(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125854
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
B60C15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023670
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 良樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 靖雄
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB10
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC42
3D131BC51
3D131HA14
3D131HA23
3D131HA38
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつビード部の倒れ込み方向の剛性を確保する。
【解決手段】ビードコア20は、金属コード18が複数列、及び複数列に積み重ねられて形成され、かつ段方向長さが列方向長さより大きく形成され、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて金属コード18の3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外は、金属コード18が2列以上に設定されており、ビードコア29の長さ寸法Lが、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxの2倍以上に設定され、ビードコア20の図心Gが、ビードコア20の長手方向中央部よりもビードコア20のタイヤ径方向内側端側に位置し、ビードコア20の最大幅部が、ビードコア20のタイヤ径方向内側端からタイヤ径方向外側へ数えて金属コード18の2段目以降に位置し、ビードコア20の最大幅部が、ビードコア20のタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて金属コード18の2段目以降に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に埋設され、金属コードがタイヤ周方向に巻回されて形成された一対のビードコアと、
前記一対のビード部に跨り、前記ビードコア間に位置する本体部と前記ビードコアに巻き返された折返し部とを有するカーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置され、タイヤサイド部を形成するサイドゴムと、
を備え、
前記ビードコアは、前記金属コードが、前記本体部と前記折返し部との間の中心線と直交する幅方向に複数列、及び前記中心線に沿って複数列に積み重ねられて形成され、かつ段方向長さが列方向長さより大きく形成されており、
さらに、前記ビードコアは、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて前記金属コードの3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外は、前記金属コードが2列以上に設定されており、
前記本体部と前記折返し部との間の中心線に沿って計測する前記ビードコアの最大長さ寸法が、前記ビードコアの長手方向に対して直角方向に計測する前記ビードコアの最大幅寸法の2倍以上に設定され、
前記ビードコアの軸線に直角な断面で見たときの前記ビードコアの図心が、前記ビードコアの長手方向中央部よりも前記ビードコアのタイヤ径方向内側端側に位置し、
前記ビードコアの最大幅部が、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端からタイヤ径方向外側へ数えて前記金属コードの2段目以降に位置し、
前記ビードコアの最大幅部が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて前記金属コードの2段目以降に位置している、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビードコアの最大幅部における前記金属コードの配列本数が、2本以上5本以下に設定されている、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコアの図心は、前記ビードコアの幅方向中心線上に位置している、
請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードコアのタイヤ径方向最外端は、装着するリムのリムフランジの径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に位置する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのビード部には、金属コードを巻回して形成されたビードコアが埋設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気入りタイヤのビードコアとしては、ビード部の倒れ込み方向の剛性を確保することが重要である。
【0005】
本発明は、軽量化を図りつつ、ビード部の倒れ込み方向の剛性を確保可能な空気入りタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、ビード部に埋設され、金属コードがタイヤ周方向に巻回されて形成された一対のビードコアと、前記一対のビード部に跨り、前記ビードコア間に位置する本体部と前記ビードコアに巻き返された折返し部とを有するカーカスプライと、前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置され、タイヤサイド部を形成するサイドゴムと、を備え、前記ビードコアは、前記金属コードが、前記本体部と前記折返し部との間の中心線と直交する幅方向に複数列、及び前記中心線に沿って複数列に積み重ねられて形成され、かつ段方向長さが列方向長さより大きく形成されており、さらに、前記ビードコアは、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて前記金属コードの3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外は、前記金属コードが2列以上に設定されており、前記本体部と前記折返し部との間の中心線に沿って計測する前記ビードコアの最大長さ寸法が、前記ビードコアの長手方向に対して直角方向に計測する前記ビードコアの最大幅寸法の2倍以上に設定され、前記ビードコアの軸線に直角な断面で見たときの前記ビードコアの図心が、前記ビードコアの長手方向中央部よりも前記ビードコアのタイヤ径方向内側端側に位置し、前記ビードコアの最大幅部が、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端からタイヤ径方向外側へ数えて前記金属コードの2段目以降に位置し、前記ビードコアの最大幅部が、前記ビードコアのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて前記金属コードの2段目以降に位置している。
【0007】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、ビード部に埋設される金属コードからなるビードコアが、以下の構成を有している。
【0008】
(1)金属コードが、カーカスの本体部と折返し部との間の中心線と直交する幅方向に複数列、及び中心線に沿って複数列に積み重ねられて形成され、かつ段方向長さが列方向長さより大きく形成されている。
【0009】
(2)ビードコアは、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて金属コードの3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外は、金属コードが2列以上に設定されている
【0010】
(3) カーカスの本体部と折返し部との間の中心線に沿って計測するビードコアの長さ寸法が、ビードコアの長手方向に対して直角方向に計測するビードコアの最大幅寸法の2倍以上に設定されている。
【0011】
(4) ビードコアの軸線に直角な断面で見たときのビードコアの図心が、ビードコアの長手方向中央部よりもビードコアのタイヤ径方向内側端側に位置している。
【0012】
(5) ビードコアの最大幅部が、ビードコアのタイヤ径方向内側端からタイヤ径方向外側へ数えて金属コードの2段目以降に位置している。
【0013】
(6) ビードコアの最大幅部が、ビードコアのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて金属コードの2段目以降に位置している。
これら(1)~(6)の構成を全て備えたビードコアが埋設されたビード部は、倒れ込み剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアの最大幅部における前記金属コードの配列本数が、2本以上5本以下に設定されている。
【0015】
請求項2に記載の空気入りタイヤは、ビードコアの最大幅部における金属コードの配列本数が、2本以上5本以下に設定されているため、ビードコアの曲げ剛性を確保しつつ、軽量化を実現することが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアの図心は、前記ビードコアの幅方向中心線上に位置している。
【0017】
請求項3に記載の空気入りタイヤでは、ビードコアの図心を、ビードコアの幅方向中心線上に位置させるとで、ビードコアのタイヤ幅方向に配置されるカーカスプライの本体部と折返し部に対して、張力を均等に負担させることができる。
なお、ビードコアの幅方向中心線とは、ビードコアが線対称形状の場合、対称軸に言い換えることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアのタイヤ径方向最外端は、装着するリムのリムフランジの径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0019】
請求項4に記載の空気入りタイヤでは、曲げ剛性の高いビードコアがリムフランジの径方向最外端よりもリム径方向内側に配置されるので、ビードコアよりもタイヤ径方向外側のビード部をリムフランジの曲面に沿って変形させ易くなり、例えば、空気入りタイヤに大きな横力が作用した際などに、リムフランジの広い面で空気入りタイヤからの荷重を分散して支持することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の空気入りタイヤによれば、軽量化を図りつつ、ビード部の倒れ込み方向の剛性を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。
【
図2】
図1に示す空気入りタイヤのビード部を示す拡大断面図である。
【
図5】ビード部の更に他の変形例を示す断面図である。
【
図6】ビード部の更に他の変形例を示す断面図である。
【
図7】(A)~(C)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【
図8】(A)~(D)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【
図9】(A)~(E)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【
図10】(A)~(D)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【
図11】(A)~(D)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【
図12】(A)~(C)は、ビードコアの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~
図6を用いて、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10について説明する。
図1には、一例として、リム38に装着された乗用車用の空気入りタイヤ10が回転軸に沿った断面で示されている。
【0023】
図1、及び
図2に示すように、空気入りタイヤ10は、一対のビード部12と、一対のビード部12からタイヤ径方向外側へそれぞれ延びる一対のタイヤサイド部14と、一方のタイヤサイド部14から他方のタイヤサイド部14へ延びるトレッド部16と、を有している。
【0024】
一対のビード部12には、金属コード18を巻回して構成されるビードコア20がそれぞれ埋設されている。なお、本実施形態の金属コード18は、一般の空気入りタイヤのビードコアに用いられているスチールコードであり、金属コード18の外周はゴムコーティング(図示せず)されている。
【0025】
一対のビードコア20には、カーカス22が係留されている。本実施形態のカーカス22は、1枚のカーカスプライ24の端部側がビードコア20周りにタイヤ内側から外側へ折り返されて係止されており、折返し部24Bの端部が本体部24Aに接している。なお、カーカス22は、カーカスプライ24を2枚以上有していてもよい。
【0026】
カーカス22のタイヤ幅方向外側には、タイヤサイド部14を形成するサイドゴム層14Aが配置されている。
【0027】
本体部24Aのタイヤ径方向外側には、1または複数枚のベルトプライ26からなるベルト28が配設されている。ベルト28のタイヤ径方向外側には、トレッド部16を形成するトレッドゴム層16Aが配置されている。
【0028】
本体部24Aと折返し部24Bとの間には、ビードフィラー30がビードコア20からタイヤ径方向外側へ延びている。
【0029】
ビードフィラー30は、ビードコア20のタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向外側に向けて厚み30Tが減少している。ビードフィラー30の最大厚さ寸法30Tmaxは、後述するビードコア20の最大幅寸法20Wmaxよりも小さく設定されており、ビードコア20のタイヤ径方向最外側の幅、言い換えれば、タイヤ径方向最外側の段の幅、またはタイヤ径方向最外側からタイヤ径方向内側へ2段目の幅、場合によっては、タイヤ径方向最外側からタイヤ径方向内側へ3段目の幅に形成することができる。ビードフィラー30の最大厚さ寸法30Tmaxは、空気入りタイヤ10の要求性能などに応じて、適宜変更される。
【0030】
ビードフィラー30は、従来一般の空気入りタイヤと同様に、サイドゴム層14Aよりも硬いゴムで形成されている。なお、ビードフィラー30は必要に応じて配置されればよく、
図3に示すように、本体部24Aと折返し部24Bとの間にビードフィラー30が配置されていなくてもよい。
【0031】
本実施形態のビード部12には、折返し部24Bのタイヤ幅方向外側に、ゴムチェーファー32が配置されているが、ゴムチェーファー32は必要に応じて配置されればよく、
図4に示すように、ビード部12にゴムチェーファー32が配置されていなくてもよい。また、ビード部12には、
図5に示すように、更に別のゴムチェーファー34が配置されていてもよく、
図6に示すように、ゴムチェーファー32とゴムチェーファー34とを一体化したような大きなゴムチェーファー36が配置されていてもよい。
【0032】
本実施形態の空気入りタイヤ10は、ビード部12の構造、特にはビードコア20の構造が、以下に説明するように従来のビード部と異なっている。
【0033】
(ビードコアの構造)
図2に示すように、本実施形態のビードコア20は、金属コード18、一例としてスチールコードを巻回して形成されている。本実施形態の空気入りタイヤ10は乗用車用であるため、スチールコードとしては、例えば、太さが0.8~1.6mmのものが用いられている。
【0034】
ビードコア20は、以下のように構成されることが好ましい。
(1) 金属コード18を、カーカスプライ24の本体部24Aの長手方向と直交する幅方向に複数列、及び本体部24Aの長手方向に沿って複数段に積み重ね、かつ段方向長さを列方向長さより大きくする。
図2には、一例として段数が6段で、列数が1~3列のビードコア20が示されている。
なお、ビードコア20の段方向長さとは、カーカスプライ24の本体部24Aと折返し部24Bとの間の中心線22CLに沿って計測するビードコア20の長さLのことである。また、ビードコア20の列方向長さとは、中心線22CLと直角方向に計測するビードコア20の幅寸法のことである。
【0035】
(2) ビードコア20の長さLを、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxの2倍以上に設定する。言い換えると、金属コード18の段数を、金属コード18の列数の2倍以上に設定する。なお、
図2に示すビードコア20は、長さLが最大幅寸法20Wmaxの2倍となっている。
【0036】
(3) ビードコア20の軸線に直角な断面(言い換えれば、空気入りタイヤ10の回転軸に沿った断面)で見たときのビードコア20の図心Gを、ビードコア20の長手方向中央部よりもビードコア20のタイヤ径方向内側端側とする(
図2参照)。
【0037】
(4) ビードコア20の最大幅部(最大幅寸法20Wmaxとなる部位)を、ビードコア20のタイヤ径方向内側端に配置される金属コード18からタイヤ径方向外側へ数えて金属コード18の2段目以降とする。
【0038】
(5) ビードコア20の最大幅部が、ビードコア20のタイヤ径方向外側端に配置される金属コード18からタイヤ径方向内側へ数えて金属コード18の2段目以降とする。
【0039】
(6) ビードコア20において、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて金属コード18の3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外の金属コード18を2列以上に設定する。
【0040】
なお、ビード部12の倒れ込み方向の剛性は、主としてビードコア20による寄与が大きく、タイヤサイド部14の倒れ込み方向の剛性は、主としてビードフィラー30による寄与が大きい。また、ゴムチェーファー32、ゴムチェーファー34、ゴムチェーファー36が設けられている場合、これらは補助的に倒れ込み方向の剛性を補強している。したがって、ゴムチェーファー32、ゴムチェーファー34、ゴムチェーファー36は、必要に応じて設ければよい。
【0041】
さらに、空気入りタイヤ10は、ビードコア20、及びその他を、以下のように構成することができる。
【0042】
(7) ビードコア20の最大幅部における金属コード18の配列本数を、2本以上5本以下に設定する。
【0043】
(8) ビードコア20の図心Gを、ビードコア20の中心線20CL上に配置する。
【0044】
(9) ビードコア20のタイヤ径方向最外端を、装着するリム38のリムフランジ38Aの径方向外側端38Pよりもタイヤ径方向内側に位置させる。
【0045】
(10) ビードコア20の最大幅部における金属コード18の配列本数を、2本または3本に設定する。
【0046】
(11) ビードフィラー30の長さL30を、ビードコア20の長さ寸法L20よりも短く設定する。
【0047】
(12) ビードフィラー30の長さL30を、ビードコア20の長さ寸法L20よりも長く設定する。
【0048】
(13) カーカス22の本体部24Aに直交する方向に計測するビードフィラー30の最大厚さ寸法30Tmaxを、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxの1/2以下に設定する。
【0049】
(14) カーカスプライを2枚以上とする。
【0050】
(15) タイヤ最大幅部におけるカーカス22の本体部24Aに対して直角な方向に計測するタイヤサイド部14の厚さ寸法14Gよりも、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxを大きく設定する。
【0051】
(16) ビードコア20のタイヤ径方向最内側の1段目を、1本の金属コード18で形成する。
【0052】
(17) ビードコア20のタイヤ径方向最外端の最外段を、1本の金属コード18で形成する。
【0053】
(18) ビードコア20は、ビードコア20の最大幅部からタイヤ径方向内側に向けて金属コード18の列数を漸減する。
【0054】
(19) ビードコア20は、ビードコア20の最大幅部からタイヤ径方向外側に向けて金属コード18の列数を漸減する。
【0055】
(作用、効果)
本実施形態の空気入りタイヤ10のビードコア20は、上記(1)~(6)の全ての要件を満たしているので、上記(1)~(6)の全ての要件を満たしていない従来の空気入りタイヤに比較して、軽量化を図りつつ、ビード部12の倒れ込み剛性を確保することができる。
【0056】
上記(6)のように、ビードコア20において、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外の金属コード18を2列以上に設定することで、ビードコア20の倒れ込み方向の剛性を確保しつつ軽量化を実現することが可能となる。
例えば、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて3段目や、3段目及び4段目の金属コード18を1列とし、タイヤ径方向内側端からタイヤ径方向外側へ数えて2段目を1列にすると、ビード部12の倒れ込み剛性が不足する。したがって、ビード部12の倒れ込み剛性を確保するために、タイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側へ数えて3段目以降、かつタイヤ径方向最内端以外の金属コード18を2列以上に設定している。
【0057】
なお、上記(7)のように、ビードコア20の最大幅部における金属コード18の配列本数を、2本以上5本以下に設定することで、6本以上の場合に比較して軽量化となる。
【0058】
上記(8)のように、ビードコア20の図心Gを、ビードコア20の中心線20CL上に配置することで、ビードコア20のタイヤ幅方向側に配置されるカーカスプライ24の本体部24Aと折返し部24Bに対して、張力を均等に負担させることができる。
【0059】
上記(9)のように、ビードコア20のタイヤ径方向最外端を、装着するリム38のリムフランジ38Aの径方向外側端38Pよりもタイヤ径方向内側に位置させることで、ビードコア20よりもタイヤ径方向外側の部分をリムフランジ38Aの曲面に沿って変形させ易くなり、例えば、空気入りタイヤ10に大きな横力が作用した際などに、リムフランジ38Aの広い面で空気入りタイヤ10からの荷重を分散して支持することができる。また、リムフランジ38Aの径方向外側端38Pよりもタイヤ径方向外側にビードコア20のタイヤ径方向最外端を位置させた場合に比較して、ビードコア20の長さLが短くなって軽量化になる。
【0060】
上記(10)のように、ビードコア20の最大幅部における金属コード18の配列本を、2本または3本に設定することで、ビードコア20の倒れ込み剛性の確保と、軽量化とのバランスを上手くとることができる。
【0061】
本体部24Aと折返し部24Bとの間にビードフィラー30を設けた上で、上記(11)のように、ビードフィラー30の長さL30を、ビードコア20の長さ寸法L20よりも短く設定することで、ビードコア20の構成によって得られるビード部12の倒れ込み方向の剛性を確保しつつ、タイヤサイド部14の倒れ込み方向の剛性を低くすることができる。タイヤサイド部14の倒れ込み方向の剛性を低くすることで、ビード部12の剛性を確保した上で空気入りタイヤ10の縦ばね定数を低くすることができ、振動性(乗り心地)を向上することが可能となる。
【0062】
本体部24Aと折返し部24Bとの間にビードフィラー30を設けた上で、上記(11)のように、ビードフィラー30の長さL30を、ビードコア20の長さ寸法L20よりも長く設定することで、ビードコア20の構成によって得られるビード部12の倒れ込み方向の剛性を確保しつつ、ビードフィラー30が設けられていない場合に比較して、タイヤサイド部14の倒れ込み方向の剛性も高くなり、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
【0063】
上記(13)のように、カーカス22の本体部24Aに直交する方向に計測するビードフィラー30の最大厚さ寸法30Tmaxを、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxの1/2以下に設定することで、ビードフィラー30の最大厚さ寸法30Tmaxを、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxの1/2以下に設定しない場合に比較して、ビードフィラー30の体積を低減することができ、ビードフィラー30の効果を得つつ軽量化を図ることが可能となる。
【0064】
なお、カーカス22を、複数枚のカーカスプライ24で構成することが考えられる。複数枚のカーカスプライ24でカーカス22を構成する場合、各々のカーカスプライ24の折返し部24Bの端部は、タイヤ径方向にずらして配置することが一般的である。このようにすると、タイヤサイド部14において、折返し部24Bの重なり数を径方向の部位毎に変えて、タイヤサイド部14の倒れ込み方向のコントロールが可能となる。
【0065】
しかし、本実施形態のように、カーカス22を1枚のカーカスプライ24で構成した場合には、上記のようにしてタイヤサイド部14の倒れ込み方向のコントロールができなくなる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、カーカスプライ24を1枚とすることでカーカスプライ24を2枚以とする場合に比較して軽量化を図ることを可能としつつ、本実施形態の構造としたビードコア20、さらにはビードフィラー30と組み合わせることにより、カーカスプライ24が1枚であってもタイヤサイド部14の倒れ込み方向の剛性等をコントロールすることが可能となる。なお、ビードコア20の軽量化を図ることができるので、軽量化が図れる範囲内であれば、上記(14)のように、カーカスプライ24を2枚以上としてもよい。
【0066】
上記(15)のように、カーカス22の本体部24Aに対して直角な方向に計測するタイヤサイド部14の厚さ寸法14Gよりも、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxを大きく設定することで、ビードコア20の最大幅寸法20Wmaxをタイヤサイド部14の厚さ寸法14Gよりも大きく設定しない場合に比較してビードコア20の倒れ込み方向の剛性を確保できる。
【0067】
ビードコア20は、従来一般のビードコアと同様に、金属コード18を巻回して径方向内側から外側へ向けて段、及び列を形成するが、最初の1周目は、金属コード18の終端を有しており、他の部位の周方向に連続した金属コード18に比較して孤立しており、ビードコア20の曲げ剛性に寄与する能力は低い。
上記(16)のように、ビードコア20のタイヤ径方向最内側の1段目を、1本の金属コード18を1周させて形成することで、残りの段、及び列でもって有効にビードコア20の倒れ込み方向の剛性を発揮できるようになる。
【0068】
上記(17)のように、ビードコア20のタイヤ径方向最外端の最外段を、1本の金属コード18を1周させて形成することで、タイヤ径方向外側に向けてカーカスプライ24の本体部24Aと折返し部24Bとを最小限の段差でもって滑らかに接近させることができる。これにより、空気入りタイヤ10の生タイヤを製造する際に、部材間に空気を巻き込み難くなり、製造不良の発生を抑制可能となる。
【0069】
上記(18)のように、ビードコア20において、ビードコア20の最大幅部からタイヤ径方向内側に向けて金属コード18の列数を漸減することで、ビードコア20の外面に大きな段差が形成されなくなる。これにより、空気入りタイヤ10の生タイヤを製造する際に、部材間(ビードコア20とカーカスプライ24との間など)に空気を巻き込み難くなり、製造不良の発生を抑制可能となる。
【0070】
上記(19)のように、ビードコア20において、ビードコア20の最大幅部からタイヤ径方向外側に向けて金属コード18の列数を漸減することで、カーカスプライ24の本体部24Aと折返し部24Bとをタイヤ径方向外側へ向けて徐々に接近させることができる。これにより、ビードコア20の外面に大きな段差が形成されなくなり、空気入りタイヤ10の生タイヤを製造する際に、部材間(ビードコア20とカーカスプライ24との間など)に空気を巻き込み難くなり、製造不良の発生を抑制可能となる。
【0071】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0072】
図2に示すビードコア20の構造は、本発明の一例であり、ビードコア20としては、例えば、
図7~
図12に示す構造を採用することができる。空気入りタイヤ10の用途、種類、要求性能などに応じて、ビードコア20の構造は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0073】
上記実施形態の空気入りタイヤ10は乗用車用であったが、本発明は、乗用車用に限らず、乗用車用以外の空気入りタイヤ、例えば、バス、トラック、軽トラック、二輪車の空気入りタイヤなどにも適用可能である。また、本発明は、通常の空気入りタイヤに限らず、ランフラットタイヤにも適用可能である。
【0074】
上記実施形態のビードコア20における金属コード18の太さは、空気入りタイヤ10が乗用車用の場合の太さであり、金属コード18の太さは、他用途の空気入りタイヤでは適宜変更される。
【符号の説明】
【0075】
10…空気入りタイヤ、12…ビード部、14…タイヤサイド部、14A…サイドゴム層、18…金属コード、20…ビードコア、22…カーカス22、24…カーカスプライ24、24A…本体部、24B…折返し部、20CL…中心線、G…図心、38…リム、38A…リムフランジ、38P…リムフランジの径方向外側端