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特開2022-126023アニオン性水溶性重合体分散液及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126023
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】アニオン性水溶性重合体分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/10 20060101AFI20220823BHJP
   C08F 20/56 20060101ALI20220823BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08F2/10
C08F20/56
C08F20/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023845
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】大原 工
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011HA02
4J011HB14
4J011HB16
4J011HB26
4J011HB28
4J011HB29
4J100AJ02Q
4J100AM15P
4J100CA03
4J100DA09
4J100EA07
4J100FA02
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA39
4J100JA13
4J100JA18
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】
塩水溶液中、高分子分散剤共存下、分散重合法による硫酸アンモニウムを使用しない製品安定性の優れたアニオン性水溶性重合体分散液及び水溶性重合体分散液の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
硫酸マグネシウムを含有する塩水溶液中、特定の単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物を、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子分散剤共存下、分散重合することで、硫酸アンモニウムを使用しない製品安定性の優れたアニオン性水溶性重合体分散液を提供できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸マグネシウムを含有する塩水溶液中で、下記一般式(1)で表される単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物水溶液を、該塩水溶液中に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子分散剤を共存させ、攪拌下、分散重合して得られることを特徴とするアニオン性水溶性重合体分散液。
一般式(1)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記アニオン性水溶性重合体の25℃で測定した0.4質量%における、4質量%塩化ナトリウム水溶液粘度が20~200mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のアニオン性水溶性重合体分散液。
【請求項3】
硫酸マグネシウムを含有する塩水溶液中で、下記一般式(1)で表される単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物水溶液を、該塩水溶液中に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子分散剤を共存させ、攪拌下、分散重合して得られることを特徴とするアニオン性水溶性重合体分散液の製造方法。
一般式(1)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。






















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水溶液中、高分子分散剤共存下、分散重合法によるアニオン性水溶性重合体分散液、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩水溶液中でイオン性高分子分散剤を共存させ、分散重合法により製造するイオン性水溶性重合体分散液については、特許文献1等これまでに種々の技術が報告されている。
その中でアニオン性水溶性重合体分散液は、凝集剤として廃水処理や汚泥脱水用途、製紙用途として歩留向上剤や濾水性向上剤、土木用途として土壌の固化剤等、幅広く使用されている。これらの用途では、特に高分子量のアニオン性水溶性重合体が要望されている。
しかし、一般的な高分子量のアニオン性水溶性重合体分散液は、カチオン性水溶性重合体分散液に比べて重合物を塩水中に析出させ、分散重合法により製造し安定な分散液とすることは難しい。これは、カチオン性単量体の場合では、ベンジル基や長鎖アルキル基のような疎水基を導入した単量体を重合すれば容易に塩水中に不溶な高分子が合成でき、また分子量も凝集剤として使用可能なものになる。一方、アニオン性単量体の場合、分子内に疎水基を導入することが難しいため疎水性単量体を共重合する方法が考えられるが、それら疎水性単量体を共重合すると高分子量が得られない場合が多い。
そこで、アニオン性水溶性重合体分散液の製造技術について種々の報告がなされている。
例えば、特許文献2、3では、塩溶液中で陰イオン(アニオン)化した水溶性ポリマー安定剤の存在下で重合するアニオン性水溶性重合体分散液について開示されている。
特許文献4では、高分子量スルホン酸基含有アニオン性水溶性重合体の安定した分散液の提供について開示されている。
特許文献5では、高分子分散剤として低分子量のスルホン酸基含有高分子を使用するアニオン性水溶性重合体分散液の製造方法が開示されている。
しかし、これらアニオン性水溶性重合体分散液の製造時に、一般的に無機塩として硫酸アンモニウムが使用されているが、分散液を構成する硫酸アンモニウム塩由来の全窒素含有量は、75000ppm(対水溶性重合体分散液製品)程度は含まれている。全窒素含有量は、農作物に対して大きな影響力を持つ。植物はアンモニウム態窒素又は硝酸態窒素の形で窒素を吸収してその生育に利用する。しかし、窒素過多になるとかえって悪影響を与えることが知られており、含有量の低減が求められている。又、平成26年の水質汚濁防止法改正に伴いアンモニウム化合物が有害物質に指定されていることから硫酸アンモニウムを削減することができるアニオン性水溶性重合体分散液、特に汎用性が高い高分子量のものが要望される。
又、アニオン性水溶性重合体分散液製品を長期保存する場合に製品の固化や分離が問題視される場合が有り、製品の分離安定性の改善が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62-20511号公報
【特許文献2】特表2001-508473号公報
【特許文献3】特表2003-508598号公報
【特許文献4】特開2002-302521号公報
【特許文献5】特開2004-231822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塩水溶液中、高分子分散剤共存下、分散重合法により得られるアニオン性水溶性重合体分散液であり、硫酸アンモニウムを使用せずに、製品安定性の優れたアニオン性水溶性重合体分散液、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、重合時、硫酸マグネシウムを含有する塩水溶液中、特定の単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物を、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子分散剤共存下、分散重合することでアニオン性水溶性重合体分散液を得ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明における分散液は、硫酸アンモニウムを使用しないアニオン性水溶性重合体分散液及びその製造方法であり、環境に放出される塩由来の窒素分を抑制でき、高分子量で長期安定性に優れるアニオン性水溶性重合体分散液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における水溶性重合体分散液は、塩水溶液中で、下記一般式(1)で表される単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物水溶液を、該塩水溶液中に可溶な高分子分散剤を共存させ、攪拌下、分散重合して得られるアニオン性水溶性重合体分散液である。
一般式(1)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
本発明におけるアニオン性水溶性重合体分散液を製造する際に使用する前記一般式(1)で表されるアニオン性単量体は1~100モル%の範囲である。アニオン性基の効果が得られ高分子量のものを得るには、5~80モル%が好ましく、5~60モル%が更に好ましい。アニオン性単量体の例としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸あるいはp-カルボキシスチレン酸等とそれらの塩が挙げられる。これらを二種以上組み合わせて使用しても良い。製造時、アニオン性単量体を水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物やアミン類等の様なアルカリ物質によって任意の中和度により中和して重合することができる。
【0009】
一般式(1)で表されるアニオン性単量体と非イオン性単量体を使用しても良い。一般式(1)で表されるアニオン性単量体と非イオン性単量体を共重合させる場合に使用する非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせて使用しても良い。
【0010】
本発明における水溶性重合体分散液を製造する際に、アニオン性基の効果を阻害しない範囲内において、カチオン性単量体を使用することができる。
【0011】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物である。例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等である。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。カチオン性単量体は10モル%未満が好ましく、5モル%未満が更に好ましい。又、一般式(1)で表されるアニオン性単量体とカチオン性単量体と非イオン性単量体を共重合させても良い。
【0012】
本発明における塩水中分散重合は、特開昭62-20511号公報、特開平10-212320号公報あるいは特開2004-231822号公報等で開示されている常法により製造することができる。本発明では、塩水溶液中において、該塩水溶液中に構成単位として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子分散剤を共存させ、無機塩として硫酸マグネシウムを用いて、一般式(1)で表される単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物水溶液を分散重合する。
分散重合する際に、重合遅延性物質を全単量体に対し0.5~5質量%添加することにより、増粘の抑制効果があり、適宜に添加して製造することができる。重合遅延性物質としては、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等が挙げられる。
【0013】
塩水中分散重合に使用する高分子分散剤は、本発明においては、構成単位として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を含有するものを使用する。ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩でも良いが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と非イオン性単量体との共重合体も使用可能である。非イオン性単量体の例としては、アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N、N-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等であるが、アクリルアミドとの共重合体が好ましい。又、その他のカチオン性単量体、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物などを高分子分散剤組成中に含有していても差し支えない。
【0014】
高分子分散剤の分子量としては、高いと分散液の粘性が高くなり好ましくない。従って5,000~200万、好ましくは5万~100万である。高分子分散剤の添加率は、単量体に対して1~20質量%であり、好ましくは3~20質量%である。分散液に対して5質量%未満が好ましい。これは5質量%以上含有すると経済的に不利であり、高分子の機能を阻害する可能性が有るためである。
【0015】
一般的に塩水中分散重合時に使用する無機塩としては、硫酸アンモニウムが使用されている。本発明では、重合時に使用する無機塩として硫酸マグネシウムを使用する。硫酸マグネシウムを必須として使用することで大きな増粘を抑制し、高分子量で分離安定性に優れる水溶性重合体分散液を製造することができる。水溶性重合体分散液総量に対して、5質量%以上で塩水溶液中飽和濃度に至る量を添加する。硫酸マグネシウムは7水和物等の水和物が好適に使用できる。
その他の塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等が含有しても良いが、重合時無機塩の総量中、硫酸マグネシウムが50質量%以上である必要がある。好ましくは70質量%以上である。これら無機塩水溶液中に前記単量体類を溶解させ、更に高分子分散剤を共存させ、pHを2~5に調製した後、窒素置換後、重合開始剤によって重合を開始させる。
【0016】
本発明は重合時の無機塩として硫酸マグネシウムを含有し、構成単位として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を含有する高分子分散剤を使用することで増粘を抑制し、高分子量のアニオン性水溶性重合体分散液が、安定して製造できることを見出したものである。
【0017】
重合時の無機塩として硫酸マグネシウムを含有し、構成単位として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を含有する高分子分散剤を使用すると増粘を抑制する効果があることについては、理論的には不明な部分が多く解明できないが、現象面から推定すると以下の様になる。
即ち、塩水溶液中で重合が進行していくと、生成高分子濃度は、溶解度以上となり高分子粒子の析出が始まるが、その手前では溶解している高分子のため重合物自体(重合系)の粘性も増加し、溶解高分子と析出粒子が共存した状態になる。この後、析出した高分子の割合は増加していき、重合物は徐々に粘性が低下し、分散状態に相変化する。この共存状態時に、析出粒子とゲル状の溶解高分子間における滑りを向上させ、相変化前の増粘状態から分散状態への相変化をスムーズに移行させるのが、相移行期における分散剤の主な役目と考えられる。重合の初期段階では、分散剤の構成単位である2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩の作用により、生成高分子の比較的低分子量の相分離に関与し、相変化を円滑に進行させ、重合の後半では塩析力の強い硫酸マグネシウムの作用により生成高分子の比較的高分子量のものとの塩析効果を促進する結果、高分子分散液が安定して製造できると考えられる。これらは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩の相変化を円滑にする作用と、硫酸マグネシウムの塩析効果促進作用の相乗効果と考えられる。
【0018】
本発明の様な水溶性重合体分散液の無機塩として、一般的に硫酸アンモニウムが好適に使用されているが、汎用品では硫酸アンモニウム塩由来の全窒素含有量は、75000ppm(対水溶性重合体分散液製品)程度は含まれている。この硫酸アンモニウム塩由来の窒素を無くすことで、全窒素含有量を20000ppm(対水溶性重合体分散液製品)程度にまで低減することができる。全窒素含有量は、農作物に対して大きな影響力を持つ。植物はアンモニウム態窒素又は硝酸態窒素の形で窒素を吸収してその生育に利用されるが、窒素過多になるとかえって悪影響を与えることが知られており、含有量の低減が求められている。又、平成26年の水質汚濁防止法改正に伴いアンモニウム化合物が有害物質に指定されていることから環境に与える影響が懸念されており、本発明の水溶性重合体分散液は、硫安アンモニウムを使用しないので極めて有用である。
【0019】
重合濃度としては、単量体濃度として2質量%~25質量%である。これは単量体濃度が低いと実用性が低く、単量体濃度が高い程、輸送コストの問題で経済的に有利であるが、単量体濃度が25質量%を超えると製造時に増粘が大きくなり分散液が得られ難くなるためである。好ましくは5質量%~20質量%である。単量体供給方法としては、重合開始時、一括して仕込んでも良いし、適宜分割して仕込んでも良い。
【0020】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決定し、温度としては0~100℃の範囲で行う。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系の何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、1、1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチル)バレロニトリル等が挙げられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
【0021】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、過硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0022】
アゾ系開始剤あるいは過酸化物系開始剤の添加率は、重合開始時、単量体当たり50~500ppm、好ましくは70~200ppm添加する。しかし、一回の添加では重合率が低くなるので、数回に分けて添加することが好ましい。
レドックス系開始剤で共重合する場合、40℃以上の条件で重合を開始させると重合の制御は難しく、急激な温度上昇や重合液の塊状化などが起きて、高重合度で安定な分散液が得られないため、15~35℃が好ましい。この開始剤の添加率は、重合開始時、単量体当たり5~100ppm、好ましくは10~100ppm添加する。しかし、一回の添加では重合率が低くなるので、数回添加することが好ましい。添加回数としては、2~5回、好ましくは2~3回である。
【0023】
又、重合度を調節するためギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール等を対単量体0.1~5質量%併用すると効果的である。
【0024】
重合反応終了後は、塩を追加して製品の安定化を調整することができる。追加する塩としては、硫酸マグネシウムでも良いが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなども使用できる。又、併用しても良い。特に硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムから選択される一種以上が好ましい。これら追加する塩は、水溶性重合体分散液総量に対して1~10質量%の範囲で添加する。
【0025】
本発明におけるアニオン性水溶性重合体分散液は、都市下水、屎尿、一般産業排水の生汚泥、余剰汚泥、凝集汚泥、消化汚泥あるいはこれらの混合汚泥を凝集処理する際、またはデカンター、ベルトプレス、フィルタープレス、スクリュウプレス脱水機などで凝集脱水する際に添加する薬剤、製油工程あるいは油分を含む産業排水の油分離工程および処理に用いる油分離剤、製紙工程に用いる濾水性向上剤、歩留向上剤、白水中の有価物回収剤等の製紙用薬剤等として使用でき、これらの用途として機能を発揮するためには、本発明における水溶性重合体分散液の分子量の指標となる0.4質量%塩水溶液粘度、即ち、分散液を構成する水溶性重合体の25℃で測定した0.4質量%における、4質量%塩化ナトリウム水溶液中(pH8.5に調製)の水溶液粘度では5~200mPa・sの範囲である。特に凝集剤として廃水処理や汚泥脱水、製紙用薬剤として歩留向上剤や濾水性向上剤、土木用薬剤として土壌の固化剤等の使用において、高分子量のアニオン性水溶性高分子重合体が要望される場合が多く、その場合では、アニオン性単量体は10~60モル%が汎用され、0.4質量%における、4質量%塩化ナトリウム水溶液中の水溶液粘度が20~200mPa・sが好ましく、50~200mPa・sがより好ましく、80~200mPa・sがより一層好ましい。尚、0.4質量%塩水溶液粘度は、B型粘度計(東機産業TVB-10M等)において2号ローター、60rpmで測定した値である。
又、水溶性重合体分散液の25℃において測定した0.5質量%における、4質量%塩化ナトリウム水溶液中(pH8.5に調製)の固有粘度は、10~30dl/gの範囲が好ましい。
【0026】
アニオン性水溶性重合体分散液製品を長期保存する場合に製品の固化や分離が問題視される場合が有る。製品の分離安定性の指標として、遠心分離機を用いた一定の条件での遠心分離操作により測定することができる。本発明におけるアニオン性水溶性重合体分散液ではこの測定試験において汎用品である重合時塩として硫酸アンモニウムを使用した汎用品に比べて優れる分離安定性が得られ長期保存が可能である。
【実施例0027】
以下に本発明におけるアニオン性水溶性重合体分散液及びその製造方法について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水91.4g、硫酸マグネシウム7水和物71.8gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸15.9g、48質量%水酸化ナトリウム2.4g、50質量%アクリルアミド58.6g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.4g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム15.4gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.0gと硫酸マグネシウム7水和物38.8gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は390mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は120mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては19650ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例1として表1に示す。
【0029】
(実施例2)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水65.0g、硫酸マグネシウム7水和物67.7gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸21.6g、48質量%水酸化ナトリウム3.2g、50質量%アクリルアミド79.5g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.6g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム20.9gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム4.7gと硫酸マグネシウム7水和物36.5gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は1050mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は131mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては26670ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例2として表1に示す。
【0030】
(実施例3)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水110.0g、硫酸マグネシウム7水和物75.2gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸7.6g、48質量%水酸化ナトリウム0.8g、50質量%アクリルアミド47.9g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.3g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム12.0gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.3gと硫酸マグネシウム7水和物40.6gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=80/20モル%となる。この分散液の粘度は360mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は31.6mPa・sであった。これを実施例4として表1に示す。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては16050ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例3として表1に示す。
【0031】
(実施例4)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水90.2g、硫酸マグネシウム7水和物71.8gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸13.3g、48質量%水酸化ナトリウム2.0g、50質量%アクリルアミド62.8g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.4g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム15.4gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.0gと硫酸マグネシウム7水和物38.8gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=75/25モル%となる。この分散液の粘度は460mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は86.3mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては21040ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例4として表1に示す。
【0032】
(実施例5)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水114.3g、硫酸マグネシウム7水和物75.2gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸15.1g、48質量%水酸化ナトリウム2.2g、50質量%アクリルアミド35.8g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.3g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム10.8gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.3gと硫酸マグネシウム7水和物40.6gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=60/40モル%となる。この分散液の粘度は183mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は46.6mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては12060ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例5として表1に示す。
【0033】
(実施例6)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水116.5g、硫酸マグネシウム7水和物75.2gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸26.4g、48質量%水酸化ナトリウム7.8g、50質量%アクリルアミド17.8g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.3g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム12.0gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.3gとチオ硫酸ナトリウム0.8gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=30/70モル%となる。この分散液の粘度は250mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は25.3mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては7120ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例6として表1に示す。
【0034】
(実施例7)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水115.5g、硫酸マグネシウム7水和物75.2gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸30.1g、48質量%水酸化ナトリウム8.9g、50質量%アクリルアミド11.9g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.3g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム12.0gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.3gとチオ硫酸ナトリウム0.8g加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=20/80モル%となる。この分散液の粘度は300mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は9.5mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては4920ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例7として表1に示す。
【0035】
(実施例8)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水91.4g、硫酸マグネシウム7水和物71.8gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸15.9g、48質量%水酸化ナトリウム2.4g、50質量%アクリルアミド58.6g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.4g、15質量%アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(5/95モル%)共重合体15.4gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸ナトリウム5.0gと硫酸マグネシウム7水和物38.8gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は180mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は120mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては19650ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを実施例8として表1に示す。
【0036】
(比較例1)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水94.1g、硫酸マグネシウム7水和物71.8gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、80質量%アクリル酸15.9g、48質量%水酸化ナトリウム10.9g、50質量%アクリルアミド58.6g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.4g、15質量%ポリアクリル酸12.6gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で重合を開始した。反応途中、反応液の粘度が上昇し撹拌困難となり固化した。これを比較例1として表1に示す。
【0037】
(比較例2)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水92.4g、80質量%アクリル酸24.5g、48質量%水酸化ナトリウム1.9gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、50質量%アクリルアミド90.3g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.7g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム23.8g、硫酸アンモニウム50.4gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸アンモニウム13.2gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は486mPa・sで、4質量%塩化ナトリウム水溶液に水溶性重合体分散液を0.4質量%濃度に溶かした時の粘度は134mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては74870ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを比較例2として表1に示す。
【0038】
(比較例3)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水137.5g、80質量%アクリル酸16.0g、48質量%水酸化ナトリウム2.4gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、50質量%アクリルアミド59.0g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.4g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム15.5g、硫酸アンモニウム55.2gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸アンモニウム14.5gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は67mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては68700ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを比較例3として表1に示す。
【0039】
(比較例4)アンカー翼撹拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに脱塩水108.6g、80質量%アクリル酸21.7g、48質量%水酸化ナトリウム3.2gを加え、撹拌下均一に溶解した。次に、50質量%アクリルアミド79.9g、ギ酸ナトリウム0.4g、イタコン酸0.6g、15質量%ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム21.01g、硫酸アンモニウム52.0gを加え均一溶液とし、33℃の湯浴に浸し温度を安定化させた。次に、窒素雰囲気下、4質量%の過硫酸アンモニウム水溶液と4質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を重合開始剤として対単量体あたり55ppm添加し、撹拌下30℃で10時間重合した。その後、上記重合開始剤を300ppm添加して、5時間重合した。反応終了後、得られた分散液に硫酸アンモニウム13.6gとチオ硫酸ナトリウム0.9gを加え、溶け残りがなくなるまで撹拌して水溶性重合体分散液を得た。この水溶性重合体のモル組成比は、アクリルアミド/アクリル酸=70/30モル%となる。この分散液の粘度は265mPa・sであった。この水溶性重合体分散液の全窒素含有量は理論値としては72790ppm(対分散液)となる。又、遠心分離操作を行い、分離安定性試験を実施した。これを比較例4として表1に示す。
【0040】
(表1)
単量体組成;AAM:アクリルアミド、AAC:アクリル酸
高分子分散剤;
p-AMPS:ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
AAM/AMPS:アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(5/95モル%)共重合体
p-AAC:ポリアクリル酸、高分子分散剤添加率(質量%):対単量体
重合時塩:a;硫酸マグネシウム7水和物、b;硫酸アンモニウム
単量体濃度:水溶性重合体分散液に対する単量体の質量割合
無機塩濃度:水溶性重合体分散液に対する無機塩の質量割合
分散液粘度:水溶性重合体分散液の25℃において測定した粘度
0.4質量%塩水溶液粘度:4質量%塩化ナトリウム水中に高分子濃度が0.4質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(pH8.5)。
固有粘度:水溶性重合体分散液の25℃において測定した0.5質量%における、4質量%食塩水溶液中の固有粘度(pH8.5)
遠沈上澄み:分散液40gを遠沈管に採取、4000rpmで10分間、遠心分離した後に、上澄み液の高さを測定し、分散液の高さに対する割合を算出した。
遠沈残渣:分散液40gを遠沈管に採取、4000rpmで10分間、遠心分離した後に、遠沈管を120秒間転倒させて得た沈殿残渣物質量を測定し、分散液に対する質量%を算出した。
【0041】
重合時の無機塩として硫酸マグネシウム、分散剤として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子を使用して得られたアニオン性水溶性重合体分散液の実施例1~8では、重合時に硫酸アンモニウムを使用しなくても水溶性重合体分散液が得られた。又、重合時の無機塩として硫酸アンモニウムを使用した汎用品の比較例に比べて、分離安定性試験での遠沈上澄み、遠沈残渣量が少なく製品安定性が良好であることが分かった。
一方、重合時無機塩として硫酸マグネシウム使用しても構成単位として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を含有しない高分子分散剤を使用した比較例1では、増粘固化して分散液が得られなかった。重合時の無機塩として硫酸マグネシウム、分散剤として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成単位とする高分子を使用することで、硫酸アンモニウムを使用しなくても増粘を抑制でき、製品安定性が良好なアニオン性水溶性重合体分散液が得られることが分かった。