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  • 特開-化粧料塗布体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012596
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】化粧料塗布体
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A45D34/04 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114539
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末次 祥子
(57)【要約】
【課題】塗布の境界部位や、例えば口角、目じり等の細かい部位をきれいに仕上げることができ、塗布部へのタッチも柔らかすぎず硬すぎず、化粧料もよく伸ばすことができる使用性の良い化粧料塗布体の提供。
【解決手段】固定部と、該固定部より棒状に延伸する基部と、該基部よりさらに縮径しながら延伸するテーパー部とを備え、該基部の側面から該テーパー部の反対側の側面にかけて、斜めに切り欠いた形状に形成した塗布面を備えた化粧料用塗布体。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、該固定部より棒状に延伸する基部と、該基部よりさらに縮径しながら延伸するテーパー部とを備え、該基部の側面から該テーパー部の反対側の側面にかけて、斜めに切り欠いた形状に形成した塗布面を備えた化粧料用塗布体。
【請求項2】
塗布体の先端部が、前記基部の軸線の延長線に対して前記塗布面と反対側の側面方向に偏倚していることを特徴とする請求項1に記載の化粧料塗布体。
【請求項3】
鉛直方向に対する前記塗布面の傾斜角度は8~20°の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料塗布体。
【請求項4】
塗布体の先端部の曲率半径は、正面視で0.2~0.9mmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧料塗布体。
【請求項5】
塗布体の塗布面とテーパー部の傾斜面との間の角度は、側面視で15~35°の範囲であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧料塗布体。
【請求項6】
前記塗布面の輪郭線は、基部側では略U字状に形成され、テーパー部側では先端部付近が円弧状に屈曲する略V字状に形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化粧料塗布体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料塗布具に取り付けられ、化粧料を皮膚に塗布するための化粧料塗布体に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料塗布具を備えた容器は、直接手で化粧料を取って塗布することなく皮膚上に塗布できるため便利に使用されており、塗布体の塗布面は化粧料を適量塗布して美しく仕上げができるように形状や材質が工夫されている。
【0003】
塗布体の塗布面は、唇、瞼、眉、頬、鼻など顔面のいろいろな場所で細かいところを塗布する場合が多い。そこで、かかる細かい塗布作業に好適な塗布体として、特許文献1には塗布部を薄肉状としたものが、特許文献2、3には先端両側が斜めに切り欠いた形状の塗布体が、それぞれ開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのものは、先端部の幅が広くて細かい作業に適していなかったり(特許文献1、3)、あるいは薄肉状のため塗布体自体の剛性が不足し(特許文献1、2)、手からの力を適切に塗布体の先端まで伝えることが難しかったり、化粧料を思ったように伸ばすことができずよれることがあったりするなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-094892
【特許文献2】特許第3811458号
【特許文献3】実用新案登録第3174060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、従来の化粧料塗布体のかかる欠点を克服し、塗布の境界部位や、例えば口角、目じり等の細かい部位をきれいに仕上げることができ、塗布部へのタッチも柔らかすぎず硬すぎず、化粧料もよく伸ばすことができる使用性の良い化粧料塗布体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、固定部と、該固定部より棒状に延伸する基部と、該基部よりさらに縮径しながら延伸するテーパー部とを備え、該基部の側面から該テーパー部の反対側の側面にかけて、斜めに切り欠いた形状に形成した塗布面を備えた化粧料用塗布体である。
【0008】
また本発明は、塗布体の先端部が、前記基部の軸線の延長線に対して塗布面と反対側の側面方向に偏倚していることを特徴とする化粧料塗布体である。
【0009】
また、本発明は、鉛直方向に対する前記塗布面の傾斜角度は、好ましくは8~20°、更に好ましくは10~20°の範囲であることを特徴とする化粧料塗布体である。
【0010】
また、本発明は、塗布体の先端部の曲率半径は、正面視で0.2~0.9mmの範囲であることを特徴とする化粧料塗布体である。
【0011】
また、本発明は、塗布体の塗布面とテーパー部の傾斜面との間の角度は、側面視で15~35°の範囲であることを特徴とする化粧料塗布体である。
【0012】
さらに、本発明は、前記塗布面の輪郭線は、基部側では略U字状に形成され、テーパー部側では先端部付近が円弧状に屈曲する略V字状に形成されている化粧料塗布体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる化粧料塗布体は、基部とテーパー部の両方にまたがって塗布面を形成することにより、十分な量の化粧料を塗布可能な塗布面の面積を確保することができるとともに、先端側をテーパー部とした上で斜めに切り欠いた形状とすることにより、先端部が細かい作業に適した細さや尖り具合となるため、繊細な塗布作業が必要な仕上げなどを適切に行うことができる。
【0014】
また、本発明にかかる化粧料塗布体は、先端側をテーパー部とした上で斜めに切り欠いた形状とすることにより、先端部付近の剛性を維持するために必要な厚みを確保することができ、これにより、塗布時に先端部まで手の力を適切に伝えることができ、化粧料も適切に伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明に係る化粧料塗布体の平面図、(b)同背面図、(c)同正面図、(d)同側面図、(e)同底面図。
図2】本発明に係る化粧料塗布体を備えた化粧料容器及び化粧料塗布具の正面およびその断面構造を表した部分断面図。
図3】(a)本発明に係る化粧料塗布体の異なる実施態様の正面図、(b)同側面図。
図4】(a)本発明に係る化粧料塗布体の異なる実施態様の正面図、(b)同側面図。
図5】(a)本発明に係る化粧料塗布体の異なる実施態様の正面図、(b)同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の化粧料塗布具の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0017】
本発明の化粧料塗布体は、図2に示すように、化粧料容器の容器本体4に冠着可能な蓋部3より垂設されている支持軸2の先端に取り付けられている。本実施態様の化粧料容器は、容器本体4の頸部内にしごき部41を備え、これにより塗布体1についた余分な化粧料をしごき落とすタイプのものであるが、化粧料容器の態様については、これに限定されない。さらに、本発明の化粧料塗布体は、支持軸2を介して蓋部3に取り付けられているものに限らず、別途設けた把持部に固定部11を取り付けて独立した塗布体としたり、固定部を直接把持部として独立した塗布体として使用してもよい。以下、本発明の塗布体1について詳述する。
【0018】
図1に示すように、本発明の塗布体1は、支持軸2に取り付け可能に形成された固定部11と、該固定部11より延伸する基部12と、該基部12よりさらに延伸するテーパー部13とを備える。
【0019】
固定部11は、支持軸2の先端より開口形成された孔部21へと挿嵌可能なサイズの円柱状に形成されているが、塗布体1を支持軸2に固定されることができれば、その固定方法は挿嵌に限定されない。
【0020】
固定部11の先端からは、棒状の基部12が延設されている。本実施態様の基部12は、塗布面14を形成するために斜めに切り欠いた部分を考慮しなければ円柱状に形成されているが、形状はこれに限らず、図3~5に示すように、楕円柱状や、六角柱状などのその他の多角形柱状としてもよい。なお、図4、5のものは、ともに基部12が六角柱状であるが、その頂角の位置が周方向に約30°ずれて形成されている。
【0021】
基部12の先端には先細りするように縮径するテーパー部13が延設されている。本実施態様のテーパー部13は、斜めに切り欠いた部分を考慮しなければ円錐状に形成されているが、形状はこれに限らず、図3に示すように、楕円錐状としてもよい。
【0022】
すなわち、本発明の塗布体1は、斜めに切り欠いた部分を考慮しなければ、基部12とテーパー部13を併せて鉛筆状に形成されている。ここで「鉛筆状」とは、同じ径に形成された円柱状もしくは多角形柱状の基部12の上に縮径するテーパー部13が延設されており、そのテーパー部13の傾斜面に沿った輪郭形状が直線状になるように形成されていることを意味する。そして、かかる形状の基部12の側面からテーパー部13の反対側の側面にかけて、斜めに切り欠いたときに形成される切り口が塗布面14を構成する。ここで「反対側の側面」とは、基部12の側面の任意の部分に対して裏側にあたる基部12の側面の下方に位置するテーパー部13の傾斜面を意味する。ここで「斜めに切り欠いた」とは、最終的に斜めに切り欠いた形状に形成されていれば、製造工程上必ずしも切り欠いて形成する必要はなく、一般的な射出成形などその他の製造方法を利用しても良い。
【0023】
このように、塗布体1は基部12の正面側面121からテーパー部13の背面側面131にかけて、斜めに切り欠いた形状に形成され、その切り口に相当する部分の塗布面14は、基部12とテーパー部13の両方にまたがって連続する傾斜面を形成している。かかる塗布面14の輪郭線は、正面視で基部12側では、全体的に緩やかな放物線の略U字状に形成されているのに対し、テーパー部13側では、塗布体1の先端部15付近は円弧状に屈曲する略V字状に形成されている。かかる塗布面14の形状により、基部12側では十分な化粧料を保持することができるとともに、よりシャープな形状のテーパー部13側では細かい部分へ適切に塗布することができる。
【0024】
さらに、本実施態様では、基部12の軸線の延長線が塗布面14と互いに交わるように形成されている。さらに、塗布体1の先端部15が、基部12の軸線の延長線に対して塗布面14とは反対側の背面側面131方向に偏倚するように形成されている。なお、先端部15は、斜めに切り欠いたときの切りっぱなしの形状よりもやや角を丸めて円弧状になるように形成することが好ましい。
【0025】
塗布体1の先端部15の位置は、塗布面14の傾斜角度や先端部15の円弧の曲率に影響を及ぼす要素であり、本実施態様のように、基部12の軸線の延長線に対して塗布面14とは反対側の背面側面131方向に偏倚するように形成することにより、塗布面14の傾斜角度や先端部15の円弧の曲率が最適なものとなるため、好ましい。
【0026】
鉛直方向に対する塗布面14の傾斜角度θ1は好ましくは8~20°、更に好ましくは10~20°の範囲である。また、先端部15の曲率半径Rは、正面視で好ましくは0.2~0.8mm、更に好ましくは0.4~0.6mmの範囲である。さらに、塗布面14とテーパー部13の傾斜面との間の角度θ2は、好ましくは15~35°、更に好ましくは20~30°の範囲である。なお、ここで「テーパー部13の傾斜面」とは、塗布面14とは反対側の背面側面131を意味する。
【0027】
以上のように、基部12とテーパー部13の両方にまたがって塗布面14を形成し、さらに、塗布面14の傾斜角度と先端部15の曲率半径を上記の通り設定することにより、十分な量の化粧料を塗布可能な塗布面14の面積を確保することができる。なお、本実施態様の塗布面14は平坦な面に形成されているが、必ずしも完全な平坦に形成する必要はなく、多少凹面や凸面となっていてもよい。
【0028】
また、先端側をテーパー部13とした上で斜めに切り欠いた形状とすることにより、先端部15が細かい作業に適した細さや尖り具合となるため、繊細な作業が必要な仕上げなどは先端部15で適切に行うことができる。
【0029】
さらに、先端側をテーパー部13とした上で斜めに切り欠いた形状とすることにより、先端部15付近の剛性を維持するために必要な厚みを確保することができ、これにより、塗布時に先端部15まで手の力を適切に伝えることができ、化粧料も適切に伸ばすことができる。
【0030】
本発明の塗布体1は、 一般的な化粧料用塗布体に使用されるものであれば特にその素材は限定されないが、硬度の高いTPE、TPU(熱可塑性エラストマー)などの熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクロルニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルブタジエンゴム、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリイソプレン、シリコンゴム等のプラスチックやゴム類、更に、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系、ポリカーボネート系等のエラストマーを使用することができる。ポリエステル系のエラストマーとしては、例えば、ハイトレル(登録商標)G3548L、ペルプレン(登録商標)P30B、ペルプレン(登録商標)P40B、ウレタン系のエラストマーとしては、例えば、東洋紡ウレタン(登録商標)E-3090A、東洋紡ウレタン(登録商標)E-3070A、パンデックス(登録商標)T-8190、オレフィン系のエラストマーとしては、例えば、サーリンク(登録商標)3170、ポリカーボネート系のエラストマーとしては、例えば、パンデックス(登録商標)T―9290を利用することができる。
【0031】
また、塗布体1全体もしくはその一部にはフロッキー処理を施すことにより塗布体1に対する化粧料の付着量が増えたり、塗布部への感触が変化したりして好ましい。また、繊維の長さを部分的に変えても良く、例えば、塗布面14に施された繊維の長さと、基部12とテーパー部13に施された繊維の長さが互いに異なるようにしてもよい。塗布体上への化粧料の付着量を少ないものから多いものまでより広範囲で設定することができるとともに、塗布しやすさも向上する。フロッキー処理用の繊維として、使用可能なものであれば特に限定されないが、例としてはナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプチレンテフタレート等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再生繊維、羊毛、絹、綿、麻等の天然繊維等が挙げられる。または、天然海綿、コットンスポンジ等の微細粒子を用いることもできる。繊維の形状としては、長さ0.5~2mm、太さ0.01~0.1mmのものが好ましく、さらに好ましくは、長さ0.5~1.5mm、太さ0.01~0.06mmである。
【0032】
本発明の化粧料塗布体は、例えば、液状化粧料、油性化粧料、粉体化粧料等に使用することができ、その中でも唇用化粧料(口紅、リップグロス)、コンシーラー、アイブロー、アイカラー、アイライナー等の部分的に使用するアイテムに好適に利用することができる。更に、蓋部に直接連結して用いる液状化粧料が更に好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 … … 塗布体
2 … … 支持軸
3 … … 蓋部
4 … … 容器本体
11 … … 固定部
12 … … 基部
13 … … テーパー部
14 … … 塗布面
15 … … 先端部
21 … … 孔部
41 … … しごき部
121 … … 正面側面
131 … … 背面側面
θ1 … … 塗布面の傾斜角度
θ2 … … 塗布面とテーパー部の傾斜面との間の傾斜角度
R … … 先端部の曲率半径(正面視)
図1
図2
図3
図4
図5