(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126233
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】掘削孔の埋め戻し方法および掘削孔の埋め戻し装置
(51)【国際特許分類】
E21B 33/13 20060101AFI20220823BHJP
G21F 9/34 20060101ALI20220823BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20220823BHJP
G21F 9/24 20060101ALI20220823BHJP
C09K 8/22 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E21B33/13
G21F9/34 C
G21F9/36 541D
G21F9/24
C09K8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024177
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】升元 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昭治
(72)【発明者】
【氏名】石神 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓丞
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正祐紀
(72)【発明者】
【氏名】飛田 南斗
(57)【要約】
【課題】掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出でき、掘削孔を閉塞可能な技術を提供すること。
【解決手段】ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材と、膨潤遅延材としてエタノール、氷膜、ベントナイトの層間陽イオンと同じアルカリ金属塩のいずれか一つ、若しくは組み合わせたものを所定の容器の内部に装填する装填工程と、前記充填材及び前記膨潤遅延材が装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材及び前記膨潤遅延材を前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、有する、掘削孔の埋め戻し方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、
ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材と、エタノールと、を所定の容器の内部に装填する装填工程と、
前記充填材及び前記エタノールが装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材及び前記エタノールを前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、
を有する、掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項2】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、
ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材の表面の少なくとも一部に氷の膜を形成する氷膜形成工程と、
表面の少なくとも一部に前記氷の膜が形成された前記充填材が装填された所定の容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、表面の少なくとも一部に前記氷の膜が形成された前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、
を有する、掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項3】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、
ベントナイトの層間陽イオンと同一のアルカリ金属イオンの塩をベントナイトに混合してペレット状および/またはブロック状に形成された充填材を、所定の容器の内部に装填する装填工程と、
前記充填材が装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材を前記容器から外部に吐出する吐出工程と、
を有する、掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項4】
前記装填工程は、
前記充填材を前記容器の内部に投入する第1工程と、
前記充填材が投入された前記容器の内部に前記エタノールを投入する第2工程と、を有する、請求項1に記載の掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項5】
前記氷膜形成工程は、前記所定の容器の内部に装填された前記充填材を、液体窒素を用いて冷却することにより前記氷の膜を形成する、請求項2に記載の掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項6】
前記装填工程は、ナトリウム型ベントナイトに、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも一つを混合して形成された前記充填材を前記容器の内部に装填する、請求項3に記載の掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項7】
前記装填工程は、カルシウム型ベントナイトに、塩化カルシウムを混合して形成された前記充填材を前記容器の内部に装填する、請求項3に記載の掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項8】
前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔である、請求項1から7の何れか一項に記載の掘削孔の埋め戻し方法。
【請求項9】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、
ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材が装填され且つ装填された前記充填材を外部に吐出するための吐出口を開閉可能な開閉機構を有する容器と、
前記容器の内部に装填された前記充填材に対して、エタノールまたは液体窒素を投入する投入部と、
装填された前記充填材に前記エタノールまたは液体窒素が投入された前記容器を、前記掘削孔の所定位置まで搬送する搬送部と、
前記搬送部を制御して前記掘削孔の所定位置まで前記容器を搬送した後、前記開閉機構を制御して前記吐出口から前記充填材を外部に吐出させる制御部と、を備える掘削孔の埋め戻し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔の埋め戻し方法および掘削孔の埋め戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高レベル放射性廃棄物の処分場を選定するにあたり、地質構造等を確認するためにボーリング調査が行われている。ボーリング孔は、実際に処分場が稼働した際に放射線の移行経路となりかねないことから、閉塞させる必要がある。
【0003】
ボーリング孔の閉塞に用いる材料の一つとして、水に触れると膨潤する性質を有するベントナイトを母材とした混合土からなるベントナイト系材料の使用が検討されている。また、施工性の観点から、ベントナイトを小粒径に締め固めたペレットや、板状に締め固めたうえで細かく砕いた解砕物等の使用が検討されている。
【0004】
ボーリング孔の閉塞は、通常、ダンプベイラーと呼ばれる装置により行われる。具体的には、ダンプベイラーが備える容器内に収容されたベントナイトをボーリング孔内の閉塞地点まで搬送した後、該容器の吐出口を開いてベントナイトを吐出することにより行われる。
【0005】
ボーリング孔の内部には地下水が浸水しており、ダンプベイラーの容器の吐出口が開くと同時に、ベントナイトに地下水が触れる。すると、ベントナイトが急速に膨潤して吐出口で詰まってしまい、ボーリング孔内にベントナイトを吐出できなくなるおそれがある。これについては、発明者等による実験においても、ベントナイトが水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせることが確認されている。
【0006】
ところで、泥水を掘削孔内に流入させながら行われるボーリング工事中に、透水性が大きい地盤層に達したときに泥水が該地盤層から逸泥して掘削孔が崩落するのを防止するべく、ベントナイトに水分との接触を遅らせる有機質のコーティングを施して、ベントナイトの膨潤の進行を抑制しながら逸泥箇所をベントナイトで閉塞する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、放射性廃棄物の埋設場所に生じる隙間をベントナイト系材料からなる隙間充填剤で埋める技術において、隙間の壁面を予め凍結させることで地下水の影響を排除し、隙間全体に隙間充填剤を送り込む提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-231533号公報
【特許文献2】特許第5650517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来技術では、ボーリング孔を閉塞する際にベントナイトが地下水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせるという課題には応えていない。また、ボーリング孔内の閉塞地点に有機質の不純物となるコーティング材が残存することは避けなくてはならない。コーティング材が残存すると、微生物分解によってガスが発生し、発生したガスによりボーリング孔の閉塞が妨げられるおそれがあるからである。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出でき、掘削孔を閉塞可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材と、エタノールと、を所定の容器の内部に装填する装填工程と、前記充填材及び前記エタノールが装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材及び前記エタノールを前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、を有する、掘削孔の埋め戻し方法を提供する。エタノールは有機物であるが、地下水によって容易に希釈されるため、長期に亘って孔内に留まることがなく、バクテリアの分解によるガスの発生することがない。
【0011】
(2) また、上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材の表面の少なくとも一部に氷の膜を形成する氷膜形成工程と、表面の少なくとも一部に前記氷の膜が形成された前記充填材が装填された所定の容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、表面の少なくとも一部に前記氷の膜が形成された前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、を有する、掘削孔の埋め戻し方法を提供する。
【0012】
(3) また、上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、ベントナイトの層間陽イオンと同一のアルカリ金属イオンの塩をベントナイトに混合してペレット状および/またはブロック状に形成された充填材を、所定の容器の内部に装填する装填工程と、前記充填材が装填された所定の容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材を前記容器から外部に吐出する吐出工程と、を有する、掘削孔の埋め戻し方法を提供する。
【0013】
(4) (1)の掘削孔の埋め戻し方法において、前記装填工程は、前記充填材を前記容器の内部に投入する第1工程と、前記充填材が投入された前記容器の内部に前記エタノールを投入する第2工程と、を有していてもよい。
【0014】
(5) (2)の掘削孔の埋め戻し方法において、前記氷膜形成工程は、前記所定の容器の内部に装填された前記充填材を、液体窒素を用いて冷却することにより前記氷の膜を形成してもよい。
【0015】
(6) (3)の掘削孔の埋め戻し方法において、前記装填工程は、ナトリウム型ベントナイトに、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも一つを混合して形成された前記充填材を前記容器の内部に装填してもよい。
【0016】
(7) (3)の掘削孔の埋め戻し方法において、前記装填工程は、カルシウム型ベントナイトに、塩化カルシウムを混合して形成された前記充填材を前記容器の内部に装填してもよい。
【0017】
(8) (1)から(7)いずれかの掘削孔の埋め戻し方法において、前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔であってもよい。
【0018】
(9) 上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材が装填され且つ装填された前記充填材を外部に吐出するための吐出口を開閉可能な開閉機構を有する容器と、前記容器の内部に装填された前記充填材に対して、エタノールまたは液体窒素を投入する投入部と、装填された前記充填材に前記エタノールまたは液体窒素が投入された前記容器を、前記掘削孔の所定位置まで搬送する搬送部と、
前記搬送部を制御して前記掘削孔の所定位置まで前記容器を搬送した後、前記開閉機構を制御して前記吐出口から前記充填材を外部に吐出させる制御部と、を備える掘削孔の埋め戻し装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出でき、掘削孔を閉塞可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法の手順を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法における氷膜形成工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示される掘削孔としてのボーリング孔1は、例えば、放射性廃棄物処理場に設けられる。ボーリング孔1の深さは約300mに達する場合があり、径は通常20cm以下である。本実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法は、ボーリング孔1に対して、本実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置としてのダンプベイラー2を適用することにより実現可能である。ダンプベイラー2は円筒形の容器3を有し、容器3には後述する膨潤遅延充填材4が装填される。膨潤遅延充填材4は、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトにエタノールが共存したものであり、エタノールによりベントナイトの急速な膨潤を遅延できる特性を有する。
【0023】
ペレット状とは、例えば略アーモンド状の形状であり、大きさの異なるものが大小混合されていてもよい。なお、膨潤遅延充填材4としては、ペレット状というよりも寧ろブロック状というに相応しい外形や大きさをなすものも適用され得る。これら個々の固状体の膨潤遅延充填材4は、相互に適度な空隙部分を有して容器3に装填されている。
【0024】
容器3は搬送部である昇降装置5によって吊持され、ボーリング孔1内を昇降移動する。容器3の底部に形成された吐出口3aには、ヒンジ6を軸に回動して開閉動作する開閉底板7が設けられている。開閉底板7は図示しない開閉操作機構によって開閉操作される。
【0025】
例えば
図1の状態では、容器3は昇降装置5によって鉛直方向で見た全長の下方から半分程度までが地下水8に水没する位置まで降下されている。この位置で、開閉操作機構によって開閉底板7が一点鎖線で図示のように開かれると、白抜きの矢線Aのように下方に向けて膨潤遅延充填材4が吐出する。搬送部(昇降装置5)と開閉操作機構(開閉底板7)とは、制御部9によって制御されて作動する。
【0026】
仮に、容器3に装填されている充填材が、膨潤遅延充填材4ではなく、単にペレット状またはブロック状のベントナイトを主材とするものである場合には、容器3の吐出口3aが詰まってしまい、充填材が吐出されないことが懸念される。開閉底板7が開かれると、高圧の地下水8が瞬時に充填材に向けて侵入し、充填材の膨潤が急速に進んで吐出口3aを塞ぐためである。
【0027】
発明者等は、上述のような懸念される現象について、次のような実験を行って検証した。即ち、ボーリング孔を模したメスシリンダーをイオン交換水で満たし、そのメスシリンダーにダンプベイラーの容器を模してベントナイトペレットを充填した有底状態の塩ビ管を挿入し、水中で塩ビ管の底部を破裂させてペレットを吐出させる模擬実験を行った。その結果、吐出口でベントナイトが急速に膨潤して詰まることが確認された。なお、実験で使用したベントナイトペレットは、水中のイオンとイオン交換するナトリウム型、カルシウム型のものであった。
【0028】
次いで、発明者等は、容器の吐出口でのベントナイトの詰まり対策として、次のような実験を行った。即ち、ダンプベイラーの容器(実験では塩ビ管)の吐出口が開いた直後に、ベントナイトペレットが地下水(実験ではイオン交換水)に触れて膨潤し、吐出口を詰まらせることを遅らせるために、容器内に装填したベントナイトペレットにエタノールを注液した。
【0029】
この状態で、吐出口に相当する塩ビ管の底部を破裂させてダンプベイラー容器の吐出口が開いた直後の状況をシミュレーションした。このシミュレーションの結果、ベントナイトペレットにエタノールが共存すると、ベントナイトの膨潤の進行が一時的に抑制されることが確認された。
【0030】
上述の実験では、塩ビ管の底部を破裂させて地下水が容器内に浸入しても、ベントナイトペレットの膨潤は適度に遅延し、全量のベントナイトペレットを塩ビ管から吐出させてメスシリンダー(ボーリング孔に相当)内に充填することに成功した。この現象は、ダンプベイラー容器内の全てのベントナイトペレットをボーリング孔内に吐出できるという効果が期待できることを意味する。
【0031】
なお、エタノールは水にいくらでも混ざる特性を有し、ボーリング孔内に導入されたエタノールは地下水により十分に希釈される。そのため、ボーリング孔周辺にエタノールが高濃度に残存するおそれは極めて小さく、微生物分解によってガスが発生し、発生したガスによりボーリング孔の閉塞が妨げられることもない。
【0032】
図1の実施形態は、上述のような実験結果を反映させている。即ち、膨潤遅延充填材4は、予めペレット状またはブロック状のベントナイトを主材とする充填材にエタノールを共存させる膨潤遅延処理を施してある。
【0033】
図2は、本発明の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法の手順を示す図である。より具体的に
図2は、本実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法における装填工程と吐出工程とを示す図である。
図2の装填工程は、ペレット状のベントナイトを主材とする充填材41にエタノールを共存させて、第1形態の膨潤遅延充填材4aを得る工程の一例である。
【0034】
先ず、
図2の(A)に示すように、容器3のヒンジ6の周りに回動する開閉底板7を、図示のように吐出口3aを閉止する状態に維持する。この状態で、図示しない振動式のホッパーなどによりペレット状のベントナイトを主材とする充填材41を容器3に一定量投入する。
【0035】
次いで、
図2の(B)に示すように、容器3に投入されている充填材41に対して上方からエタノール40を注液する。この結果、
図2を参照して説明した、充填材41にエタノールが共存した第1形態の膨潤遅延充填材4aが得られる。
【0036】
次いで、
図2の(C)に示すように、容器3のヒンジ6の周りに開閉底板7を回動させて、図示のように吐出口3aを開放する。開放された吐出口3aから容器3の内部に地下水8が浸入する。このとき、第1実施形態の膨潤遅延充填材4aはエタノールが共存している。このため、吐出口3aが解放されて容器3の内部に地下水8が浸入し始めた時点から、膨潤が始まるまでには適度な遅延が生じる。このため、容器3の吐出口3aが膨潤した充填材41によって詰まってしまう不具合が回避される。吐出口3aの詰まりが生じないため、第1実施形態の膨潤遅延充填材4aは、その全量が吐出口3aから外部に吐出される。外部の地下水8に浸った第1実施形態の膨潤遅延充填材4aは、上述の遅延を経て膨潤する。これにより、膨潤遅延充填材4aによって、ボーリング孔(掘削孔)1が能率よく埋め戻しされる。
【0037】
なお、本実施形態は、例えば容器内に装填されているペレット状および/またはブロック状のベントナイトに対してエタノールを投入するものであり、例えば従来公知のエタノールとベントナイトのスラリーとは異なるものである。即ち、ある程度大きな塊のベントナイトとエタノールが共存する充填材である。これにより、スラリーのような粉状のベントナイトに比べて、内部にまで含侵したエタノールが地下水に置換されるまで時間を要するため、より膨潤を遅延させることが可能となっている。
【0038】
次に、第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置について説明する。
第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置は、掘削孔1をペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主材とする充填材41を用いて埋め戻す掘削孔1の埋め戻し装置であって、容器3を備える。本例では、容器3は、ダンプベイラー2(
図1)の容器部である。
【0039】
第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置は、また、
図2の(B)に模式的に示されるように、容器3の内部に装填されたベントナイトのペレット状および/またはブロック状の充填材41にエタノールを投入する投入部10を備える。
【0040】
図1のダンプベイラー2における容器3は開閉機構を有し、この開閉機構が開閉底板7を開閉する。また、容器3は搬送部である昇降装置5によってボーリング孔(掘削孔)1の所定位置まで搬送(降下)される。搬送部を制御してボーリング孔(掘削孔)1の所定位置まで容器3を搬送させた後、開閉機構を制御して開閉底板7を開き吐出口3aから充填材(膨潤遅延充填材4a)を外部に吐出させる制御部9が設けられる。
【0041】
以上説明した第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置によれば、上述の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法と同様の効果が奏される。
【0042】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法を説明するための図である。より詳細には、本発明の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法における氷膜形成工程で得られる膨潤遅延充填材のうちの一粒が、地下水8中に浸漬されている様子を模式的に示す概念図である。
【0043】
図3において、第2実施形態の膨潤遅延充填材4bは、ペレット状のベントナイトを主材とする充填材41の表面に氷の膜42が形成されたものである。容器3の開閉底板7がヒンジ6の周りに矢線図示の方向に回動して吐出口3aが開くと、地下水8によって容器3内が下方から浸水する。水膨潤性の充填材41は地下水8に浸ると、瞬時に膨潤が始まる。しかしながら、第2実施形態の膨潤遅延充填材4bは、ペレット状の充填材41の表面に氷の膜42が形成されているため、氷の膜が融けて充填材41が地下水8と接触するまでは地下水8の浸入時点から適度な遅延が生じる。
【0044】
このため本実施形態によれば、地下水8と接触して膨潤した充填材41によって容器3の吐出口3aが詰まってしまう不具合が回避される。吐出口3aの詰まりが生じないため、第2実施形態の膨潤遅延充填材4bは、その全量が吐出口3aから外部に吐出される。外部の地下水8に浸った第2実施形態の膨潤遅延充填材4bは、上述の遅延を経て膨潤する。これにより、第2実施形態の膨潤遅延充填材4bによって、ボーリング孔(掘削孔)1が能率よく埋め戻しされる。
【0045】
図4は、本発明の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法における氷膜形成工程の一例を示す図である。
図4の氷膜形成工程は、ペレット状のベントナイトを主材とする充填材41の表面に氷の膜42を形成する工程である。
【0046】
先ず、
図4の(A)に示すように、ペレット状のベントナイトを主材とする充填材41を造粒する。
【0047】
次いで、
図4の(B)に示すように、充填材41を液体窒素50に漬けて氷点下に冷却する。なお、液体窒素以外でも、充填材を氷点下まで冷却できるものであれば適用可能であり、例えばドライアイス等を用いることも可能である。
【0048】
さらに、
図4の(C)に示すように、氷点下まで冷却された充填材41を短時間水60に漬ける。
【0049】
水に漬けられた充填材41を取り出すと、
図4の(D)に示すように、充填材41の表面に氷の膜42が形成される。
【0050】
図4の、(B)、(C)、(D)の順次の処理は、充填材41を氷点下まで冷却して充填材41に氷の膜42を形成する氷膜形成工程である。この氷膜形成工程を、所要に応じて繰り返して行うことにより、充填材41の表面における氷の膜42の厚みを次第に増大させて適切な厚みを得るようにしてもよい。上述した
図4の氷膜形成工程は、グレーズ処理と称される。
【0051】
図4の工程で得られた氷の膜42を有する膨潤遅延充填材4bは、
図3における第2実施形態の膨潤遅延充填材4bである。第2実施形態の膨潤遅延充填材4bは、
図2の(C)部を参照して説明したところと同様の吐出工程で容器3から吐出させて、ボーリング孔(掘削孔)1の埋め戻しに用いられる。
【0052】
なお、十分に冷却した複数のペレット状ベントナイトである充填材41をまとめて水に漬けることにより、氷によって一体的にまとまったベントナイトペレットブロックを形成し、これをダンプベイラー2の容器3に装填して用いてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトの表面の少なくとも一部に氷の膜を形成することにより、ベントナイトが地下水に触れたときの急速な膨潤を氷が融けるまでの間抑制できるものであり、従来のような有機質のコーティング剤は一切使用していない。そのため、残存した有機質が微生物により分解されてガスが発生し、発生したガスによりボーリング孔の閉塞が妨げられることもない。
【0054】
次に、第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置について説明する。なお、第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の模式図は、第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置と同様に
図1によって表される。
【0055】
第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置は、掘削孔1をペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主材とする充填材41を用いて埋め戻す掘削孔1の埋め戻し装置であって、容器3を備える。本例では、容器3は、ダンプベイラー2(
図1)の容器部である。
【0056】
第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置は、
図3の(B)に模式的に示されるように、容器3の内部に装填されたベントナイトのペレット状またはブロック状の充填材41に液体窒素50を投入する投入部を備える。
【0057】
図1のダンプベイラー2における容器3は開閉機構を有し、この開閉機構が開閉底板7を開閉する。また、容器3は搬送部である昇降装置5によってボーリング孔(掘削孔)1の所定位置まで搬送(降下)される。搬送部を制御してボーリング孔(掘削孔)1の所定位置まで容器3を搬送させた後、開閉機構を制御して開閉底板7を開き吐出口3aから充填材(膨潤遅延充填材4b)を外部に吐出させる制御部9が設けられる。
【0058】
以上説明した第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置によれば、上述の第2実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法と同様の効果が奏される。
【0059】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法は、ベントナイトの層間陽イオンと同一のアルカリ金属イオンの塩をベントナイトに混合してペレット状および/またはブロック状の充填材を形成する充填材形成工程と、前記充填材が装填された所定の容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送した後、前記充填材を前記容器部から外部に吐出する吐出工程と、を含む。例えば充填材形成工程自体はダンプベイラー2の容器3とは別の容器内で行ない、その後、容器3に装填する。
【0060】
第3実施形態による掘削孔の埋め戻し方法における上述の充填材形成工程で形成された充填材は、第3実施形態の膨潤遅延充填材である。第3実施形態の膨潤遅延充填材は、ベントナイトの層間陽イオンと同一のアルカリ金属イオンの塩をベントナイトに混合してペレット状および/またはブロック状に形成されたものである。具体的には、例えば、ナトリウム型ベントナイトに、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも一つを混合して形成された充填材である。通常、ベントナイトに水が接触すると、層間陽イオンに水分子が水和し、単位層間の距離が増加していくことによって膨潤が生じる。これに対して本実施形態の膨潤遅延充填材には予めベントナイトの層間陽イオンと同一のアルカリ金属イオンであるナトリムイオンが存在するため、層間陽イオンに水分子が水和するのが抑制される結果、膨潤を遅延させることが可能となっている。ベントナイトがカルシウム型であれば、塩化カルシウムを混合することも考えられる。
【0061】
従って、上述の第1実施形態の膨潤遅延充填材4aと同様に、地下水と接触しても直ちには膨潤が起こらず、適度に遅延して膨潤するため、ダンプベイラー2の容器3の吐出口での詰まりが発生しない。このため、第3実施形態の膨潤遅延充填材は、その全量が吐出口3aから外部に吐出される。外部の地下水8に浸った第3実施形態の膨潤遅延充填材は、上述の遅延を経て膨潤する。これにより、第3実施形態の膨潤遅延充填材によって、ボーリング孔(掘削孔)1が能率よく埋め戻しされる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。例えば、上述の装填工程では、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含む充填材と、膨潤遅延材としてエタノール、氷膜、ベントナイトの層間陽イオンと同じアルカリ金属塩のいずれか一つ、若しくは組み合わせたものとを所定の容器の内部に装填するようにしてもよい。また、吐出工程では、上述の充填材及び膨潤遅延材が装填された容器を掘削孔内の所定位置まで搬送した後、容器に充填された充填材及び膨潤遅延材を容器の内部から外部に吐出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ボーリング孔(掘削孔)
2 ダンプベイラー
3 容器
3a 吐出口
4、4a、4b 膨潤遅延充填材
5 昇降装置(搬送部)
6 ヒンジ
7 開閉底板
8 地下水
9 制御部
10 投入部
40 エタノール
41 充填材
42 氷の膜
50 液体窒素
60 水