(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126042
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20220823BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023883
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢一
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA14
2H087MA15
2H087MA16
2H087NA07
2H087PA11
2H087PA12
2H087PA16
2H087PA20
2H087PB14
2H087PB15
2H087PB16
2H087PB17
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA42
2H087RA44
2H087SA24
2H087SA26
2H087SA30
2H087SA33
2H087SA44
2H087SA46
2H087SA49
2H087SA53
2H087SA56
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SB05
2H087SB07
2H087SB13
2H087SB17
2H087SB22
2H087SB24
2H087SB25
2H087SB26
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB34
2H087SB42
2H087SB43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型で光学性能の高いズームレンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり、且つ、全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成され、変倍又は合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、所定の条件式を満足するズームレンズとする。また、このズームレンズを備えた撮像装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成され、
前記中間群は、レンズ群LpMaxを含み、
前記レンズ群LpMaxは、前記中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有し、
隣り合うレンズ群の間隔を変化させることで変倍又は合焦を行うズームレンズであって、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.05 ≦ |f1|/|fpMax| ≦ 0.80 ・・・(1)
但し、
f1: 前記第1レンズ群の焦点距離
fpMax: 前記レンズ群LpMaxの焦点距離
【請求項2】
物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成され、
前記中間群は、レンズ群LpMaxを含み、
前記レンズ群LpMaxは、前記中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有し、
隣り合うレンズ群の間隔を変化させることで変倍又は合焦を行うズームレンズであって、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
βpw ≦ -0.58 ・・・(2)
但し、
βpw: 広角端における無限遠合焦時の前記中間群の合成横倍率
【請求項3】
以下の条件式を満足する請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ。
-1.50 ≦ f1/fw ≦ -0.05 ・・・(3)
但し、
f1: 前記第1レンズ群の焦点距離
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【請求項4】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-4.0 ≦ fn/fpMax ≦ -1.5 ・・・(4)
但し、
fn: 前記レンズ群Lnの焦点距離
fpMax: 前記レンズ群LpMaxの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.05 ≦ frt/ft ≦ 1.50 ・・・(5)
但し、
frt: 望遠端における無限遠合焦時の前記中間群から前記最終レンズ群までの合成焦点距離
ft: 望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.00 ≦ βn1 ≦ 5.00 ・・・(6)
但し、
βn1: 広角端における無限遠合焦時の前記レンズ群Lnの横倍率
【請求項7】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.00 ≦ βn12 ≦ 5.00 ・・・(7)
但し、
βn12: 広角端における無限遠合焦時の前記レンズ群Lnと前記最終レンズ群との合成横倍率
【請求項8】
前記レンズ群Lnが、無限遠から近接物体に合焦する際に光軸に沿って移動する以下の条件式を満足する請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.6 ≦ |{1-(βn1×βn1)}×(βn2×βn2)| ≦ 15.0 ・・・(8)
但し、
βn1: 広角端における無限遠合焦時の前記レンズ群Lnの横倍率
βn2: 広角端における無限遠合焦時の前記最終レンズ群の横倍率
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.00 ≦ |CrG1r/fw| ・・・(9)
但し、
CrG1r: 前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面の曲率半径
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【請求項10】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.65 ≦ (fw×tanω)/BFw ≦ 2.30 ・・・(10)
但し、
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
ω: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの半画角
BFw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との間の光軸上の距離
【請求項11】
前記レンズ群LpMaxは、正の屈折力を有するレンズLpMpを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足する請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のズームレンズ。
45.0 ≦ νdLpMp ≦ 98.0 ・・・(11)
但し、
νdLpMp: 前記レンズLpMpのd線におけるアッベ数
【請求項12】
前記第1レンズ群は、正の屈折力を有するレンズL1pを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足する請求項1~請求項11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
20.0 ≦ νdL1p ≦ 50.0 ・・・(12)
但し、
νdL1p: 前記レンズL1pのd線におけるアッベ数
【請求項13】
前記第1レンズ群は、正の屈折力を有するレンズL1pを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足する請求項1~請求項12のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.70 ≦ NdL1p ≦ 2.20 ・・・(13)
但し、
NdL1p: 前記レンズL1pのd線における屈折率
【請求項14】
以下の条件式を満足する請求項1~請求項13のいずれか一項に記載のズームレンズ。
|BFt-BFw|/TLw ≦ 0.30 ・・・(14)
但し、
BFt: 望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との間の光軸上の距離
BFw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との間の光軸上の距離
TLw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの光学全長
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関し、特に、固体撮像素子等を用いた小型の撮像装置に好適なズームレンズ及び撮像装置に関する。
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及している。それに伴い、光学系の高性能化、小型化が進み、小型の撮像装置システムが急速に普及してきている。しかしながら、全長が短く小型の光学系が望まれる監視カメラ、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、一眼レフレックスカメラ、ミラーレス一眼カメラ等に用いるズームレンズは、高い光学性能を保ったまま光学系を小型化することが困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1は、物体側から順に負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有するズームレンズを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の負正負負の屈折力配置を有するズームレンズは、第1レンズ群の負の屈折力が、第2レンズ群の正の屈折力に対して弱いため、第1レンズ群内の最も物体側にレンズ径の大きいレンズを配置する必要があり、径方向における光学系の小型化が不十分という課題がある。
【0006】
本件発明は、より小型で、且つ、光学性能の高いズームレンズ及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、鋭意研究の結果、以下の発明に想到した。
【0008】
本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成され、前記中間群は、レンズ群LpMaxを含み、前記レンズ群LpMaxは、前記中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有し、隣り合うレンズ群の間隔を変化させることで変倍又は合焦を行うズームレンズであって、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.05 ≦ |f1|/|fpMax| ≦ 0.80 ・・・(1)
但し、
f1: 第1レンズ群の焦点距離
fpMax: レンズ群LpMaxの焦点距離
【0009】
本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成され、前記中間群は、レンズ群LpMaxを含み、前記レンズ群LpMaxは、前記中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有し、隣り合うレンズ群の間隔を変化させることで変倍又は合焦を行うズームレンズであって、以下の条件式を満足することを特徴とする。
βpw ≦ -0.58 ・・・(2)
但し、
βpw: 広角端における無限遠合焦時の前記中間群の合成横倍率
【0010】
また、上述の課題を解決するため、本件発明に係る撮像装置は、上述のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本件発明によれば、より小型で、且つ、全ズーム域において高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本件発明の第1実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ断面図を示す。
【
図2】第1実施例のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図3】第1実施例のズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図4】第1実施例のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図5】本件発明の第2実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ断面図を示す。
【
図6】第2実施例のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図7】第2実施例のズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図8】第2実施例のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図9】本件発明の第3実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ断面図を示す。
【
図10】第3実施例のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図11】第3実施例のズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図12】第3実施例のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図13】本件発明の第4実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ断面図を示す。
【
図14】第4実施例のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図15】第4実施例のズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図16】第4実施例のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図17】本件発明の第5実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ断面図を示す。
【
図18】第5実施例のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図19】第5実施例のズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【
図20】第5実施例のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する当該ズームレンズ及び撮像装置は、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は、以下の態様に限定されるものではない。
【0014】
1.ズームレンズ
1-1.ズームレンズの光学構成
本実施の態様のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、1つ以上のレンズ群からなり全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とから構成される。中間群はレンズ群LpMaxを含み、レンズ群LpMaxは中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有する。そして、当該ズームレンズは、隣り合うレンズ群の間隔を変化させることで、変倍又は合焦を行う構成となっている。
【0015】
当該ズームレンズは、第1レンズ群に負の屈折力を配置し、中間群に正の屈折力を配置することで、物体側に光線発散作用を持たせ、像側に光線収束作用を持たせている。このように、ズームレンズの光学構成に、いわゆるレトロフォーカス構成を採用することで、当該ズームレンズを大型化することなく、広角端における画角を広げることができる。すなわち、当該ズームレンズは、広角ズームレンズに適したパワー(屈折力)配置となっている。
【0016】
また、本実施の形態のズームレンズの光学全長の短縮化を実現するためには、いわゆるテレフォトタイプの屈折力配置を採用することが好ましい。すなわち、物体側に正の屈折力を持つレンズ群を配置し、像側に負の屈折力を持つレンズ群を配置することが好ましい。当該ズームレンズでは、第1レンズ群よりも像側において、物体側から順に、全体で正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とを備えている。このような屈折力配置を採用することで、第1レンズ群よりも像側をテレフォト傾向の強いパワー配置とすることができる。すなわち、当該ズームレンズは、中間群から最終レンズ群までの合成焦点距離に比して、中間群から最終レンズ群までの光軸上の長さを短縮することができ、当該ズームレンズ全体の光学全長の短縮化を図ることができる。
【0017】
以下、各レンズ群の光学構成等について説明する。
【0018】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、上述のとおり、当該ズームレンズを構成する複数のレンズ群において最も物体側に配置され、負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。また、第1レンズ群は、群内の最も像側に、正の屈折力を有するレンズL1pを有することが好ましい。このレンズL1p又はその像側のレンズ面が、後述する所定の条件式を満足するものであると、群内の最も物体側に配置するレンズのレンズ径をより小型化することができるためである。
【0019】
(2)中間群
中間群は、上述の第1レンズ群よりも像側に配置され、1つ以上のレンズ群からなり、全体で正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ群及び各群内のレンズの構成は特に限定されるものではない。中間群は、群内に少なくとも1つの正の屈折力を有するレンズ群を含んでいればよく、正の屈折力を有するレンズ群を2つ以上有していてもよいし、正の屈折力を有するレンズ群と負の屈折力を有するレンズ群をそれぞれ1つ以上ずつ有していてもよい。本件発明では、中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有するレンズ群をレンズ群LpMaxと称する。
【0020】
(3)レンズ群Ln
レンズ群Lnは、上述の中間群よりも像側に配置され、負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。また、レンズ群Lnは、負の屈折力を有する単レンズであることが、当該レンズ群Lnの動作を高速に稼働する上で好ましい。そして、群内で最も像側に配置されるレンズがメニスカスレンズであることが、像面湾曲を補正する上で好ましい。
【0021】
(4)最終レンズ群
最終レンズ群は、当該ズームレンズを構成する複数のレンズ群において最も像側に配置され、負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。また、最終レンズ群は、物体側から順に正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズである2枚のレンズとすることが、光学系を小型化する上で好ましい。
【0022】
(5)フォーカス群
当該ズームレンズにおいて、フォーカス群の有無は特に限定されるものではない。当該ズームレンズにフォーカス群を設ける場合、構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズをフォーカス群とし、合焦時に当該フォーカス群を光軸方向に移動させて被写体に合焦させることができる。当該ズームレンズにおいて、フォーカス群として用いるレンズの位置や屈折力は特に限定されるものではない。
【0023】
(6)防振群
当該ズームレンズにおいて、防振群の有無は特に限定されるものではない。当該ズームレンズに防振群を設ける場合、当該ズームレンズを構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズを防振群とし、当該防振群を光軸と略直交する方向へ移動することで像シフト(いわゆる手ブレ補正)を行うと、鏡筒を含めたズームレンズユニット全体の小型化を図ることができるため、光学系の小型化を図る上で好ましい。なお、ズームレンズユニットには、当該ズームレンズのほか、変倍時に各レンズ群を相対的に移動させるための駆動機構(ズーム駆動機構)、合焦時にフォーカス群を光軸方向に移動させるための駆動機構(フォーカス駆動機構)のほか、これらを収容する鏡筒等が含まれるものとする。
【0024】
(7)開口絞り
当該ズームレンズにおいて、開口絞りの位置は特に限定されるものではない。但し、ここでいう開口絞りは、当該ズームレンズの光束径を規定する開口絞り、すなわち当該ズームレンズのFナンバーを規定する開口絞りをいう。
【0025】
当該ズームレンズにおいて、開口絞りは第1レンズ群よりも像側に配置することが絞りユニットの小型化を図る上で好ましく、中間群内に配置することが一層の小型化を図る上でより好ましい。
【0026】
(8)レンズ群構成
当該ズームレンズを構成するレンズ群の数は、特に限定されるものではないが、例えば、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群と正の屈折力を有する第3レンズ群とからなる中間群、負の屈折力を有する第4レンズ群からなるレンズ群Ln、負の屈折力を有する第5レンズ群からなる最終レンズ群である5群構成のズームレンズ、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群と負の屈折力を有する第3レンズ群と正の屈折力を有する第4レンズ群とからなり全体で正の屈折力を有する中間群、負の屈折力を有する第5レンズ群からなるレンズ群Ln、負の屈折力を有する第6レンズ群からなる最終レンズ群である6群構成のズームレンズなど、種々のレンズ群の構成を採用することができる。すなわち、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する中間群と、負の屈折力を有するレンズ群Lnと、負の屈折力を有する最終レンズ群とを備える構成であれば、当該ズームレンズの具体的なレンズ群構成は、特に限定されるものではない。
【0027】
1-2.動作
(1)変倍時の動作
当該ズームレンズは、広角端から望遠端への変倍に際して、隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0028】
当該ズームレンズは、広角端から望遠端への変倍に際して、隣り合うレンズ群の空気間隔が変化していればよく、各レンズ群の空気間隔の増減は特に限定されるものではない。また、変倍に際して当該ズームレンズを構成する全てのレンズ群を光軸方向に移動させてもよいし、一部のレンズ群を光軸方向に固定し、残りのレンズ群を光軸方向に移動させてもよく、個々のレンズ群の移動の有無及び移動の方向は、特に限定されるものではない。
【0029】
(2)合焦時の動作
当該ズームレンズにフォーカス群を設ける場合、フォーカス群の位置や屈折力、移動の方向等は特に限定されるものではないが、レンズ群Lnをフォーカス群として、無限遠から近接物体への合焦に際し、レンズ群Lnを像側に移動させて合焦することが好ましい。レンズ群Lnは中間群よりも像側に配置されており、光線入射角の変動が小さいことから、合焦時の画角変動を抑えることができるためである。
【0030】
1-3.条件式
本件発明のズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式(1)又は条件式(2)のいずれかを満足することが好ましい。
【0031】
1-3-1.条件式(1)
0.05 ≦ |f1|/|fpMax| ≦ 0.80 ・・・(1)
但し、
f1: 第1レンズ群の焦点距離
fpMax: レンズ群LpMaxの焦点距離
【0032】
上述の条件式(1)は、第1レンズ群の焦点距離と、中間群に含まれるレンズ群の中で最も強い正の屈折力を有するレンズ群LpMaxの焦点距離との比を規定するための式である。条件式(1)を満足させることにより、広角端において画角を広くすることができ、また、変倍時における収差変動を抑制することができる。すなわち、上述の条件式(1)を満足させることにより、広角端における画角が広く、光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0033】
これに対して、条件式(1)の数値が下限値未満になると、第1レンズ群のパワーが中間群のパワーに対して強くなりすぎて、コマ収差や歪曲収差の補正が困難になり、光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になるため好ましくない。一方、条件式(1)の数値が上限値を超えると、第1レンズ群のパワーが中間群のパワーに対して弱くなりすぎるため好ましくない。すなわち、広角端において広画角化を達成するために、第1レンズ群を構成するレンズのうち最も物体側にレンズ径の大きいレンズを配置する必要が生じ、径方向の小型化を図ることが困難になるため好ましくない。
【0034】
これらの効果を得る上で、条件式(1)の下限値は0.10であることがより好ましく、0.15であることがさらに好ましく、0.20であることが一層好ましい。また、条件式(1)の上限値は0.75であることがより好ましく、0.70であることがさらに好ましく、0.65であることが一層好ましい。
【0035】
1-3-2.条件式(2)
βpw ≦ -0.58 ・・・(2)
但し、
βpw: 広角端における無限遠合焦時の中間群の合成横倍率
【0036】
上述の条件式(2)は、広角端における無限遠合焦時の中間群の合成横倍率を規定するための式である。条件式(2)を満足させることにより、第1レンズ群のパワーを強くすることができ、また、広角端において第1レンズ群を径方向に小型化したまま画角を広くすることができる。そのため、変倍時における収差変動を抑制することができる。すなわち、広角端における画角が広く、小型で光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0037】
これに対して、条件式(2)の数値が上限値を超えると、第1レンズ群のパワーを強くすることができず、広角端において広画角化を達成するには、第1レンズ群を構成するレンズのうち最も物体側にレンズ径の大きいレンズを配置する必要があり、径方向の小型化を図ることが困難になるため好ましくない。
【0038】
これらの効果を得る上で、条件式(2)の上限値は-0.60であることがより好ましく、-0.62であることがさらに好ましく、-0.64であることが一層好ましく、-0.66であることがより一層好ましい。
【0039】
本件発明のズームレンズは、上述した条件式(1)又は条件式(2)のいずれかを満足すると共に、次に説明する条件式の少なくとも1つ以上を満足することが好ましい。
【0040】
1-3-3.条件式(3)
-1.50 ≦ f1/fw ≦ -0.05 ・・・(3)
但し、
f1: 第1レンズ群の焦点距離
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【0041】
上述の条件式(3)は、第1レンズ群の焦点距離を規定するための式である。条件式(3)を満足させることにより、広角端において画角を広くすることができ、変倍時における収差変動を抑制することができる。すなわち、広角端における画角が広く、光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0042】
これに対して、条件式(3)の数値が下限値未満になると、広角端において広画角化を達成するには、第1レンズ群を構成するレンズのうち最も物体側にレンズ径の大きいレンズを配置する必要があり、径方向の小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(3)の数値が上限値を超えると、第1レンズ群のパワーが強くなりすぎるため、コマ収差や歪曲収差の補正が困難になり、光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になる。
【0043】
これらの効果を得る上で、条件式(3)の下限値は-1.45であることがより好ましく、-1.40であることがさらに好ましく、-1.35であることが一層好ましく、-1.30であることがより一層好ましく、-1.25であることがさらに一層好ましい。また、条件式(3)の上限値は-0.10であることがより好ましく、-0.15であることがさらに好ましく、-0.20であることが一層好ましい。
【0044】
1-3-4.条件式(4)
-4.0 ≦ fn/fpMax ≦ -1.5 ・・・(4)
但し、
fn: レンズ群Lnの焦点距離
fpMax: レンズ群LpMaxの焦点距離
【0045】
上述の条件式(4)は、レンズ群Lnの焦点距離と、レンズ群LpMaxの焦点距離との比を規定するための式である。条件式(4)を満足させることにより、第1レンズ群よりも像側の光学系(中間群とレンズ群Lnと最終レンズ群とからなる光学系)の高いテレフォト化が可能となり、光学全長の短縮化を実現することができる。
【0046】
これに対して、条件式(4)の数値が下限値未満になると、レンズ群Lnのパワーが強くなりすぎるため、歪曲収差やコマ収差の補正が困難となり好ましくない。また、レンズ群Lnのパワーが強くなりすぎると、レンズ群Lnよりも像側に配置される最終レンズ群を通過する周辺光線の光線高さが高くなってしまい、最終レンズ群のうち最も像側にレンズ径の大きいレンズを配置する必要が生じ、径方向の小型化を図ることが困難になるため好ましくない。一方、条件式(4)の数値が上限値を超えると、光学系の全長が長くなってしまい、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。
【0047】
これらの効果を得る上で、条件式(4)の下限値は-3.9であることがより好ましく、-3.8であることがさらに好ましく、-3.7であることが一層好ましく、-3.6であることがより一層好ましい。また、条件式(4)の上限値は-1.6であることがより好ましく、-1.7であることがさらに好ましく、-1.8であることが一層好ましい。
【0048】
1-3-5.条件式(5)
0.05 ≦ frt/ft ≦ 1.50 ・・・(5)
但し、
frt: 望遠端における無限遠合焦時の中間群から最終レンズ群までの合成焦点距離
ft: 望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【0049】
上述の条件式(5)は、望遠端における無限遠合焦時の中間群から最終レンズ群までの合成焦点距離を規定するための式である。条件式(5)を満足させることにより、ズームレンズの小型化と高い光学性能との両立を実現することができる。
【0050】
これに対して、条件式(5)の数値が下限値未満になると、歪曲収差やコマ収差、球面収差の補正が困難となるため好ましくない。一方、条件式(5)の数値が上限値を超えると、第1レンズ群における最も物体側のレンズを大口径化する必要が生じ、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。
【0051】
これらの効果を得る上で、条件式(5)の下限値は0.10であることがより好ましく、0.15であることがさらに好ましく、0.20であることが一層好ましい。また、条件式(5)の上限値は1.45であることがより好ましく、1.40であることがさらに好ましく、1.35であることが一層好ましい。
【0052】
1-3-6.条件式(6)
1.00≦ βn1≦5.00 ・・・・・(6)
但し、
βn1: 広角端における無限遠合焦時のレンズ群Lnの横倍率
【0053】
上述の条件式(6)は、広角端における無限遠合焦時のレンズ群Lnの横倍率を規定するための式である。条件式(6)を満足させることにより、ズーム全域における光学性能の高性能化が実現できると共に、光学全長の短縮化を実現することができる。
【0054】
これに対して、条件式(6)の数値が下限値未満になると、広角端から望遠端への変倍時におけるレンズ群Lnの移動量が大きくなりすぎるため光学系の全長が長くなってしまい、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。一方、条件式(6)の数値が上限値を超えると、レンズ群Lnの横倍率が高くなりすぎるため、歪曲収差や像面湾曲の補正が困難となり好ましくない。
【0055】
これらの効果を得る上で、条件式(6)の下限値は1.10であることがより好ましく、1.20であることがさらに好ましく、1.30であることが一層好ましい。また、条件式(6)の上限値は4.90であることがより好ましく、4.80であることがさらに好ましく、4.70であることが一層好ましい。
【0056】
1-3-7.条件式(7)
1.00 ≦ βn12 ≦ 5.00 ・・・(7)
但し、
βn12: 広角端における無限遠合焦時のレンズ群Lnと最終レンズ群との合成横倍率
【0057】
上述の条件式(7)は、広角端における無限遠合焦時のレンズ群Lnと最終レンズ群との合成横倍率を規定するための式である。条件式(7)を満足させることにより、ズーム全域における光学性能の高性能化が実現できると共に、光学全長の短縮化を実現することができる。
【0058】
これに対して、条件式(7)の数値が下限値未満になると、広角端から望遠端への変倍時におけるレンズ群Ln及び最終レンズ群の移動量が大きくなりすぎるため、光学系の全長が長くなってしまい、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。一方、条件式(7)の数値が上限値を超えると、レンズ群Lnと最終レンズ群との合成横倍率が高くなりすぎるため、歪曲収差や像面湾曲の補正が困難となり好ましくない。
【0059】
これらの効果を得る上で、条件式(7)の下限値は1.10であることがより好ましく、1.20であることがさらに好ましく、1.30であることが一層好ましい。また、条件式(7)の上限値は4.90であることがより好ましく、4.80であることがさらに好ましく、4.70であることが一層好ましい。
【0060】
1-3-8.条件式(8)
レンズ群Lnを光軸方向に移動させることで無限遠から近接物体への合焦を行う場合、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.60 ≦ |{1-(βn1×βn1)}×(βn2×βn2)| ≦ 15.0 ・・・(8)
但し、
βn1: 広角端における無限遠合焦時のレンズ群Lnの横倍率
βn2: 広角端における無限遠合焦時の最終レンズ群の横倍率
【0061】
上述の条件式(8)は、合焦時に光軸上を移動するレンズ群Lnのピント敏感度の絶対値、すなわちレンズ群Lnが単位量動いた場合の像面移動量を規定するための式である。条件式(8)を満足させることにより、無限遠から至近距離(近接物体)までの合焦時におけるフォーカス群(レンズ群Ln)の移動量の短縮化を可能とし、光学全長の短いズームレンズを実現することができる。
【0062】
これに対して、条件式(8)の数値が下限値未満になると、無限遠物体から近接物体への合焦時のレンズ群Lnの移動量が大きくなり、光学全長の小型化が困難となるため好ましくない。一方、条件式(8)の数値が上限値を超えると、ピント位置の位置ずれを補正するためのレンズ群Lnの移動量が小さくなり過ぎるため、高精度の制御が必要となり好ましくない。
【0063】
これらの効果を得る上で、条件式(8)の下限値は0.65であることがより好ましく、0.70であることがさらに好ましい。また、条件式(8)の上限値は14.0であることがより好ましく、13.0であることがさらに好ましく、12.0であることが一層好ましい。
【0064】
1-3-9.条件式(9)
1.00 ≦ |CrG1r/fw| ・・・(9)
但し、
CrG1r: 第1レンズ群における最も像側のレンズ面の曲率半径
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
【0065】
上述の条件式(9)は、第1レンズ群における最も像側のレンズ面の曲率半径を規定するための式である。条件式(9)を満足させることにより、球面収差や像面湾曲を補正し易く、高性能化を実現しながら小型化を図ることができる。
【0066】
これに対して、条件式(9)の数値が下限値未満になると、像面湾曲が過補正となると共に、第1レンズ群における最も物体側のレンズを大口径化する必要が生じ、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。
【0067】
これらの効果を得る上で、条件式(9)の下限値は1.50であることがより好ましく、2.00にするとさらに好ましく、2.50にすると一層好ましく、3.00にするとより一層好ましく、3.50にするとさらに一層好ましい。
【0068】
1-3-10.条件式(10)
0.65 ≦ (fw×tanω)/BFw ≦ 2.30 ・・・(10)
但し、
fw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
ω: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの半画角
BFw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との光軸上の間隔
【0069】
上述の条件式(10)は、広角端における画角と、広角端におけるズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との間隔(光学系のバックフォーカス)との比を規定するための式である。条件式(10)を満足させることにより、ズーム全域における光学性能の高性能化を実現できると共に、光学全長の短縮化を実現することができる。
【0070】
条件式(10)の数値が下限未満になると、軸外光線の像面への入射角を大きくする必要があるため好ましくない。すなわち、最終レンズ群の焦点距離を小さくする必要が生じ、コマ収差や歪曲収差の補正が困難となるため好ましくない。もしくは、最終レンズ群のレンズ径を大きくする必要が生じ、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。条件式(10)の数値が上限を超えると、光学系の全長が長くなってしまい、ズームレンズの小型化を図ることができず好ましくない。
【0071】
これらの効果を得る上で、条件式(10)の下限値は0.70であることがより好ましく、0.75であることがさらに好ましく、0.80であることが一層好ましく、0.85であることがより一層好ましく、0.90であることがさらに一層好ましい。また、条件式(10) の上限値は2.20であることがより好ましく、2.10であることがさらに好ましく、2.00であることが一層好ましく、1.90であることがより一層好ましく、1.80であることがさらに一層好ましい。
【0072】
1-3-11.条件式(11)
本件発明のズームレンズは、レンズ群LpMaxに少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズLpMpを有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
45.0 ≦ νdLpMp ≦ 98.0 ・・・(11)
但し、
νdLpMp: レンズLpMpのd線におけるアッベ数
【0073】
上述の条件式(11)は、レンズ群LpMaxに含まれるレンズLpMpのd線におけるアッベ数を規定するための式である。条件式(11)を満足させることにより、軸上色収差と球面収差とを補正し易く、高性能化を実現しながら小型化することができる。
【0074】
条件式(11)の数値が下限値未満になると、軸上色収差の補正が困難となるため好ましくない。条件式(11)の数値が上限を超えると、レンズが高価なものとなるため、低コスト化の点で好ましくない。
【0075】
これらの効果を得る上で、条件式(11)の下限値は50.0であることがより好ましく、55.0であることがさらに好ましく、60.0であることが一層好ましい。また、条件式(11)の上限値は95.0であることがより好ましく、90.0であることがさらに好ましく、85.0であることが一層好ましい。
【0076】
1-3-12.条件式(12)
本発明のズームレンズは、第1レンズ群に少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズL1pを有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
20.0 ≦ νdL1p ≦ 50.0 ・・・(12)
但し、
νdL1p: レンズL1pのd線におけるアッベ数
【0077】
上述の条件式(12)は、第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズL1pのd線におけるアッベ数を規定するための式である。負の屈折力を有するレンズ群では、正の屈折力を有するレンズに高分散ガラスを使用し、負の屈折力を有するレンズに低分散ガラスを使用することで倍率色収差の補正を行うことが一般的である。しかし、上述の条件式(12)の数値が下限値未満である高分散ガラスは高価であるため、低コスト化の点で好ましくない。また、上述の条件式(12)の数値が上限を超えると、負の屈折力を有するレンズに低分散ガラスを用いたとしても倍率色収差の補正が困難となるため好ましくない。すなわち、当該ズームレンズの構造が条件式(12)を満足させることにより、良好な像面性を確保しながら、低コスト化を図ることができる。
【0078】
これらの効果を得る上で、条件式(12)の下限値は22.0であることがより好ましく、24.0であることがさらに好ましく、26.0であることが一層好ましい。また、条件式(12)の上限値は47.0であることがより好ましく、44.0であることがさらに好ましく、41.0であることが一層好ましい。
【0079】
1-3-13.条件式(13)
本件発明のズームレンズは、第1レンズ群に少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズL1pを有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
1.70 ≦ NdL1p ≦ 2.20 ・・・(13)
但し、
NdL1p: レンズL1pのd線における屈折率
【0080】
上述の条件式(13)は、第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズL1pのd線における屈折率を規定するための式である。負の屈折力を有するレンズ群では、正の屈折力を有するレンズに高屈折率ガラスを使用し、負の屈折力を有するレンズに低屈折率ガラスを使用することでペッツバール和の補正を行うことが一般的である。ここで、上述の条件式(13)の数値が下限値未満であると、像面性の補正が困難になるため好ましくない。また、条件式(13)の数値が上限を超えるような屈折率を有する高屈折率ガラスは高価であるため、低コスト化の点で好ましくない。すなわち、条件式(13)を満足させることにより、良好な像面性を確保しながら、低コスト化を図ることができる。
【0081】
これらの効果を得る上で、条件式(13)の下限値は1.75であることがより好ましく、1.80であることがさらに好ましく、1.85であることが一層好ましい。また、条件式(13)の上限値は2.15であることがより好ましく、2.10であることがさらに好ましく、2.05であることが一層好ましい。
【0082】
1-3-14.条件式(14)
|BFt-BFw|/TLw ≦ 0.30 ・・・(14)
但し、
BFt: 望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との光軸上の間隔
BFw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの最も像側のレンズ面と像面との光軸上の間隔
TLw: 広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの光学全長
【0083】
上述の条件式(14)は、広角端から望遠端に変倍する際の、最終レンズ群の物体側への移動量を規定するための式である。条件式(14)を満足させることにより、最終レンズ群の屈折力が適正であり、且つ、変倍時における当該移動量が適正な範囲内となる。そのため、所定の変倍を確保しつつ、望遠端における光学全長の短縮化を実現することができる。
【0084】
これに対して、条件式(14)の数値が上限値を超えると、変倍時における最終レンズ群の上述の移動量(広角端から望遠端に変倍する際の最終レンズ群の物体側への移動量)が大きくなる。この場合、鏡筒を外筒部分に内筒部分を収容した入れ子状の構造とした場合において、広角端における光学全長に合わせて鏡筒長を設計すると、内筒部分を二重にして外筒部分に収容する必要が生じるなど鏡筒の構造が複雑となり、鏡筒の外径も大きくなる(製品が大型化する)ため好ましくない。
【0085】
これらの効果を得る上で、条件式(14)の上限値は0.27であることがより好ましく、0.24であることがさらに好ましく、0.21であることが一層好ましく、0.18であることがより一層好ましい。
【0086】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上述の本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズの像側に、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0087】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサーやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。
【0088】
当該撮像装置は、前記撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して撮像画像の形状を変化させる画像処理部や、当該画像処理部において撮像画像データを加工するために用いる画像補正データ、画像補正プログラム等を保持する画像補正データ保持部等を有することが好ましい。ズームレンズを小型化した場合、結像面において結像された撮像画像形状に歪み(歪曲)が生じやすくなる。その際、画像補正データ保持部に予め撮像画像形状の歪みを補正するための歪み補正データを保持させておき、上述の画像処理部において、画像補正データ保持部に保持された歪み補正データを用いて、撮像画像形状の歪みを補正することが好ましい。このような撮像装置であれば、ズームレンズ内で最も像側に配置されるレンズの負の屈折力を強くすることができるため、当該ズームレンズの最も像側に配置されるレンズの径を小型化することができる。すなわち、当該撮像装置によれば、ズームレンズの小型化をより一層図ることができ、秀麗な撮像画像を得ると共に、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0089】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0090】
(1)ズームレンズの光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの広角端及び望遠端における無限遠合焦時のレンズ構成を示す断面図である。なお、
図1に示す「IP」は結像面(像面)であり、具体的にはCCDセンサー、CMOSセンサー等の固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を表す。また、結像面IPの物体側にはカバーガラス「CG」等の実質的な屈折力を有さない平行平板を備える。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0091】
実施例1のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成されている。開口絞りSは、第3レンズ群G3の物体側に隣接して配置されている。本実施例では、中間群は、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3から構成され、レンズ群Lnは第4レンズ群G4に相当する。
【0092】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL101と、物体側凸形状の負メニスカスレンズL102と、両凹レンズL103と、物体側凸形状の正メニスカスレンズL104とから構成される。なお、レンズL102及びレンズL104における像側の各レンズ面は、
ガラス表面に非球面フィルムを貼設したいわゆる複合非球面である。また、レンズL104は本件発明にいうレンズ「L1p」に、レンズL104の像側のレンズ面は本件発明にいうレンズ面「CrG1r」に各々相当する。
【0093】
第2レンズ群G2は、物体側凸形状の負メニスカスレンズL105と両凸レンズL106とが接合された接合レンズから構成されている。
【0094】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、開口絞りSと、両凸レンズL107と両凹レンズL108とが接合された接合レンズと、物体側凸形状の負メニスカスレンズL109と物体側凸形状の正メニスカスレンズL110とが接合された接合レンズと、両凸レンズL111とから構成されている。なお、レンズL111の両面は、非球面形状である。また、第3レンズ群G3は本件発明にいうレンズ群「LpMax」に、レンズL111は本件発明にいうレンズ「LpMp」に各々相当する。
【0095】
第4レンズ群G4は、物体側凸形状の負メニスカスレンズL112から構成されている。
【0096】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凸レンズL113と、両凹レンズL114とから構成されている。レンズL113の両面は、非球面形状である。
【0097】
実施例1のズームレンズは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して第1レンズ群G1は像側に移動した後に物体側へ移動し、第2レンズ群G2は物体側へ移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側へ移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動する。
【0098】
また、当該ズームレンズは、無限遠物体から近接物体への合焦の際、第4レンズ群G4が光軸に沿って物体側から像側に移動する。
【0099】
当該ズームレンズは、第3レンズ群G3に含まれるレンズL111を防振群として、当該防振群を光軸と垂直方向に移動させることで、手ブレ補正を行うことができる。
【0100】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。なお、以下の表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。表1に当該ズームレンズの面データを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「R」はレンズ面の曲率半径、「D」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「ABV」はd線に対するアッベ数を示している。また、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを表し、「S」は開口絞りを表している。さらに、レンズ面の光軸上の間隔の欄に、「D(10)」、「D(13)」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時又は合焦時に変化する可変間隔であることを意味する。また、曲率半径の「∞(無限大)」は平面を意味する。表1における第29面及び第30面はカバーガラス(CG)の面データである。
【0101】
表2は、当該ズームレンズの緒元表である。当該緒元表には、無限遠合焦時における当該ズームレンズの焦点距離「f」、Fナンバー「Fno.」、半画角「ω」、像高「Y」、光学全長「TL」、変倍時及び合焦時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示す。但し、表2には、左側から順に、広角端、中間焦点距離状態、望遠端におけるそれぞれの値を示している。
【0102】
表3は、当該ズームレンズを構成する各レンズ群が有するレンズの面番号と、各レンズ群の焦点距離とを示す。
【0103】
表4は、各非球面の非球面係数である。当該非球面係数は、各非球面形状を以下の式で定義したときの値である。
【0104】
X(Y)=CY2/[1+{1-(1+Κ)・C2Y2}1/2]+A4・Y4+A6・Y6+A8・Y8+A10・Y10
【0105】
但し、表4において、「E-a」は「×10-a」を示す。また、上述の式において、「X」は光軸方向の基準面からの変位量、「C」は面頂点での曲率、「Y」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「Κ」はコーニック係数、「An」はn次の非球面係数とする。
【0106】
また、表21に条件式(1)~条件式(14)の値と、条件式(1)~条件式(14)の計算に用いた各値とを示す。
【0107】
上述した表に関する事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0108】
[表1]
面番号 R D Nd ABV
物体面 ∞ ∞
1 51.4464 2.0000 1.89085 36.41
2 20.0000 5.7196
3 47.2371 1.5000 1.72916 54.67
4 23.5686 0.2000 1.53610 41.21
5 ASP 19.7552 6.4678
6 -206.9428 1.5000 1.72916 54.67
7 23.0858 1.9587
8 26.8465 4.0557 1.85764 22.33
9 121.5647 0.2000 1.53610 41.21
10 ASP 105.4586 D(10)
11 29.2922 1.0000 1.92108 22.20
12 16.8467 4.9210 1.64109 33.36
13 -216.9562 D(13)
14 S ∞ 2.0000
15 59.2608 4.0417 1.54697 68.55
16 -17.6603 1.0000 1.71375 55.52
17 69.4793 0.1016
18 20.2723 1.0000 1.80899 42.96
19 13.2943 3.8193 1.51650 70.18
20 51.7432 4.1444
21 ASP 34.3114 6.1621 1.48556 80.01
22 ASP -18.9780 D(22)
23 32.3936 1.0000 1.68811 57.08
24 19.0779 D(24)
25 ASP 23.9793 8.9358 1.49700 81.61
26 ASP -18.9694 0.1000
27 -34.6849 1.2000 1.73979 49.98
28 22.9171 D(28)
29 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
30 ∞ 1.0000
【0109】
[表2]
広角端 中間焦点距離 望遠端
f 15.45 21.84 29.11
Fno. 2.88 3.60 4.12
ω 56.70 45.52 36.98
Y 19.97 20.64 21.23
TL 120.00 117.10 119.65
D(10) 10.1655 5.7974 3.1563
D(13) 16.3597 7.5636 2.1111
D(22) 6.1150 3.5611 2.4945
D(24) 3.4600 6.0138 7.0805
D(28) 17.3722 27.6314 38.2786
【0110】
[表3]
群 面番号 焦点距離
G1 1-10 -16.25
G2 11-13 55.96
G3 14-22 28.71
G4 23-24 -69.58
G5 25-28 -400.00
【0111】
[表4]
面番号 K A4 A6 A8 A10
5 0.00000E+00 -2.23462E-05 -4.09357E-08 -8.91357E-11 0.00000E+00
10 0.00000E+00 4.48229E-06 6.87070E-09 -5.54223E-11 0.00000E+00
21 0.00000E+00 -2.17920E-05 -5.42256E-09 1.86040E-10 0.00000E+00
22 0.00000E+00 3.69697E-05 -7.19257E-08 2.55987E-10 0.00000E+00
25 0.00000E+00 1.97160E-05 -5.15489E-08 3.03503E-10 -5.84468E-13
26 0.00000E+00 5.13298E-05 -3.64861E-08 2.43868E-10 -2.67122E-13
【0112】
図2~
図4に実施例1のズームレンズの広角端、中間焦点距離状態、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.6nm)、破線がF線(波長λ=486.1nm)、点線がC線(波長λ=656.3nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は半画角、横軸にデフォーカスをとり、四点鎖線がd線に対するサジタル像面(S)、実線がd線に対するメリジオナル像面(M)を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は半画角、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL201と、物体側凸形状の負メニスカスレンズL202と、物体側凸形状の負メニスカスレンズL203と、物体側凸形状の正メニスカスレンズL204とから構成される。なお、レンズL202及びレンズL204における像側の各レンズ面は、複合非球面である。また、レンズL204は本件発明にいうレンズ「L1p」に、レンズL204の像側のレンズ面は本件発明にいうレンズ面「CrG1r」に各々相当する。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、開口絞りSと、両凸レンズL207と両凹レンズL208とが接合された接合レンズと、物体側凸形状の負メニスカスレンズL209と物体側凸形状の正メニスカスレンズL210とが接合された接合レンズと、両凸レンズL211とから構成されている。なお、レンズL211の両面は非球面形状である。また、第3レンズ群G3は本件発明にいうレンズ群「LpMax」に、レンズL211は本件発明にいうレンズ「LpMp」に各々相当する。
実施例2のズームレンズは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して第1レンズ群G1は像側に移動した後に物体側へ移動し、第2レンズ群G2は像側に移動した後に物体側へ移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側へ移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動する。