(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125968
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】外部制御ユニットを係止するデバイスを備える時計
(51)【国際特許分類】
G04B 3/04 20060101AFI20220822BHJP
G04B 19/28 20060101ALI20220822BHJP
G04B 37/10 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G04B3/04 G
G04B19/28 B
G04B37/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022005437
(22)【出願日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】21157706.9
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21158506.2
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・レッチャー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・プランシュレル
(57)【要約】
【課題】外部制御ユニットを係止するデバイスを備える時計を提供すること。
【解決手段】時計は、径方向に移動可能なプッシュピース(8)を備えるケース(6)と、このプッシュピースを係止するデバイス(14)とを備え、この係止デバイスは、係止部材(16)を備え、係止部材(16)は、ケースの中心軸回りに回転可能に組み付けられ、係止位置と非係止位置との間で作動できるように構成され、係止位置では、プッシュピースは、係止デバイスによって停止又は遮断され、この制御部材の作動によって該機能を起動できないようにし、非係止位置では、プッシュピースは、解放され、該径方向で作動することができ、該機能を起動可能にする。時計は、回転ベゼル(20)を更に備え、この回転ベゼル及び係止部材は同軸であり、それぞれ、ユーザが、互いから独立して回転可能に作動できるように構成される。したがって、回転ベゼルは、係止機能から独立しており、したがって、クロノグラフ機構専用であり、特に、潜水に有用とし得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測時器ムーブメント(4)と、前記測時器ムーブメントを組み込むケース(6)とを備え、前記測時器ムーブメントの機能を起動可能にする制御部材(8、9、10)を備える時計(2)であって、前記制御部材は、径方向(12、13)で移動可能であり、前記ケースの外側からユーザが作動することができ、前記ケースは、前記制御部材を係止するデバイス(14)を更に備え、前記係止デバイスは、係止部材(16)を備え、前記係止部材(16)は、前記ケースの中心軸(18)回りに回転可能に組み付け、前記時計のユーザが、少なくとも1つの角度係止位置(α1)と少なくとも1つの角度非係止位置(α2)との間で作動できるように構成し、前記少なくとも1つの角度係止位置(α1)では、前記制御部材を前記係止デバイスによって停止又は遮断し、前記機能を前記径方向で前記制御部材の作動によって起動できないようにし、前記少なくとも1つの角度非係止位置(α2)では、前記制御部材を解放し、前記径方向で作動させることができ、前記機能を起動可能にする、時計(2)において、前記時計は、前記中心軸回りに回転するベゼル(20)を更に備え、したがって、前記回転ベゼル及び前記係止部材は同軸であり、前記回転ベゼル及び前記係止部材は、それぞれ、ユーザが、互いから独立して回転可能に作動できるように構成することを特徴とする、時計(2)。
【請求項2】
前記係止部材は、環状部品(22)を備え、前記環状部品(22)は、前記中心軸(18)を中心とし、前記回転ベゼル(20)と、前記回転ベゼルを支持する中間部品(40)との間に配置することを特徴とする、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記回転ベゼル(20)は、前記回転ベゼルの角度を位置決めするラチェットばね(28)に関連付けた内歯(26)を備え、前記内歯は、前記係止部材(16)の内側の円筒形空間内、特に前記係止部材(16)の環状部品(22)内に位置することを特徴とする、請求項2に記載の時計。
【請求項4】
前記時計は、前記回転ベゼル(20)及び前記係止部材の前記環状部品(22)によって画定した環状空洞内に配置した環状スペーサ(30)を備え、前記環状スペーサは、前記回転ベゼルの下面(32)又は前記環状部品の上面(34)と接触する少なくとも1つの摺動面を有し、前記摺動面は、前記下面及び前記上面のそれぞれとの摩擦係数が低いことを特徴とする、請求項2又は3に記載の時計。
【請求項5】
前記係止部材(16)は、把持要素(36)を備え、前記把持要素(36)は、前記環状部品(22)と一体であり、前記ケースの前記中間部品(40)の外側に位置し、ユーザが前記把持要素(36)を把持するのを可能にし、前記係止部材を少なくとも前記角度係止位置(α1)と前記角度非係止位置(α2)との間で回転できるようにすることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の時計。
【請求項6】
前記把持要素(36)は、「12時間」の時回転上で、「12時」の位置(0°)から時計回り方向で計算した220°から290°の間に含まれる環状区分内に位置することを特徴とする、請求項5に記載の時計。
【請求項7】
前記係止部材(16)は、下側部品(44)を備え、前記下側部品(44)は、特に、空の領域によって隔てられるいくつかの環状区分から形成し、前記環状区分は、前記環状部品(22)と一体であるか又は前記環状部品(22)によって形成し、前記下側部品は、360°未満である角度領域内に全体的に延在し、径方向に並進移動可能な前記制御部材の部品(50)のための停止部を形成する外側横面(46)を有し、前記下側部品(44)は、前記係止部材が前記角度係止位置(α1)にある際、前記径方向で前記制御部材を停止又は遮断し、したがって、前記機能の起動を防止するように構成し、前記係止部材が前記角度非係止位置(α2)にある際、前記径方向で前記制御部材の移動を自由にすることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の時計。
【請求項8】
前記径方向に並進移動可能な部品は、前記制御部材の本体(52)の上に隆起する上側突起部品(50)であり、前記上側突起部品(50)は、前記本体(52)に締結、特に螺締し、前記本体は、前記ケースの前記中間部品(40)から突出し、前記径方向(12)に沿って摺動するように前記中間部品内に配置し、前記上側突起部品は、前記係止部材の前記下側部品に配置し、前記中間部品の内側に位置する空洞内に収容することを特徴とする、請求項7に記載の時計。
【請求項9】
前記測時器ムーブメント(4)は、クロノグラフ機構を備え、前記機能は、前記クロノグラフ機構の「クロノグラフ」機能であり、前記制御部材は、前記クロノグラフ機構と関連付けたプッシュピース(8)を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の時計。
【請求項10】
前記時計は、潜水時計であり、前記回転ベゼル(20)は、特に潜水に有用な機能と関連付けることを特徴とする、請求項9に記載の時計。
【請求項11】
測時器ムーブメント(4)と、前記測時器ムーブメントを組み込むケース(6)とを備え、弁(7)を備える時計(2)であって、前記弁は、径方向(12)で移動可能であり、前記ケースの外側からユーザが作動させることができ、前記ケースは、前記弁を係止するデバイス(14)を更に備え、前記係止デバイスは、係止部材(16)を備え、前記係止部材(16)は、前記ケースの中心軸(18)回りに回転可能に組み付け、前記時計のユーザが、少なくとも1つの角度係止位置と少なくとも1つの角度非係止位置との間で作動できるように構成し、前記少なくとも1つの角度係止位置では、前記弁を前記係止デバイスによって螺締閉鎖位置で遮断し、前記少なくとも1つの角度非係止位置では、前記弁を解放、螺緩し、前記径方向で作動させることができ、前記弁を開放可能にし、前記時計は、前記中心軸回りに回転するベゼル(20)を更に備え、したがって、前記回転ベゼル及び前記係止部材は同軸であり、前記回転ベゼル及び前記係止部材はそれぞれ、ユーザが、互いから独立して回転可能に作動できるように構成する、時計(2)。
【請求項12】
前記係止部材は、環状部品(22)を備え、前記環状部品(22)は、前記中心軸(18)を中心とし、前記回転ベゼル(20)と、前記回転ベゼルを支持する中間部品(40)との間に配置する、請求項11に記載の時計。
【請求項13】
前記係止部材(16)は、把持要素(36)を備え、前記把持要素(36)は、前記環状部品(22)と一体であり、前記ケースの前記中間部品(40)の外側に位置し、ユーザが前記把持要素(36)を把持するのを可能にし、前記係止部材を少なくとも前記角度係止位置と前記角度非係止位置との間で回転することができるようにする、請求項11又は12に記載の時計。
【請求項14】
前記係止部材(16)は、下側部品(44)を備え、前記下側部品(44)は、特に、空の領域によって隔てられるいくつかの環状区分から形成し、前記下側部品(44)は、前記環状部品(22)と一体であるか又は前記環状部品(22)によって形成し、前記下側部品は、360°未満である角度領域内に全体的に延在し、径方向に並進移動可能な前記弁の部品のための停止部を形成し、前記下側部品(44)は、前記係止部材が前記角度係止位置にある際、前記径方向で、前記螺締閉鎖位置で前記弁を遮断し、したがって、前記弁の開放を防止し、前記係止部材が前記角度非係止位置にある際、前記径方向で前記弁の移動を自由にするように構成する、請求項11から13のいずれか一項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計のユーザが作動させることができる制御部材を係止するデバイスを備える時計に関し、制御部材は、特に、クロノグラフ機構と関連付けられるプッシュピースである。
【背景技術】
【0002】
特許出願特開2005-337792は、従来のようにユーザがケースの外側から作動させることができる2つのプッシュピースと関連付けたクロノグラフ機構と、これら2つのプッシュピースを係止するデバイスとを備える時計を記載しており、このデバイスは、係止リングを備え、係止リングは、時計の文字板によって画定される表示領域を囲むベゼルを形成するように、時計の中間部品の上溝内に配置される。溝は、係止リングの把持及び係止リングの回転作動を可能にする少なくとも1つの横開口を有し、係止リングを少なくとも1つの角度係止位置と少なくとも1つの角度非係止位置との間で駆動できるようにする。係止リングは、複数の角度区分にわたり延在する別個の下側部品を有し、複数の角度区分は、間が空の区分のままである、即ち、材料がない。
【0003】
時計の制御部分、即ち、2つのプッシュピース及びりゅうずのそれぞれに対し、係止リングが対応する係止角度位置にある場合、下側部品の1つは、制御部材の細穴内、又はこの制御部材の内側面の背後に位置し、対応する径方向での並進移動を遮断又は停止させ、したがって、それぞれ対応する機能の起動を防止する。時計の制御部材のそれぞれに対し、係止リングが対応する角度非係止位置に位置する場合、制御部分の角度は、空の区分に面して位置し、この制御部分が、対応する径方向で自由に移動する、即ち、この径方向における並進移動の作動により、対応する機能を起動させることが可能である。
【0004】
上記で説明した時計は、様々な欠点を有する。まず、係止リングは、時計のベゼルを形成し、特にクロノグラフ機構と関連付けられる他の回転ベゼルは、設けられない。この係止リングの構成は、時計が、この時計の制御部材の少なくとも1つの係止以外の機能と関連付け得る別の回転ベゼルを備えることを効果的に防止するものであることに留意されたい。
【0005】
この場合、2つの側方開口は、ユーザによる係止リングの把持、及び係止リングの回転作動を可能にするように中間部品内に設けられる。これら2つの開口により、みかけが悪く、ケースが複雑な形状となり、ケースの製造費用が増加する。いずれの場合も、中間部品の2つの横開口は、ケースの上側部での調和のとれた形状を妨害する。ケースは、2つの横側に一種の段を有し、更に、この実施形態は、上面図で制御部材が見えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも1つの外部制御部材を係止するデバイスを伴う、上記した種類の時計を提供することであり、この外部制御部材の構成は、目立たない一方で、ユーザが外部制御部材を容易に作動することを可能にする。更に、本発明の目的は、ケースが回転ベゼルを備えるそのような時計を提供することであり、回転ベゼルは、上記した係止以外の時計の機能と関連付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、時計に関し、時計は、測時器ムーブメントと、この測時器ムーブメントを組み込むケースとを備え、測時器ムーブメントの機能の起動を可能にする制御部材を備え、この制御部材は、径方向で移動可能であり、ユーザがケースの外側から作動させることができ、このケースは、制御部材を係止するデバイスを更に備える。係止デバイスは、係止部材を備え、係止部材は、ケースの中心軸回りに回転可能に組み付けられ、少なくとも1つの角度係止位置と少なくとも1つの角度非係止位置との間で時計のユーザが作動することができるように構成され、角度係止位置では、制御部材は、係止デバイスによって停止又は遮断され、該機能が、この制御部材の該径方向での作動によって起動できないようにし、角度非係止位置では、制御部材は、解放され、該径方向で作動することができ、該機能を起動可能にする。時計は、該中心軸回りに回転するベゼルを更に備え、したがって、この回転ベゼル及び係止部材は同軸である。回転ベゼル及び係止部材は、2つの別個の部材を形成し、それぞれ、ユーザが、互いから独立して回転可能に作動できるように配置される。
【0009】
好ましくは、係止部材は、環状部品を備え、環状部品は、該中心軸を中心とし、回転ベゼルと、この回転ベゼルを支持する中間部品との間に配置される。
【0010】
本発明の特徴のため、係止デバイスは、従来クロノグラフ機構と関連付けられる回転ベゼルに取って代わるものではない。更に、係止デバイスは、好ましい変形形態では、特に目立たず、時計の上部からほとんど見えない。
【0011】
一般的な実施形態では、回転ベゼルは、クロノグラフ機構と関連付けられる。特定の一実施形態では、時計は、潜水用である。
【0012】
好ましい変形形態では、係止部材は、把持要素を備え、把持要素は、環状部品と一体であり、ケースの中間部品の外側に位置し、ユーザによる把持を可能にし、少なくとも角度係止位置と角度非係止位置との間で、明らかに両方向で係止部材を容易に回転できるようにする。
【0013】
制御部材は、特に時計の時間設定を可能にするりゅうず、又は時計の少なくとも1つの機能と関連付けたプッシュピースのいずれかである。2つのプッシュピースを備える従来のクロノグラフ時計の場合、係止デバイスは、2つのプッシュピースのうち1つを係止するためにしか使用できない。詳細には、1つのプッシュピース、又は両方のプッシュピースが同時若しくは別々に、時間間隔(継続時間)の測定を開始し、次に測定を終了するためにしか使用できない。高度な変形形態では、係止デバイスは、係止部材の角度位置に応じて、第1のプッシュピースのみの係止、第2のプッシュピースのみの係止、及び2つのプッシュピースの係止を可能にするように構成することができる。係止デバイスは、係止部材が特定の角度位置にある際の2つのプッシュピースの少なくとも1つの係止に加えて、特に巻上げ位置(即ち、非引出し位置)でりゅうずを係止するのでも使用することができる。
【0014】
弁を備える潜水時計に関係する特定の一実施形態では、係止デバイスは、少なくとも係止部材が特定の角度位置にある際に、螺締閉鎖位置で弁を係止するために使用することができる。この場合、係止デバイスは、係止部材を備え、係止部材は、ケースの中心軸回りに回転可能に組み付けられ、時計のユーザによって、少なくとも1つの角度係止位置と、少なくとも1つの角度非係止位置との間で作動し得るように構成され、角度係止位置では、弁は、螺締閉鎖位置で係止デバイスによって遮断され、角度非係止位置では、弁は、解放、螺緩され、該径方向で作動させることができ、弁の開放を可能にする。本実施形態では、係止デバイスは、上述のように、係止部材が該特定の角度位置又は少なくとも1つの他の角度位置にある際に制御部材を係止するために使用することもできる。
【0015】
特定の実施形態の有利な変形形態では、係止部材は、下側部品を備え、下側部品は、特に、空の領域によって隔てられるいくつかの環状区分から形成され、下側部品は、環状部品と一体であるか又は環状部品によって形成され、この下側部品は、360°未満である角度領域内に全体的に延在し、径方向に移動可能な弁の部品のための停止部を形成し、この下側部品は、係止部材が該角度係止位置にある際、該径方向で、該螺締閉鎖位置で弁を遮断し、したがって、この弁の開放を防止し、係止部材が該角度非係止位置にある際、該径方向で弁の移動が自由になるように構成される。
【0016】
非限定的な例として示す添付の図面を使用して、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一実施形態による時計の上面図であり、時計は潜水用であり、プッシュピースを係止するデバイスは、角度係止位置にある。
【
図2】断面線II-IIに沿った
図1Aの時計の部分断面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図1Aの時計の上面図であり、プッシュピースを係止するデバイスは、角度非係止位置にある。
【
図4】断面線IV-IVに沿った
図3Aの時計の部分断面図である。
【
図5】
図4の図と同様の、
図3Aの時計の部分断面図であり、解放されたプッシュピースは、径方向の力を加えることにより作動された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照しながら、本発明のいくつかの特徴を組み込む本発明の好ましい実施形態を以下で説明する。いくつかの特徴は、他の実施形態では、部分的にのみ利用してよい。時計2は、潜水時計を示す変形形態にある。
【0019】
時計2は、測時器ムーブメント4と、ケース6とを備え、ケース6は、この測時器ムーブメントを組み込み、クロノグラフ機構を備える。ケース6は、いくつかの制御要素、即ち、それぞれが測時器ムーブメントの異なる機能の起動を可能にする2つのプッシュピース8、9と、りゅうず10とを備える。更に、ケースは、図示の時計が潜水時計であるため、弁7を備える。弁、及び制御部材のそれぞれは、プッシュピース8及び9のそれぞれに対して径方向12及び13で移動可能であり、ユーザがケースの外側から作動させることができる。特に、弁7は、その閉鎖位置では螺締されている。次に、プッシュピース8をより詳細に考慮する。このプッシュピース8は、従来、クロノグラフ機構の「クロノグラフ」機能で使用され、より詳細には、時間間隔の測定を開始し、次に、この測定を終了させるものである。
【0020】
ケース6は、係止デバイス14を備え、係止デバイス14は、プッシュピース8のために少なくとも係止することができる。この係止デバイスは、係止部材16を備え、係止部材16は、ケースの中心軸18回りに回転可能に組み付けられ、時計のユーザによって、少なくとも1つの角度係止位置α1(
図1に示す状態)と、少なくとも1つの角度非係止位置α2(
図2に示す状態)との間で作動し得るように構成され、角度係止位置α1では、プッシュピース8は、プッシュピース8の機能が、この制御部材の上述の径方向での作動によって起動できないように、係止デバイスによって停止又は遮断され、角度非係止位置α2では、プッシュピース8は、解放されており、「クロノグラフ」機能を起動可能にするようにこの径方向で作動させることができる。時計は、中心軸18回りに回転するベゼル20を更に備え、このように、この回転ベゼル及び係止部材16は同軸である。回転ベゼル及び係止部材は、ユーザが、互いから独立してそれぞれ回転可能に作動させることができる、即ち、互いから独立して回転可能に作動し得るように構成される。
【0021】
説明する変形形態では、回転ベゼル20は、潜水に有用な機能に関連付けられる。有利には、係止部材16は、中心軸18を中心とする環状部品22を備え、環状部品22は、回転ベゼル20とケース6の中間部品40との間、より詳細には、回転ベゼルとプッシュピース8の径方向心棒24との間に配置される。この配置は、ケース6の内部の大部分に対して、特に、該環状部品の全体に対して、係止部材16を組み込むことを可能にし、したがって、係止デバイスを目立たず、時計の上部、即ち、アナログ表示デバイスの側からほとんど見えないことを可能にする。
【0022】
回転ベゼル20は、内歯26を備え、内歯26には、従来、この回転ベゼルの角度を位置決めするラチェットばね28が関連付けられる。提案する構造の別の利点によれば、内歯26は、係止部材16、特に係止部材16の環状部品22の内側の円筒形空間に位置する。更に、内歯は、係止部材16と同じ高さで実質的に位置し、これにより、ケースの高さが係止デバイスの組込みによって増大しない、又はわずかにしか増大しないことを可能にする。実際、環状部品22、及び回転ベゼル20の角度位置決めデバイスが同心構成であることにより、係止デバイスのサイズを低減可能にする。
【0023】
回転ベゼル20の下側部品と環状部品22との間の金属同士の摩擦、特に、鉄鋼同士の摩擦を防止するため、環状スペーサ30は、回転ベゼル及び係止デバイスの環状部品によって、回転ベゼルと係止デバイスの環状部品との間に画定される環状空洞内に配置される。この環状スペーサは、回転ベゼルの下面32又は環状部品の上面34と接触する少なくとも1つの摺動面を有し、この摺動面は、この下面及びこの上面のそれぞれとの摩擦係数が低い。好ましくは、スペーサ30は、自由回転するように組み付けられる、即ち、スペーサ30は、環状部品又は回転ベゼルの下側部品に締結されていない。この場合、スペーサは、上面34と接触する下摺動面と、下面32と接触する上摺動面とを有する。有利には、スペーサ30は、ポリオキシメチレン(POM)、特にDelrin(登録商標)によって形成される。摩擦係数は、約0.20~0.35の値の範囲内である。
【0024】
本発明の好ましい変形形態によれば、係止部材16は、把持要素36を備え、把持要素36は、環状部品22と一体であり、ユーザが把持要素36を把持するのを容易に可能にするようにケースの中間部品40の外側に位置し、角度係止位置α1と角度非係止位置α2との間で係止部材を回転させることができる。この把持要素は、洗練されており、クロノグラフ潜水時計に更なる技術的特徴を与える。図示する変形形態では、係止部材の環状部品22は、円筒形側面を有し、環状部品22の外周部全体の周囲で側方に見えることを留意されたい。
【0025】
別の変形形態では、環状部品は、ケースの内側に完全に位置し、したがって、把持要素と環状部品との間の接続部品が横断する環状領域の両端で見える可能性を除いて、外側からは見えないことを規定することが可能である。この最後の変形形態では、接続部品が位置し移動する貫通空洞を常に隠すため、有利には、角度係止位置α1と角度非係止位置α2との間の把持要素に比較的短い角度経路をもたらすと共に、把持要素が、これら角度係止位置及び非係止位置によって画定される角度位置の範囲内における係止部材の角度位置とは無関係に、該貫通空洞を覆うような把持要素の角度範囲をもたらすことが可能である。ユーザの親指による係止デバイスの容易な作動を可能にする図示の変形形態によれば、把持要素36は、有利には、「12時間」の時回転上で、0°に対応する12時位置から時計回り方向で計算した220°から290°の間に含まれる環状区分内に位置する。好ましくは、角度係止位置α1は、約240°から250°の間に位置し、角度非係止位置α2は、270°に等しい。より一般的な変形形態によれば、把持要素36は、150°から300°の間に含まれる角度区分に位置する。
【0026】
図面を参照しながら説明する好ましい実施形態に従って、プッシュピース8、好ましくは2つのプッシュピース8及び9、並びに任意で弁7及びりゅうず10の係止及び非係止を、係止デバイス14により得る方法を以下で説明する。係止部材16は、環状部品と一体であるか又は環状部品によって形成される(即ち、図示の変形形態によれば、この環状部品と一体に作製される)下側部品44を備え、この下側部品は、360°未満である環状領域内に全体的に延在し、径方向に並進移動可能なプッシュピース8の部品50に対する停止部を形成する外側横面46を有する。下側部品44は、空の領域によって隔てられるいくつかの別個の環状区分から全体的に形成されていることを留意されたい。下側部品44は、図示の変形形態によれば、径方向12でこのプッシュピース8を停止させるように構成するか、又は下側部品がプッシュピース8の本体52内に機械加工した円形細穴を貫通する別の変形形態によれば、径方向12でこのプッシュピース8を遮断するように構成され、このように、係止部材16が角度係止位置(
図1A、
図1B及び
図2)にある際に「クロノグラフ」機能の起動を防止し、係止部材が角度非係止位置(
図3A、
図3B及び
図4)にある際に該径方向で制御部材の移動を自由にする。この角度非係止位置において、可動部品50は、上述の空の区分によって部分的に画定されるケース6の内側空洞内で変位することができ、
図5に示すように、可動部品50の径方向並進移動における端部位置まで停止又は遮断されない。従来、ユーザがプッシュピース8に加える径方向力によって実施される、
図4に示す状態と
図5に示す状態との間のプッシュピースの移動に際し、「クロノグラフ」機能、即ち、時間間隔の測定を作動させるクロノグラフ機構の係合、又はこの測定を完了させるこのクロノグラフ機構の解除のいずれかが実行される。
【0027】
制御部材8の可動部品50は、この制御部材の本体52の上に隆起する上側突起部品によって形成され、可動部品50は、本体52に締結、特に螺締され、この本体52は、ケース6の中間部品40から突出し、径方向12に沿って摺動するようにこの中間部品内に配置される。上側突起部品は、係止部材16の下側部品44に配置され、有利には、ケースの内側空洞内に収容される、即ち、このケースの内側に位置する。
【符号の説明】
【0028】
2 時計
3 環状スペーサ
4 測時器ムーブメント
6 ケース
8 制御部材
9 制御部材
10 制御部材
14 係止デバイス
16 係止部材
18 中心軸
20 ベゼル
22 環状部品
26 内歯
28 ラチェットばね
40 中間部品
【外国語明細書】