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  • 特開-粉体離型剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125857
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】粉体離型剤
(51)【国際特許分類】
   B22C 3/00 20060101AFI20220822BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20220822BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B22C3/00 D
B22D17/20 D
B22C9/06 D
C08L83/04
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023676
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115083
【氏名又は名称】ユシロ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】中村 元太
(72)【発明者】
【氏名】石川 真
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
4J002
【Fターム(参考)】
4E092AA04
4E092AA26
4E092AA55
4E092BA11
4E092DA05
4E093NA01
4J002AE052
4J002CP031
4J002DJ016
4J002FA086
4J002FD016
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】潤滑液を含浸または内包した形態の粉体離型剤であって、潤滑液を覆う物質としてアモルファスシリカを使用することで、塗布時のガスの発生を抑え、金型のキャビティ壁面に塗布したときに、均一で密着性の高い塗布膜を形成し得る粉体離型剤を提供する。
【解決手段】
鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤であって、潤滑液と球状多孔質シリカとから構成され、前記球状多孔質シリカに潤滑液が含浸された粉体粒子を有効成分として含むことを特徴とする粉体離型剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤であって、
潤滑液と球状多孔質シリカとから構成され、前記球状多孔質シリカに潤滑液が含浸された粉体粒子を有効成分として含むことを特徴とする粉体離型剤。
【請求項2】
前記潤滑液がシリコーンオイル、鉱油または合成油より選択される1種以上である、請求項1に記載の粉体離型剤。
【請求項3】
前記粉体粒子中、球状多孔質シリカおよび潤滑液の重量比(球状多孔質シリカ/潤滑液)が30/70~99/1である、請求項1または2に記載の粉体離型剤。
【請求項4】
前記球状多孔質シリカに、潤滑液に加えて、さらに展着助剤を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の粉体離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用粉体離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造は、複雑な形状の金型に溶融した金属(溶湯)を高速・高圧で注入し、高精度の金属部品を、能率的かつ経済的に量産できる鋳造方法である。ダイカスト鋳造の際には、過熱した金型の冷却や注入金属と金型との固着(焼き付き)防止、鋳造品を型から取り出す際の抵抗(離型抵抗)軽減を目的として、ダイカスト離型剤が金型内面に塗布される。
【0003】
ダイカスト離型剤は、有効成分を溶媒に溶解ないしは分散させて使用する形態を有する溶媒型と、溶媒を使用しない無溶媒型に大別される。さらに溶媒型には、水を溶媒とする水性タイプと炭化水素系液体を溶媒とする油性タイプがある。
【0004】
ダイカスト離型剤の有効成分としては、潤滑性を有する鉱油や油脂、シリコーンオイルのように常温で液体状である物質だけではなく、無機粉体や黒鉛、ワックスなど常温で固体の粉末状物質が用いられることもある。ダイカスト鋳造は製造設備や金属種その他の条件が様々であることから、ダイカスト離型剤には製造現場の多様な鋳造条件に適合した特性を有する有効成分が必要に応じて配合されることとなる。
【0005】
有効成分を金型内面上に効率よく塗布することを目指し、溶媒への有効成分の溶解又は分散をその手段として用いた、いわゆる溶媒型の離型剤が現在の主流となっている。特に、水を溶媒とする水性タイプ離型剤は、難燃性であることに加え、製造工程で過熱した金型を冷却する作用が顕著であることから、ダイカスト離型剤の主流として広く用いられている。なお、水以外の溶媒(主に炭化水素系溶媒)を用いるものを油性タイプ離型剤というが、溶媒そのものが有する可燃性等の性質から設備面や安全面で課題が大きく普及は進んでいない。
【0006】
一方、金型の内部冷却技術を含む製造設備技術の発展と軌を一にして、金型冷却や離型剤の効率的塗布のための溶媒を用いない、無溶媒型のダイカスト離型剤も開発が進んできた。特に、粉体状の離型剤を噴霧する粉体タイプのダイカスト離型剤は、離型剤の側面から環境配慮・製品品質向上を図る有効な手法として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平03-243242号公報
【特許文献2】特許第6613683号公報
【特許文献3】特開2010-264466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在主流となっている溶媒型水性タイプのダイカスト離型剤には、読んで字のごとく溶媒として水が含まれている。そのため、水性タイプ離型剤を金型内面に塗布した場合、往々にして水分が金型内面に残留することがある。このような場合、金型内面上の残留水分が金型内腔に注湯される金属溶湯内部に取り込まれて気化することにより、鋳造品に鋳巣が形成されるおそれがある。また、水性タイプ離型剤が高温の金型に接触した際にライデンフロスト現象が発生すると、有効成分が金型内面に付着せず、離型剤として所定の機能を果たし得ない場合も発生する。加えて、水性タイプ離型剤を使用する場合には、使用済の水性タイプ離型剤に由来する環境リスクを回避するための廃水処理設備が必要であり、当該設備に係る一時的な設置コストのみならず、継続的な運営コストが不可避的に生じる。このように、現在主流となっている溶媒型水性タイプ離型剤を使用した場合であっても、未だ多くの課題が指摘されている。
【0009】
一方、粉体型離型剤を使用した場合には、上記したようなや溶媒型水性タイプ離型剤を使用することに起因した問題は生じない。しかしながら粉体型離型剤についても種々の問題点があり、必ずしも普及に至っていないというのが現状である。
【0010】
粉体型離型剤としては、特許文献1には粉末または顆粒状の無機化合物に付着性を付与する有機物を混合した粉体型離型剤が開示されている。離型性を発現する窒化ホウ素や雲母などの無機粉体にバインダー成分として金属セッケンや高分子化合物などの有機物を混合したものである。しかしながら本形態に係る離型剤は金型内面上に生成する離型剤層が脆弱であるため、溶湯射出速度が高速になると離型剤層が断裂剥離し、脱型不良や焼付きなどの生産性低下を招くおそれがある。また、主たる有効成分が有色不透明な無機粉体であることから、作業環境を良好に保つことが極めて困難となる。
【0011】
特許文献2には、潤滑液として変性シリコーンオイルを内包し、常温で固体粒子状に形成される本体部とを有する主成分粒子を備え、前記本体部がワックスあるいは樹脂等の有機物質により構成される粉体離型剤が開示されている。しかしながら、本形態に係る粉体離型剤は製造工程が複雑であることに加え、本体部を構成する有機物質自体が溶湯との接触時にガス化し、鋳造品の品質不良要因の一つである鋳巣を生じさせることが懸念される。
【0012】
潤滑液を内包した形態の粉体離型剤としては、中空球状の形状を有するセラミックス粒子にシリコーンオイルを内包した離型剤が報告されている(特許文献3)。本形態に係る粉体離型剤の製造にあたっては、セラミックス粒子の製造に高温焼成が必要であり、また必要量のシリコーンオイルを保持/放出できる構造を精密に成型することが求められるなど、離型剤自体の製造工程が極めて煩雑となる問題がある。
【0013】
本発明は、高い離型性及び容易な取り扱い性を有するとともに、金型およびその周辺の汚れの抑制が期待され、鋳造品品質不良原因の一つである鋳巣を引き起こすガス発生が少なく、かつ製造が容易な粉体離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の粉体離型剤は、ダイカスト鋳造金型内面に塗布される粉体離型剤であって、潤滑液と球状多孔質シリカとから構成され、前記球状多孔質シリカに潤滑液が含浸保持された粉体粒子を有効成分として含むことを特徴とする。
【0015】
前記潤滑液はシリコーンオイル、鉱油または合成油より選択される1種以上であることが好ましい。
前記球状多孔質シリカは、アモルファスシリカで構成されることが好ましい。
【0016】
本発明の粉体離型剤は、前記球状多孔質シリカに、潤滑液に加えて、さらに展着助剤を含有することが好ましい。
前記粉体離型剤の安息角は70°未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、潤滑液を含浸させる物質として特定の球状多孔質シリカを使用することにより、鋳造品の品質不良原因となる分解性ガス発生の抑制が期待できることに加え、常温時の取り扱いが容易であって、かつダイカスト鋳造時にあっては優れた金型付着性および鋳造品離型性を実現する、簡易な操作で製造可能な粉体離型剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】離型性試験の手順を説明するための概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の粉体離型剤およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の粉体離型剤は、球状多孔質シリカと潤滑液とから構成され、前記球状多孔質シリカに潤滑液が含浸された粉体粒子を有効成分として含むことを特徴とする。
前記球状多孔質シリカは、その内部に潤滑液を保持しながら、常温域では粉体としての高い流動性を発揮することができる。そのため、前記球状多孔質シリカに潤滑液が含浸された粉体粒子を粉体離型剤の有効成分として含有させることで、離型剤貯留タンクや金型への噴射に至るまでの管路における閉塞を高いレベルで回避できる。
一方、金型内面上に到達した本発明の粉体離型剤からは、高温の金型への接触あるいは溶湯導入による急激な昇温が契機となり、粉体粒子に内包された潤滑液が粉体外に膨張・噴出し、当該潤滑液が金型内面上に均一かつ速やかに供給されることで優れた離型性が発揮される。なお、金型内面とは、金型のキャビティ壁面ともいう。
【0020】
球状多孔質シリカの平均粒子径は、通常0.5~100μmである。球状多孔質シリカの平均粒子径が0.5μm未満では、取り扱い性が低下するだけでなく、作業者の労働環境保全が困難になる。一方、平均粒子径が1000μmを超えると、粉体離型剤付着により金型内面の平滑性が低下し、鋳造物の表面品位に悪影響を及ぼす。したがって使用する球状多孔質シリカの平均粒子径は1~100μmが好ましい。前記球状多孔質シリカには、サンスフェア(AGCエスアイテック(株)製)、ゴッドボール(鈴木油脂工業(株)製)およびマイクロイド(超微粉末シリカ、(株)東海化学工業所製)などが挙げられる。これらのうち、サンスフェアは、結晶性のシリカを含まない真球状のアモルファスシリカであり、流動性・吸油性に優れることに加え、労働環境保全確保の点でも取り扱いが容易であるため好ましい。
【0021】
潤滑液は、シリコーンオイル、鉱油、合成油などが用いられる。
シリコーンオイルには、ポリジメチルシロキサンやポリメチルフェニルシロキサンなどストレートシリコーンオイル、および変性シリコーンオイルを用いることができる。変成シリコーンオイルとしては アルキル基、アラルキル基、カルボキシルアルキル基、カルボン酸アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびアミノアルキル基等で少なくとも一部が変性されたオルガノポリシロキサン等を用いることができる。
【0022】
鉱油には、潤滑液の基油として一般的な鉱油が用いられる。例えば、パラフィン系鉱油およびナフテン系鉱油等が挙げられる。これらの鉱油の動粘度(100℃)は、通常5~600mm2/sである。
【0023】
合成油には、牛脂、豚脂、なたね油、ヤシ油、パーム油、ぬか油またはこれらの水素添加物等の油脂から得られる脂肪酸;脂肪酸とアルコールとのエステル;ポリブテン等のポリα-オレフィン;ポリエチレングリコールまたはポリエステルポリオール等のポリオール;その他のポリエーテル;ポリエステル;高級アルコール;ポリブタジエン等が挙げられる。
【0024】
前記した潤滑液は,それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
これらのうち、優れた離型性を示すという観点から、シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0026】
本発明の粉体粒子中、球状多孔質シリカおよび潤滑液の重量比(球状多孔質シリカ/潤滑液)は30/70~95/1が好ましく、45/55~90/10がより好ましい。
【0027】
粉体粒子中の球状多孔質シリカ/潤滑液の比率が30/70を超えて潤滑液比率が高まると、粉体粒子を粉体離型剤に配合した場合に流動性が著しく低下し,結果として配管内の閉塞や離型剤皮膜のムラなど不具合を引き起こす。
一方、球状多孔質シリカ/潤滑液の比率が95/1を下回り潤滑液比率が減少すると,十分な離型性が得られなくなる。
【0028】
前記粉体離型剤は、潤滑液を含浸保持した球状多孔質シリカからなる粉体粒子に加え、近年開発が進んでいる冷却金型を含めて広範な金型温度に対応する付着性を担保するため、さらに展着助剤を含有することが好ましい。展着助剤として常温で固体かつ金型の熱により融解または軟化する有機物が該当する。
【0029】
展着助剤の一例として、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、N,N'-エチレンビスオレイン酸アミドおよびN,N'-エチレンビスステアリン酸アミド等の合成ワックス;蜜ろう、カルナバワックスおよびモンタンワックス等の天然ワックス等が挙げられる。また,ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
展着助剤は鋳造品の品質に影響を及ぼさない範囲で添加することができるが、粉体粒子と展着助剤の重量比が50/50~99/1であれば好ましく、70/30~90/10がより好ましい。
【0030】
前記粉体離型剤について、粉体の流動性を示す指標である安息角は70°未満が好ましく、40°以下がより好ましい。本明細書において、安息角は、50℃で8時間以上真空乾燥させた粉体離型剤をJIS規格K6911.5.2に準拠したロート、落下高さ90mmを用い、注入法で測定した値である。
【0031】
球状多孔質シリカに潤滑液を含浸させた粉体粒子を製造する方法としては、潤滑液を溶媒で希釈し、その希釈液を多孔質シリカに浸透させ、徐々に乾燥させて溶媒を揮発させることで多孔質シリカの内部に潤滑剤を含浸させる方法、あるいは多孔質シリカを潤滑剤中に浸し、真空引きを行なって強制的に多孔質シリカの内部に潤滑剤を浸透させる方法など、既知の手法を用いることができる。
【0032】
前記粉体離型剤には、球状多孔質シリカおよび潤滑液からなる粉体粒子の他に、前述の適切量の展着助剤、および本発明の効果を損なわない範囲内で、一般的な潤滑液に含まれる離型成分、分散剤成分、およびその他の添加剤成分が含まれていてもよい。
【0033】
本発明における粉体粒子の製造方法の一実施形態では、球状多孔質シリカに対して、1.0~10重量倍の低極性有機溶媒と、同0.05~3.0重量倍の潤滑液とを添加して、均一になるまで混合、攪拌して分散液を得る。次に、エバポレーターで前記分散液から低極性有機溶媒を減圧除去すると、球状多孔質シリカに均一に潤滑液が吸収された粉体粒子をほぼ定量的に得ることができる。得られた粉体粒子は凝集塊の発生もなく、走査電子顕微鏡(SEM)で観察しても、吸油前の球状多孔質シリカと、粉体粒子とで外観に変化が認められない。つまり、本発明における粉体粒子は、滑らかで取り扱い性の良い粉体であるといえる。
【0034】
上記粉体粒子製造に用いる低極性有機溶媒には、ヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル、トルエンおよびテトラヒドロフランなどが選択できる。これら低極性有機溶媒を用いることで、均一性が高い潤滑液の溶媒分散液を得ることができるため、均質で凝集塊が生じにくい粉体粒子を製造することができる。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例および比較例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により制限されるものではない。
[粉体離型剤の調製]
実施例1~12および比較例1~4に従って、粉体離型剤を調製した。
[粉体離型剤の評価]
【0036】
(1)離型性
250℃および300℃に加熱した鋼板(材質:SKD61)に対するアルミの焼付きの有無を評価した。試験条件を下記表1に示す。
【表1】
【0037】
また、試験操作手順については、図1に示すようなものとした。また、試験操作手順については、図1に示すようなものとした。すなわち、(1)スプレーを用いて水性離型剤を塗布し、(2)円筒形状の治具を設置してアルミニウム溶湯を投入し、(3)荷重をかけて、水平方向に牽引し、この際に張り付かずに牽引可能かつ、牽引するに要した荷重の最大値の多寡に応じて離型性の優劣を判断した。
(離型性評価基準・・・250℃の条件)
〇:離型抵抗値が4.5Kg未満であった。
△:離型抵抗値が4.5Kg以上 6.0Kg未満であった。
×:離型抵抗値が6.0Kg以上であった。
(離型性評価基準・・・300℃の条件)
○:離型抵抗値が12Kg未満であった。
△:離型抵抗値が12Kg以上 22Kg未満であった。
×:離型抵抗値が22Kg以上であり脱型抵抗上限以上であった。
【0038】
(2)付着性
250℃に加熱した鋼板(100mm×100mm)に、20cm離れた位置から、粉体塗布用のスプレーガンを用いて粉体離型剤0.5gを塗布し、鋼板上に付着した粉体離型剤の付着量を測定した。
【0039】
(3)汚れ
上述の(2)付着性試験で用いた鋼板の外観を目視評価した。
〇:無色あるいは薄い白色
△:濃い白色
×:白色以外の不透明着色
【0040】
(4)安息角
JIS規格K6911.5.2に準拠したロート、落下高さ90mmを用い、注入法で測定した。
水平な基板の上に、一定の高さの漏斗から粉体離型剤を、710μmの篩を通して落下させ、基板上に円錐状に堆積した粉体離型剤の母線と基板表面とのなす角を安息角として測定した。
測定装置:安息角測定器ASK-01(アズワン(株)製)
(安息角評価基準)
〇:安息角が30 °以上 50 °未満であった。
△:安息角が50 °以上 70 °未満であった。
×:安息角が70 °以上であった。
【0041】
[実施例1]
サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)48重量部に、ジエチルエーテル100重量部、BY16-799(ジメチルシリコーンオイル(80mm2/s)、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル(株)製)32重量部、混合および攪拌した後、ジエチルエーテルを減圧除去して粉体粒子を得た。更に、A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部を添加して粉体離型剤を調製した。
実施例1の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0042】
[実施例2~4]
実施例1において、BY16-799(ジメチルシリコーンオイル(80mm2/s))に代えて、SH-550(メチルフェニルシリコーンオイル(125mm2/s)、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル(株)製)(実施例2)、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)(実施例3)、または、X42-C5615(オルガノポリシロキサン(5400mm2/s)、モメンティブ・パフォーマンス・ジャパン合同会社製)(実施例4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例2~4の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0043】
[実施例5]
実施例3において、サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)の量を40重量部から26重量部に変更し、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を32重量部から54重量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例5の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0044】
[実施例6]
実施例5において、サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)の量を26重量部から40重量部に変更し、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を54重量部から40重量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例6の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0045】
[実施例7]
実施例6において、サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)の量を40重量部から72重量部に変更し、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を40重量部から8重量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例7の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0046】
[実施例8]
実施例7において、サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)の量を72重量部から76重量部に変更し、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を8重量部から4重量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例8の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0047】
[実施例9]
実施例8において、サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)の量を76重量部から40重量部に変更し、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を4重量部から10重量部に変更し、A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部から50重量部に変更した以外は、実施例8と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例9の粉体離型剤の評価結果を表2に示す。
【0048】
[実施例10]
実施例7において、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)の量を8重量部から18重量部に変更し、A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部から10重量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例10の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。
【0049】
[実施例11]
サンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)54重量部に、ジエチルエーテル100重量部、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)26重量部を添加して、混合および攪拌した後、ジエチルエーテルを減圧除去して粉体粒子を得た。更に,アルミニウムステアレート600(酸化ポリエチレン、日油(株)製)20重量部を加え,粉体離型剤を調製した。
実施例11の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。
【0050】
[実施例12]
実施例11において、アルミニウムステアレート600(ステアリン酸アルミニウム、日油(株)製)に代えて、カルシウムステアレート(ステアリン酸カルシウム、日油(株)製)を使用した以外は、実施例11と同様にして、粉体離型剤を調製した。
実施例12の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。
【0051】
[比較例1、2]
A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部および黒鉛80重量部を混合して、比較例1の粉体離型剤を調製した。
A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部およびタルク80重量部を混合して、比較例2の粉体離型剤を調製した。
比較例1および2の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。黒鉛を潤滑成分として用いた比較例1では、本発明の実施例と同等程度の離型性および取り扱い性(安息角)を示したが、黒色粉末である黒鉛を使用しているため、黒色粉末の飛散による作業環境の悪化は不可避である。また、付着性の高い不定形無機微粉末であるタルクを固体潤滑剤として使用した比較例2では、実施例と比較して同程度の取り扱い性(安息角)を示したが、離型性については不十分であることが確認された。
【0052】
[比較例3]
A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)20重量部およびサンスフェアH-52(AGCエスアイテック(株)製)80重量部を混合して、比較例3の粉体離型剤を調製した。
比較例3の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。潤滑液を含浸させない球状多孔質シリカを粉体粒子として配合した場合には十分な離型性能を発現しないことが確認された。
【0053】
[比較例4]
天然の不定形多孔質シリカ鉱物である珪藻土(ラヂオライト#300、昭和化学工業(株)製)80重量部に、ジエチルエーテル100重量部、TN(オルガノポリシロキサン(1200mm2/s)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)10重量部を添加して、混合および攪拌した後、ジエチルエーテルを減圧除去して粉体粒子を得た。更に、A-C-392(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル・インターナショナル製)10重量部を加え,比較例4の粉体離型剤を調製した。
比較例4の粉体離型剤の評価結果を表3に示す。球状多孔質シリカの代わりに珪藻土を用いて粉体粒子を作成した場合、必要な取り扱い性(安息角)を満足する粉体離型剤組成物は調製可能であったが、十分な離型性能を発現しないことが確認された。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
図1