(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126137
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】アンテナ基板
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20220823BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220823BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220823BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01L23/12 Z
H05K1/02 C
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024039
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】森 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】加賀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】井場 政宏
【テーマコード(参考)】
4E351
5E338
5J045
【Fターム(参考)】
4E351AA07
4E351BB01
4E351BB24
4E351BB31
4E351BB50
4E351CC12
4E351DD04
4E351GG07
5E338AA03
5E338AA18
5E338BB02
5E338BB19
5E338BB75
5E338CC10
5E338CD02
5E338CD24
5E338EE11
5J045AA05
5J045DA10
5J045EA08
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】アンテナ基板内に気体が籠もることを抑制した上で誘電損失を抑制する。
【解決手段】アンテナ基板は、セラミック誘電体である第1誘電体層と、第1誘電体層の上面側に配置されたセラミック誘電体である第2誘電体層と、第1誘電体層と、第2誘電体層との間に配置された枠状の第1中間誘電体層と、第1誘電体層の上面に設けられた給電素子と、第2誘電体層の上面に設けられた無給電素子であって、前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、を備え、給電素子が収容され、第1誘電体層の上面と、第1中間誘電体層の内周面と、第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、給電素子は、第1中空領域内で、厚み方向で無給電素子と重なる位置において、第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、アンテナ基板の外部領域と、第1中空領域とを連通する貫通孔が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ基板であって、
平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層と、
前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である第2誘電体層と、
前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層と、
前記第1誘電体層の前記上面に設けられた給電素子と、
前記第2誘電体層の上面に設けられた無給電素子であって、前記第1誘電体層の厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、
を備え、
前記給電素子が収容され、前記第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、
前記給電素子は、前記第1中空領域内で、前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、
前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する貫通孔が形成されていることを特徴とする、アンテナ基板。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ基板であって、
前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体により被膜されている部分を含むことを特徴とする、アンテナ基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ基板であって、
前記貫通孔は、前記第2誘電体層の前記上面と、前記第1中空領域とを連通し、前記第2誘電体層の厚み方向に沿って形成されていることを特徴とする、アンテナ基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のアンテナ基板であって、
前記第1誘電体層の厚み方向視で、前記貫通孔は、前記無給電素子と、前記給電素子と、のいずれとも重複しない位置に形成されていることを特徴とする、アンテナ基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のアンテナ基板であって、さらに、
複数の前記第2誘電体層と、
前記複数の第2誘電体層の上面にそれぞれ設けられた複数の前記無給電素子と、
一の前記第2誘電体層と、前記一の第2誘電体層の上面側に配置された他の前記第2誘電体層と、の間に配置された枠状のセラミック誘電体である第2中間誘電体層と、
を備え、
前記無給電素子が収容され、前記一の第2誘電体層の上面と、前記第2中間誘電体層の内周面と、前記他の第2誘電体層の下面とによって区画される第2中空領域が形成され、
前記他の第2誘電体層の上面と、前記第2中空領域とを連通し、前記第1中空領域まで前記第2誘電体層の厚み方向に沿って直線状に延びる貫通孔が形成されていることを特徴とする、アンテナ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の誘電体層と複数の導体層とが交互に積層されたアンテナ基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたアンテナ基板では、誘電体層に形成された中空部分に励振素子が配置されることにより、誘電損失が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアンテナ基板では、誘電損失が抑制されるものの、励振素子が配置される中空部分に気体が籠もる可能性があるため好ましくない。また、給電素子である励振素子や無給電素子が、環境などの外部因子の影響で損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、アンテナ基板内に気体が籠もることを抑制した上で誘電損失を抑制したアンテナ基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、アンテナ基板が提供される。このアンテナ基板は、平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層と、前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である第2誘電体層と、前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層と、前記第1誘電体層の前記上面に設けられた給電素子と、前記第2誘電体層の上面に設けられた無給電素子であって、前記第1誘電体層の厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、を備え、前記給電素子が収容され、第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、前記給電素子は、前記第1中空領域内で、前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する貫通孔が形成されている。
【0008】
この構成によれば、給電素子が第1中空領域に収容されているため、給電素子が電波を放射する際の誘電損失が抑制され、アンテナ利得を改善できる。さらに、給電素子が収容される第1中空領域は、貫通孔を介してアンテナ基板の外部領域に連通しているため、第1中空領域に気体が籠もることが抑制される。これにより、アンテナ基板の製造時に、第1中空領域に籠もった気体による不具合を抑制できる。
【0009】
(2)上記態様のアンテナ基板において、前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体により被膜されている部分を含んでいてもよい。
この構成によれば、給電素子や無給電素子に被膜される誘電体の厚さや材質が変更されることにより、給電素子や無給電素子の特性を容易に調整できる。また、本構成によれば、給電素子の表面や無給電素子の表面の少なくとも一部分が誘電体に被膜されることにより、外部因子の影響等で給電素子や無給電素子が損傷することを抑制できる。
【0010】
(3)上記態様のアンテナ基板において、前記貫通孔は、前記第2誘電体層の前記上面と、前記第1中空領域とを連通し、前記第2誘電体層の厚み方向に沿って形成されていてもよい。
この構成のように厚み方向に直線上に延びた貫通孔は、厚み方向とは異なる方向へと延びている貫通孔と比較して、加工しやすく、かつ、第1中空領域の籠もった気体を外部領域へと放出しやすい。
【0011】
(4)上記態様のアンテナ基板において、前記第1誘電体層の厚み方向視で、前記貫通孔は、前記無給電素子と、前記給電素子と、のいずれとも重複しない位置に形成されていてもよい。
この構成によれば、給電素子と無給電素子との電磁的な結合に対して及ぼす影響が少ない位置に、貫通孔が形成されている。これにより、本構成では、アンテナ基板の性能に対する影響を抑制した上で、第1中空領域に気体が籠もることを抑制する。
【0012】
(5)上記態様のアンテナ基板において、さらに、複数の前記第2誘電体層と、前記複数の第2誘電体層の上面にそれぞれ設けられた複数の前記無給電素子と、一の前記第2誘電体層と、前記一の第2誘電体層の上面側に配置された他の前記第2誘電体層と、の間に配置された枠状のセラミック誘電体である第2中間誘電体層と、を備え、前記無給電素子が収容され、前記一の第2誘電体層の上面と、前記第2中間誘電体層の内周面と、前記他の第2誘電体層の下面とによって区画される第2中空領域が形成され、前記他の第2誘電体層の上面と、前記第2中空領域とを連通し、前記第1中空領域まで前記第2誘電体層の厚み方向に沿って直線状に延びる貫通孔が形成されていてもよい。
この構成によれば、複数の無給電素子が給電素子1と電磁的に結合して、給電素子が放射するアンテナ強度を大きくできる。さらに、無給電素子が収容される第2中空領域は、貫通孔を介して外部領域に連通しているため、第2中空領域に気体が籠もることが抑制される。これにより、本構成のアンテナ基板の製造時に、第2中空領域に籠もった気体による不具合を抑制できる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、アンテナ基板、セラミック配線基板、配線基板、アンテナ基板の製造方法、およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態のアンテナ基板の概略断面図である。
【
図3】アンテナ基板の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
1.アンテナ基板の構成:
図1は、本発明の実施形態のアンテナ基板100の概略断面図である。
図2は、アンテナ基板100の概略上面図である。本実施形態のアンテナ基板100は、携帯端末および基地局等の通信分野、工場、オフィス、飲料、インフラ、プラント交通等、一般に5G(5th Generation)通信の利活用分野に用いられる。本実施形態のアンテナ基板100では、給電素子1が第1中空領域SP5に配置され、第1中空領域SP5が貫通孔HLを介してアンテナ基板100の外部領域に連通されているため、第1中空領域SP5に気体が籠もることを抑制できる。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態のアンテナ基板100は、平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層3と、第1誘電体層3の上面3T側に配置された複数の第2誘電体層4A,ABと、枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層5と、枠状のセラミック誘電体である複数の第2中間誘電体層6A,6Bと、第1誘電体層3の上面3Tに設けられた給電素子1と、複数の第2誘電体層4A,4B,4Cの上面4Tにそれぞれ設けられた複数の無給電素子2A,2B,2Cと、第1誘電体層3の下面側に設けられた第3誘電体層9と、第3誘電体層9の上面に設けられたGND基板7と、第1誘電体層3と第3誘電体層9との間に配置された第3中間誘電体層8と、第3誘電体層9の下面に接着された給電回路50と、を備えている。
【0017】
本実施形態のアンテナ基板100は、
図2に示されるように、厚み方向視において矩形状の形状を有している。そのため、本実施形態では、給電素子1から無給電素子2Aへと向かう厚み方向をZ軸正方向と定義し、厚み方向視において矩形状のアンテナ基板100の各辺に平行なX軸およびY軸を、
図1,2に示される直交座標系CSとして定義した。本実施形態における上側はZ軸正方向側を指し、下側はZ軸負方向側を指す。
【0018】
図1に示されるように、3つの第2誘電体層4A~4Cは、平板状のセラミック誘電体であり、第1誘電体層3と同じ形状を有している。第1中間誘電体層5は、第1誘電体層3と第2誘電体層4Aとの間に配置されている。第2中間誘電体層6Aは、第2誘電体層4Aと、第2誘電体層4Aの上面4T側に配置された第2誘電体層4Bとの間に配置されている。同じように、第2中間誘電体層6Bは、第2誘電体層4Bと、第2誘電体層4Bの上面4T側に配置された第2誘電体層4Cとの間に配置されている。
【0019】
図2に示されるように、第1中間誘電体層5と、2つの第2中間誘電体層6A,6Bとは、同じ形状を有している。第1中間誘電体層5と、2つの第2中間誘電体層6A,6Bとは、中心軸OL1を重心として、給電素子1と無給電素子2A~2Cよりも大きい矩形状の空間の外周部を形成している。そのため、
図1に示されるように、第1中間誘電体層5の内周面5Iと、第1誘電体層3の上面3Tと、第2誘電体層4Aの下面4Lとは、区画された第1中空領域SP5を形成している。第1中空領域SP5には、給電素子1が収容されている。また、第2中間誘電体層6Aの内周面6AIと、第2誘電体層4Aの上面4Tと、第2誘電体層4Bの下面4Lとは、区画された第2中空領域SP6Aを形成している。第2中空領域SP6Aは、無給電素子2Aを収容している。同様に、第2中間誘電体層6Bの内周面6BIと、第2誘電体層4Bの上面4Tと、第2誘電体層4Cの下面4Lとは、区画された第2中空領域SP6Bを形成している。第2中空領域SP6Bは、無給電素子2Bを収容している。
【0020】
本実施形態の給電素子1は、第1誘電体層3に接していない表面(換言すれば、第1中空領域SP5に露出している表面)の全体が誘電体により被膜されている。なお、給電素子1は、第1誘電体層3に接していない表面の一部分(例えば、
図1の+Z軸方向の面)のみが、誘電体により被膜されていてもよい。給電素子1の被膜範囲は任意に決定できる。
図2に示されるように、3つの無給電素子2A~2Cは、第1誘電体層3の厚み方向で、給電素子1と重なる位置に設けられている。無給電素子2A~2Cは、給電素子1がアンテナ素子として機能する場合に、電磁的に給電素子1と結合して、アンテナ基板100の上面に電波を放射する。給電素子1と、3つの無給電素子2A~2Cとは、同じ矩形形状を有している。
【0021】
図1に示されるように、給電素子1は、第1中空領域SP5内で、厚み方向において無給電素子2A~2Cと重なり、かつ、第2誘電体層4Aの下面4Lと空間を介して配置されている。本実施形態では、厚み方向における給電素子1の重心位置は、3つの無給電素子2A~2Cの重心位置と同じであり、中心軸OL1上に位置する。GND基板7は、給電素子1の下面に、所定の間隔を空けて配置されている。GND基板7は、給電素子1から放射される電波を反射する。
【0022】
図1に示されるように、アンテナ基板100には、3つの第2誘電体層4A~4Cを貫通して、第1中空領域SP5と、第2中空領域SP6A,SP6Bと、アンテナ基板100の外部領域とを連通させる2つの貫通孔HLが形成されている。
図1,2に示されるように、貫通孔HLは、第2誘電体層4A~4Cの各上面4Tと、第1中空領域SP5とを連通する。また、貫通孔HLは、中心軸OL2を中心とする円の断面が第2誘電体層4A~4Cの厚み方向に直線上に延びた孔である。貫通孔HLは、第1誘電体層3の厚み方向視で、給電素子1と、3つの無給電素子2A~2Cのいずれとにも重複しない位置に形成されている。なお、アンテナ基板100の外周領域とは、アンテナ基板100の外周面より外側の領域のことをいう。
【0023】
給電回路50は、積層された3つの誘電体である回路側誘電体10,11,12を備えている。回路側誘電体10~12のそれぞれには、厚み方向であるZ軸に沿って貫通するビアV2,V3,V4が形成されている。アンテナ基板100において、
図1に示されるように、給電回路50から給電素子1へと給電するためのビアV1が、第1誘電体層3および第3中間誘電体層8を貫通して形成されている。
【0024】
2.アンテナ基板の製造方法:
図3は、アンテナ基板100の製造方法のフローチャートである。アンテナ基板100の製造フローでは、初めに、ドクターブレード法により形成された低温焼成用の複数枚のグリーンシートを準備する(ステップS1)。準備されるグリーンシートの厚さおよび材質は、アンテナ基板100を構成する誘電体層に応じて異なる。
【0025】
準備された複数枚のグリーンシートに対して打抜き加工によりホールが形成される(ステップS2)。形成されるホールは、第1中空領域SP5やビアV1~V4として機能する。そのため、形成されるホールの大きさや形状は異なる。グリーンシートに形成されたホールの一部がビアとして形成される(ステップS3)。ホールの一部には、Cu(銅)を含む導電体ペーストがスクリーン印刷により充填され、パンチングまたはレーザ加工によりビアが形成される。
【0026】
ビア形成後のグリーンシートに対してCuを含む導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布して導体層を形成する(ステップS4)。各グリーンシートの表面と裏面とに所定パターンの導体層が形成される。導体層としてグリーンシート上に形成された給電素子1が誘電体としてのセラミックで被膜される(ステップS5)。なお、導体層は、必ずしもグリーンシートの両面に形成されなくてもよく、表面と裏面との一方に形成されてもよい。
【0027】
導体層が形成された複数のグリーンシートが積層された状態で加熱・加圧されて積層体が形成される(ステップS6)。形成された積層体が所定温度で脱脂・焼成されてアンテナ基板100が形成されて、製造フローが終了する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ基板100では、給電素子1が第1誘電体層3の上面3Tに設けられている。無給電素子2A~2Cは、第1誘電体層3の厚み方向において給電素子1と重なる位置、かつ、第2誘電体層4A~4Cのそれぞれの上面4Tに設けられている。第1中間誘電体層5は、第1誘電体層3と第2誘電体層4Aとの間に配置された枠状のセラミック誘電体である。第1中空領域SP5は、第1中間誘電体層5の内周面5Iと、第1誘電体層3の上面3Tと、第2誘電体層4Aの下面4Lとによって区画され、給電素子1を収容している。第1中空領域SP5は、貫通孔HLによりアンテナ基板100の外部領域に連通している。すなわち、本実施形態のアンテナ基板100では、給電素子1が第1中空領域SP5に収容されているため、給電素子1が電波を放射する際の誘電損失が抑制され、アンテナ利得を改善できる。なお、アンテナ利得とは、アンテナ基板100における電波受信の効率を表す指標である。さらに、給電素子1が収容される第1中空領域SP5は、貫通孔HLを介してアンテナ基板100の外部領域に連通しているため、第1中空領域SP5に気体が籠もることが抑制される。これにより、アンテナ基板100の製造時に、第1中空領域SP5に籠もった気体による不具合を抑制できる。
【0029】
また、本実施形態の給電素子1のうち、第1誘電体層3に接しておらず第1中空領域SP5に露出している面は、誘電体としてのセラミックにより被膜されている。そのため、本実施形態のアンテナ基板100では、給電素子1に被膜される誘電体の厚さや材質が変更されることにより、給電素子1の特性を容易に調整できる。また、本実施形態のアンテナ基板100では、給電素子1の表面の少なくとも一部分が誘電体に被膜されることにより、外部因子の影響等で給電素子1が損傷することを抑制できる。無給電素子2A~2Cのうち、第2誘電体層4A~4Cに接していない面においても誘電体としてのセラミックにより被膜されてもよく、無給電素子2A~2Cの表面の少なくとも一部分が誘電体に被膜されることにより、外部因子の影響等で無給電素子2A~2Cが損傷することを抑制できる。
【0030】
また、本実施形態の貫通孔HLは、
図1,2に示されるように、第2誘電体層4A~4Cの各上面4Tと、第1中空領域SP5とを連通し、中心軸OL2を中心として第2誘電体層4A~4Cの厚み方向に直線上に延びている。本実施形態のように厚み方向に直線上に延びた貫通孔HLは、厚み方向とは異なる方向へと延びている貫通孔と比較して、加工しやすく、かつ、第1中空領域SP5の籠もった気体をアンテナ基板100の外部領域へと放出しやすい。
【0031】
また、本実施形態の貫通孔HLは、第1誘電体層3の厚み方向視で、給電素子1と、3つの無給電素子2A~2Cのいずれとにも重複しない位置に形成されている。すなわち、貫通孔HLは、給電素子1と無給電素子2A~2Cとの電磁的な結合に対して及ぼす影響が少ない位置に形成されている。これにより、本実施形態のアンテナ基板100では、アンテナ基板100の性能に対する影響を抑制した上で、第1中空領域SP5に気体が籠もることを抑制する。
【0032】
また、本実施形態のアンテナ基板100では、複数の無給電素子2A~2Cは、複数の第2誘電体層4A~4Cの上面4Tにそれぞれ設けられている。複数の第2中間誘電体層6A,6Bは、枠状のセラミック誘電体である。第2中間誘電体層6Aは、第2誘電体層4Aと、第2誘電体層4Aの上面4T側に配置された第2誘電体層4Bとの間に配置されている。同じように、第2中間誘電体層6Bは、第2誘電体層4Bと、第2誘電体層4Bの上面4T側に配置された第2誘電体層4Cとの間に配置されている。第2中空領域SP6Aは、第2中間誘電体層6Aの内周面6AIと、第2誘電体層4Aの上面4Tと、第2誘電体層4Bの下面4Lとにより区画され、無給電素子2Aを収容している。同様に、第2中空領域SP6Bは、第2中間誘電体層6Bの内周面6BIと、第2誘電体層4Bの上面4Tと、第2誘電体層4Cの下面4Lとにより区画され、無給電素子2Bを収容している。第2中空領域SP6A,SP6Bは、貫通孔HLによりアンテナ基板100の外部領域に連通している。本実施形態のアンテナ基板100では、複数の無給電素子2A~2Cが給電素子1と電磁的に結合して、給電素子1が放射するアンテナ強度を大きくできる。さらに、無給電素子2A,2Bが収容される第2中空領域SP6A,SP6Bは、貫通孔HLを介してアンテナ基板100の外部領域に連通しているため、第2中空領域SP6A,SP6Bに気体が籠もることが抑制される。これにより、アンテナ基板100の製造時に、第2中空領域SP6A,SP6Bに籠もった気体による不具合を抑制できる。
【0033】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0034】
上記実施形態のアンテナ基板100は、一例であり、第1誘電体層3の上面3Tに設けられた給電素子1と、第1誘電体層3の上面3T側に配置された第2誘電体層4Aの上面4Tに配置された無給電素子2Aと、給電素子1を収容する第1中空領域SP5と、第1中空領域SP5と外部領域とを連通する貫通孔HLとを備える範囲で変形可能である。例えば、アンテナ基板100は、上側2つの無給電素子2B,2C、第2誘電体層4B,4C、および第2中間誘電体層6A,6Bを備えていない、すなわち、1つの給電素子1と、1つの無給電素子2Aとを備え、かつ、第2中間誘電体層6A,6Bおよび第2中空領域SP6A,SP6Bを備えていなくてもよい。また、アンテナ基板100において、例えば、第2中間誘電体層6A,6Bの少なくとも一方は、無給電素子2A,2Bを収容していなくてもよい。
【0035】
上記実施形態では、給電素子1と無給電素子2A~2Cとは、同じ形状を有していたが、異なる形状であってもよい。また、給電素子1と無給電素子2A~2Cとの重心は、中心軸OL1上に位置していたが、第1誘電体層3の厚み方向視で重なっていなくてもよい。第1誘電体層3の厚み方向視において、給電素子1と無給電素子2A~2Cとは、少なくとも一部で重なっていることが好ましい。
【0036】
上記実施形態の貫通孔HLは、第2誘電体層4Aの厚み方向に沿って直線上に形成され、第1中空領域SP5と外部領域とを連通していたが、第1中空領域SP5と外部領域とを連通する範囲で変形可能である。例えば、第2誘電体層4Aの厚み方向に沿って、第1中空領域SP5と第2中空領域SP6Aとを連通する第1貫通孔と、第2中空領域SP6A,SP6Bと外部領域とを連通する第1連通孔とは異なる位置に形成された第2連通孔とが形成されてもよい。この場合には、第1中空領域SP5は、第2誘電体層4Aの厚み方向に沿って直線上に並んでいない第1貫通孔および第2貫通孔を介して外部領域に連通する。
【0037】
図4は、変形例の貫通孔HLaについての説明図である。
図4には、変形例のアンテナ基板100aの概略断面図が示されている。
図4に示される変形例のアンテナ基板100aでは、第1中空領域SP5および第2中空領域SP6A,SP6Bをアンテナ基板100aの外部領域に連通する貫通孔HLaが、第1実施形態の貫通孔HL(
図1,2)と異なる。
図4に示されるアンテナ基板100aでは、第1中間誘電体層5aと第2中間誘電体層6Aa,6Baとのそれぞれに、外部領域に連通する貫通孔HLaが形成されている。変形例の貫通孔HLaのように、第1中間誘電体層5aおよび第2中間誘電体層6Aa,6Baと、外部領域とを連通する貫通孔は、第2中間誘電体層6Aの厚み方向に沿って形成されなくてもよい。また、第1中間誘電体層5aと、第2中間誘電体層6Aa,6Baとは、連通されていなくてもよい。
【0038】
本実施形態のアンテナ基板100は、給電回路50を備えていたが、備えていなくてもよく、別体で作製された給電回路が後から積層されてもよい。アンテナ基板100が備える第2誘電体層4A~4C、無給電素子2A~2C、および第2中間誘電体層6A,6Bの積層数については変形可能であり、任意に設定されてもよい。アンテナ基板100が備える構成の材質および形状については、周知技術の範囲で変形可能である。例えば、第1誘電体層3、第2誘電体層4A~4C、第1中間誘電体層5、および第2中間誘電体層6A,6Bに用いられるセラミックは、同じ材質であってもよいし、異なっていてもよい。給電素子1は、誘電体としてのセラミックで被膜されていたが、必ずしも誘電体で被膜されていなくてもよく、誘電体以外の材料で被膜されていてもよい。無給電素子2A~2Cの一部の無給電素子が誘電体以外の材料で被膜されていてもよく、それぞれが異なる材料で被膜されていてもよい。例えば、給電素子1が被膜されておらず、無給電素子2A~2Cの全てがセラミックで被膜されていてもよい。
【0039】
枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層5および第2中間誘電体層6A,6Bのそれぞれには、第1中空領域SP5および第2中空領域SP6A,SP6Bを形成する矩形状の空間を有していたが、矩形状以外の形状であってもよい。また、第1中空領域SP5と、第2中空領域SP6Aと、第2中空領域SP6Bとの形状は、それぞれ異なっていてもよい。なお、給電素子1および無給電素子2A~2Cは、厚み方向に直交するXY平面上において、中心軸OL1が通る中央部に配置されることが好ましい。
図3に示される上記実施形態の製造方法は、一例であり、工程の順番等や各工程における追加処理など周知技術の範囲で変形可能である。例えば、ビアV1~V4は、Cuを含む導電性ペーストの代わりに、Ag(銀)を含む導電性ペーストを用いて形成されてもよい。
【0040】
上記実施形態における第1誘電体層3の上面3T等における上側と下側とは、給電素子1から無給電素子2Aへと向かう厚み方向をZ軸正方向と定義した場合の呼び方の一例であり、直交座標系CSの定義の変化に応じて、上下方向の呼び方は変化する。そのため、請求項における上側および下側は、定義された直交座標系CSに応じて変化する方向であり、上記実施形態の直交座標系CSの定義および呼び方に限定されない。
【0041】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…給電素子
2A~2C…無給電素子
3…第1誘電体層
3T…第1誘電体層の上面
4A~4C…第2誘電体層
4L…第2誘電体層の下面
4T…第2誘電体層の上面
5,5a…第1中間誘電体層
5I…第1中間誘電体層の内周面
6A,6B,6Aa,6Ba…第2中間誘電体層
6AI,6BI…第2中間誘電体層の内周面
7…GND基板
8…第3中間誘電体層
9…第3誘電体層
10…回路側誘電体
50…給電回路
100,100a…アンテナ基板
CS…直交座標系
HL,HLa…貫通孔
OL1,OL2…中心軸
SP5…第1中空領域
SP6A,SP6B…第2中空領域
V1~V4…ビア