルトである。第1埋設材35は、一端がセメント系上面部29に埋設され、他端が木製リブ材26に埋設されている。第1埋設材35は、木製リブ材26の延在方向において所定の間隔を空けて設けられている。面構造20においては、例えば火災時など、居住者が避難する際に必要となる強度がセメント系面材22と木製リブ材26とによって確保されることが好ましく、セメント系面材22のみで確保されるとより好ましい。
【0036】
木製下面材25と各木製リブ材26とは、第2埋設材36で接続されている。第2埋設材36は、上下方向に延びる金属製の棒状材である。第2埋設材36は、例えば、ビスである。第2埋設材36は、一端が木製下面材25に埋設され、他端が木製リブ材26に埋設されている。第2埋設材36は、木製リブ材26の延在方向において所定の間隔を空けて設けられている。
【0037】
隣り合う2つの部分下面材31は、一部の木製リブ材26である連結リブ材32を介して連結されている。各部分下面材31は、当該部分下面材31の右側に位置する部分下面材31との連結部分に下側嵌合部38を有している。各部分下面材31は、当該部分下面材31の左側に位置する部分下面材31との連結部分に上側嵌合部39を有している。連結リブ材32は、この隣り合う2つの部分下面材31の境界部分に沿うように配設されている。木製下面材25と連結リブ材32とを接続する第2埋設材36は、下側嵌合部38と上側嵌合部39との嵌合部分を貫通するように設けられている。
【0038】
(面構造20の第1製造方法)
図3および
図4を参照して、第1実施形態における面構造20の第1製造方法について説明する。第1製造方法では、面構造20の設置場所において、面構造用木製型枠21が組み立てられたのち、その面構造用木製型枠21にセメント系材料が打設される。面構造用木製型枠21の資材は、建物の建築現場まで運搬されたのち、面構造20の設置場所付近へと揚重される。
【0039】
図3に示すように、面構造20の第1製造方法は、型枠組立工程(ステップS101)と打設工程(ステップS108)とを備える。
型枠組立工程(ステップS101)は、木製下面材配置工程(ステップS102)、リブ材接続工程(ステップS103)、架設部リブ材接続工程(ステップS105)、第1埋設材接続工程(ステップS106)、および、受面材接続工程(ステップS107)を有する。
【0040】
図4(a)に示すように、木製下面材配置工程(ステップS102)では、面構造20の設置場所に木製下面材25を配置する。具体的には、クレーンなどを用いて、
図1(b)における左側から順に部分下面材31を所定位置に配置する。配置された部分下面材31は、下方から支持具で支持される。新たに配置される部分下面材31は、配置済みの部分下面材31の下側嵌合部38に上側嵌合部39が嵌合するように配置される。
【0041】
図4(b)に示すように、リブ材接続工程(ステップS103)では、木製下面材25に木製リブ材26を接続する。具体的には、木製下面材25の上面25aにおける所定位置に木製リブ材26を配置したのち、木製下面材25の下面から第2埋設材36を打ち込むことで、木製下面材25に木製リブ材26を接続する。このリブ材接続工程は、隣り合う2つの部分下面材31を連結リブ材32で連結する部分下面材連結工程(ステップS104)を含んでいる。
【0042】
部分下面材連結工程(ステップS104)では、隣り合う2つの部分下面材31の下側嵌合部38と上側嵌合部39との嵌合部分に沿うように、すなわち隣り合う2つの部分下面材31の境界部分に沿うように木製リブ材26を配置する。そして、その嵌合部分を貫通するように第2埋設材36を打ち込む。これにより、隣り合う2つの部分下面材31が連結リブ材32を介して連結される。
【0043】
図4(c)に示すように、架設部リブ材接続工程(ステップS105)では、木製下面材25の上面25aに架設部形成リブ材27を接続する。具体的には、左右方向で隣り合う柱16を内側および外側から挟むように架設部形成リブ材27を配置したのち、木製下面材25の下面から例えばビスなどの埋設材を打ち込むことで、木製下面材25に架設部形成リブ材27を接続する。なお、架設部リブ材接続工程(ステップS105)がリブ材接続工程(ステップS103)の後に行われることで、架設部形成リブ材27の長さについての自由度が向上する。
【0044】
図4(d)に示すように、第1埋設材接続工程(ステップS106)では、各木製リブ材26に対して第1埋設材35が接続される。具体的には、各木製リブ材26に対して、上面から第1埋設材35を打ち込む。第1埋設材35は、半分程度が木製リブ材26に埋設されるように打ち込まれる。第1埋設材35は、架設部形成リブ材27に対して設けられてもよい。
【0045】
図4(e)に示すように、受面材接続工程(ステップS107)では、木製リブ材26および複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27に対して木製受面材28が接続される。また、複数の柱16の外側に位置する架設部形成リブ材27に対して木製受面材28が接続される。
【0046】
具体的には、木製リブ材26および架設部形成リブ材27に対して、各種木製受面材28を支持するための下地材33を接続する。下地材33の接続は、例えばビスなどの埋設材を用いて行われる。下地材33の接続が完了すると、その下地材33に支持されるように各種木製受面材28を配置する。下地材33と各種木製受面材28とは、例えば、ビスなどによって接続されることが好ましい。受面材接続工程(ステップS107)が完了すると面構造用木製型枠21の組立が完了する。このとき、面構造用木製型枠21は、セメント系面材22の形成部分の全領域、すなわち1つの階の床の全領域をカバーしている。
【0047】
打設工程(ステップS108)では、面構造用木製型枠21にセメント系材料を打設することでセメント系面材22を形成する。具体的には、セメント系面材22の形成部分に図示されない鉄筋を配筋したのち、面構造用木製型枠21にセメント系材料を打設する。打設されたセメント系材料は、木製リブ材26の間の空間に流れ込むことなく木製受面材28上に留まるとともに架設部形成リブ材27の間に流れ込む。そして、打設されたセメント系材料が硬化することにより、
図1(a)および
図1(c)に示すように、セメント系上面部29とセメント系架設部30とが一体化したセメント系面材22が形成される。
【0048】
(面構造20の第2製造方法)
図5および
図6を参照して、第1実施形態における面構造20の第2製造方法について説明する。
【0049】
図5(a)~
図5(c)に示すように、第2製造方法では、面構造用木製型枠21が複数の面構造用木製部材50によって構成されている。
図5(a)~
図5(c)では面構造用木製部材50の1つを実線で示している。面構造用木製部材50は、面構造20の設置場所とは異なる場所において1つの木製ユニットとして組み立てられたのち、設置場所における各々の配置位置へと搬送されることで面構造用木製型枠21を構成する。そして、その面構造用木製型枠21に対してセメント系材料が打設されることにより面構造20が製造される。
【0050】
面構造用木製部材50は、
図5(b)に示す4つの柱16における左右方向の芯々の間の領域に対応している。面構造用木製部材50において、木製下面材25は、左右方向で隣り合う2つの部分下面材31によって構成されている。2つの部分下面材31は、木製リブ材26の1つである連結リブ材32によって連結されている。面構造用木製部材50は、木製下面材25の右側の端部および左側の端部において上面25aに接続された木製リブ材26を有している。また、面構造用木製部材50においては、右側の端部および左側の端部に設けられた木製リブ材26に木製受面材28が接続されている。
【0051】
図6を参照して、面構造20の第2製造方法について詳しく説明する。なお、第1製造方法と同様の工程については、同じ名称によりその詳細な説明は省略する。
図6に示すように、面構造20の第2製造方法は、木製ユニット組立工程(ステップS201)、搬送工程(ステップS208)、および、打設工程(ステップS210)を備える。
【0052】
木製ユニット組立工程(ステップS201)は、1つの面構造用木製部材50を組み立てる工程である。木製ユニット組立工程は、例えば、建物の建築現場の地上部分に設けられた作業場など、面構造20の設置場所とは異なる場所で行われる。
【0053】
木製ユニット組立工程(ステップS201)は、木製下面材配置工程(ステップS202)、リブ材接続工程(ステップS203)、架設部リブ材接続工程(ステップS205)、第1埋設材接続工程(ステップS206)、および、受面材接続工程(ステップS207)を有する。また、リブ材接続工程(ステップS203)は、部分下面材連結工程(ステップS204)を含んでいる。
【0054】
搬送工程(ステップS208)では、面構造用木製部材50を面構造20の設置場所まで搬送する。具体的には、クレーンなどを用いて、面構造用木製部材50を所定の配置位置まで搬送したのち、下方から支持具で支持する。面構造用木製部材50は、
図5(b)における左側から順に配置される。
【0055】
次に、全ての面構造用木製部材50が各々の配置位置まで搬送されたか否かを判断する(ステップS209)。全ての面構造用木製部材50が各々の配置位置まで搬送されていない場合(ステップS209:NO)、木製ユニット組立工程(ステップS201)と搬送工程(ステップS208)とを再び行う。全ての面構造用木製部材50が各々の配置位置まで搬送されている場合(ステップS209:YES)、複数の面構造用木製部材50によって構成された面構造用木製型枠21に対して打設工程(ステップS210)を行うことにより、セメント系面材22が形成される。
【0056】
なお、第2製造方法においては、面構造20を構成する全ての面構造用木製部材50に対する木製ユニット組立工程(ステップS201)を行ったのち、その全ての面構造用木製部材50を各々の配置位置まで搬送する搬送工程(ステップS208)を行ってもよい。すなわち、全ての面構造用木製部材50が各々の配置位置まで搬送されていない場合(ステップS209:NO)に搬送工程(ステップS208)を繰り返し行ってもよい。また、木製ユニット組立工程(ステップS201)は、例えば、部分下面材接続工程(ステップS204)以外の工程を工場などで行ってもよい。この場合、トラックなどによって建物の建築現場まで面構造用木製部材50の構成部材が運搬されたのち、部分下面材接続工程(ステップS204)が搬送工程(ステップS208)の直前に行われる。
【0057】
(面構造20の第3製造方法)
図7~
図9を参照して、第1実施形態における面構造20の第3製造方法について説明する。
【0058】
図7(a)~
図7(c)に示すように、第3製造方法では、面構造20が複数の面構造体ユニット60によって構成される。
図7(a)~
図7(c)では、面構造体ユニット60の1つを実線で示している。
【0059】
面構造体ユニット60は、面構造用木製部材61とその面構造用木製部材61に対応するセメント系面材22とが一体化されたものである。面構造体ユニット60は、面構造用木製部材61を型枠としてセメント系材料を打設することにより製造される。面構造体ユニット60は、面構造20の設置場所とは異なる場所において製造されたのち、各々の配置位置へと搬送される。そして、先行配置された面構造体ユニット60に対して連結される。全ての面構造体ユニット60が連結されることにより面構造20が製造される。
【0060】
面構造体ユニット60は、
図7(b)に示す4つの柱16における左右方向の芯々の間の領域に対応している。面構造体ユニット60を構成する面構造用木製部材61において、木製下面材25は、左右方向で隣り合う2つの部分下面材31によって構成されている。2つの部分下面材31は、連結リブ材32を介して連結されている。
【0061】
木製下面材25は、
図7(b)に示す4つの柱16における左右方向の芯々の間の領域を覆うように設けられる。木製下面材25は、当該木製下面材25の左側に位置する木製下面材25との連結部分に、左側へと突出する下側嵌合部63を有している。木製下面材25は、当該木製下面材25の右側に位置する木製下面材25との連結部分に、右側へと突出する上側嵌合部64を有している。これら下側嵌合部63および上側嵌合部64は、内外方向から見たときに柱16における左右方向の中央部分に配設される。
【0062】
左端に位置する木製リブ材26は、上面視において、左側面が柱16よりも少し右側に位置するように木製下面材25に接続されている。この左側面は、セメント系上面部29の左側端面と面一となる。
【0063】
右端に位置する木製リブ材26は、上側嵌合部64に対応する位置に設けられている。この木製リブ材26は、上側嵌合部64を貫通する第2埋設材36によって木製下面材25に接続されている。なお、この木製リブ材26は、後述する連結工程を経て、隣り合う2つの木製下面材25を連結する連結リブ材32として機能する。
【0064】
架設部形成リブ材27は、左側端面が左側に位置する柱16の左右方向における中心よりもやや右側に位置するように、また、右側端面が右側に位置する柱16の左右方向における中心よりもやや左側に位置するように設けられている。
【0065】
面構造用木製部材61は、内外方向に延びる塞ぎ材65を有している。塞ぎ材65は、内外方向で並ぶ一対の柱16の間を繋ぐように設けられている。塞ぎ材65は、互いに連結される2つのセメント系上面部29の間の隙間を下方から塞いでいる。塞ぎ材65は、左端に位置する木製リブ材26の左側面に対して、互いの上面が面一となるように、例えばビスなどの埋設材によって接続されている。
【0066】
面構造体ユニット60のセメント系面材22において、セメント系上面部29には、左側端面から左右方向に沿って左側へ延びる金属製の第1棒状材66が一体に設けられている。また、セメント系上面部29には、右側端面から左右方向に沿って右側へ延びる第1連結孔67(
図9参照)が形成されている。第1連結孔67は、打設時にスリーブなどを配設することによって形成されるとともに、他の面構造体ユニット60に設けられた第1棒状材66が挿入可能に形成されている。
【0067】
セメント系架設部30には、左側端面から左右方向に沿って左側へ延びる金属製の第2棒状材68が一体に設けられている。また、セメント系架設部30には、右側端面から左右方向に沿って右側へ延びる第2連結孔69(
図9参照)が形成されている。第2連結孔69は、打設時にスリーブなどを配設することによって形成されるとともに、他の面構造体ユニット60に設けられた第2棒状材68が挿入可能に形成されている。
【0068】
図8および
図9を参照して、面構造体ユニット60を用いた面構造20の第3製造方法について詳しく説明する。なお、第1製造方法と同様の工程については、同じ名称によりその詳細な説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、面構造の第3製造方法は、木製ユニット組立工程(ステップS301)、打設工程(ステップS309)、搬送工程(ステップS310)、および、連結工程(ステップS311)を備える。
【0070】
木製ユニット組立工程(ステップS301)は、面構造体ユニット60を構成する面構造用木製部材61を組み立てる工程である。打設工程(ステップS309)は、面構造用木製部材61に対してセメント系材料を打設する工程である。木製ユニット組立工程および打設工程は、例えば、建物の建築現場の地上部分に設けられた作業場など、面構造20の設置場所とは異なる場所で行われる。
【0071】
木製ユニット組立工程(ステップS301)は、木製下面材配置工程(ステップS302)、リブ材接続工程(ステップS303)、架設部リブ材接続工程(ステップS305)、第1埋設材接続工程(ステップS306)、受面材接続工程(ステップS307)、および、塞ぎ材接続工程(ステップS308)を有する。また、リブ材接続工程(ステップS303)は、部分下面材連結工程(ステップS304)を含んでいる。
【0072】
塞ぎ材接続工程(ステップS308)では、左端に位置する木製リブ材26の左側面に対して、互いの上面が面一となるように、例えばビスなどの埋設材を用いて塞ぎ材65を接続する。
【0073】
打設工程(ステップS308)では、図示されない鉄筋のほか、第1棒状材66、第1連結孔67を形成するスリーブ、第2棒状材68、および、第2連結孔69を形成するスリーブを所定位置に配置した状態でセメント系材料を打設する。そして、打設されたセメント系材料が硬化することにより、面構造体ユニット60が製造される。
【0074】
搬送工程(ステップS309)では、面構造体ユニット60を面構造20の設置場所まで搬送する。具体的には、クレーンなどを用いて、面構造体ユニット60を配置位置付近まで搬送する。面構造体ユニット60は、
図7(b)における左側から順に配置される。
【0075】
連結工程(ステップS311)では、先行配置された面構造体ユニット60と新たに設置される面構造体ユニット60とを連結する。
具体的には、
図9(a)に示すように、先行配置された面構造体ユニット60の右側において、当該面構造体ユニット60と新たに配置される面構造体ユニット60との間で上下方向および内外方向の位置合わせが行われる。この位置合わせは、クレーンなどを用いて行われる。また、この位置合わせは、新たに配置される面構造体ユニット60のセメント系架設部30の右端部を柱16に載置した状態で行うことが可能である。
【0076】
次に、
図9(b)に示すように、新たに配置される面構造体ユニット60を左方へ移動させて、第1棒状材66を第1連結孔67に挿入するとともに木製下面材25の上側嵌合部64に下側嵌合部63を嵌合させる。また、第2棒状材68を第2連結孔69に挿入するとともに木製下面材25の当接部70を柱16に当接させる。柱16に当接部70が当接した状態では、隣り合う2つのセメント系上面部29の間にも隙間が形成される。また、隣り合う2つのセメント系架設部30が柱16に載っている状態にあるとともに、これら2つのセメント系架設部30の間に隙間が形成される。この隙間は、左右方向における柱16の中央に位置することが好ましい。
【0077】
次に、
図9(c)に示すように、隣り合う2つのセメント系上面部29の間の隙間にセメント系のグラウト材を流し込んで硬化させることにより第1充填材71を形成する。グラウト材の漏洩は塞ぎ材65によって抑えられる。第1充填材71によって、2つのセメント系上面部29と第1棒状材66とが一体化する。これにより、2つのセメント系上面部29が連結される。
【0078】
また、隣り合う2つのセメント系架設部30の間の隙間にセメント系のグラウト材を流し込んで硬化させることにより第2充填材72を形成する。グラウト材の漏洩は柱16によって抑えられる。第2充填材72によって、2つのセメント系架設部30と第2棒状材68とが一体化する。これにより、2つのセメント系架設部30が連結される。また、隣り合う2つの木製下面材25の下側嵌合部63と上側嵌合部64との嵌合部分を貫通するように第2埋設材36を打ち込む。これにより、隣り合う2つの木製下面材25が連結される。
【0079】
次に、全ての面構造体ユニット60についての連結工程が完了したか否かを判断する(ステップS312)。全ての面構造体ユニット60の連結工程が完了していない場合(ステップS312:NO)、木製ユニット組立工程(ステップS301)に戻って、以後の工程を再び行う。全ての面構造体ユニット60の連結工程が完了している場合(ステップS312:YES)、面構造20が形成される。
【0080】
なお、第3製造方法においては、面構造体ユニット60の製造が工場などで行われてもよい。この場合、トラックなどによって建物の建築現場まで面構造体ユニット60が運搬されたのち、搬送工程(ステップS310)が行われる。
【0081】
(面構造20の作用)
上述した面構造20においては、木製下面材25とセメント系面材22とが木製リブ材26を介して接続されている。また、木製下面材25とセメント系面材22のセメント系上面部29とが木製リブ材26が介在した状態で対向配置されている。このため、木製下面材25とセメント系面材22とが一体化して挙動する。
【0082】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)面構造20においては、木製下面材25とセメント系面材22とが一体化して挙動することで高剛性化および高耐力化を図ることができる。これにより、面構造20を小梁などで支持する必要がなくなることから、建物の階高を低くすることができる。
【0083】
(1-2)木製リブ材26とセメント系面材22とが第1埋設材35によって接続されている。これにより、木製リブ材26とセメント系面材22とを強固に接続することができる。
【0084】
(1-3)木製下面材25と木製リブ材26とが第2埋設材36によって接続されている。これにより、木製下面材25と木製リブ材26とを強固に接続することができる。
(1-4)木製下面材25は、複数の部分下面材31によって構成されている。これにより、木製下面材25の構成部材の大型化を抑えることができる。その結果、たとえばトラックなどを用いた部分下面材31の運搬が容易なものとなる。
【0085】
(1-5)隣り合う2つの部分下面材31の各々は、木製リブ材26の1つである連結リブ材32を介して連結されている。これにより、部分下面材31の境界部分の強度を高めることができる。
【0086】
(1-6)部分下面材31は、下側嵌合部38と上側嵌合部39との嵌合部分を貫通して連結リブ材32に接続される第2埋設材36によって連結されている。これにより、隣り合う2つの部分下面材31をより強固に接続することができる。
【0087】
(1-7)面構造20は、面構造20の強度に対する寄与度が低い木製受面材28を有している。これにより、上面25aを上方に向けて木製下面材25を載置した状態でセメント系材料を打設したとしても、木製リブ材26の間の空間へのセメント系材料の流入が抑えられることから、セメント系材料の打設を容易に行うことができる。また、セメント系材料の打設後に木製受面材28を取り除く必要がないことから、面構造20の製造工程を簡略化することができる。
【0088】
(1-8)セメント系面材22は、左右方向で並ぶ柱16に架設されるセメント系架設部30を有する。これにより、セメント系架設部30を梁として機能させることができる。その結果、高剛性化・高耐力化を図りつつ、面構造20をより確実に柱16に支持させることができる。
【0089】
(1-9)面構造20の第1製造方法および第2製造方法においては、連続するセメント系面材22によって構成可能な面構造20の大きさについての自由度を向上させることができる。また、床に作用する荷重がセメント系面材22において分散されやすくなる。
【0090】
(1-10)面構造20の第2製造方法および第3製造方法においては、多くの工程が地上部分で行われることから、作業員の安全性を高めることができる。
(1-11)面構造20の第3製造方法においては、面構造20の設置場所とは異なる場所で製造される複数の面構造体ユニット60によって面構造20が構成されている。これにより、天候に左右されることなく打設工程を行うことができる。また、面構造体ユニット60の品質管理、すなわち面構造20の品質管理も容易になる。
【0091】
(1-12)面構造20の第3製造方法においては、隣り合う面構造体ユニット60のセメント系面材22が連結されている。これにより、面構造20に作用する荷重を複数の面構造体ユニット60で受けることができる。
【0092】
(1-13)面構造20の第3製造方法においては、隣り合う面構造体ユニット60のセメント系面材22の間の隙間に、第1充填材71および第2充填材72が配設されている。これにより、隣り合うセメント系面材22をより強固に一体化させることができる。
【0093】
(1-14)セメント系面材22と木製リブ材26とによって、あるいは、セメント系面材22のみによって、居住者の避難に必要となる強度が確保される。これにより、火災時に木製下面材25が焼失したとしても、居住者の避難に必要となる床強度を保持することができる。また、木製下面材25の厚みを調整することにより、十分な燃え代層を確保することもできる。
【0094】
(第2実施形態)
図10~
図12を参照して、面構造、面構造の製造方法、および、面構造用木製部材の第2実施形態について説明する。
【0095】
なお、第2実施形態では、第1実施形態と主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことにより詳細な説明は省略する。
【0096】
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、および、
図11(b)に示すように、面構造80は、面構造用木製型枠81とセメント系面材82とを備える。セメント系面材82は、セメント系上面部29およびセメント系架設部30のほか、セメント系上面部29から垂下するセメント系垂下部83を有する。
【0097】
面構造用木製型枠81は、木製リブ材26として、第1木製リブ材86と第2木製リブ材87とを有している。
第1木製リブ材86は、複数の第1木製リブ材群88を構成する。第1木製リブ材群88は、左右方向において所定の間隔を空けて設けられた一対の第1木製リブ材86で構成されている。第1木製リブ材群88は、左右方向で隣り合う2つの柱16の芯々寸法の半分の間隔を空けて左右方向に並設されている。
【0098】
一対の第1木製リブ材86は、複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27との間に隙間91が形成されるように設けられている。一対の第1木製リブ材86は、端部が連結材92によって連結されている。連結材92は、第1木製リブ材86と略等しい高さを有する断面矩形状の木材である。各第1木製リブ材群88において、一対の第1木製リブ材86と連結材92とで囲まれる空間は、セメント系垂下部83の打設空間である。この打設空間にセメント系材料が打設されるように、木製受面材28は、上面視において第1木製リブ材群88で囲まれる領域を除くように設けられる。
【0099】
第2木製リブ材87は、左右方向で隣り合う2つの第1木製リブ材群88の中央部分に設けられている。第2木製リブ材87は、一対の第1木製リブ材86と同様に、複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27との間に隙間93が形成されるように設けられている。
【0100】
セメント系垂下部83は、セメント系上面部29から下方に向かって延びている。セメント系垂下部83は、換言すれば、セメント系上面部29に一体化されたセメント系リブ材である。セメント系垂下部83には、鉄筋(図示せず)が配筋されている。
【0101】
図12に示すように、木製下面材25とセメント系垂下部83とは、第3埋設材95で接続されている。第3埋設材95は、上下方向に延びる金属製の棒状材である。第3埋設材95は、例えば、ラグスクリューボルトである。第3埋設材95は、一端がセメント系垂下部83に埋設され、他端が木製下面材25に埋設されている。第3埋設材95は、一対の第1木製リブ材86の間を内外方向において所定の間隔を空けて設けられている。第3埋設材95は、木製下面材25に対して上面25aから打ち込まれることにより木製下面材25に接続される。第3埋設材95を木製下面材25に接続する第3埋設材接続工程は、打設工程の前に行われればよい。
【0102】
(面構造80の製造方法)
面構造80は、第1実施形態の面構造20と比較して、木製リブ材26の配置やセメント系垂下部83の有無が異なるだけである。
【0103】
そのため、面構造80は、面構造20の第1製造方法と同様の製造方法で製造することができる。すなわち、面構造80は、面構造80の設置場所において面構造用木製型枠81を組み立てたのち、その面構造用木製型枠81に対してセメント系材料を打設することにより製造することができる。
【0104】
また、面構造80は、面構造20の第2製造方法と同様の製造方法で製造することができる。すなわち、面構造用木製型枠81を構成する面構造用木製部材を、面構造80の設置場所とは異なる場所で製造して設置場所へと搬送し、面構造用木製型枠81を組み立てる。そして、その組み立てた面構造用木製型枠81に対してセメント系材料を打設することにより製造することができる。
【0105】
また、面構造80は、面構造20の第3製造方法と同様の製造方法で製造することができる。すなわち、面構造80は、面構造80の設置場所とは異なる場所で製造された面構造体ユニットを各々の配置位置へと搬送し、互いに連結することにより製造することができる。なお、この第3製造方法においては、面構造体ユニットの間にセメント系垂下部83が跨がって配置されないように、強度計算の結果等に基づいたうえで、各種リブ材86,87やセメント系垂下部83等の配置を
図10に示す配置から適宜変更することが望ましい。
【0106】
(面構造80の作用)
上述した面構造80においては、木製下面材25とセメント系面材82とが木製リブ材26を介して接続されている。また、木製下面材25とセメント系面材82のセメント系上面部29とが木製リブ材26が介在した状態で対向配置されている。さらには、木製下面材25とセメント系面材82とがセメント系垂下部83を介して接続されている。このため、これら木製下面材25とセメント系面材82とが一体化して挙動する。また、セメント系垂下部83がセメント系リブ材として機能する。
【0107】
第2実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1-1)~(1-14)に準ずる効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
(2-1)面構造80によって床のさらなる高剛性化および高耐力化を図ることができる。これにより、建物の階高をさらに低くすることができる。
【0108】
(2-2)木製下面材25とセメント系垂下部83とが第3埋設材95によって接続されている。これにより、セメント系面材82と木製下面材25とをより強度に接続することができる。
【0109】
(2-3)隣り合う第1木製リブ材群88の間に第2木製リブ材87が設けられている。これにより、隣り合うセメント系垂下部83の間の部分における強度低下を抑えることができる。
【0110】
(2-4)隙間91,93をダクトルートなどに利用することができる。すなわち、木製下面材25とセメント系上面部29との間の空間を有効利用することができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0111】
・木製下面材25に貫通孔を設けるとともにその貫通孔に対応する部分において木製リブ材26を分割することにより、その貫通孔を照明器具の設置などに利用してもよい。
・第2実施形態において、セメント系垂下部83は、架設部形成リブ材27に接するように形成されてもよい。これにより、面構造80のさらなる高剛性化・高耐力化を図ることができる。
【0112】
・木製リブ材26は、1つの方向(上記実施形態では内外方向)に沿って延びるように設けられる構成に限られない。木製リブ材26は、互いに異なる方向、例えば、上面視における4つの柱16の中心位置を基準とした放射方向に延びていてもよい。
【0113】
・セメント系面材22,82は、セメント系架設部30を備えていなくともよい。
・第1実施形態の面構造については、セメント系上面部29のみをセメント系面材22が有する場合、面構造体ユニットを次のように製造してもよい。まず、平面形状の型枠にセメント系材料を打設する。次に、その打設されたセメント系材料に対して、木製下面材25の上面25aが下方に向けた状態にある面構造用木製部材50を所定位置まで降下させ、セメント系材料が硬化するまでその位置に保持する。こうした方法であっても、セメント系面材22と面構造用木製部材50とが一体化した面構造体ユニットを製造できる。
【0114】
・第1実施形態においては、
図13に示すように、木製リブ材26は、複数の柱16の内側に位置する架設部形成リブ材27との間に隙間97が形成されるように設けられていてもよい。
【0115】
・
図14に示すように、第1実施形態において、木製受面材28は、木製リブ材26や架設部形成リブ材27の上面に当接するように接続されてもよい。こうした構成によれば、下地材33がなくともセメント系材料を打設することができる。この場合、受面材接続工程のあとに第1埋設材接続工程が行われてもよい。また、受面材接続工程と第1埋設材接続工程とを同時期に行い、木製受面材28は、貫通する第1埋設材35によって木製リブ材26や架設部形成リブ材27に接続されてもよい。
【0116】
・
図15に示すように、第2実施形態において、木製受面材28は、木製リブ材26や架設部形成リブ材27の上面に当接するように接続されてもよい。
・
図16に示すように、架設部形成リブ材27は、木製リブ材26の高さよりも大きな高さを有していてもよい。これにより、セメント系架設部30の強度を高めることができる。この場合、木製下面材25は、複数の柱16の内側に位置する一対の架設部形成リブ材27に対して接続される。また、架設部形成リブ材27の下端には、左右方向で並ぶ柱16に架け渡されるように木製下端形成材98が接続される。
【0117】
・セメント系材料は、コンクリートであってもよいし、スリムクリート(登録商標)等のモルタルであってもよく、繊維を混合したもの(繊維補強コンクリート材料)であってもよい。また、セメント系面材には、配筋がなされていなくともよい。
【符号の説明】
【0118】
16…柱、16a…上面、20…面構造、21…面構造用木製型枠、22…セメント系面材、25…木製下面材、25a…上面、26…木製リブ材、27…架設部形成リブ材、28…木製受面材、29…セメント系上面部、30…セメント系架設部、31…部分下面材、32…連結リブ材、33…下地材、34…支持リブ材、35…第1埋設材、36…第2埋設材、38…下側嵌合部、39…上側嵌合部、50…面構造用木製部材、60…面構造体ユニット、61…面構造用木製部材、63…下側嵌合部、64…上側嵌合部、65…塞ぎ材、66…第1棒状材、67…第1連結孔、68…第2棒状材、69…第2連結孔、70…当接部、71…第1充填材、72…第2充填材、80…面構造、81…面構造用木製型枠、82…セメント系面材、83…セメント系垂下部、86…第1木製リブ材、87…第2木製リブ材、88…第1木製リブ材群、91…隙間、92…連結材、93…隙間、95…第3埋設材、97…隙間、98…木製下端形成材。