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特開2022-126057表示処理装置、訓練システム及び表示処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126057
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】表示処理装置、訓練システム及び表示処理方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/16 20060101AFI20220823BHJP
   G09B 9/05 20060101ALI20220823BHJP
   G06T 11/80 20060101ALI20220823BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220823BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20220823BHJP
【FI】
G09B9/16
G09B9/05 E
G06T11/80 A
G06F3/01 510
G06F3/0481
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023908
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健吾
(72)【発明者】
【氏名】針本 健輔
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA06
5B050BA13
5B050CA07
5B050DA01
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA09
5B050FA17
5B050GA08
5E555AA22
5E555AA64
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA41
5E555CA42
5E555CA44
5E555CB65
5E555CC05
5E555DA08
5E555DB53
5E555DC26
5E555DC31
5E555DC35
5E555DC36
5E555DC37
5E555DC75
5E555DC84
5E555EA03
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】監視対象物への視認を適切に促すことができる。
【解決手段】複数の監視対象物に基づいて操作される機械に関する表示処理を実行する表示処理装置において、操作者に対して画像を表示する表示部と、前記画像上における前記操作者の視点位置を検出する視線検出装置と、前記視線検出装置により検出した前記画像上における前記視点位置に基づいて、前記画像への表示処理を実行する制御部と、を備え、前記画像は、前記機械に含まれる前記監視対象物の表示領域となる対象領域を含み、前記制御部は、前記視点位置を含む前記画像上の前記表示領域を視認領域とすると、前記視認領域以外の領域である非視認領域に含まれる前記対象領域に対して表示処理を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象物に基づいて操作される機械に関する表示処理を実行する表示処理装置において、
操作者に対して画像を表示する表示部と、
前記画像上における前記操作者の視点位置を検出する視線検出装置と、
前記視線検出装置により検出した前記画像上における前記視点位置に基づいて、前記画像への表示処理を実行する制御部と、を備え、
前記画像は、前記機械に含まれる前記監視対象物の表示領域となる対象領域を含み、
前記制御部は、
前記視点位置を含む前記画像上の前記表示領域を視認領域とすると、前記視認領域以外の領域である非視認領域に含まれる前記対象領域に対して表示処理を実行する表示処理装置。
【請求項2】
前記画像は、前記操作者による注視が要求される前記対象領域となる注視領域を含み、
前記制御部は、前記視認領域と前記注視領域とが重複していないと判定すると、前記表示処理として、前記注視領域を強調する強調表示処理を実行する請求項1に記載の表示処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記視認領域と前記注視領域とが重複する時間を注視時間として取得し、
前記強調表示処理において、所定期間における前記注視時間の割合である実注視比率と、前記注視領域に対して予め要求される要求注視比率とを用いており、
前記実注視比率が前記要求注視比率よりも大きくなる場合、前記強調表示処理の実行を停止する一方で、
前記実注視比率が前記要求注視比率以下となる場合、前記強調表示処理を実行する請求項2に記載の表示処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記強調表示処理を実行する場合、前記実注視比率に基づいて強調表示の強度を変化させる請求項3に記載の表示処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記視認領域と前記注視領域とが重複しない時間を非注視時間として取得し、
前記強調表示処理を実行する場合、前記非注視時間に基づいて強調表示の強度を変化させる請求項3に記載の表示処理装置。
【請求項6】
前記強調表示処理は、点灯表示、点滅表示、拡大表示の少なくとも一つを含む表示処理である請求項1から5のいずれか1項に記載の表示処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記表示処理として、前記非視認領域を隠すマスク表示処理を実行する請求項1から6のいずれか1項に記載の表示処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の表示処理装置と、
複数の前記監視対象物を含む前記機械の動作を模擬するシミュレータと、を備える訓練システム。
【請求項9】
操作者に対して画像を表示する表示部を備える表示処理装置に、複数の監視対象物に基づいて操作される機械に関する表示処理を実行させる表示処理方法において、
前記画像上における前記操作者の視点位置を検出するステップと、
検出した前記画像上における前記視点位置に基づいて、前記画像への表示処理を実行するステップと、を備え、
前記画像は、前記機械に含まれる前記監視対象物の表示領域となる対象領域を含み、
前記表示処理を実行するステップでは、
前記視点位置を含む前記画像上の前記表示領域を視認領域とすると、前記視認領域以外の領域である非視認領域に含まれる前記対象領域に対して表示処理を実行する表示処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示処理装置、訓練システム及び表示処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転のための情報処理を実行する運転用情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。運転用情報処理装置は、車両の運転者の視線を検出する視線検出装置を備えており、運転者が特定の範囲を注視した場合、車両以外の部分に設置された通知部に、運転に関する情報を通知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-124892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等の輸送機械の操作を訓練するシミュレータを用いた訓練システムでは、操作者が、複数の監視対象物を視認しつつ、輸送機械の操作を行う。特許文献1では、運転に関する情報が、車両以外の部分に設置された通知部に通知されることから、操作者による通知の確認に際して、監視対象物に対する操作者の視認が外れたり、通知内容の把握に負荷が生じたりする。また、操作者が複数の監視対象物を適切に視認しているか否かを把握することが困難となっている。
【0005】
そこで、本開示は、監視対象物への視認を適切に促すことができる表示処理装置、訓練システム及び表示処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示処理装置は、複数の監視対象物に基づいて操作される機械に関する表示処理を実行する表示処理装置において、操作者に対して画像を表示する表示部と、前記画像上における前記操作者の視点位置を検出する視線検出装置と、前記視線検出装置により検出した前記画像上における前記視点位置に基づいて、前記画像への表示処理を実行する制御部と、を備え、前記画像は、前記機械に含まれる前記監視対象物の表示領域となる対象領域を含み、前記制御部は、前記視点位置を含む前記画像上の前記表示領域を視認領域とすると、前記視認領域以外の領域である非視認領域に含まれる前記対象領域に対して表示処理を実行する。
【0007】
本開示の訓練システムは、上記の表示処理装置と、複数の前記監視対象物を含む前記機械の動作を模擬するシミュレータと、を備える。
【0008】
本開示の表示処理方法は、操作者に対して画像を表示する表示部を備える表示処理装置に、複数の監視対象物に基づいて操作される機械に関する表示処理を実行させる表示処理方法において、前記画像上における前記操作者の視点位置を検出するステップと、検出した前記画像上における前記視点位置に基づいて、前記画像への表示処理を実行するステップと、を備え、前記画像は、前記機械に含まれる前記監視対象物の表示領域となる対象領域を含み、前記表示処理を実行するステップでは、前記視点位置を含む前記画像上の前記表示領域を視認領域とすると、前記視認領域以外の領域である非視認領域に含まれる前記対象領域に対して表示処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、監視対象物への視認を適切に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る訓練システムを模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、実施形態1に係る訓練システムのブロック図である。
図3図3は、表示部に表示される画像を示す図である。
図4図4は、強調表示処理が実行されたときの画像を示す図である。
図5図5は、強調表示処理が実行されないときの画像を示す図である。
図6図6は、実施形態1に係る表示処理方法の一例のフローチャートである。
図7図7は、実施形態1に係る表示処理方法の他の一例のフローチャートである。
図8図8は、強調表示処理が実行されたときの画像の一例を示す図である。
図9図9は、強調表示処理が実行されたときの画像の他の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態2に係る訓練システムにおいて表示部に表示される画像を示す図である。
図11図11は、実施形態2に係る表示処理方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1に係る訓練システム1は、操作者に対して機械の操作を訓練させるための装置となっており、また、機械の操作に応じた機械の動作を模擬する装置となっている。機械としては、複数の監視対象物に基づいて操作される機械となっており、例えば、車両または航空機等の輸送機械、または複数の機器からなる設備等が適用される。なお、機械は、複数の監視対象物に基づいて操作される機械であればよく、特に限定されない。実施形態1では、航空機の訓練に用いられる訓練システム1として説明する。また、航空機における複数の監視対象物としては、例えば、航空機内の計器等であったり、航空機外の建物等であったりする。この訓練システム1は、航空機の動作を模擬するシミュレータと、操作者に表示する表示部を処理する表示処理装置とが一体化されたシステムとなっている。
【0013】
図1は、実施形態1に係る訓練システムを模式的に示す概略構成図である。図2は、実施形態1に係る訓練システムのブロック図である。図3は、表示部に表示される画像を示す図である。図4は、強調表示処理が実行されたときの画像を示す図である。図5は、強調表示処理が実行されないときの画像を示す図である。図6は、実施形態1に係る表示処理方法の一例のフローチャートである。図7は、実施形態1に係る表示処理方法の他の一例のフローチャートである。
【0014】
(シミュレータ)
図1及び図2に示すように、訓練システム1は、表示部として機能するヘッドマウントディスプレイ(HDM:以下、単にディスプレイという)11と、視線検出装置12と、操縦装置13と、制御装置15と、を備えている。なお、ディスプレイ11、視線検出装置12及び制御装置15は、表示処理装置として機能する。
【0015】
ディスプレイ11は、操作者に対して画像を表示するデバイスである。ディスプレイ11は、表示する画像として、例えば、図3に示すように、航空機内の監視対象物となる機内オブジェクトO1、航空機外の監視対象物となる機外オブジェクトO2を表示する画像20を表示している。つまり、画像20には、機内オブジェクトO1を表示する表示領域と、機外オブジェクトO2を表示する表示領域とが含まれている。機内オブジェクトO1は、例えば、航空機のフレーム、複数の計器、窓、窓枠等である。機外オブジェクトO2は、例えば、建物等である。図3に示すように、画像20には、機内オブジェクトO1である複数の計器を模擬した表示領域となる対象領域E1が複数含まれている。複数の対象領域E1に対応する計器としては、例えば、A/S(対気速度計)、A/I(姿勢指示計)、ALT(高度計)、T/B(昇降計)、D/G(方位計)、V/S(傾斜計)、RPM(エンジン回転数)等がある。後述する表示処理は、機内オブジェクトO1を表示する表示領域に行われる一方で、機外オブジェクトO2を表示する表示領域に行われない処理となっている。
【0016】
また、ディスプレイ11は、ヘッドマウントディスプレイであることから、ディスプレイ11(を装着する操作者)の姿勢及び位置を検出している。そして、ディスプレイ11は、制御装置15に接続されており、姿勢及び位置に関する情報を制御装置15へ向けて出力している。また、ディスプレイ11は、制御装置15により表示制御されることで、表示処理が行われた画像20を表示する。
【0017】
視線検出装置12は、操作者の視線を検出する装置であり、例えば、アイトラッカーまたはカメラ等の機器が用いられる。視線検出装置12は、ディスプレイ11上における操作者の視点位置Pを検出する。視線検出装置12は、制御装置15に接続されており、視線検出によって得られるディスプレイ11上の視点位置Pに関する情報を、制御装置15へ向けて出力する。また、視線検出装置12は、所定のサンプリング周期で視点位置Pを検出して制御装置15へ出力することから、図4及び図5の実線で示すように、制御装置15は、取得した複数の視点位置Pを、視点位置Pの移動に関する履歴(移動履歴)として取得可能となっている。
【0018】
操縦装置13は、操作者の操作入力を取得する装置である。操縦装置13は、制御装置15に接続されており、操作入力に関する情報を、制御装置15へ向けて出力する。
【0019】
制御装置15は、航空機の動作を模擬したり、操作者の操作を検出したり、ディスプレイ11に対する表示制御を行ったりしている。制御装置15は、制御部25と、記憶部26とを有している。
【0020】
記憶部26は、例えば、半導体記憶デバイス、及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスを含む。記憶部26は、制御部25の処理結果を一時的に記憶する作業領域として利用されたり、各種プログラム及び各種データを記憶したりしている。記憶部26は、例えば、各種プログラムとして、航空機の動作を模擬するプログラム、ディスプレイ11の表示を制御するプログラム、視線検出を行うプログラム、操作検出を行うプログラム等が記憶されている。また、記憶部26は、各種データとして、視線検出装置12により検出した視点位置Pに関する情報、後述する表示処理に用いられる情報である要求注視比率に関する情報等を記憶している。
【0021】
制御部25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。具体的に、制御部25は、記憶部26に記憶されているプログラムに含まれる命令を実行することによって各種機能を実現する。制御部25は、例えば、ディスプレイ11の表示を制御するプログラムを実行することにより、ディスプレイ11に表示される画像20に対する表示処理を実行する。
【0022】
ここで、実施形態1では、表示処理として、図4及び図5に示す表示処理を実行している。実施形態1の表示処理は、視点位置Pを含む画像20上の表示領域を視認領域E2とすると、視認領域E2以外の領域である非視認領域に含まれる対象領域E1に対して行われている。具体的に、実施形態1の表示処理は、所定の訓練イベントの実行時において実行されており、訓練イベントに対応付けて、操作者による注視が要求される対象領域E1となる注視領域E3が設定されている。図4及び図5に示す表示処理においては、注視領域E3として、A/S(対気速度計)、A/I(姿勢指示計)、ALT(高度計)、T/B(昇降計)、D/G(方位計)、V/S(傾斜計)に対応する対象領域E1が設定されている。なお、注視領域E3は、上記の対象領域E1に特に限定されず、航空機を構成する構造物を表示する表示領域であれば、何れの表示領域であってもよい。また、視認領域E2は、少なくとも視点位置Pを含む表示領域であればよく、視点位置Pに対応する点としての表示領域であってもよいし、視点位置Pを中心とする円形の表示領域であってもよい。
【0023】
図4に示すように、制御装置15の制御部25は、注視領域E3を含む画像20において、視認領域E2と注視領域E3とが重複しているか否かを判定し、重複していないと判定すると、表示処理として、重複していない注視領域E3を強調する強調表示処理を実行する。強調表示としては、図4に示す例として、注視領域E3の周縁を点灯させる点灯表示となっている。強調表示は、点灯表示に特に限定されず、点滅表示、または拡大表示であってもよい。
【0024】
一方で、図5に示すように、制御装置15の制御部25は、注視領域E3を含む画像20において、視認領域E2と注視領域E3とが重複しているか否かを判定し、重複していると判定すると、強調表示処理を実行しない。
【0025】
(表示処理方法)
次に、図6を参照して、訓練システム1において実行される表示処理方法の一例について説明する。図6に示す表示処理方法は、複数の注視領域E3において実行されている。表示処理方法は、訓練システム1による所定の訓練イベントが開始されることで実行される(ステップS1)。ステップS1の実行後、制御部25は、視線検出装置12により操作者の視点位置Pを検出して、視点位置Pを含む視認領域E2を取得する(ステップS2)。そして、制御部25は、画像20上における視認領域E2に基づいて、画像20への表示処理を実行するステップS3からステップS5を実行する。つまり、制御部25は、取得した視認領域E2と、設定された注視領域E3とが重複しているか否かを判定することで、注視の有無を判定している(ステップS3)。制御部25は、視認領域E2と注視領域E3とが重複していると判定すると、注視あり(ステップS3:Yes)として、注視領域E3に対する強調表示処理の実行を停止する(ステップS4)。一方で、制御部25は、視認領域E2と注視領域E3とが重複していないと判定すると、注視なし(ステップS3:No)として、注視領域E3に対する強調表示処理を実行する(ステップS5)。なお、ステップS3における視認領域E2と注視領域E3との重複判定は、注視時間をパラメータとして加えてもよい。つまり、制御部25は、ステップS3において、視認領域E2と注視領域E3とが重複し、注視時間が所定のしきい値以下となる場合、重複していないと判定する。一方で、制御部25は、ステップS3において、視認領域E2と注視領域E3とが重複し、注視時間が所定のしきい値よりも長い場合、重複していると判定するようにしてもよい。ステップS4またはステップS5の実行後、制御部25は、訓練イベントが終了したか否かを判定する(ステップS6)。制御部25は、訓練イベントが終了したと判定する(ステップS6:Yes)と、表示処理に関する一連の制御を終了する。一方で、制御部25は、訓練イベントが終了していないと判定する(ステップS6:No)と、再び、ステップS2に進み、訓練イベントが終了するまで、表示処理に関する制御を実行する。
【0026】
次に、図7を参照して、訓練システム1において実行される表示処理方法の他の一例について説明する。図7に示す表示処理方法では、ステップS3における注視の有無の判定を、注視比率を用いて行っている。注視比率は、所定期間における注視時間の割合である。所定期間は、現在時刻と、現在時刻よりもt秒前の時刻との間の期間である。注視時間は、視認領域E2と注視領域E3とが重複する時間であり、所定期間tにおける積算時間である。図7の表示処理方法では、注視比率として、実注視比率Pと要求注視比率Prefとが用いられる。実注視比率Pは、視線検出装置12により検出された視点位置Pに基づく視認領域E2から算出される数値である。要求注視比率Prefは、所定の訓練イベントにおける注視領域E3のそれぞれに予め要求される数値である。要求注視比率Prefは、予め記憶部26に記憶されている。
【0027】
図7に示す表示処理方法は、図6の表示処理方法と同様に、訓練システム1による所定の訓練イベントが開始されることで実行される(ステップS1)。ステップS1の実行後、制御部25は、視線検出装置12により操作者の視点位置Pを検出して、視点位置Pを含む視認領域E2を取得する(ステップS2)。そして、制御部25は、画像20上における視認領域E2に基づいて、画像20への表示処理を実行するステップS3aからステップS3cを実行し、この後、図6の表示処理方法と同様にステップS4からステップS6を実行する。
【0028】
具体的に、制御部25は、取得した視認領域E2と、設定された注視領域E3とが重複しているか否かを判定し、重複している場合には、注視時間としてカウントする(ステップS3a)。また、制御部25は、ステップS3aにおいて、所定期間tに対する注視時間の割合である実注視比率Pを算出する。この後、制御部25は、記憶部26から要求注視比率Prefを取得する(ステップS3b)。そして、制御部25は、算出した実注視比率Pと、取得した要求注視比率Prefとを比較することで、注視の有無を判定している(ステップS3c)。つまり、ステップS3cにおいて、制御部25は、実注視比率Pが要求注視比率Prefよりも大きいか否かを判定する。制御部25は、実注視比率Pが要求注視比率Prefよりも大きいと判定すると、注視あり(ステップS3c:Yes)として、注視領域E3に対する強調表示処理を実行しない(ステップS4)。一方で、制御部25は、実注視比率Pが要求注視比率Pref以下であると判定すると、注視なし(ステップS3c:No)として、注視領域E3に対する強調表示処理の実行を停止する(ステップS5)。ステップS4またはステップS5の実行後、制御部25は、図6の表示処理方法と同様に、訓練イベントが終了したか否かを判定する(ステップS6)。制御部25は、訓練イベントが終了したと判定する(ステップS6:Yes)と、表示処理に関する一連の制御を終了する。一方で、制御部25は、訓練イベントが終了していないと判定する(ステップS6:No)と、再び、ステップS2に進み、訓練イベントが終了するまで、表示処理に関する制御を実行する。
【0029】
なお、上記した強調表示処理は一例であり、上記の処理に特に限定されない。例えば、制御部25は、強調表示処理として、例えば、図8及び図9に示す強調表示処理を実行してもよい。図8は、強調表示処理が実行されたときの画像の一例を示す図である。図9は、強調表示処理が実行されたときの画像の他の一例を示す図である。
【0030】
図8は、訓練イベントの切り替えによって、所定の注視領域E3に対応付けられた要求注視比率Prefが大きくなった場合の画像20を示している。具体的に、図8では、A/I(姿勢指示計)の注視領域E3に対応する要求注視比率Prefが、訓練イベントの切り替え前後において大きくなった場合となっており、この場合、制御部25は、図7に示す表示処理方法に基づいて、制御部25が、A/I(姿勢指示計)の注視領域E3に対して強調表示処理を実行している。
【0031】
図9は、強調表示処理における強調表示の表示形態が、拡大表示となっている。つまり、制御部25は、強調表示処理の対象となる注視領域E3が、より大きな表示領域となるように拡大表示を実行してもよい。
【0032】
また、実施形態1の強調表示処理において、制御部25は、実注視比率Pに基づいて強調表示の強度を変化させてもよい。つまり、強調表示処理において、実注視比率Pが要求注視比率Prefよりも大幅に小さい場合、点灯表示の明度を明るくし、要求注視比率Prefに近づくにつれて、明度を暗くなるようにしてもよい。また、制御部25は、実注視比率Pの他、非注視時間(視認領域E2と注視領域E3とが重複していない時間)の長さに応じて強調表示の強度を変化させてもよい。さらに、制御部25は、実注視比率Pが所定のしきい値より小さい状態となる時間に応じて、強調表示の強度を変化させてもよい。
【0033】
また、実施形態1では、複数の計器に対応する対象領域E1を、注視領域E3として設定したが、設定対象となる注視領域E3は、機内オブジェクトO1であれば、何れの表示領域であってもよい。例えば、注視領域E3として、外の注視を要求する場合、制御部25は、機内オブジェクトO1としての窓、窓枠を強調表示処理してもよい。
【0034】
また、制御部25は、表示処理の実行に関する履歴を履歴データとして、記憶部26に記憶させておき、履歴データを用いた評価を実行してもよい。
【0035】
[実施形態2]
次に、図10及び図11を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図10は、実施形態2に係る訓練システムにおいて表示部に表示される画像を示す図である。図11は、実施形態2に係る表示処理方法の一例のフローチャートである。
【0036】
実施形態2では、図10に示すように、制御部25による表示処理として、非視認領域E5を隠すマスク表示処理を実行している。非視認領域E5は、視認領域E2以外の領域である。つまり、制御部25は、画像20上において、視認領域E2が重複しているか否かを判定し、視認領域E2が重複していない、すなわち非視認領域E5であると判定すると、表示処理として、非視認領域E5を隠すマスク表示処理を実行する。マスク表示処理としては、図10に示す例として、非視認領域E5をぼかすぼかし表示となっている。マスク表示は、ぼかし表示に特に限定されず、非視認領域E5を隠すような表示処理であれば、何れの表示処理であってもよい。
【0037】
(表示処理方法)
次に、図11を参照して、訓練システム1において実行される実施形態2に係る表示処理方法の一例について説明する。図11に示す表示処理方法は、図6に示す表示処理方法のステップS3からステップS5を、ステップS13からステップS15に代えたものとなっている。以下では、ステップS13からステップS15までを説明する。
【0038】
制御部25は、ステップS2において、視認領域E2を取得すると、画像20上において、視認領域E2重複しているか否かを判定する(ステップS13)。制御部25は、画像20に対して視認領域E2が重複していると判定する(ステップS13:Yes)と、視認領域E2に対するぼかし処理の実行を停止する(ステップS14)。一方で、制御部25は、画像20に対して視認領域E2が重複していない、すなわち、非視認領域E5であると判定する(ステップS13:No)と、非視認領域E5に対するぼかし処理を実行する(ステップS15)。この後、制御部25は、図6のステップS6を実行して、一連の制御を終了する。
【0039】
以上のように、本実施形態に記載の表示処理装置、訓練システム1及び表示処理方法は、例えば、以下のように把握される。
【0040】
第1の態様に係る表示処理装置は、複数の監視対象物を含む機械に関する表示処理を実行する表示処理装置において、操作者に対して画像20を表示する表示部(ディスプレイ11)と、前記画像20上における前記操作者の視点位置Pを検出する視線検出装置12と、前記視線検出装置12により検出した前記画像20上における前記視点位置Pに基づいて、前記画像20への表示処理を実行する制御部25と、を備え、前記画像20は、前記監視対象物の表示領域となる対象領域E1を含み、前記制御部25は、前記視点位置Pを含む前記画像20上の前記表示領域を視認領域E2とすると、前記視認領域E2以外の領域である非視認領域E5に含まれる前記対象領域E1に対して表示処理を実行する。
【0041】
この構成によれば、非視認領域E5に含まれる対象領域E1に対して表示処理を実行することにより、注視されていない監視対象物への視認を適切に促すことができる。
【0042】
第2の態様として、前記画像20は、前記操作者による注視が要求される前記対象領域となる注視領域E3を含み、前記制御部25は、前記視認領域E2と前記注視領域E3とが重複していないと判定すると、前記表示処理として、前記注視領域E3を強調する強調表示処理を実行する。
【0043】
この構成によれば、注視が要求される注視領域E3が注視されていない場合、注視されていない注視領域E3を強調表示することができるため、注視されていない注視領域E3への視認を適切に促すことができる。
【0044】
第3の態様として、前記制御部25は、前記視認領域E2と前記注視領域E3とが重複する時間を注視時間として取得し、前記強調表示処理において、所定期間における前記注視時間の割合である実注視比率Pと、前記注視領域E3に対して予め要求される要求注視比率Prefとを用いており、前記実注視比率Pが前記要求注視比率Prefよりも大きくなる場合、前記強調表示処理の実行を停止する一方で、前記実注視比率Pが前記要求注視比率Pref以下となる場合、前記強調表示処理を実行する。
【0045】
この構成によれば、要求注視比率と実注視比率とに基づいて、強調表示処理の実行の有無を判定することができるため、注視領域E3に対する注視が好適に実施されていたか否かを適切に判定することができる。
【0046】
第4の態様として、前記制御部25は、前記強調表示処理を実行する場合、前記実注視比率Pに基づいて強調表示の強度を変化させる。
【0047】
この構成によれば、注視領域E3に対する注視時間の割合に応じて、強調表示の強度を変化させることにより、注視領域E3への注視の度合いを把握することができる。
【0048】
第5の態様として、前記制御部25は、前記視認領域E2と前記注視領域E3とが重複しない時間を非注視時間として取得し、前記強調表示処理を実行する場合、前記非注視時間に基づいて強調表示の強度を変化させる。
【0049】
この構成によれば、非注視時間の長さに応じて、強調表示の強度を変化させることにより、注視領域E3への注視の度合いを把握することができる。
【0050】
第6の態様として、前記強調表示処理は、点灯表示、点滅表示、拡大表示の少なくとも一つを含む表示処理である。
【0051】
この構成によれば、注視領域E3に適した表示形態とすることができる。
【0052】
第7の態様として、前記制御部25は、前記表示処理として、前記非視認領域E5を隠すマスク表示処理を実行する。
【0053】
この構成によれば、非視認領域E5を隠すことで、非視認領域E5に含まれる対象領域E1への視認を促すことができる。
【0054】
第8の態様に係る訓練システム1は、上記の表示処理装置と、複数の前記監視対象物を含む前記機械の動作を模擬するシミュレータと、を備える。
【0055】
この構成によれば、操作者に対して、注視していない監視対象物への視認を適切に促すことで、適切な訓練を実施することができる。
【0056】
第9の態様に係る表示処理方法は、操作者に対して画像を表示する表示部(ディスプレイ11)を備える表示処理装置に、複数の監視対象物を含む機械に関する表示処理を実行させる表示処理方法において、前記画像20上における前記操作者の視点位置を検出するステップS2と、検出した前記画像20上における前記視点位置Pに基づいて、前記画像20への表示処理を実行するステップS3~S5,S13~S15と、を備え、前記画像20は、前記監視対象物の表示領域となる対象領域E1を含み、前記表示処理を実行するステップS3~S5,S13~S15では、前記視点位置Pを含む前記画像20上の前記表示領域を視認領域E2とすると、前記視認領域E2以外の領域である非視認領域E5に含まれる前記対象領域E1に対して表示処理を実行する。
【0057】
この構成によれば、非視認領域E5に含まれる対象領域E1に対して表示処理を実行することにより、注視されていない監視対象物への視認を適切に促すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 訓練システム
11 ディスプレイ
12 視線検出装置
13 操縦装置
15 制御装置
20 画像
25 制御部
26 記憶部
E1 対象領域
E2 視認領域
E3 注視領域
E5 非視認領域
P 視点位置
O1 機内オブジェクト
O2 機外オブジェクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11