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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125936
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20220822BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/00 386
G03G21/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023785
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千晴
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA08
2H200FA16
2H200FA18
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA34
2H200GA46
2H200GA47
2H200GB15
2H200GB22
2H200GB25
2H200HA12
2H200HA29
2H200HA30
2H200HB03
2H200HB28
2H200JA02
2H200JB06
2H200JB10
2H200NA15
2H200PA04
2H200PA05
2H200PA27
2H200PA28
2H200PA29
2H200PB05
2H200PB26
2H200PB38
2H270KA21
2H270KA24
2H270KA59
2H270LA04
2H270LA64
2H270LA99
2H270LD05
2H270LD06
2H270LD08
2H270LD14
2H270MB27
2H270MB39
2H270MC15
2H270MD01
2H270MD29
2H270MH09
2H270NC20
2H270QA61
2H270QB01
2H270QB07
2H270RC03
2H270RC04
2H270RC17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】スコロトロン型帯電器の異常放電を確実に検知できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】
画像形成装置1は、感光ドラム4Yと、スコロトロン型帯電器5Yと、制御装置10とを備える。制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧になるように第1ワイヤ電圧をワイヤに印加する場合、下記第1式によって閾値を求める。制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧になっている状態で、第1ワイヤ電圧が閾値未満になった場合に、ワイヤに対する第1ワイヤ電圧の印加を停止する。
第1式:閾値=比例定数×第1グリッド電圧+切片
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
ワイヤとグリッドとを有し、前記感光ドラムを帯電させるスコロトロン型帯電器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記グリッドに生じる電圧であるグリッド電圧が第1グリッド電圧になるように第1ワイヤ電圧を前記ワイヤに印加する場合、下記第1式によって閾値を求め、
前記グリッド電圧が前記第1グリッド電圧になっている状態で、前記第1ワイヤ電圧が前記閾値未満になった場合に、前記ワイヤに対する前記第1ワイヤ電圧の印加を停止する、画像形成装置。
第1式:閾値=比例定数×第1グリッド電圧+切片
【請求項2】
前記第1ワイヤ電圧は、シートに画像を形成する場合に前記ワイヤに印加されるワイヤ電圧であり、
前記制御装置は、
シートに画像を形成していない状態で、前記ワイヤがコロナ放電を開始するコロナ放電開始電圧以上、かつ、前記第1ワイヤ電圧未満の第2ワイヤ電圧であって、前記グリッド電圧が第2グリッド電圧になる第2ワイヤ電圧を、前記ワイヤに印加し、
前記第1式の前記切片は、前記第2ワイヤ電圧と前記第2グリッド電圧とから、下記第2式により導き出される、請求項1に記載の画像形成装置。
第2式:前記切片=第2ワイヤ電圧-前記比例定数×第2グリッド電圧
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2ワイヤ電圧と前記第1式の前記比例定数との関数に基づいて、前記第2ワイヤ電圧から前記第1式の前記比例定数を設定する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記シートに対する画像形成を開始する前に、前記第1式の前記比例定数および前記切片を設定する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置は、前記感光ドラムの周面をクリーニングするクリーニングローラを備え、
前記制御装置は、前記クリーニングローラから前記感光ドラムに廃トナーを戻すときに、前記第2ワイヤ電圧を前記ワイヤに印加する、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ワイヤに対する前記第1ワイヤ電圧の印加を停止した場合、エラーを報知する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電ワイヤを有するスコロトロン型帯電器と、帯電ワイヤを帯電する帯電手段とを備える画像形成装置において、帯電ワイヤにおける放電電流が所定量を超えた場合に、帯電手段の出力を制限または停止することが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-243542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されるような画像形成装置では、帯電ワイヤが異常放電しているときの放電電流は、帯電ワイヤの汚れなどの要因で大きく変化する。
【0005】
そのため、異常放電が生じていても、帯電ワイヤにおける放電電流が所定量以下になる場合がある。この場合、異常放電を検知することができない。
【0006】
そこで、本開示の目的は、スコロトロン型帯電器の異常放電を確実に検知できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、スコロトロン型帯電器と、制御装置とを備える。スコロトロン型帯電器は、ワイヤとグリッドとを有する。スコロトロン型帯電器は、感光ドラムを帯電させる。
【0008】
制御装置は、グリッド電圧が第1グリッド電圧になるように第1ワイヤ電圧をワイヤに印加する場合、下記第1式によって閾値を求める。グリッド電圧は、グリッドに生じる電圧である。
【0009】
制御装置は、グリッド電圧が第1グリッド電圧になっている状態で、第1ワイヤ電圧が閾値未満になった場合に、ワイヤに対する第1ワイヤ電圧の印加を停止する。
【0010】
第1式:閾値=比例定数×第1グリッド電圧+切片
このような構成によれば、第1グリッド電圧の一次関数から第1ワイヤ電圧の閾値を求める。
【0011】
そのため、閾値によって、第1グリッド電圧に対応する正常な第1ワイヤ電圧の範囲を定めることができる。
【0012】
その結果、スコロトロン型帯電器の異常放電を確実に検知できる。
【0013】
(2)第1ワイヤ電圧は、シートに画像を形成する場合にワイヤに印加されるワイヤ電圧であってもよい。制御装置は、シートに画像を形成していない状態で、第2ワイヤ電圧をワイヤに印加してもよい。第2ワイヤ電圧は、ワイヤがコロナ放電を開始するコロナ放電開始電圧以上、かつ、第1ワイヤ電圧未満である。第2ワイヤ電圧がワイヤに印加された状態で、グリッド電圧は、第2グリッド電圧になる。第1式の切片は、第2ワイヤ電圧と第2グリッド電圧とから、下記第2式により導き出される。
【0014】
第2式:切片=第2ワイヤ電圧-比例定数×第2グリッド電圧
(3)制御装置は、第2ワイヤ電圧と第1式の比例定数との関数に基づいて、第2ワイヤ電圧から第1式の比例定数を設定してもよい。
【0015】
(4)制御装置は、シートに対する画像形成を開始する前に、第1式の比例定数および切片を設定してもよい。
【0016】
(5)画像形成装置は、クリーニングローラを備えてもよい。クリーニングローラは、感光ドラムの周面をクリーニングする。制御装置は、クリーニングローラから感光ドラムに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧をワイヤに印加してもよい。
【0017】
このような構成によれば、クリーニングローラから感光ドラムに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧、および、第2グリッド電圧を利用して、第1式の比例定数および切片を設定できる。
【0018】
(6)制御装置は、ワイヤに対する第1ワイヤ電圧の印加を停止した場合、エラーを報知してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の画像形成装置によれば、スコロトロン型帯電器の異常放電を確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、画像形成装置の概略構成図である。
図2図2は、スコロトロン型帯電器、ワイヤ電圧印加回路、制御回路基板および感光ドラムの電気的な接続を説明するためのブロック図である。
図3図3は、図2に示すブロック図に置き換えられる等価回路の回路図である。
図4図4は、第1式について説明するための説明図である。
図5図5は、ワイヤ電圧の制御を説明するフローチャートである。
図6図6は、図5中の「第1式を設定する」サブルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、変形例における第1式について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.画像形成装置1の概略
図1および図2を参照して、画像形成装置1の概略について説明する。
【0022】
画像形成装置1は、本体筐体2と、シート収容部3と、複数の感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと、複数のスコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5Kと、露光装置6と、複数の現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kと、転写装置8と、定着装置9とを備える。
【0023】
1.1 本体筐体2
本体筐体2は、シート収容部3と、感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと、スコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5Kと、露光装置6と、現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kと、転写装置8と、定着装置9とを収容する。
【0024】
1.2 シート収容部3
シート収容部3は、シートSを収容する。シート収容部3内のシートSは、シート収容部3から感光ドラム4Yに向かって搬送される。シートSは、例えば、印刷用紙である。シート収容部3は、シートカセットであってもよい。
【0025】
1.3 感光ドラム4Y,4M,4C,4K
感光ドラム4Yは、第1方向に延びる。感光ドラム4Yは、ドラム軸A1について回転可能である。ドラム軸A1は、第1方向に延びる。
【0026】
感光ドラム4M,4C,4Kのそれぞれについての説明は、感光ドラム4Yについての説明と同様である。そのため、感光ドラム4M,4C,4Kについての説明は、省略される。感光ドラム4Y,4M,4C,4Kは、第2方向に並ぶ。第2方向は、第1方向と交差する。好ましくは、第2方向は、第1方向と直交する。
【0027】
1.4 スコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5K
スコロトロン型帯電器5Yは、感光ドラム4Yを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Yは、ワイヤ51Y(図2参照)とグリッド52Y(図2参照)とを有する。
【0028】
スコロトロン型帯電器5Mは、感光ドラム4Mを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Cは、感光ドラム4Cを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Kは、感光ドラム4Kを帯電させる。スコロトロン型帯電器5M,5C,5Kのそれぞれについての説明は、スコロトロン型帯電器5Yについての説明と同様である。そのため、スコロトロン型帯電器5M,5C,5Kについての説明は、省略される。
【0029】
1.5 露光装置6
露光装置6は、スコロトロン型帯電器5Yによって帯電された感光ドラム4Yを露光する。本実施形態では、露光装置6は、レーザースキャンユニットである。露光装置6は、感光ドラム4Yだけでなく、感光ドラム4M,4C,4Kも露光可能である。露光装置6は、LEDアレイを有する露光ヘッドであってもよい。
【0030】
1.6 現像カートリッジ7Y,7M,7C,7K
現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kのそれぞれは、本体筐体2に装着可能である。現像カートリッジ7Yは、現像筐体71Yと、現像ローラ72Yとを有する。言い換えると、画像形成装置1は、現像ローラ72Yを備える。
【0031】
現像筐体71Yは、トナーを収容する。トナーは、摩擦により帯電可能な非磁性一成分系トナーである。本実施形態では、トナーは、摩擦により正帯電する。
【0032】
現像ローラ72Yは、現像筐体71Yに支持される。現像カートリッジ7Yが本体筐体2に装着された状態で、現像ローラ72Yは、現像筐体71Y内のトナーを感光ドラム4Yに供給する。現像ローラ72Yは、第1方向に延びる。現像ローラ72Yは、現像軸A2について回転可能である。現像軸A2は、第1方向に延びる。
【0033】
現像カートリッジ7M,7C,7Kのそれぞれについての説明は、現像カートリッジ7Yについての説明と同様である。そのため、現像カートリッジ7M,7C,7Kについての説明は、省略される。
【0034】
1.7 転写装置8
転写装置8は、ベルト81と、複数の転写ローラ82Y,82M,82C,82Kとを有する。
【0035】
ベルト81は、感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと接触する。ベルト81は、シート収容部3からのシートSを、定着装置9に向けて搬送する。
【0036】
転写ローラ82Yは、感光ドラム4Y上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Mは、感光ドラム4M上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Cは、感光ドラム4C上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Kは、感光ドラム4K上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。
【0037】
1.8 定着装置9
定着装置9は、トナーが転写されたシートSを加熱および加圧して、シートSにトナーを定着させる。定着装置9を通過したシートSは、本体筐体2の上面に排紙される。
【0038】
2.画像形成装置1の詳細
次に、図2を参照して、画像形成装置1の詳細について説明する。
【0039】
なお、以下の説明では、感光ドラム4Yおよびスコロトロン型帯電器5Yを例に挙げて説明し、感光ドラム4M,4C,4Kおよびスコロトロン型帯電器5M,5C,5Kについての説明を省略する。
【0040】
図2に示すように、画像形成装置1は、制御装置10と、クリーニングローラ11Yとを備える。
【0041】
(1)制御装置10
制御装置10は、スコロトロン型帯電器5Yのワイヤ51Yに印加されるワイヤ電圧を制御する。制御装置10は、ワイヤ電圧印加回路101と、制御回路基板102とを有する。
【0042】
(1-1)ワイヤ電圧印加回路
ワイヤ電圧印加回路101は、ワイヤ51Yと電気的に接続される。ワイヤ電圧印加回路101は、制御回路基板102からの制御信号に基づいて、ワイヤ51Yにワイヤ電圧を印加する。
【0043】
ここで、ワイヤ51Yとグリッド52Yとの間の抵抗値をR1とし、グリッド52Yとグランドとの間の抵抗値をR2とすると、図2に示すブロック図は、図3に示す回路図に置き換えられる。抵抗値R2は、一定である。
【0044】
ワイヤ電圧印加回路101がワイヤ51Yにコロナ放電開始電圧以上のワイヤ電圧を印加すると、ワイヤ51Yとグリッド52Yとの間でコロナ放電が生じる。コロナ放電開始電圧とは、ワイヤ51Yがコロナ放電を開始する電圧である。しかし、ワイヤ51Yの汚れなどの要因で、ワイヤ51Yとグリッド52Yとの間で異常放電が生じる場合がある。「異常放電」とは、コロナ放電以外の放電をいう。異常放電には、ストリーマ放電、アーク放電などがある。
【0045】
ワイヤ51Yとグリッド52Yとの間で異常放電が生じている状態の抵抗値R1は、ワイヤ51Yとグリッド52Yとの間でコロナ放電が生じている状態の抵抗値R1よりも小さくなる。抵抗値R1が小さくなると、ワイヤ電圧が小さくなる。詳しくは、ワイヤ電圧は、以下の式で求められる。
【0046】
式:Vw=[(R1+R2)/R2]×Vg+Vs
(式中、Vwは、ワイヤ電圧であり、Vgは、グリッド電圧であり、Vsは、コロナ放電開始電圧である。)
グリッド電圧とは、グリッド52Yに生じる電圧である。グリッド電圧は、グリッド52Yに流れるグリッド電流から計算できる。
【0047】
上記式中、(R1+R2)/R2は、画像形成装置1の設計時に実験的に求めることができる定数である。そのため、コロナ放電が生じている状態のコロナ放電開始電圧を予め測定しておけば、正常なワイヤ電圧の範囲の閾値を、グリッド電圧の一次関数で表すことができる。なお、「正常なワイヤ電圧」とは、コロナ放電を生じるワイヤ電圧をいう。
【0048】
これにより、グリッド電圧が一定になるようにワイヤ電圧印加回路101がワイヤ電圧を制御した場合、閾値を下回ったときに、異常放電が発生していると判断できる。閾値については、後で説明する。
【0049】
(1-2)制御回路基板102
図2に示すように、制御回路基板102は、ワイヤ電圧印加回路101と電気的に接続される。制御回路基板102は、ワイヤ電圧印加回路101を制御する。制御回路基板102は、グリッド52Yと電気的に接続される。制御回路基板102は、グリッド52Yに流れるグリッド電流をモニター可能である。
【0050】
(2)クリーニングローラ11Y
画像形成装置1がシートSに画像を形成するときに、クリーニングローラ11Yは、感光ドラム4Yの周面をクリーニングする。一方、画像形成装置1がシートSに画像を形成しないときに、クリーニングローラ11Yは、感光ドラム4Yに廃トナーを戻す。なお、感光ドラム4Yに戻された廃トナーは、ベルト81(図1参照)に転写される。ベルト81に転写された廃トナーは、図示しない廃トナー収容部に収容される。クリーニングローラ11Yは、感光ドラム4Yの周面と接触する。クリーニングローラ11Yには、クリーニング電圧が印加される。詳しくは、画像形成装置1がシートSに画像を形成する場合、クリーニングローラ11Yには、第1のクリーニング電圧が印加される。第1のクリーニング電圧は、例えば、-400Vである。クリーニングローラ11Yが感光ドラム4Yに廃トナーを戻す場合、クリーニングローラ11Yには、第2のクリーニング電圧が印加される。第2のクリーニング電圧は、例えば、+450Vである。
【0051】
3.ワイヤ電圧の制御
次に、図2、および、図4から図6を参照して、ワイヤ電圧の制御について説明する。なお、以下の説明では、スコロトロン型帯電器5Yを例に挙げて説明し、スコロトロン型帯電器5M、5C、5Kについての説明を省略する。
【0052】
制御装置10は、第1ワイヤ電圧Vw1をワイヤ51Yに印加する場合、ワイヤ51Yが異常放電していることを検出するための閾値Vw(t)を、下記第1式によって求める。
【0053】
第1式:閾値Vw(t)=比例定数×第1グリッド電圧Vg1+切片
第1ワイヤ電圧Vw1は、シートSに画像を形成する場合にワイヤ51Yに印加されるワイヤ電圧である。第1ワイヤ電圧Vw1は、コロナ放電開始電圧Vs以上の電圧である。第1グリッド電圧Vg1は、画像形成装置1がシートSに画像を形成する場合のグリッド電圧の目標値である。
【0054】
図4に示すように、第1式は、グリッド電圧に対するワイヤ電圧の一次関数である。グリッド電圧が特定の目標値になるようにワイヤ51Yにワイヤ電圧を印加した場合に、印加されているワイヤ電圧が、第1式から求められるワイヤ電圧を下回った場合、すなわち、印加されているワイヤ電圧が領域A内に入った場合、ワイヤ51Yが異常放電している可能性がある。
【0055】
そこで、制御装置10は、第1式によって、第1グリッド電圧Vg1に対するワイヤ電圧の閾値Vw(t)を求め、その閾値Vw(t)に基づいて、ワイヤ51Yが異常放電していることを検出する。以下、具体的な制御について説明する。
【0056】
図5に示すように、制御装置10は、シートSに対する画像形成を開始する前に、第1式の比例定数および切片を設定する(S1)。
【0057】
(1)第1式の比例定数および切片の設定
第1式の比例定数および切片を設定するには、制御装置10は、図4および図6に示すように、シートSに画像を形成していない状態で、グリッド電圧が第2グリッド電圧Vg2になるように、第2ワイヤ電圧Vw2をワイヤ51Yに印加する(S11)。第2グリッド電圧Vg2は、第1式の比例定数および切片を設定する場合のグリッド電圧の目標値である。第2グリッド電圧Vg2は、異常放電しないグリッド電圧の上限値Vg0よりも小さい。異常放電しないグリッド電圧の上限値Vg0は、実験により求められる。第2ワイヤ電圧Vw2は、第1式の比例定数および切片を設定する場合にワイヤ51Yに印加されるワイヤ電圧である。第2ワイヤ電圧Vw2は、コロナ放電開始電圧Vs以上、かつ、第1ワイヤ電圧Vw1未満である。第2ワイヤ電圧Vw2がワイヤ51Yに印加された状態で、グリッド電圧は、第2グリッド電圧Vg2になる。制御装置10は、第1式の比例定数および切片を設定する場合、グリッド電圧が第2グリッド電圧Vg2になるように、第2ワイヤ電圧Vw2を制御する。
【0058】
本実施形態では、制御装置10は、クリーニングローラ11Yから感光ドラム4Yに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧Vw2をワイヤ51Yに印加する。そのため、クリーニングローラ11Yから感光ドラム4Yに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧Vw2、および、第2グリッド電圧Vg2を利用して、第1式の比例定数および切片を設定できる。本実施形態では、第2グリッド電圧Vg2は、+210Vである。
【0059】
次に、制御装置10は、第2ワイヤ電圧Vw2と第1式の比例定数との関数に基づいて、第2ワイヤ電圧Vw2から第1式の比例定数を設定する(S12)。
【0060】
詳しくは、第2ワイヤ電圧Vw2と第1式の比例定数との関数は、予め、実験により求められる。例えば、第2ワイヤ電圧Vw2が、+2800V以上、+4000V未満である場合、第2ワイヤ電圧Vw2と第1式の比例定数との関数は、下記式によって表される。
【0061】
式:第1式の比例定数=1.6+(0.00025×第2ワイヤ電圧Vw2)
制御装置10は、第2ワイヤ電圧Vw2を上記の関数に代入し、第1式の比例定数を設定する。
【0062】
次に、制御装置10は、第2ワイヤ電圧Vw2と第2グリッド電圧Vg2とから、下記第2式により、第1式の切片を導き出す(S13)。
【0063】
第2式:切片=第2ワイヤ電圧Vw2-第1式の比例定数×第2グリッド電圧Vg2
(2)ワイヤ電圧の印加
次に、図4および図5に示すように、制御装置10は、ジョブを受信すると(S2:YES)、画像形成装置1を制御して、シートSに対する画像形成を開始する(S3)。
【0064】
画像形成装置1がシートSに画像を形成する場合、制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧Vg1になるように、第1ワイヤ電圧Vw1をワイヤ51Yに印加する。画像形成装置1がシートSに画像を形成する場合、制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧Vg1になるように、第1ワイヤ電圧Vw1を制御する。本実施形態では、第1グリッド電圧Vg1は、+750Vである。
【0065】
(3)ワイヤ電圧の印加停止
次に、制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧Vg1になっている状態で、上記した第1式に基づいて、第1ワイヤ電圧Vw1が閾値Vw(t)未満になった場合に(S4:YES)、ワイヤ51Yに対する第1ワイヤ電圧Vw1の印加を停止する(S5)。
【0066】
詳しくは、制御装置10は、グリッド電圧が第1グリッド電圧Vg1になっている状態で、10ミリ秒毎に、第1ワイヤ電圧Vw1の値を記憶し、記憶した第1ワイヤ電圧Vw1の値が15回連続で閾値Vw(t)未満になった場合に(S4:YES)、ワイヤ51Yに対する第1ワイヤ電圧Vw1の印加を停止する(S5)。
【0067】
次に、制御装置10は、ワイヤ51Yに対する第1ワイヤ電圧Vw1の印加を停止した場合、エラーを報知する(S6)。
【0068】
エラーを報知する方法は、限定されない。例えば、ローカルエリアネットワークを介して画像形成装置1に接続されるパーソナルコンピュータのモニタに、ワイヤ51Yのクリーニングを促すメッセージを表示することにより、エラーを報知してもよい。また、画像形成装置1に設けられるLEDを点灯させて、エラーを報知してもよい。
【0069】
なお、第1ワイヤ電圧Vw1が閾値Vw(t)以上である場合(S4:NO)、ジョブが残っていれば(S7:YES)、シートSに対する画像形成を継続する。
【0070】
一方、第1ワイヤ電圧Vw1が閾値Vw(t)以上であり(S4:NO)、ジョブが無くなった場合(S7:NO)、シートSに対する画像形成を終了するときに、ワイヤ51Yに対する第1ワイヤ電圧の印加を停止する(S8)。
【0071】
4.作用効果
(1)画像形成装置1によれば、第1式、すなわち、第1グリッド電圧の一次関数から、第1ワイヤ電圧の閾値を求める。
【0072】
そのため、閾値によって、第1グリッド電圧に対応する正常な第1ワイヤ電圧の範囲を定めることができる。
【0073】
その結果、スコロトロン型帯電器の異常放電を確実に検知できる。
【0074】
(2)画像形成装置1によれば、制御装置10は、クリーニングローラ11Yから感光ドラム4Yに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧をワイヤ51Yに印加する。
【0075】
これにより、クリーニングローラ11Yから感光ドラム4Yに廃トナーを戻すときに、第2ワイヤ電圧、および、第2グリッド電圧を利用して、第1式の比例定数および切片を設定できる。
【0076】
5.変形例
(1)第1式の切片は、オフセット値を含んでもよい。具体的には、切片は、以下の式により導き出されてもよい。
【0077】
切片=第2ワイヤ電圧-第1式の比例定数×第2グリッド電圧-オフセット値
第1式の切片がオフセット値を含むことにより、図7に破線で示すように、第1式を、領域A側にオフセットさせることができる。
【0078】
上記した実施形態のように、第1式の切片がオフセット値を含んでいない場合、第1ワイヤ電圧が閾値未満に低下しても、異常放電が発生していない可能性がある。第1式の切片がオフセット値を含んでいない場合、「第1ワイヤ電圧と閾値との差と異常放電の発生頻度は比例し、第1ワイヤ電圧と閾値との差が小さいほど、異常放電が発生しにくい。」ということが実験的にわかっている。
【0079】
そのため、上記した実施形態では、異常放電が発生していないにもかかわらず、制御装置10が、第1ワイヤ電圧が閾値を下回ったために異常放電が発生したとみなして、印刷を止めてしまう可能性がある。
【0080】
この点、第1式の切片がオフセット値を含むことにより、領域Aの中でも異常放電が発生する可能性が高いラインに、閾値を設定できる。
【0081】
そのため、異常放電が発生していないにもかかわらず印刷を止めてしまうことを、抑制できる。
【0082】
(2)第1式は、制御装置10によって設定されなくてもよい。第1式は、制御回路基板102のメモリに、予め記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
4Y 感光ドラム
5Y スコロトロン型帯電器
10 制御装置
11Y クリーニングローラ
51Y ワイヤ
52Y グリッド
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7