(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125944
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造、ティース内径接続型ステータコア、および回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20220822BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220822BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H02K1/16 C
H02K21/14 M
H02K1/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023800
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】北原 寿久
(72)【発明者】
【氏名】小久江 幸二
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601AA29
5H601BB01
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB23
5H601GB32
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC22
5H601GD02
5H601GD18
5H621AA02
5H621GA01
5H621HH01
5H621PP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】隣接するティースがその内径側において接続している形態のステータコアを有する回転機において、リングマグネットを用いつつ、かつ、ティースの構造を複雑化することなくコギングトルクおよびトルクリップルを低減することのできる方式を提供すること。
【解決手段】リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造10は、隣接するティース2がその内径側において接続している形態のステータコア7(ティース内径接続型ステータコア)と、ステータコア7の内径と同心円の外径を有するリングマグネット8をロータに備えた回転機におけるコギングトルク低減構造10であり、ティース2は径方向に形成された本体3、本体3の内径側に設けられた内径側端部4からなり、内径側端部4とリングマグネット8外周部とのギャップ5が内径側端部4全体に亘って変化する形態にて内径側端部4が形成されている構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するティースがその内径側において接続している形態のステータコア(以下「ティース内径接続型ステータコア」という)と、
該ステータコアの内径と同心円の外径を有するリングマグネットをロータに備えた回転機におけるコギングトルク低減構造であって、
該ティースは径方向に形成された本体と、該本体の内径側に設けられた内径側(がわ)端部とからなり、
該内径側端部と該リングマグネット外周部との間の距離(以下「ギャップ」という)が該内径側端部全体に亘って変化する形態(以下「ギャップ変化用形態」という)にて該内径側端部が形成されていることを特徴とする、リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
【請求項2】
前記ギャップ変化用形態が直線であることを特徴とする、請求項1に記載のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
【請求項3】
前記ギャップ変化用形態が前記リングマグネットの外周よりも曲率の小さい円弧であることを特徴とする、請求項1に記載のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれかに記載のコギングトルク低減構造を備えていることを特徴とする、ティース内径接続型ステータコア。
【請求項5】
請求項4に記載のティース内径接続型ステータコアを備えていることを特徴とする、回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造、ティース内径接続型ステータコア、および回転機に係り、ティース内径接続型ステータコアを有する回転機において、ステータコア内径と同心円外径となるマグネットを使用する場合のコギングトルクを低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機のマグネットとしては、セグメントタイプのマグネット、およびリングマグネットの2種類がある。前者セグメントタイプがより一般的ではあるが、たとえば8極の回転機では少なくとも8枚のマグネットの貼り付けを要するなど、極数分の枚数を軸に貼る必要がある。一方、後者リングマグネットでは、1つのリング状のマグネットを軸へ貼り付けるだけでよい。すなわち工数を少なくできるという、製造工程上の利点がある。
【0003】
図5は、従来のリングマグネット具備回転機のティース形状を示す平面視説明図である。本回転機は、隣接するティースがその内径側において接続し一体化している、内径接続型ステータコアを有する回転機である。図示するようにリングマグネット具備回転機においては、リングマグネット58外径とステータコア57内径とは同心円にて形成されている。すなわち、ヨーク56に向かい径方向に形成された本体53とその内径側に設けられた内径側端部54とからなるティース52の、当該内径側端部54は、リングマグネット58の外形をなす円と同心円に形成されており、したがって、ステータコア57内径側とリングマグネット58との間のギャップ55は一様に形成されている。なお
図6は、
図5に係るコギングトルク低減構造における磁束密度図である。
【0004】
回転機のコギングトルク軽減技術については従来、特許出願もなされている。たとえば後掲特許文献1には、固定子鉄心に第1、第2という2種類の形状のティースを交互に設け、第1ティースのティースヘッドの回転子永久磁石と対向する側の面の形状は、回転子の回転中心を中心とする円弧状に形成し、第2ティースのティースヘッドの回転子永久磁石と対向する側の面の形状は、周方向の中央部の径方向の位置は第1ティースのティースヘッドと同じ位置で、その周方向中央部から周方向の両端部に向かうに従って滑らかに回転子永久磁石から遠ざかる形状となるように形成する構成が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、ティースはマグネットとの間のギャップがティース中央から端部に向けて逐次増加するよう形成し、一方マグネットは、主磁極部とそこから電機子の回転方向側に延出形成された延長部とからなる構成とすることで、延長部の開始点近傍には磁束密度が極小値となる磁束極小部が形成され、そこを起点とした延長部における磁束密度の変化によってリアクタンス電圧を打ち消す誘起電圧が発生せしめるという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-178298号公報「永久磁石形モータの固定子鉄心及び永久磁石形モータ」
【特許文献2】特開2003-189573号公報「直流モータ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5等に示したように従来のティース内径接続型ステータコアを有するリングマグネット具備回転機では、ティース内径側端部54からなるステータコア57内径とリングマグネット58外径との間のギャップ55が一様となるが、これによってステータから見たギャップ磁束密度変化は矩形波、台形波などの波形となり、正弦波ではなくなってしまう。ギャップ磁束密度変化が正弦波ではない場合、コギングトルクおよびトルクリップルが増大するという問題がある。
【0008】
しかし、上記文献2のようにマグネットを単純なリングマグネットではない複雑な形態にする方式を採ることなく、また文献1のように2種類の形状のティースを備えるという複雑な構成も採ることなく、かかる問題を解決することが求められる。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、隣接するティースがその内径側において接続している形態のステータコア(ティース内径接続型ステータコア)を有する回転機において、製造工程上の工数を軽減できる利点を有するリングマグネットを用いつつ、かつ、ティースの構造を複雑化することなくコギングトルクおよびトルクリップルを低減することのできる方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、ステータ内径すなわちティース内径側端部から形成される内径を、ロータ外径すなわちリングマグネット外径よりも大きくすること、換言すれば前者内径の曲率を後者外径の曲率よりも小さくすること、あるいはティース内径側端部をストレート状にすることによって、磁束密度の変化を正弦波状態に近づけられることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕 隣接するティースがその内径側において接続している形態のステータコア(ティース内径接続型ステータコア)と、該ステータコアの内径と同心円の外径を有するリングマグネットをロータに備えた回転機におけるコギングトルク低減構造であって、該ティースは径方向に形成された本体と、該本体の内径側に設けられた内径側(がわ)端部とからなり、該内径側端部と該リングマグネット外周部との間の距離(ギャップ)が該内径側端部全体に亘って変化する形態(ギャップ変化用形態)にて該内径側端部が形成されていることを特徴とする、リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
〔2〕 前記ギャップ変化用形態が直線であることを特徴とする、〔1〕に記載のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
〔3〕 前記ギャップ変化用形態が前記リングマグネットの外周よりも曲率の小さい円弧であることを特徴とする、〔1〕に記載のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造。
〔4〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載のコギングトルク低減構造を備えていることを特徴とする、ティース内径接続型ステータコア。
〔5〕 〔4〕に記載のティース内径接続型ステータコアを備えていることを特徴とする、回転機。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造、ティース内径接続型ステータコア、および回転機は上述のように構成されるため、これらによれば、製造工程上の工数を軽減できるという生産性上の利点を有するリングマグネットを用いつつ、かつ、ティース等の構造を複雑化することなく、簡便な構造によって、磁束密度の変化を正弦波状態に近づけることができ、コギングトルクおよびトルクリップルを低減することができる。
【0013】
本発明によれば、着磁波形が矩形波となるステータ内径と同心円構造となるマグネットを用いた回転機であっても、正弦波上のギャップ磁束密度変化を得ることができ、コギングトルクおよびトルクリップルの低減が可能となることで、回転機特性を改善ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造の構成を示す平面視説明図である。
【
図2】
図1に係るコギングトルク低減構造における磁束密度図である。
【
図3】
図1に係る本発明コギングトルク低減構造、および
図5に係る従来技術それぞれのコギング解析グラフである。
【
図4】本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造の別の構成を示す平面視説明図である。
【
図5】従来のリングマグネット具備回転機のティース形状を示す平面視説明図である。
【
図6】
図5に係るコギングトルク低減構造における磁束密度図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造の構成を示す平面視説明図である。また、
図2は、
図1に係るコギングトルク低減構造における磁束密度図、
図3は、
図1に係る本発明コギングトルク低減構造、および
図5に係る従来技術それぞれのコギング解析グラフである。
図1に示すように本リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造10は、隣接するティース2、2がその内径側において接続している形態のステータコア7(ティース内径接続型ステータコア)と、ステータコア7の内径と同心円の外径を有するリングマグネット8をロータに備えた回転機におけるコギングトルク低減構造10であって、ティース2は径方向に形成された本体(巻線部)3と、本体3の内径側に設けられた内径側端部4とからなり、内径側端部4とリングマグネット8外周部との間の距離(ギャップ)5が内径側端部4全体に亘って変化する形態(ギャップ変化用形態)にて内径側端部4が形成されていることを、を主たる構成とする。
【0016】
なお、
図2に示すように、隣接するティース2、2同士の内径側端部4、4間において、磁気飽和エリアは従来技術に係る前掲
図6と同様に、十分に確保されている。
【0017】
かかる構成の本発明コギングトルク低減構造10によれば、ティース2の内径側端部4がギャップ変化用形態によって形成されているため、リングマグネット8外周部との間のギャップ5は、前掲
図5等で示した従来技術とは異なって一様にはならない。したがって
図3に示すように、本発明コギングトルク低減構造10では磁束密度の変化を正弦波状態に近づけることができ、コギングトルクおよびトルクリップルを低減することができる。
【0018】
図1に示すように本発明に係るギャップ変化用形態は、直線状とすることができる。つまり、全てのティース2、2、・・・の内径側端部4の形状は直線に統一されるため、全てのティース2、2、・・・は同一形状であり、前掲文献のような複雑さがなく簡単であり、製造工程上も利点があるといえる。そして、かかる簡単な構造によって、本発明は上述の課題を有効に解決することができる。
【0019】
図4は、本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造の別の構成を示す平面視説明図である。また、
図4-2は
図4の要部拡大図である。本例コギングトルク低減構造210に示すようにギャップ変化用形態は、リングマグネット28の外周よりも曲率の小さい円弧としてもよい。つまり、ステータ27内径すなわちティース22内径側端部24から形成される内径を、ロータ外径すなわちリングマグネット28外径よりも大きくする構造である。
【0020】
本例においても、全てのティース22、22、・・・の内径側端部24の形状は所定の曲率の円弧に統一されるため、全てのティース22、22、・・・は同一形状であり、前掲文献のような複雑さがなく簡単であり、製造工程上も利点があるといえる。そして、かかる簡単な構造によって、本発明は上述の課題を有効に解決することができる。
【0021】
また、以上説明したコギングトルク低減構造を備えているティース内径接続型ステータコア7等、およびかかるティース内径接続型ステータコア7等を備えている回転機も、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のリングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造、ティース内径接続型ステータコア、および回転機によれば、生産性上の利点を有するリングマグネット使用を維持しつつ、簡便な構造によって磁束密度の変化を正弦波状態に近づけ、コギングトルクおよびトルクリップルを低減することができる。したがって、ACサーボモータなどステータコア内径と同心円外径マグネット構造をなす回転機の製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0023】
2、22…ティース
3、23…(ティースの)本体(巻線部)
4、24…(ティースの)内径側端部
5、25…内径側端部とリングマグネット外周部との間の距離(ギャップ)
6、26…ヨーク
7、27…ステータコア
8、28…リングマグネット
10、210…リングマグネット具備回転機のコギングトルク低減構造
(以下は従来技術に係る符号)
52…ティース
53…(ティースの)本体(巻線部)
54…(ティースの)内径側端部
55…ギャップ
56…ヨーク
57…ステータコア
58…リングマグネット