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特開2022-126234掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法
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  • 特開-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図1
  • 特開-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126234
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 33/13 20060101AFI20220823BHJP
   G21F 9/34 20060101ALI20220823BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20220823BHJP
   G21F 9/24 20060101ALI20220823BHJP
   C09K 8/22 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E21B33/13
G21F9/34 C
G21F9/36 541D
G21F9/24
C09K8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024178
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】升元 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昭治
(72)【発明者】
【氏名】石神 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓丞
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正祐紀
(72)【発明者】
【氏名】飛田 南斗
(57)【要約】
【課題】掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出できて掘削孔を閉塞可能であり、かつ、容器の有効容積が損なわれることがない技術を提供すること。
【解決手段】ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された充填材が装填される筒状の容器と、充填材が装填された容器を掘削孔の内部の所定位置まで搬送する搬送部と、を備え、容器は、下端部に形成された吐出口及び容器の内部と外部を連通する連通孔を一時的に閉塞可能なアイスプラグを有するアイスプラグ部と、アイスプラグ部の直上に設けられアイスプラグ上に充填剤が装填される装填部と、を有し、容器が搬送部により掘削孔内の所定位置まで搬送されることにより、掘削孔内の地下水が連通孔から浸入してアイスプラグが解け、充填材を容器の内部から外部に吐出する、掘削孔の埋め戻し装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、
ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された充填材が装填される筒状の容器と、
前記充填材が装填された前記容器を前記掘削孔の内部の所定位置まで搬送する搬送部と、を備え、
前記容器は、
下端部に形成され前記充填材を外部に吐出する吐出口及び前記容器の内部と外部を連通する連通孔を一時的に閉塞可能なアイスプラグを有するアイスプラグ部と、
前記アイスプラグ部の直上に設けられ前記アイスプラグ上に前記充填剤が装填される装填部と、を有し、
前記容器が前記搬送部により前記掘削孔内の所定位置まで搬送されることにより、前記掘削孔内の地下水が前記連通孔から浸入して前記アイスプラグが解け、前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する、掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項2】
前記連通孔は、前記アイスプラグ部の側壁に複数形成される、請求項1に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項3】
前記アイスプラグ部は、前記容器の下端部の外側に脱着可能に設けられ前記吐出口及び前記連通孔を塞ぐ蓋体をさらに有し、前記蓋体が装着された状態で投入された水を冷却することにより前記アイスプラグを形成可能に構成される、請求項1または2に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項4】
前記装填部には、前記ペレット状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された第1の充填材が前記アイスプラグ上に装填されるとともに、前記ブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された第2の充填材が前記第1の充填剤上に装填される、請求項1から3の何れか一項に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項5】
前記第1の充填材は、角部を有するブロック状に形成され、前記角部を下方に向けた状態で装填される、請求項4に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項6】
前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔である、請求項1から5の何れか一項に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項7】
ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、
筒状の容器の下端部に形成され前記容器内に充填される充填材を外部に吐出する吐出口及び前記容器の内部と外部とを連通する連通孔を一時的に閉塞可能なアイスプラグを形成するアイスプラグ形成工程と、
ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された充填材を前記容器内の前記アイスプラグ上に装填する装填工程と、
前記充填材が装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送することにより、前記掘削孔内の地下水が前記連通孔から浸入して前記アイスプラグが解け、前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、
を有する、掘削孔の埋め戻し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高レベル放射性廃棄物の処分場を選定するにあたり、地質構造等を確認するためにボーリング調査が行われている。ボーリング孔は、実際に処分場が稼働した際に放射線の移行経路となりかねないことから、閉塞させる必要がある。
【0003】
ボーリング孔の閉塞に用いる材料の一つとして、水に触れると膨潤する性質を有するベントナイトを母材とした混合土からなるベントナイト系材料の使用が検討されている。また、施工性の観点から、ベントナイトを小粒径に締め固めたペレットや、板状に締め固めたうえで細かく砕いた解砕物等の使用が検討されている。
【0004】
ボーリング孔の閉塞は、通常、ダンプベイラーと呼ばれる装置により行われる。具体的には、ダンプベイラーが備える容器内に収容されたベントナイトをボーリング孔内の閉塞地点まで搬送した後、該容器の吐出口を開いてベントナイトを吐出することにより行われる。
【0005】
ボーリング孔の内部には地下水が浸水しており、ダンプベイラーの容器の吐出口が開くと同時に、ベントナイトに地下水が触れる。すると、ベントナイトが急速に膨潤して吐出口で詰まってしまい、ボーリング孔内にベントナイトを吐出できなくなるおそれがある。これについては、発明者等による実験においても、ベントナイトが水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせることが確認されている。
【0006】
ところで、泥水を掘削孔内に流入させながら行われるボーリング工事中に、透水性が大きい地盤層に達したときに泥水が該地盤層から逸泥して掘削孔が崩落するのを防止するべく、ベントナイトに水分との接触を遅らせる有機質のコーティングを施して、ベントナイトの膨潤の進行を抑制しながら逸泥箇所をベントナイトで閉塞する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、放射性廃棄物の埋設場所に生じる隙間をベントナイト系材料からなる隙間充填剤で埋める技術において、隙間の壁面を予め凍結させることで地下水の影響を排除し、隙間全体に隙間充填剤を送り込む提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-231533号公報
【特許文献2】特許第5650517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来技術では、ボーリング孔を閉塞する際にベントナイトが地下水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせるという課題には応えていない。特に、ボーリング孔内の閉塞地点に有機質の不純物となるコーティング材が残存することは避けなくてはならない。コーティング材が残存すると、微生物分解によってガスが発生し、発生したガスによりボーリング孔の閉塞が妨げられるおそれがあるからである。また、一般的には、容器の吐出口には開閉底板が設けられるが、開閉底板とその開閉機構を設けるために容器の有効容積が制限されるといった課題もある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出できて掘削孔を閉塞可能であり、かつ、容器の有効容積が損なわれることがない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された充填材が装填される筒状の容器と、前記充填材が装填された前記容器を前記掘削孔の内部の所定位置まで搬送する搬送部と、を備え、前記容器は、下端部に形成され前記充填材を外部に吐出する吐出口及び前記容器の内部と外部を連通する連通孔を一時的に閉塞可能なアイスプラグを有するアイスプラグ部と、前記アイスプラグ部の直上に設けられ前記アイスプラグ上に前記充填剤が装填される装填部と、を有し、前記容器が前記搬送部により前記掘削孔内の所定位置まで搬送されることにより、前記掘削孔内の地下水が前記連通孔から浸入して前記アイスプラグが解け、前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する、掘削孔の埋め戻し装置を提供する。
【0011】
(2) (1)の掘削孔の埋め戻し装置において、前記連通孔は、前記アイスプラグ部の側壁に複数形成されていてもよい。
【0012】
(3) (1)の掘削孔の埋め戻し装置において、前記アイスプラグ部は、前記容器の下端部の外側に脱着可能に設けられ前記吐出口及び前記連通孔を塞ぐ蓋体をさらに有し、前記蓋体が装着された状態で投入された水を冷却することにより前記アイスプラグを形成可能に構成されていてもよい。
【0013】
(4) (1)から(3)いずれかの掘削孔の埋め戻し装置において、前記装填部には、前記ペレット状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された第1の充填材が前記アイスプラグ上に装填されるとともに、前記ブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された第2の充填材が前記第1の充填剤上に装填されるように構成されていてもよい。
【0014】
(5) (4)の埋め戻し装置において、前記第1の充填材は、角部を有するブロック状に形成され、前記角部を下方に向けた状態で装填されるものであってもよい。
【0015】
(6) (1)から(5)いずれかの掘削孔の埋め戻し装置において、前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔であってもよい。
【0016】
(7) 上記目的を達成するため本発明は、ベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、筒状の容器の下端部に形成され前記容器内に充填される充填材を外部に吐出する吐出口及び前記容器の内部と外部とを連通する連通孔を一時的に閉塞可能なアイスプラグを形成するアイスプラグ形成工程と、ペレット状および/またはブロック状のベントナイトを主として含み且つ表面の少なくとも一部に氷の膜が形成された充填材を前記容器内の前記アイスプラグ上に装填する装填工程と、前記充填材が装填された前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送することにより、前記掘削孔内の地下水が前記連通孔から浸入して前記アイスプラグが解け、前記充填材を前記容器の内部から外部に吐出する吐出工程と、を有する、掘削孔の埋め戻し方法、を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、掘削孔内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出できて掘削孔を閉塞可能であり、かつ、容器の有効容積が損なわれることがない技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の氷膜形成処理部および埋め戻し方法における氷膜形成工程を説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置および埋め戻し方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示される掘削孔としてのボーリング孔1は、例えば、放射性廃棄物処理場に設けられる。ボーリング孔1の深さは約300mに達する場合があり、径は通常20cm以下である。本実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法は、ボーリング孔1に対して、本実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置としてのダンプベイラー2を適用することにより実現可能である。ダンプベイラー2は全体として筒状体(本例では円筒体)をなす容器3を有する。容器3には後述する第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5が装填される。第1の膨潤遅延充填材4は、ペレット状のベントナイトを主として含む充填材の表面の少なくとも一部に氷の膜を形成したものでる。また、第2の膨潤遅延充填材5はブロック状のベントナイトを主として含む充填材の表面の少なくとも一部に氷の膜を形成したものである。第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、何れも、氷の膜によりベントナイトの急速な膨潤を遅延できる特性を有する。
【0021】
ペレット状の第1の膨潤遅延充填材4は、アーモンド状の形状もしくはベントナイトを板状に締め固めたうえで細かく砕いた解砕物等の形状であり、大きさは、大小混合されていてもよい。ブロック状の第2の膨潤遅延充填材5は、角部を有するブロック状に形成され、この角部を下方に向けた状態で装填される。本例の場合、第2の膨潤遅延充填材5は、外周面が容器3の内周面に沿う形状および寸法の円柱状部5aと、円柱状部5aの底面部位から下方に突出した錘状の凸部5b(角部)と、円柱状部5aの上面部位から凸部5bに対応して錘状に凹陥した凹部5cとを有する。これら第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、後述する装填工程において充填材装填部によって容器3に装填される。
【0022】
容器3は搬送部である昇降装置6によって吊持され、ボーリング孔1内を昇降移動する。円筒体をなす容器3の下端部には充填材を外部に吐出する吐出口3aが設けられ、吐出口3aから所定の高さの範囲に、後述するアイスプラグ形成領域3bが設定されている。また、アイスプラグ形成領域3bと容器3の外部とを連通させる複数の連通孔7が形成されている。アイスプラグ形成領域3bは、この領域にアイスプラグ8が形成された状態でアイスプラグ部31をなす。即ち、連通孔7は、アイスプラグ部31の側壁に複数形成されている。吐出口3aと連通孔7とは、アイスプラグ8によって一時的に閉塞され、図1の状態を呈する。アイスプラグ部31のアイスプラグ8の直上が、第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5が装填される装填部3cとなる。装填部3cには、下方側に第1の膨潤遅延充填材4が装填され、その上に第2の膨潤遅延充填材5が装填される。容器3は、その吐出口3aと連通孔7とが後述するようにアイスプラグ形成領域3bを埋め尽くすように張られたアイスプラグ8によって閉塞された状態を維持して、昇降装置6によってボーリング孔1内の所定位置まで搬送される。
【0023】
図1の状態では、容器3は昇降装置6によって鉛直方向で見た全長の下方から半分程度までが地下水9に水没する位置まで降下している。この位置で、アイスプラグ8が連通孔7から浸入した地下水9によって溶けて消滅し、吐出口3aの閉塞が解除される。すると、白抜きの矢線Aで示す下方に向けて第1の膨潤遅延充填材4が吐出し、続いて第2の膨潤遅延充填材5が吐出する。即ち、吐出口3aの閉塞はアイスプラグ8が溶けることによって自然に解除され、第1の膨潤遅延充填材4の吐出が始まる。このため、吐出口3aの閉塞を解除するための別段の開閉操作機構等は必要とされない。従って、容器3はこの種の開閉操作機構を配置するためのスペースを要さず、有効容積が阻害されない。
【0024】
ここで、仮に、容器3に装填されている充填材が、氷の膜が形成された第1の膨潤遅延充填材4や第2の膨潤遅延充填材5ではなく、単にペレット状またはブロック状のベントナイトを主材とするものである場合には、容器3の吐出口3aが詰まってしまい、充填材が吐出されないことが懸念される。吐出口3aが開かれると、高圧の地下水9が瞬時に充填材に向けて侵入し、充填材の膨潤が急速に進んで吐出口3aを塞ぐと推測されるためである。
【0025】
発明者等は、上述のような懸念される現象について、次のような実験を行って検証した。即ち、ボーリング孔を模したメスシリンダーをイオン交換水で満たし、そのメスシリンダーにダンプベイラーの容器を模してベントナイトペレットを充填した有底状態の塩ビ管を挿入し、水中で塩ビ管の底部を破裂させてペレットを吐出させる模擬実験を行った。その結果、吐出口でベントナイトが膨潤して詰まることが確認された。この場合のベントナイトペレットは水中のイオンとイオン交換するナトリウム型、カルシウム型のものである。
【0026】
次いで、発明者等は、容器の吐出口での詰まりが生じないように対策する手法として、次のような実験を行った。即ち、ダンプベイラーの容器(実験では塩ビ管)の吐出口が開いた直後に、ベントナイトペレットが地下水(実験ではイオン交換水)に触れて膨潤し、吐出口を詰まらせることを遅らせるために、容器内に装填したベントナイトペレットに氷の膜を形成した。
【0027】
この状態で、吐出口に相当する塩ビ管の底部を破裂させてダンプベイラー容器の吐出口が開いた直後の状況をシミュレーションした。このシミュレーションの結果、ベントナイトペレットに氷の膜を形成すると、膨潤の進行が一時的に抑制されることが判明した。
【0028】
上述の実験では、塩ビ管の底部を破裂させて地下水が容器に入っても、ベントナイトペレットの膨潤は適度に遅延し、略全量のベントナイトペレットを塩ビ管から吐出させてメスシリンダー(ボーリング孔に相当)内に充填することに成功した。この現象は、ダンプベイラー容器内の全てのベントナイトペレットをボーリング孔内に吐出できるという効果が期待できることを意味する。
【0029】
さらに、氷の膜は、固相から液相へと相転移するだけであることから、ボーリング孔内に有機質の不純物が残るおそれはない。
【0030】
図1の実施形態は、上述のような実験結果を反映させている。即ち、第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、予めペレット状またはブロック状のベントナイトを主材とする充填材に氷の膜を形成する膨潤遅延処理を施してある。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置の氷膜形成処理部を説明する図であり、また、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法における氷膜形成工程を説明する図である。なお、図2では、代表的に第1の膨潤遅延充填材4に関する氷の膜の形成を表しているが、第2の膨潤遅延充填材5に関する氷の膜の形成も略同様である。
【0032】
先ず、図2の(A)に示すように、ペレット状のベントナイトを主材とする充填材41を造粒する。
【0033】
次いで、図2の(B)に示すように、充填材41を液体窒素50に漬けて氷点下に冷却する。
【0034】
さらに、図2の(C)に示すように、氷点下まで冷却された充填材41を短時間水60に漬ける。
【0035】
水に漬けられた充填材41を取り出すと、図2の(D)に示すように、充填材41の表面に氷の膜42が形成される。
【0036】
図2の、(B)、(C)、(D)の順次の処理は、充填材41を氷点下まで冷却して充填材41に氷の膜42を形成する氷膜形成工程である。この氷膜形成工程を、所要に応じて繰り返して行うことにより、充填材41の表面における氷の膜42の厚みを次第に増大させて適切な厚みを得るようにしてもよい。上述した図2の氷膜形成工程は、グレーズ処理と称される。上述のようなグレーズ処理は、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置における氷膜形成処理部によって行われる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置と、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し方法を説明する図である。
【0038】
図3の(A)には、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置におけるアイスプラグ形成処理部によるアイスプラグ形成工程が示されている。図3の(A)において、容器3には、その吐出口3aと連通孔7とを共に覆って塞ぐ離脱可能な蓋体10を嵌装する。次いで、容器3のアイスプラグ形成領域3bに注水する。この注水によりアイスプラグ形成領域3bが水で満たされる。容器3のアイスプラグ形成領域3bに満たされた水を、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置における冷却部によって凍結させてアイスプラグ8を形成する。即ち、アイスプラグ形成領域3bにアイスプラグ8が形成されてアイスプラグ部31となる。
【0039】
次いで、図3の(B)に示すように、アイスプラグ部31のアイスプラグ8直上の装填部3cに、第1の膨潤遅延充填材4と第2の膨潤遅延充填材5とを上述の順に装填する。第1の膨潤遅延充填材4と第2の膨潤遅延充填材5とを容器3に装填する工程は、本発明の掘削孔の埋め戻し方法における装填工程である。この装填工程は、第1の膨潤遅延充填材4をアイスプラグ8の上に装填する第1の装填工程と、第2の膨潤遅延充填材5を第1の装填工程で装填した第1の膨潤遅延充填材4の上に装填する第2の充填工程と、を含む。このように装填される第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、何れも、図2を参照して説明したグレーズ処理が施されたものである。
【0040】
図1を参照して説明したように、第1の膨潤遅延充填材4はペレット状である。これに対し、第2の膨潤遅延充填材5は、外周面が容器3の内周面に沿う形状および寸法の円柱状部5aと、円柱状部5aの底面部位から下方に突出した錘状の凸部5b(角部)と、円柱状部5aの上面部位から凸部5bに対応して錘状に凹陥した凹部5cとを有するブロック状体である。第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5の容器3への投入は、先ず、ペレット状の第1の膨潤遅延充填材4をアイスプラグ8上に相対的に少なく投入した後に第2の膨潤遅延充填材5を相対的に多く投入する。この場合、第2の膨潤遅延充填材5は上述のような寸法および形状のブロック状体であるため、容器3への順次の投入に際してその姿勢が容器3の内周面によって規制され、下方に突出した錘状の凸部5bの頂上部位の移動軌跡が容器3の中心軸に沿うような姿勢を維持する。即ち、容器3に順次投入される第2の膨潤遅延充填材5は、不規則に大きく揺動するようなことがなく、順次連なって下降し、整然と積層される。このため、第2の膨潤遅延充填材5は、容器3内で隙間が極小となるように密に充填され、容器3の限定された内容積が無駄なく利用される。
【0041】
次いで、図3の(C)に示すように、容器3から蓋体10を離脱可能させる。蓋体10を離脱させても、アイスプラグ8によって容器3の吐出口3aと連通孔7との閉塞状態は維持される。この状態で、図1におけるダンプベイラー2の昇降装置6によって、容器3をその吐出口3aと連通孔7が地下水9に浸水する深さまでボーリング孔1内を降下させる。
【0042】
容器3が図3の(C)に図示の如く降下すると、高圧の地下水が吐出口3aと連通孔7との双方からアイスプラグ8に接する。図3の(C)に図示の状態で若干の時間が経過すると、図3の(D)に示すように、アイスプラグ8は地下水9に溶けて、吐出口3aの閉塞が解除される。この吐出口3aの閉塞の解除は、本発明の掘削孔の埋め戻し方法の実施形態における吐出口開放工程である。吐出口3aの閉塞が解除されると、第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5が、それらの自重で白抜きの矢線にて図示のように容器3の内部から外部に吐出する。吐出口開放工程から充填材の吐出までが本発明の掘削孔の埋め戻し方法における吐出工程に該当する。吐出した第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5により、ボーリング孔1が埋め戻されていく。なお、容器3における第2の膨潤遅延充填材5の最上のものよりも上方位置に、適宜の水圧導入路を設けることは推奨される。これにより、容器3内の第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5にかかる水圧を上下方向で一定の程度バランスさせて、第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5の自重による吐出を促進させることが可能になる。
【0043】
第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、何れもグレーズ処理が施されており、表面に氷の膜が形成されている。このため、容器3の吐出口3aでアイスプラグ8が固相から液相に転じて第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5が順次地下水9に浸水し始めても、膨潤が始まるまでには適度な遅延が生じる。このため、容器3の吐出口3aが膨潤した充填材によって詰まってしまう不具合が回避される。吐出口3aの詰まりが生じないため、容器3に装填されていた充填材は、その全量が吐出口3aから外部に吐出される。外部の地下水9に浸った第1の膨潤遅延充填材4および第2の膨潤遅延充填材5は、上述の遅延を経て膨潤する。これにより、ボーリング孔(掘削孔)1が能率よく充填材で埋め戻しされる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、以下の効果が奏される。
(1)アイスプラグ8は溶けて液相である水となるだけであり、掘削孔1内に有機質の不純物を残存させることなく、掘削孔内に確実にベントナイトを吐出でき、掘削孔を閉塞可能である。
(2)容器3の吐出口3aの閉塞とその解除は、アイスプラグ8における固相から液相への自然な相転移によって、何等の機構部等を用いずに行われるため、容器3の有効容積が機構部等によって損なわれることがない。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 ボーリング孔(掘削孔)
2 ダンプベイラー
3 容器
3a 吐出口
3b アイスプラグ形成領域
3c 装填部
4 第1の膨潤遅延充填材
5 第2の膨潤遅延充填材
6 昇降装置(搬送部)
7 連通孔
8 アイスプラグ
9 地下水
10 蓋体
31 アイスプラグ部
41 充填材
42 氷の膜
50 液体窒素
60 水
図1
図2
図3