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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125891
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】定温輸送容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
B65D81/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023722
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蜂須 和則
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067DA01
3E067EA25
3E067EB22
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA11
3E067HA10
(57)【要約】
【課題】気密性を保持しつつ、組立作業が容易な定温輸送容器を実現する。
【解決手段】定温輸送容器の留め具(50)は、隣り合う2つのパネルそれぞれにおいて、パネルの表面に設けられた、シート(51A)と、パネルの表面とシート(51A)とを固定する、固定具(52)と、シート(51A)に縫い付けられた帆布(53A)と、帆布(53A)に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、2つのパネルは、面ファスナーを介して、互いに着脱可能に連結する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数のパネルと、
留め具と、を備え、
前記留め具は、隣り合う2つのパネルそれぞれにおいて、
パネルの表面に設けられた、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートと、
パネルの表面と前記シートとを固定する、樹脂製の固定具と、
前記シートに縫い付けられた帆布と、
前記帆布に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、
前記2つのパネルは、前記面ファスナーを介して、互いに着脱可能に連結する、定温輸送容器。
【請求項2】
前記複数のパネルの少なくとも1つは、複数のパネルセグメントにより構成され、
前記留め具は、隣り合うパネルセグメントの連結部分に設けられている、請求項1に記載の定温輸送容器。
【請求項3】
前記固定具は、ポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1または2に記載の定温輸送容器。
【請求項4】
前記パネルは、発泡倍率30倍以上50倍以下のポリプロピレン系樹脂発泡体からなる、請求項1~3の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【請求項5】
前記帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【請求項6】
前記シートは、発泡倍率2倍以上5倍以下のプロピレン系樹脂発泡体からなる、請求項1~5の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定温輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温又は保冷状態の収容対象物の保管または運搬等に、定温輸送容器が用いられている。このような定温輸送容器は、断熱材からなる板状パネルを備え、当該板状パネルによって収容対象物を収容する空間を構成する。板状パネルが断熱材からなることによって、定温輸送容器内の温度変化が抑制される。容器内の温度変化を極力抑制するため、このような定温輸送容器は、高い気密性が要求される。
【0003】
特許文献1,2には、隣り合う板状パネル同士が面ファスナーにより貼り付けられている定温輸送容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-66935号公報
【特許文献2】特開2014-181050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、定温輸送容器の気密性を保持しつつ、定温輸送容器の組立作業を容易にするという点で改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、定温輸送容器の気密性を保持しつつ、組立作業が容易な定温輸送容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を含む。
【0008】
〔1〕ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数のパネルと、留め具と、を備え、前記留め具は、隣り合う2つのパネルそれぞれにおいて、パネルの表面に設けられた、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートと、パネルの表面と前記シートとを固定する、樹脂製の固定具と、前記シートに縫い付けられた帆布と、前記帆布に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、前記2つのパネルは、前記面ファスナーを介して、互いに着脱可能に連結する、定温輸送容器。
【0009】
〔2〕前記複数のパネルの少なくとも1つは、複数のパネルセグメントにより構成され、前記留め具は、隣り合うパネルセグメントの連結部分に設けられている、〔1〕に記載の定温輸送容器。
【0010】
〔3〕前記固定具は、ポリオレフィン系樹脂からなる、〔1〕または〔2〕に記載の定温輸送容器。
【0011】
〔4〕前記パネルは、発泡倍率30倍以上50倍以下のポリプロピレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の定温輸送容器。
【0012】
〔5〕前記帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の定温輸送容器。
【0013】
〔6〕前記シートは、発泡倍率2倍以上5倍以下のプロピレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の定温輸送容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、定温輸送容器の気密性を保持しつつ、定温輸送容器の組立作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る定温輸送容器の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る定温輸送容器の概略構成を示す分解斜視図である。
図3】301は、本発明の実施形態に係る定温輸送容器に備えられた留め具の雄部の構成を示し、左側の図は、外側から見た斜視図であり、右側の図は、内側から見た斜視図である。302は、本発明の実施形態に係る定温輸送容器に備えられた留め具の雌部の構成を示し、左側の図は、外側から見た斜視図であり、右側の図は、内側から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る定温輸送容器に備えられた固定具の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。さらに、各図面は、以下の説明と併せて参照したときに分かり易いように示したものであり、必ずしも一定の比率の縮尺で描かれていない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る定温輸送容器10の概略構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る定温輸送容器10の概略構成を示す分解斜視図である。
【0018】
図1および2に示されるように、定温輸送容器10は、収容対象物を定温輸送可能な矩形箱状の組立式の容器である。定温輸送容器10の壁面は、天面パネル1と、互いに対向する1組の側面パネル2・2と、互いに対向する1組の側面パネル3・3と、底面パネル4と、により構成されている。天面パネル1と、側面パネル2および3と、底面パネル4とは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる矩形状板材により構成されている。また、底面パネル4は、側面パネル2および3と分離可能な構成である。また、天面パネル1と、側面パネル2および3と、底面パネル4とのそれぞれにおいて、定温輸送容器10の荷室側を内側とし、当該内側と反対側を外側とする。
【0019】
また、定温輸送容器10では、天面パネル1は、2つのパネルセグメント1Aおよび1Bにより構成されている。また、側面パネル3は、2つのパネルセグメント3Aおよび3Bにより構成されている。
【0020】
なお、以下、天面パネル1、側面パネル2、側面パネル3、底面パネル4、パネルセグメント1A、1B、およびパネルセグメント3A、3Bそれぞれを、単に壁面パネルと称する場合がある。
【0021】
定温輸送容器10では、壁面パネル同士またはパネルセグメント同士は、留め具により、着脱可能に連結している。より具体的には、パネルセグメント1Aおよび1B同士は、留め具50を介して着脱可能に連結している。また、パネルセグメント3Aおよび3B同士は、留め具50を介して、着脱可能に連結固定している。側面パネル2および3同士は、留め具60を介して、着脱可能に連結している。天面パネル1および側面パネル3同士は、留め具70を介して、着脱可能に連結している。
【0022】
留め具50は、雄部50Aと雌部50Bとから構成されている。パネルセグメント1Aにおけるパネルセグメント1B側の一端には、雄部50Aが設けられている。また、パネルセグメント1Bにおけるパネルセグメント1A側の一端には、雌部50Bが設けられている。留め具50において、雄部50Aおよび雌部50Bは、面ファスナーを介して、着脱可能に連結している。雄部50Aと雌部50Bとの連結により、パネルセグメント1Aおよび1Bは、着脱可能に連結する。同様に、雄部50Aと雌部50Bとの連結により、パネルセグメント3Aおよび3Bは着脱可能に連結する。
【0023】
また、留め具50と同様に、留め具60は、雄部60Aと雌部60Bとから構成され、留め具70は、雄部70Aと雌部70Bとから構成されている。雄部60Aは、側面パネル2に設けられており、雌部60Bは、側面パネル3に設けられている。雄部60Aと雌部60Bとの連結により、側面パネル2および3は着脱可能に連結する。また、雄部70Aは、側面パネル3に設けられており、雌部70Bは、天面パネル1に設けられている。雄部70Aと雌部70Bとの連結により、天面パネル1および側面パネル3は、着脱可能に連結する。
【0024】
また、定温輸送容器10では、側面パネル2および3には、蓄熱材を収容する収容凹部8が設けられている。ここでいう、蓄熱材は、蓄熱材そのものに加え、蓄冷材を包含するものである。すなわち、収容凹部8には、蓄熱材および蓄冷材の少なくとも一方が収容される。蓄熱材又は蓄冷材とは、蓄熱成分又は蓄冷成分をプラスチック製容器やフィルム製の袋等に封入したものである。
【0025】
本実施形態に使用される蓄熱成分又は蓄冷成分を構成する組成物としては、特に限定されず、例えば、国際公開2014/125878号、国際公開2019/151074号、国際公開2016/068256号、国際公開2019/172260号、国際公開2018/180506号等に開示された組成物を用いることができる。
【0026】
以下、留め具50の構成について、詳述する。なお、留め具60および70の構成は、留め具50と同様であるので、説明を省略する。
【0027】
図3の301は、留め具50の雄部50Aの構成を示し、左側の図は、外側から見た斜視図であり、右側の図は、内側から見た斜視図である。図3の302は、留め具50の雌部50Bの構成を示し、左側の図は、外側から見た斜視図であり、右側の図は、内側から見た斜視図である。
【0028】
図3の301に示すように、雄部50Aは、シート51Aと、固定具52と、帆布53Aと、面ファスナー雄部54Aと、を備えている。また、図3の302に示すように、雌部50Bは、シート51Bと、固定具52と、帆布(不図示)と、面ファスナー雌部54Bと、を備えている。
【0029】
シート51Aは、パネルセグメント1Aまたは3Aの外側の表面に接触して設けられている。シート51Bは、パネルセグメント1Bまたは3Bの外側の表面に接触して設けられている。シート51Aおよび51Bは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。
【0030】
また、固定具52は、壁面パネルの表面とシート51Aとを固定する部材であり、樹脂製である。
【0031】
帆布53Aは、シート51Aにおける壁面パネルと反対側の面に縫い付けられている。帆布53Aは、シート51Aからパネルセグメント3Bを覆う矩形状のシートである。また、図3の302に示されていないが、雌部50Bに備えられた帆布は、帆布53Aと同様に、シート51Bにおける壁面パネルと反対側の面に縫い付けられている。
【0032】
面ファスナー雄部54Aは、帆布53Aにおけるシート51A側の面に縫い付けられている。面ファスナー雄部54Aは、帆布53Aにおけるパネルセグメント3Bと重なる領域に配されている。また、雌部50Bにおいて、面ファスナー雌部54Bは、帆布におけるシート51Bと反対側の面に縫い付けられている。面ファスナー雄部54Aおよび面ファスナー雌部54Bによって面ファスナーが構成されている。
【0033】
面ファスナー雄部54Aと面ファスナー雌部54Bとは、互いに対向するように配され、互いに接合するようになっている。面ファスナー雄部54Aおよび面ファスナー雌部54Bの何れか一方は、複数のループ部を有し、他方は、当該ループ部に引っ掛かるフック部を有する。このような面ファスナー雄部54Aおよび面ファスナー雌部54Bからなる面ファスナーを介して、パネルセグメント1Aおよび1B(またはパネルセグメント3Aおよび3B)は、互いに着脱可能に連結する。
【0034】
同様に、留め具60を介して、側面パネル2および3は、互いに着脱可能に連結している。また、留め具70を介して、天面パネル1および側面パネル3は、互いに着脱可能に連結している。
【0035】
定温輸送容器10では、留め具50により、壁面パネルとシート51A(51B)と壁面パネルとが固定されている。壁面パネルおよびシート51A(51B)は、ともにポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。さらに、壁面パネル同士の接合が不十分であっても、面ファスナー雄部54Aおよび面ファスナー雌部54Bの接合位置を微調整することによって、壁面パネル同士の接合状態を良好にできる。留め具60および70についても、留め具50と同様の効果を有する。それゆえ、定温輸送容器10によれば、定温輸送容器10内の気密性を保持できる。さらに、壁面パネル同士は、面ファスナーを介して、着脱可能に連結しているので、壁面パネル同士を取り外したり、取り付けたりすることが容易になる。それゆえ、定温輸送容器10を容易に組み立てることができる。
【0036】
以上のように、定温輸送容器10によれば、定温輸送容器10の気密性を保持しつつ、定温輸送容器10の組立作業を容易にすることができる。
【0037】
以下、定温輸送容器10の各種部材について、さらに詳述する。
【0038】
(面ファスナー)
面ファスナーは、公知の面ファスナーであれば、任意のものを利用することができる。面ファスナーは、例えば、マジックテープ(登録商標)、ベルクロ(登録商標)が適宜利用される。
【0039】
面ファスナーは、一定の面積を有する。このため、壁面パネル同士の気密性を保持しつつ、壁面パネル同士を接合することができれば、面ファスナー雄部と面ファスナー雌部とを厳密に位置合わせしなくとも、壁面パネル同士を容易に組み立てることができる。万が一、壁面パネル同士の接合に位置ずれが発生した場合、面ファスナー雄部と面ファスナー雌部との取付位置を微調整することによって、壁面パネル同士の気密性を保持できる。
【0040】
また、面ファスナーの寸法は、特に限定されない。例えば帆布53A、53Bのような長尺の帆布を用いる場合、面ファスナーは、当該長尺の帆布の長さ寸法と同一であることが好ましい。これにより、留め具にかかる局部的な外力を分散でき、壁面パネル同士の気密性を安定して保持できる。
【0041】
(帆布)
帆布は、従来公知のものであれば、特に限定されない。好ましくは、帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む布状物(クロス)である。このような構成とすることによって、ポリオレフィン系繊維からなる帆布と比較して、強度が向上する。その結果、壁面パネル同士の接合が強固になる。
【0042】
壁面パネル同士を強固に、かつ確実に固定する観点では、帆布の引張強度は、1KN/50mm幅以上であることが好ましく、帆布の伸度は、10%以上であることが好ましい。これにより、帆布に対して、適度の可撓性を維持できる。すなわち、帆布は、硬すぎることなく、壁面パネル同士の連結作業が容易になる程度の可撓性を有する。さらには、定温輸送容器の輸送時の振動等による外力に対し、壁面パネル同士の連結を安定に保持できる。その結果、定温輸送容器の気密性を保持できる。
【0043】
帆布の寸法は、特に限定されない。帆布を縫い付けるシートにおける固定具52の取付領域を確保する観点では、当該シートよりも、帆布は、寸法が小さいことが好ましい。例えばシート51A、51Bのような長尺のシートを用いる場合、帆布の長さ寸法は、当該長尺のシートの長さ寸法よりも小さいことが好ましい。
【0044】
(シート)
帆布を縫い付けるシートは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるものであれば、従来公知のシートを用いることができる。好ましくは、当該シートは、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートである。具体的には、商品名:エフセル(登録商標)のシートを用いることができる。シートとしてポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを用いることによって、固定具による壁面パネルとシートとの間にアンカー効果が生じ、壁面パネルに対する留め具の固定が確実になる。
【0045】
シートは、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートであり、かつ、発泡倍率が2倍以上5倍以下であることが好ましい。発泡倍率が2倍以下である場合、シートの剛性は満足する一方、固定具による穴あけ加工性が悪化する傾向がある。一方、発泡倍率が5倍を超える場合、シートの剛性が低下し、繰り返し使用時にシートが裂けたりして破損し易い傾向にある。
【0046】
(固定具)
固定具は、特に限定されないが、好ましくはスクリューアンカーである。図4は、本実施形態にて使用される固定具52の構成例を示す側面図である。
【0047】
図4に示すように、固定具52は、軸部52aと、ねじ山部52bと、先端部52cと、フランジ部52dとを有している。軸部52aは、基端部から先端部へ向かうに従い幅狭になる形状である。ねじ山部52bは、軸部52aの外周に螺旋状に設けられている。先端部52cは、円錐形状に尖っている。フランジ部52dは、平面視において軸部52aから径方向に突出する円形状である。フランジ部52dは、軸部52aの基端部に設けられている。
【0048】
円錐形状の先端部52cの底面の外周縁は、軸部52aの先端側部分よりも径方向の外方へ突出している。また、ねじ山部52bは、軸部52aの基端側から先端側へ向かって外径が徐々に小さくなるように形成されている。ねじ山部52bにおいて、軸部52aの先端側の部分が最も径が大きくなる。
【0049】
上記の構成によれば、軸部の基端側から先端側へ向かってねじ山部の外径が一定である構成と比較して、固定具52は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面パネルとポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートとの固定力が向上する。
【0050】
また、シート内におけるねじ山部52bの回転抵抗が大きくなる。このため、固定具52が引抜き方向に逆回転して固定が緩んでしまうことを抑制できる。
【0051】
さらに、隣り合うねじ山部52b間の谷部分において、壁面パネルが強く圧縮される。このため、壁面パネルとねじ山部52bとの密着性が向上する。その結果、固定具52の固定力がさらに向上する。
【0052】
固定具52を構成する樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、固定具52を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。留め具に備えられたシートと壁面パネルとの固定を強固にする観点では、固定具52、シート、および壁面パネルは同質素材であることが好ましい。例えば、シートがポリプロピレン系樹脂発泡シートであり、壁面パネルがポリプロピレン系樹脂発泡体からなる場合、固定具52は、シートおよび壁面パネルと同質素材であるポリプロピレン系樹脂からなることが好ましい。
【0053】
(留め具の配置)
留め具は、壁面パネルの外側の表面に配置されれば、特に限定することなく、任意の位置に、かつ任意の数にて配置され得る。
【0054】
例えば、図1に示される構成において、パネルセグメント1Aおよび1Bの間の留め具50は、パネルセグメント1Aおよび1B同士が接合する部分において、パネルセグメント1Aおよび1Bの縁部の50%以上を覆うことが好ましい。このような構成である限り、留め具50は、1つ配されてもよく、複数配されていてもよい。これにより、同一の壁面を構成するパネルセグメント1Aおよび1B同士の接合が強固になる。なお、パネルセグメント3Aおよび3Bの間の留め具50についても、同様である。
【0055】
また、図1に示される構成において、側面パネル2および3の間の留め具60は、側面パネル2および3の連結部分において、側面パネル2および3の縁部の30%以上を覆うことが好ましい。同様に、天面パネル1および側面パネル3の間の留め具70は、天面パネル1および側面パネル3の連結部分において、天面パネル1および側面パネル3の縁部の30%以上を覆うことが好ましい。これにより、定温輸送容器10の角部を構成する壁面パネル同士の接合が強固になる。
【0056】
(壁面パネル)
定温輸送容器を構成する壁面パネルの材料は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。さらに断熱性を増大させるために、壁面パネルは、ポリオレフィン系樹脂発泡体にアルミ箔または樹脂フィルムが積層された構成であってもよい。
【0057】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の基材樹脂として、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。これらの中でも、価格、強度、汎用性、リターナブルでの使用の観点から、前記基材樹脂として、ポリプロピレン系樹脂が好適に使用される。
【0058】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、互いに融着した複数のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から構成されていることが好ましい。
【0059】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレン単独共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、無水マレイン酸-プロピレンランダム共重合体、無水マレイン酸-プロピレンブロック共重合体、プロピレン-g-無水マレイン酸グラフト共重合体等が挙げられる。これらの1種類を単独で使用してもよく2種類以上を混合して使用してもよい。
【0060】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(予備発泡粒子)の製造方法は、従来から知られている方法を採用することができる。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法として、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、まず、密閉容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子、発泡剤、分散剤および分散助剤を含む水系分散媒を仕込み、攪拌しながら昇温して一定温度(以下、発泡温度という場合がある)にしてポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸さる。そして、必要に応じて発泡剤を追加添加して、前記密閉容器内を一定圧力(以下、発泡圧力という場合がある)に保持した後、密閉容器下部から内容物を密閉容器内圧より低圧雰囲気下に放出する。密閉容器は、特に限定されず、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0061】
発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水;などが挙げられる。高発泡倍率の発泡粒子を得るためには、イソブタン、ノルマルブタンおよびそれらの混合物を発泡剤として用いることが好ましい。低発泡倍率であり、かつ発泡倍率のばらつきが小さい発泡粒子を得るためには、水を発泡剤として用いることが好ましい。
【0062】
前記発泡剤の使用量は、使用するポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類、目的とする発泡倍率等により異なるため、一概には規定できないがポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、概ね2重量部~60重量部の範囲であることが好ましい。
【0063】
前記発泡粒子を、さらに発泡成形することで、発泡成形体として製造することができる。
【0064】
発泡成形体の製造方法としては、公知の方法を利用できるが、例えば、(A)前記発泡粒子を無機ガスで加圧処理し、前記発泡粒子内に無機ガスを含浸させることで、前記発泡粒子に対して所定の内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、(B)前記発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、前記発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、(C)特に前処理することなく前記発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などが挙げられる。
【0065】
ポリプロピレン系樹脂発泡体を構成する発泡粒子の発泡倍率は、好ましくは15倍~80倍であり、より好ましくは20倍~60倍であり、さらに好ましくは、30倍~50倍である。
【0066】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子には、適宜、帯電防止剤、輻射抑制剤、顔料・染料などの着色剤等機能付与成分を添加することができる。
【0067】
本実施形態に係る定温輸送容器の構成は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数の壁面パネルを備えていれば、特に限定されない。複数の壁面パネルのうち、少なくとも1つが、複数のパネルセグメントにより構成されていてもよい。
【0068】
また、壁面パネルの厚さは、特に限定されない。定温輸送容器内において均一な温度を保持し、かつ適度の温度保持時間を維持するためには、壁面パネルの厚さは、30mm以上200mm以下であることが好ましい。壁面パネルの厚さが30mm未満である場合、断熱性能が劣り、定温輸送容器内の温度保持性能(均一性、保持時間短縮)が劣る傾向にある。また、壁面パネルの厚さが200mmを超える場合、定温輸送容器の外寸法がいたずらに大きくなる。また、定温輸送容器の外寸法が一定である場合、定温輸送容器内の内寸法が小さくなり、荷室空間が十分に確保できない。その結果、輸送効率が低下する傾向にある。
【符号の説明】
【0069】
1 天面パネル
1A、1B パネルセグメント
2 側面パネル
3 側面パネル
3A、3B パネルセグメント
4 底面パネル
10 定温輸送容器
51A、51B シート
52 固定具
53A 帆布
54A 面ファスナー雄部(面ファスナー)
54B 面ファスナー雌部(面ファスナー)
図1
図2
図3
図4