IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

特開2022-125924筆記解析システム、筆記具及び解析装置
<>
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図1
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図2
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図3
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図4
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図5
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図6
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図7
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図8
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図9
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図10
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図11
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図12
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図13
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図14
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図15
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図16
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図17
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図18
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図19
  • 特開-筆記解析システム、筆記具及び解析装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125924
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】筆記解析システム、筆記具及び解析装置
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/08 20060101AFI20220822BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALI20220822BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20220822BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B43K29/08 Z
G06F3/0346 425
G06F3/03 400A
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023767
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正史
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 清志
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA05
5E555AA48
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC04
5E555CA41
5E555CA44
5E555CB21
5E555CC01
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】筆記動作に関する情報に基づいてユーザの疲労度を推定する。
【解決手段】筆記解析システムは、筆記具、解析装置及び表示装置を有する筆記解析システムであって、筆記具は、前端に筆記部を有する筆記体が収容される軸筒と、軸筒に設けられ、筆記具の動作を測定する動作測定部と、測定された動作に関する情報を解析装置に出力する出力部と、を有し、解析装置は、ユーザの筆記動作の特徴を示す基準筆記属性を記憶する記憶部と、所定期間において測定された筆記具の動作に関する情報を取得する取得部と、取得された動作に関する情報に基づいて、所定期間におけるユーザの筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定する判定部と、を有し、表示装置は、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に基づく情報を表示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具、解析装置及び表示装置を有する筆記解析システムであって、
前記筆記具は、
前端に筆記部を有する筆記体が収容される軸筒と、
前記軸筒に収容され、筆記具の動作を測定する動作測定部と、
前記動作測定部から入力された情報を前記解析装置に出力する出力部と、を有し、
前記解析装置は、
ユーザの筆記動作の特徴を示す基準筆記属性を記憶する記憶部と、
所定期間において測定された前記筆記具の動作に関する情報を取得する取得部と、
前記取得された動作に関する情報に基づいて、前記所定期間における前記ユーザの筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定する判定部と、を有し、
前記表示装置は、前記基準筆記属性と前記期間筆記属性との間の差に関する情報を表示する
ことを特徴とする筆記解析システム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記筆記具の軸筒に設けられる、
請求項1に記載の筆記解析システム。
【請求項3】
前記動作測定部は、前記筆記具の動作として、相互に直交する3方向の加速度及び角速度を測定する、
請求項1又は2に記載の筆記解析システム。
【請求項4】
前記動作測定部は、前記筆記具の動作として、相互に直交する3方向の磁場をさらに測定し、
前記筆記具は、前記筆記体の後端面に当接して前記軸筒に収容され、前記筆記具の動作として、前記筆記体からの圧力を測定する圧力測定部をさらに有する、
請求項3に記載の筆記解析システム。
【請求項5】
前記筆記具は、
前記軸筒に収容され、少なくとも前記動作測定部に給電する充電池と、
前記軸筒に収容され、前記充電池を充電する受電コイルと、
前記軸筒の軸線方向の中心よりも前端寄りに収容された、前記筆記具の重心位置を調整する調整部材と、をさらに有し、
前記筆記具の重心位置は、前記筆記具の軸線方向前端から40%以上且つ60%以下の位置に調整され、
前記軸筒は、周方向に分離可能な複数の部材から構成される、
請求項1-4の何れか一項に記載の筆記解析システム。
【請求項6】
請求項1-5の何れか一項に記載の筆記解析システムに用いられることを特徴とする筆記具。
【請求項7】
筆記具及び解析装置を有する筆記解析システムの解析装置であって、
ユーザの筆記動作の特徴を示す基準筆記属性を記憶する記憶部と、
所定期間において測定された前記筆記具の動作に関する情報を前記筆記具から取得する取得部と、
前記取得された動作に関する情報に基づいて、前記所定期間における前記ユーザの筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定する判定部と、
前記基準筆記属性と前記期間筆記属性との間の差に関する情報を表示する表示部と、
を有することを特徴とする解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記解析システム、筆記具及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具に取り付けられたセンサを用いて筆記動作に関する情報を取得し、情報処理の用に供することがなされている。例えば、特許文献1には、筆記具に取り付けられた加速度センサ及びジャイロセンサによる測定結果に基づいて、筆記具が使用されていた時間を算出する方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、LED(Light Emitting Diode)を備え、LEDの点滅によるフリッカーテストに基づいて、ユーザの疲労度を測定することを可能とする筆記具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-211948号公報
【特許文献2】実用新案登録第3000617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された筆記具により疲労度を測定するためには、ユーザは、筆記を中断してフリッカーテストをする必要があった。このような作業をすることなく、筆記動作に関する情報に基づいて疲労度を推定することができれば、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、筆記動作に関する情報に基づいてユーザの疲労度を推定することを可能とする筆記解析システム、筆記具及び解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る筆記解析システムは、筆記具、解析装置及び表示装置を有する筆記解析システムであって、筆記具は、前端に筆記部を有する筆記体が収容される軸筒と、軸筒に設けられ、筆記具の動作を測定する動作測定部と、動作測定部から入力された情報を解析装置に出力する出力部と、を有し、解析装置は、ユーザの筆記動作の特徴を示す基準筆記属性を記憶する記憶部と、所定期間において測定された筆記具の動作に関する情報を取得する取得部と、取得された動作に関する情報に基づいて、所定期間におけるユーザの筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定する判定部と、を有し、表示装置は、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に基づく情報を表示することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る筆記解析システムにおいて、表示装置は、筆記具の軸筒に設けられる、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る筆記解析システムにおいて、動作測定部は、筆記具の動作として、相互に直交する3方向の加速度及び角速度を測定する、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る筆記解析システムにおいて、筆記具は、筆記体の後端面に当接して軸筒に収容され、筆記体からの圧力を測定する圧力測定部をさらに有し、動作測定部は、筆記具の動作として、相互に直交する3方向の磁場をさらに測定し、出力部は、測定された圧力の情報をさらに出力する、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る筆記解析システムにおいて、筆記具は、軸筒に収容され、少なくとも動作測定部に給電する充電池と、軸筒に収容され、充電池を充電する受電コイルと、軸筒の軸線方向の中心よりも前端寄りに収容された、筆記具の重心位置を調整する調整部材と、をさらに有し、筆記具の重心位置は、筆記具の軸線方向前端から40%以上且つ60%以下の位置に調整され、軸筒は、周方向に分離可能な複数の部材から構成される、ことが好ましい。
【0012】
本発明に係る筆記具は、本発明に係る筆記解析システムに用いられることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る解析装置は、筆記具及び解析装置を有する筆記解析システムの解析装置であって、ユーザの筆記動作の特徴を示す基準筆記属性を記憶する記憶部と、所定期間において測定された筆記具の動作に関する情報を筆記具から取得する取得部と、取得された動作に関する情報に基づいて、所定期間におけるユーザの筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定する判定部と、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に基づく情報を表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る筆記解析システム、筆記具及び解析装置は、筆記動作に関する情報に基づいてユーザの疲労度を推定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】筆記解析システム10の概略構成の一例を示す図である。
図2】筆記具1の正面図である。
図3】筆記具1の正面断面図である。
図4】筆記具1の側面図である。
図5】筆記具1の側面断面図である。
図6】第1軸筒部材111の斜視図である。
図7】第2軸筒部材112の斜視図である。
図8】筆記具1の概略構成の一例を示す図である。
図9】解析装置2の概略構成の一例を示す図である。
図10】動作情報テーブルT1のデータ構造の一例を示す図である。
図11】筆記属性テーブルT2のデータ構造の一例を示す図である。
図12】事前処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図13】送信処理の流れの一例を示すフロー図である。
図14】基準筆記属性判定処理の流れの一例を示すフロー図である。
図15】解析処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図16】期間筆記属性判定処理の流れの一例を示すフロー図である。
図17】文字情報出力処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図18】文字情報生成処理の流れの一例を示すフロー図である。
図19】筆記具5の正面図である。
図20】筆記具5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る筆記解析システム10の概略構成の一例を示す図である。筆記解析システム10は、筆記具1の動作に関する情報に基づいて、筆記された文字を示す文字情報を生成する。また、筆記解析システム10は、筆記具1から出力された筆記具1の動作に関する情報に基づいて、ユーザの筆記動作の特徴を示す筆記属性を判定する。筆記解析システム10は、基準となる筆記属性である基準筆記属性と所定期間における筆記属性である期間筆記属性との間の差に基づいて、所定期間におけるユーザの疲労度を推定する。
【0018】
筆記解析システム10は、筆記具1と、解析装置2と、ユーザ端末3とを備える。解析装置2は、PC(Personal Computer)、サーバ、携帯電話、スマートフォン等の情報処理端末である。ユーザ端末3は、ユーザが使用するPC、サーバ、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機等の情報処理端末である。筆記具1、解析装置2及びユーザ端末3は、インターネット又はイントラネット等のネットワーク4を介して、相互に通信可能に接続される。
【0019】
以下、図2図5を参照して、筆記具1の構造について説明する。図2は、筆記具1の正面図であり、図3は、図2のA-A線に沿った筆記具1の正面断面図であり、図4は、筆記具1の側面図であり、図5は、図4のB-B線に沿った筆記具1の側面断面図である。なお、以下の説明では、筆記具1の軸線方向において、先端(所謂「ペン先」)のある方向を筆記具1の前方と称する。
【0020】
筆記具1は、軸筒11と、筆記体12と、動作センサ13と、尾栓14と、圧力センサ15と、充電池16と、処理基板17とを有する。軸筒11は略円筒形状を有し、軸筒11の略軸線位置には筆記体12が収容される。筆記体12は、前端にインクを塗布するための筆記部121を有するとともに、筆記部121に供給されるインクを収容するインク収容管122を有する。インク収容管122は、軸筒11の内部に、軸線方向と直交して設けられた収容管支持部114に挿通されることにより支持される。また、軸筒11の前端には、テーパ形状を有する傾斜部113が設けられる。
【0021】
傾斜部113の外周面には凹部1131が設けられ、凹部1131には動作センサ13が設けられる。動作センサ13は、筆記具1の動作を測定するセンサであり、例えば、相互に直交する3方向の加速度、角速度及び磁場を測定するセンサである。なお、動作センサ13は、動作測定部の一例である。
【0022】
インク収容管122の後端は、後端面が閉塞し、側面の一部に通気孔141が設けられた尾栓14に挿入される。尾栓14の後端面は、軸筒11の内部に、軸線方向と直交して設けられたセンサ支持部115の前面に接着されて支持される圧力センサ15に当接する。圧力センサ15は、尾栓14からの圧力を測定するセンサである。圧力センサ15は、尾栓14を介して、筆記具1による筆記の際に筆記体12が紙等の筆記対象から受ける圧力(所謂「筆圧」)を測定する。なお、圧力センサ15は、圧力測定部の一例である。
【0023】
なお、筆記具1において、尾栓14が設けられなくてもよい。この場合、筆記体12のインク収容管122の後端面が圧力センサ15に当接する。
【0024】
軸筒11の内部のセンサ支持部115の後方には、充電池16が収容される。充電池16は、第1導線161、第2導線(不図示)及び第3導線162を介して動作センサ13、圧力センサ15及び処理基板17にそれぞれ給電する。また、軸筒11の後端寄りには充電池16を非接触充電により充電するための受電コイル163が収容される。受電コイル163は、受電回路(不図示)を介して充電池16に接続される。なお、図2及び図4においては、充電池16の内部構造の図示を省略している。
【0025】
なお、筆記具1において、受電コイル163に代えて、給電用のケーブルを接続するための受電端子が設けられ、充電池16が有線により充電されるようにしてもよい。また、充電池16に代えて、乾電池が用いられてもよい。
【0026】
軸筒11の内部の充電池16の後方には、処理基板17が収容される。処理基板17は、動作センサ13によって測定された動作に関する情報と、圧力センサ15によって測定された圧力の情報とを出力する機能を実現するための集積回路が実装されたプリント回路基板である。また、処理基板17には、記憶装置及び通信装置が実装される。なお、以下では、動作に関する情報と圧力の情報とを併せて「筆記情報」と称することがある。
【0027】
軸筒11の内部の傾斜部113の後方には、インク収容管122が挿通された調整部材18が設けられる。調整部材18は、筆記具1の重心位置を調整するための部材である。調整部材18は、筆記具1の重心位置が筆記具1の軸線方向前端から40%以上且つ60%以下の位置となるように、所定の重量を有し且つ軸筒11の軸線方向の中心よりも前端寄りに収容される部材である。筆記具1は、調整部材18を有することにより、各センサ及び充電池16等を備えながらも従来の筆記具と同様の重心位置を有するため、ユーザにとって利用し易いものとなる。
【0028】
軸筒11の後部には、表示装置19が設けられる。表示装置19は、例えば多色発光可能なLEDチップである。表示装置19は、表示面が軸筒11の外周面に露出し、軸筒11の内部において処理基板17に接続される。表示装置19は、処理基板17から供給された信号に応じた色で、軸筒11の外部から視認可能に発光する。なお、表示装置19は、処理基板17から供給された表示データに基づいて画像を表示可能な液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイでもよい。
【0029】
軸筒11は、周方向に分離可能な第1軸筒部材111と第2軸筒部材112とから構成される。
【0030】
図6は、第1軸筒部材111の斜視図であり、図7は、第2軸筒部材112の斜視図である。図6に示すように、第1軸筒部材111は、軸筒11の後方の一部を軸線方向に沿った切断面で切断した形状を有する。第1軸筒部材111の内周面には、収容管支持部114とセンサ支持部115とが形成されている。また、第1軸筒部材111の切断面の近傍には複数の凹部1111が設けられる。
【0031】
図7に示すように、第2軸筒部材112は、大まかには円筒をその軸線方向に沿った切断面で切断した形状を有する。第2軸筒部材の側面には、2つの開口部116が設けられる。開口部116は、第1軸筒部材111の収容管支持部114とセンサ支持部115に対応する位置にそれぞれ設けられる。また、第2軸筒部材112の切断面の近傍には複数の凸部1121が設けられる。複数の凸部1121は、第1軸筒部材111の凹部1111に対応する位置にそれぞれ設けられ、各凸部1121と各凹部1111とが凹凸嵌合することで第1軸筒部材111と第2軸筒部材112とが係合される。
【0032】
このように、軸筒11が周方向に分離可能な第1軸筒部材111と第2軸筒部材112とから構成されることにより、軸筒11の内部に筆記具1の各構成要素を収容することが容易となり、筆記具1の生産性が向上する。
【0033】
図8は、筆記具1の概略構成の一例を示す図である。筆記具1は、上述した動作センサ13、圧力センサ15及び表示装置19に加えて、記憶部171と、通信部172と、処理部173とを備える。記憶部171、通信部172及び処理部173は、処理基板17に実装される。
【0034】
動作センサ13は、加速度センサ、角速度センサ及び磁場センサを備え、相互に直交する3方向の加速度、角速度及び磁場を測定するセンサである。加速度センサは、例えば、所定の位置関係に従って配置された固定電極と可動電極とを有し、加速度が与えられた時の可動電極の変位に基づく固定電極と可動電極の間の静電容量の変化に基づいて加速度を測定する。角速度センサは、例えば、一定方向に振動する振動素子に生じるコリオリ力を検出することにより角速度を測定する。磁場センサは、例えば、半導体素子に磁場が印可された際に生じるホール電圧を測定することにより磁場を測定する。動作センサ13は、所定のサンプリング周波数(例えば、100Hz)で各センサによって測定された3方向の加速度、角速度及び磁場の値を示すデジタルデータを生成し、処理部173に供給する。なお、動作センサ13は、磁場センサを備えなくてもよい。
【0035】
圧力センサ15は、その表面にゲージ抵抗が形成された半導体素子を備え、圧力を受けた半導体素子のひずみが引き起こすゲージ抵抗の変化を検出することで圧力を測定する。圧力センサ15は、所定のサンプリング周波数(例えば、100Hz)で測定された圧力の値を示すデジタルデータを生成し、処理部173に供給する。
【0036】
記憶部171は、プログラム又はデータを記憶するためのデバイスであり、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部171は、処理部173による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能且つ非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部171にインストールされる。
【0037】
通信部172は、筆記具1を解析装置2と通信可能にする通信インタフェース回路を備える。通信部172が備える通信インタフェース回路は、無線LAN(Local Area Network)等の通信インタフェース回路である。通信部172は、無線LANのアクセスポイント(不図示)を介して、処理部173から供給されたデータを解析装置2に送信する。
【0038】
処理部173は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部173は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、筆記具1の動作を統括的に制御する。処理部173は、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large-Scaled IC)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でもよい。処理部173は、記憶部171に記憶されているプログラムに基づいて筆記具の各種処理が適切な手順で実行されるように、通信部172の動作を制御する。処理部173は、記憶部171に記憶されているプログラムに基づいて処理を実行する。また、処理部173は、複数のプログラムを並列に実行することができる。
【0039】
処理部173は、動作情報取得部174、出力部175及び表示制御部176をその機能ブロックとして備える。これらの機能ブロックは、処理部173によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの機能ブロックは、ファームウェアとして処理基板17に実装されてもよい。
【0040】
図9は、解析装置2の概略構成の一例を示す図である。解析装置2は、解析記憶部21と、解析通信部22と、解析処理部23とを備える。
【0041】
解析記憶部21は、プログラム又はデータを記憶するためのデバイスであり、例えば、半導体メモリ装置を備える。解析記憶部21は、解析処理部23による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて解析記憶部21にインストールされる。
【0042】
解析通信部22は、ネットワーク4を介して解析装置2を筆記具1及びユーザ端末3と通信可能にする通信インタフェース回路を備える。解析通信部22が備える通信インタフェース回路は、有線LAN又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。解析通信部22は、解析処理部23から供給されたデータを筆記具1又はユーザ端末3に送信するとともに、筆記具1又はユーザ端末3から送信されたデータを受信し、解析処理部23に供給する。
【0043】
解析処理部23は、例えばCPUであり、解析装置2の動作を統括的に制御する。解析処理部23は、DSP、LSI、ASIC、FPGA等でもよい。解析処理部23は、解析記憶部21に記憶されているプログラムに基づいて解析装置2の各種処理が適切な手順で実行されるように、解析通信部22の動作を制御する。解析処理部23は、解析記憶部21に記憶されているプログラムに基づいて処理を実行する。また、解析処理部23は、複数のプログラムを並列に実行することができる。
【0044】
解析処理部23は、受信部231、判定部232、属性情報送信部233、文字情報生成部234及び文字情報送信部235をその機能ブロックとして備える。これらの機能ブロックは、解析処理部23が実行するプログラムによって実現する機能モジュールである。これらの機能ブロックは、ファームウェアとして解析装置2に実装されてもよい。
【0045】
図10は、解析記憶部21に記憶される筆記情報テーブルT1のデータ構造の一例を示す図である。筆記情報テーブルT1は、時刻、加速度、角速度、磁場及び圧力の情報を相互に関連付けて記憶する。加速度、角速度及び磁場は、動作センサ13によって測定された動作に関する情報であり、互いに直交する3方向の加速度、角速度及び磁場の値である。圧力は、圧力センサ15によって測定された圧力の情報である。時刻は、加速度、角速度、磁場及び圧力が測定された時刻である。
【0046】
図11は、解析記憶部21に記憶される筆記属性テーブルT2のデータ構造の一例を示す図である。筆記属性テーブルT2は、ユーザID、基準筆記属性、状態及び筆記動作数を相互に関連付けて記憶する。
【0047】
筆記具IDは、筆記具1を識別するための情報である。基準筆記属性は、各筆記具1を使用するユーザの基準となる筆記動作の特徴を示す情報である。図11に示す例では、筆記属性は、ユーザが筆記具1を使用した際の筆記動作を、一筆の動作(筆記具1が筆記対象に接触してから離れるまでの動作をいう。)ごとに属性A、B及びCのうちの何れかの属性に分類した場合において、各属性が占める割合である。
【0048】
筆記動作は、例えば、筆記具1の軸線方向の筆記対象に対する角度である筆記角、筆記対象から筆記体12に加わる圧力である筆圧及び一筆を書き終えるために紙面に接触している時間である筆記時間の長さに基づいて何れかの属性に分類される。なお、筆記角及び筆圧としては、筆記時間における筆記角及び筆圧の最大値又は平均値等の代表値がそれぞれ用いられる。筆記角、筆圧及び筆記時間は、筆記具1の動作に関する情報に基づいて算出される。
【0049】
例えば、属性Aには、筆記角が大きく、筆圧が大きく且つ筆記時間が長い筆記動作が分類される。すなわち、属性Aには、筆圧が大きく且つ比較的丁寧な筆記動作が分類される。属性Bには、筆記角が小さく、筆圧が小さく且つ筆記時間が中程度である筆記動作が分類される。すなわち、属性Bには、筆圧が小さく且つ比較的丁寧な筆記動作が分類される。属性Cには、筆記角が中程度で、筆圧が中程度で且つ筆記時間が短い筆記動作が分類される。すなわち、属性Cには比較的雑な筆記動作が分類される。
【0050】
状態は、基準筆記属性が確定しているか否かを示し、「確定」及び「更新中」の何れか一方が記憶される。筆記動作数は、属性の分類がされた筆記動作の数を示す。多くの筆記動作が分類されるほど、基準筆記属性はユーザの筆記動作の特徴をより正確に反映しているといえる。したがって、十分な量の筆記動作が分類された時点で基準筆記属性が確定される。
【0051】
図11に示す例では、「筆記具A」については10,000筆の筆記動作が分類されており、これはユーザの筆記動作の傾向を確定するために十分な量であるため、「筆記具A」の状態として「確定」が記憶されている。一方、「筆記具B」については5,000筆の筆記動作が分類されており、これはユーザの筆記動作の傾向を確定するために不十分な量であるため、「筆記具B」の状態として「更新中」が記憶されている。
【0052】
図12は、筆記解析システム10によって実行される事前処理の流れの一例を示すシーケンス図である。事前処理は、ユーザの基準筆記属性を判定する処理であり、ユーザの基準筆記属性が確定されていない状態で実行される。事前処理は、処理部173及び解析処理部23が、筆記具1及び解析装置2の各構成要素と協働することにより実行される。
【0053】
まず、筆記具1は、送信処理を実行する(S101)。送信処理は、筆記情報を解析装置2に送信する処理である。送信処理の詳細は後述する。
【0054】
続いて、解析装置2は、基準筆記属性判定処理を実行する(S102)。基準筆記属性判定処理は、筆記情報に基づいて、ユーザの基準筆記属性を判定する処理である。基準筆記属性判定処理の詳細は後述する。
【0055】
図13は、筆記具1によって実行される送信処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、筆記具1の動作情報取得部174は、筆記情報を取得する(S201)。動作情報取得部174は、所定時間(例えば、100分の1秒)ごとに動作センサ13から加速度、角速度及び磁場の情報を取得する。また、動作情報取得部174は、所定時間ごとに圧力センサ15から圧力の情報を取得する。動作情報取得部174は、取得した情報に、各情報を取得した時刻を関連付けて筆記情報として記憶部171に記憶する。
【0056】
続いて、出力部175は、出力条件が満たされているか否かを判定する(S202)。出力条件は、例えば、記憶部171に記憶された筆記情報が所定量(例えば、30秒間に相当する量)以上であることである。出力条件が満たされていないと判定された場合(S202-No)、S201に戻り、動作情報取得部174は引き続き筆記情報を取得する。
【0057】
出力条件が満たされたと判定された場合(S202-Yes)、出力部175は、記憶部171に記憶された筆記情報を出力し(S203)、送信処理を終了する。出力部175は、通信部172を介して、筆記情報を解析装置2に送信する。このようにして、出力部175は、動作センサ13及び圧力センサ15から入力された情報を解析装置2に出力する。
【0058】
図14は、解析装置2によって実行される基準筆記属性判定処理の流れの一例を示す図である。まず、解析装置2の受信部231は、解析通信部22を介して、筆記情報を筆記具1から受信する(S301)。受信部231は、受信した筆記情報を解析記憶部21の動作情報テーブルT1に記憶する。
【0059】
続いて、判定部232は、動作情報テーブルT1に一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されているか否かを判定する(S302)。一筆の筆記動作とは、筆記具1が筆記対象に接触してから離れるまでの動作をいう。したがって、判定部232は、筆圧の時間変化に基づいて一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されているか否かを判定することができる。判定部232は、動作情報テーブルT1を参照し、圧力が所定値未満から所定値以上に変化し、且つ、その変化の後に圧力が所定値以上から所定値未満に変化する場合に、動作情報テーブルT1に一筆の筆記動作の情報が記憶されていると判定する。
【0060】
一筆の筆記動作の情報が記憶されていないと判定された場合(S302-No)、S301に戻り、受信部231は引き続き筆記情報を受信する。
【0061】
一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されていると判定された場合(S302-Yes)、判定部232は、一筆の筆記動作を複数の属性のうちの何れかの属性に分類する(S303)。判定部232は、動作情報テーブルT1を参照して、圧力が所定値以上である時間を筆記時間として特定する。判定部232は、特定された筆記時間における磁場及び角速度の情報に基づいて筆記具1の筆記角の最大値及び平均値を算出する。また、判定部232は、筆記時間における圧力に基づいて筆圧の最大値及び平均値を算出する。
【0062】
判定部232は、算出された筆記角の最大値及び平均値、筆圧の最大値及び平均値並びに筆記時間の長さに基づいて筆記動作を複数の属性のうちの何れかの属性に分類する。判定部232は、分類の結果に基づいて、筆記属性テーブルT2の各属性の割合及び筆記動作数を更新する。
【0063】
続いて、判定部232は、確定条件が満たされたか否かを判定する(S304)。確定条件は、ユーザの筆記動作の特徴を正確に反映するために十分な量の筆記動作が分類されているかを示す条件であり、例えば、更新後の筆記属性テーブルT2の筆記動作数が所定数(例えば、10,000筆)以上であることである。確定条件は、所定期間(例えば、1週間)にわたって筆記動作が分類されたことでもよい。確定条件が満たされていないと判定された場合(S304-No)、受信部231は引き続き筆記具1の動作に関する情報を受信し(S301)、判定部232は新たな一筆の筆記動作の情報が記憶されているか否かを判定する(S302)。
【0064】
確定条件が満たされたと判定された場合(S304-Yes)、判定部232は、ユーザの基準筆記属性を判定し(S305)、基準筆記属性判定処理を終了する。判定部232は、筆記属性テーブルT2の状態を「更新中」から「確定」に更新することにより、ユーザの基準筆記属性を判定する。
【0065】
図15は、筆記解析システム10によって実行される疲労度推定処理の流れの一例を示すシーケンス図である。疲労度推定処理は、基準筆記属性判定処理によってユーザの基準筆記属性が確定された状態で実行される。疲労度推定処理は、処理部173及び解析処理部23が、筆記具1及び解析装置2の各構成要素と協働することにより実行される。
【0066】
まず、筆記具1は、送信処理を実行する(S401)。
【0067】
続いて、解析装置2の判定部232は、期間筆記属性判定処理を実行する(S402)。期間筆記属性判定処理は、筆記情報に基づいて、所定期間におけるユーザの期間筆記属性を判定する処理である。期間筆記属性は、基準筆記属性と同様に、例えば、ユーザが筆記具1を使用した際の筆記動作を一筆ごとに属性A、B及びCのうちの何れかの属性に分類した場合において、各属性が占める割合である。所定期間は、基準筆記属性の判定に用いられる期間よりも短い期間であり、例えば、100筆程度の筆記動作に相当する期間である。期間筆記属性判定処理の詳細については後述する。
【0068】
続いて、属性情報送信部233は、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報を送信する(S403)。例えば、属性情報送信部233は、筆記属性テーブルT2を参照して、基準筆記属性において属性A、B及びCのうちから最も割合が大きい属性を特定する。属性情報送信部233は、同様にして、判定された期間筆記属性において属性A、B及びCのうちから最も割合が大きい属性を特定する。属性情報送信部233は、基準筆記属性において特定された属性と期間筆記属性において特定された属性とが同一であるか否かを示す情報を生成する。属性情報送信部233は、解析通信部22を介して、生成された情報を筆記具1に送信する。
【0069】
基準筆記属性と期間筆記属性とを比較することにより、ユーザの筆記動作の特徴が一時的に変化しているか否かを判断することが可能となる。ユーザが長時間にわたって筆記動作を継続している場合には、筆記動作の特徴は疲労によって顕著に変化する。したがって、基準筆記属性と期間筆記属性との比較によりユーザの疲労度が推定される。
【0070】
続いて、筆記具1の表示制御部176は、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報を表示装置19に表示し(S404)、疲労度推定処理を終了する。表示制御部176は、通信部172を介して、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報を解析装置2から受信する。表示制御部176は、受信した情報に応じた色で表示装置19を発光させる。例えば、受信した情報が、基準筆記属性において特定された属性と期間筆記属性において特定された属性とが同一であることを示している場合、表示制御部176は、表示装置19を青色に発光させ、そうでない場合には赤色に発光させる。
【0071】
なお、属性情報送信部233は、S403において、基準筆記属性において特定された属性と期間筆記属性において特定された属性とが一致しない場合にのみ、その旨を示す情報を筆記具1に送信するようにしてもよい。この場合、表示制御部176は、解析装置2からかかる情報が受信された場合に表示装置19を赤色に発光させ、受信されない場合には青色に発光させる。
【0072】
図16は、期間筆記属性判定処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、解析装置2の受信部231は、解析通信部22を介して、筆記情報を筆記具1から受信する(S501)。受信部231は、受信した情報を解析記憶部21の動作情報テーブルT1に記憶する。
【0073】
続いて、判定部232は、動作情報テーブルT1に一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されているか否かを判定する(S502)。一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されていないと判定された場合(S502-No)、受信部231は引き続き筆記情報を受信し(S501)、判定部232は新たな一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されているか否かを判定する(S502)。
【0074】
一筆の筆記動作についての筆記情報が記憶されていると判定された場合(S502-Yes)、判定部232は、一筆の筆記動作を複数の属性のうちの何れかの属性に分類する(S503)。判定部232は、筆記角の最大値及び平均値、筆圧の最大値及び平均値並びに筆記時間の長さに基づいて筆記動作を何れかの属性に分類する。判定部232は、筆記動作及び属性を関連付けて解析記憶部21に記憶する。
【0075】
続いて、判定部232は、所定期間における筆記動作の特徴を示す期間筆記属性を判定し(S504)、期間筆記属性判定処理を終了する。判定部232は、直近に属性が判定され解析記憶部21に記憶された所定数(例えば、100筆)の筆記動作の情報を抽出する。判定部232は、抽出された筆記動作の属性を参照して各属性が占める割合を算出することにより、期間筆記属性を判定する。なお、判定部232は、直近の所定期間(例えば、5分)における筆記動作の情報を抽出してもよい。
【0076】
図17は、文字情報出力処理の流れの一例を示すシーケンス図である。文字情報出力処理は、解析処理と並行して定期又は不定期に実行される。文字情報出力処理は、解析処理部23及びユーザ端末3が備えるプロセッサ等の処理部が、解析装置2及びユーザ端末3の各構成要素と協働することにより実行される。
【0077】
まず、解析装置2の文字情報生成部234は、文字情報生成処理を実行する(S601)。文字情報生成処理は、動作情報テーブルT1に記憶された筆記情報に基づいて、ユーザが筆記具1を用いて筆記した文字を示す文字情報を生成する処理である。文字情報生成処理の詳細は後述する。
【0078】
続いて、解析装置2の文字情報送信部235は、解析通信部22を介して、生成された文字情報をユーザ端末3に送信する(S602)。
【0079】
続いて、ユーザ端末3は、送信された文字情報を表示し(S603)、文字情報出力処理を終了する。
【0080】
図18は、文字情報生成処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、解析装置2の文字情報生成部234は、動作情報テーブルT1に一文字の筆記動作の情報が記憶されているか否かを判定する(S701)。文字情報生成部234は、例えば、動作情報テーブルT1の加速度及び圧力の情報に基づいて、一文字の筆記動作についての筆記情報が記憶されているか否かを判定する。
【0081】
筆記具1を用いて複数の文字を筆記する場合、各文字の筆記動作の間には、筆記具1を筆記対象と離間させて筆記方向(縦書きであれば下方向、横書きであれば右方向、等)に移動させる文字間動作が含まれる。文字情報生成部234は、動作情報テーブルT1を参照して、圧力が所定値未満であり、且つ、加速度に基づいて算出される移動距離が所定値以上である期間を文字間動作の期間として特定する。文字情報生成部234は、動作情報テーブルT1において二つの文字間動作が特定され、且つ、二つの文字間動作の間に一筆以上の筆記動作が含まれている場合に、動作情報テーブルT1に一文字の筆記動作の情報が記憶されていると判定する。
【0082】
一文字の筆記動作についての筆記情報が記憶されていないと判定された場合(S701-No)、S701に戻る。すなわち、文字情報生成部234は、動作情報テーブルT1に一文字の筆記動作についての筆記情報が記憶されるまで待機する。
【0083】
一文字の筆記動作についての筆記情報が記憶されていると判定された場合(S701-Yes)、文字情報生成部234は、一文字の筆記動作についての筆記情報に基づいて文字情報を生成し(S702)、文字情報生成処理を終了する。文字情報生成部234は、一文字の筆記動作の情報を取得する。文字情報生成部234は、あらかじめ解析記憶部21に記憶された学習済みモデルである識別器に一文字の筆記動作についての筆記情報を入力することにより、文字情報を生成する。
【0084】
識別器は、学習モデルにディープラーニング等の機械学習技術を用いて筆記情報と文字情報との関係を学習させた学習済みモデルである。学習モデルはニューラルネットワークであり、それぞれが複数のノードを有する入力層、一又は複数の中間層及び出力層から構成される。入力層の各ノードには学習用筆記情報が入力され、中間層の各ノードには入力層の各ノードから出力された値の重みづけ和が入力される。出力層の各ノードには、中間層の各ノードから出力された値の重みづけ和が入力される。各層の各ノードの重みは、出力層からの出力値と、入力層に入力された学習用筆記情報に対応する学習用文字情報との差分が小さくなるように設定される。重みの設定は、例えば、誤差逆伝搬法などの公知の手法によることができる。
【0085】
識別器に一文字の筆記動作の情報を入力するために、文字情報生成部234は、取得した一文字の筆記動作の情報を、所定のサンプル数となるようにリサンプリングする。これにより、ユーザの筆記速度や文字の画数等にかかわらずデータのサンプル数が統一され、筆記動作の情報を識別器に入力することができる。リサンプリングには、線形補間等の公知の方法が用いられる。
【0086】
以上説明したように、筆記解析システム10において、解析装置2は、筆記具1の動作に関する情報に基づいて期間筆記属性を判定し、表示装置19は、あらかじめ判定された基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報を表示する。これにより、筆記解析システム10は、筆記具1の動作に関する情報に基づいてユーザの疲労度を推定することを可能とする。
【0087】
また、筆記具1において、動作センサ13は、筆記情報として、相互に直交する3方向の加速度、角速度及び磁場並びに筆記体からの圧力の情報を測定する。これにより、筆記解析システム10は、文字情報を高精度に生成することを可能とする。
【0088】
以下では、筆記具の動作として、3方向の加速度及び角速度を測定した場合と、3方向の加速度、角速度及び磁場を測定した場合と、3方向の加速度、角速度及び磁場並びに圧力を測定した場合とにおける文字情報の精度を比較した例について説明する。この例において、動作センサ13は、筆記具1の先端から15mm後方の凹部1131に収容された。動作センサ13及び圧力センサ15のサンプリング周波数は100Hzであった。
【0089】
比較例に用いられるデータとして、あらかじめ100人のユーザが筆記具1を用いて「あ」「お」「か」「け」「さ」の5文字をそれぞれ筆記した際の筆記情報が測定された。これらの5文字は、画数が3画のひらがなのうち、あいうえお順において早いものから選択された文字である。取得されたデータのうち90人分の筆記情報は学習用筆記情報として用いられ、残りの10人分の筆記情報は評価用筆記情報として用いられた。
【0090】
学習用筆記情報及び評価用筆記情報は、それぞれサンプル数が300となるようにリサンプリングされた。3層の全結合層を中間層として有するニューラルネットワークである学習モデルにリサンプリングされた学習用筆記情報が入力され、学習済みモデルである識別器が生成された。その後、リサンプリングされた評価用識別情報が識別器に入力され、文字情報が取得された。取得した文字情報が示す文字とユーザが筆記した文字とが一致した場合を正解として、正解率が算出された。
【0091】
筆記情報として加速度及び角速度の情報を用いた場合、正解率は78%であり、筆記情報としてさらに磁場の情報を用いた場合、正解率は80%であり、筆記情報としてさらに圧力の情報を用いた場合、正解率は86%であった。したがって、動作センサ13は、筆記情報として磁場の情報を測定することにより、文字情報を高精度に生成することを可能とする。また、動作センサ13は、筆記情報として圧力の情報を測定することにより、文字情報を高精度に生成することを可能とする。
【0092】
また、筆記具1において、動作センサ13は前端の傾斜部113に設けられる。これにより、筆記具1は、より高精度に疲労度を推定し、又は文字情報を生成することを可能とする。すなわち、動作センサ13が筆記具1の後端寄りに設けられた場合、筆記体12の前端の筆記部121の動作(すなわち、描線)を正確に測定することができなくなる。これに対し、動作センサ13が筆記部121に近い前端に設けられることにより、描線を正確に測定することが可能となるため、より高精度に疲労度を推定し、又は文字情報を生成することが可能となる。また、動作センサ13が傾斜部113の凹部1131に収容されることにより、動作センサ13が筆記動作を妨げることがなくなり、ユーザの利便性も向上する。
【0093】
以下では、筆記具1の動作センサ13の位置を変更した場合における文字情報の精度を比較した例について説明する。この例においては、上述した筆記具1と、動作センサ13の位置を筆記具1よりも15mm後方の位置(一般的な筆記具のグリップ中央部)に移動させた比較例1と、動作センサ13の位置を筆記具1よりも30mm後方の位置(一般的な筆記具のグリップ上部)に移動させた比較例2とが用いられた。筆記情報として、相互に直交する3方向の加速度及び角速度が用いられ、各筆記具における正解率が算出された。正解率は、筆記具1、比較例2、比較例1の順に高く、それぞれ、78%、70%、58%であった。
【0094】
動作センサ13の位置により正解率が異なる理由は、ユーザが筆記具を持つ位置及び持ち方がユーザごとに異なるためである。上述の例においては、100人のユーザのうち、筆記具の傾斜部113付近を把持するユーザが9人であり、一般的な筆記具のグリップ上部に相当する位置を把持するユーザが4人であった。すなわち、動作センサ13が傾斜部113に位置する筆記具1の場合は、100人とも動作センサ13が指より前方に位置していた。これに対し、動作センサ13が一般的な筆記具のグリップ中央部に位置する比較例1の場合は、動作センサが指より前方にあるユーザが9人、指の真下付近にあるユーザが87人、指の後方にあるユーザが4人であった。また、動作センサ13が一般的な筆記具のグリップ上部に位置する比較例2の場合は、動作センサが指の真下にあるユーザが4人、指の後方にあるユーザが96人であった。
【0095】
筆記運動の支点の一つが筆記具を把持する指であるから、動作センサ13が支点である指の前方に位置するか、又は後方に位置するかで動作センサ13によって取得される筆記情報の傾向が異なる。動作センサ13を傾斜部113に配置した筆記具1では、100人全員の筆記情報が同一の傾向となるのに対し、比較例1及び比較例2では異なる傾向の筆記情報が混在する。一般に、機械学習においては、データの傾向が多様であるほど、精度の高い識別を行うために多くの学習用データが必要とされるから、比較例1及び2では、相対的に低い正答率が示された。
【0096】
以上より、動作センサ13は、ユーザが把持したときに指よりも前方となる、ペン先に近い位置に設けられることが好ましい。そこで、筆記具1においては、指よりも前方に動作センサ13が位置するように、傾斜部113に動作センサ13が配置されている。このようにすることで、筆記具1は、識別器に高い正答率を実現させる筆記情報を取得することができる。すなわち、一般に、筆記具においては、ユーザが描線を視認しやすいように先端にテーパ構造が設けられているため、ユーザは、筆記具を把持する際にテーパ構造の部分を把持することは少ない。したがって、筆記具1においても、これを把持するユーザは、動作センサ13が位置する傾斜部113に指を置かずに、傾斜部113よりも後方に指を置くこととなる。なお、傾斜部113は、ユーザが筆記具1を把持するための部分と比較して細い部分であれば、先端に近づくにつれて段階的に細くなるものでもよい。
【0097】
なお、筆記解析システム10において、解析装置2の機能はユーザ端末3によって実現されてもよい。この場合、筆記具1は、ネットワーク4を介することなく、近距離無線通信により、ユーザ端末3と直接に通信してもよい。
【0098】
また、筆記具1において、筆記体12は、軸筒11の略軸線位置に収容される。このようにすることで、従来の筆記具と同様の使用感をユーザに与えることができる。すなわち、動作センサ13又は圧力センサ15を収容するため等の理由で筆記体12を軸筒11の軸線位置とは異なる位置に配置すると、筆記部121と筆記対象との接点が軸筒11の軸線上ではなくなり、筆記具としての使用感を損なうおそれがある。筆記具1は、動作センサ13を傾斜部113の外周に設けられた凹部1131に収容することで、筆記体12が軸筒11の略軸線位置に収容されることを可能とし、従来の筆記具と同様の使用感をユーザに与えることを可能とする。
【0099】
上述した説明では、解析処理のS403において、属性情報送信部233は基準筆記属性について特定された属性と期間筆記属性について特定された属性とが一致するか否かを示す情報を送信するものとしたが、このような例に限られない。属性情報送信部233は、基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報として、期間筆記属性の基準筆記属性に対する変化量を示す情報を送信してもよい。変化量を示す情報は、例えば、各属性が占める割合の変化量の二乗平均値である。この場合、S404において、表示制御部176は、変化量の大きさに応じた色で表示装置19を発光させる。例えば、変化量が大きいほど赤色に近く、変化量が小さいほど青色に近い色となるように色相を変化させて表示装置19を発光させる。
【0100】
上述した説明では、表示装置19は筆記具1の軸筒11に設けられるものとしたが、このような例に限られない。例えば、表示装置19の機能は解析装置2によって実現されてもよい。例えば、解析装置2は液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示部を備え、解析処理のS403において、属性情報送信部233は基準筆記属性と期間筆記属性との間の差に関する情報を含む画像を表示部に表示してもよい。また、同様に、表示装置19の機能はユーザ端末3によって実現されてもよい。
【0101】
以下では、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と筆記具の物理的構成においてのみ相違するため、筆記具の構成についてのみ説明する。また、上述した説明と同様の構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0102】
図19は、第2の実施形態に係る筆記具5の正面図であり、図20は、筆記具5の断面図である。筆記具5は、ボールペン51と、ボールペン51が着脱可能に挿入される円筒状のホルダー52とを有する。
【0103】
ボールペン51は、例えば公知のノック式ボールペンであり、略円筒状の軸筒511と、軸筒511の前端から突出し、前端にインクを塗布する筆記部を有する筆記体512と、軸筒511の後端に挿入されたノックカバー513と、ノック機構514とを有する。ノック機構514は、ノックカバー513を前方に押圧するノック操作に応じて軸筒511に収容されている筆記体512を軸筒511の前端から突出させ、又は軸筒511から突出している筆記体512を軸筒511に収容する。ノック機構514の構成は公知のものであるため説明を省略する。
【0104】
ホルダー52の後端面521には、ボールペン51の軸筒511の外径より小さく且つノックカバー513の外径より大きい径の貫通孔521aが設けられる。後端面521の内側には環状の圧力センサ15が設けられる。圧力センサ15は軸筒511の後端面と当接するため、圧力センサ15により筆圧が測定される。また、ノックカバー513はホルダー52の後端面521の貫通孔521aを貫通するため、ユーザはホルダー52がボールペン51に装着された状態でノック操作をすることができる。
【0105】
ホルダー52の前端には、テーパ形状の傾斜部522が設けられる。傾斜部522には、動作センサ13が収容される凹部523が設けられる。ホルダー52の外周面の軸線方向における中央付近には、表示装置19が設けられる。また、図示はしないが、ホルダー52には、筆記具1と同様に処理基板及び充電池が内蔵される。
【0106】
このように、筆記具5は、ボールペン51及びボールペン51が着脱可能に挿入され、動作センサ13及び圧力センサ15を備えるホルダー52を有する。これにより、筆記具1は、ユーザが好みのボールペン51を使用することを可能としながら、ユーザの疲労度を推定することを可能とする。
【0107】
上述した説明では、ボールペン51はノック式ボールペンであるものとしたが、このような例に限られない。ボールペン51は、ノックカバー513に相当する部分を回転することにより筆記体512が軸筒511から突出され、又は軸筒511に収容される公知の回転繰り出し式ボールペンでもよい。また、ボールペン51に代えて鉛筆やサインペン等の他の筆記具が用いられてもよい。この場合、ホルダー52に貫通孔521aが設けられなくてもよい。
【0108】
上述した説明では、圧力センサ15はホルダー52の後端面521の内側に設けられるものとしたが、このような例に限られず、筆圧を測定可能な任意の位置に設けられてもよい。例えば、ボールペン51の軸筒511が後方に向かうにつれて外径が細くなるように段差を有している場合、圧力センサ15は、段差に後方から当接するようにホルダー52の内部に設けられてもよい。また、ボールペン51の軸筒511の外周面に突起が設けられている場合、圧力センサ15は、突起に後方から当接するようにホルダー52の内部に設けられてもよい。
【0109】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 筆記具
11 軸筒
113 傾斜部
12 筆記体
13 動作センサ
15 圧力センサ
16 充電池
163 受電コイル
171 記憶部
172 通信部
174 動作情報取得部
175 出力部
176 表示制御部
19 表示装置
2 解析装置
21 解析記憶部
22 解析通信部
231 受信部
232 判定部
233 属性情報送信部
234 文字情報生成部
235 文字情報送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20