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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126217
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】食品廃棄物のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20220823BHJP
   C01B 32/324 20170101ALI20220823BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20220823BHJP
【FI】
B09B3/00 302E
C01B32/324 ZAB
B09B3/00 304H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024152
(22)【出願日】2021-02-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日:令和 2年 2月27日 (2)集会名、開催場所:令和元年度 国立大学法人山梨大学 工学部 応用化学科卒業論文発表会、国立大学法人山梨大学 工学部A2-21教室(山梨県甲府市武田四丁目4番37号)
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(71)【出願人】
【識別番号】592037907
【氏名又は名称】株式会社デイ・シイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】阪根 英人
(72)【発明者】
【氏名】築地 優
(72)【発明者】
【氏名】須崎 一定
【テーマコード(参考)】
4D004
4G146
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004BA10
4D004CA26
4D004CA34
4D004CB31
4D004CC11
4G146AA06
4G146AC04B
4G146AC07B
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AC28B
4G146BA31
4G146BA35
4G146BA38
4G146BB07
4G146BB11
4G146BC23
4G146BC33B
4G146BC37B
4G146BD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】食品廃棄物の処理及び有効利用にあたって、炭素化収率及び吸着効果を高めるミクロ孔を大幅に増加させることができる、食品廃棄物のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】食品廃棄物のリサイクル方法は、食品廃棄物を焼成して炭素化処理する前に、食品廃棄物をヨウ素によって改質することを特徴とする。ヨウ素による改質は、例えば、対象となる食品廃棄物に、ヨウ素を加熱して発生するヨウ素蒸気を作用させるなどして行う。食品廃棄物を炭素化処理する前に、ヨウ素によって前処理することで、炭素化収率を増加することができ、またミクロ孔を発達させることができる。食品廃棄物としては、例えばコーヒー、麦茶、緑茶、紅茶などの飲料廃棄物を用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品廃棄物を焼成して炭素化処理する前に、前記食品廃棄物をヨウ素によって改質することを特徴とする食品廃棄物のリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1記載の食品廃棄物のリサイクル方法において、前記ヨウ素による改質は、前記食品廃棄物にヨウ素蒸気を作用させて行うことを特徴とする食品廃棄物のリサイクル方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の食品廃棄物のリサイクル方法において、前記食品廃棄物はコーヒー、麦茶、緑茶、または紅茶の何れかの飲料廃棄物であることを特徴とする食品廃棄物のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品廃棄物、例えばコーヒー、麦茶、緑茶、紅茶などの飲料廃棄物の処理及び有効利用にあたって、炭素化収率を大幅に増加させることができる食品廃棄物のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭は90%以上を炭素分が占め、残りを酸素や水素などの化合物や灰分と呼ばれるカルシウム、カリウム、ナトリウムといった原料固有の成分で構成している多孔質な材料である。その出発原料には、木材や果実などの植物、石炭や石油といった鉱物が一般的であるが、資源の再利用という観点では、炭素分を多く含む建設用廃木材、古紙、繊維廃棄物などの有機系廃棄物も有望な炭素前駆体源となり、活性炭等への改質・利用用途が図られ得る。
【0003】
工業的な活性炭製造では、賦活処理という工程を経て、高比表面積への改質を図っている。賦活処理は、大別するとガス賦活と薬品賦活の2種類がある。ガス賦活は、原料を不活性ガス下で炭素化した後に、酸素や二酸化炭素といった酸化性ガスにさらすことで炭化物の表面を酸化浸食させ、大きな比表面積やミクロ孔容積を得ている。
【0004】
薬品賦活では、原料に塩化亜鉛やリン酸水溶液などの薬品を含侵させ、炭素化を行う。炭素化過程中に、含侵させた薬品の酸化反応や脱水反応によって細孔が形成されることで、多孔質な炭素体が製造される。活性炭は脱臭剤、浄水処理、空気浄化、ガス分離など、その用途は多岐にわたり、今日では、さらなるニーズの多様化によって高機能・高性能化の要求は年々高まっており、目的に合わせた細孔構造の設計・制御が求められている。
【0005】
また、高炭素化収率が期待される有機物を出発原料として選択することは、生産コストの観点から重要である。有機物の炭素化過程では、その熱分解、ガス化による低分子成分の蒸発・揮発及び水素・酸素を含む軽ガス成分の消失によって質量損失が生じ、ある平均分子量以上の炭素質(残存分)が炭素化収率に預かる。つまり、原料有機物の高分子化を促し、炭素化過程で生じる炭素消失を抑制するような改質が図られれば、炭素化収率の大幅な増加が期待できる。
【0006】
また、不融化は、炭素繊維の製造で最も重要な原料の改質工程である。この工程で、原料の高分子化が図られ、その熱的安定性が増すことにより、炭素前駆体の賦形が達成されるとともに炭素化収率が増加する。特に、ピッチやPAN(ポリアクリロニトリル繊維)といった熱可塑性(液相炭素化)原料の場合は、熱硬化性(固相炭素化)への改質が促され、その改質の程度に依存して種々の物性の炭素繊維が製造される。
【0007】
不融化処理は、一般的に空気(酸素)雰囲気下で行われ、300℃前後に加熱処理することによって原料成分中に酸素ラジカルが導入される。そのラジカル重合反応により高分子化が促されることで、原料中の低分子比率が少なくなり、炭素化過程での熱分解が抑えられることで高炭素化収率へとつながる。
【0008】
また、酸素よりも原料有機物内への拡散速度の高いハロゲンを用いると、不融化反応の短縮と、大きなバルクの不融化にも応用できることが報告されている。特に、国内の有望な資源であるヨウ素を用いたヨウ素不融化処理では、ピッチやPANの他に、糖類に対しても効果的であることが報告されている。
【0009】
このヨウ素不融化処理は、高炭素化収率に加え、炭素体中にミクロ孔の増加が同時に図られることが特徴的である。ヨウ素は、有機物原料中の特に芳香族成分と選択的にπ-σ型の電荷移動錯体を形成し、それが分子内の脱水素化を促すことでフリーラジカルが生じる。
【0010】
生じたラジカルは、酸素不融化処理と同様に重合反応を引き起こすことで、原料の高分子化が促進される。この反応機構により、炭素微細構造の三次元架橋密度が増加することで、微細孔が発達し、主としてミクロ孔が導入されると推測されている。
【0011】
このことは、一般的なガス賦活法による酸化反応を活用した細孔構築法では、炭素体の製品収率と比表面積がトレードオフの関係にある(多孔質化を進めると、炭素収率が低くなる)ことと比べると、炭素化収率を高めつつ、多孔質化を図るという点で極めてユニークな細孔構築法であると言える。
【0012】
エチレンは炭素原子2つが2重結合をした炭化水素であり、常温、常圧で気体として存在し、植物の成長を制御する植物ホルモンの一つとして知られている。収穫後の青果物の成熟作用においてエチレンは重要な役割を担っており、青果物の早期追熟という点では有益になる面もあるが、青果物流通市場において、そのほとんどが品質劣化に繋がる場合が多い。
【0013】
実際、エチレンの作用による青果物の過度な成熟や腐敗、キャベツの葉柄やブドウ果粒の離脱、ジャガイモの発芽、カーネーションの花弁が開かなくなる眠り病、アスパラガス組織の繊維化といった品質劣化や廃棄に繋がる事例が報告されている。エチレンガスは0.1-1.0ppm程度の濃度下に約12時間以上曝露させることで、多くの青果物に対して十分な生理作用(成熟)を与える。つまり、青果物輸送時におけるエチレンガス濃度を0.1-1.0ppm以下におさえるような吸着・吸蔵技術が、この基準をクリアするレベルの吸着剤や分解剤の開発が進められている。
【0014】
一方、青果物輸送時のエチレンガスを除去する手法として、輸送用コンテナ内の空気を循環させることによって除去する方法や、光触媒に紫外線を当てることによってエチレンガスを分解する方法、小袋に詰めたエチレン除去剤を青果物と一緒に梱包する方法が取られている。
【0015】
エチレンガスを除去するために使用されているのは、臭素塩、リン酸塩、過マンガン酸カリウムなどのエチレン分解剤、もしくはゼオライトや活性炭のようなエチレン吸着剤が一般的である。しかし、過マンガン酸カリウム等の薬品を用いたエチレン分解剤は、吸引によって人体の粘膜や組織を刺激する危険性を有している。そのため、青果物などの食品輸送においては安全面に問題があると考えられる。
【0016】
また、エチレンの影響を抑えるために1-メチルシクロプロペン(以下、「1-MCP」という。)が植物成長調整剤として薬品登録されている。この1-MCPは植物のエチレン受容体に対しエチレンの代わりに強く結合するため、エチレンの生理作用を阻害することが知られており、成熟や腐敗を大幅に遅延させる。しかし、1-MCPは常温常圧で気体として存在し、1000ppm以上では爆発の危険性があるとされているため鮮度保持利用としての安全面には問題があると考えられる。
【0017】
このような背景より、エチレン除去剤として活性炭は、安心かつ安価な吸着材として適していると言える。しかしながら活性炭は、長期的なエチレン吸着能がないため、青果物の長距離輸送には向いていない。そこで求められるのは、コストを抑えたまま、吸着能が高く、多量のエチレンを吸着する新たなエチレン吸着剤である。実現すれば輸送時における青果物廃棄量の減少、及び廃棄物減少における経済的効果を見込むことができる。
【0018】
コーヒーやお茶といった嗜好品類は世界中で消費されており、コーヒーだけでも2016年に約92億kg生産されていることから、経済的にも非常に重要な飲み物の一つであることが言える。コーヒーやお茶は、豆や茶葉に熱湯を注ぐことで得られた抽出液が主な目的物であり、抽出後に残された粕は特別な利用用途がないがゆえに必要とされないことが多い。
【0019】
飲料産業において、コーヒーやお茶の粕といった食品廃棄物が毎日大量に排出されており、ほとんどが廃棄物として燃やされ、温室効果ガスである二酸化炭素生成に繋がっている。また、国内では食品関連事業者などから排出される食品廃棄物の処分量を減少させるとともに、リサイクルを図ることを目的とした食品リサイクル法が施行されている。このような背景から、コーヒーやお茶の残渣の再利用法としてペレット燃料開発や牛の飼料化といった研究が進められてきた。
【0020】
一方、コーヒーやお茶の残渣物は、およそ70~80%がセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった炭水化物、残りをたんぱく質やミネラルなどで構成されており、炭素化物利用としては好適な炭素前駆体であるといえる。また、食品廃棄物内の炭素分を二酸化炭素として排出させず、炭として得られる炭素化処理はカーボンニュートラルな取り組みであり、リサイクルの新たな活路であると言える。
【0021】
また、活性炭の製造において、薬品等の洗浄工程は極めて煩雑でコストがかかることから、これらの処理が極めて少なく、炭素化(焼成)以外の複雑な工程が不要であることも、食品廃棄物のリサイクル利用には好ましいと考えられる。
【0022】
食品廃棄物のリサイクルとして炭素化物を利用する技術があり、例えば以下の特許文献1、2記載の発明がある。
【0023】
特許文献1には、前処理されたバイオマスのリグニン残渣から調整される活性炭が記載されている。前記活性炭のリグニン残渣は、サイズが約5ミクロン~約150ミクロンの固体粒子を少なくとも50%含んでいる。
【0024】
特許文献2には、バイオマスを空気遮断状態での間接加熱により400~900℃の熱分解ガスと固形炭化物に分離する熱分解工程とを含むバイオマスコークスの製造方法が記載されている。
【0025】
特許文献3には、有機物質である木材をヨウ素処理した後に炭素化処理する炭の製造方法が記載されている。特許文献4には、バイオマス由来の有機物質をヨウ素処理した後に炭素化処理する炭の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特表2018-534233号公報
【特許文献2】特開2006-282914号公報
【特許文献3】特開2007-153674号公報
【特許文献4】再表2007-066674号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Kazumasa Nakamura、Yasuhiro Tanabe、Yasunori Nagakura、Takashi Nishizawa、Katsuya Fukuyama、Yoshikiyo Hatakeyama、Eiichi Yasuda、「Improvements in char yield and pore properties of wood-derived carbon by iodine treatment」、炭素材料学会、炭素TANSO、2008年、234号、p.215-219
【非特許文献2】宮嶋尚哉、廣岡宏治、阪根英人、古屋雅子、田村佳緒留、松本頼興、「多糖類から調製した炭素体の細孔構造とエチレン吸着特性」、炭素材料学会、炭素TANSO、2011年、249号、p.179-184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
特許文献1、2記載の発明は、工程が複雑となり、炭化物の比表面積を上げるために賦活処理が必要となる。また、比表面積を上昇させるためにミクロ孔の生成が必要であるが、ミクロ孔の生成時にCOが発生するため炭素化の収率が減少する。
【0029】
また、飲料産業から毎日大量に排出されるコーヒーやお茶の抽出後残渣物は確立した利用用途がなく、焼却とともに温室効果ガスである二酸化炭素の排出に繋がっている。そこで、コーヒーやお茶の粕には炭素成分が豊富に含まれていることから、これらの廃棄物の新たな利用用途として、活性炭への転換が好ましいと考えた。さらに、これら食品廃棄物に対して、炭素体の残炭率及び多孔度を同時改善し得るヨウ素前処理を施すことにより、従来の賦活処理とは異なる細孔構築法で活性炭の調製が可能になるものと予想された。
【0030】
一方、青果物市場において、青果物輸送時におけるエチレンガスの発生、及びエチレンガス作用による青果物の品質劣化が課題となっている。このような輸送におけるロスを減らすためにも、使用環境に左右されない大容量のエチレンガス吸着剤が求められている。
【0031】
本発明は、食品廃棄物の処理及び有効利用にあたって、炭素化収率を大幅に増加させ、かつ吸着効果を高めるミクロ孔を増加させることができる食品廃棄物のリサイクル方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明に係る食品廃棄物のリサイクル方法は、食品廃棄物を焼成して炭素化処理する前に、食品廃棄物をヨウ素によって改質することを特徴とするものである。
【0033】
ヨウ素による改質は、例えば対象となる食品廃棄物にヨウ素を加熱して発生するヨウ素蒸気を作用させるなどして行うことができる。
【0034】
食品廃棄物を炭素化処理する前に、ヨウ素によって前処理することで、炭素化収率を増加することができ、同時にミクロ孔を発達させることができる。
【0035】
本発明における食品廃棄物としては、例えばコーヒー、麦茶、緑茶、紅茶の飲料廃棄物を用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の食品廃棄物のリサイクル方法によれば、ヨウ素を加えて前処理することにより炭素化収率の増加とミクロ孔増加の両立が可能となり、炭素化収率を大幅に増加させることができる。
【0037】
食品廃棄物として、麦茶、緑茶、紅茶の飲料廃棄物を用いた場合には、エチレン及び二酸化炭素吸着量が増加し、特に緑茶、紅茶の飲料廃棄物を用いた場合に優れたエチレン吸着性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】コーヒー残渣のヨウ素導入率とヨウ素処理時間の関係を示したグラフである。
図2】未処理原料のTG曲線を示している。
図3】ヨウ素処理した各原料のTG曲線のグラフである。
図4】コーヒー残渣のヨウ素導入率と700℃における炭素化収率の関係を示したグラフである。
図5】C700-I-coffee、C900-I-coffeeのC1s、N1s、O1sナロースキャンスペクトルを示すグラフである。
図6】C700-I-coffee、C900-I-coffeeのCa1s、I3d5/2ナロースキャンスペクトルを示すグラフである。
図7】C700-coffeeのピーク分離図を示すグラフである。
図8】C900-coffeeのピーク分離図を示すグラフである。
図9】C700-I-coffee、C900-I-icoffeeのワイドスキャンスペクトルを示すグラフである。
図10】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体のXRDパターンを示すグラフであり、(a)が未処理のもの、(b)がヨウ素で処理したものである。
図11】各食品廃棄物炭素体のXRDパターンを示すグラフであり、(a)が未処理のもの、(b)がヨウ素で処理したものである。
図12】灰分のXRDパターンを示すグラフである。
図13】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体の-196℃における窒素吸着等温線を示すグラフである。
図14】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体(ヨウ素処理あり)の-196℃における窒素吸着等温線を示すグラフである。
図15】各食品廃棄物炭素体の-196℃における窒素吸着等温線を示すグラフである。
図16】各飲料炭素体(ヨウ素処理あり)の-196℃における窒素吸着等温線を示すグラフである。
図17】各食品廃棄物灰分の-196℃における窒素吸着等温線を示すグラフである。
図18】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体のエチレン吸着等温線のグラフである。
図19】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体(ヨウ素処理あり)のエチレン吸着等温線のグラフである。
図20】各食品廃棄物炭素体のエチレン吸着等温線のグラフである。
図21】各食品廃棄物炭素体(ヨウ素処理あり)のエチレン吸着等温線のグラフである。
図22】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体の二酸化炭素吸着等温線のグラフである。
図23】炭素化温度の異なるコーヒー炭素体(ヨウ素処理あり)の二酸化炭素吸着等温線のグラフである。
図24】各食品廃棄物炭素体の二酸化炭素吸着等温線のグラフである。
図25】各食品廃棄物炭素体(ヨウ素処理あり)の二酸化炭素吸着等温線のグラフである。
図26】エチレン吸着量と二酸化炭素吸着から算出した細孔表面積との関係を示したグラフである。
図27】未処理の場合とヨウ素前処理の場合の炭素化吸収率とミクロ孔の増加(700℃炭化品)の比較をまとめて示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。まず、食品廃棄物のヨウ素前処理及び炭素化に関する実験について述べる。
【0040】
1.食品廃棄物のヨウ素前処理及び炭素化に関する実験
4種の食品廃棄物(コーヒー、麦茶、緑茶、紅茶)に対してヨウ素蒸気と作用させ(ヨウ素前処理)、引き続き、不活性雰囲気下で炭素化を行い、得られた炭素体の試料特性を比較検討することで、ヨウ素不融化効果の有無について検討した。
【0041】
1.1 実験方法
1.1.1 出発物質
コーヒー、麦茶、緑茶、紅茶の4種の食品廃棄物を60℃で十分乾燥させたものを出発原料とした。各食品廃棄物の元素分析結果を表1に示す。酸素については炭素、水素、窒素、硫黄の各元素の含有率を100%から差し引くことに(差数法)で算出した。
【0042】
【表1】
【0043】
1.1.2 ヨウ素前処理
約1gの各食品廃棄物(コーヒー(coffee)、麦茶(barley)、緑茶(green)、紅茶(tea))と、過剰量のヨウ素が入ったガラス瓶をセパラブルフラスコ内に静置し、密閉した後にロータリーポンプを用いて15分以上系内を減圧した。これをあらかじめ120℃に加熱した恒温乾燥器内に所定の時間静置し、ヨウ素蒸気と反応させた。ヨウ素前処理した試料は、それぞれI-coffee、I-barley、I-green、I-teaと示す。ヨウ素導入率は、ヨウ素処理前後の質量変化を用いて、数1より算出した。
【0044】
【数1】
【0045】
1.1.3 試料の炭素化
秤量した試料をアルミナボートに載せ、これを管状炉に挿入し、窒素ガスのパージを行った。その後10℃/minの昇温速度で所定温度まで昇温し、目的温度到達後1時間保持することで試料を炭素化させた。以下、例えばヨウ素前処理をしたコーヒー残渣を700℃で炭素化した場合、C700-I-coffeeのように表記する。また、各炭素体の炭素化収率は、数1のヨウ素導入率を用いて、数2より算出した。
【0046】
【数2】
【0047】
1.2 各炭素体の試料特性評価
1.2.1 熱重量測定
試料の炭素化過程における熱挙動を評価するために、示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製DTA-60)を用いて測定した。測定条件は窒素雰囲気下で昇温速度を10℃/minとし、室温-950℃までの範囲を測定した。
【0048】
1.2.2 XRD測定
炭素体の結晶構造は、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2100Ultima+、以下、「XRD」という。)にて評価した。測定にはCuKα線を使用し、2θ=2-60°、スキャン間隔は2θ=0.02°、スキャン速度は4°/minとした。
【0049】
1.2.3 窒素吸着測定
前処理としてアルゴン雰囲気下で24時間、300℃に加熱することで試料を乾燥させた後、-196℃における窒素吸着測定(マイクロトラック・ベル株式会社製BELSORP MINIを使用)を行い、吸着等温線を求めた。得られた等温線にαs法を適用しミクロ孔表面積及びミクロ孔容量を求めた。
【0050】
1.2.4 イオンクロマトグラフィー
炭素体中のヨウ素含有率を見積もるため、イオンクロマトグラフィー測定(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製イオンクロマトグラフィーシステムを使用)を行った。サンプルとして適量のC700-I-coffeeとC900-I-coffeeを1mol/Lのヒドラジン溶液に入れ、24時間振とうさせた後の上澄み液を希釈したものを利用した。また、標準溶液としてヨウ化カリウムを用いた。
【0051】
1.2.5 XPS測定
各炭素体中のC、N、O、Iの各元素の結合状態を調べるため、X線光電子分光装置(日本電子株式会社製JPS-9200)にて各元素のナロースペクトルを測定した。励起源にはMgKα線を用い、帯電補正はC1s(284.6eV)を基準にした。
【0052】
1.2.6 灰分
各炭素体中の灰分量は、空気雰囲気下で10℃/minの昇温速度で700℃まで昇温させ、炭素分を完全燃焼させたのち残存する無機固形物を灰分として、それを定量して求めた。以下、各炭素体から得た灰分をAsh-C-coffeeのように表記する。また、得られた灰分の収率は数3より算出した。
【数3】
【0053】
1.3 結果及び考察
表2に、コーヒー残渣のヨウ素処理時間とヨウ素導入率、及び700℃における炭素化収率をまとめた。また、図1に、ヨウ素処理時間とヨウ素導入率の関係を示した。ヨウ素処理を開始すると同時にヨウ素による原料の質量増加が確認できる。処理時間が6時間を超えたあたりでヨウ素導入率はおよそ200wt%となり、ほぼ一定値に達した。
【0054】
【表2】
【0055】
図2及び図3に各食品廃棄物のTG曲線を示す。ヨウ素前処理をした原料のTG曲線の縦軸は、ヨウ素導入率を考慮して各食品廃棄物の原料の質量が100wt%となるように規格している。未処理試料は、100℃付近、300-400℃及び400℃以降で重量減少が確認できる。これらはセルロースやデンプンなどの多糖類の熱挙動に従うと、それぞれ、吸着水の脱離、原料有機物の熱分解、熱分解残留物の炭素化に伴う軽ガス放出に起因していると考えられる。
【0056】
一方、ヨウ素前処理をした食品廃棄物では、100-200℃の範囲でヨウ素の昇華による大幅な重量減少が発現し、原料有機物の熱分解に伴う大きな重量減少が未処理の原料よりも低温で生じることが判明した。また、非特許文献1では、スギやヒノキなどの木質原料にヨウ素処理を行うと、それらの熱分解が低温で開始することを述べており、ヨウ素改質の一つの指標であるとしている。
【0057】
すなわち、同様のヨウ素による原料有機物の改質によって、熱挙動が変化したことがうかがえる。また、700℃以降の収量は、未処理のものと比べて大きくなっていることから、本試験で用いた4種の廃棄物についても、炭素化収率の増加といったヨウ素不融化効果が発現していることが判明した。
【0058】
図4にコーヒー炭素体のヨウ素導入率と700℃における炭素化収率の関係を示す。ヨウ素導入率が増加することによって炭素化収率の向上が見られ、TG曲線の結果が再確認できた。すなわち、ヨウ素が原料の高分子化を促進したため、残炭率の増加が図られたと理解される。その増加分に着目すると、120wt%以上のヨウ素導入処理で、ほぼ一定値に(44wt%)に達していることが分かる。
【0059】
残炭率の向上には、原料の炭素化過程における熱安定性が重要となるが、ある一定の平均分子量を超え、十分炭素化過程で熱分解しない程度にまで改質されるためには、原料の約2倍のヨウ素導入処理で十分であることが示唆される。ピッチのヨウ素不融化処理では、導入したヨウ素には電荷移動錯体の形成に寄与するものと、その錯体を吸着活性点として物理吸着(凝縮)するものに大別される。2倍以上のヨウ素導入処理では、十分改質された原料炭素前駆体にヨウ素が物理的に取り込まれ、ヨウ素導入率が増加しているものと考えられる。
【0060】
一方、コーヒー残渣中の炭素収率は、54.14wt%であり(表1参照)、理論的には今回得られた炭素体の収率はこれを超えることはない。得られた炭素化収率はおよそ44wt%であることから、約8割程度の炭素分が回収できていると思われる。表3に各炭素体の灰分率及び原料食品廃棄物中の灰分率(表1の結果と同じ)を示す。両数値ともにほとんど近い値であることから、今回行った700℃における炭素化において、これらの灰分が蒸発等で焼失することとなく、炭素体内部に微量ながらも不純物として存在していることが判明した。
【0061】
【表3】
【0062】
表4に各炭素化温度で得た炭素体の炭素収率を示す。ヨウ素前処理を施すことによってすべての試料で約20wt%の炭素化収率の向上が確認できた。また、イオンクロマトグラフィーを用いてヨウ素の定量を行った結果、C900-I-coffeeにはヨウ素の存在が確認できなかったが、C700-I-coffee内には1wt%以下のヨウ素が残存していることが判明した。このヨウ素残存量及び先の炭素体内部の灰分量を考慮しても、明らかに炭素化収率の著しい増加が認められることから、本試験で用いた食品廃棄物については従来のヨウ素不融化効果が発現することが示された。
【0063】
【表4】
【0064】
図9にC700-I-coffeeとC900-I-coffeeのワイドスキャンスペクトルを示す。いくつかの特徴的なピークの検出と、C900-I-coffeeでは消失するピーク(矢印)が見て取れる。これらのピークについて詳細に調査し、図5図6にC700-I-coffee、C900-I-coffeeのC1s、N1s、O1s、I3d各ナロースペクトル及びC700-I-coffeeのCa1sスペクトル、また図7図8にC700-I-coffee、C900-I-coffeeの各スペクトルのピーク分離結果を示す。
【0065】
C1sスペクトルは284.5eVのC-C、286.4 eVのC-O、287.6eVのC=O、289.3eVのCOOの4つのピークに分離できる。O1sスペクトルについては、C700-I-coffeeでは532.2eVのC-O、534.2eV付近のC-O-Cに分離しているのが確認できたが、C900-coffeeでは533.7eV付近のピークしか確認できなかった。C700-I-coffeeには348.5eV付近のCa1sピークと、わずかに確認できる630.5-632.5eVのI3d3/2及び619.0-621.1eVのI3d5/2のピークが存在した。
【0066】
これは、ヨウ素の分裂したスペクトルより、ヨウ素が2成分に分離され、炭素内に2種類の結合状態で存在していることを示唆している。C900-I-coffeeにはI3d、Caのピークが確認できないことから、C700-I-coffeeでは、CaIのような化学種で灰分として一部炭素体中に残存していたと推測できる。また、ヨウ化カルシウムの沸点は718℃であることから、900℃での炭素化過程中に溶融・揮発したため、C900-I-coffeeでは検出されなかったものと思われる。
【0067】
図10に各コーヒー炭素体のXRDパターンを示す。ヨウ素処理の有無にかかわらず、いずれのコーヒー炭素体もアモルファス炭素由来のブロードな波形のほかに目立ったピークは見られなかった。他の食品廃棄物からの炭素体のXRDパターンにおいても、コーヒー炭素体と同様なブロードな回折パターンであり結晶性の灰分などに起因する目立ったピークは確認できなかった(図11)。
【0068】
図12に各食品廃棄物から得た灰分のXRDピークを示す。主としてKならびにCaの化合物ピークが確認できることから、これらが灰分の主成分であると理解される。
【0069】
図13図16に各炭素体における-196℃における窒素吸着等温線を示す。一部の高温炭素化処理のものを除き、いずれの炭素体もIUPACのI型に分類される吸着等温線となり、ミクロ多孔性カーボンであることがうかがえる。未処理の炭素体と比較すると、ヨウ素前処理を施した炭素体は、さらに低相対圧域での吸着量の立ち上がりが大きく、さらにミクロ孔が発達していることが見て取れる。このことから、従来の多糖類のヨウ素不融化と同様に、調製した炭素体の炭素化収率とミクロ多孔性を同時に向上させる効果を確認できた。
【0070】
表5に窒素吸着等温線からαs法で算出したミクロ孔比表面積及びミクロ孔容量を示す。コーヒー残渣では、未処理炭素体と比較すると、ヨウ素前処理した炭素体ではミクロ孔比表面積が増加しており、C700-I-coffeeがミクロ孔表面積149m/g(ミクロ孔容積0.061cm/g)となり最大となった。これは未処理のものと比較するとミクロ孔表面積が1.84倍増加したことになり、概ね炭素化収率の増加分に一致する。
【0071】
【表5】
【0072】
また、700℃以上の炭素化では、炭素体の熱収縮によってミクロ孔表面積及びミクロ孔容量が減少するが、ヨウ素前処理を行うとその低下が抑制され、多孔性がより維持される結果を得た。一方、コーヒー残渣以外の炭素体では、ヨウ素前処理の効果によって、ミクロ孔表面積が1.44倍から2.11倍増加した。
【0073】
その増加率が一番高かったのは緑茶炭素体であり、ヨウ素前処理によって、94m/gが201m/gとなり、最もヨウ素不融化の効果が表れた。また、全試料の中でC700-I-teaがミクロ孔表面積337m/g、ミクロ孔容積0.119cm/gとなり最大値を示した。一方、麦茶残渣では多孔性の発現という点ではヨウ素前処理の効果が乏しく、原料依存性があることが示唆された。
【0074】
図17に各食品廃棄物の灰分の吸着等温線を示す。炭素体とは異なり、低相対圧部での立ち上がりがなくIUPACのIII型もしくはII型の等温線を示しており、窒素分子が侵入できる細孔がほとんど存在しないことが判明した。このことから、各食品廃棄物から得られた炭素体のミクロ孔性の発現は、灰分ではなく炭素マトリックスの集合組織が担っていることが判明した。
【0075】
1.4 まとめ
各食品廃棄物の炭素化特性に及ぼすヨウ素前処理の影響を調べた結果、以下のことが結論付けられた。
【0076】
(1)用いた食品廃棄物について、いずれもヨウ素前処理を行うと、炭素化収率(残炭率)が飛躍的に増加した。理論炭素収率の8割を超える残炭率を得るには、約100wt%程度のヨウ素不融化処理が必要であることが分かった。
【0077】
(2)700℃炭素体では、1wt%以下のヨウ素の残存が確認できたが、900℃炭素体では残存ヨウ素が検出されなかったことから、著しい炭素化収率の増加は、ヨウ素不融化反応による原料有機物成分の改質の結果であるとわかった。
【0078】
(3)ヨウ素前処理によって炭素化収率だけでなく、炭素体のミクロ孔も発達し、その効果は緑茶が最も大きかった。このことから、ヨウ素不融化による細孔形成効果については、原料依存性があることが示唆された。
【0079】
2.エチレンと二酸化炭素の吸着特性評価
前章では、それぞれの食品廃棄物に対してヨウ素処理を行うことで、炭素化収率とミクロ孔容量の増加を同時に達成することに成功した。そこで本章では、各炭素体のエチレン吸着と二酸化炭素吸着測定を行い、ヨウ素処理の有無によるこれら吸着特性に与える影響について検討した。
【0080】
2.1 吸着測定
2.1.1 エチレン吸着測定
25℃におけるエチレン吸着測定を、マイクロトラック・ベル株式会社製の全自動ガス吸着装置(Belsorp max)を用いて測定した。吸着前処理条件は、300℃、24時間のArガス置換とした。
【0081】
2.1.2 二酸化炭素吸着測定
25℃における二酸化炭素吸着を、マイクロトラック・ベル株式会社製の全自動ガス吸着装置(Belsorp max)を用いて測定した。吸着前処理条件は、300℃、24時間のArガス置換とした。また、二酸化炭素の吸着等温線からDR解析を行うことで、二酸化炭素基準のミクロ孔比表面積ACO2を算出した。算出にあたって用いた単位換算はそれぞれ、二酸化炭素密度ρ=1.035g/mL(25℃)、飽和蒸気圧P=6.13MPa(25℃)、親和係数β=0.36である。
【0082】
2.2 結果及び考察
2.2.1 各ガス吸着等温線
図18図21に、各炭素体のエチレン吸着等温線を示す。いずれの炭素体も超臨界ガスの吸着にみられるI型に類似した吸着等温線を示した。一部、吸脱着のヒステリシスが見られるが、おおむねエチレン分子が炭素体中の細孔内に物理吸着していると考えられる。-196℃における窒素吸着測定ではヨウ素前処理したコーヒー炭素体の方が未処理のそれよりもミクロ孔容量の増加が認められたが、エチレン吸着量(nC2H4)は逆の関係となった。
【0083】
一方、その他の炭素体では、ヨウ素前処理によるミクロ孔発達を受けて、エチレン吸着量が増加した。特にC700-I-teaではエチレン吸着量が2.14mmol/gと最も高い値を示した(表6)。
【0084】
【表6】
【0085】
図22図25に、各炭素体の二酸化炭素吸着等温線を示す。いずれもほぼエチレンの吸着挙動と同じようなI型を示す結果となった。また、DR解析から求めた二酸化炭素の飽和吸着量もエチレン吸着量と同じ傾向を示し、C700-I-teaが1.96mmol/gと最大の二酸化炭素吸着量を示すことが分かった(表6)。
【0086】
2.2.2 各試料の二酸化炭素及びエチレンの吸着挙動
一般的に-196℃の窒素吸着測定では、吸着測定温度における吸着質の拡散障害のために、窒素分子が細孔内部に入ることができない。しかし、常温における吸着測定では拡散障害が少ないため、ウルトラミクロ孔の内部に吸着質分子が充填される。つまり、炭素体内に存在するウルトラミクロ孔の正しい評価には、今回の場合、二酸化炭素吸着測定が適していると言える。
【0087】
また、二酸化炭素の分子サイズ(0.330nm)が近いエチレン(0.390nm)は、二酸化炭素吸着を吸着した空孔に対して優位に吸着することが確認されており、セルロース炭素体ではACO2とnC2H4が良い相関関係にあることが知られている。
【0088】
そこで、エチレンガスの動力学的な吸着機構を検討するため、図26に各700℃炭素体のACO2とnC2H4の関係をプロットしたものを示す。図中には比較試料として、市販の微結晶セルロース(Merck製、20℃における密度1.5g/cm)を各炭素化温度で処理した炭素体、スギ炭素体、ヒノキ炭素体、市販のエチレン吸着剤の同実験値をプロットしてある。
【0089】
本研究にて得た各炭素体のACO2とnC2H4の関係性は、C700-I-coffee、C700-I-teaを除けば概ね良い線形性を示し、CO吸着をする細孔に対してC吸着が支配的であるという従来の報告を支持した結果が得られた。
【0090】
また、C700-I-teaやC700-I-barleyでは、セルロース炭素体や市販のエチレン吸着剤と非常に近い吸着量を示したことから、これらの原料中にはセルロース様の成分を多く含んでおり、それらから誘導された炭素分がエチレン吸着に優位に機能していることが示唆される。また、市販のセルロースは純度が高く原料コストも高いことから、同様の吸着特性を示した両食品廃棄物の炭化物利用(吸着剤)としての利用価値は高いと考えられる。
【0091】
2.3 まとめ
本章では各食品廃棄物にヨウ素前処理を施した炭素体のエチレン吸着測定及び二酸化炭素吸着測定を行い、各吸着性能を比較検討した結果、以下のことが判明した。
(1)エチレン及び二酸化炭素吸着挙動はI型を示し、コーヒー炭素体を除き、ヨウ素前処理によるミクロ孔発達に対応して両吸着量は増加した。
(2)エチレン吸着量と二酸化炭素で見積もられた細孔表面積は良い線形性が見られ、特にC700-I-tea、C700-I-greenが優れたエチレン吸着性能を有することが分かった。
【0092】
図27は、別途行った未処理の場合とヨウ素前処理の場合の炭素化吸収率とミクロ孔の増加(700℃炭化品)の比較をまとめて示したグラフである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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