(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125881
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】トレミー管、および当該トレミー管を用いた土砂の投入方法
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023707
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA01
2D045CA12
(57)【要約】
【課題】投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管と、当該トレミー管を用いた土砂の投入方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様のトレミー管(100)は、管(1)内を材料が流下するトレミー管であって、管(1)の上部に、当該管(1)よりも内径が小さい排出管(2)が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内を材料が流下するトレミー管であって、
前記トレミー管は、
管と、
前記管の上部に配置された当該管の内径未満の外径を有する排出管と、
を備える、
トレミー管。
【請求項2】
前記排出管は、投入された材料を、前記管の内径よりも小さい外径を有する塊にして、当該塊を前記管に降下させる、
請求項1に記載のトレミー管。
【請求項3】
前記排出管は、横断面が円形あるいは矩形の筒構造である、
請求項1または2に記載のトレミー管。
【請求項4】
前記管と前記排出管との接続部には、当該管の内径と当該排出管の外径との差から生じる上方に開口した開口部を有し、
前記開口部を通じて空気または水の少なくともいずれか一方が当該管の内側と外側とを流出入する、
請求項1から3の何れか1項に記載のトレミー管。
【請求項5】
前記接続部の位置が、前記排出管の下端以上である、
請求項4に記載のトレミー管。
【請求項6】
前記排出管または前記管に、前記排出管または前記管の周方向に沿って外部に開口した流入口を有し、前記流入口は水面をまたぐ位置にある、
請求項1から5のいずれか1項に記載のトレミー管。
【請求項7】
前記管には、管軸方向に細長いスリットが前記管の周方向に沿って複数設けられている、
請求項1から6の何れか1項に記載のトレミー管。
【請求項8】
前記管には、管軸方向に細長いスリットが前記管の周方向に沿って複数設けられており、
前記流入口は、前記排出管の周方向に沿って、前記スリットの前記管の周方向に沿って設けられた各前記スリットの開口幅より、広い開口幅を有する、
請求項6に記載のトレミー管。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のトレミー管を用いて材料投入を行う、土砂の投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレミー管、および当該トレミー管を用いた土砂の投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底地盤の深堀跡の埋め戻し、および港湾における埋め立て、潜堤築堤、浅場造成等をおこなう工事において、海中への土砂投入に際してトレミー管を用いることがある。トレミー管を、上端を水面上に出す一方で下端を海底に向けて海中に配置し、上端から土砂を投入する。このようにトレミー管を用いることにより、海中での汚濁発生を抑え、環境に配慮した施工をすることができる。
【0003】
そのようなトレミー管として、静水面付近に開口部を有する内管の周囲に、管径および管長ともに内管よりも大きな外管を配置した二重管からなるトレミー管がある(特許文献1~3)。内管に設けられた開口部は、外管と内管との間の水循環による土砂投入時の汚濁拡散抑制の目的で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-129568号公報
【特許文献2】特開2002-129569号公報
【特許文献3】特開2011-69076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルシア改質土や浚渫土等の粘性材料をトレミー管によって海中投入(打設)する場合、粘性材料によるトレミー管の閉塞が懸念される。トレミー管の閉塞を防止するためには、管径を大きくする必要があるが、管径を大きくすると投入材料と接触する海水量が増加し、汚濁発生の要因となる。また、特にカルシア改質土の場合には、材料分離や海水の巻き込みにより、材料分離や打設後の発現強度低下といった問題が生じる。
【0006】
また、投入した材料の塊がトレミー管を閉塞させずに流下した場合であっても、管内で水位の上昇と降下を繰り返す脈動が生じ、材料分離や濁りが発生し易くなる。
【0007】
また、大型のグラブバケット(数m3~20m3)やバックホウのバケット(数m3~10m3程度)を使用して、大量のカルシア改質土やセメント固化処理土をホッパーに投入してトレミー打設する場合、投入材料を速やかに降下させる必要がある。ベルトコンベアによる投入が連続的な供給であるのに対し、バケットによる投入では材料を掴んで旋回する工程ではホッパーへの供給が無く、ホッパーへの投入段階でまとめて材料が投入されるためホッパーからトレミー管上部に材料が滞留し、トレミー管の閉塞の可能性が高まる。また、材料が速やかに降下しないと、材料の塊が分離することになり、塊の表面積が増加し、濁りの発生量が増大する。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管と、当該トレミー管を用いた土砂の投入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトレミー管は、管内を材料が流下するトレミー管であって、前記トレミー管は、管と、前記管の上部に配置された当該管の内径未満の外径を有する排出管と、を備える。
【0010】
前記の構成によれば、投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管を提供することができる。
【0011】
また、前記の構成によれば、速やかな流下を実現できる。これにより、材料の塊が分離することを防ぐことができる。また、分離に伴った塊の表面積の増加を抑制することができ、水中の濁りの発生を抑制することができる。
【0012】
また、前記トレミー管は、前記排出管が、投入された材料を、前記管の内径よりも小さい外径を有する塊にして、当該塊を前記管に降下させる。
【0013】
前記の構成によれば、排出管は、外径が前記管の内径よりも小さいことから、当該排出管を流下した投入材料は、最大で排出管の内径未満の外径を有する塊となって、前記管に投入される。このため、当該塊は、前記管内壁との摩擦抵抗が減少し、前記管を閉塞させることがなく、速やかに流下する。また、トレミー管内壁と投入材料の塊の接触が少なくなり濁りの発生が抑制される。
【0014】
また、前記トレミー管は、前記排出管が、横断面が円形あるいは矩形の筒構造であってもよい。
【0015】
前記の構成によれば、排出管の横断面が円形であれば、横断面が円形で、その最大径が排出管の内径と略等しい塊となり、当該円形の塊が、前記管に投入されることで、材料分離の発生を抑制しながら、当該管を流下させることができる。また、排出管の横断面が矩形であれば、その最大径が排出管の前記内径と等しい塊となる。これにより、塊の周面と、前記管の内周面との間には、横断面の形状の違いに起因する間隙が生じる。この間隙から塊の下方にある水を塊の上部に効率的に移動させることができ、塊の流下を促進させる。
【0016】
また、前記トレミー管は、前記管と前記排出管との接続部には、当該管の内径と当該排出管の外径との差から生じる上方に開口した開口部を有し、前記開口部を通じて空気または水の少なくともいずれか一方が当該管の内側と外側とを流出入する構造であってもよい。
【0017】
前記の構成によれば、管の内径と排出管の外径との差により生ずる開口部から空気および水の少なくともいずれかが通過するため、排出管に材料が投入された当初には、空気を管外に排出することができて閉塞を防ぐことができる。更に、材料が排出管から管に投入される段階では、開口部から材料(材料の塊)の上部に水を流入させて、管の閉塞を防ぎ、材料の流下を促進することに寄与することができる。
【0018】
また、前記トレミー管は、前記接続部の位置が、前記排出管の下端以上であってよい。
【0019】
前記の構成によれば、排出管の下端にある材料排出口が、前記管の上端にある材料投入口より管内に挿入されている。このため、排出管によって整えられた材料の塊の大きさが変わることなく、管に投入され、管内の閉塞が防止される。
【0020】
また、前記トレミー管は、前記排出管または前記管に、前記排出管または前記管の周方向に沿って外部に開口した流入口を設け、前記流入口は水面をまたぐ位置にある構造であってもよい。
【0021】
前記の構成によれば、投入した材料が排出管内を流下する際に、材料の下側の空気が流出口より速やかに排出されることで投入され、流出口より水が排出管または管内に流入し材料をスムーズに流下させることが可能であり、排出管を閉塞させない。
【0022】
また、前記トレミー管は、前記管には、管軸方向に細長いスリットが前記管の周方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0023】
前記の構成によれば、管内を流下する投入材料の上部および下部において、スリットを介して水の流出入が生じる。これにより、当該材料の速やかな流下を促進することができる。また、このように材料が速やかに流下することによって、材料による汚濁発生を抑えることができる。
【0024】
また、前記トレミー管は、前記管には、管軸方向に細長いスリットが前記管の周方向に沿って複数設けられており、前記流入口は、前記排出管の周方向に沿って、前記スリットの前記管の周方向に沿って設けられた各前記スリットの開口幅より、広い開口幅を有しいてもよい。
【0025】
前記の構成によれば、投入した材料が排出管内を流下する際に、材料の下側の空気が流入口より速やかに排出されることで投入された材料をスムーズに流下させることが可能であり、排出管を閉塞させない。
【0026】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る土砂の投入方法は、前記トレミー管を用いて材料投入を行う。
【0027】
前記の構成によれば、大型のグラブバケット(数m3~20m3)やバックホウのバケット(数m3~10m3程度)を使用して、大量の土砂(例えば、カルシア改質土やセメント固化処理土)をホッパーに投入してトレミー打設する場合であっても、管を閉塞させることなく、スムーズに打設することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、投入材料の速やかな流下を実現したトレミー管と、当該トレミー管を用いた土砂の投入方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態1に係るトレミー管100の正面図である。
【
図2】本発明のトレミー管100の変形例に係るトレミー管の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るトレミー管100aを用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るトレミー管100bを用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1の変形例に係るトレミー管100a´およびトレミー管100b´の正面図である。
【
図6】本発明の実施形態1の変形例に係るトレミー管100a´を用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態1の変形例に係るトレミー管100b´を用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態1の変形例に係るトレミー管100b´´の正面図である。
【
図9】本発明の実施形態1の変形例に係るトレミー管100b´´を用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係るトレミー管100dの正面図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係るトレミー管100dの変形例に係るトレミー管100e~100gの正面図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係るトレミー管100eを用いた際の、材料の降下を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態2に係るトレミー管100fを用いた際の、材料の降下を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔実施形態1〕
(1)トレミー管100
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態のトレミー管100の概略構成を示す正面図である。
【0031】
図1に示すトレミー管100は、管1と、管1の上部に配置された管1の内径より外径が小さい排出管2と、を備えている。トレミー管100に投入される材料は、排出管2を降下した後に、排出管2より落下し、管1に入って、管1の内部を流下する。
【0032】
管1の内径は材料の供給速度によって適宜調整すればよいが、一例として、管1の内径は、800mm以上であればよく、1500mm以上であることが好ましい。また、当該内径は、3000mm以下であればよく、2500mm以下であることが好ましい。
【0033】
管1の長さは、特に制限はないが、10000mm以上の比較的長い管長であってもよい。
【0034】
排出管2は、内部を材料が流下する筒構造を有し、管1の垂直方向内に配置されており、図示しない連結部材(例えば鋼製の板状部材や丸鋼を用いた溶接による連結や、ボルトを用いた連結)によって、管1と連結している。なお、排出管2は、下端の管口が、管1の上端の管口の範囲内にあればよく、管1と同軸上に配置されている構成に限らない。
【0035】
排出管2の外径は、管1の内径未満であればよい。管1の内径と排出管2の外径との差は、5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましい。当該差が上記の範囲内であることで、投入された材料の塊が管1を流下する際に、材料の塊と管1の間に適切な隙間が生じるため、材料は管1を閉塞させることなく速やかに流下する。
【0036】
トレミー管100の構成によれば、排出管2において、投入された材料を、管1の内径よりも小さい外径を有する塊にして、当該塊を管1に降下させる。そのため、投入材料がトレミー管100内で滞らず、投入材料の速やかな流下を実現することができる。
【0037】
また、トレミー管100の構成によれば、速やかな流下を実現できるため、材料の塊が分離することを防ぐことができる。これにより、分離に伴った塊の表面積の増加を抑制することができ、水中の濁りの発生を抑制することができる。
【0038】
図示しないが、材料は、排出管2の上部に配置したホッパーにより、排出管2の上端部に投入される。ホッパーへの材料の投下はバケットを用いて行なうことができる。なお、投入材料の計量に、バケットを用いてもよい。バケットを用いた投入に限らず、ベルトコンベアを用いた投入によってホッパーへの材料投入を行っても良い。
【0039】
排出管2は、内径が管1の内径よりも小さいことから、排出管2を流下した投入材料は、最大で排出管2の内径と略等しい外径を有する塊となって、管1に投入される。このため、塊は、管1を閉塞させることがなく、速やかに流下する。なお、流下した塊状の材料は、管1の下端部より排出される。
【0040】
排出管2は、横断面が円形あるいは矩形の筒構造であることが好ましい。横断面が円形であれば、塊は、横断面が円形で、その径が排出管の内径と略等しい塊となり、当該円形の塊が、管1に投入されることで、材料分離の発生を抑制しながら流下させることができる。また、横断面が矩形であれば、投入された材料は、その最大径が排出管2の内径と等しい塊となる。これにより、塊の周面と、管1の内周面との間には、横断面の形状の違いに起因する間隙が生じる。この間隙から塊の下方にある水を塊の上部に効率的に移動させることができ、塊の流下を促進させる。
【0041】
排出管2はその全体が気中に配置されているようにしてもよい。この構成により、材料の流下時の水の抵抗がなく浮力が作用せず、空気の抵抗しかないことから材料が排出管2内での閉塞が起こりにくい。ただし、排出管2の配置はこれに限定されるものではなく、管1側の一部分が水中に配置されていてもよい。
【0042】
トレミー管100は、管1と排出管2との接続部において、管1の内径と排出管2の外径との差から生じる上方に開口した開口部11を備える。開口部11において空気または水の少なくともいずれか一方が通過する。このように、開口部11から空気または水の少なくともいずれかが管1の内側と外側との間で流出入できるため、管1及び排出管2の閉塞を防ぎ、材料流下の促進に寄与することができる。具体的には、
図1にように開口部11が気中となるようにトレミー管100を設置した際には、排出管2に投入された材料下側の空気を排出することができて閉塞を防ぐことができる。また、別態様として、後述する
図2の中央に示すトレミー管100bのように開口部11が水中となるようにトレミー管100を設置した際には、材料が排出管2から管1に投入され沈下する段階で、開口部11から材料(材料の塊)の上部に水を流入させて、材料の流下を促進し、管1の閉塞を防ぐことに寄与することができる。また、排出管2に対して管1が十分大きい場合には、脈動を抑止した材料の流下が可能となる。このように開口部11は、水中にあるか気中にあるかによってそれぞれに応じた機能を果たし、管1の閉塞を防ぐことに寄与する。
【0043】
管1と排出管2との接続部の位置は、排出管2の下端以上である。これにより、排出管2の下端にある材料排出口22が、前記管の上端にある材料投入口14よりも管内に入っており、排出管2が管1に挿入されている。このため、排出管2によって整えられた材料の塊の大きさが変わることなく、管1に投入され、閉塞が防止される。また、投入された土砂が排出管2より管1に移動した際に汚濁が生じたとしても排出管2の下端が管1の上端以下に位置することから、管1の内壁により外部への汚濁の排出は抑制される。
【0044】
本実施形態1のトレミー管100の構成とすることで、大型のグラブバケット(数m3~20m3)やバックホウのバケット(数m3~10m3程度)を使用して、大量の土砂(例えば、浚渫土、コンクリート、カルシア改質土やセメント固化処理土などの粘性材料)をホッパーに投入してトレミー打設する場合であっても、管1を閉塞させることなく、スムーズに打設することができる。また、投入材料は大きな塊状で水中を流下するため、濁りの発生を抑制することが可能である。さらに、材料分離の抑制および水の巻き込み量が減少するため、発現強度を大きくすることが可能である。
【0045】
(トレミー管100の変形例1)
トレミー管100は
図1に示した態様に限定されず、トレミー管100の管1、排出管2、または接続部のいずれかに、水面Aを跨いで、水中および気中の両方に開口する流入口を設けてもよい。以下、
図2を用いて、流入口を設けたトレミー管100の変形例を説明する。
【0046】
(トレミー管100a)
図2の左端に示すトレミー管100aは、トレミー管100の変形例の1つであり、管1に、水面Aを跨いで、水中および気中の両方に開口する流入口13を設けている。流入口13は、管1の周方向に沿って複数設けている。なお、流入口13の位置は、水面Aをまたぐ位置から流入口13の上端が水面または水面直下となる位置までの範囲であればよい。また、開口部11は水面Aよりも上側である。
【0047】
なお、流入口13は、材料の流下方向下流側の縁部に、管1の内部の当該流下方向上流外方向に向いて傾斜している傾斜面が設けられていてもよい。傾斜面が設けられていることにより、管10の内側に向いた角が鈍角になっているため、当該角が鋭角になっている場合に比べて、縁部の角に材料の塊が接触したときの塊の分散を抑制することができる。
【0048】
(トレミー管100b)
図2の中央に示すトレミー管100bは、変形例の1つであり、排出管2において、水面Aを跨いで、水中および気中の両方に開口する流入口21を設けている。なお、流入口21の位置は、水面をまたぐ位置から流入口21の下端が水面Aの直上となる位置までの範囲であればよい。開口部11は水面Aよりも下側であり、排出管2の一部は水面Aの下側に到達している。
【0049】
なお、流入口21は、材料の流下方向下流側の縁部に、管1の内部の当該流下方向上流外方向に向いて傾斜している傾斜面が設けられていてもよい。傾斜面が設けられていることにより、管10の内側に向いた角が鈍角になっているため、当該角が鋭角になっている場合に比べて、縁部の角に材料の塊が接触したときの塊の分散を抑制することができる。
【0050】
(トレミー管100c)
図2の右端に示すトレミー管100cは、変形例の1つであり、管1と排出管2との間に所定の間隙を設けて管1と排出管2とを垂直方向に重なり合わせて連結させない構成とし、当該間隙を、先述の流入口13,21として機能させる(当該間隙を
図2に流入口4として示す)。管1と排出管2との間隙の幅(流入口4の管軸方向に沿った長さ)は、10cm以上50cm以下とすることが望ましい。トレミー管100cの場合、管1と排出管2とは、鋼製のL型の板状部材(不図示)によって連結することができるが、連結方法はこれに限らない。なお、トレミー管100cを用いる際には、流下した材料が水面に衝突した際に管1と排出管2との間隙の幅よりトレミー管外に流出した際に備えて、トレミー管100cの外周に汚濁防止枠を設置し、濁りの拡散を抑制させることが望ましい。
【0051】
以上の各変形例のように流入口を設けることで、投入した材料の速やかな流下と、汚濁発生の抑制を実現することができる。具体的には、材料投入後に流入口から空気を排出管2外に排出させ、次に材料が管1に移動後に水(例えば海水)を管1内に流入させることができるため、材料をスムーズに流下させることが可能であり、管1を閉塞させない。
【0052】
(各構成部材の材質)
管1および排出管2は、周知のトレミー管に用いられる材料から構成することができる。例えば、鋼管等を採用することができる。
【0053】
(粘性材料と投入形態)
本実施形態1のトレミー管100投入する材料は粘性材料であってもよい。粘性材料は、浚渫土、PS灰系改質土、カルシア改質土、石灰系改質土およびセメント改質土からなる群から選択されてもよい。また、粘性材料以外の材料を投入する場合であっても、トレミー管100を用いてもよく、例えば、土砂、岩ズリ、およびコンクリート等の流下に使用してもよい。なお、上記で挙げた材料は、投入する材料を含んでいればよく、適宜材料を混合して用いてもよい。
【0054】
バケットは材料に応じて、使用するバケットを適宜変更してもよい。たとえば、大型のグラブバケット(数m3~20m3)やバックホウのバケット(数m3~10m3程度)を用いてもよい。ホッパーでの閉塞を防止する観点から、流動性のある材料または固化後解砕した材料を投入してもよい。なお、ここで、流動性のある材料とは、シリンダーフロー8.5cm以上(NEXCO試験方法 試験法313 エアモルタル及びエアミルクの試験方法)の材料が挙げられる。
【0055】
投入する材料に応じて、流動性のある状態、固化した状態等の、材料の状態は適宜決めてもよい。たとえば、カルシア改質土を材料として用いる場合、ホッパーへの投入は、混合直後~48時間の流動性があり固化が進んでいない状態か、固化後の解砕した状態で投入することが好ましい。
【0056】
材料の投入は、何度行ってもよく、バケットでn度目(nは1以上の自然数)に材料を投入してから一定時間経過後にn+1度目に材料を投入すればよい。一定時間とは、n度目に投入した材料とn+1度目に投入した材料とで管1が詰まらない程度まで、n度目に投入した材料が降下するまでの時間であってもよい。たとえば、n度目に投入した材料が完全に降下してから投入してもよい。
【0057】
投入条件および配合は、所定の強度が得られることの他に、濁りの発生を防止することおよび強度と濁りの両方を指標として決定してもよい。投入する材料によっては、混合後に時間の経過とともに材料の性質が変わり、濁りの発生状況が変化することがある。このため、投入条件を変更する場合、材料の固化の進行および流動性の変化に応じて濁りの発生が少ない配合に適宜変更して材料を投入してもよい。
【0058】
例えば、カルシア改質土の場合、時間の経過とともに流動性が変化すること、そして流動性によって濁りの発生状況が変化すること、が知られている。当日混合および当日投入の場合はカルシア改質材の混合率が30vol%で濁りの発生が少なくても、当日混合および翌日投入の場合に同じ混合比の材料を用いると、固化が進み濁りの発生量が多くなることがある。この場合、カルシア改質材の混合比を20vol%に調製することにより、当日配合および翌日投入の場合であっても濁りの発生を抑えることができる。
【0059】
材料の投入量(体積)は、トレミー管を構成する排出管2の管径や材料の流動性によって適した条件を適宜設定すればよい。排出管2が材料によって詰まることを防ぎ、かつ効率的に材料を投入するために、投入する材料の体積は、排出管2の内径を直径とした球状の材料塊の体積の0.5倍~1.5倍の範囲であることが好ましい。
【0060】
例えば、排出管2の内径が2.5mである場合、この内径を直径とした球状の材料の塊を想定すると、材料塊の好ましい最大体積は8.2m3となる。このとき、材料は8m3程度のバケットまたは10m3のバケットで量を調整して投入してもよい。
【0061】
(2)材料の投入方法
本実施形態の材料の(海底への)投入方法は、以上で説明したトレミー管100を用いて行う。以下、
図3および
図4を用いて材料の投入方法について説明する。
図3では、先述の
図2の左端に図示したトレミー管100aを用いた材料の降下を示す。
【0062】
図3中(I)は、トレミー管100aを、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、水中に設置した状態で、排出管2の上部にあるホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。投入された材料3は排出管2を流下する。その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、開口部11および流入口13を通じてトレミー管100aの外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0063】
ここで、トレミー管100aにおいて、排出管2は気中に配置されている。この構成において、排出管2内では水中での浮力が発生しないため、材料3の降下がより容易になる。
【0064】
続いて
図3中(II)は、材料3が排出管2から管1に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、流入口13から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。
【0065】
続いて
図3中(III)は、材料3の塊が管1を流下している段階の状態を示す。材料3の塊は、排出管2の作用により、管1の内径よりも小さい外径を有するため、途中で詰まることなく流下する。さらに、管1と材料3との間の間隙により、塊の下方にある水を塊の上部に効率的に移動させることで、材料3の塊の流下が促進される。
【0066】
また、
図4を用いて、
図2の中央に示したトレミー管100bを用いた材料の投下方法についても説明する。
【0067】
図4中(I)は、トレミー管100bを、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、接続部および開口部11が水中に位置し、流入口21が水面Aをまたぐように設置した状態で、ホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。投入された材料3は排出管2を流下し、その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、排出管2に設けられた流入口21を通じて、トレミー管100bの外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0068】
続いて
図4中(II)は、材料3が排出管2から管1に移動した直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、流入口21および開口部11から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。
【0069】
続いて
図4中(III)は、材料3が管1を流下している段階の状態を示す。材料3の塊は、排出管2の作用により、管1の内径よりも小さい外径を有するため、途中で詰まることなく流下する。さらに、管1と材料3との間の間隙により、塊の下方にある水を塊の上部に効率的に移動させることで、材料3の塊の流下が促進される。
【0070】
(トレミー管100の変形例2)
図5にトレミー管100の別の変形例を示す。また、
図6および
図7は、
図5の変形例のトレミー管を用いた材料の流下過程を説明する図である。
図5~
図7を用いて変形例を説明する。
【0071】
(トレミー管100a´)
図5の左側に示すトレミー管100a´は、流入口13の位置が、
図2のトレミー管100aと異なる。具体的には、トレミー管100a´は、流入口13の上端が水面または水面直下となる位置にある。また、開口部11は、気中にある。
【0072】
このトレミー管100a´を用いた材料投入の過程を、
図6に示す。
図6中(I)は、トレミー管100a´を、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、水中に設置した状態で、ホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。投入された材料3は排出管2を流下する。その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、開口部11を通じてトレミー管100a´の外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0073】
続いて
図6中(II)は、材料3が排出管2から管1に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、流入口13から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。
図6中(III)は、
図3中(III)と同じ過程であるため、説明を省略する。
【0074】
(トレミー管100b´)
図5の右側に示すトレミー管100b´は、流入口21の位置が、
図2のトレミー管100bと異なる。具体的には、トレミー管100b´は、流入口21の下端が水面Aまたは水面Aの直上となる位置にある。また、開口部11は、水中にある。
【0075】
このトレミー管100b´を用いた材料投入の過程を、
図7に示す。
図7中(I)は、トレミー管100b´を、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、水中に設置した状態で、ホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。投入された材料3は排出管2を流下する。その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、流入口21を通じてトレミー管100b´の外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0076】
続いて
図7中(II)は、材料3が排出管2から管1に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管2の下端部から水中に入ると、直後に、開口部11から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。
図7中(III)は、
図3中(III)と同じ過程であるため、説明を省略する。
【0077】
(トレミー管100の変形例3)
更に別の変形例として、
図8に示す形態がある。
【0078】
(トレミー管100b´´)
図8のトレミー管100b´´は、
図2のトレミー管100bと、管1の管径が大きい点と管1への管2の貫入長が異なる。トレミー管100b´´の管1のように管径が大きい場合、排出管2の外径と管1の内径との差が大きい。そのため、材料3と管1の間隔が十分広く、材料3下側の水が材料3上部に移動しやすいため、材料のスムーズな流下を実現できる。また、管2の貫入長が長いことから、仮に流入口21から汚濁が流出したとしても管1から汚濁が流出することを防ぐことができる。
【0079】
図8のトレミー管100b´´は、
図5の右側に示すトレミー管100b´に比べ、管1の管径が大きい点と管1への管2の貫入長において相違する。排出管2の流入口21が水面Aをまたぐ位置にあり、
図9(I)に示すように、ホッパー(不図示)を介して材料が排出管2に投入された当初の状態では、投入された材料3が排出管2を流下する過程において、排出管2内から下側に押される空気は、流入口21を通じてトレミー管100b´´の外に排出される。続いて
図9中(II)は、材料3が排出管2から管1に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、流入口21から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。その後は、
図9中(III)に示すように、管1を材料3が流下する。このとき、管1と材料3との間には、十分な隙間が設けられていることから、塊の下方にある水を塊の上部に効率的に移動させることで、材料3の塊の流下が促進される。また、管2の貫入長が長いことから、仮に流入口21から汚濁が流出したとしても管1から汚濁が流出することを防ぐことができる。
【0080】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0081】
図10に示すトレミー管100dは、管1に、管軸方向に沿って細長いスリット12が複数設けられている点で、
図1に示すトレミー管100と相違する。
【0082】
スリット12は管1の管壁に設けられた開口であり、スリット12同士は管1の周方向に沿って異なる位置に設けられている。スリット12のスリット幅は流入水量および落下速度などを勘案して設定すればよいが、材料が管1の内側から漏れることを抑制する観点より、幅20mm以下であることが好ましい。
【0083】
スリット長は、特に限定されないが本実施形態では、
図10に示すように、一例として1スリット長は管1の全長の約85%としている。これにより、管1に比較的長くスリット状の開口部が形成されており、より一層スムーズな材料の流下に寄与する。ただし、これらの数値に限定されるものではない。例えば、スリット12のそれぞれのスリット長が、管1の全長の少なくとも20%の長さを有しているようにしてもよい。
【0084】
スリット12を設けると、管1内を流下する材料の上部および下部において、スリットを介して水の流出入が生じる。これにより、当該材料の速やかな流下をより促進することができる。また、このように材料が速やかに流下することによって、材料による汚濁発生を抑えることができる。
【0085】
トレミー管100dは
図10に示した態様に限定されず、例えば、トレミー管100dの管1、排出管2、または管1と排出管2との接続部において、水面Aを跨いで、水中および気中の両方に開口する
図2に示したような流入口を設けてもよい。この場合、管1(または排出管2)の周方向に沿った流入口の開口幅は、スリット12のスリット幅より広く構成されていてもよい。
【0086】
この構成により、投入した材料の速やかな流下と、汚濁発生の抑制を実現することができる。具体的には、管1、排出管2、または管1と排出管2との接続部に設けられた流入口から水(例えば海水)を管1内に流入させることができるため、材料をスムーズに流下させることが可能であり、管1を閉塞させない。また、投下直後に材料と共に管1内に入った空気を流入口から管1外に排出することができる。
【0087】
(トレミー管100dの変形例)
以下、流入口を設けたトレミー管100dの変形例を、
図11を用いて説明する。
【0088】
(トレミー管100e)
図11の左端に示すトレミー管100eは、管1に流入口13が設けられており、流入口13の上端端部が水面Aと同じ位置または水面Aの直下に位置している。ここで、排出管2の外径と管1の内径との差の部分に構成される開口部11は、気中にある。
【0089】
(トレミー管100f)
図11の中央に示すトレミー管100fは、変形例の1つであり、排出管2に設けられた流入口21は、気中にある。また、開口部11は水面Aよりも上側であり、排出管2の一部は水面Aの下に到達している。
【0090】
図11の右端に示すトレミー管100gは、変形例の1つであり、管1と排出管2との間に所定の間隙を設けて管1と排出管2と垂直方向に連続させない構成として、当該間隙(流入口4)を、先述の流入口21として機能させる。トレミー管100gの場合、管1と排出管2とは、鋼製のL型の板状部材(不図示)によって連結することができるが、連結方法はこれに限らない。
【0091】
トレミー管100gにおいて、管1と排出管2との間隙の幅(流入口4の管軸方向に沿った長さ)は、10cm以上50cm以下であることが好ましい。なお、トレミー管100gを用いる際には、流下した材料が水面に衝突した際に管1と排出管2との間隙の幅よりトレミー管外に流出した際に備えて、トレミー管100gの外周に汚濁防止枠を設置し、濁りの拡散を抑制させることが望ましい。
【0092】
(各構成部材の材質)
各構成部材の材質は、実施形態1と同様であってよい。なお、本実施形態2で用いる管1は、スリット12が設けられているため、構造的強度を保つことができるよう、鋼管を採用することが好ましい。
【0093】
(粘性材料と投入形態)
本実施形態2において投入する粘性材料および投入形態は、実施形態1と同様であってもよい。粘性材料は、粘性が比較的高いために塊になりやすく、海中で分散し難いものの、トレミー管内に付着して管を閉塞しやすい。管1に実施形態2のスリット12を設けることで、管1の内周面の面積が小さくなるため、材料との接触面積を抑えることができる。これにより、本実施形態2のトレミー管100dは粘性材料を好適に流下させることができる。
【0094】
(2)材料の投入方法
本実施形態の材料の(海底への)投入は、以上で説明した本実施形態に係るトレミー管を用いて行う。以下、
図12および
図13を用いて材料の投入方法について説明する。
図12では、先述の
図11の左端に図示したトレミー管100eを用いた材料の降下を示す。
【0095】
図12中(I)は、トレミー管100eを、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、水中に設置した状態で、ホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。なお、流入口13の上端部は水面A直下に位置する。投入された材料3は排出管2を流下する。その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、開口部11により、トレミー管100eの外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0096】
ここで、トレミー管100eにおいて、排出管2は気中に配置されているため、材料3の降下はスムーズである。
【0097】
続いて
図12中(II)は、材料3が排出管2から管1に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、流入口13から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。また、このとき、スリット12から材料3の下側の水が流出することにより、材料3の塊の流下が促進される。
【0098】
続いて
図12中(III)は、材料3の塊が管1を流下している段階の状態を示す。材料3の塊は、排出管2の作用により、管1の内径よりも小さい外径を有するため、途中で詰まることなく流下する。さらに、管1と材料3との間の間隙により、材料3の塊の下方にある水が塊の上部に効率的に移動することで、塊の流下が促進される。また、スリット12により、材料3の塊の上部と下部とで水の循環が生じて、材料3の塊をスムーズに流下させる。
【0099】
また、
図13を用いて、
図11の中央に示したトレミー管100fを用いた材料の投下方法についても説明する。
【0100】
図13中(I)は、トレミー管100fを、排出管2側を気中に、管1側を海中にして、接続部および開口部11を水中に、流入口21の下端端部が水面A直上となる位置に設置した状態で、ホッパー(不図示)を介して排出管2に材料3が投入された当初の状態を示す。投入された材料3は排出管2を流下し、その過程において、材料3は管1の内径よりも小さい外径を有する塊として形成される。材料3の流下に伴って排出管2内から下側に押される空気は、排出管2に設けられた流入口21により、トレミー管100fの外側に排出される。このため、材料3は排出管2内で詰まることなく、降下する。
【0101】
続いて
図13中(II)は、材料3が排出管2から水中に投入された直後の状態を示す。排出管2より降下した材料3の塊が管1の上端部から水中に入ると、直後に、開口部11から材料3の塊の上部に水が流入する。これにより、材料3の塊の流下が促進される。また、このとき、スリット12から材料3の下側の水が流出することにより、材料3の塊の流下が促進される。
【0102】
続いて
図13中(III)は、材料3が管1を流下している段階の状態を示す。材料3の塊は、排出管2の作用により、管1の内径よりも小さい外径を有するため、途中で詰まることなく流下する。さらに、管1と材料3との間の間隙により、塊の下方にある水は塊の上部に効率的に移動するため、材料3の塊の流下が促進される。また、スリット12により、材料3の塊の上部と下部とで水の循環が生じて、材料3の塊をスムーズに流下させる。
【0103】
なお、以上のように管1にスリットを設ける場合、スリットの本数は特に限定されない。スリットの長さが管の内径以上の長さである場合、少なくとも1か所以上にスリットを設ければよい。スリットが2ヶ所以上設ける場合、設けられたスリットの内、少なくとも2つのスリットは、管の周方向に沿って異なる位置に設けられていることが望ましい。スリットの本数は管径および材料の大きさなどに応じて適宜変更してもよい。例えば、管径が大きい場合または材料が大きい場合は、スリットの本数を増やしてもよい。
【0104】
〔その他の実施形態〕
なお、管1は、排出管2に接続する管1以外に複数の管が継がれた態様のものであってもよい。この場合に、継がれた複数の管は互いに略同一の内径を有していることが好ましい。ただし、これに限定されない。
【0105】
また、管1の下端には、公知の汚濁防止膜を取り付けてもよい。
【0106】
また、本実施形態のトレミー管は、管1の外周側に、外管を配置している二重管であってもよい。管1の外側、水面から水深10m程度の範囲まで汚濁防止枠や汚濁防止膜を配置しても良い。
【0107】
また、空気および水の流れを妨げず、投入された材料が水面に接触した際に生ずる汚濁を管外に排出しない範囲であれば、管1の上端と、排出管2の下端とは、水平位置にあってもよい。
【0108】
また、トレミー管上部での材料の塊の降下を促進するために、加振機を設置して振動を与えても良い。
【0109】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0110】
〔実施例〕
図1のトレミー管100の態様に基づいて、水中部の長さ50cm、内径100mmのアクリル管を管1として、当該管1の上側に、内径80mmのアクリル管を排出管2として設けたトレミー管を作製し、実施例1とした。このトレミー管は、排出管2の下端と管1の上端とが同じ位置(高さ)にあるようにした。
【0111】
また、水中部の長さ50cm、内径65mmのアクリル管を管1として、当該管1の上部に流入口13を設け、さらに管1の上側、内径50mmの塩ビ管である排出管2を設けたトレミー管を作製し、実施例2とした。
【0112】
排出管を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、トレミー管を作製し、比較例1とした。また、排出管を設けなかった以外は、実施例2と同様にして、トレミー管を作製し、比較例2とした。
【0113】
浚渫土90vol%およびカルシア改質材10vol%を混合してカルシア改質土を調製し、実施例1,2、および比較例1,2のトレミー管に投入し、水面から50cm下までの落下速度を確認した。
【0114】
その結果、排出管が無い比較例1,2では空気の逃げ道が無いため材料がトレミー管に詰まり落下しなかった。一方、実施例1,2では排出管2の効果により、投入した材料が管1の内径よりも小さいために、管1を閉塞させずに降下することが示された。
【0115】
また、実施例2のように流入口を管1の上部に設置することにより、落下速度が実施例1よりも大きくなることが示された。これは、流入口から材料の塊の上部に水が流入して脈動の無い塊の流下が促進されたことによるものである。また、実施例1のトレミー管よりも管内での材料の脈動が抑制されたことも確認できた。これも、高い落下速度を示す要因である。
【符号の説明】
【0116】
100、100a、100b、100c、
100d、100e、100f、100g トレミー管
1 管
2 排出管
3 材料
11 開口部
12 スリット
4、13、21 流入口