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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126197
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ガス残量通知装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
A61M16/00 370A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024115
(22)【出願日】2021-02-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】501204271
【氏名又は名称】株式会社ドリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 勇
(72)【発明者】
【氏名】権 成花
(57)【要約】
【課題】電源電池の消耗を抑えて確実にガス残量を表示することができるガス残量通知装置を提供する。
【解決手段】本発明のガス残量通知装置は、ボンベ容器1の残圧とガスの使用流量とを入力する情報入力手段30と、入力された残圧と使用流量とに基づいてボンベ容器1の使用可能時間を算出する演算手段32と、スタートスイッチ17が操作された時刻から使用可能時間をダウンカウントするタイマー部33と、使用可能時間の残り時間を表示する表示手段34と、使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知するバイブレータ37とブザー38およびLED39とを備え、電池の電池残量が所定値よりも少なくなったときに、バイブレータ37とブザー38を非動作状態にし、LED39だけを点滅させてガス残量を報知する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、
前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、
入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、
スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、
前記使用可能時間の残り時間を表示する表示手段と、
前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する複数の報知手段と、
を備え、
前記複数の報知手段は、前記電池の電池残量が所定値よりも少なくなったときに、少なくとも1つが非動作状態となる、ことを特徴とするガス残量通知装置。
【請求項2】
前記複数の報知装置は、バイブレーションとブザーおよび発光素子のうち少なくとも2つ以上を含み、前記電池の電池残量が所定値よりも少なくなったときに、前記バイブレーションと前記ブザーのいずれか一方または両方の動作を停止する、ことを特徴とする請求項1に記載のガス残量通知装置。
【請求項3】
電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、
前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、
入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、
スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、
前記使用可能時間の残り時間を表示する表示手段と、
前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する複数の報知手段と、
を備え、
前記電池の電池残量が所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可した上で、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを禁止する、ことを特徴とするガス残量通知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ボンベ等のボンベ容器内に充填されたガス残量が一定量以下になったことを通知するガス残量通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場で患者を手術室や検査室等に移送する場合、患者が十分な酸素を吸気できるようにするために、酸素ボンベ内に充填された呼吸用酸素を患者に供給するようにしている。その際、酸素ボンベからガス(呼吸用酸素)の供給が止まってしまうと、患者の呼吸状態に影響を与えてしまうため、看護師等の医療従事者は、酸素ボンベに接続された圧力計をチェックしてガス残量を確認する必要がある。しかし、医療行為に集中する必要がある医療従事者にとって、酸素ボンベ内のガス残量を目視確認する作業は煩雑であり、人為的な確認ミス等をおこす虞があった。
【0003】
そこで、従来より、酸素ボンベの残圧と使用流量を手動入力してからスタートスイッチを操作すると、これら入力情報に基づいて演算手段が酸素ガスの使用可能時間を演算すると共に、タイマー手段が使用可能時間のダウンカウントを開始し、使用可能時間がゼロになったときにスピーカ等の警報装置を鳴らすことで、ガス残量が一定量以下になったことを通知するようにしたポータブルガス残量タイマーが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-116358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたガス残量タイマーは、電池(バッテリー)を電源とするソフトウェアが演算手段やタイマー手段を実行したり、電池を電源としてスピーカ等の警報装置を鳴動させて警報音を発する電子機器である。したがって、電池残量がゼロになっていなければ、酸素ガスの使用可能時間の演算やダウンカウントを実行し、ガス残量が一定量以下になったときに警報音を鳴らして通知することができる。
【0006】
しかしながら、警報音を発生する警報装置(スピーカまたはブザー)は、電池消耗量が比較的多い部品であるため、例えば、使用可能時間がゼロになったときだけでなく、20分前や10分前になったときにも警報音を発する場合のように、警報装置の使用頻度が高くなると、それに伴って電池の寿命が短くなってしまう。また、電池残量が所定値以下のときには、電池による起電力も相応に低下しており、加えて、電池の内部抵抗も大きくなっていることがある。そして、このような状況下で消費電流が比較的大きい警報装置(スピーカまたはブザー)を動作させると、使用可能時間がゼロになる途中で急激な電圧降下が生じてソフトウェアがダウンしてしまい、最悪の場合、酸素ガスの使用可能時間について表示や警告を行うことができなくなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、電源電池の消耗を抑えて確実にガス残量を表示することができるガス残量通知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための一形態として、本発明のガス残量通知装置は、電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、前記使用可能時間の残り時間を表示する表示部と、前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する複数の報知手段と、を備え、前記複数の報知手段は、前記電池の電池残量が所定値よりも少なくなったときに、少なくとも1つが非動作状態となる、ことを特徴としている。
【0009】
また、上記の目的を達成するための別形態として、本発明のガス残量通知装置は、電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、前記使用可能時間の残り時間を表示する表示部と、前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する複数の報知手段と、を備え、前記電池の電池残量が所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可した上で、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを禁止する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス残量通知装置によれば、電源電池の消耗を抑えて確実にガス残量を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るガス残量通知装置の正面図である。
図2】実施形態に係るガス残量通知装置の裏面図である。
図3】実施形態に係るガス残量通知装置の右側面図である。
図4】実施形態に係るガス残量通知装置の左側面図である。
図5】酸素ボンベの説明図である。
図6】実施形態に係るガス残量通知装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7】表示部の表示画面を示す説明図である。
図8】実施形態に係るガス残量通知装置の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係るガス残量通知装置の正面図、図2は実施形態に係るガス残量通知装置の裏面図、図3は実施形態に係るガス残量通知装置の右側面図、図4は実施形態に係るガス残量通知装置の左側面図、図5は酸素ボンベの説明図、図5は酸素ボンベの説明図である。
【0014】
まず、本発明のガス残量通知装置を使用する医療用酸素ボンベについて説明すると、図5に示すように、酸素ボンベは、酸素ガスが充填されたボンベ容器1と、ボンベ容器1に接続された圧力計2と、ボンベ容器1内の圧力を一定に調節し流量を設定する圧力調整器3とを備えている。
【0015】
本実施形態に係るガス残量通知装置10は、ボンベ容器1の圧力と流量を入力してガス残量を通知可能なポータブルタイプの電子機器である。図1図4に示すように、このガス残量通知装置10は、装置の外殻を構成する本体ケース11を備えており、この本体ケース11内に収納された電池(バッテリー)を電源として後述の各手段が動作される。
【0016】
本体ケース11は、前後に2分割可能なプラスチック製の筐体であり、その外観はコーナー部にアールを付けた直方体形状となっている。本体ケース11の前面には、LCDや有機EL等からなる表示装置12と、電源のオン/オフを行う電源スイッチ13と、ボンベ容器1の圧力/流量の入力切替を行う切替スイッチ14と、入力数値のアップを行うプラススイッチ15と、入力数値のダウンを行うマイナススイッチ16と、スタート/ストップを行うスタートスイッチ17と、LED(発光素子)からなる警告ランプ18とが設けられている。
【0017】
また、本体ケース11の右側面には、ボンベ容器1の圧力を「MPa」と「Kgf/cm」に切り替える単位切替スイッチ19が設けられており、本体ケース11の左側面には、後述する安全係数の変更設定を行う係数変更スイッチ20が設けられている。さらに、本体ケース11の裏面には、ガス残量通知装置10をボンベ容器1に固定可能とする一対のマグネット21が取り付けられており、本体ケース11の裏面上部には、図示せぬストラップを取り付け可能な取付孔22が形成されている。
【0018】
図6は、本実施形態に係るガス残量通知装置10の電気的構成を示すブロック図である。図6に示すように、ガス残量通知装置10は、ボンベ容器1の残圧と使用流量等を入力する情報入力部30と、ボンベ容器1の使用限界圧力を記憶しているメモリ部31と、情報入力部30で入力された情報に基づいてボンベ容器1の圧力が使用限界圧力となるまでの使用可能時間(残量時間)を算出する演算部32と、スタートスイッチ17の押操作によって使用可能時間のダウンカウントを開始するタイマー部33と、情報入力部30による入力値や使用可能時間の残り時間等を表示装置12の表示画面に表示する表示部34と、使用可能時間の残り時間が所定の経過時間に到達したことを報知する報知部35と、これら各部に電力を供給するバッテリー部(電池)36とを備えている。
【0019】
情報入力部30は、電源のオン/オフを行う電源スイッチ13と、ボンベ容器1の圧力/流量の入力切替を行う切替スイッチ14と、ダウンカウントのスタート/ストップを行うスタートスイッチ17と、ボンベ容器1の圧力単位を「MPa」と「Kgf/cm」のいずれかに設定する単位切替スイッチ19と、使用可能時間の演算に用いられる安全係数を設定する係数変更スイッチ20と、圧力と流量および安全係数の入力を行う際に入力数値のアップを行うプラススイッチ15、および入力数値のダウンを行うマイナススイッチ16とを有している。
【0020】
メモリ部31は、演算部32に接続された半導体メモリ(ROMとRAM)であり、ボンベ容器1の圧力単位である「MPa」と「Kgf/cm」の換算表を予め記憶している。情報入力部30で入力されたボンベ容器1の圧力と流量および安全係数の設定値は、メモリ部31に記憶される。
【0021】
演算部32は、情報入力部30で入力されたボンベ容器1の圧力と流量および安全係数の設定値に基づいて、ボンベ容器1の圧力が使用限界圧力となるまでの使用可能時間を算出する。使用可能時間を算出する計算式は以下の通りである。
使用可能時間(分)=圧力計の残圧(Kgf/cmまたはMPa)×安全係数K(0.6≦K≦0.9)×ボンベ容器の容量(L)÷使用流量(L/分)
【0022】
この計算式において、残圧に安全係数Kを掛けているのは、ボンベ容器内のガスが完全になくなる前に、ある程度の時間的余裕を持ってガス残量を通知するためである。安全係数KはデフォルトでK=0.8に設定されているが、ガス残量通知装置10が使用される医療現場の環境等に応じて安全係数Kを変更可能としている。なお、安全係数Kは係数変更スイッチ20をスライド操作することにより、下限値K=0.6と基準値K=0.8および上限値K=0.9の3段階に変更可能となっているが、プラススイッチ15とマイナススイッチ16を用いて表示装置12の表示画面上で変更するようにしても良い。
【0023】
タイマー部33は、情報入力部30で圧力と流量および安全係数Kを入力した後、スタートスイッチ17を押操作した時点で使用可能時間のダウンカウントを開始する。演算部32は、ダウンカウントした使用可能時間の残り時間を表示部34に出力し、刻々と減っていく残り時間を表示装置12の表示画面に表示する。
【0024】
表示部34は、情報入力部30で手動入力された圧力と流量および安全係数の設定値や、タイマー部33でダウンカウントされた使用可能時間の残り時間等を、表示装置12の表示画面に表示する。図7に示すように、表示装置12の表示画面は、使用可能時間の残り時間を表示する時間表示領域12aと、圧力を表示する圧力表示領域12bと、流量を表示する流量表示領域12cと、装置の動作状態を示す動作表示領域12dと、バッテリー部36の電池残量(バッテリーレベル)を示すバッテリー量表示領域12eとを有している。
【0025】
また、演算部32は、バッテリー部36の電圧から電池残量を算出し、算出した電池残量に応じた電池アイコンを表示装置12のバッテリー量表示領域12eに表示する機能を有している。具体的には、バッテリー量表示領域12eを3段階に判別可能な電池アイコンとし、バッテリー部36の電池残量が少なくなるのに伴って電池アイコン内の表示数を減らしていくことにより、電池残量を視覚的に把握できるようになっている。なお、バッテリー量表示領域12eの電池アイコンがゼロ本表示となっていても、電池残量は完全にゼロになっているわけではないため、電池アイコンがゼロ本表示になっている場合は、ソフトウェアが処理動作の途中でダウンしてしまうことを防止するために、情報入力部30による圧力と流量等の入力を受け付けないようになっている。
【0026】
また、演算部32は、バッテリー部36から算出される電池残量が非常に少なくなった(例えば満タンの2%以下)場合に、演算部32による使用可能時間の算出を許可した上で、タイマー部33による使用可能時間のダウンカウントを禁止する機能を有している。
【0027】
報知部35は、報知形態を異にするバイブレータ37とブザー38およびLED39とを有している。バイブレータ37は、小型モータを駆動源として振動を発生する電子部品であり、本体ケース11内に収納された回路基板(図示せず)上に実装されている。ブザー38は、圧電振動板や電磁回路を駆動源として警告音を発生する発音部品であり、ブザー38から発せられた警告音は、本体ケース11の前面に設けられた複数の透孔11aを通って外部に放出されるようになっている(図1参照)。なお、ブザー38は、単一の周波数を印加することで単調音(例えば「ピ」や「ブ」)を発生するタイプのブザー(圧電ブザー)や、周波数を複数変化することで変化音を発生するブザー(圧電スピーカとも呼ばれている)である。LED39は、電池消費量の少ない半導体発光素子であり、前述した警告ランプ18の光源として用いられている。
【0028】
これらバイブレータ37とブザー38およびLED39は、演算部32で算出された使用可能時間が所定の経過時間(例えば20分前、10分前、ゼロ)に到達したことを外部に報知する報知手段として機能する。ここで、演算部32は、バッテリー部36により算出される電池残量が十分にある(例えば満タンの10%以上)場合、使用可能時間が所定の経過時間に到達したときに、バイブレータ37とブザー38およびLED39の全てが動作するように報知部35に駆動信号を出力する。また、演算部32は、バッテリー部36により算出される電池残量が所定値よりも少なくなった(例えば満タンの10%未満)場合、使用可能時間が所定の経過時間に到達したときに、バイブレータ37とブザー38の両方を非動作状態にしてLED39だけが動作するか、バイブレータ37とブザー38の一方を非動作状態にして、他方とLED39だけが動作するように報知部35に駆動信号を出力する。
【0029】
次に、本実施形態に係るガス残量通知装置10の制御処理動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず、図8に示すように、電源スイッチ13を押してガス残量通知装置10の電源をONにすると(ステップS1)、図7に示す表示装置12の表示画面が表示される。電源投入時の初期画面において、設定圧力の単位は「MPa」で表示されているが、単位切替スイッチ19を操作することで「Kgf/cm」に切り替えることができる。
【0031】
次に、圧力/流量の切替スイッチ14を押して圧力設定モードに設定すると、圧力表示領域12bの表示が点滅する。そして、図5に示すボンベ容器1の圧力を圧力計2から読み取り、プラススイッチ15とマイナススイッチ16とを適宜押してボンベ容器1の現在の圧力値を入力し、設定する(ステップS2)。
【0032】
次に、圧力/流量の切替スイッチ14を押して流量設定モードに設定すると、流量表示領域12cの表示が点滅する。そして、ボンベ容器1で患者に応じて設定した流量値を、プラススイッチ15とマイナススイッチ16とを適宜押して入力し、設定する(ステップS3)。
【0033】
次に、係数変更スイッチ20をスライド操作して、安全係数Kを下限値K=0.6と基準値K=0.8および上限値K=0.9の3段階のいずれかに設定する(ステップS4)。なお、安全係数Kの変更は3段階に限らず、例えば、表示装置12の表示画面に安全係数表示領域を設けておき、この安全係数表示領域にプラススイッチ15とマイナススイッチ16を用いて適宜の安全係数Kを入力し、設定することも可能である。
【0034】
圧力と流量および安全係数が入力されると、演算部32が、ボンベ容器1の圧力が使用限界圧力となるまでの使用可能時間を算出し、表示装置12の時間表示領域12aに表示する(ステップS5)。
【0035】
次に、算出された残量時間が表示された状態でスタートスイッチ17を押操作する(ステップS6でYes)と、演算部32により、バッテリー部36で算出される電池残量EがE1(例えば満格の10%)以上であるか否かが判断される(ステップS7)。
【0036】
なお、情報入力部30により圧力と流量および安全係数が入力されて使用可能時間が算出された後、所定の待機時間(例えば5秒間)内にスタートスイッチ17が押操作されなかった(ステップS6でNo)場合は、スタートスイッチ17の押し忘れを報知するために、報知部35のブザー38を動作させて警告音を鳴らし続ける(ステップS8)。このとき、スタートスイッチ17を押操作する(ステップS9でYes)と、ブザー38による警告音が停止されると共に、ステップS7に移行して電池残量EがE1以上であるか否かの判断が行われる。
【0037】
スタートスイッチ17を押操作した時点で電池残量EがE1以上である(ステップS7でYes)場合、タイマー部33が、使用可能時間のダウンカウントを開始し、表示装置12の時間表示領域12aに使用限界圧力までの残り時間が点滅表示される(ステップS10)。また、タイマー部33が動作中(ダウンカウント中)は、表示装置12の動作表示領域12dに「動作中」と点滅表示される。
【0038】
ステップS10でダウンカウントが開始されると、演算部32は、報知部35に駆動信号を出力してバイブレータ37とブザー38およびLED39を短時間(例えば5秒間)だけ動作させ、ガス残量通知装置10の使用者に対してバイブレータ37とブザー38およびLED39の全てが動作可能であることを報知する(ステップS11)。
【0039】
そして、スタートスイッチ17を押操作してから所定時間経過したか否かが判断され(ステップS12)、使用可能時間の残りが所定の経過時間に到達すると、演算部32は、報知部35に駆動信号を出力してバイブレータ37とブザー38およびLED39をある程度長い時間動作させる(ステップS12)。具体的には、使用可能な残り時間が20分前と10分前およびゼロになったときに、バイブレータ37を振動させながらブザー38を30秒鳴動させると共に、LED39を1秒毎に30秒間点滅させる。
【0040】
一方、ステップS7において電池残量がE1未満であった場合、演算部32は、その電池残量が下限値E2(例えば満格の2%)に達しているか否かを判断する(ステップS14)。そして、電池残量EがE1とE2の範囲内にある(ステップS14でYes)場合、タイマー部33が使用可能時間のダウンカウントを開始し(ステップS15)、演算部32が報知部35に駆動信号を出力してLED39だけを短時間(例えば5秒間)する(ステップS16)。すなわち、この場合は、ガス残量通知装置10の使用者に対してLED39だけが動作可能であることを報知する。
【0041】
電池残量がE2よりも少ない場合においても、ダウンカウントが開始されると、スタートスイッチ17を押操作してから所定時間経過したか否かが判断され(ステップS17)、使用可能時間の残りが所定の経過時間に到達すると、演算部32は、報知部35に駆動信号を出力してLED39をある程度長い時間動作させる(ステップS18)。具体的には、使用可能な残り時間が20分前と10分前およびゼロになったときに、LED39を1秒毎に30秒間点滅させて残り時間を報知する。
【0042】
また、ステップS14において電池残量がE2よりも少ない場合、演算部32は、情報入力部30による入力値に基づく使用可能時間の算出を許可した上で、タイマー部33による使用可能時間のダウンカウントを禁止し(ステップS19)、表示装置12の表示画面を点滅表示とする(ステップS20)。このように、電池残量が非常に少なくなった場合は、ダウンカウントしないことを表示装置12の表示点滅によって使用者に報知し、使用可能時間の残り時間を報知するタイミングになったとしても、バイブレータ37とブザー38およびLED39による残り時間の報知動作は行われない。
【0043】
そして、使用可能時間の残り時間がゼロになると、報知部35による警報後に自動的に電源がOFFとなり(ステップS21)、表示装置12の表示画面が消灯状態となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るガス残量通知装置10では、ボンベ容器1の使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する報知部(報知手段)35が、報知形態を異にするバイブレータ37とブザー38およびLED39とを有しており、バッテリー部36で算出される電池の電池残量が所定値E1よりも少なくなったときに、電池消費量が比較的多いバイブレータ37とブザー38を停止状態とし、電池消費量の少ないLED39だけを点滅させて残り時間を報知するようにしたので、電源電池の消耗を抑えて確実にガス残量を表示することができる。
【0045】
なお、電池の電池残量が所定値E1以下であるときには、電池による起電力も相応に低下しており、電池(特に一次電池を使用する場合)の内部抵抗も大きくなっている。本実施形態に係るガス残量通知装置10では、電池の電池残量が所定値E1よりも少なくなったときに、消費電流が比較的大きいバイブレータ37とブザー38を停止状態としているため、報知部35の動作に伴う消費電流の急激な増大が抑えられ、消費電流の増加に電池の増大した内部抵抗が加わって急激に電圧降下が生じるというはない。したがって、電池の端子電圧が、低下した起電力と急激な電圧降下との組み合わせによって、ソフトウェアの必要とする電圧以下になってしまうことはなくなり、ソフトウェアのダウンによって使用可能時間の表示や残り時間の警告が全く行われなくなるという不具合を未然に防ぐことができる。
【0046】
ここで、電池残量の減少とともに電池の内部抵抗が大きくなる傾向は、一次電池の中でもとりわけマンガン乾電池において顕著である。したがって、電池としてマンガン乾電池を使用する場合、本発明はより一層有用となる。
【0047】
なお、電池の電池残量が所定値よりも少なくなったときに、バイブレータ37とブザー38の両方を非動作状態とするのではなく、バイブレータ37とブザー38のいずれか一方だけを非動作状態とし、他方とLED39の2つを動作状態にして残り時間を報知するようにしても良い。また、報知部35が有する部品はバイブレータ37とブザー38およびLED39の3つに限らず、バイブレータ37とブザー38のいずれか一方を省略し、バイブレータ37とLED39の2つだけにしたり、ブザー38とLED39の2つだけにしても良い。
【0048】
また、本実施形態に係るガス残量通知装置10では、バッテリー部36で算出される電池の電池残量が所定値E1よりさらに少ない残量値E2になったときに、演算部32による使用可能時間の算出を許可した上で、タイマー部33による使用可能時間のダウンカウントを禁止するようにしたので、電池残量が極めて少ない状態でダウンカウントを開始してしまうことで、使用可能時間がゼロになる前に電池残量がなくなってしまうことや、ダウンカウント途中(ゼロになる10分前や20分前等)での報知部35の動作により、急激な電圧降下が生じてソフトウェアがダウンしてしまうことを防止しつつ、使用可能時間の算出を実行させて表示することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るガス残量通知装置10では、演算部32が使用可能時間を算出する際に用いられる安全係数Kを固定値とせずに、情報入力部30によって圧力と流量の入力だけでなく安全係数の係数値を変更可能としたので、ガス残量通知装置10が使用される医療現場の環境を考慮した使用可能時間を通知することができる。ただし、演算部32が、ボンベ容器1の圧力に掛ける安全係数Kを固定値(例えばK=0.8)として使用可能時間を算出するようにしても良く、その場合、情報入力部30では圧力と流量だけが入力されることになる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0051】
例えば、図8のフローチャートにおいて、ステップS19で行われる処理を省略し、バッテリー部36で算出される電池の電池残量が少なくなったときに、演算部32による使用可能時間の算出を許可して使用可能時間のダウンカウントを禁止する処理を行わず、バイブレータ37とブザー38の少なくとも一方を非動作状態にするという処理だけを実行するようにしても良い。あるいは、ステップS14のYesからステップS15を経てステップS18に移行する処理を省略し、バッテリー部36で算出される電池の電池残量が少なくなったときに、バイブレータ37とブザー38の少なくとも一方を非動作状態にするという処理を実行せずに、演算部32による使用可能時間の算出を許可して使用可能時間のダウンカウントを禁止する処理だけを実行するようにしても良い。
【0052】
また、本発明のガス残量通知装置10を使用するボンベ容器は、医療用の酸素ボンベに限定されず、各種ガスを入れたボンベ容器におけるガス残量の通知装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ボンベ容器
2 圧力計
3 圧力調整器
10 ガス残量通知装置
11 本体ケース
12 表示装置(表示手段)
12a 時間表示領域
12b 圧力表示領域
12c 流量表示領域
12d 動作表示領域
12e バッテリー量表示領域
13 電源スイッチ
14 切替スイッチ
15 プラススイッチ
16 マイナススイッチ
17 スタートスイッチ
18 警告ランプ
19 単位切替スイッチ
20 係数変更スイッチ
30 情報入力部(情報入力手段)
31 メモリ部
32 演算部(演算手段)
33 タイマー部(タイマー手段)
34 表示部(表示手段)
35 報知部(報知手段)
36 バッテリー部
37 バイブレータ(報知手段)
38 ブザー(報知手段)
39 LED(報知手段)
K 安全係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のガス残量通知装置は、電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、前記使用可能時間の残り時間を表示する表示手段と、前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する報知形態が異なる複数の報知手段と、前記電池の電池残量を算出する電池残量算出手段と、を備え、前記電池の電池残量が所定値を超えた状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可すると共に、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを許可し、前記電池の電池残量が所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可した上で、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを禁止する、ことを特徴としている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本発明のガス残量通知装置は、上記の構成において、前記電池の電池残量が前記所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記表示手段は、ダウンカウントが行われないことを表示部の表示点滅によって報知する、ことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電源として駆動され、ボンベ容器のガス残量を通知するガス残量通知装置であって、
前記ボンベ容器の残圧と前記ボンベ容器から供給されるガスの使用流量とを入力する情報入力手段と、
入力された前記残圧と前記使用流量とに基づいて前記ボンベ容器の使用可能時間を算出する演算手段と、
スタートスイッチが操作された時刻から前記使用可能時間をダウンカウントするタイマー手段と、
前記使用可能時間の残り時間を表示する表示手段と、
前記使用可能時間が所定の経過時間に到達したことを報知する報知形態が異なる複数の報知手段と、
前記電池の電池残量を算出する電池残量算出手段と、
を備え、
前記電池の電池残量が所定値を超えた状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可すると共に、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを許可し、
前記電池の電池残量が前記所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記演算手段による前記使用可能時間の算出を許可した上で、前記タイマー手段による前記使用可能時間のダウンカウントを禁止する、
ことを特徴とするガス残量通知装置。
【請求項2】
前記電池の電池残量が前記所定値よりも少ない状態で前記スタートスイッチが操作されたとき、前記表示手段は、ダウンカウントが行われないことを表示部の表示点滅によって報知する、ことを特徴とする請求項1に記載のガス残量通知装置。