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  • 特開-日本酒の抗酸化還元仕込み 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126061
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】日本酒の抗酸化還元仕込み
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/022 20190101AFI20220823BHJP
【FI】
C12G3/022 119A
C12G3/022 119B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023914
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】503075334
【氏名又は名称】豊田 哲郎
(71)【出願人】
【識別番号】520507265
【氏名又は名称】野田 智宣
(72)【発明者】
【氏名】豊田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 離有
(72)【発明者】
【氏名】武石 恭芳
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115CN02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】期待した酒質を容易に得ることができる日本酒製造方法を提供する。
【解決手段】日本酒製造方法は、酒母、蒸し米、麹及び仕込み水から製造した原酒の割水に至る全ての工程に、水素還元微小バブル化生成装置から得られた水素還元微小バブル化水を使用することを特徴としている。水素還元微小バブル化水のpHは7以上であることが好ましく、前記原酒に水素還元微小バブル化水を加えた状態で暗室に保存することが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒母、蒸し米、麹及び仕込み水で用いる水を水素還元微小バブル化水とし、製造した原酒に還元微小バブル化水生成装置から得られたが割水として加えられ、前記水素還元微小バブル化水のpHは7以上であることを特徴とする日本酒製造方法。
【請求項2】
前記原酒に前記水素還元微小バブル化水を加えた状態で暗室に保存することを特徴とする請求項1に記載の日本酒製造方法。
【請求項3】
前記還元微小バブル化水生成装置は、水素還元微小バブル化水を生成する装置であることを特徴とする請求項1に記載の日本酒製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し米及び麹等を使用して原酒を醸造し、これに割水を加えて製品としての清酒もしくは日本酒を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、一般的な日本酒製造法の一例の概要について説明すると、玄米を精米して蒸し、麹をつくり、酒母を育成し、もろみを仕込み、圧搾して粕を分離し、原酒とした後、割水を加えて清酒とする。
【0003】
更に詳しく説明すると、玄米を精米機にかけて、その一部を糠として取り除き、残りの精白米を水で洗い、適当量の水を吸水させてから蒸す。この蒸し米の一部が麹として利用される。麹と蒸し米と仕込み水とを混ぜ、これに清酒酵母及び乳酸を加えて発酵させ酒母をつくる。この酒母に麹、蒸し米、水を3回に分けて仕込み(それぞれ初添、仲添、留添という)、こうして仕込んだものを熟成すると、熟成もろみが得られる。熟成もろみは酒袋に入れられて圧搾され、搾った粕が清酒粕となり、搾り液が最終的に原酒となる。そして、原酒のまま販売されることもあるが、一般的には、必要に応じて所定の割合で原酒に水を加え、製品としての清酒もしくは日本酒が製造される。この水が割水である。
【0004】
清酒の酒質や味については、日本酒度、アルコール分、酸度、糖分等により表現されることが多い。特に用いられる日本酒度という基準は、酒の比重を示す用語であり、ボーメの比重計の1度を10倍に目盛ったもので、水より重いほうに-(マイナス)、軽いほうに+(プラス)が付けられ、日本酒度0を境に、+(プラス)の数値が大きいほど辛口、-(マイナス)が大きいほど甘口である。また、酸及び糖分と味覚との関係についても主として各地の国税局鑑定官室により様々な研究が熱心に進められ、清酒も純米酒、本醸造酒、辛口酒、多酸酒、アルコール分の低い酒など各種の酒が出回り、日本酒度と酸度との組合せで、味の点で多様の酒が生産されている。
【0005】
清酒の味については、甘辛が真っ先に言われるように大切な要素であるが、それは、水質、麹の酵素力価、蒸し米の硬軟、発酵温度等の種々の要素が絡み合って形成され、杜氏の勘に頼ることが多かった。そのため、本出願人等は、勘に頼ることなく種々の味の清酒を醸造もしくは製造しうる技術の研究開発に努めた結果、仕込み水として、還元微小バブル水を使用することにより、軽快な酒質の日本酒を醸造できることを突き止めた。また、本出願人等は、麹を処理する際に、同様に水を還元微小バブル水を使用することにより、軽快な酒質又は濃くのある酒質の日本酒を希望に応じて醸造できることを突き止めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-127840号公報
【0007】
【特許文献2】特開2000-69952号公報
【0008】
【特許文献3】特開2003-235536号公報
【0009】
【特許文献4】特開2018-015715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特開平11-127840号公報、特開2000-69952号公報に記載の発明は、アルカリ性電解水及び/又は酸性電解水が、仕込み水として用いられたり、麹の処理水として用いられ、原酒製造までの途中の工程で用いられている。また上述した特開2003-235536号公報に記載の発明は、製造した原酒に電解水生成装置から得られた電解水を割水として加えられることを特徴とする日本酒製造方法を提供することを目的としているが、清酒の味を調整するためアルカリ性電解水や酸性電解水を使い分ける必要があった。
【0011】
市販されている最終製品の日本酒はpH:4.2~4.7である。この酸性の日本酒を飲むと体内のPHバランスが崩れて身体が酸性に傾く、そうすると理想的な弱アルカリ性に戻そうとする働きが強まり、より多くの酸素を体内に取り込もうとする。この取り込んだ酸素の一部が活性酸素になり正常な細胞や遺伝子をも攻撃「酸化」してしまう。
【0012】
本発明は、上述した問題を解消すべくなされたものであって、使用する水は中性水素還元微小バブル化水のみである。この水素還元微小バブル化水により、優れた還元力をもつ日本酒の製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
この目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、酒母、蒸し米、麹及び仕込み水から製造した原酒の割水に至る全ての工程に還元微小バブル化生成装置から得られた水素還元微小バブル化水を使用することを特徴とする日本酒製造方法を提供する。
【0014】
請求項2に記載の本発明のように、前記水素還元微小バブル化水は中性の還元微小バブル化水とすることができ、その場合、還元微小バブル化水のpHは7以上であることが好ましい。また、請求項2に記載のように、原酒に水素還元微小バブル化水を加えた状態で暗室に保存することが好ましい。
【0015】
また、水素還元微小バブル化水生成装置は、請求項3に記載の本発明のように、水素還元微小バブル化水を生成する生成装置であり、水素還元微小バブル化水として割水として使用する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
次に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明するが、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。また、本発明は、以下の説明から分かるように、この実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係る日本酒製造方法のフローチャートを示している。図1から分かるように、本発明の日本酒製造方法においても、玄米を精米して蒸し(S1)、麹をつくり(S2)、酒母を育成し(S3)、もろみを仕込み(S7)、圧搾して粕を分離し(S8)、原酒とした後(S9)、割水を加えて清酒としており(S10)、これらのステップもしくは工程自体は従来と同様である。
【0018】
更に詳しく説明すると、蒸し米製造工程S1においては、当該技術分野で周知のように、玄米を精米機(図示せず)にかけて、その所定割合を糠として取り除き、残りの精白米を水で洗い、適当量の水を吸水させてから蒸す。この蒸し米の一部が工程S2において麹原料として利用され、また、酒母は、図示しないが、麹と蒸し米と仕込み水とを混ぜ、これに清酒酵母及び乳酸を適宜加えて発酵させて作られる。この酒母に麹、蒸し米、仕込み水を3回に分けて仕込み(S4~S6。それぞれ初添、仲添、留添という。)、こうして仕込んだものを熟成すると、熟成もろみが得られる(S7)。熟成もろみは酒袋に入れられて圧搾され(S8)、搾った粕が清酒粕となり、搾り液が最終的に原酒となる(19)。そして、原酒のまま販売されることもあるが、一般的には、必要に応じて所定の割合で原酒に割水を加え(S10)、製品としての清酒もしくは日本酒が製造される。
【0019】
このように、日本酒の製造工程においては、原酒に割水を加えて製品として出荷している。割水として使用される還元微小バブル化水を供給する水素還元微小バブル化水生成装置は上述した特開2018-015715号公報の形状に限定されない。
【0020】
日本酒の熟成度について考察すると、清酒は、熟成すると新酒時の荒い刺激味が消失していわゆる丸い味となり、熟成味が出てくる。清酒を貯蔵して熟成する時は、一般的に品質の劣化を抑えるために低温貯蔵(約5℃)するが、この低温貯蔵法では、清酒を適度に熟成させるために時間がかかりすぎるため、清酒の在庫期間が必然的に長くなり、運転資金の回収が遅くなったり、倉庫における貯蔵コストが増大したりするという問題が生ずるので、熟成が進んだ円やかな清酒であることを強調して販売したい場合には、由々しい問題である。清酒における熟成の要因は多くが考えられるが、酸化は非酵素的熟成の主たる原因であるとされている。しかし、本発明は、上述したように軽快な味を出すため製造工程全てで水素還元微小バブル化水を用いることによって酸化ではない熟成された味を実現することができた。
【0021】
反対に、清酒は新酒時には、麹香、新酒香がし、味は刺激味があり、新鮮さを感じさせるので、新酒として歓迎されている。しかし、清酒は、製造されてから消費者の手元に届くまで種々の流通経路を経て約1.5~3.5ケ月かかるのが普通であるから、この間に新酒の新酒の熟成が進み、新酒としての品質が徐々に失われてゆくので、新酒としての価値を強調して販売の促進を図りたい清酒の場合には、由々しい問題である。前述したように、清酒における熟成の要因は多くが考えられるが、酸化は非酵素的熟成の主たる原因であるから、清酒の酸化速度を低下させれば熟成が抑制されると考えられる。従って、本発明は、上述したように水素還元微小バブル化水を使用したことにより、熟成も抑制されるという良好な結果が得られた。
【0022】
このように、本発明は、幾多の研究及び実験を重ねた結果、上述した相反する問題を一挙に解決する日本酒製造方法の開発に成功した。本発明による日本酒製造方法の好適な実施例では、原酒の製造としては従来使用されていなかった水素還元微小バブル化水を用いることにより酒質に応じて使い分けることなく、希望の酒質の清酒を容易に製造できるようにした。
【0023】
本発明の日本酒製造方法を実施する際に好適に用いることができる還元微小バブル化水生成装置は、上述の特開2018-015715号公報のノズルを有する。
【0024】
この微小バブル生成ノズル図2のように、液体と気体との混合流体を内部に導入させる導入部11と、前記気体の微小バブルが含まれた混合流体を送り出す噴出部35と、前記導入部11と前記噴出部35との間に、前記気体の微小バブルを生成するためのナノバブル生成構造部とを備えた微小バブル生成ノズルであって、前記微小バブル生成構造部は、当該微小バブル生成ノズルの軸方向に断面積の異なる複数の流路が配置されていることを特徴とする。
【0025】
微小バブル生成ノズルの軸方向に断面積が異なる複数の流路を備えているので、加圧溶解法の原理により、気泡を含む液体が各流路を通過するたびに気泡が加圧されて液体に溶解し、流路を通過した後に流路から流出した液体が解放されることにより、液体に含まれた気泡を微細化させることにより微小バブル水を生成することができる。
【0026】
本発明に係る微小バブル生成装置は、図3のように液体を流すための流通部に気体を導入する気体導入部1と、前記流通部の内部を流れた前記気体と前記液体との混合流体を送り出すポンプ2と、前記ポンプによって送り出された前記混合流体を導入し、前記気体の微小バブルを含む混合流体を得るための微小バブル生成ノズル3と、前記微小バブルを含む混合流体を貯める液貯め槽4と、前記液貯め槽に貯められた前記微小バブルを含む混合流体を前記流通部に戻す戻し路5とを備え、前記微小バブル生成ノズルは、液体と気体との混合流体を内部に導入させる導入部と、前記気体の微小バブルが含まれた混合流体を送り出す噴出部と、前記導入部と前記噴出部との間に、前記気体の微小バブルを生成するための微小バブル生成構造部とを備え、前記微小バブル生成構造部は、当該微小バブル生成ノズルの軸方向に断面積が異なる複数の流路を備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明の水素還元微小バブル化水生成装置は水素ガスを加圧注入するミキシング工程と、当該のミキシング工程で水素ガスが微小バブル化される微小バブル化工程があり、これに基づき水素還元微小バブル化水が製造される。
【0028】
次に、本発明に従って水素還元微小バブル化水を使用した場合の酒質及び熟成度の変化についての測定結果を、従来のように井戸水を使用した場合と比較して、単なる一例として説明する。
【0029】
[実験例1]比較として同じ酒蔵で製造された純米吟醸酒を使用した。
【0030】
抗酸化還元仕込み酒の抗酸化力は明かに高い値を示した。

酸化還元電位(mV) OXY吸着抗酸化力(μmol/ml)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
純米吟醸酒 262 86
抗酸化還元仕込み酒 164 832
【0031】
酸化還元電位
Oxdation-Reduction Potentialの略号である。
酸化還元電位の数値として、血中酸化還元電位250mVを基準としてプラス(+)側に数値が大きければ酸化状態であること、マイナス(-)側に数値が大きければ還元状態であることを意味している。
【0032】
OXY吸着抗酸化力
酸化ストレスとなる活性酸素・フリーラジカルは、体内の代謝・免疫活動等で常に産出されている。このOXY吸着テストでは、白血球が出す強力な活性酸素種の1つである次亜塩素酸(HCIO)を使用することで、食品・飲料・サプリメントなど水溶性のサンプルであれば、それ自体の抗酸化力を測定することができる。
測定原理は、次亜塩素酸(HCIO)の試薬に測定サンプルを混合する。ここでサンプルの次亜塩素酸に対する抗酸化反応をおこす。規定時間後、呈色液(N,N-ジエチルパラフェニレンジアミン)を混合し、ここでサンプルによって消去しきれなかった次亜塩素酸が呈色液と反応し、赤く呈色反応を起こす(A-NH2→[A-NH2・]+)。
アルブミン、ビリルビン、還元グルタチオン、尿酸などの内因性抗酸化物、ビタミンC・E、ポリフェノールなどの外因性抗酸化物質等の抗酸化力を測定し、BAPテストのように抗酸化能を測定することに加え、OXY吸着テストでは、ROSの酸化作用を抑制することができる、ショック―アドゾーバントと呼ばれる抗酸化物質(例えば、ムコ多糖類、アミノ酸、タンパク質など)も捉えることで、トータルの抗酸化力を評価できる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、請求項1に記載の本発明によれば、原酒製造段階の仕込み水や麹の処理水のみではなく、原酒の割水としても還元微小バブル化水のみを用いているので、特別な製造工程を加えることなく、良質な酒質を有する清酒もしくは日本酒を容易に製造することができる。
【0034】
また、請求項2に記載の本発明のように、水素還元微小バブル化水を用いることにより、深みのある酒質の日本酒を製造することができると共に、新酒の熟成を抑えることができる。また、請求項2に記載のように、水素還元微小バブル化水を用いることにより、軽快な酒質の日本酒を提供することができる。その場合、請求項1に記載のように、水素還元微小バブル化水のpHが7以上であれば効果が顕著である。
【0035】
また、還元微小バブル化水生成装置は、一つの日本酒製造ラインで種々の酒質及び熟成度の日本酒を適宜製造することができる。また、この還元微小バブル化水を用いることにより、日本酒のみではなく、他の醸造酒、蒸留酒にも適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る日本酒製造方法のフローチャートを示している。
【0037】
図2】本発明に係る微小バブル生成ノズルを示している。
【0038】
図3】本発明に係る微小バブル生成装置を示している。
図1
図2
図3