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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125892
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】蓄熱材の留め具、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/02 20060101AFI20220822BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B65D25/02 C
B65D81/38 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023723
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蜂須 和則
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
3E062
3E067
【Fターム(参考)】
3E062AA01
3E062AB07
3E062AC02
3E062BA20
3E062BB06
3E062BB09
3E062JD04
3E067AA11
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067CA18
3E067EA21
3E067EC29
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA11
(57)【要約】
【課題】蓄熱材を設置する対象物に対して蓄熱材の脱落を防止する。
【解決手段】本発明の蓄熱材の留め具(90)は、対象物の表面に設けられたシート(91)と、対象物の表面とシート(91)とを固定する、樹脂製の固定具(92)と、シート(91)に縫い付けられた帆布(93)と、帆布(93)に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、シート(91)に対して、蓄熱材は、面ファスナーを介して着脱可能に固定される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材からなるパネルに対して蓄熱材を固定するための蓄熱材の留め具であって
前記パネルの表面に設けられた、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートと、
前記パネルの表面と前記シートとを固定する、樹脂製の固定具と、
前記シートに縫い付けられた帆布と、
前記帆布に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、
前記シートに対して、前記蓄熱材は、前記面ファスナーを介して着脱可能に固定される、蓄熱材の留め具。
【請求項2】
前記固定具は、ポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1に記載の蓄熱材の留め具。
【請求項3】
前記パネルは、ポリプロピレン系樹脂発泡体からなる、請求項1または2に記載の蓄熱材の留め具。
【請求項4】
前記帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の蓄熱材の留め具。
【請求項5】
前記シートは、発泡倍率2倍以上5倍以下のプロピレン系樹脂発泡体からなる、請求項1~4の何れか1項に記載の蓄熱材の留め具。
【請求項6】
請求項1~5に何れか1項に記載の蓄熱材の留め具を用いて、断熱材からなるパネルに対して蓄熱材を固定する、蓄熱材の固定方法。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の蓄熱材の留め具と、
ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数のパネルと、
蓄熱材と、を備え、
前記蓄熱材は、前記蓄熱材の留め具によって、前記パネルに固定されている、定温輸送容器。
【請求項8】
前記パネルには、前記蓄熱材が収容される凹部が設けられている、請求項7に記載の定温輸送容器。
【請求項9】
前記パネルは、内側パネルと、当該内側パネルに積層された外側パネルとを含む2層積層パネルであり、
前記凹部は、前記内側パネルを貫通する貫通穴と、前記外側パネルと、により構成されている、請求項8に記載の定温輸送容器。
【請求項10】
前記蓄熱材の留め具は、前記貫通穴内に装着されており、
前記固定具は、前記シートと、前記外側パネルの表面と、を固定する、請求項9に記載の定温輸送容器。
【請求項11】
請求項7~10の何れか1項に記載の定温輸送容器の製造方法であって、
請求項1~5の何れか1項に記載の蓄熱材の留め具を用いて、前記パネルの少なくとも1つに蓄熱材を固定する固定工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材の留め具、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温又は保冷状態の収容対象物の保管または運搬等に、定温輸送容器が用いられている。このような定温輸送容器は、断熱材からなるパネルを備え、当該パネルによって収容対象物を収容する空間を構成する。
【0003】
また、従来の定温輸送容器では、パネルに蓄熱材が収容されている。例えば、特許文献1には、パネルの内側の面に、蓄熱材を収容する凹部が設けられた定温輸送容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-009838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の定温輸送容器では、パネルに形成された凹部から蓄熱材が脱落しやすくなる点で、改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、蓄熱材を設置するパネルに対して蓄熱材の脱落を防止し得る蓄熱材の留め具およびその利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を含む。
【0008】
〔1〕断熱材からなるパネルに対して蓄熱材を固定するための蓄熱材の留め具であって前記パネルの表面に設けられた、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートと、前記パネルの表面と前記シートとを固定する、樹脂製の固定具と、前記シートに縫い付けられた帆布と、前記帆布に縫い付けられた面ファスナーと、を備え、前記シートに対して、前記蓄熱材は、前記面ファスナーを介して着脱可能に固定される、蓄熱材の留め具。
【0009】
〔2〕前記固定具は、ポリオレフィン系樹脂からなる、〔1〕に記載の蓄熱材の留め具。
【0010】
〔3〕前記パネルは、ポリプロピレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕または〔2〕に記載の蓄熱材の留め具。
【0011】
〔4〕前記帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の蓄熱材の留め具。
【0012】
〔5〕前記シートは、発泡倍率2倍以上5倍以下のプロピレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の蓄熱材の留め具。
【0013】
〔6〕〔1〕~〔5〕に何れかに記載の蓄熱材の留め具を用いて、断熱材からなるパネルに対して蓄熱材を固定する、蓄熱材の固定方法。
【0014】
〔7〕〔1〕~〔5〕の何れかに記載の蓄熱材の留め具と、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数のパネルと、蓄熱材と、を備え、前記蓄熱材は、前記蓄熱材の留め具によって、前記パネルに固定されている、定温輸送容器。
【0015】
〔8〕前記パネルには、前記蓄熱材が収容される凹部が設けられている、〔7〕に記載の定温輸送容器。
【0016】
〔9〕前記パネルは、内側パネルと、当該内側パネルに積層された外側パネルとを含む2層積層パネルであり、前記凹部は、前記内側パネルを貫通する貫通穴と、前記外側パネルと、により構成されている、〔8〕に記載の定温輸送容器。
【0017】
〔10〕前記蓄熱材の留め具は、前記貫通穴内に装着されており、前記固定具は、前記シートと、前記外側パネルの表面と、を固定する、〔9〕に記載の定温輸送容器。
【0018】
〔11〕〔7〕~〔10〕の何れかに記載の定温輸送容器の製造方法であって、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の蓄熱材の留め具を用いて、前記パネルの少なくとも1つに蓄熱材を固定する固定工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、蓄熱材を設置するパネルに対して蓄熱材の脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る定温輸送容器の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る定温輸送容器の概略構成を示す分解斜視図である。
図3図1に示す定温輸送容器に備えられた側面パネルの構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る蓄熱材の留め具の概略構成を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る定温輸送容器に備えられた固定具の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。さらに、各図面は、以下の説明と併せて参照したときに分かり易いように示したものであり、必ずしも一定の比率の縮尺で描かれていない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る定温輸送容器10の概略構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る定温輸送容器10の概略構成を示す分解斜視図である。
【0023】
図1および2に示されるように、定温輸送容器10は、収容対象物を定温輸送可能な矩形箱状の組立式の容器である。定温輸送容器10の壁面は、天面パネル1と、互いに対向する1組の側面パネル2・2と、互いに対向する1組の側面パネル3・3と、底面パネル4と、により構成されている。天面パネル1と、側面パネル2および3と、底面パネル4とは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる矩形状板材により構成されている。また、底面パネル4は、側面パネル2および3と分離可能な構成である。また、天面パネル1と、側面パネル2および3と、底面パネル4とのそれぞれにおいて、定温輸送容器10の荷室側を内側とし、当該内側と反対側を外側とする。
【0024】
また、定温輸送容器10では、天面パネル1は、2つのパネルセグメント1Aおよび1Bにより構成されている。また、側面パネル3は、2つのパネルセグメント3Aおよび3Bにより構成されている。
【0025】
なお、以下、天面パネル1、側面パネル2、側面パネル3、底面パネル4、パネルセグメント1A、1B、およびパネルセグメント3A、3Bそれぞれを、単に壁面パネルと称する場合がある。
【0026】
定温輸送容器10では、壁面パネル同士またはパネルセグメント同士は、留め具により、着脱可能に連結している。より具体的には、パネルセグメント1Aおよび1B同士は、留め具50を介して着脱可能に連結している。また、パネルセグメント3Aおよび3B同士は、留め具50を介して、着脱可能に連結固定している。側面パネル2および3同士は、留め具60を介して、着脱可能に連結している。天面パネル1および側面パネル3同士は、留め具70を介して、着脱可能に連結している。
【0027】
留め具50は、雄部50Aと雌部50Bとから構成されている。パネルセグメント1Aにおけるパネルセグメント1B側の一端には、雄部50Aが設けられている。また、パネルセグメント1Bにおけるパネルセグメント1A側の一端には、雌部50Bが設けられている。留め具50において、雄部50Aおよび雌部50Bは、面ファスナーを介して、着脱可能に連結している。雄部50Aと雌部50Bとの連結により、パネルセグメント1Aおよび1Bは、着脱可能に連結する。同様に、雄部50Aと雌部50Bとの連結により、パネルセグメント3Aおよび3Bは着脱可能に連結する。
【0028】
また、留め具50と同様に、留め具60は、雄部60Aと雌部60Bとから構成され、留め具70は、雄部70Aと雌部70Bとから構成されている。雄部60Aは、側面パネル2に設けられており、雌部60Bは、側面パネル3に設けられている。雄部60Aと雌部60Bとの連結により、側面パネル2および3は着脱可能に連結する。また、雄部70Aは、側面パネル3に設けられており、雌部70Bは、天面パネル1に設けられている。雄部70Aと雌部70Bとの連結により、天面パネル1および側面パネル3は、着脱可能に連結する。
【0029】
また、定温輸送容器10では、側面パネル2および3には、蓄熱材を収容する収容凹部8が設けられている。収容凹部8は、有底穴であり、内側部分が開放され、外側部分が底面8bを構成する。ここでいう、蓄熱材は、蓄熱材そのものに加え、蓄冷材を包含するものである。すなわち、収容凹部8には、蓄熱材および蓄冷材の少なくとも一方が収容される。蓄熱材又は蓄冷材とは、蓄熱成分又は蓄冷成分をプラスチック製容器やフィルム製の袋等に封入したものである。
【0030】
本実施形態に使用される蓄熱成分又は蓄冷成分を構成する組成物としては、特に限定されず、例えば、国際公開2014/125878号、国際公開2019/151074号、国際公開2016/068256号、国際公開2019/172260号、国際公開2018/180506号等に開示された組成物を用いることができる。
【0031】
図3は、側面パネル2の構成を示す斜視図である。図3に示すように、側面パネル2は、内側パネル2aと、内側パネル2aに積層された外側パネル2bと、を含む二重積層構造となっている。そして、内側パネル2aには、貫通穴8aが設けられている。収容凹部8は、外側パネル2bの内側の面と、貫通穴8aとにより構成されている。
【0032】
本実施形態に係る定温輸送容器10では、収容凹部8に対して蓄熱材を固定するための留め具90が設けられている。留め具90は、収容凹部8内部に設けられている。図4は、留め具90の構成を示す斜視図である。
【0033】
図4に示すように、留め具90は、シート91と、固定具92と、帆布93と、面ファスナー雄部94Aおよび面ファスナー雌部94B(面ファスナー)と、を備えている。
【0034】
シート91は、収容凹部8の底面8bに接触して設けられている。シート91は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。
【0035】
また、固定具92は、底面8bとシート91とを固定する部材であり、樹脂製である。すなわち、固定具92は、外側パネル2bの内側の面と、シート91と、を固定する。
【0036】
帆布93は、シート91における底面8bと反対側の面に縫い付けられている。帆布93は、帯状のシートである。収容凹部8では、蓄熱材は、シート91に接触して収容される。帆布93は、蓄熱材の外周を覆うように、シート91に設けられている。
【0037】
面ファスナー雄部94Aは、帯状の帆布93の一方の端部に縫い付けられており、面ファスナー雌部94Bは、帆布93の他方の端部に縫い付けられている。面ファスナー雄部94Aおよび面ファスナー雌部94Bによって面ファスナーが構成されている。
【0038】
帆布93が蓄熱材の外周を覆ったとき、面ファスナー雄部94Aと面ファスナー雌部94Bとは互いに対向するように配され、互いに接合するようになっている。面ファスナー雄部94Aおよび面ファスナー雌部94Bの何れか一方は、複数のループ部を有し、他方は、当該ループ部に引っ掛かるフック部を有する。このような面ファスナー雄部94Aおよび面ファスナー雌部94Bからなる面ファスナーを介して、蓄熱材は、シート91に対して着脱可能に固定される。
【0039】
定温輸送容器10では、留め具90により、蓄熱材は、収容凹部8内で固定されている。側面パネル2およびシート91は、ともにポリオレフィン系樹脂発泡体からなり、固定具92で確実に固定されている。それゆえ、留め具90による蓄熱材の固定により、収容凹部8から蓄熱材が脱落するのを防止することができる。また、収容凹部8内部で蓄熱材の位置が多少ずれた場合であっても、面ファスナー雄部94Aおよび面ファスナー雌部94Bの接合位置を微調整することによって、安定した蓄熱材の固定を容易に実現できる。また、収容凹部8に対する蓄熱材の正確な位置合わせを必要としないので、側面パネル2に対する蓄熱材の収容作業を容易にする。
【0040】
さらに、定温輸送容器10によれば、内側パネル2aおよび外側パネル2bから構成される収容凹部8本体に、蓄熱材の脱落を防止するための構造物を設ける必要がない。このため、収容凹部8の構造を簡素化することができ、収容凹部8に対して複雑な構造およびそれに伴う加工が不要になる。
【0041】
また、本実施形態に係る定温輸送容器10の製造方法は、上述の留め具90を用いて、壁面パネルの少なくとも1つに蓄熱材を固定する固定工程を含んでいれば、特に限定されない。
【0042】
(壁面パネルについて)
本実施形態に係る定温輸送容器10において、壁面パネルの形状は、蓄熱材を固定することが可能な形状であれば、特に限定されない。壁面パネルは、定温輸送容器10の形状に依存し、板状のパネル、球面を有するパネル、または、円柱側面を有するパネルであってもよい。パネルの設計、収容対象物の積載効率、およびコストの観点から、壁面パネルは、板状パネルであることが好ましい。この場合、定温輸送容器10は、矩形箱体であることが好ましい。
【0043】
以下、定温輸送容器10の各種部材について、さらに詳述する。
【0044】
(面ファスナー)
面ファスナーは、公知の面ファスナーであれば、任意のものを利用することができる。面ファスナーは、例えば、マジックテープ(登録商標)、ベルクロ(登録商標)が適宜利用される。
【0045】
面ファスナーは、一定の面積を有する。このため、帆布により蓄熱材の外周を覆うことができれば、面ファスナー雄部と面ファスナー雌部とを厳密に位置合わせしなくとも、蓄熱材をシートに固定することができる。万が一、壁面パネルの収容凹部に対する蓄熱材の位置がずれた場合であっても、面ファスナー雄部および面ファスナー雌部の接合位置を微調整することによって、安定した蓄熱材の固定を実現できる。
【0046】
(帆布)
帆布は、従来公知のものであれば、特に限定されない。好ましくは、帆布は、ポリエステル製の織布と、当該織布にコーティングされた塩化ビニル樹脂と、を含む布状物(クロス)である。このような構成とすることによって、ポリオレフィン系繊維からなる帆布と比較して、強度が向上する。
【0047】
蓄熱材を強固に固定する観点では、帆布の引張強度は、1KN/50mm幅以上であることが好ましく、帆布の伸度は、10%以上であることが好ましい。これにより、帆布に対して、適度の可撓性を維持できる。すなわち、帆布は、硬すぎることなく、壁面パネル同士の連結作業が容易になる程度の可撓性を有する。さらには、定温輸送容器の輸送時の振動等による外力に対し、蓄熱材を安定に保持できる。その結果、蓄熱材の所定位置からの脱落に伴う、定温輸送容器の温度保持性能の逸脱を防止できる。
【0048】
帆布の寸法は、蓄熱材の安定固定に必要な寸法であれば、特に限定されない。経済性の観点では、帆布は、帯状であることが好ましい。
【0049】
シートにおける帆布の縫い付け位置は、蓄熱材の外周を覆うことができる位置であれば、特に限定されない。蓄熱材をより安定に固定する観点では、シートにおける帆布の縫い付け位置は、複数あることが好ましい。
【0050】
例えば、幅285mm、長さ180mm、厚さ1mmのシートを用いたとき、(a)当該シートに対して、幅方向の2つの端部それぞれよりも内側50mmの位置に、幅30mmの面ファスナーが縫い付けられた帯状の帆布が縫い付けられ得る場合(帆布の縫い付け位置は2箇所)、(b)当該シートの中央の位置に、幅50mmの面ファスナーが縫い付けられた帯状の帆布が縫い付けられ得る場合等がある(帆布の縫い付け位置は1箇所)。
【0051】
(シート)
帆布を縫い付けるシートは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなるものであれば、従来公知のシートを用いることができる。好ましくは、当該シートは、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートである。具体的には、商品名:エフセル(登録商標)のシートを用いることができる。シートとしてポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを用いることによって、固定具による壁面パネルとシートとの間にアンカー効果が生じ、壁面パネルに対する留め具の固定が確実になる。
【0052】
シートは、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートであり、かつ、発泡倍率が2倍以上5倍以下であることが好ましい。発泡倍率が2倍以下である場合、シートの剛性は満足する一方、固定具による穴あけ加工性が悪化する傾向がある。一方、発泡倍率が5倍を超える場合、シートの剛性が低下し、繰り返し使用時にシートが裂けたりして破損し易い傾向にある。
【0053】
シートの寸法(幅および長さ)は、壁面パネルに設けられる収容凹部の底面と略同一寸法であることが好ましい。この寸法にすることにより、収容凹部内での蓄熱材のがたつきを最小化できる。
【0054】
(固定具)
固定具は、特に限定されないが、好ましくはスクリューアンカーである。図5は、本実施形態にて使用される固定具92の構成例を示す側面図である。
【0055】
図5に示すように、固定具92は、軸部92aと、ねじ山部92bと、先端部92cと、フランジ部92dとを有している。軸部92aは、基端部から先端部へ向かうに従い幅狭になる形状である。ねじ山部92bは、軸部92aの外周に螺旋状に設けられている。先端部92cは、円錐形状に尖っている。フランジ部92dは、平面視において軸部92aから径方向に突出する円形状である。フランジ部92dは、軸部92aの基端部に設けられている。
【0056】
円錐形状の先端部92cの底面の外周縁は、軸部92aの先端側部分よりも径方向の外方へ突出している。また、ねじ山部92bは、軸部92aの基端側から先端側へ向かって外径が徐々に小さくなるように形成されている。ねじ山部92bにおいて、軸部92aの先端側の部分が最も径が大きくなる。
【0057】
上記の構成によれば、軸部の基端側から先端側へ向かってねじ山部の外径が一定である構成と比較して、固定具92は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面パネルとポリオレフィン系樹脂発泡体からなるシートとの固定力が向上する。
【0058】
また、シート内におけるねじ山部92bの回転抵抗が大きくなる。このため、固定具92が引抜き方向に逆回転して固定が緩んでしまうことを抑制できる。
【0059】
さらに、隣り合うねじ山部92b間の谷部分において、壁面パネルが強く圧縮される。このため、壁面パネルとねじ山部92bとの密着性が向上する。その結果、固定具92の固定力がさらに向上する。
【0060】
固定具92を構成する樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、固定具92を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。留め具に備えられたシートと壁面パネルとの固定を強固にする観点では、固定具92、シート、および壁面パネルは同質素材であることが好ましい。例えば、シートがポリプロピレン系樹脂発泡シートであり、壁面パネルがポリプロピレン系樹脂発泡体からなる場合、固定具92は、シートおよび壁面パネルと同質素材であるポリプロピレン系樹脂からなることが好ましい。
【0061】
例えば、幅285mm、長さ180mmのシートを用いた場合、固定具は、当該シートの四隅4か所に取り付けられる。
【0062】
(壁面パネル)
定温輸送容器を構成する壁面パネルの材料は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。さらに断熱性を増大させるために、壁面パネルは、ポリオレフィン系樹脂発泡体にアルミ箔または樹脂フィルムが積層された構成であってもよい。
【0063】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の基材樹脂として、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。これらの中でも、価格、強度、汎用性、リターナブルでの使用の観点から、前記基材樹脂として、ポリプロピレン系樹脂が好適に使用される。
【0064】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、互いに融着した複数のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から構成されていることが好ましい。
【0065】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレン単独共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、無水マレイン酸-プロピレンランダム共重合体、無水マレイン酸-プロピレンブロック共重合体、プロピレン-g-無水マレイン酸グラフト共重合体等が挙げられる。これらの1種類を単独で使用してもよく2種類以上を混合して使用してもよい。
【0066】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(予備発泡粒子)の製造方法は、従来から知られている方法を採用することができる。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法として、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、まず、密閉容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子、発泡剤、分散剤および分散助剤を含む水系分散媒を仕込み、攪拌しながら昇温して一定温度(以下、発泡温度という場合がある)にしてポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸さる。そして、必要に応じて発泡剤を追加添加して、前記密閉容器内を一定圧力(以下、発泡圧力という場合がある)に保持した後、密閉容器下部から内容物を密閉容器内圧より低圧雰囲気下に放出する。密閉容器は、特に限定されず、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0067】
発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水;などが挙げられる。高発泡倍率の発泡粒子を得るためには、イソブタン、ノルマルブタンおよびそれらの混合物を発泡剤として用いることが好ましい。低発泡倍率であり、かつ発泡倍率のばらつきが小さい発泡粒子を得るためには、水を発泡剤として用いることが好ましい。
【0068】
前記発泡剤の使用量は、使用するポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類、目的とする発泡倍率等により異なるため、一概には規定できないがポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、概ね2重量部~60重量部の範囲であることが好ましい。
【0069】
前記発泡粒子を、さらに発泡成形することで、発泡成形体として製造することができる。
【0070】
発泡成形体の製造方法としては、公知の方法を利用できるが、例えば、(A)前記発泡粒子を無機ガスで加圧処理し、前記発泡粒子内に無機ガスを含浸させることで、前記発泡粒子に対して所定の内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、(B)前記発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、前記発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、(C)特に前処理することなく前記発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などが挙げられる。
【0071】
ポリプロピレン系樹脂発泡体を構成する発泡粒子の発泡倍率は、好ましくは15倍~80倍であり、より好ましくは20倍~60倍であり、さらに好ましくは、30倍~50倍である。
【0072】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子には、適宜、帯電防止剤、輻射抑制剤、顔料・染料などの着色剤等機能付与成分を添加することができる。
【0073】
本実施形態に係る定温輸送容器の構成は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる壁面を構成する複数の壁面パネルを備えていれば、特に限定されない。複数の壁面パネルのうち、少なくとも1つが、複数のパネルセグメントにより構成されていてもよい。
【0074】
壁面パネルは、単層パネルであってもよい。この場合、蓄熱材を固定する留め具(例えば留め具90)は、壁面パネルに直接取り付けられる。留め具の形態としては、例えば、壁面パネルの表面に直接留め具が取り付けられる形態、壁面パネルに設けられた収容凹部内に留め具が取り付けられる形態等が挙げられる。
【0075】
また、壁面パネルは、内側パネルと、内側パネルに積層された外側パネルとを含む2層積層パネルであってもよい。このような構成の壁面パネルは、例えば図3に示された構成が挙げられる。このような構成を有する定温輸送容器は、外側パネルから構成される外箱の内側に内面材としての内側パネルが配された構成となる。当該内側パネルには、蓄熱材を収容するための収容凹部が設けられ得る。この場合、蓄熱材は収容凹部に収容されるため、定温輸送容器内の荷室空間を有効に利用できる。
【0076】
内側パネルと外側パネルとは、例えば、複数の面ファスナーまたは接着剤を介して、互いに接合連結している。
【0077】
なお、図3に示された構成では、収容凹部8は、内側パネル2aの貫通穴8aと、外側パネル2bとにより構成されている。しかし、壁面パネルが2層積層パネルである場合、収容凹部は、図3に示された構成に限定されない。例えば、収容凹部は、内側パネルに形成された有底穴によって構成されていてもよい。
【0078】
収容凹部が内側パネルに形成された有底穴によって構成されている場合、固定具は、シートと内側パネルの表面とを固定する。また、図3に示すような、収容凹部8が内側パネル2aの貫通穴8aと外側パネル2bとにより構成されている場合、固定具92は、シート91と外側パネル2bの表面とを固定する。
【符号の説明】
【0079】
1 天面パネル
2 側面パネル
2a 内側パネル
2b 外側パネル
3 側面パネル
4 底面パネル
8 収容凹部(凹部)
8a 貫通穴
8b 底面
10 定温輸送容器
90 蓄熱材の留め具
91 シート
92 固定具
93 帆布
94A 面ファスナー雄部(面ファスナー)
94B 面ファスナー雌部(面ファスナー)
図1
図2
図3
図4
図5