(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125898
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】背合わせ梁取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20220822BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
E04B1/24 J
E04B1/24 F
E04B1/58 F
E04B1/58 508F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023731
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000151368
【氏名又は名称】株式会社東京ソイルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 航
(72)【発明者】
【氏名】長田 宗平
(72)【発明者】
【氏名】榎本 敦
(72)【発明者】
【氏名】五百井 壮
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA33
2E125AB05
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG45
2E125AG57
2E125BB09
2E125BB18
2E125BB22
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF06
2E125CA05
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】一対の背合わせ梁に取付部材を取り付けつつ、地震時における一対の背合わせ梁の変形を抑制することを目的とする。
【解決手段】背合わせ梁取付構造は、柱12を挟んで梁幅方向に互いに対向する一対の背合わせ梁20と、一対の背合わせ梁20のウェブ部26間に嵌め込まれ、一対の背合わせ梁20を連結する角筒状部62を有する連結部材60と、連結部材60に取り付けられる補強間柱30及び補強ブレース52と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱を挟んで梁幅方向に互いに対向する一対の背合わせ梁と、
一対の前記背合わせ梁のウェブ部間に嵌め込まれ、一対の前記背合わせ梁を連結する角筒状部を有する連結部材と、
前記連結部材に取り付けられる取付部材と、
を備える背合わせ梁取付構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記角筒状部に設けられ、平面視にて、一対の前記背合わせ梁の梁芯に沿って配置されるガセットプレート部を有し、
前記取付部材は、前記ガセットプレート部に取り付けられる、
請求項1に記載の背合わせ梁取付構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記角筒状部の下端部又は上端部から前記背合わせ梁の側方へ延出する横フランジ部を有し、
前記取付部材は、前記横フランジ部に取り付けられる、
請求項1に記載の背合わせ梁取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背合わせ梁取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の上弦梁と、一対の下弦梁と、複数のせん断抵抗ブレースとを備えるトラス梁が知られている(例えば、特許文献1参照)。一対の上弦梁は、柱を挟んで梁幅方向に互いに対向して配置されている。これと同様に、一対の下弦梁は、柱を挟んで梁幅方向に互いに対向して配置されている。また、せん断抵抗ブレースは、上下方向に互いに対向する上弦梁と下弦梁とを連結している。
【0003】
また、柱の両側に、梁幅方向に互いに対向して配置される一対の背合わせ梁(ダブルビーム)が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-503942号公報
【特許文献2】実開平4-134303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一対の背合わせ梁に、ブレースやダンパー、間柱等の取付部材を取り付けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、例えば、一対の背合わせ梁のうち、一方の背合わせ梁にブレース等の取付部材を取り付けると、地震時に、一方の背合わせ梁に応力が集中し、当該背合わせ梁が変形する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、一対の背合わせ梁に取付部材を取り付けつつ、地震時における一対の背合わせ梁の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の背合わせ梁取付構造は、柱を挟んで梁幅方向に互いに対向する一対の背合わせ梁と、一対の前記背合わせ梁のウェブ部間に嵌め込まれ、一対の前記背合わせ梁を連結する角筒状部を有する連結部材と、前記連結部材に取り付けられる取付部材と、を備える。
【0009】
請求項1に係る背合わせ梁取付構造によれば、一対の背合わせ梁は、柱を挟んで梁幅方向に互いに対向する。この一対の背合わせ梁のウェブ部間には、連結部材の角筒状部が嵌め込まれる。この角筒状部によって一対の背合わせ梁が連結される。また、連結部材には、取付部材が取り付けられる。
【0010】
ここで、本発明では、前述したように、角筒状部によって一対の背合わせ梁を連結することにより、一対の背合わせ梁が補強される。これにより、地震時に、取付部材から一対の背合わせ梁に応力が集中した場合に、一対の背合わせ梁の変形が抑制される。
【0011】
請求項2に記載の背合わせ梁取付構造は、請求項1に記載の背合わせ梁取付構造において、前記連結部材は、前記角筒状部に設けられ、平面視にて、一対の前記背合わせ梁の梁芯に沿って配置されるガセットプレート部を有し、前記取付部材は、前記ガセットプレート部に取り付けられる。
【0012】
請求項2に係る背合わせ梁取付構造によれば、連結部材は、ガセットプレート部を有する。ガセットプレート部は、連結部材の角筒状部に設けられ、平面視にて、一対の背合わせ梁の梁芯に沿って配置される。このガセットプレート部に取付部材が取り付けられる。
【0013】
これにより、地震時には、取付部材からガセットプレート部を介して一対の背合わせ梁の梁芯に向けて荷重が入力される。この結果、地震時に、一対の背合わせ梁に発生する偏心曲げが低減される。したがって、地震時における一対の背合わせ梁の変形がさらに抑制される。
【0014】
請求項3に記載の背合わせ梁取付構造は、請求項1に記載の背合わせ梁取付構造において、前記連結部材は、前記角筒状部の下端部又は上端部から前記背合わせ梁の側方へ延出する横フランジ部を有し、前記取付部材は、前記横フランジ部に取り付けられる。
【0015】
請求項3に係る背合わせ梁取付構造によれば、連結部材は、横フランジ部を有する。横フランジ部は、角筒状部の下端部又は上端部から背合わせ梁の側方へ延出する。この横フランジ部に、取付部材が取り付けられる。
【0016】
このように連結部材に横フランジ部を設けることにより、地震時における一対の背合わせ梁の変形を抑制しつつ、一対の背合わせ梁の側方に水平ブレース等を容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る背合わせ梁取付構造によれば、一対の背合わせ梁に取付部材を取り付けつつ、地震時における一対の背合わせ梁の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係る背合わせ梁取付構造が適用された架構を示す立面図である。
【
図2】
図1に示される連結部材を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示される連結部材を背合わせ梁の梁幅方向から見た側面図である。
【
図6】第二実施形態に係る背合わせ梁取付構造が適用された架構を示す平面図である。
【
図7】
図6に示される連結部材を示す
図6の一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0020】
(既存架構)
図1には、本実施形態に係る背合わせ梁取付構造が適用された一対の背合わせ梁20を備える既存架構10が示されている。既存架構10は、鉄骨造とされている。この既存架構10は、一対の柱12と、一対の柱12に架設された一対の背合わせ梁20とを備えている。なお、既存架構10は、架構の一例である。
【0021】
一対の柱(鉄骨柱)12は、例えば、角形鋼管によって形成される。この一対の柱12の柱脚部は、基礎14に支持されている。基礎14は、例えば、フーチングとされており、地盤Gに埋設されている。この地盤G上には、土間コンクリート16が敷設されている。
【0022】
図2に示されるように、一対の背合わせ梁20は、C形鋼によって形成されている。各背合わせ梁20は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部22及び下側フランジ部24と、上側フランジ部22及び下側フランジ部24を接続するウェブ部26とを有している。
【0023】
一対の背合わせ梁20は、柱12(
図1参照)を挟んで、梁幅方向(矢印W方向)に互いに対向して配置されている。また、一対の背合わせ梁20は、各々のウェブ部26を内側(柱12側)にするとともに、C形鋼の開口を外側にした状態で配置されている。この一対の背合わせ梁20は、各々のウェブ部26によって柱12を挟み込んだ状態で、溶接や図示しないボルト等の接合手段によって柱12に接合されている。
【0024】
(既存架構の補強構造)
図1に示されるように、既存架構10は、補強間柱30及び一対の補強ブレース50,52によって補強されている。なお、補強間柱30及び補強ブレース52は、取付部材の一例である。
【0025】
(補強間柱)
図2及び
図3に示されるように、補強間柱30は、C形鋼によって形成されている。この補強間柱30は、一対のフランジ部32と、一対のフランジ部32を接続するウェブ部34とを有している。なお、補強間柱30は、C形鋼に限らず、例えば、H形鋼や鋼管鋼によって形成されても良い。
【0026】
図1に示されるように、補強間柱30は、一対の柱12の間に配置されており、その柱脚部が基礎36に支持されている。基礎36は、例えば、フーチングとされており、地盤Gに埋設されている。この補強間柱30の柱頭部は、後述する連結部材60を介して一対の背合わせ梁20に取り付けられている。
【0027】
(補強ブレース)
一対の補強ブレース50,52は、一方の柱12(
図1の左側の柱12)、補強間柱30、及び一対の背合わせ梁20によって形成された架構40の構面に設けられている。この一対の補強ブレース50,52は、例えば、X型のターンバックルブレースとされており、架構40の対角上に沿って配置されている。
【0028】
一方の補強ブレース50は、その下端部が補強間柱30の柱脚部に接合され、その上端部が一方の柱12の柱頭部に接合されている。また、他方の補強ブレース52は、その下端部が一方の柱12の柱脚部に接合され、その上端部が後述する連結部材60を介して一対の背合わせ梁20に接合されている。
【0029】
なお、他方の柱12(
図1の右側の柱12)、補強間柱30、及び一対の背合わせ梁20によって囲まれた架構42には、通路等の開口44が形成されている。
【0030】
(連結部材)
図2及び
図4に示されるように、連結部材60は、角筒状部62と、横フランジ部64と、ガセットプレート部66とを有している。角筒状部62は、例えば、角形鋼管によって形成されている。この角筒状部62は、軸方向を背合わせ梁20の梁成方向(上下方向)として、一対の背合わせ梁20のウェブ部26間に嵌め込まれている。
【0031】
図4に示されるように、角筒状部62の高さ(軸方向の長さ)は、一対の背合わせ梁20の梁成と同様とされている。そして、角筒状部62の上端部は、一対の背合わせ梁20の上側フランジ部22と同じ高さに配置されている。また、角筒状部62の下端部は、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24と同じ高さに配置されている。
【0032】
なお、角筒状部62の形状や大きさは、適宜変更可能である。したがって、例えば、角筒状部62の上端部は、一対の背合わせ梁20の上側フランジ部22よりも上側へ突出しても良い。
【0033】
図5に示されるように、角筒状部62の断面形状は、背合わせ梁20の材軸方向を長手方向とした長方形状とされている。この角筒状部62は、背合わせ梁20の梁幅方向に互いに対向する一対の側壁部62Aと、背合わせ梁20の材軸方向に互いに対向する一対の側壁部62Bとを有している。一対の側壁部62Aの外面は、一対の背合わせ梁20のウェブ部26の内面にそれぞれ接触(面接触)されている。
【0034】
角筒状部62の一対の側壁部62Aには、当該側壁部62Aを厚み方向に貫通する複数の貫通孔62Hが形成されている。また、一対の背合わせ梁20のウェブ部26には、当該ウェブ部26を厚み方向に貫通する複数の貫通孔26Hが形成されている。
【0035】
複数の貫通孔26Hは、角筒状部62の一対の側壁部62Aに形成された複数の貫通孔62Hにそれぞれ通じている。これらの貫通孔26H,62Hに挿入されたボルト70及びナット72によって、一対の背合わせ梁20のウェブ部26及び角筒状部62が一体に連結されている。
【0036】
図4に示されるように、角筒状部62の下端部には、横フランジ部64が設けられている。横フランジ部64は、平面視にて矩形状の鋼板等によって形成されており、角筒状部62の下端部に溶接等によって接合されている。
【0037】
横フランジ部64は、角筒状部62の下端部から側方へそれぞれ延出されており、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24の下面に重ねられている。また、横フランジ部64は、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24に溶接(隅肉溶接)等によって接合されている。この横フランジ部64によって、一対の背合わせ梁20が補強されている。
【0038】
図3に示されるように、横フランジ部64の下面には、ガセットプレート部66が設けられている。ガセットプレート部66は、背合わせ梁20の梁幅方向から見て、矩形状の鋼板等によって形成されている。また、
図5に示されるように、ガセットプレート部66は、厚み方向を背合わせ梁20の梁幅方向として配置されている。このガセットプレート部66は、平面視にて、一対の背合わせ梁20の梁芯20Cに沿って配置されている。
【0039】
図4に示されるように、ガセットプレート部66には、複数の貫通孔66Hが形成されている。複数の貫通孔66Hは、ガセットプレート部66を厚み方向に貫通している。また、複数の貫通孔66Hは、上下方向に間隔を空けて配置されている。このガセットプレート部66には、補強間柱30の柱頭部のウェブ部34が重ねられている。
【0040】
補強間柱30の柱頭部のウェブ部34には、複数の貫通孔34Hが形成されている。複数の貫通孔34Hは、ウェブ部34を厚み方向に貫通している。また、複数の貫通孔34Hは、ガセットプレート部66に形成された複数の貫通孔66Hにそれぞれ通じている。これらの貫通孔34H,66Hに挿入されたボルト38及びナット39によって、ガセットプレート部66及び補強間柱30の柱頭部が一体に接合されている。
【0041】
図2に示されるように、ガセットプレート部66には、補強ブレース52の上端部に設けられたブラケット54が重ねられている。このブラケット54及びガセットプレート部66には、図示しない貫通孔がそれぞれ形成されている。これらの貫通孔に挿入されたボルト56及びナット58によって、ブラケット54及びガセットプレート部66が一体に接合されている。なお、ブラケット54には、例えば、羽子板プレートが用いられる。
【0042】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0043】
図2に示されるように、本実施形態に係る背合わせ梁取付構造によれば、一対の背合わせ梁20のウェブ部26間には、連結部材60の角筒状部62が嵌め込まれている。この角筒状部62、及び一対の背合わせ梁20のウェブ部26は、複数のボルト70及びナット72によって一体に連結されている。
【0044】
このように一対の背合わせ梁20のウェブ部26を、角筒状部62を介して連結することにより、一対の背合わせ梁20における補強間柱30及び補強ブレース52との接合部(取付部)が補強される。これにより、地震時に、補強間柱30及び補強ブレース52から一対の背合わせ梁20に応力が集中した場合に、一対の背合わせ梁20の変形が抑制される。
【0045】
また、補強間柱30及び補強ブレース52は、連結部材60のガセットプレート部66に接合されている。ガセットプレート部66は、平面視にて、一対の背合わせ梁20の梁芯20C(
図5参照)に沿って配置されている。
【0046】
これにより、地震時には、補強間柱30及び補強ブレース52の荷重が、ガセットプレート部66を介して一対の背合わせ梁20の梁芯20Cに向けて入力される。この結果、地震時に、一対の背合わせ梁20に発生する偏心曲げが低減される。したがって、地震時における一対の背合わせ梁20の変形がさらに抑制される。
【0047】
さらに、
図4に示されるように、連結部材60には、横フランジ部64が設けられている。この横フランジ部64は、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24の下面に沿って配置されており、これらの下側フランジ部24に溶接等によって接合されている。この横フランジ部64によって、一対の背合わせ梁20における補強間柱30及び補強ブレース52との接合部を補強することにより、地震時における一対の背合わせ梁20の変形がさらに抑制される。
【0048】
また、
図1に示されるように、本実施形態では、既存架構10に補強間柱30を設けることにより、一対の補強ブレース50,52によって既存架構10を補強しつつ、補強間柱30の一方側に、通路等の開口44を確保することができる。
【0049】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0050】
(既存架構)
図6には、第二実施形態に係る背合わせ梁取付構造が適用された一対の背合わせ梁20を備える既存架構80を示されている。既存架構80は、鉄骨造の平面架構とされている。この既存架構80は、一対の背合わせ梁20を2組、及び一対の背合わせ梁82を2組備えている。
【0051】
既存架構80の各角部には、柱12が配置されている。
図7に示されるように、各柱12の周囲には、一対の背合わせ梁20と一対の背合わせ梁82とが平面視にて井桁状(格子状)に配置されている。これらの背合わせ梁20は、溶接や図示しないボルト等の接合手段によって柱12に接合されている。
【0052】
(既存架構の補強構造)
図6に示されるように、既存架構80は、一対の補強水平ブレース90によって補強されている。一対の補強水平ブレース90は、例えば、X型のターンバックルブレースとされており、既存架構80の対角上に沿って配置されている。
【0053】
図7に示されるように、各補強水平ブレース90は、その一端部が連結部材100を介して一対の背合わせ梁20の一端側に取り付けられ、その他端部が連結部材100を介して一対の背合わせ梁20の他端側に取り付けられている。なお、補強水平ブレース90は、取付部材の一例である。
【0054】
(連結部材)
図8に示されるように、連結部材100は、角筒状部102と、横フランジ部104とを有している。角筒状部102は、例えば、角形鋼管によって形成されている。この角筒状部102は、軸方向を背合わせ梁20の材軸方向として、一対の背合わせ梁20のウェブ部26間に嵌め込まれている。
【0055】
角筒状部102は、背合わせ梁20の梁幅方向に互いに対向する一対の側壁部102Aと、背合わせ梁20の梁成方向(上下方向)に互いに対向する一対の側壁部102Bとを有している。一対の側壁部102Aの外面は、一対の背合わせ梁20のウェブ部26の内面にそれぞれ接触(面接触)されている。
【0056】
角筒状部102の一対の側壁部102Aには、当該側壁部102Aを厚み方向に貫通する複数の貫通孔102Hが形成されている。複数の貫通孔102Hは、一対の背合わせ梁20のウェブ部26に形成された複数の貫通孔26Hにそれぞれ通じている。これらの貫通孔26H,102Hに挿入されたボルト110及びナット112によって、一対の背合わせ梁20のウェブ部26及び角筒状部102が一体に連結されている。
【0057】
横フランジ部104は、角筒状部102の下端部に設けられている。この横フランジ部104は、平面視にて矩形状の鋼板等によって形成されており、角筒状部102の下端部に溶接等によって接合されている。
【0058】
横フランジ部104は、角筒状部102の下端部から側方へそれぞれ延出されており、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24の下面に重ねられている。また、横フランジ部104は、一対の背合わせ梁20の下側フランジ部24に溶接(隅肉溶接)等によって接合されている。この横フランジ部104によって、一対の背合わせ梁20が補強されている。
【0059】
横フランジ部104は、一方の背合わせ梁20の下側を通過し、当該背合わせ梁20の側方へ延出されている。この横フランジ部104には、補強水平ブレース90の一端部に設けられたブラケット92が重ねられている。また、横フランジ部104及びブラケット92には、図示しない貫通孔がそれぞれ形成されている。これらの貫通孔に挿入されたボルト94及びナット96によって、補強水平ブレース90の一端部が一対の背合わせ梁20に取り付けられている。
【0060】
ここで、
図7に示されるように、補強水平ブレース90は、平面視にて、そのブレース芯90Cの延長線が、柱12に設定された狙い点Pを通るように配置される。これにより、地震時に、補強水平ブレース90の応力が、連結部材100、及び一対の背合わせ梁20を介して柱12に効率的に伝達される。
【0061】
なお、本実施形態では、狙い点Pが柱12の側面に設定されている。しかし、狙い点Pの配置は、適宜変更可能であり、例えば、平面視にて、柱12の中心(材軸)に設定されても良い。
【0062】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0063】
図8に示されるように、本実施形態に係る背合わせ梁取付構造によれば、連結部材100は、横フランジ部104を有している。横フランジ部104は、角筒状部102の下端部から両側の背合わせ梁20の下側を通過し、これらの背合わせ梁20の側方へそれぞれ延出している。この横フランジ部104の延出部に、補強水平ブレース90の一端部が取り付けられている。
【0064】
このように連結部材100に横フランジ部104を設けることにより、地震時における一対の背合わせ梁20の変形を抑制しつつ、一対の背合わせ梁20の側方に補強水平ブレース90を容易に取り付けることができる。
【0065】
また、
図7に示されるように、横フランジ部104の形状や大きさを変更することにより、一対の背合わせ梁20に対する補強水平ブレース90の取り付け角度を容易に調整することができる。これにより、平面視にて、補強水平ブレース90のブレース芯90Cが、柱12の狙い点Pを通るように、補強水平ブレース90を一対の背合わせ梁20に取り付けることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、横フランジ部104が角筒状部102の下端部に設けられている。しかし、横フランジ部104は、角筒状部102の上端部に設けられても良い。
【0067】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0068】
上記第一実施形態では、連結部材60のガセットプレート部66が、平面視にて、一対の背合わせ梁20の梁芯20Cに沿って配置されている。しかし、ガセットプレート部66は、例えば、平面視にて、一対の背合わせ梁20の梁芯20Cから外れた位置に配置されても良い。
【0069】
また、上記第一実施形態では、連結部材60のガセットプレート部66に、補強間柱30及び補強ブレース52が取り付けられている。しかし、補強間柱30及び補強ブレース52は、ガセットプレート部66に限らず、例えば、角筒状部62の下端部に設けられた鉄骨部材等に取り付けられても良いし、横フランジ部64に取り付けられても良い。さらに、例えば、連結部材60から横フランジ部64及びガセットプレート部66を省略し、角筒状部62に補強間柱30及び補強ブレース52を取り付けても良い。
【0070】
また、上記第一実施形態では、取付部材としての補強ブレース52がターンバックルブレースとされている。しかし、取付部材としての補強ブレースは、ターンバックルブレースに限らず、例えば、鉄骨ブレース等であっても良い。
【0071】
また、上記第一実施形態では、取付部材が補強間柱30及び補強ブレース52とされている。しかし、取付部材は、補強間柱30及び補強ブレース52に限らず、例えば、ダンパー等であっても良い。
【0072】
また、上記第一実施形態では、連結部材60の角筒状部62が、軸方向を背合わせ梁20の梁成方向(上下方向)として配置されている。しかし、連結部材60の角筒状部62の設置向きは、状況に応じて適宜変更可能である。例えば、背合わせ梁20の梁成が低い場合には、角筒状部62の軸方向を背合わせ梁20の材軸方向として配置しても良い。
【0073】
また、上記第一実施形態では、一対の背合わせ梁20がC形鋼によって形成されている。しかし、一対の背合わせ梁20は、C形鋼に限らず、例えば、角形鋼管等によって形成されても良い。また、一対の背合わせ梁20は、鉄骨造(鉄骨梁)に限らず、例えば、木造(木質梁)であっても良い。
【0074】
また、上記第一実施形態では、既存架構10が構造物の一階に設けられ、基礎14に支持されている。しかし、既存架構10は、構造物の二階以上に設けられても良い。
【0075】
さらに、上記第一実施形態では、一対の背合わせ梁20が既存とされているが、一対の背合わせ梁20は、新設であっても良い。また、上記第一実施形態では、架構が既存架構10とされているが、架構は、新設架構であっても良い。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
12 柱
20 一対の背合わせ梁
20C 梁芯(一対の背合わせ梁の梁芯)
26 ウェブ部(背合わせ梁のウェブ部)
30 補強間柱(取付部材)
52 補強ブレース(取付部材)
60 連結部材
62 角筒状部(連結部材の角筒状部)
66 ガセットプレート部
90 補強水平ブレース(取付部材)
100 連結部材
102 角筒状部(連結部材の角筒状部)
104 横フランジ部(連結部材の横フランジ部)
W 一対の背合わせ梁の梁幅方向