(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126149
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ガス抜き弁およびガス抜き弁シート
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20220823BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20220823BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B65D81/26 A
B65D51/16 310
B65D85/50 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024062
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加島 賢一
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
3E084
【Fターム(参考)】
3E035AA20
3E035BA08
3E035BB02
3E035BC02
3E035BD01
3E035BD02
3E035BD04
3E035CA07
3E067AA11
3E067AB24
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB15A
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3E067GB05
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3E084CA03
3E084CC04
3E084DA03
3E084DB20
3E084DC04
3E084FD13
3E084GA10
3E084GB30
3E084KA04
3E084KB10
3E084LD30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス抜き用の通気孔が形成されたベースフィルムと、通気孔を覆うようにベースフィルムに積層され、かつ直鎖状低密度ポリエチレンで構成されたガス抜き弁を提供する。
【解決手段】通気孔16を挟んで第1方向Xにおいて対向する一対の第1接着部位W5によってベースフィルム5に接着されたカバーフィルム6と、ベースフィルムとカバーフィルムとの間における一対の第1接着部位で挟まれた部位に、通気孔に重なるように第1方向に交差する第2方向Yに沿って形成されたガス排出路28であって、第2方向において第1端部29およびその反対側の第2端部30を有し、第1端部および第2端部の少なくとも一方がガス排出路の開放端部であるガス排出路と、ガス排出路において通気孔に対して開放端部側に配置され、カバーフィルムとベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位D2とを含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁であって、
第1面およびその反対側の第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通するガス抜き用の通気孔が形成され、前記第2面が前記軟質包装材に接着され得るベースフィルムと、
前記通気孔を覆うように前記ベースフィルムの前記第1面に積層され、かつ直鎖状低密度ポリエチレンで構成され、前記通気孔を挟んで第1方向において対向する一対の第1接着部位によって前記ベースフィルムに接着されたカバーフィルムと、
前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの間における前記一対の第1接着部位で挟まれた部位に、前記通気孔に重なるように前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成されたガス排出路であって、前記第2方向において第1端部およびその反対側の第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方が前記ガス排出路の開放端部であるガス排出路と、
前記ガス排出路において前記通気孔に対して前記開放端部側に配置され、前記カバーフィルムと前記ベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位とを含む、ガス抜き弁。
【請求項2】
前記ベースフィルムは、基材層と、前記基材層の前記第1面側に積層された第1接着層と、前記第1接着層に対して剥離可能に積層された第1剥離層とを含み、
前記第1接着層の一部は、前記第1方向において前記第1剥離層を挟む前記一対の第1接着部位として前記第1剥離層から露出しており、
前記カバーフィルムは、前記第1剥離層に跨り、前記一対の第1接着部位としての前記第1接着層に接着されており、前記第1剥離層との間に前記ガス排出路を形成している、請求項1に記載のガス抜き弁。
【請求項3】
前記第1剥離層と前記カバーフィルムとの間に形成されたシール流体層を含む、請求項2に記載のガス抜き弁。
【請求項4】
前記ベースフィルムの前記第1面は、前記ガス排出路が形成された第1領域と、前記一対の第1接着部位が形成され、前記第1方向において前記第1領域を挟み、かつ前記第1領域に対して前記第2面側に窪んだ一対の第2領域とを含み、
前記カバーフィルムは、前記第1領域に跨り、前記一対の第2領域で前記ベースフィルムに接着されており、前記第1領域との間に前記ガス排出路を形成しており、
前記第1領域と前記カバーフィルムとの間に形成されたシール流体層を含む、請求項1に記載のガス抜き弁。
【請求項5】
前記カバーフィルムにおいて前記一対の第1接着部位上の領域に選択的に形成された一対の補助フィルムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガス抜き弁。
【請求項6】
前記ガス排出路の前記第1端部および前記第2端部の両方が前記開放端部であり、
前記第2接着部位は、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの接着境界が前記ガス抜き弁の端面から露出するように、前記第1端部および前記第2端部を部分的に閉塞する一対の第2接着部位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のガス抜き弁。
【請求項7】
前記通気孔は、平面視において真円形状に形成されており、
前記一対の第2接着部位はそれぞれ、平面視において、前記通気孔の径よりも小さな径を有する半円形状に形成されている、請求項6に記載のガス抜き弁。
【請求項8】
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下の密度を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載のガス抜き弁。
【請求項9】
包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁であって、
第1面およびその反対側の第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通するガス抜き用の通気孔が形成され、前記第2面が前記軟質包装材に接着され得るベースフィルムと、
前記通気孔を覆うように前記ベースフィルムの前記第1面に積層され、かつ10MPa以上25MPa以下のヤング率を有する樹脂素材で構成され、前記通気孔を挟んで第1方向において対向する一対の第1接着部位によって前記ベースフィルムに接着されたカバーフィルムと、
前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの間における前記一対の第1接着部位で挟まれた部位に、前記通気孔に重なるように前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成されたガス排出路であって、前記第2方向において第1端部およびその反対側の第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方が前記ガス排出路の開放端部であるガス排出路と、
前記ガス排出路において前記通気孔に対して前記開放端部側に配置され、前記カバーフィルムと前記ベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位とを含む、ガス抜き弁。
【請求項10】
前記樹脂素材は、直鎖状低密度ポリエチレンおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含む、請求項9に記載のガス抜き弁。
【請求項11】
前記ベースフィルムは、前記第2面側に積層された裏面接着層を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のガス抜き弁。
【請求項12】
台紙フィルムと、
前記台紙フィルムに対して前記裏面接着層を介して剥離可能に配置された複数の請求項11に記載のガス抜き弁とを含む、ガス抜き弁シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁および当該ガス抜き弁を備えるガス抜き弁シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、包装容器の包装材料壁の内面に配置された過圧弁を開示している。この過圧弁は、少なくとも1つの貫通部を有するベースプレートと、少なくとも1つの貫通部に重なる、ベースプレートに少なくとも部分的に結合された弁ダイヤフラムと、ベースプレートが包装材料壁に向かい合った側に配置されたスペース層とを備える。
この過圧弁では、スペース層が包装材料壁の内面に結合されており、ベースプレートと、弁ダイヤフラムと、スペース層とが、それぞれプラスチックシートウェブの層からなっている形式である。スペース層が、少なくとも部分的に直接ベースプレートに結合されており、弁ダイヤフラムとスペース層との間に縁側で少なくとも部分的にギャップが形成されている。弁ダイヤフラムは、弁ダイヤフラムに一体成形された、弁ダイヤフラムをベースプレートに結合するための少なくとも1つの結合領域を有している。弁ダイヤフラムが、少なくとも1つの結合領域を含めて、スペース層によって仕切られた内側輪郭の内部に配置されている。結合領域が、弁ダイヤフラムの外側輪郭に突出部として形成されており、突出部のベースプレートに向かい合った面に接着材層が被着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の過圧弁では、ベースプレートの貫通部が包装容器の内部に露出している。そのため、包装容器の内部の過圧によってダイヤフラムが押し上げられてガスが排出されるとき、包装容器に収容されたコーヒー等の粉材が貫通部を介してガスと一緒に排出される場合がある。
しかしながら、ガスの排出が完了してダイヤフラムが通常状態(ダイヤフラムが閉じた状態)に戻るときに、ベースプレートとダイヤフラムとの間に残った粉材を、ダイヤフラムが噛み込む場合がある。その結果、ガスの排出後もダイヤフラムが少し浮いた状態となり、包装容器の内側と外側との間の空気の遮断を確保できないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示の一実施形態に係るガス抜き弁は、包装容器の内側と外側との間の空気の遮断を良好に確保できる包装容器用のガス抜き弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁は、包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁であって、第1面およびその反対側の第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通するガス抜き用の通気孔が形成され、前記第2面が前記軟質包装材に接着され得るベースフィルムと、前記通気孔を覆うように前記ベースフィルムの前記第1面に積層され、かつ直鎖状低密度ポリエチレンで構成され、前記通気孔を挟んで第1方向において対向する一対の第1接着部位によって前記ベースフィルムに接着されたカバーフィルムと、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの間における前記一対の第1接着部位で挟まれた部位に、前記通気孔に重なるように前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成されたガス排出路であって、前記第2方向において第1端部およびその反対側の第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方が前記ガス排出路の開放端部であるガス排出路と、前記ガス排出路において前記通気孔に対して前記開放端部側に配置され、前記カバーフィルムと前記ベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス抜き弁の取り付け状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記ガス抜き弁の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、前記ガス抜き弁の模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、前記ガス抜き弁の模式的な断面図であって、
図3のIV-IV切断線における断面を示している。
【
図5】
図5は、前記ガス抜き弁の模式的な断面図であって、
図3のV-V切断線における断面を示している。
【
図6】
図6は、前記ガス抜き弁の模式的な断面図であって、
図3のVI-VI切断線における断面を示している。
【
図7】
図7は、前記ガス抜き弁の模式的な断面図であって、
図3のVII-VII切断線における断面を示している。
【
図8】
図8は、前記ガス抜き弁の模式的な断面図であって、
図3のVIII-VIII切断線における断面を示している。
【
図9】
図9は、前記ガス抜き弁の模式的な分解図である。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、ベースフィルムとカバーフィルムとの間に粉材の粒子が挟まれた状態を示す図である。
【
図19】
図19は、複数の前記ガス抜き弁を備えるガス抜き弁シートを示す模式的な斜視図である。
【
図20】
図20は、前記ガス抜き弁の変形例を示す模式的な斜視図である。
【
図21】
図21は、前記ガス抜き弁の変形例を示す模式的な平面図である。
【
図22】
図22は、前記ガス抜き弁の変形例を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の実施形態>
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁は、包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁であって、第1面およびその反対側の第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通するガス抜き用の通気孔が形成され、前記第2面が前記軟質包装材に接着され得るベースフィルムと、前記通気孔を覆うように前記ベースフィルムの前記第1面に積層され、かつ直鎖状低密度ポリエチレンで構成され、前記通気孔を挟んで第1方向において対向する一対の第1接着部位によって前記ベースフィルムに接着されたカバーフィルムと、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの間における前記一対の第1接着部位で挟まれた部位に、前記通気孔に重なるように前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成されたガス排出路であって、前記第2方向において第1端部およびその反対側の第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方が前記ガス排出路の開放端部であるガス排出路と、前記ガス排出路において前記通気孔に対して前記開放端部側に配置され、前記カバーフィルムと前記ベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位とを含む。
【0009】
このガス抜き弁は、例えば、包装容器に形成されたガス抜き用の貫通孔を覆うように、軟質包装材に貼り付けられる。包装容器の内部が過圧になると、その内圧が、包装容器の貫通孔およびガス抜き弁の通気孔を介してカバーフィルムに作用する。包装容器の内圧が所定圧以上になり、カバーフィルムに作用する圧力が大きくなると、一対の第1接着部位で固定されたカバーフィルムがベースフィルムに対して部分的に浮いた状態となる。これにより、通気孔とガス排出路の開放端部との間が開通し、包装容器の内部に発生したガスが外部に排出される。その後、包装容器の内圧が所定圧未満になると、カバーフィルムが元の状態に戻る。これにより、ガス排出路が閉じ、外部から包装容器への空気が遮断される。
【0010】
このガス抜き弁によれば、カバーフィルムが直鎖状低密度ポリエチレンで構成されており、柔軟性を有している。そのため、比較的小さな圧力でカバーフィルムを変形させることができるので、ガスを容易に排出することができる。また、ガス排出路においてカバーフィルムとベースフィルムとの間に粉材が挟まれても、粉材の粒子を包み込むようにカバーフィルムが粒子の形状に沿って変形する。これにより、カバーフィルムがベースフィルムに対して、広範囲にわたって浮くことを防止することができる。その結果、包装容器への外気の流入を良好に抑制することができる。
【0011】
また、ガス排出路に第2接着部位が部分的に形成されている。これにより、例えば、第1方向における両側(例えば、ガス抜き弁の左右両側)からガス抜き弁に力が加わってガス抜き弁が撓んでも、カバーフィルムがベースフィルムに対して浮くことを防止することができる。その結果、ガス抜き弁の逆止機能を良好に維持することができる。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記ベースフィルムは、基材層と、前記基材層の前記第1面側に積層された第1接着層と、前記第1接着層に対して剥離可能に積層された第1剥離層とを含み、前記第1接着層の一部は、前記第1方向において前記第1剥離層を挟む前記一対の第1接着部位として前記第1剥離層から露出しており、前記カバーフィルムは、前記第1剥離層に跨り、前記一対の第1接着部位としての前記第1接着層に接着されており、前記第1剥離層との間に前記ガス排出路を形成していてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1剥離層の表面と第1接着層の表面との間に、少なくとも第1剥離層の厚さに相当する段差が形成されている。これにより、ベースフィルムにおいてガス排出路用の領域(第1剥離層)は、第1接着層に対して凸状である。そのため、第1剥離層の両側から露出している第1接着層に対して、突っ張った状態でカバーフィルムを接着することができる。これにより、カバーフィルムとベースフィルムとの密着性を向上できるので、ガス抜き弁の逆止機能を一層向上することができる。
【0013】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記第1剥離層と前記カバーフィルムとの間に形成されたシール流体層を含んでいてもよい。
この構成によれば、シール流体層によってカバーフィルムとベースフィルムとの密着性を向上できるので、ガス抜き弁の逆止機能を向上することができる。また、前述のように、カバーフィルムにテンションが加わることによってもカバーフィルムとベースフィルムとの密着性が向上しているので、シール流体層が少量であっても、密着性向上の効果を十分に享受することができる。
【0014】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記ベースフィルムの前記第1面は、前記ガス排出路が形成された第1領域と、前記一対の第1接着部位が形成され、前記第1方向において前記第1領域を挟み、かつ前記第1領域に対して前記第2面側に窪んだ一対の第2領域とを含み、前記カバーフィルムは、前記第1領域に跨り、前記一対の第2領域で前記ベースフィルムに接着されており、前記第1領域との間に前記ガス排出路を形成しており、前記第1領域と前記カバーフィルムとの間に形成されたシール流体層を含んでいてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1領域の表面と第2領域(第1接着部位)の表面との間に、少なくとも第2領域の窪みに相当する段差が形成されている。これにより、ベースフィルムにおいてガス排出路用の第1領域は、第2領域(第1接着部位)に対して凸状である。そのため、第1領域の両側の一対の第1接着部位に対して、突っ張った状態でカバーフィルムを接着することができる。これにより、カバーフィルムとベースフィルムとの密着性を向上できるので、ガス抜き弁の逆止機能を一層向上することができる。
【0016】
また、シール流体層によってカバーフィルムとベースフィルムとの密着性を向上できるので、ガス抜き弁の逆止機能を向上することができる。また、前述のように、カバーフィルムにテンションが加わることによってもカバーフィルムとベースフィルムとの密着性が向上しているので、シール流体層が少量であっても、密着性向上の効果を十分に享受することができる。
【0017】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁は、前記カバーフィルムにおいて前記一対の第1接着部位上の領域に選択的に形成された一対の補助フィルムを含んでいてもよい。
例えば、複数の包装容器が重なって保管される場合、隣り合う包装容器がガス抜き弁に密着することによって、当該ガス抜き弁において、カバーフィルムがベースフィルムに対して押し付けられることがある。その結果、包装容器の内圧が所定圧以上になってもガス排出路が開通せず、包装容器内部のガスを排出できない場合がある。そこで、補助フィルムを設けることによって、補助フィルムが、隣り合う包装容器とカバーフィルムとの間に介在する。これにより、カバーフィルムが包装容器で押し付けられることを抑制することができる。
【0018】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記ガス排出路の前記第1端部および前記第2端部の両方が前記開放端部であり、前記第2接着部位は、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの接着境界が前記ガス抜き弁の端面から露出するように、前記第1端部および前記第2端部を部分的に閉塞する一対の第2接着部位を含んでいてもよい。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記通気孔は、平面視において真円形状に形成されており、前記一対の第2接着部位はそれぞれ、平面視において、前記通気孔の径よりも小さな径を有する半円形状に形成されていてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記直鎖状低密度ポリエチレンは、0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下の密度を有していてもよい。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁は、包装容器の軟質包装材の外面に取り付け得る包装容器用のガス抜き弁であって、第1面およびその反対側の第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通するガス抜き用の通気孔が形成され、前記第2面が前記軟質包装材に接着され得るベースフィルムと、前記通気孔を覆うように前記ベースフィルムの前記第1面に積層され、かつ10MPa以上25MPa以下のヤング率を有する樹脂素材で構成され、前記通気孔を挟んで第1方向において対向する一対の第1接着部位によって前記ベースフィルムに接着されたカバーフィルムと、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムとの間における前記一対の第1接着部位で挟まれた部位に、前記通気孔に重なるように前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成されたガス排出路であって、前記第2方向において第1端部およびその反対側の第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方が前記ガス排出路の開放端部であるガス排出路と、前記ガス排出路において前記通気孔に対して前記開放端部側に配置され、前記カバーフィルムと前記ベースフィルムとの部分的な接着によって形成された第2接着部位とを含んでいてもよい。
【0020】
このガス抜き弁は、例えば、包装容器に形成されたガス抜き用の貫通孔を覆うように貼り付けられる。包装容器の内部が過圧になると、その内圧が、包装容器の貫通孔およびガス抜き弁の通気孔を介してカバーフィルムに作用する。包装容器の内圧が所定圧以上になり、カバーフィルムに作用する圧力が大きくなると、一対の第1接着部位で固定されたカバーフィルムがベースフィルムに対して部分的に浮いた状態となる。これにより、通気孔とガス排出路の開放端部との間が開通し、包装容器の内部に発生したガスが外部に排出される。その後、包装容器の内圧が所定圧未満になると、カバーフィルムが元の状態に戻る。これにより、ガス排出路が閉じ、外部から包装容器への空気が遮断される。
【0021】
このガス抜き弁によれば、カバーフィルムが10MPa以上25MPa以下のヤング率を有する樹脂素材で構成されており、柔軟性を有している。そのため、比較的小さな圧力でカバーフィルムを変形させることができるので、ガスを容易に排出することができる。また、ガス排出路においてカバーフィルムとベースフィルムとの間に粉材が挟まれても、粉材の粒子を包み込むようにカバーフィルムが粒子の形状に沿って変形する。これにより、カバーフィルムがベースフィルムに対して、広範囲にわたって浮くことを防止することができる。その結果、包装容器への外気の流入を良好に抑制することができる。
【0022】
また、ガス排出路に第2接着部位が部分的に形成されている。これにより、例えば、第1方向における両側(例えば、ガス抜き弁の左右両側)からガス抜き弁に力が加わってガス抜き弁が撓んでも、カバーフィルムがベースフィルムに対して浮くことを防止することができる。その結果、ガス抜き弁の逆止機能を良好に維持することができる。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記樹脂素材は、直鎖状低密度ポリエチレンおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0023】
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁では、前記ベースフィルムは、前記第2面側に積層された裏面接着層を含んでいてもよい。
本開示の一実施形態に係るガス抜き弁シートは、台紙フィルムと、前記台紙フィルムに対して前記裏面接着層を介して剥離可能に配置された複数の前記ガス抜き弁とを含む。
この構成によれば、例えば、ガス抜き弁シートを立て掛けたり、ファイルに収納したりすることができるので、複数のガス抜き弁を容易に保管することができる。
【0024】
<本開示の実施形態の詳細な説明>
次に、本開示の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
[包装容器2の全体形状]
図1は、本開示の一実施形態に係るガス抜き弁1の取り付け状態を示す斜視図である。
ガス抜き弁1は、
図1に示すように、包装容器2に取り付けられ、包装容器2の膨張や破裂を防ぐと共に、包装容器2への外気の侵入を防ぐためのものである。これにより、包装容器2内の食品の品質を保持する。
包装容器2は、例えば、プラスチック樹脂の複合(ラミネート)フィルムで構成された可撓性バッグであり、軟質包装材21の外面3および内面4(
図10A,10Bおよび
図11A,11B参照)を有している。ガス抜き弁1は、包装容器2の外面3に取り付けられている。軟質包装材21は、包装容器2を構成するフィルム状の素材であり、例えば、比較的薄い場合(例えば、厚さが250μm未満)には包装材料フィルムと称してもよいし、比較的厚い場合(例えば、厚さが250μm以上)には包装材料シートと称してもよい。なお、本開示において、「フィルム」および「シート」を含む構成が、それぞれ、「厚さが250μm未満」および「厚さが250μm以上」に限定されるものではないことを付記しておく。
【0026】
包装容器2の内部には、例えば、貯蔵中にガスを発生する食品が密閉保存されている。そのような食品としては、例えば、コーヒー等が挙げられる。当該食品から発生するガスは、ガス抜き弁1を通って包装容器2の外部に排出される。コーヒーは、焙煎コーヒー豆の状態、焙煎コーヒー豆を挽いて得られた粉状態(レギュラーコーヒー)であってもよい。
なお、包装容器2は、その構成材料がフィルムであることから、包装バッグと称してもよい。また、包装容器2の内部は、真空状態であってもよいし、多少の空気が存在する状態であってもよい。
【0027】
[ガス抜き弁1の全体形状]
図2は、ガス抜き弁1の模式的な斜視図である。
図3は、ガス抜き弁1の模式的な平面図である。
図4は、ガス抜き弁1の模式的な断面図であって、
図3のIV-IV切断線における断面を示している。
図5は、ガス抜き弁1の模式的な断面図であって、
図3のV-V切断線における断面を示している。
図6は、ガス抜き弁1の模式的な断面図であって、
図3のVI-VI切断線における断面を示している。
図7は、ガス抜き弁1の模式的な断面図であって、
図3のVII-VII切断線における断面を示している。
図8は、ガス抜き弁1の模式的な断面図であって、
図3のVIII-VIII切断線における断面を示している。
図9は、ガス抜き弁1の模式的な分解図である。
【0028】
図2および
図3を参照して、ガス抜き弁1は、平面視略四角形状(例えば、4つの角部が丸みを帯びた四角形状)に形成されている。ガス抜き弁1のサイズ(縦の長さL1×横の幅W1)は、例えば、15mm×15mm以上25mm×25mm以下(具体的には、20mm×20mm程度)であってもよい。ガス抜き弁1は、互いに対向する一対の端面1A(端縁)と、一対の端面1Aに直交する一対の端面1Bとを有している。一対の端面1Aおよび一対の端面1Bは、ガス抜き弁1の外形を形成している。この実施形態では、一対の端面1Aに平行な方向を第1方向Xと定義し、一対の端面1Bに平行な方向を第2方向Yと定義し、ガス抜き弁1の厚さ方向(第1方向Xおよび第2方向Yに直交する方向)を第3方向Zと定義する。また、第2方向Yは、ガスの排出方向と定義してもよい。
【0029】
ガス抜き弁1は、ベースフィルム5と、カバーフィルム6と、シール流体層7(
図9では省略)と、補助フィルム8とを含む。
ベースフィルム5は、例えば、第1面9およびその反対側の第2面10を有している。ベースフィルム5は、第1面9および第2面10の両側に接着層を有するプラスチックフィルムからなっていてもよい。ベースフィルム5は、例えば、50μm以上200μm以下(具体的には、150μm程度)の厚さを有していてもよい。
【0030】
この実施形態では、
図4~
図8を参照して、ベースフィルム5は、基材層11と、第1接着層12と、第1剥離層13と、裏面接着層14とを備える両面粘着フィルムである。第1接着層12および第1剥離層13は、基材層11の第1面9側に、この順に積層されている。裏面接着層14は、基材層11の第2面10側に積層されている。裏面接着層14は、第2接着層と称してもよい。
【0031】
基材層11としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)等のプラスチック素材が挙げられる。基材層11の厚さは、例えば、50μm以上100μm以下(具体的には、75μm程度)であってもよい。第1接着層12および裏面接着層14としては、例えば、アクリル系粘着剤等の粘着素材が挙げられる。第1剥離層13としては、例えば、PET等のプラスチック素材が挙げられる。第1剥離層13の厚さは、例えば、10μm以上40μm以下(具体的には、25μm程度)であってもよい。ベースフィルム5のような両面粘着フィルムの具体的な市販品としては、例えば、日榮新化株式会社製のNeo Fix等が挙げられる。
【0032】
ベースフィルム5は、この実施形態では、ガス抜き用の通気孔16を中央部に有する略四角環状に形成されている。通気孔16は、この実施形態では、真円形状である。
図9を参照して、ベースフィルム5のサイズ(縦の長さL2×横の幅W2)は、ガス抜き弁1のサイズと同じであり、例えば、15mm×15mm以上25mm×25mm以下(具体的には、20mm×20mm程度)であってもよい。通気孔16の直径D1は、例えば、5mm以上10mm以下(具体的には、8mm程度)であってもよい。
【0033】
図9を参照して、ベースフィルム5において、第1剥離層13が選択的に剥離されることによって、第1剥離層13から第1接着層12の一部が露出している。第1接着層12は、第1剥離層13が剥離された領域ごとに、それぞれが独立した接着部位として露出している。この実施形態では、第1接着層12は、一対の第1接着部位17と、一対の第2接着部位18とを形成している。
【0034】
一対の第1接着部位17は、ガス抜き弁1の一方の端面1Aから他方の端面1Aまで端面1Bに沿って延びる帯状に形成されている。これにより、通気孔16の形成領域を含む第1剥離層13の残りの帯状の部分が一対の第1接着部位17で挟まれている。第1方向Xにおける第1剥離層13の幅W4は、第1接着部位17の幅W5よりも大きくてもよい。例えば、幅W4が11mm程度であり、W5がそれぞれ4.5mm程度であってもよい。
【0035】
各第1接着部位17は、第1方向Xにおいて通気孔16から間隔を空けて形成されている。したがって、第1方向Xにおいて通気孔16の両側には、第1剥離層13の一部が余白部分19として残っている。この余白部分19は、通気孔16の周囲においてカバーフィルム6とベースフィルム5との間にタックフリー性を提供する。これにより、通気孔16の周囲全体にわたってカバーフィルム6がベースフィルム5から離間自在であるため、比較的小さな圧力でガス排出路28(後述)を開通させることができる。
【0036】
図4~
図6を参照して、ベースフィルム5の第1面9において、第1剥離層13の表面と、第1接着部位17を形成する第1接着層12の表面との間には第1段差20が形成されている。第1段差20は、第1剥離層13の剥離によって発生するものであり、少なくとも第1剥離層13の厚さに相当している。この第1段差20によって、ベースフィルム5において第1剥離層13は、第1接着層12に対して凸状である。他の言い方では、第1剥離層13は、第1接着層12上に島状に選択的に積層されており、第1剥離層13の周囲に、第1接着層12の一部が第1接着部位17として露出していてもよい。また、
図9を参照して、ベースフィルム5において、第1剥離層13が形成された凸状の領域を第1領域22と定義し、第1領域22に対して第2面10側に窪んだ一対の第1接着部位17を形成する領域を第2領域23と定義してもよい。
【0037】
なお、基材層11上に第1接着層12および第1剥離層13を含む積層構造が形成されていない場合、第1段差20は、他の手法によって形成されていてもよい。例えば、第1領域22および第2領域23に対応するストライプ状の凸凹構造を有する基材層11を成形し、その第2領域23に接着素材(粘着素材)を塗布等で形成してもよい。
一対の第2接着部位18は、通気孔16に対して、ガス抜き弁1の一方の端面1Aおよび他方の端面1A側に形成されている。この実施形態では、一対の第2接着部位18は、ガス抜き弁1の一方の端面1Aおよび他方の端面1Aの近傍に形成されている。これにより、各第2接着部位18は、第2方向Yにおいて通気孔16から間隔を空けて形成されている。また、一対の第2接着部位18は、それぞれ、一方の端面1Aおよび他方の端面1Bにおいて開放された半円形状に形成されていてもよい。各第2接着部位18の直径D2は、通気孔16の直径D1よりも小さくてもよい。例えば、直径D2は、4mm程度であってもよい。
【0038】
図7を参照して、ベースフィルム5の第1面9において、第1剥離層13の表面と、第2接着部位18を形成する第1接着層12の表面との間には第2段差24が形成されている。第2段差24は、第1剥離層13の剥離によって発生するものであり、少なくとも第1剥離層13の厚さに相当している。この第2段差24によって、ベースフィルム5において第1剥離層13は、第1接着層12に対して凸状である。また、
図9を参照して、ベースフィルム5において、第1剥離層13が形成された凸状の領域を第1領域22と定義し、第1領域22に対して第2面10側に窪んだ一対の第2接着部位18を形成する領域を第3領域25と定義してもよい。
【0039】
カバーフィルム6は、例えば、第1面26およびその反対側の第2面27を有している。カバーフィルム6は、この実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなっている。カバーフィルム6がポリエチレンで形成されていれば、例えば、シール流体層7がシリコーンオイルからなる場合、シール流体層7との親和性がよい。
直鎖状低密度ポリエチレンは、0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下の密度を有していてもよい。カバーフィルム6は、例えば、30μm以上80μm以下(具体的には、50μm程度)の厚さを有していてもよい。なお、カバーフィルム6は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と同等の柔軟性を有する素材であれば、他の素材に置き換えてもよい。例えば、カバーフィルム6は、10MPa以上25MPa以下のヤング率を有する樹脂素材で構成されていることが好ましい。この範囲のヤング率を有する樹脂素材としては、直鎖状低密度ポリエチレンの他、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、ヤング率は、例えば、ISO527-1(JIS K 7161)に準拠して測定された値であってもよい。
【0040】
カバーフィルム6は、この実施形態では、平面視略四角形状(例えば、4つの角部が丸みを帯びた四角形状)に形成されている。
図9を参照して、カバーフィルム6のサイズ(縦の長さL3×横の幅W3)は、ガス抜き弁1のサイズと同じであり、例えば、15mm×15mm以上25mm×25mm以下(具体的には、20mm×20mm程度)であってもよい。
【0041】
そして、カバーフィルム6は、通気孔16を覆うようにベースフィルム5の第1面9に積層され、その第2面27が、一対の第1接着部位17および一対の第2接着部位18によってベースフィルム5に接着されている。
シール流体層7は、カバーフィルム6とベースフィルム5の第1剥離層13(第1領域22)との間に形成されている。シール流体層7としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン系粘着剤等を使用できる。カバーフィルム6は、シール流体層7の粘着力によって、第3方向Z方向に開閉自在な状態でベースフィルム5の第1剥離層13(第1領域22)に粘着している。
【0042】
ベースフィルム5とカバーフィルム6との間における一対の第1接着部位17で挟まれた部位は、ガス排出路28である。ガス排出路28は、通気孔16に重なるように第2方向Yに沿って帯状に形成されている。つまり、第1剥離層13とカバーフィルム6との間が、ガス排出路28である。ガス排出路28は、第2方向Yにおいて第1端部29およびその反対側の第2端部30を有している。例えば、一方の端面1A側の端部が第1端部29であり、他方の端面1A側の端部が第2端部30であってもよい。
【0043】
この実施形態では、第1端部29および第2端部30は、いずれも、各第2接着部位18の第1方向Xの両側が開放された開放端部である。言い換えれば、ガス排出路28の第1端部29および第2端部30は、第2接着部位18によって部分的に閉塞されている。これにより、ベースフィルム5とカバーフィルム6との接着境界31が、ガス抜き弁1の一対の端面1Aから露出している。通気孔16を通過したガスは、ガス排出路28を介して、一方の端面1Aおよび他方の端面1Aの両側から排出され得る。
【0044】
補助フィルム8は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)等のプラスチック素材からなる。補助フィルム8の厚さは、例えば、ベースフィルム5の厚さよりも大きくてもよい。補助フィルム8の厚さは、例えば、150μm以上300μm以下(具体的には、200μm程度)であってもよい。
【0045】
補助フィルム8は、カバーフィルム6において一対の第1接着部位17上の領域に選択的に形成されている。一対の補助フィルム8は、例えば、一対の第1接着部位17と同じ帯状に形成されている。補助フィルム8は、図示しない接着層(例えば、アクリル系接着剤等)によってカバーフィルム6に接着されている。なお、補助フィルム8は、カバーフィルム6の第1面26よりも突出する構造であるため、補助壁と称してもよい。
【0046】
【0047】
図10Aおよび
図10Bに示すように、ガス抜き弁1は、例えば、貫通孔32が形成された包装容器2の軟質包装材21に、ベースフィルム5の第2面10が外面3に向いた姿勢で接着される。ガス抜き弁1と軟質包装材21とは、裏面接着層14で接着されてもよい。なお、ベースフィルム5は裏面接着層14を備えていなくてもよく、この場合、基材層11の裏面に接着剤を塗布することによって、ガス抜き弁1を軟質包装材21に接着することができる。
【0048】
包装容器2内の粉材からガスが発生して包装容器2の内部が過圧になると、その内圧が、包装容器2の貫通孔32およびガス抜き弁1の通気孔16を介してカバーフィルム6に作用する。包装容器2の内圧が所定圧以上になり、カバーフィルム6に作用する圧力が大きくなると、
図11Aおよび
図11Bに示すように、一対の第1接着部位17で固定されたカバーフィルム6がベースフィルム5に対して部分的に浮いた状態となる。より具体的には、ガスに起因する気泡が、ガス排出路28に形成されたシール流体層7中を通気孔16から第1端部29および第2端部30に向かって移動する。そして、ガス抜き弁1の一対の端面1Aからガスが外部に排出される。その後、包装容器2の内圧が所定圧未満になると、カバーフィルム6が元の状態に戻る。これにより、ガス排出路28が再び、シール流体層7によってシールされる。すなわち、外部から包装容器2への空気が遮断される。
【0049】
そして、このガス抜き弁1によれば、カバーフィルム6が、直鎖状低密度ポリエチレンや熱可塑性エラストマー等の柔軟性素材で構成されている。そのため、比較的小さな圧力(例えば、10mmHg程度)でカバーフィルム6を変形させることができるので、ガスを容易に排出することができる。
また、
図12Aに示すように、ガス排出路28においてカバーフィルム6とベースフィルム5との間に粉材が挟まれても、粉材の粒子33を包み込むようにカバーフィルム6が粒子の形状に沿って変形する。これにより、カバーフィルム6がベースフィルム5に対して、広範囲にわたって浮くことを防止することができる。その結果、包装容器2への外気の流入を良好に抑制することができる。これに対し、カバーフィルム6が硬質性素材であると、
図12Bに示すように粉材の粒子33の周囲に空間34が形成され易く、
図12Aの場合に比べてガス抜き弁1の逆止機能が低くなる場合がある。
【0050】
ガス抜き弁1では、ガス排出路28に第2接着部位18が部分的に形成されている。これにより、例えば、第1方向Xにおける両側(例えば、ガス抜き弁1の左右両側)からガス抜き弁1に力が加わってガス抜き弁1が撓んでも、カバーフィルム6がベースフィルム5に対して浮くことを防止することができる。その結果、ガス抜き弁1の逆止機能を良好に維持することができる。
【0051】
また、第1剥離層13の表面と第1接着層12の表面との間に、少なくとも第1剥離層13の厚さに相当する第1段差20および第2段差24が形成されている。これにより、ベースフィルム5において第1領域22は、第2領域23および第3領域25に対して凸状である。そのため、第1接着層12に対して、突っ張った状態でカバーフィルム6を接着することができる。特にこの実施形態では、ガス抜き弁1の4つの端面1A,1B近傍に形成された接着部位17,18に向かう4方向に突っ張った状態で、カバーフィルム6を固定することができる。これにより、カバーフィルム6とベースフィルム5との密着性を向上できるので、ガス抜き弁1の逆止機能を向上することができる。
【0052】
さらに、シール流体層7によってカバーフィルム6とベースフィルム5との密着性を向上できるので、ガス抜き弁1の逆止機能を一層向上することができる。また、前述のように、カバーフィルム6にテンションが加わることによってもカバーフィルム6とベースフィルム5との密着性が向上しているので、シール流体層7が少量であっても、密着性向上の効果を十分に享受することができる。
【0053】
また、例えば、複数の包装容器2が重なって保管される場合(例えば、上下に積み重ねられる場合等)、隣り合う包装容器2がガス抜き弁1に密着することによって、当該ガス抜き弁1において、カバーフィルム6がベースフィルム5に対して押し付けられることがある。その結果、包装容器2の内圧が所定圧以上になってもガス排出路28が開通せず、包装容器2内部のガスを排出できない場合がある。そこで、補助フィルム8を設けることによって、補助フィルム8が、隣り合う包装容器2とカバーフィルム6との間に介在する。これにより、カバーフィルム6が包装容器2で押し付けられることを抑制することができる。
【0054】
さらに、カバーフィルム6が柔軟性を有しており、包装容器2の外面3の形状に沿ってガス抜き弁1が変形するので、包装容器2の外面3の形状によらず、逆止機能を発現することができる。例えば、コーヒー豆を真空包装した包装容器2の場合、包装容器2の外面3がコーヒー豆の形状に沿って凸凹な面になる。このような場合でも、当該凸凹形状に沿ってガス抜き弁1を変形するので、逆止機能を十分に発現することができる。
【0055】
【0056】
ガス抜き弁1を製造するには、例えば、
図13Aおよび
図13Bを参照して、ベースフィルム5が準備される。この実施形態では、ロール状に巻かれた帯状のベースフィルム5が順に引き出され、ベースフィルム5の長手方向に沿って多数のガス抜き弁1が間隔を空けて連続的に形成される。ロール状のベースフィルム5の長さは、例えば、100m程度であってもよい。
【0057】
ベースフィルム5は、例えば、帯状の台紙フィルム15上に、互いに同じ幅を有する帯状の裏面接着層14、基材層11、第1接着層12および第1剥離層13が順に積層された構造を有する両面粘着フィルムである。台紙フィルム15としては、例えば、PET等のプラスチック素材が挙げられる。台紙フィルム15の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下(具体的には、70μm程度)であってもよい。このような両面粘着フィルムの具体的な市販品としては、例えば、日榮新化株式会社製のNeo Fix等が挙げられる。
【0058】
次に、第1剥離層13上に、シール流体層7を構成するオイルが塗布される。この実施形態では、ベースフィルム5の長手方向に沿って、シリコーンオイルが帯状に滴下される。
図13Aでは、ストライプ細線が描かれた領域が、シール流体層7用のオイルが塗布された領域である。
次に、
図14Aおよび
図14Bを参照して、ベースフィルム5に、第1カットライン35、第2カットライン36および第3カットライン37が形成される。第1カットライン35は、通気孔16を形成する。例えば、平面視円形状の第1抜き刃38を第1剥離層13の表面から台紙フィルム15の裏面まで挿入することによって、平面視円形状の第1カットライン35が1つ1つ形成される。
【0059】
第2カットライン36は、第1接着部位17を形成する。例えば、一対の第2抜き刃39を第1剥離層13の表面から第1接着層12まで挿入し、ベースフィルム5の長手方向に沿って平行に走らせることによって、第2カットライン36が形成される。第3カットライン37は、第2接着部位18を形成する。例えば、平面視半円形状の第3抜き刃40を第1剥離層13の表面から第1接着層12まで挿入することによって、平面視半円形状の第3カットライン37が1つ1つ形成される。
【0060】
次に、
図15A~
図15Cを参照して、第1カットライン35、第2カットライン36および第3カットライン37によって分離されたベースフィルム5の不要部分が除去される。この実施形態では、第1カットライン35で区画された基材層11、第1接着層12、第1剥離層13、裏面接着層14および台紙フィルム15が除去されることによって通気孔16が形成される。第2カットライン36および第3カットライン37で区画された第1剥離層13が剥離されることによって、第1接着部位17および第2接着部位18が形成される。
【0061】
次に、
図16A~
図16Cを参照して、ベースフィルム5上にカバーフィルム6が積層される。この実施形態では、ロール状に巻かれた帯状のカバーフィルム6が準備される。当該カバーフィルム6は、ベースフィルム5の長手方向に沿って順にベースフィルム5に貼り合わせられ、第1接着部位17および第2接着部位18を介して接着される。
次に、
図17A~
図17Cを参照して、カバーフィルム6上に補助フィルム8が積層される。この実施形態では、ロール状に巻かれた帯状の補助フィルム8が準備される。当該補助フィルム8は、カバーフィルム6の長手方向に沿って順にカバーフィルム6に貼り合わせられ、図示しない接着層(例えば、アクリル系接着剤等)を介して接着される。
【0062】
次に、
図18A~
図18Cを参照して、各ガス抜き弁1の形状に対応するカットライン(図示せず)がカバーフィルム6およびベースフィルム5に形成され、当該カットラインでカットされたカバーフィルム6およびベースフィルム5の不要部分が除去される。この実施形態では、20mm×20mmのサイズでカバーフィルム6およびベースフィルム5が1つ1つ打ち抜かれることによってガス抜き弁1が形成される。以上の工程を経て、前述のガス抜き弁1が得られる。
【0063】
なお、完成したガス抜き弁1は、
図19に示すように、1枚の幅広な台紙フィルム15上に複数個並べて配置されることによって、ガス抜き弁シート100として提供されてもよい。この場合、包装容器2にガス抜き弁1を接着するたびに、使用するガス抜き弁1を台紙フィルム15から剥離してもよい。
図19のように1枚の台紙フィルム15に複数のガス抜き弁1が並べて貼着されていれば、例えば、ガス抜き弁シート100を立て掛けたり、ファイルに収納したりすることができるので、複数のガス抜き弁1を容易に保管することができる。
【0064】
一方、
図18A~
図18Cの工程において、台紙フィルム15を含めたガス抜き弁1を打ち抜いてもよい。この場合、各ガス抜き弁1が台紙フィルム15で構成された第2剥離層を有するので、当該第2剥離層を剥離して包装容器2にガス抜き弁1を貼り付ければよい。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、他の形態で実施することもできる。
【0065】
例えば、前述の実施形態では、ガス抜き弁1は平面視略四角形状に形成されていたが、平面視円形状に形成されていてもよい。この場合、例えば、ベースフィルム5およびカバーフィルム6が、それぞれ、平面視円形状に形成されていてもよい。むろん、ガス抜き弁1の形状は、図示した略四角形状、円形状に限らず、種々の形を採用することができる。例えば、正方形状、三角形状、六角形状、楕円形状、星形状等であってもよい。
【0066】
また、
図20に示すように、ガス抜き弁1は、補助フィルム8を備えていなくてもよい。また、
図21に示すように、一対の第2接着部位18は、通気孔16と一対の端面1Aとの間に形成されていてもよい。この場合、一対の第2接着部位18は、通気孔16および一対の端面1Aのそれぞれから間隔を空けて配置されていてもよい。また、
図22に示すように、通気孔16および一対の第2接着部位18は、それぞれ、平面視略四角形状に形成されていてもよい。
【0067】
また、例えば、前述の実施形態では、ガス抜き弁1の使用例の一例として、内部に粉材(レギュラーコーヒー)が収容された包装容器2を取り上げたが、ガス抜き弁1は、他の包装容器に使用することもできる。包装容器2は、例えば、味噌等、粉材ではないが、貯蔵中にガスを発生する食品が収容されたものであってもよい。
また、ガス抜き弁1は、商品として出荷される包装容器2に取り付け可能であるだけでなく、例えば、購入した商品を使用者が小分け袋に取り分けたときに、当該小分け袋に取り付けることもできる。
【0068】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 :ガス抜き弁
1A :端面
1B :端面
2 :包装容器
3 :外面
4 :内面
5 :ベースフィルム
6 :カバーフィルム
7 :シール流体層
8 :補助フィルム
9 :第1面
10 :第2面
11 :基材層
12 :第1接着層
13 :第1剥離層
14 :裏面接着層
15 :台紙フィルム
16 :通気孔
17 :第1接着部位
18 :第2接着部位
19 :余白部分
20 :第1段差
21 :軟質包装材
22 :第1領域
23 :第2領域
24 :第2段差
25 :第3領域
26 :第1面
27 :第2面
28 :ガス排出路
29 :第1端部
30 :第2端部
31 :接着境界
32 :貫通孔
33 :粒子
34 :空間
35 :第1カットライン
36 :第2カットライン
37 :第3カットライン
38 :第1抜き刃
39 :第2抜き刃
40 :第3抜き刃
100 :ガス抜き弁シート
D1 :(通気孔)直径
D2 :(第2接着部位)直径
L1 :(ガス抜き弁)長さ
L2 :(ベースフィルム)長さ
L3 :(カバーフィルム)長さ
W1 :(ガス抜き弁)幅
W2 :(ベースフィルム)幅
W3 :(カバーフィルム)幅
W4 :(第1剥離層)幅
W5 :(第1接着部位)幅
X :第1方向
Y :第2方向
Z :第3方向