(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125852
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】トレミー管および構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023667
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】野中 宗一郎
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA01
2D045CA12
(57)【要約】
【課題】投入材料の速やかな流下と、汚濁発生の抑制を実現したトレミー管を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るトレミー管(1A)は、上端部(101)に、材料の流下を妨げないようにトレミー管内を材料が流下する際の管内の空気の排出、及び材料がトレミー管内の水中に到達した後、管外から材料上部への水の流入を行うことができる複数の流入口(17)を、周方向に沿って並んで有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部を材料が流下するトレミー管であって、
前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、
水面をまたぐ位置に、複数の流入口を有し、
前記複数の流入口は、前記管の周方向に沿って並んで設けられている、
トレミー管。
【請求項2】
前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、
前記管は、前記管の管軸方向に沿って延設され、一部が気中にある複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、前記管の周方向に沿って設けられている、
請求項1に記載のトレミー管。
【請求項3】
管の内部を材料が流下するトレミー管であって、
前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、
水中に位置する複数の流入口を有し、
前記複数の流入口の上端端部が水面または水面直下に位置し、
前記複数の流入口は、前記管の周方向に沿って並んで設けられている、
トレミー管。
【請求項4】
前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、
前記管は、
前記管の管軸方向に沿って延設され、水中に位置する複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、前記管の周方向に沿って設けられている、
請求項1または3に記載のトレミー管。
【請求項5】
前記管の周方向に沿った各前記流入口の開口幅を合計した長さは、各前記スリットのスリット幅を合計した長さよりも大きい、
請求項2または4に記載のトレミー管。
【請求項6】
各前記流入口は、或る前記スリットと、別の前記スリットとの間に挟まれた位置にある、
請求項2または4に記載のトレミー管。
【請求項7】
前記管は、第1の鋼管と第2の鋼管との間に管軸方向に沿って所定の長さの間隙を設けて、当該第1の鋼管と当該第2の鋼管とを、前記管の周方向に沿って並んだ複数の連結部材によって連結してなり、
前記間隙が前記複数の連結部材によって前記管の周方向に分割されてなる個々の分割間隙によって、前記流入口が構成されている、
請求項1から6の何れか1項に記載のトレミー管。
【請求項8】
前記管の外周における、水面から下の領域には、汚濁防止管が設けられており、二重管構造となっている、
請求項1から7の何れか1項に記載のトレミー管。
【請求項9】
前記管の外周における、水面から下の領域には、汚濁防止枠または汚濁防止膜が設けられている、
請求項1から7の何れか1項に記載のトレミー管。
【請求項10】
材料が堆積してなる構造物を構築する、構造物の施工方法であって、
請求項1から9の何れか1項に記載のトレミー管を、管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置する設置工程と、
前記設置工程で設置された前記トレミー管に材料を投入する投入工程と、
前記投入工程によって投入された前記材料を前記管から水中に投下させ、所定の箇所に打設して、前記構造物を構築する構築工程と、
を含む施工方法。
【請求項11】
前記材料は、カルシア改質土、粘性土、浚渫土、PS灰系改質土、石灰系改質土およびセメント改質土からなる群から選択される、
請求項10に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレミー管および構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底地盤の深堀跡の埋め戻し、および港湾における埋め立て、潜堤築堤、浅場造成等をおこなう工事において、海中への土砂投入に際してトレミー管を用いることがある。トレミー管を、上端を水面上に出す一方で下端を海底に向けて海中に配置し、上端から土砂を投入する。このようにトレミー管を用いることにより、海中での汚濁発生を抑え、環境に配慮することができる。
【0003】
ところで、カルシア改質土や浚渫土等の粘性材料をトレミー管によって海中投入(打設)する場合、トレミー管内を流下する過程での材料分離やトレミー管の閉塞が懸念される。トレミー管の閉塞を防止するためには、管径を大きくする必要があるが、管径を大きくすると投入材料と接触する海水量が増加し、汚濁発生の要因となる。また、特にカルシア改質土の場合には、材料分離や海水の巻き込みにより、打設後の発現強度低下といった問題が生じる。
【0004】
また、トレミー管に投入した材料の塊が大きく、塊に対して管径が小さい場合、閉塞せずにトレミー管内を流下した場合であっても、管内で水位の上昇と降下を繰り返す脈動が生じ、材料分離や濁りが発生し易くなる。
【0005】
特許文献1~3に開示されているトレミー管は、材料を流下させる内管の周囲に、管径および管長ともに内管よりも大きな外管を配置した二重管からなる。内管には、外管と内管との間の水循環をおこなう開口部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-129568号公報
【特許文献2】特開2002-129569号公報
【特許文献3】特開2011-69076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルシア改質土や浚渫土等の粘性材料をトレミー管に投入する方法には、幾つかの方法があり、例えば、トレミー管の上端にホッパーを接続して、ホッパーを介して管内に材料を投下する方法がある。また、そのホッパーへの材料の投入方法として、材料を連続的に投下するベルコンを用いた投入方法が知られているほか、材料を断続的に投入するグラブバケットやバックホウを使用した投入方法が知られている。特に、大型のグラブバケット(数~20m3)やバックホウのバケット(数~10m3程度)を使用して、大量のカルシア改質土やセメント固化処理土をホッパーに投入してトレミー打設する場合、投入材料を速やかに流下させる必要がある。例えば、同じ量の投入であっても、ベルコンによる投入が連続的な供給であるのに対し、バケットによる投入では材料を掴んで旋回する工程ではホッパーへの供給が無く、ホッパーへの投入段階でまとめて土砂等の材料が投入されるためホッパーからトレミー管上部に材料が滞留し、トレミー管を閉塞させやすい。また、材料が速やかに流下しなければ、材料の塊が分離することになり、塊の表面積が増加し、濁りの発生量が増大することが懸念される。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、投入材料の速やかな流下を実現できるトレミー管と、当該トレミー管を用いた構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトレミー管は、管の内部を材料が流下するトレミー管であって、前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、水面をまたぐ位置に、複数の流入口を有し、前記複数の流入口は、前記管の周方向に沿って並んで設けられている。
【0010】
前記の構成によれば、投入した材料の速やかな流下を実現したトレミー管を提供することができる。具体的には、管に設けられた流入口は、水面をまたぐ位置に設けられていることから、トレミー管に材料を投入した直後から、材料の流下に伴い材料の塊の下部の空気や材料と共に管内に入った空気が速やかに管外に排出され、材料が水中に没したのちは材料の塊の上部に流入口から水(例えば海水)を流入させることができる。そのため、材料のスムーズな流下が可能であり、管を閉塞させない。
【0011】
また本発明の一態様に係るトレミー管は、前記の構成に加えて、前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、前記管は、前記管の管軸方向に沿って延設され、一部が気中にある複数のスリットを有し、前記複数のスリットは、前記管の周方向に沿って設けられていてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、スリットの気中に出ている領域からも管内に入った空気を管外に排出することができる。
【0013】
また、前記の構成によれば、スリットの水中に位置している領域において、管の内部を流下する投入材料による汚濁発生を抑え、当該材料が効率的に流下するトレミー管を提供することができる。具体的には、トレミー管の内面の面積が、スリットの開口領域分だけ小さいため、投入される材料とトレミー管の内面との接触面積が小さい。これにより、トレミー管の内面との接触に伴う摩擦を低減することができ、閉塞を抑制することができる。また、前記の構成によれば、閉塞が生じ難い為、トレミー管の管径が通常使用する管径より細くても材料を良好に流下させることができる。すなわち、従前と同じ投入量(単位時間あたり)を、従前よりも細いトレミー管を用いて処理することが可能で、費用が安価となるとともに設置等の取り回しが容易となり施工性が向上し、海中における潮流の影響も低減される。また、材料に巻き込まれて投入直後には管外に抜けきれなかった空気がある場合であっても、スリットから空気をトレミー管の管外に除くことにより、トレミー管内での投入材料の落下を促進することができる。
【0014】
また本発明の他の態様に係るトレミー管は、前記の課題を解決するために、管の内部を材料が流下するトレミー管であって、前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、水中に位置する複数の流入口を有し、前記複数の流入口の上端端部が水面または水面直下に位置し、前記複数の流入口は、前記管の周方向に沿って並んで設けられている。
【0015】
前記の構成によれば、投入した材料の速やかな流下を実現したトレミー管を提供することができる。具体的には、管に設けられた流入口は、水面または水面直下に位置していることから、トレミー管に材料を投入した直後から、材料の流下に伴い材料の塊の下部の空気や材料と共に管内に入った空気が速やかに管外に排出され、材料が水中に没したのちは材料の塊の上部に流入口から水(例えば海水)を流入させることができる。そのため、材料のスムーズな流下が可能であり、管を閉塞させない。
【0016】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記トレミー管が、前記管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置している状態において、前記管は、前記管の管軸方向に沿って延設され、水中に位置する複数のスリットを有し、前記複数のスリットは、前記管の周方向に沿って設けられていてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、管の内部を流下する投入材料による汚濁発生を抑え、当該材料が効率的に流下するトレミー管を提供することができる。具体的には、トレミー管の内面の面積が、スリットの開口領域分だけ小さいため、投入される材料とトレミー管の内面との接触面積が小さい。これにより、トレミー管の内面との接触に伴う摩擦を低減することができ、閉塞を抑制することができる。また、前記の構成によれば、閉塞が生じ難い為、トレミー管の管径が細くても材料を良好に流下させることができる。すなわち、従前と同じ投入量(単位時間あたり)を、従前よりも細いトレミー管を用いて処理することが可能で、費用が安価となるとともに設置等の施工性が向上し、海中における潮流の影響も低減される。また、材料に巻き込まれて投入直後には管外に抜けきれなかった空気がある場合であっても、スリットから空気をトレミー管の管外に除くことにより、トレミー管内での投入材料の落下を促進することができる。
【0018】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記の構成に加えて、前記管の周方向に沿った各前記流入口の開口幅を合計した長さは、各前記スリットのスリット幅を合計した長さよりも大きく構成していることが好ましい。
【0019】
前記の構成によれば、前記流入口が比較的広く開口している。これにより、トレミー管に材料を投入して間もなく、流下する材料の塊の上部に流入口から大量の水が供給されることになり、材料の塊を管の下端部に効率よく流下させる。
【0020】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記の構成に加えて、各前記流入口は、或る前記スリットと、別の前記スリットとの間に挟まれた位置にあってもよい。
【0021】
前記の構成によれば、前記管の流入口が設けられている領域において広く開口した構造を実現していることから、トレミー管に投下直後の材料を迅速に流下させることができる。具体的には、トレミー管に材料を投入して間もなく、流下する材料の塊の上部に開口している部分(流入口およびスリットの上端部分)から大量の水が供給されることになり、材料の塊を管の下端部に効率よく流下させる。
【0022】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記管が、第1の鋼管と第2の鋼管との間に管軸方向に沿って所定の長さの間隙を設けて、当該第1の鋼管と当該第2の鋼管とを、前記管の周方向に沿って並んだ複数の連結部材によって連結してなり、前記間隙が前記複数の連結部材によって前記管の周方向に分割されてなる個々の分割間隙によって、前記流入口が構成されていてもよい。
【0023】
前記の構成によれば、材料の速やかな流下を実現したトレミー管を提供することができる。具体的には、前記の構成によれば、対象とする材料に応じて流入口の大きさを容易に変更することができるので、投入する材料ごとに流入口の寸法を変更できることから、スムーズに流下させることが可能であり、管を閉塞させない。また、前記流入口から管内の空気を管外に排出することができる。
【0024】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記の構成に加えて、前記管の外周における、水面から下の領域には、汚濁防止管が設けられており、二重管構造となっていてもよい。
【0025】
前記の構成によれば、汚濁が管(内管)外に流出した場合であっても、外管が設けられているため、トレミー管外への汚濁の拡散を防ぐことができる。
【0026】
また、本発明の一態様あるいは他の態様のトレミー管は、前記の構成に加えて、前記管の外周における、水面から下の領域には、汚濁防止枠または汚濁防止膜が設けられていてもよい。
【0027】
前記の構成によれば、汚濁が管(内管)外に流出した場合であっても、汚濁防止枠または汚濁防止膜が設けられているため、汚濁の拡散を防ぐことができる。
【0028】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る構造物の施工方法は、材料が堆積してなる構造物を構築する、構造物の施工方法であって、前記トレミー管を、管の一方の管端が気中にあるように当該管を水中に設置する設置工程と、前記設置工程で設置された前記トレミー管に材料を投入する投入工程と、前記投入工程によって投入された材料を前記管から水中に投下させ、所定の箇所に打設して、前記構造物を構築する構築工程と、を含む。
【0029】
前記の構成によれば、投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管を用いて、効率よく構造物を構築することができる。具体的には、前記流入口から水(例えば海水)を管内に流入させることができるため、材料を大量にトレミー管上部から投下しても、スムーズに流下させることが可能であり、管を閉塞させない。また、前記流入口から管内の空気を管外に排出することができる。また、通常もちいる管径より小さい管径のトレミー管で施工できることから、設置や取り回しが容易で施工性が向上する。
【0030】
したがって、前記の構成によれば、構造物を、汚濁発生を抑えて、効率的に構築することが可能である。
【0031】
また、前記施工方法は、前記材料が、カルシア改質土、粘性土、浚渫土、PS灰系改質土、石灰系改質土およびセメント改質土からなる群から選択されてもよい。
【0032】
前記の構成によれば、例示したような粘性材料であっても、トレミー管への投下後に速やかに流下させることが可能であり、材料分離や管の閉塞を抑えることもできる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管と、当該トレミー管を用いた構造物の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図3】
図1に示すトレミー管を材料が流下する様子を模式的に示す図である。
【
図4】
図1に示すトレミー管の変形例を示す正面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の正面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の断面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の断面図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係るトレミー管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態に係るトレミー管について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態1に係るトレミー管の正面図である。本実施形態1に係るトレミー管1Aは、水中への土砂投入に際して用いられ、当該土砂によって水底に構造物を構築するための工事において用いられる。一具体例として、海底地盤の深堀跡の埋め戻し、および港湾における埋め立て、浅場造成等の施工において用いられる。
【0036】
トレミー管1Aは、後述するようにカルシア改質土等の粘性材料を、汚濁発生を抑え、効率的に流下させる。そのため、トレミー管1Aは、
図1に示すように、管10と、ホッパー20とを備えている。なお、粘性材料に限らず、土砂あるいは岩ズリ等の材料にも適用することができる。
【0037】
(1)管10
管10は、例えば水中(例えば海中)において鉛直方向に設置される管体であり、上端と下端とによって両端が構成され、鉛直方向に設置される場合に、上端12(一方の管端)を水上(気中)に位置させ、下端14(他方の管端)を水底に向ける。以下では、管体のうちの上端12を含む部分を上端部101とし、管体のうち下端14を含む部分を下端部102とする。
【0038】
<上端部101>
上端部101は、管10の上端12が気中にあるように管10を水中に設置している状態において、水面をまたぐ位置に、複数の流入口17を有し、複数の流入口17は、管10の周方向に沿って並んで設けられている。
【0039】
流入口17は、それぞれ、管10の管壁を貫通して設けられた開口部であり、それぞれの流入口17は、
図1に示すように水面をまたぐようにして管軸方向に沿って所定の長さを有する。すなわち、各流入口17は、上端に近い側に、気中において開口する気中開口領域171を有し、上端から離れた側に、水中において開口する水中開口領域172を有している。気中開口領域171では、管10の内外で空気が流出入でき、水中開口領域172では、管10の内外で水(海水)が流出入できる。
【0040】
流入口17の設置数としては、特に制限はない。後述するように、上端部101に投下された粘性材料の塊の上部に多くの海水を流入させることが好ましいことを考慮すれば、管10の周面における流入口17が占める大きさが大きいほうが良いが、大きすぎると管の強度の面で問題が生ずる。そのため、強度上問題がない範囲で多くの数の流入口17が設置されると良い。例えば
図1の例では、8つの流入口17(
図1は正面図であるため、図に表れているのは4つのみである)が、管軸を中心とした周方向に沿って、約45°間隔で設けられている。また、換言すれば、流入口17の数ではなく、管10の周方向に沿った流入口17の幅(開口幅とも言える)が大きければ良い。そのため、例えば、管10の周方向に沿って長く開口した例えば2つの流入口17であってもよい。
【0041】
流入口17について、
図2を用いて更に説明する。
図2は、
図1に示す領域Aの拡大断面図であり、管軸方向に沿って管10を切断したときの断面の様子を示す。また、
図2には、説明の便宜上、管10を流下する粘性材料の塊200を図示している。
【0042】
各流入口17は、気中開口領域171と水中開口領域172とが管軸方向に沿って隣り合って連続している。更に、
図2に示すように、各流入口17の材料の流下方向下流側の縁部には、管10の内部の当該流下方向上流外方向に向いて傾斜している傾斜面17aが設けられている。傾斜面17aが設けられていることにより、管10の内側に向いた角が鈍角になっているため、当該角が鋭角になっている場合に比べて、縁部の角に材料の塊200が接触したときの塊200の分散を抑制することができる。
【0043】
後述するように、塊200が上端部101においてスムーズに流下し、流下速度を上げるために、本実施形態では、上端部101に投入した材料が水面(海面)に到着してから約10秒以内に水(海水)が流入口17から流入するように、流入口17の開口サイズを、以下のように設定している。
【0044】
(流入口17の開口幅)
流入口17の管10の周方向に沿った長さ(開口幅)としては、各流入口17の開口幅を合計した長さが、管10の管の全周のうちの約70%の長さを占めるようにする。ただし、この数値に限定されるものではないが、大量の海水を塊200の上部に流入させることを考慮すれば、各流入口17の開口幅を合計した長さが、管10の管の全周のうちの少なくとも約30%の長さを有していることが好ましい。
【0045】
ここで、本実施形態では、トレミー管1Aのホッパー20(
図1)への材料の投入方法として、グラブバケットやバックホウのバケットを使用でき、バケットは、トレミー管1Aの管径に応じて適したサイズのものを使用することが望ましい。または、バケットで投入量を調整する。バケットでの投入量は、トレミー管1Aの内径から計算される球状の材料の塊の体積の0.8倍~1.5倍の範囲を想定すればよい。
【0046】
なお、本実施形態では、トレミー管1Aの管10の内径として、800~3000mm程度とすることができるが、この数値に限らない。また、管10の長さについては、特に制限はないが、2000mm程度の長さとすることができるが、10000mm以上の比較的長い管長であってもよい。
【0047】
(流入口17の長さ)
流入口17の管軸方向に沿った長さとしては、管10の内径以下とすることが望ましい。これにより、管10内に投下された粘性材料の塊の上部に水を流入させることができる。
【0048】
<下端部102>
図1に示すように、下端部102は、管10の上端部101の管軸方向に沿って下端側に連続している領域である。
【0049】
下端部102には、管10の管軸方向に沿って延設されたスリット16が、管10の周方向に沿って少なくとも2ヶ所の異なる位置に設けられている。これらスリット16は、水中に位置する。これらスリット16はそれぞれ、管10の管径以上の長さのスリット長を有している。これについて、以下に詳述する。
【0050】
管10に設けられたスリット16は、管10の管壁を貫通して設けられた開口部であり、スリット16において管10の内と外とは海水が自由に移動可能である。また、管10の内の空気をスリット16を介して管10の外に排出することができる。
【0051】
スリット16は、細長いスリットである。スリット16が設けられていることにより、管10の下端部102の内周面の面積は、スリット16を設けていない場合に比べて、スリット16の開口領域ほど小さい。これは言い換えれば、管10の下端部102は、粘性材料と接触する面積が、当該開口領域分小さくなっているということである。これにより、粘性材料の摩擦抵抗を低減でき、閉塞を抑制することができる。
【0052】
スリット16は、管10の周方向に沿って8つ設けられている。具体的には、8つのスリット16は、管軸を中心とした周方向に沿って、約45°間隔で設けられている。なお、スリット16は、管10の周方向に沿った複数の異なる位置に設けられていればよく、8つに限定されるものではない。例えば、管10の管径、および後述するスリット16のスリット幅等に応じて適宜設定すればよい。なお、複数のスリット16は、周方向に沿って均等に配設されていなくてもよいが、周方向に沿って均等に配設されているほうが望ましい。また、周方向に沿って複数設けられたスリット16の開始位置も異なる開始位置であっても良く、スリット16同士は同一の幅でなくとも構わない。
【0053】
更に、流入口17と同様に、スリット16の材料の流下方向下流側の縁部にも、傾斜面17aと同様な管10の内部の当該流下方向に対し上流外方向に向いて傾斜している傾斜面(不図示)が設けられていてよい。当該傾斜面が設けられていることにより、管10の内側に向いた角が鈍角になっているため、当該角が鋭角になっている場合に比べて、縁部の角に材料の塊200が接触したときの塊200の分散を抑制することができる。
【0054】
後述するように、塊200が下端部102においてスムーズに流下するために、本実施形態では、スリット16の開口サイズを、以下のように規定している。
【0055】
(スリット16のスリット長)
スリット16それぞれのスリット長(1スリット長)を、管10の管径以上としている。これにより、粘性材料がトレミー管1Aの管径と略等しい径を有した塊200である場合であっても、塊200の上部および下部において海水の循環および空気の排出をおこない、管10を閉塞せずに流下させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、一例として1スリット長を管10の全長、つまり上端12から下端14の間の長さの約75%としている。これにより、管10に比較的長くスリット状の開口部が形成されており、より一層スムーズな塊200の流下に寄与する。ただし、これらの数値に限定されるものではない。例えば、スリット16それぞれのスリット長(1スリット長)が、管10の全長の少なくとも20%の長さを有していることが好ましい。
【0057】
(スリット16のスリット幅)
スリット16それぞれの管10の周方向に沿った長さ、いわゆるスリット幅は、粘性材料の塊200が流下する際に海水を循環させるとともに、粘性材料の土塊200との接触面積を少なくする一方で、投入材料の管外への流出を抑制するという観点から、20mm以下が望ましい。一例としてスリット幅を10mmとすることができる。ただし、これらの値に限定されるものではなく、対象となる粘性材料の性状に応じて設定すればよい。
【0058】
ここで、スリット16のスリット幅と、流入口17の開口幅とを比較してみると、管10の周方向に沿った各流入口17の開口幅を合計した長さは、各スリット16のスリット幅を合計した長さよりも大きい構成となっている。この点は、後述する。
【0059】
(2)流入口17およびスリット16の機能
図3を用いて、管10に流入口17およびスリット16が設けられていることによるメリットを説明する。
図3は、トレミー管1Aの管10を、管10の管軸方向に沿って縦割りにした状態の断面図である。なお、
図3では、説明の便宜上、複数ある流入口17のうちの2つと、複数あるスリット16のうちの2つだけを図示している。
【0060】
図3は、紙面左端から右端に向かって時系列に沿った状態を示している。左端に示す状態は、粘性材料が管10の上端部101に投下されて間もなくの様子を示している。粘性材料は、或る程度の大きさの塊200になって、管10の上端の開口から上端部101に投下される。投下された粘性材料の塊200は、管10の内径と略同じ径もしくは管10の内径より小さい径を有し、自重によって流下する。そして、塊200が流入口17が設けられている領域に入ると、流入口17の流下方向上流側に位置する気中開口領域171から、塊200の流下に伴い下方に圧縮された空気が管10外に排出される。それとともに、流入口17の流下方向下流側に位置する水中開口領域172から管10内の水(海水)が管10外に排出される。そして、塊200の流下が進み、塊200が管内で水中に没すると、塊200の水中での流下に伴い、管外の水が水中開口領域172から管内に引き込まれる。つまり、塊200の上方において開口している流入口17の水中開口領域172から塊200の上部に管10外から水(海水)が流入する。このとき、流入口17は先述のように大きく(広く)開口していることから、上端部101において流入口17から塊200の上部に大量の海水を流入させて、流下速度を上げることができ、管10に投入されて間もなくの閉塞し易い材料塊の流下の勢いを妨げにくくすることができる。
【0061】
そして、下端部102では、スリット16が設けられていることにより、塊200の下流側で管10内の海水がスリット16を介して管10外に排出されるとともに、塊200の上流側で管10内にスリット16を介して管10外の海水が流入する。すなわち、下端部102では、塊200の上下位置において海水の循環が生じる。このように、スリット16によって水の流出入があることにより、管10内での脈動の発生が抑制され、塊200を構成する粘性材料の分散が抑制される。
【0062】
なお、上端部101での材料の塊の降下を促進するために、ホッパー20や管10に振動を与える加振機を設置してもよい。
【0063】
また、管10は上端から下端まで円管であるが、これに限らず、上端部101は四角管であり、下端部102が円管である態様であってもよい。
【0064】
(3)ホッパー20
ホッパー20は、
図1に示すように管10の上端に連結されており、管10の上端部101内への粘性材料の投入を円滑にするために天頂に向かって大きく開口し、下端において管10の上端の開口と連通している。ホッパー20は、周知のホッパーを使用することができるが、後述の実施形態で示すような形状のホッパーを使用することもできる。
【0065】
なお、ホッパー20の上端部全面に、鋼製の格子(例えば30~100mn間隔格子)を配置して、ホッパー20に投入された材料が解砕されて管10に入るようにしてもよい。
【0066】
(4)各構成部材の材質
管10は、トレミー管に用いられる周知の材料から構成することができる。例えば、鋼管等を採用することができる。なかでも、本実施形態1は、流入口17およびスリット16が広範囲に設けられていても構造的強度を保つことができるよう、鋼管を採用することが好ましい。
【0067】
ホッパー20は、鉄板等の周知のホッパーを構成する材料から構成することができる。
【0068】
(5)材料と投入形態
本実施形態1のトレミー管1Aによって流下させる材料としては、カルシア改質土、粘性土、浚渫土、PS灰系改質土、石灰系改質土およびセメント改質土からなる群から選択される粘性材料であってもよい。これら粘性材料は、粘性が比較的高いために塊になりやすく、海中で分散し難いものの、トレミー管内に付着して管を閉塞しやすい。そのため、本実施形態1のトレミー管1Aは、流入口17を設けることによって塊の流下速度を妨げず閉塞の発生を抑制している。更に、本実施形態では、この塊との接触面積を抑えるべく、スリット16を複数、且つそれぞれ一定の長さを設けることによって、管10の内周面の面積を小さくして、塊と接触する可能性がある面の面積を小さくして、閉塞の発生を抑制している。
【0069】
ただし、先に例示した粘性材料以外の土砂であっても、トレミー管1Aを用いることができる。例えば、砂や岩ズリ、コンクリートであっても良い。
【0070】
また、粘性材料は、ホッパー20の傾斜路24を流れ落ちる間に或る程度の大きさの塊になるように断続的に、管10に投下されてもよい。そのため、トレミー管1Aへの粘性材料の投入方法としては、先述のようにバケットによる一度に大量投入する方法以外にも、ベルトコンベアによって少量の粘性材料を連続して搬送し、連続的にホッパー20に投下する態様であってもよい。投入される材料が流動性のある材料であれば(たとえば、フロー値8.5cm以上(NEXCO試験方法 試験法313 エアモルタル及びエアミルクの試験方法))、何れの投入方法であって採用することができる。
【0071】
(6)構造物の施工方法
トレミー管1Aを用いて材料(粘性材料)を水底に堆積させてなる構造物を施工する際には、まず、管10の下端14を水底に向け、管軸を鉛直方向に沿うようにして水中にトレミー管1Aを設置する。このとき、トレミー管1Aは、管10の上端12(
図1)が気中にあるように、管10を水中に配置する(設置工程)。そして、そのように設置されたトレミー管1Aに対し、粘性材料をホッパー20から管10の内部に投下する(投入工程)。管10に投入された粘性材料(の土塊)は、管10の内部を流下し、(
図2)。水底に着底した粘性材料は堆積し構造物を構築する(構築工程)。なお、粘性材料が水底に堆積していく過程で、管10を順次天頂に引き上げて、下端14が水底の当該堆積物の表面付近に位置するようにしてもよい。
【0072】
〔変形例〕
(変形例1)
本実施形態の一変形例について、
図4を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図4は、2つの態様のトレミー管1B、1Cの正面図である。
図4は、実施形態1の
図1に対応する。なお、説明の便宜上、ホッパーは図示を省略している。
【0074】
図4の左側に図示するトレミー管1Bは、上端部101の流入口17の態様が、
図1の流入口17の態様と異なっている。具体的には、トレミー管1Bの流入口17は、スリット16とは同一線上にない点において、流入口17とスリット16とが同一線上にある
図1の態様と異なる。各流入口17の開口幅の合計の長さは、各スリット16のスリット幅の合計の長さよりも大きく構成されており、実施形態1で説明した効果と同等の効果を奏する。
【0075】
図4の右側に図示するトレミー管1Cは、上端部101の流入口17の態様が、
図1の流入口17の態様と異なっている。具体的には、トレミー管1Cの流入口17は、開口幅(管10の周方向に沿った長さ)が、下端部102のスリット16のスリット幅と略同一幅である。また、トレミー管1Cの流入口17は、隣り合う流入口17同士の間隔が、下端部102のスリット16同士の間隔よりも狭い。具体的には、流入口17同士の間隔が、スリット16同士の間隔の約半分である。要するに、流入口17はスリット16よりも周方向に沿って約2倍の個数が設けられている。これにより、流入口17は、開口幅がスリット16のスリット幅と同一であるものの、上端部101において管の周方向に広く開口した状態を実現することができる。これにより、実施形態1と同様に、管10に投入されて間もなくの材料の塊の上部に大量の海水を流入させることができる。
【0076】
(変形例2)
本実施形態の他の変形例について、
図5を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0077】
図5にトレミー管1Aaの正面図を示す。
図5は、実施形態1の
図1に対応する。なお、説明の便宜上、ホッパーは図示を省略している。
【0078】
図5のトレミー管1Aaは、管10に設けたスリット16と、流入口17とが、前記管の管軸方向に沿って連続している。この構成によれば、流下方向に沿って開口していることから、水の流出入が途切れず材料をよりスムーズに流下させることができる。
【0079】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図6を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
図6は、本実施形態のトレミー管1Dの正面図である。
図6は、実施形態1の
図1に対応する。なお、説明の便宜上、ホッパーは図示を省略している。
【0081】
図6のトレミー管1Dは、管10の上端部101に、下端部102に設けたスリット16´が及んでいる点が、
図1のトレミー管1Aとの主な相違点である。以下、詳細を説明する。
【0082】
トレミー管1Dの管10は、スリット16´が、下端部102から上端部101に渡って連続している。これにより、トレミー管1Dを、
図6のように管10の上端12が気中にあるように水中に設置した場合に、上端部101に及んでいるスリット16´の一部が気中に開口している。
【0083】
また、トレミー管1Dの管10は、流入口17が、上端部101の管10の周方向に沿って、或るスリット16´と、別のスリット16´との間に挟まれた位置にある。なお、流入口17の開口幅W1は、スリット16´のスリット幅W2よりも大きい。
【0084】
本実施形態の構成によれば、上端部101において流入口17に加えてスリット16´が開口しており広く開口した構造を実現していることから、管内の空気の流出を早め、トレミー管1Dに投下直後の材料を迅速に流下させることができる。
【0085】
〔変形例〕
上述のトレミー管1Dは、流入口17の開口幅W
1が、スリット16´のスリット幅W
2よりも大きいが、これに限定されるものではない。例えば、
図7に示す変形例の態様であってもよい。以下、
図7を用いて変形例を説明する。
【0086】
図7は、本実施形態のトレミー管1Eの正面図である。
図7は、上述実施形態の
図6に対応する。
【0087】
トレミー管1Eの管10は、流入口17が、管10の周方向に沿って、或るスリット16´と、別のスリット16´との間に挟まれた位置にあり、且つ流入口17の開口幅W1は、スリット16´のスリット幅W2と略等しい(W1=W2)。
【0088】
すなわち、水面付近では、水中部分に比べて管10に設けられた開口と開口との間隔が約半分となっている。8箇所のスリット16´が設けられている例で言えば、水面付近では、流入口17とスリット16´とを併せて16箇所の開口が設けられている。
【0089】
本実施形態の構成によれば、水面付近において流入口17に加えてスリット16´が開口しており広く開口した構造を実現していることから、トレミー管1Eに投下直後の材料を迅速に流下させることができる。
【0090】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図8を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0091】
図8は、本実施形態のトレミー管1Fの正面図である。
図8は、実施形態1の
図1に対応する。なお、説明の便宜上、ホッパーは図示を省略している。
【0092】
例えば
図1に示した実施形態のトレミー管1Aでは、上端部101と下端部102とが1本の鋼管に構成されており、流入口17およびスリット16が、当該鋼管に開設されている。これに対し、本実施形態のトレミー管1Fは、第1の鋼管801と第2の鋼管802とが、所定の間隙803を設けて鋼製の板状部材804(連結部材)で連結された態様を備えている。この所定の間隙803が、上述の流入口17と同等の機能を奏する流入口17Fである。下端部102である第2の鋼管802には、スリット16が設けられている。
【0093】
上端部101Fは、第1の鋼管801と、第2の鋼管802の上端部および間隙803である流入口17Fとを含めた部分から構成されている。要するに、本実施形態のトレミー管1Fは、異なる2つの鋼管801,802を、第1の鋼管801と第2の鋼管802との間に流入口17Fとしての所定の間隙803を設けて鋼製の板状部材804で連結した構成である。そして、第1の鋼管801に上端部101が構成され、第2の鋼管802に下端部102が構成されている。また、板状部材804は材料の流下を妨げないよう鋼管801と鋼管802を外周面で連結することが望ましい。
【0094】
なお、所定の間隙803は投入対象とする粘性土毎の事前の投入試験に基づき板状部材の寸法を変更することで適切な間隙の長さ又は巾とすることが出来る。また、トレミー管を施工場所から保管場所に移動させる際に、板状部材804を取り外すことで分割して容易に移動させることができる。
【0095】
流入口17Fは、上述の実施形態1の流入口17と同じく、管10の上端に近い側に、気中において開口する気中開口領域171を有し、上端から離れた側に、水中において開口する水中開口領域172を有している。気中開口領域171では、管10の内外で空気が流出入でき、水中開口領域172では、管10の内外で水(海水)が流出入できる。
【0096】
本実施形態の構成によっても、流入口17Fから管10内に水(海水)を流入させることができるため、材料を大量にトレミー管上部から投下しても、投入直後に材料の塊の上部に水を流入させて、塊の流下速度を上げることができる。これにより、塊が管10内をスムーズに流下させることが可能であり、管を閉塞させない。また、トレミー管1F上部から材料を投下した際に当該材料の下部で圧縮される空気は、流入口17Fの気中開口領域171から管外に排出されるため、材料の流下を妨げない。
【0097】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図9を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0098】
上述の各実施形態では、例えば
図1に示したように下端部102にスリット16が設けられている態様であった。しかしながら、本発明の一態様としては、スリット状の開口部が設けられていない態様であってもよい。これについて、
図9に基づいて説明する。
【0099】
図9は、4つの態様のトレミー管1A´、1B´、1E´、1F´の正面図である。なお、説明の便宜上、ホッパーは図示を省略している。
【0100】
トレミー管1A´は、
図1のトレミー管1Aにあるスリット16が設けられていない点において相違する。この相違点以外については、
図1のトレミー管1Aと同一である。
【0101】
トレミー管1B´は、
図4のトレミー管1Bにあるスリット16が設けられていない点において相違する。この相違点以外については、
図4のトレミー管1Bと同一である。
【0102】
トレミー管1E´は、
図7のトレミー管1Eにあるスリット16が設けられていない点において相違する。この相違点以外については、
図7のトレミー管1Eと同一である。
【0103】
トレミー管1F´は、
図8のトレミー管1Fにあるスリット16が設けられていない点において相違する。この相違点以外については、
図8のトレミー管1Fと同一である。
【0104】
本実施形態で例示する態様であっても、水面をまたぐ位置に流入口17(流入口17F)が設けられていることから、管10に投入されて間もなくの材料の塊の上部に大量の海水を流入させることができる。このため、塊の流下速度を上げて、閉塞を防ぎ、塊をスムーズに流下させることができる。
【0105】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、
図10を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0106】
図10は、本実施形態のトレミー管1Gを管軸方向に沿って切断した縦断面図である。
【0107】
トレミー管1Gは、先述の各実施形態および変形例のトレミー管が一重管構造であるのに対して、例えば実施形態1のトレミー管1Aの管10を内管として、その外周面に沿った外管30(汚濁防止管)を更に有した二重管構造である点において相違する。
【0108】
外管30は、内管に相当する管10の流入口17およびスリット16を通じて管10の外に出た粘性材料に由来する汚濁の拡散を防止するために設けられている。
【0109】
管10の外周面と、外管30の内周面とは、離間している。
図10に示すように、管10の内部を粘性材料の塊200が流下すると、流入口17およびスリット16を通じて管10の外に排出された海水は、その離間部分に沿って当該塊の上流側において流入口17およびスリット16を通じて管10の内部に流入する。このように循環流を形成することができるため、管10から排出された海水に、粘性材料に由来する汚濁が生じたとしても、汚濁した海水の管30外への排出を抑制し、汚濁した海水を、再び管10に戻すことができる。このように循環を生じさせるために、管10の外周面と、外管30の内周面とは2m以上離間していることが好ましい。管10の外周面と、外管30の内周面とが近接している場合、塊200が落下する時に流入口からの水(海水)の流入量が少なく、脈動が生じて材料分離が生じやすくなる。そのため、管10の外周面と、外管30の内周面とは十分な距離を有して離間していることが好ましい。
【0110】
外管30は、水面あるいは水面よりも上に上端があり、下端は、管10のスリット26をカバーしていれば良いが、管10の下端部102までカバーできる長さを有していてもよい。
【0111】
外管30は、内管に相当する管10と同じく鋼管から構成することができる。
【0112】
本実施形態においても実施形態1等と同様に、ホッパー20(
図10では不図示)は管10の上端に連結している。
【0113】
なお、管10の上端側と、外管30の上端側とは、
図10に示すように離間していてもよいが、管10と外管30とは、上端近傍で蓋部によって封じられており、当該蓋部に通気口等が設けられている態様であってもよい。
【0114】
外管30の下端には、汚濁防止膜が設けられていてもよい。また、その汚濁防止膜の端部に錘が設けられていてもよい。
【0115】
〔変形例〕
上述のトレミー管1Gは、鋼管の外管30を有した二重管構造であったが、この態様に限定されるものではなく、外管30の代わりに汚濁防止枠あるいは汚濁防止膜を管10周囲に設置して、これらの何れかと、管10との二重構造としてもよい。
図11は、汚濁防止枠40を具備した態様を図示している。
【0116】
図11の上側は、汚濁防止枠40と、管10との二重構造の平面図である。汚濁防止枠40は、一例として平面矩形の構造を有している。
図11の(a)に示す切断線X-X´において、二重構造を切断した様子を、
図11の(b)に示す。
図10に示した二重管構造と同様に、管10の外周面と、汚濁防止枠40の内周面とは、十分な距離を有して離間していることが好ましい。
【0117】
本変形例の態様であっても、上述のトレミー管1Gと同様に、汚濁の拡散を抑制して、環境に配慮することができる。
【0118】
なお、本変形例のように枠構造の汚濁防止枠40に代えて、汚濁防止膜であってもよい。このとき、汚濁防止膜は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンといった樹脂から構成することができる。
【0119】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、
図12を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0120】
本実施形態のトレミー管1Hでは、管10の上端12(一方の管端)が気中にあるように管10を水中に設置している状態において、水中に位置する複数の流入口17が、管の周方向に沿って並んでいる。この態様において、複数の流入口17の上端端部17bは、水面に位置している。
【0121】
また、本実施形態のトレミー管1Hは、先述の実施形態1のトレミー管1Aと同様に、水中に位置するスリット16を有している。すなわち、流入口17の位置が、先述の実施形態の流入口の位置と異なっている点において、相違する。
【0122】
本実施形態のように流入口17が、水中にあっても、水面近傍にあれば、トレミー管1Hに材料を投入して材料が水面に到達した直後から、材料の塊の上部に流入口17から水(例えば海水)を流入させることができる。また、投下時に材料と共に管内に入った空気も、流入口17から速やかに管外に排出することができる。ここで、
図12に示すように、流入口17の開口幅W
17は、スリット16のスリット幅W
16よりも広くなっている。そのため、トレミー管に材料を投入した直後に、材料の塊の上部に、大量の水を流入させることができる。
【0123】
なお、流入口17の位置は、流入口17の上端端部17bが、水面と同じ位置(高さ)にあることが好ましい。ただし、トレミー管1Hを海中に設置した場合に波の影響によって海面が上下動するが、上端端部17bと水面とは常に同じ位置になる必要はない。例えば、上端端部17bが水面よりも下になることもある。このように水面下に上端端部17bが位置する場合であっても、水面近傍であれば、先述の効果を奏することができる。
【0124】
(変形例)
図13に示すトレミー管1H´の流入口17は、上端端部17bの開口幅W
17bが下端端部17cの開口幅W
17cよりも大きく構成された、テーパー状である。
【0125】
テーパー状で上端端部17b側の方が広く開口していることから、上端端部17b側において水および空気の循環が効率的におこなわれる。これにより、水面に到達して直後の材料の塊の上部に、流入口17の上端端部17b側から多量の水を流入させることができ、閉塞を防いで効率的な流下を促進させる。
【0126】
なお、図示していないが、スリット16についても、1つのスリット16のスリット幅が均一でなく、管10の上端12側において広く、下端14側において狭い形状となっていてもよい。
【0127】
本発明は上述した各実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1A、1Aa、1A´、1B、1B´、1C、1D、1E、1E´、1F、1F´、1G、1H、1H´ トレミー管
10 管
12 上端
14 下端
16 スリット
17、17F 流入口
17a 傾斜面
17b 上端端部
17c 下端端部
20 ホッパー
30 外管
40 汚濁防止枠
101、101F 上端部
102 下端部
171 気中開口領域
172 水中開口領域
200 塊
801,802 鋼管
803 所定の間隙
804 板状部材(連結部材)