(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126002
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】飛行体、積載物の姿勢制御装置、方法
(51)【国際特許分類】
B64C 17/02 20060101AFI20220822BHJP
B64D 9/00 20060101ALI20220822BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B64C17/02
B64D9/00
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079111
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2021023809の分割
【原出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】716000880
【氏名又は名称】望月 玲於奈
(72)【発明者】
【氏名】望月玲於奈
(57)【要約】 (修正有)
【課題】飛行体の姿勢の変化による積載物の姿勢の変化を抑えるシステムを提供する。
【解決手段】飛行体と積載物をリンク1とリンク2はジョイント10で接続され、リンク2とリンク3はジョイント12で接続され、リンク3とリンク6はジョイント15で接続され、リンク4はリンク1上のジョイント11とリンクB上のジョイント13で接続され、リンク5はリンク2上のジョイント14とリンク6上のジョイント16で接続され、ジョイント10と11を結ぶ直線とジョイント12と13を結ぶ直線が平行であり、ジョイント12と14を結ぶ直線とジョイント15と16を結ぶ直線が平行であり、ジョイント10と12を結ぶ直線とジョイント11と13を結ぶ直線が平行であり、ジョイント12と15を結ぶ直線とジョイント14と16を結ぶ直線が平行であるようにジョイントが配置された機構であって、リンク1に飛行体が接続され、リンク6に積載物が接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクXとリンクAとはジョイントXAで接続され、
リンクAとリンクBとはジョイントABで接続され、
リンクBとリンクYとはジョイントBYで接続され、
リンクCはリンクX上のジョイントXCとリンクB上のジョイントBCで接続され、
リンクDはリンクA上のジョイントADとリンクY上のジョイントDYで接続され、
ジョイントXAとXCを結ぶ直線とジョイントABとBCを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントABとADを結ぶ直線とジョイントBYとDYを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントXAとABを結ぶ直線とジョイントXCとBCを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントABとBYを結ぶ直線とジョイントADとDYを結ぶ直線が平行であるようにジョイントが配置された機構であって、
リンクXに回転基準が接続され、あるいは、リンクXが回転基準であり、
リンクYに回転体が接続され、あるいは、リンクYが回転体である回転機構。
【請求項2】
請求項1に記載の第1の前記回転機構と第2の前記回転機構を備え、
前記第1の回転機構の前記リンクYに前記第2の回転機構の前記リンクXが接続され、
前記第2の回転機構の前記リンクYに前記回転体が接続される回転機構。
【請求項3】
前記回転基準とは飛行体であり、前記回転体とは積載物である、請求項1の請求項2いずれかの回転機構。
【請求項4】
前記積載物とは計測装置である、請求項3の回転機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
積載物の位置、姿勢の制御、および飛行体の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ドローンと呼ばれる、飛行体を用いた配送を実現するための開発が進められている。
ドローンの多くは、機体の中心部付近に、制御用のコンピュータやバッテリ、センサーなどを備える構成である。飛行において重量のある構成物を機体の中心付近に置いたほうが、慣性モーメントが少なくなり、機体の運動に有利である。また、加速度センサーなど、飛行体の中心に置いたほうが制御、センシングにおいて有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体に積載物を取り付ける際の問題点や懸念事項は次のとおりである。積載物を飛行体に取り付けることで、重心が変化し、飛行体の飛行性能に悪影響を及ぼす。飛行体が姿勢を変化させることで、飛行体に接続した積載物の姿勢も変化してしまう。積載物の重さや形状は、積載物に応じて異なるため、専用の重心設計をした飛行体を用いるのは非効率である。そのため、前記積載物の姿勢変化を打ち消すための機構が必要である。
【0005】
ドローンにジンバル機構を備え、ドローンと積載物をジンバル機構で接続することで、ドローンの姿勢変化による吊り荷の姿勢変化を打つ消す方法がある。しかし、ジンバル機構の回転中心が、ドローンの姿勢変化の回転中心と一致しない場合には、吊り荷の自重によってドローンを回転させる力が生じてしまい、ドローンはその力を打ち消すための姿勢変化をさせる力を発生させる必要が生じる。また、飛行体の姿勢変化によって積載物の位置も変化してしまうため、積載物の位置を制御する必要がある場合に、飛行体の制御が複雑になってしまう。
【0006】
一般的に、ドローンの回転中心は機体の内部に位置していることが多いため、上記の問題を解消するためには、機体の中心に空間を有し、ジンバル機構を備えることができるような特殊な機体が必要である。(特許文献1)
【0007】
そこで、本願発明では、飛行体に積載する積載物の飛行体の位置と姿勢に対する位置と姿勢を制御する機構を備えることで、重心位置の変化と荷物の姿勢変化を抑え、飛行効率、安定性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
リンク機構によって回転基準に対する回転体の回転中心を、機構構成物の外部に設定する。
【0009】
リンクXとリンクAとはジョイントXAで接続され、
リンクAとリンクBとはジョイントABで接続され、
リンクBとリンクYとはジョイントBYで接続され、
リンクCはリンクX上のジョイントXCとリンクB上のジョイントBCで接続され、
リンクDはリンクA上のジョイントADとリンクY上のジョイントDYで接続され、
ジョイントXAとXCを結ぶ直線とジョイントABとBCを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントABとADを結ぶ直線とジョイントBYとDYを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントXAとABを結ぶ直線とジョイントXCとBCを結ぶ直線が平行であり、
ジョイントABとBYを結ぶ直線とジョイントADとDYを結ぶ直線が平行であるようにジョイントが配置された機構であって、
リンクXに回転基準が接続され、あるいは、リンクXが回転基準であり、
リンクYに回転体が接続され、あるいは、リンクYが回転体である回転機構。
【0010】
ジョイントXAとXCと回転体の回転中心Oのリンク機構としての位置関係が、ジョイントABとBCとBYのリンク機構としての位置関係と同じである。
【0011】
平行リンク機構を用いることで、回転の中心を空中の点に設定することができる。
【0012】
リンクXは飛行体に接続される、あるいは、リンクXとは飛行体であって、
リンクYは積載物に接続される、あるいは、リンクYとは積載物である。
【0013】
前記回転機構の一つを第1の回転機構、もう一つを第2の回転機構とし、各構成要素を第1のリンクX、第2のリンクXのように呼ぶ。
【0014】
第1のリンクYに第2のリンクXが接続された回転機構とする。ここで、第1のリンクYが第2のリンクXであると考えてもよい。また、第1の回転機構の回転軸と第2の回転機構の回転軸は、その方向を一致させない。
【0015】
第1の回転機構のジョイントXAとXCと回転体の回転中心Oのリンク機構としての位置関係が、第1の回転機構のジョイントABとBCとBYのリンク機構としての位置関係と同じであり、
第2の回転機構のジョイントXAとXCと回転体の回転中心Oのリンク機構としての位置関係が、第2の回転機構のジョイントABとBCとBYのリンク機構としての位置関係と同じである回転機構。
【0016】
積載物がリンクYに対して、回転可能に接続されてもよい。例えば、リンクYを基準とした回転中心Oを通る回転軸で回転体が回転可能としてもよい。
【0017】
リンクXあるいはリンクYあるいはその両方について、水平方向への移動を可能としてもよい。
【0018】
リンクXに対してリンクYを回転させることができるように、アクチュエーターを備えてもよい。いずれかのジョイントを回転させる、あるいは、いずれかのリンクを傾けることができるようにすれば、回転機構によってリンクXに対してリンクYを回転させることができる。
【0019】
リンクXの回転に対してリンクYが回転しないように制御する。リンクXの回転を相殺するようにリンクYを回転させる。
【発明の効果】
【0020】
回転の中心を、回転機構を構成する物体の外部に備えることが可能となるため、飛行体に接続した場合には、回転体の回転中心を飛行体の内部の点に位置させることが可能となる。そのため、中心がセンサーなどで占有されている飛行体においても、積載物の飛行体に対する回転の中心を飛行体の回転中心に合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
【0023】
リンクX1とリンクA2とはジョイントXA10で接続され、
リンクA2とリンクB3とはジョイントAB12で接続され、
リンクB3とリンクY6とはジョイントBY15で接続され、
リンクC4はリンクX1上のジョイントXC11とリンクB3上のジョイントBC13で接続され、
リンクD5はリンクA2上のジョイントAD14とリンクY6上のジョイントDY16で接続される。
【0024】
ここで、ジョイントは、それぞれが平行な回転軸で接続されたリンクを回転可能である。いわゆる回り対偶と考えてもよい。
【0025】
ジョイントの回転軸と垂直な平面でジョイントを見たとき、
ジョイントXA10とXC11を結ぶ直線とジョイントAB12とBC13を結ぶ直線が平行であり、
ジョイントAB12とAD14を結ぶ直線とジョイントBY15とDY16を結ぶ直線が平行であり、
ジョイントXA10とAB12を結ぶ直線とジョイントXC11とBC13を結ぶ直線が平行であり、
ジョイントAB12とBY15を結ぶ直線とジョイントAD14とDY16を結ぶ直線が平行であるようにジョイントを配置したリンク機構とする。ジョイントの位置は、奥行き方向に位置が変化しても、リンク機構においては等価である。
【0026】
このような構成とすることによって、リンクY6はリンクX1に対して回転中心Oで回転することが可能となる。回転中心Oにジョイントなど回転させるための構成要素を配置することなくリンクY6を回転中心O周りに回転させることができる。ここで、リンクY6の回転軸は、ジョイントの回転軸と平行となる。
図1の(a)と(b)に回転の様子の一例を示す。ただし、ここではリンクXがリンクYに対して回転中心O周りに回転しているように図示している。
【0027】
図1に例示した構成に限らず、各ジョイントの位置の条件を満たす任意の変形をしてもよい。例えば、リンクD5をリンクC4よりも上側に配置してもよい。リンクA2とリンクC4の位置が入れ替わってもよい。
【0028】
また、このときの回転中心Oの位置は、ジョイントの回転軸と垂直な平面でジョイントを見たとき、ジョイントXA10とXC11と回転中心Oの位置関係とジョイントAB12とBC13とBY15の位置関係と同じになるような回転中心Oの位置となる。すなわち、ジョイントAB12とBC13に対するジョイントBY15の位置を設計することで、任意の位置の回転中心Oを得ることができる。
【0029】
リンクC4とリンクD5をジョイントCD17で接続してもよい。このとき、ジョイントAB12とAD14を結ぶ直線とジョイントBC13とCD17を結ぶ直線が平行となるようにする。このように、余剰となるジョイントを加えることで耐荷重性の向上が期待できる。また、
図8のような構成としたとき、左右対称の構成とできて、バランス面などで有利である。
【0030】
リンク同士の干渉を避けるように各リンクの配置を奥行方向、回転軸方向にずらして配置してもよい。
図12の例では、リンクB3とリンクD5が干渉しないように、奥側と手前側に配置し、リンクY6を挟み込むような配置としている。こうすることで、リンクB3とリンクD5の可動範囲が広くとれるので、結果として回転機構の回転可能な範囲を大きくとれる。また、回転機構のサイズを縮小することができる。
【0031】
図1では、それぞれのリンクを直線で構成したが、ジョイントの位置関係が前記の条件を満たしていれば、その形状は問わない。したがって、リンク同士の干渉を避けて、可動範囲を広くとるために曲げた構成にしたり、奥行方向の位置にジョイントを配置してもよい。
【0032】
図2のように、ジョイントBY15、ジョイントDY16の位置を、ずらすことで回転中心Oの位置を変化させることができる。これによって、例えば飛行体100の底面にリンクX1を接続した際に、回転中心Oを底面よりも上に配置することができる。
【0033】
この回転機構をさらに、もう一軸について回転させることで、リンクY6を回転機構の回転軸と回転機構を回転させる回転軸との2軸で回転させることができる。例えば、
図1においては、リンクX1をジョイントXA10とXC11を結ぶ直線と平行な軸で回転させる。ここで、リンクX1を回転させる回転軸を回転中心Oを通る軸とすることで、リンクY6を回転中心O周りに2方向に回転させることができる。リンクX1と回転基準の接続方法の例は、回転基準に対してリンクX1が、前記リンクX1の回転軸に回転可能なようにモーターや軸受けなどで接続する。
【0034】
リンクY6がジョイントBY15とDY16を結ぶ直線に平行な軸に回転可能に、回転部を備えてもよい。例えば、リンクY6と回転体とをBY15とDY16を結ぶ直線に平行な軸に回転可能なようにモーターや軸受けなどで接続する。
【0035】
リンクY6と回転体とをジンバルで接続してもよい。ここでのジンバルとは、一般的な、例えばカメラの振れを防止するために用いられるような、回転軸がモーターで構成されるような通常のジンバルでよい。このような構成とすることで、回転体を、回転基準の姿勢変化のよってその位置と姿勢を変化させないように制御可能となり、さらに、回転基準の向きや傾きの変化に影響せず、回転体自身の向きや傾きを変化させることができる。
【0036】
回転体がリンクY6に対して平行移動できるように接続してもよい。リンクY6に対して回転体が平行移動できるようにすることで、回転体に対する振動を吸収したり、回転体の位置の調整が可能となる。
【0037】
リンクY6と回転体あるいはリンクX1と回転基準少なくともいずれかを防振部材で接続してもよい。防振部材の一例は、ゴムやダンパーなどである。
【0038】
前記回転機構を2つ用いることで、2軸での回転を制御することができる。
【0039】
説明のために前記回転機構の1つを第1の回転機構、もう1つを第2の回転機構とし、各構成要素を第1のリンクX、第2のリンクXのように呼ぶ。
【0040】
第1のリンクYに第2のリンクXが接続された回転機構とする。ここで、第1のリンクYが第2のリンクXであると考えてもよい。また、第1の回転機構の回転軸と第2の回転機構の回転軸は、その方向を一致させない。例えば、第1の回転機構と第2の回転機構の回転軸を直交させる。
【0041】
また、第1と第2の回転機構それぞれについて、ジョイントの回転軸と垂直な平面でジョイントを見たとき、
第1の回転機構のジョイントXAとXCと回転体の回転中心Oのリンク機構としての位置関係が、第1の回転機構のジョイントABとBCとBYのリンク機構としての位置関係と同じであり、
第2の回転機構のジョイントXAとXCと回転体の回転中心Oのリンク機構としての位置関係が、第2の回転機構のジョイントABとBCとBYのリンク機構としての位置関係と同じである回転機構とすることによって、第1の回転機構と第2の回転機構の回転軸が、回転中心Oを通るため、第2のリンクYを回転中心O周りに2方向に回転させることができる。
【0042】
【0043】
図3の(a)は第1の回転機構の回転軸方向(z軸)から見たリンクを図示したものである。
図3の(b-1)と(b-2)は第2の回転機構の回転軸方向(x軸)に見たリンクを図示したものである。第2の回転軸の接続例として、
図3の(b-1)のように第1のリンクY300の上部に第2のリンクX301を接続する。第2のリンクX301を上部に備える構成とすることで、第2のリンクX301を回転中心Oに近づけることができるため、回転機構のサイズを抑えることができる。
【0044】
当然
図3の(b-2)のように、第2のリンクX301を第1のリンクY300の下部に接続してもよい。ただし、第2の回転機構の回転中心を回転中心Oにするために、ジョイントAB312とBC313を結ぶ直線とジョイントBYの垂直距離を大きくとる必要があり、回転機構のサイズが大きくなる場合がある。第2のリンクX301は例示した位置に限らず、任意の位置で取り付けてよい。
【0045】
第1の回転機構の回転軸と第2の回転機構の回転機構を直交させることによって、第2のリンクY306を第1の回転機構と第2の回転機構の回転軸が交わる点を回転中心として、2方向に回転させることができる。これにより、本回転機構は2軸のジンバルと同等の機能を有することができる。
【0046】
図4に別の構成例を示す。
図4の(b-1)は第1の回転機構を第2の回転機構の横に設置したものである。
図3の構成と比較して、例えば、第2の回転機構のリンクB303と第1の回転機構との干渉を避けるために、第2の回転機構のジョイントXA301とAB312の間隔を大きくとる必要がない。そのため、回転機構の高さ、長さを抑えることができる。
図4において、第2のジョイントXA310をさらに回転中心Oに近づけることもできる。例えば、第1のリンクY300と第2のリンクX301の接続位置をさらに上部に配置する。
図4の例では、第1のリンクY300を上方に延長することもできる。
【0047】
図4の(b-2)は、第1の回転機構と同じ回転軸にリンクY400を回転させる第3の回転機構をさらに備え、第2の回転機構を両側で支える形としたものである。
図4の(b-1)と比較して、接続箇所が増えるので、耐荷重の面で有利である。また、左右対称の構成とできるためバランス面でも有利である。
図4の(b-1)と(b-2)は第1と第3の回転機構について、リンクY以外の図示を省略している。
【0048】
第1の回転機構と第3の回転機構は、第2の回転機構によって接続されて同じ量だけ回転することとなるが、第1と第3の回転機構の対応するリンクの少なくともいずれかを1つのリンクとしてつなげてもよい。第1と第3の回転機構のリンクYの回転量に差が生じるような場合を防ぎ、第2の回転機構をねじるような力が加わることを防ぐ。
【0049】
図5のように、
図4の(b-2)における、第1と第3の回転機構のリンクの一部を省略することができる。例えば、第1のリンクB3を省略し、代わりにリンクC4をリンクD5とジョイントCD17で接続し、第3のリンクDを省略する。このとき、ジョイントCD17は第3のジョイントXA510とAD514を結ぶ直線と平行となるようにする。このとき、1つの回転機構を第1と第3の回転機構で構成しているものと考えてもよい。
【0050】
図6のように、第2のリンク機構の片側を回転基準と、モーターや軸受け601など通常の回転可能な接続方法で接続してもよい。この際、回転軸は第1の回転機構の回転軸と同じとする。
【0051】
本願回転機構を飛行体に適用する場合の例について、マルチコプター型のドローンを飛行体100として、ドローンに積載物101を搭載する場合を例にして説明する。ここで、飛行体を回転基準、積載物を回転体とする。ここで説明する構成は飛行体100、積載物101以外についても適用可能である。
【0052】
飛行体100は、フライトコントローラー51、受信機52、モーター、プロペラ53を備える一般的なマルチロータータイプのドローンとして考える。自律飛行させる場合は受信機52は無くてもよい。
【0053】
図7に飛行体100に回転機構を備える例を示す。既存の飛行体に本願回転機構を適用する場合、本願回転機構は、飛行体の底面、側面、上部などに接続することとなる。
図7は飛行体100の側面に、リンクX1がx軸方向に回転可能に接続した例である。回転機構は、z軸方向にリンクY6を回転させることとなる。飛行体100の回転中心は、飛行体100の内部の点Oとする。
【0054】
図7のようにリンクX1の回転軸は飛行体の回転中心Oを通るように接続する。これにより、リンクX1を回転させることによって、飛行体100のx軸方向の回転に対する、積載物101の回転を相殺することが可能となる。
図7の各ジョイントはz軸方向に接続したリンクを回転可能とする。
図7のx-y平面で見たとき、ジョイントBY15とDY16と回転中心Oが一直線上に位置するように、ジョイントBY15とDY16を配置する。これにより、飛行体のz軸の回転に対する、積載物の回転を相殺することが可能となる。
【0055】
図8は、飛行体100に回転機構を備える別の例である。リンクX1を左側と右側とに分けて、飛行体100の両側にリンクX1を接続する構成となる。
図8の例では、飛行体の左側にリンクA2が接続されたリンクX1が接続され、右側にリンクC4が接続されたリンクX1を接続する。2つのリンクX1はx軸方向の同軸で回転可能とする。
【0056】
図7の構成と比較して、
図8の構成は飛行体との接続箇所が増えるため耐荷重の面で有利である。また、左右対称の構成とできるためバランス面でも有利である。
【0057】
図9にリンクX1の接続方法についての別の例を示す。リンクX1はx軸方向に回転中心Oを通る軸で回転可能に接続される。ここで、ジョイントXA10とXC11がリンクX1の回転軸上にない位置に設置することができる。この場合、リンクY6の回転中心を回転中心Oとするために、x-y平面で見たときのジョイントAB12とBC13とBY15の位置関係とジョイントXA10とXC11と回転中心Oの位置関係が同じになるようにする。
図7のように、片側のみを接続する場合についても同様の構成とできる。
【0058】
図9の構成では(a)と(b)のように、リンクX1の形状を変えることで、サイズの異なる飛行体100への適用が可能となる。そのため、適用先の飛行体100に応じて、リンクX1のみを取り換えるだけで回転機構の付け替えが可能となる。または、リンクX1のx軸方向の長さを可変とすることで種々のサイズの飛行体100に取り付け可能とできる。ジョイントBY15とDY16の位置を可変とすることによって、回転中心Oの位置を変えることができ、適用の際の自由度がより向上する。
【0059】
図8と
図9とでは、主にリンクA2とリンクC4の可動範囲が異なる。飛行体など、適用先の構成物の機能などを阻害しないように
図8の構成と
図9の構成を使い分けることができる。
【0060】
図7と
図8と
図9の例では、積載物101を飛行体100の下部に備える形態を図示したが、積載物101は飛行体100の上部に取り付けてもよい。その場合は、回転機構を上下逆に取り付けたような構成としてよい。飛行体100の上部に積載物101を配置することで、例えば、天井をセンシングする場合のように飛行体の上方にセンサーなどを近づけたいときに有効である。
【0061】
回転機構の駆動方法について説明する。
【0062】
それぞれの回転機構のいずれかのジョイントをモーターなどによって駆動させるものとしてよい。また、ジョイントのいずれかに、ジョイントの回転量、回転角度を計測するセンサーを備えることで、回転体の姿勢を制御するためのシステムが、回転基準に対する回転体の姿勢を算出することができる。センサーの一例はロータリーエンコーダーである。モーターとしてサーボモーターのように目標角度に回転させるようなアクチュエーターを用いた場合は、その目標量を回転量として扱うこともできる。
【0063】
アクチュエーターによって駆動可能なアームによって、それぞれの回転機構のいずれかのリンクを動かすようにしてもよい。
【0064】
回転機構を複数用いる構成においては、回転体と接続するリンクYもしくは、回転体を動かすように力を加えることで、その動きは回転中心O周りの回転運動となる。回転体が接続されたリンクのいずれかを2方向に駆動させることができれば、回転体の回転を回転軸O周りに制御することが可能となる。
【0065】
アームによる駆動をする場合の構成例を
図1に示す。リンクX1、もしくは回転基準にアーム30を駆動するアクチュエーター31を搭載し、リンクC4と駆動用リンク32で接続する。
【0066】
2軸方向に回転する場合には、アーム30と駆動用リンク32とリンクC4との接続に球面対偶や回り滑り対偶を用いるなど、回転軸方向への位置変化にも対応させることで、例えば、
図3のように1つの回転機構が別の回転機構によって回転する場合においても、アクチュエーター31を第1のリンクX1もしくは回転基準に設置することができる。
【0067】
回転機構によるリンクYの回転量は、ジョイントに回転量を取得するセンサーを備えて取得してもよい。また、アームの回転に対するリンクYの回転量を算出してもよい。アームの長さと回転量と各ジョイント間の距離情報から、算出可能である。
【0068】
一例として、アーム30の回転中心をジョイントXA10とXC11を結ぶ直線上に配置し、駆動用リンクをXA10-XC11と平行にした場合アームの回転量がそのままリンクY6の回転量となるため計算負荷が少なくて済む。
【0069】
図1における駆動用リンク32のジョイント間の長さを変化させる構成としてもよい。駆動用リンク32を伸縮可能にしたり、ジョイントの位置をスライダーで移動できるようにしてもよい。この場合、アーム30は固定するか、アーム30を無くして駆動用リンク32をリンクX1に接続するようにしてもよい。
【0070】
回転体の姿勢制御について説明する。
【0071】
姿勢制御システム50は、回転基準の姿勢変化に対して、回転体が一定の姿勢を保つように制御する。例えば、飛行体100の傾き変化に対して積載物101が水平状態を維持するように、積載物101を飛行体100に対して回転させる。水平に制御する以外にも、回転体が水平に対してその時々の目標姿勢になるように制御してもよい。
【0072】
姿勢制御システム50は、各種センサーを用いて、回転基準、あるいは回転体の姿勢を算出することができる。回転基準と回転体のいずれかの姿勢が算出できれば、回転機構による回転量から、さらにもう一方の姿勢を算出することができる為、両方に姿勢算出手段を備える必要は必ずしもない。一般的に、加速度センサや角速度センサを用いることで姿勢を算出することができるが、姿勢制御システム50が姿勢を取得できればその手段は問わない。飛行体100に備える姿勢算出手段54によって算出した飛行体100の姿勢を姿勢制御システム50が受け取る構成としてもよい。
【0073】
飛行体100が無線操縦される場合のように、回転基準の姿勢が、受信機52で受信した目標姿勢や目標回転速度に基づき制御される場合、姿勢制御システム50が受信機52の目標姿勢や目標回転速度を取得可能な構成とすることで、回転基準の姿勢を算出可能となる。特に目標姿勢を受信する場合は、回転体に対する回転基準の姿勢が、受信した目標姿勢になるように回転機構による回転をさせるアクチュエーターを制御すればよい。
【0074】
また、受信機52をフライトコントローラー51に接続するような飛行体の場合、信号線を姿勢制御システム50につなぐのが容易であるため、エンドユーザーによる姿勢制御システム50の組み込みが容易となる。
【0075】
飛行体100に適用した場合のシステム構成の例を
図10に示す。飛行体100は、飛行制御を行うフライトコントローラー51と受信機52を備える。フライトコントローラー51は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。一般的なコンピューターと考えてもよい。また、フライトコントローラー51は、飛行体100の姿勢を算出する手段54を備える。一例は、加速度センサーや角速度センサーを含む一般的な構成としてよい。姿勢算出手段54は、少なくとも飛行体100の傾きを算出することができるものとする。受信機52は、操作者から飛行体100の傾きを指示するための信号をフライトコントローラー51に伝える。フライトコントローラー51は信号に基づき飛行体の姿勢を目標姿勢となるように各プロペラ53の回転速度を制御して、機体を傾けることで飛行体100を移動させる。自律制御する場合は、受信機52の代わりに自律制御用の制御装置を接続し指示信号をフライトコントローラー51に伝える構成としてもよいし、フライトコントローラー51に自律制御機能を備えるようにしてもよい。
【0076】
姿勢制御システム50は、制御用コンピューター55と姿勢算出手段57と回転機構による回転をさせるためのアクチュエーター56を備える。制御用コンピューター55はプログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。一般的なコンピューターと考えてもよい。また、制御用コンピューター55は、フライトコントローラー51の一部として考えてもよく、積載物10の姿勢を制御する機能をフライトコントローラー51に組み込んでもよい。姿勢制御システム50の姿勢算出手段57は少なくとも積載物101の傾きを算出することができる。一例は、加速度センサーや角速度センサーを含む一般的な構成としてよい。また、飛行体100の姿勢算出手段54を用いてもよく、飛行体100の姿勢算出手段54が出力するセンサーの情報や傾き情報を姿勢制御システム50が受け取る構成としもよい。もしくはフライトコントローラー51が姿勢算出手段54から受け取った信号もしくは傾き情報、もしくはフライトコントローラー51が算出した傾き情報を姿勢制御システム50に伝えてもよい。姿勢制御システム50は、飛行体100の姿勢情報と回転機構で回転させている積載物101の回転量から積載物101の姿勢を算出できる。
【0077】
駆動用アクチュエーター56は、目標の角度や位置まで駆動させる機能を備える。飛行体100の姿勢算出手段54を用いる場合は、各アクチュエーターの駆動量から飛行体100に対する積載物101の姿勢を算出することができるため、これらの情報をもとに積載物101の姿勢が算出可能である。姿勢制御システム50の制御用コンピューター55は、姿勢算出手段57から受け取った積載物101の傾きに基づき、その傾きが一定に保たれるように、例えば積載物が水平に保たれるように駆動用アクチュエーターの駆動量を制御する。
【0078】
姿勢制御システム50は、飛行体100の傾きの変化速度、すなわち角速度の情報を姿勢算出手段54から取得し、駆動用アクチュエーターの駆動速度を変化させてもよい。
【0079】
また、飛行体100のフライトコントローラー51や受信機52、自律制御を制御するコンピューターから、飛行体100の目標姿勢情報や、未来の飛行体の姿勢情報を受け取ることで、飛行体の姿勢変化に対する、回転体の回転制御の遅れを軽減させるようにしてもよい。前記情報を用いた回転体の姿勢制御に対してフィードフォワード制御を加えるようにしてもよい。
【0080】
飛行体100に対する積載物101の姿勢の制御は、一般的なジンバルに用いられている制御方法を用いることができる。回転軸をモーターとして、モーターを駆動してジンバルに取り付けられたカメラを水平に保つ制御の場合は、モーターの代わりに本願回転機構を駆動させるアクチュエーターを駆動させるようにすればよい。
【0081】
図7、もしくは
図8もしくは
図9の構成例をテイルシッター型の飛行体のように、ホバリング時と移動時とで機体の傾きが大きく変化する場合への適用例について示す。
【0082】
図11の例に示すように、飛行体100が回転中心Oで飛行時の姿勢がx軸方向に90°変化する場合、本願回転機構が、x軸方向に回転可能に飛行体100に接続することで、ホバリング時(a)と移動時(b)双方の飛行体の姿勢に対して、積載物101を水平に保つ制御が可能となる。
【0083】
ジョイントXA10-AB12間とジョイントXC11-BC13間の長さを飛行中に変更可能な構成としてもよい。
図11の例では、飛行時100に飛行体底面とリンクB3の距離が長くなるため、その距離を縮めることで飛行時のサイズを抑えることができる。
【0084】
回転機構の各ジョイント位置は変更可能な構成としてよい。一例は、ジョイント間のリンクの長さを変更可能とする。長さを変更可能な構成の一例は、リンクのジョイントを、動きをロック可能なスライダー上に配置する。別の一例は、リンクの一部をねじで構成して、ねじの締める程度によってジョイントの間隔を調整可能としてもよい。ジョイント間の距離を変更可能なように、ジョイント間をおねじとめねじで接続すると考えてもよい
【0085】
ジョイント位置の候補を複数用意して、回転基準への接続時に、回転基準のサイズや回転中心Oの位置に応じて使用するジョイント位置を選択して回転機構を組み立て可能としてもよい。例えば、各リンクにジョイントとなる穴を複数設けて置き、飛行体のサイズや回転中心Oの位置に応じて使用する穴を選択し、ねじやリベットなどでリンク同士が穴を中心に回転可能に接続する。
【0086】
特に、ジョイントABに対するジョイントBY、ジョイントADに対するジョイントDYの位置を変更可能とすることで、回転機構の回転中心Oの位置が変更可能となるため、様々な飛行体に適用可能となる。飛行体の付け替えも可能となる。
【0087】
積載物100の向きをリンクYに対して変更可能なようにしてもよい。例えば、リンクYと積載物101を通常のジンバルで接続する。このような構成により、積載物の移動は、飛行体の移動によって制御され、積載物の向きはジンバルで制御することが可能となる。
【0088】
また、積載物101とリンクYを防振可能な部材で接続してもよい。または、リンクXと飛行体100を防振可能な部材で接続してもよい。
【0089】
本願回転機構については、全てのジョイントを回り対偶で構成できるため、例えば、ボールジョイントのような球面対偶を使用する構成と比較して耐荷重の面で有利である。
【0090】
本願回転機構については、一般的なジンバルと比較して、カメラなどの回転させる対象、本願においては回転基準、飛行体がジンバル内部に収まるような構成にしなくてもよいので、全体のサイズを抑えることができる。
【0091】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示であり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0092】
本願実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、本願実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
ドローンによる荷物の運搬やカメラによる撮影、センサーなどの計測装置といった、積載物の姿勢を水平に保ちたい場合に利用可能である。
【0094】
三次元マッピングなどのセンシングでの利用においては、機体の傾きによる計測装置の傾きを考慮したセンシング位置の補正をする必要がなくなるため、計算処理の簡単化と誤差の削減が可能となる。
【符号の説明】
【0095】
0 回転中心O
1 リンクX
2 リンクA
3 リンクB
4 リンクC
5 リンクD
6 リンクY
10 ジョイントXA
11 ジョイントXC
12 ジョイントAB
13 ジョイントBC
14 ジョイントAD
15 ジョイントBY
16 ジョイントDY
17 ジョイントCD
30 アーム
31 アクチュエーター
32 駆動用リンク
33 回転機構
50 姿勢制御システム
51 フライトコントローラー
52 受信機
53 モーター・プロペラ
54 姿勢算出手段
55 制御用コンピューター
56 駆動用アクチュエーター
57 姿勢算出手段
100 飛行体
101 積載物
300 第2の回転機構を接続する第1の回転機構のリンクY
301 第2のリンクX
302 第2のリンクA
303 第2のリンクB
304 第2のリンクC
305 第2のリンクD
306 第2のリンクY
310 第2のジョイントXA
311 第2のジョイントXC
312 第2のジョイントAB
313 第2のジョイントBC
314 第2のジョイントAD
315 第2のジョイントBY
316 第2のジョイントDY
317 第2のジョイントCD
400 第3の回転機構のリンクY
501 第1の回転機構と第3の回転機構のリンクX
502 第3のリンクA
505 第3のリンクD
510 第3のジョイントXA
514 第3のジョイントAD
516 第3のジョイントDY
601 軸受け、もしくはモーター
602 回転基準への接続部材