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  • 特開-凝縮水蓄積管 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126083
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】凝縮水蓄積管
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/02 20060101AFI20220823BHJP
   F16T 1/06 20060101ALI20220823BHJP
   F16T 1/08 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
F16T1/02 Z
F16T1/06
F16T1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023943
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】514022257
【氏名又は名称】有限会社ジェニス・ホワイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深井 晃
(72)【発明者】
【氏名】源平 浩己
(57)【要約】
【課題】凝縮水が急激に増加しても、凝縮水の温度と蒸気の温度差で自動的に排出できる凝縮水蓄積管を提供する。
【解決手段】蒸気又は凝縮水が流れ込む入口と、ノズル式のスチームトラップへの連結口と、凝縮水を外部に排出する排出口と、入口と排出口との間に設けられ、蒸気と凝縮水の温度差で伸縮する感熱伸縮可動と、を備え、入口と排出口の間の温度が高温の蒸気で上昇すると、感熱伸縮可動部が伸びて排出口を閉じ、蒸気と前記凝縮水が前記連結口に流れ、入口と排出口の間に凝縮水が溜まって温度が下がると、感熱伸縮可動部が縮んで排出口を開き、溜まった凝縮水が排出口から排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気又は凝縮水が流れ込む入口と、
ノズル式のスチームトラップへの連結口と、
凝縮水を外部に排出する排出口と、
前記入口と前記排出口との間に設けられ、前記蒸気と前記凝縮水の温度差で伸縮する感熱伸縮可動部と、を備え、
前記入口と前記排出口の間の温度が高温の蒸気で上昇すると、前記感熱伸縮可動部が伸びて前記排出口を閉じ、前記蒸気と前記凝縮水が前記連結口に流れ、前記入口と前記排出口の間に前記凝縮水が溜まって温度が下がると、前記感熱伸縮可動部が縮んで前記排出口を開き、溜まった凝縮水が前記排出口から排出されることを特徴とする凝縮水蓄積管。
【請求項2】
前記感熱伸縮可動部は、バイメタル又はベローズ又はダイヤフラム又はメンブレンのいずれか一つの部材からなることを特徴とする請求項1に記載の凝縮水蓄積管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮水蓄積管に関し、より詳しくは、感熱部材で構成される感熱伸縮可動部を備え、伸縮量が大きくかつ小型で、凝縮水の排出が効果的に行なえる凝縮水蓄積管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気管に発生する凝縮水を排出するため、スチームトラップが使用される。スチームトラップは、フロートを使用した間欠式のものや、ノズル孔から凝縮水を蒸気に変換して排出する連続式のものなどがある。
【0003】
本出願人は、特許文献1でノズル式の凝縮水排出装置を提案した。ノズルは、長さが20~40mm、孔径が0.2~18mmで、ノズルを介して蒸気管内に発生した凝縮水を蒸気に変換して連続的に外部に排出できる。しかしながら、蒸気配管設備での凝縮水の発生は、大きく変動することがあり、凝縮水が増えた場合に備えて凝縮水排出装置には、凝縮水蓄積管が設けられる。
【0004】
特許文献1の凝縮水蓄積管には、凝縮水が溜まって水位が上がるとフロートが上昇して錘の弁が排出口から離れて凝縮水が排出され、凝縮水の水位が下がるとフロートが下降して錘の弁が排水口を塞ぐ機械式の水位調節機構が設けられる。フロートによる水位調節機構は、蒸気圧が高圧の場合、水圧の弁を閉じる力が大きいので、大きな形状のフロートが必要になる。凝縮水は蒸気の温度差で弁の開閉を行なう感熱式の凝縮水蓄積管が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-137745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凝縮水が急激に増加しても凝縮水の温度と蒸気の温度差で自動的に排出できる凝縮水蓄積管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による凝縮水蓄積管は、蒸気又は凝縮水が流れ込む入口と、ノズル式のスチームトラップへの連結口と、凝縮水を外部に排出する排出口と、前記入口と前記排出口との間に設けられ、前記蒸気と前記凝縮水の温度差で伸縮する感熱伸縮可動部と、を備え、前記入口と前記排出口の間の温度が高温の蒸気で上昇すると、前記感熱伸縮可動部が伸びて前記排出口を閉じ、前記蒸気と前記凝縮水が前記連結口に流れ、前記入口と前記排出口の間に前記凝縮水が溜まって温度が下がると、前記感熱伸縮可動部が縮んで前記排出口を開き、溜まった凝縮水が前記排出口から排出されることを特徴とする。
【0008】
前記感熱伸縮可動部は、バイメタル又はベローズ又はダイヤフラム又はメンブレンのいずれか一つの部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凝縮水蓄積管によれば、
(1)急激に凝縮水が増え、凝縮水が凝縮水蓄積管の内部を満たすと、凝縮水は蒸気より温度が低いので、感熱伸縮可動部が縮んで排出口を開くので、溜まった凝縮水を自動的に排出できる。フロート方式に比べて小型化できる。また、水位を検知するセンサや電磁弁を備える方式と比べて、電源を必要としない。
(2)感熱伸縮可動部が縮んで排水弁が排出口から離れ、凝縮水が外部に排出されても、スチームトラップの内部には凝縮水が残るので、ノズルからの蒸気漏れを防止した運転が続行できる。
(3)凝縮水蓄積管の凝縮水が急激に増えることは一時的なもので、頻発するものではないので、感熱伸縮可動部を長寿命にできる。
【0010】
感熱伸縮可動部はバイメタル又はベローズ又はダイヤフラム又はメンブレンのいずれか1つの部材からなり、感熱伸縮可動部をいずれも蒸気と凝縮水の温度差を利用して伸縮させ、これにより排出弁による排出口の開閉を行なうので、電源などは必要なく自動的に開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による凝縮水蓄積管とスチームトラップの内部を示す断面図である。
図2】感熱伸縮可動部が熱膨張係数の異なる素材を貼り合わせたバイメタルで構成される場合の説明図である。
図3】感熱伸縮可動部がベローズの場合の説明図である。
図4】感熱伸縮可動部がダイヤフラムの場合の説明図である。
図5】感熱伸縮可動部がメンブレンの場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の凝縮水蓄積管を詳しく説明する。
【実施例0013】
図1は、本発明による凝縮水蓄積管100とスチームトラップ13の内部を示す断面図である。凝縮水蓄積管100は、管状の本体部4を有し、上部に配管設備の蒸気本管からの蒸気又は凝縮水が流れ込む入口1がある。側部の下部には凝縮水を排出するスチームトラップ13への連結口5が、底部には凝縮水の排出口11がある。図1では、感熱伸縮可動部2は、熱膨張係数の異なる2つの素材を貼り合わせたバイメタル2aで構成した場合を示す。
【0014】
本体部4は内部に、バイメタル2aで形成される感熱伸縮可動部2と、排出口11を開閉する排水弁3と、排水弁3と感熱伸縮可動部2を連結するロッド9と、感熱伸縮可動部2が伸長すると縮むバネ10と、を備える。バネ10は、上端の略U字形の金具で感熱伸縮可動部2を受け止め、下端は本体部4のバネ台座8で支持される。バネ10は、感熱伸縮可動部2が高温の蒸気を受けて伸びると縮む。バネ10が縮むと感熱伸縮可動部2がロッド9を下方向に押し下げるので、ロッド9の下端の排水弁3が排出口11を閉じる。バネ10が排水弁3の開度量を調節している。バネ10は、感熱伸縮可動部2が、凝縮水の温度を受けて縮むと伸びる。バネ10が伸びると略U字形の金具がロッド9を上方向に持ち上げる。ロッド9が上方向に動けば、排水弁3が排出口11から離れ、排出口11が開かれる。感熱伸縮可動部2は、本体部4の上部に位置するので、凝縮水の水面7が上昇すると凝縮水12の温度の影響を受ける。
【0015】
凝縮水蓄積管100は、連結口5が連結管6でスチームトラップ13と連結されている。スチームトラップ13は、入口部14と、本体部15と、出口部16と、からなる。スチームトラップ13の凝縮水排出ノズル17は、長さが20~40mm、孔径が0.2~18mmで、蒸気管内に発生した凝縮水12を連続的に外部に排出する。スチームトラップ13の内部に凝縮水12を溜めているので、凝縮水排出ノズル17の孔は蒸気を帯同して放出することがない。つまり凝縮水は通過させるが、蒸気は凝縮水排出ノズル17を通過しないようにできる。凝縮水12を溜めるため、本体部15は、通常、メンテナンスプラグ18で閉じられている。
【0016】
蒸気供給システムの運転開始時は、感熱伸縮可動部2の周囲に高温の蒸気がなく温度が低い。そのため、感熱伸縮可動部2が収縮して、ロッド9が上方向に引き上げられ、排水弁3が排出口11から離れ、排出口11が開いており、凝縮水12は排出口11から外部に排出される。よって凝縮水12は凝縮水蓄積管100の中にはない。スチームトラップ13の内部の本体部15は、メンテナンスプラグ18で閉じられているので、それまでの凝縮水が残っている。高温の蒸気が来ると、スチームトラップ13の内部の凝縮水及び冷たい空気は、凝縮水排出ノズル17から外部に排出される。蒸気本管で発生した凝縮水12が入口1からスチームトラップ13の本体部15に流入し、本体部15を凝縮水12が満たすことで凝縮水排出ノズル17の孔を高温の蒸気が通過することを防ぐ。凝縮水蓄積管100は、本体部4に入口1から流入した高温の蒸気が感熱伸縮可動部2を伸張させるので、ロッド9が下方向に動き排水弁3が排出口11を閉じる。
【0017】
蒸気供給システムの運転中、蒸気本管の凝縮水12は、入り口1から入り、凝縮水蓄積管100の底部に溜まるが、下部側面の連結口5からスチームトラップ13の内部に流れ込む。流れ込んだ凝縮水12は、凝縮水排出ノズル17を通過して排出される。外気温の急激な変化によって一時的に蒸気本管の凝縮水12が増えた場合、凝縮水蓄積管100に流れ込んで凝縮水水面7が上がる。その場合、感熱伸縮可動2付近の温度が下がり、感熱伸縮可動部2が収縮して排水弁3が開弁され、排出口11から凝縮水が排水される。この応答に1秒程度はかかるので、本体部4は、その間水位の上昇が吸収できる程度の容量が必要になる。このように凝縮水が急激に増加し、スチームトラップ13の凝縮水の排水能力を超えた場合でも排出でき、凝縮水が蒸気本管の方に滞留及び逆流することはない。
【0018】
蒸気の圧力から凝縮水排出ノズル17の孔径を適切に選定して、蒸気と凝縮水の境(水面)を図1の斜線のような範囲に収めることができる。すなわち、凝縮水排出ノズル17の手前の凝縮水の溜まり空間を常に凝縮水とすることができ、スチームトラップ13の蒸気漏洩をなくすことができる。
【0019】
図2は、感熱伸縮可動部2が熱膨張係数の異なる素材を貼り合わせたバイメタル2aで構成される場合の説明図である。バイメタル2aは、貼り合わせの素材が(金属、金属)である。例として一方の素材が、37%Niと鉄の合金で、熱膨張係数は1.1(×10-6/℃)で、他方の素材が銅であれば、熱膨張係数は16.5(×10-6/℃)であり、熱を受けるとその差で湾曲する。図2は、円板形のバイメタル2aで、左側が収縮時の有様、右側が伸長時の有様を示す。感熱伸縮可動部2は、バイメタル2aを複数枚配置し、伸長する方向が互いに外側を向くように配置する。バイメタル2aは、熱を受け温度が上昇すると中央部分が外側に向かって膨らみ、温度が下がると収縮する。
【0020】
金属と金属を貼り合わせたバイメタル2aに限らず、熱膨張係数の大きな素材にはPI又はPEEKの樹脂を選択し、線熱膨張係数の小さな素材には、金属のSUS304又はハステロイC22又はSS400又はS45C又はタングステンなどを選択してもよい。貼り合わせの素材を(樹脂、金属)とする。例として、一方の素材が、熱膨張係数56(×10-6/℃)のPIで、他方の素材を熱膨張係数17.3(×10-6/℃)のSUS304とすると、差は38.7(×10-6/℃)である。他の例として、一方の素材が、熱膨張係数47(×10-6/℃)のPEEKで、他方の素材が熱膨張係数17.3(×10-6/℃)のSUS304とすると、差は29.7(×10-6/℃)となる。一方の素材が、熱膨張係数120(×10-6/℃)のPFAで、他方の部材を熱膨張係数17.3(×10-6/℃)のSUS304とすると、差が102.7(×10-6/℃)とさらに大きくできる。このように、樹脂と金属を貼りあせた感熱部材は、金属と金属を貼り合わせたバイメタルよりも大きな反りを得ることができる。
【0021】
貼り合わせの素材を(樹脂、樹脂)とすることもできる。 膨張係数の大きい一方の素材を樹脂のPTFE又はPFAとし、熱膨張係数の小さい他方の素材に樹脂のPI又はPEEKを選択できる。例として、一方の素材が熱膨張係数120(×10-6/℃)のPFAで、他方の素材が熱膨張係数47(×10-6/℃)のPEEKとすると、差は73(×10-6/℃)である。樹脂と樹脂を貼り合わせた感熱部材は、耐薬品性に優れ軽量である。PEEK、PFA、PTFE、PIは、連続使用温度が240~280℃の高温でも可能である。
【0022】
図3は、感熱伸縮可動部がベローズ2bの場合の説明図である。ベローズ2bは、内部には液体が充填されている。周囲の温度に反応して内部の液体が膨張し長さ方向に伸び、また縮むことができる。ベローズ2bは、例として蛇腹の部分がリン青銅からなる金属製である。ベローズ2bに繋がる排水弁の動作は、図1と同じなので省略する。
【0023】
図4は、感熱伸縮可動部2がダイヤフラム2cの場合の説明図である。ダイヤフラム2cは、内部には液体が充填されている。周囲の温度に反応して内部の液体が膨張して長さ方向に伸び、また縮むことができる。例としてダイヤフラム2cは、円板がリン青銅で形成され、同心円状の凹凸がある。この場合の排水弁の動作は、図1と同じなので省略する。
【0024】
図5は、感熱伸縮可動部2がメンブレン2dの場合の説明図である。メンブレン2dは、内部には液体が充填されている。周囲の温度に反応して内部の液体が膨張し長さ方向に伸び、また縮むことができる。メンブレン2dと排水弁の動作は図1と同じなので省略する。感熱部材としては、ウエハー(図示せず)を使用し、感熱伸縮可動部2を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の凝縮水蓄積管は、排水弁を感熱伸縮可動部で開閉したので、凝縮水が急激に増加に対応できる凝縮水蓄積管として好適である。
【符号の説明】
【0026】
1 入口
2 感熱伸縮可動部
2a バイメタル
2b ベローズ
2c ダイヤフラム
2d メンブレン
3 排水弁
4 本体部
5 連結口
6 連結管
7 凝縮水水面
8 バネ台座
9 ロッド
10 バネ
11 排出口
12 凝縮水
13 スチームトラップ
14 入口部
15 本体部
16 出口部
17 凝縮水排出ノズル
18 メンテナンスプラグ
100 凝縮水蓄積管
図1
図2
図3
図4
図5