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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125938
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】映像投射装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20220822BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220822BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220822BHJP
   G02B 15/02 20060101ALI20220822BHJP
   G02B 15/08 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G02B27/02 Z
G03B21/00 D
G02B15/02
G02B15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023792
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】毛利 考宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
【テーマコード(参考)】
2H087
2H199
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA07
2H087LA30
2H087RA28
2H087RA42
2H087UA01
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA83
2K203FA62
2K203FA82
2K203GC12
2K203GC15
2K203GC20
2K203HA99
2K203HB12
2K203MA07
(57)【要約】
【課題】
簡素な手法で投射レンズの像面湾曲仕様を緩和可能な映像投射装置を提供する。
【解決手段】
映像光を生成する映像投射装置であって、映像を生成する表示部と、表示部で生成された映像を映像光として投射する投射レンズと、表示部と投射レンズ間の光路長を補正する光路長補正素子を備え、光路長補正素子を表示部と投射レンズの間に配置した構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光を生成する映像投射装置であって、
映像を生成する表示部と、
前記表示部で生成された映像を映像光として投射する投射レンズと、
前記表示部と前記投射レンズ間の光路長を補正する光路長補正素子を備え、
前記光路長補正素子を前記表示部と前記投射レンズの間に配置したことを特徴とする映像投射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像投射装置において、
前記光路長補正素子は、複数の領域によって分割されており、該複数の領域ごとに屈折率が異なっていることを特徴とする映像投射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の映像投射装置において、
前記光路長補正素子は、複数の領域によって分割されており、該複数の領域ごとに厚さが異なっていることを特徴とする映像投射装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の映像投射装置において、
前記複数の領域は、同心円状の領域であることを特徴とする映像投射装置。
【請求項5】
請求項2に記載の映像投射装置において、
前記光路長補正素子は、領域ごとに屈折率の異なるガラスや樹脂を接合した板であることを特徴とする映像投射装置。
【請求項6】
請求項3に記載の映像投射装置において、
前記光路長補正素子は、単一もしくは複数種のガラスや樹脂を用いた領域によって厚さが異なる形状を持つ板であることを特徴とする映像投射装置。
【請求項7】
請求項2または3に記載の映像投射装置において、
前記複数の領域の各領域内は均一な厚みを有することを特徴とする映像投射装置。
【請求項8】
請求項1に記載の映像投射装置において、
前記光路長補正素子は液晶であり、領域ごとに屈折率を変えることを特徴とする映像投射装置。
【請求項9】
請求項1に記載の映像投射装置において、
前記映像投射装置はヘッドマウントディスプレイであって、
さらに前記投射レンズによって投射された映像光を装着者の瞳孔に導く導光部を備えることを特徴とする映像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正素子を有した映像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像を投射する映像投射装置の一つとして、利用者が頭部に装着して利用するヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)が知られている。HMDは、画像パターンを表示する表示部と投射器と導光部の組合せによって映像を投射するものであって、利用者は映像の虚像を視覚により認識することにより、様々な情報を取得することができる。
【0003】
ここで、投射器に用いる投射レンズは、小型・軽量であることが求められる。また、映像表示装置の基本性能である画質も良好である必要があり、設計難易度が高い。特に、HMDのような、瞳複製を行う導光を使用するシステムでは無限遠投射となるため投射レンズの像面湾曲に対する要求が厳しくなる。
【0004】
本技術分野における先行技術として特許文献1がある。特許文献1では、入射光を生成する光源ユニットと、入射光を空間変調して画像を表わす出射光を生成する液晶パネルと、出射光を拡大投射して画像を表示するレンズユニットとを備えた液晶表示装置において、画像の歪の要因となるレンズユニットの収差を、液晶パネルを変形することで補正する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-70236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、液晶パネルの形状を変形させているが、液晶パネルを投射レンズに対して1対1で作成する必要があり、投射レンズとの組合せが限定されることから高価になるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、簡素な手法で投射レンズの像面湾曲仕様を緩和可能な映像投射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、映像光を生成する映像投射装置であって、映像を生成する表示部と、表示部で生成された映像を映像光として投射する投射レンズと、表示部と投射レンズ間の光路長を補正する光路長補正素子を備え、光路長補正素子を表示部と投射レンズの間に配置した構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡素な手法で投射レンズの像面湾曲仕様を緩和可能な映像投射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例におけるHMDの光学系の概略構成図である。
図2】投射器に用いる投射レンズの基本的な役割を説明する図である。
図3】投射レンズの像面湾曲を説明する図である。
図4】像面湾曲の影響を説明する図である。
図5】実施例における像面湾曲の補正を説明する図である。
図6】実施例における像面湾曲補正のための光路長補正素子を説明する図である。
図7】実施例における光路長補正素子として厚さが異なるガラスを用いた場合の像面湾曲補正を説明する図である。
図8】実施例における光路長補正素子の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、本実施例では、映像投射装置の1例としてHMDを用いて説明する。
【実施例0012】
図1は、本実施例におけるHMDの光学系の概略構成図である。図1において、映像表示部10は、光源部20と照明光学系30と表示部40からなる照明部50と、表示部40と投射器60なる投射部70と、導光部80を備えている。なお、表示部40は、照明部50と投射部70を兼ねている。また、照明部50にOLED(Organic light emitting diode)やMicroLED(Micro light emitting diode)を用いたような自発光パネルを使用するなどして光源部20や照明光学系30を省略しても良い。
【0013】
照明光学系30は、光源部20から出射した光を集光して表示部40を照明する。
【0014】
表示部40は、例えば、LCOS(Liquid crystal on silicon)や、DLP(Digital Light Processing)(登録商標)、OLED、MicroLED等であり、別途入力される映像信号に基づいて、照明光学系30で集光された光を変調、あるいは各画素を発光・消光して映像情報が重畳された映像光を生成する。
【0015】
投射器60は表示部40からの映像光を投射し、導光部80で映像光を装着者の瞳孔に導く。導光部は、映像光を複製して広げることで、装着者の装着位置ずれがあっても映像光が装着者の瞳孔に到達できるようにする。
【0016】
図2は、投射器に用いる投射レンズの基本的な役割を説明する図である。図2に示すように、表示部40の各画素からの光は、投射レンズ61によって定めた角度に投射され、定めた距離である結像面90に結像する。この定めた距離は無限遠であっても良いし、正負を問わず有限距離であっても良い。なお、図2においては、導光部80は省略している。
【0017】
図3は、投射レンズの像面湾曲を説明する図である。図3において、図2における結像面90側からあるべき光線状態を想定し、その光線が表示部40側で集光する位置を各像高に対して結んだ面を投射レンズの像面65、その像面65における凹凸や歪みを像面湾曲と言う。
【0018】
図4は、像面湾曲の影響を説明する図である。投射部で用いる表示部40の表示パネルは一般的には平面であり、従って図3に示した像面湾曲も、図4(a)に示したような、理想状態であるゼロ、すなわち完全な平面であることが望ましい。しかしながら、ウェアラブルデバイスとして求められる小型軽量という要求や、レンズ性能を評価する指標であるMTF(Modulation Transfer Function)などの要件、と同時に像面湾曲をゼロにすることは実質不可能であり、さらに像面湾曲を小さくすることも困難である。従って、図4(b)に示したような、像面湾曲がある程度存在する状態を許容せざるを得ない。
【0019】
特に、HMDにおける導光部によって瞳複製を行う投射レンズは、複製した瞳同士の観測者眼球への結像関係のずれが無いように映像投射距離を無限とすることが一般的であり、したがって投射レンズに対する像面湾曲仕様がより厳しい。また、投射レンズの設計にあたって、波長や物体側角度(像面側位置)の依存性を抑えつつ像面湾曲を減らす必要がある。
【0020】
そこで、本実施例では、像面湾曲の低減のみに特化した、領域ごとに表示部と投射レンズ間の光路長を補正する簡素な光路長補正素子を導入することで、安価に投射レンズに対する像面湾曲の要求仕様を緩和する。
【0021】
図5は、本実施例における像面湾曲の補正を説明する図である。図5において、表示部40と投射レンズ61との間に光路長補正素子63を配置する。光路長補正素子63は、領域ごとに表示部と投射レンズ間の光路長を変化させることで像面湾曲を補正する。すなわち、例えば図5において、補正前の像面65が投射レンズ61の周辺ほど光路長が長くなるように湾曲している場合は、投射レンズ61の周辺ほど光路長を短くし、中心ほど光路長を長くするように光路長補正素子63の周辺方向の領域ごとに光路長を変化させる。これにより、図5に示すように補正後の像面65の湾曲を低減することが出来る。
【0022】
なお、光路長補正素子の光路長を変化させる方法としては、図6(a)に示すように、領域によって屈折率を変える方法、図6(b)に示すように、領域によって厚さを変える方法がある。
【0023】
具体的には、ガラス等を透過することで光路長が伸びることを利用する。一般的な光学ガラスであれば、補正量は(屈折率n-1)*厚みLであり、屈折率は1.5程度であるので、厚みLの0.5倍程度伸びる。なお異方性(複屈折)は無いことが望ましい。またあらかじめ補正すべき光路長が判明しており製造公差や迷光等が使用条件を満たせる場合は、領域ごとに屈折率の異なるガラスや樹脂を接合した板、あるいは単一もしくは複数種のガラスや樹脂を用いた領域によって厚さが異なる形状を持つ板でも良い。
【0024】
また、液晶等の屈折率可変材料を用いても良く、領域ごとに屈折率を変えることで対応が可能である。また、その場合は、後から屈折率を変化させられるので、出荷時に調整することができるようになる。
【0025】
図7は、光路長補正素子として厚さが異なるガラスを用いた場合の像面湾曲補正を説明する図である。図7において、(a)に示すように、補正前の像面65が、投射レンズ61の周辺ほど光路長が短く、中心ほど光路長が長いために湾曲している場合は、光路長補正素子63として、(b)に示すように、周辺ほど厚くして光路長を長くし、中心ほど薄くして光路長を短くするようにして、白抜き矢印で示したように、光路長を伸ばす量で調整することで像面湾曲を低減できる。
【0026】
なお、光路長補正素子の領域分割については、最も単純なケースでは、投射レンズの設計に応じて同心円状の領域分割が望ましい。また、投射レンズの個体ばらつきや、光路長補正素子と投射レンズの相対位置ばらつきを考慮する場合は、液晶などの補正量を可変させられる素子で、必要最低限より多めに領域分割しておくことが望ましい。
【0027】
また、光路長補正素子の形状は、像面湾曲のみを補正する場合、一つの画素からの光に対して均一に効果を与えたいので、各分割領域内では均一な厚みであることが望ましい。ただし、領域分割における領域境界は性能低下が避けられない。境界近辺は均一さを諦めて連続的に変化させるか、どちらを取るかは他条件を加味して設計する必要がある。
【0028】
また、あらかじめ収差が判明しており製造公差や迷光等が使用条件を満たせる場合は、領域ごとに異なる面形状を持っていても良いが、条件を満たす難易度やコストが高くなることが想定される。
【0029】
図8は、光路長補正素子の配置を説明する図である。図8に示すように、表示部40の各画素からの光は表示部40から離れるに従って広がるので、表示部40から遠ざかるほど光の重なりが増える。そのため、光路長補正素子63を表示部40に近い位置(a)と遠い位置(b)に置いた場合では、遠い位置(b)に置いた場合のほうが光の重なりが増え不利となる。従って、表示部直近が望ましい。さらには、表示部と一体化されて画素直上にあることが望ましい。特に表示部がLCOSであれば補正用液晶をパネルに積層させることができ相性が良い。
【0030】
また、光の広がりを考えると光路長補正素子の厚みとしてはできるだけ薄い方が望ましい。そのため、屈折率差を大きく取るためには、厚みの差で補正量を変える場合は、光路長補正素子の屈折率が高いほど良い。また、屈折率差で補正量を変える場合は、屈折率変化量が大きいほど良い。
【0031】
また、光路長補正素子の補正量は、投射レンズの個体差や、光路長補正素子の位置と投射レンズ位置の相対ずれを考慮して、液晶などを用いた補正量が調整できる素子を採用し、これら表示部、光路長補正素子、投射レンズを搭載する製品の組み立て時に画像の表示状態が最適となるよう調整することが望ましい。補正量の初期値は投射部、導光部の設計に応じてあらかじめ設定しておくことが考えられる。
【0032】
また、投射する映像を検出して随時、像面湾曲を補正することも考えられるが、検出系や制御のコスト等上昇を考慮する必要がある。
【0033】
また、ガラスや樹脂を用いた板の場合は、投射部、導光部の設計に応じて材料や形状の設計が必要である。
【0034】
また、映像投射距離を可変させるシステムにおいては、あらかじめ設計もしくは組み立て時の測定にて像面湾曲の補正量を記録しておき、投射距離に応じて適した像面湾曲の補正量を適用することが考えられる。
【0035】
また、像面湾曲の補正量が大きく取れる場合は、光路長補正素子全域の補正量にオフセットを加減することで、温度変化などによって生じるデフォーカスを補正することが可能である。この場合、後から屈折率が変更できる液晶等を材料として採用する必要がある。
【0036】
また、光路長補正素子のエリア分割数を増やし、制御量を細かく調整することで像面湾曲以外の収差補正も可能ではあるが、光路長補正素子や制御のコスト・サイズ・消費電力上昇や、エリア境界の開口率や回折などの悪影響が懸念されるため、注意深い選定が必要である。
【0037】
以上のように、本実施例によれば、像面湾曲の低減のみに特化した、領域ごとに光路長を補正する簡素な光路長補正素子を導入することで、安価に投射レンズの像面湾曲の要求仕様を緩和可能な映像投射装置を提供できる。これにより、投射レンズに対してより大きい像面湾曲を許容できることとなり、投射レンズの設計上の優先仕様をMTFなど他の仕様項目に振り分けることができる。また、補正の対象として出荷時の像面湾曲のみに絞ることを想定し、極力簡便な構成とすることで、システム全体でも小型・軽量などに注力することが可能になる。
【0038】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例では、映像投射装置としてHMDを例に説明したが、焦点距離が有限であるプロジェクタや、HUD(Head Up Display)、瞳複製を行わないHMDでも摘要可能である。また、スクリーンに投射するシステムも含め、映像の投射距離を変化させるシステムにも摘要可能である。また、投射系ではなく撮像系でも摘要可能である。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10:映像表示部、20:光源部、30:照明光学系、40:表示部、50:照明部、60:投射器、61:投射レンズ、63:光路長補正素子、65:像面、70:投射部、80:導光部、90:結像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8