(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126243
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】導電性フィルム及びそれを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/01 20060101AFI20220823BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220823BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220823BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B32B15/01 H
B32B7/022
H01B5/14 Z
C23C14/14 G
C23C14/14 B
C23C14/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024197
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】押切 孝仁
【テーマコード(参考)】
4F100
4K029
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AB10C
4F100AB10E
4F100AB17B
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK25E
4F100AK41D
4F100AK42A
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
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4F100BA10E
4F100CA02D
4F100CB05E
4F100CC00D
4F100EH46D
4F100EH66B
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4F100GB41
4F100JG01
4F100JG01E
4F100JG10E
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4F100JL00
4F100JL09
4F100JL13E
4F100JL14E
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA03
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4K029FA05
4K029GA03
5G307GA06
5G307GB02
5G307GC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラスチックフィルムと金属蒸着層との密着性に優れ、長期間高温高湿下に保管した後も、良好な電気剥離性を有する導電性フィルム及びそれを用いた積層体を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム1の少なくとも片面に銅蒸着層2、アルミニウム蒸着層3およびコーティング層4をこの順に有する導電性フィルム7であって、コーティング層4は樹脂と硬化剤から得られる構造とを有し、コーティング層4上に導電性支持体6としてアルミニウム基材を配置し、導電性フィルム7と導電性支持体6に5Vの電圧を印加した場合に導電性フィルム7と導電性支持体6との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である導電性フィルム7。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に銅蒸着層、アルミニウム蒸着層およびコーティング層をこの順に有する導電性フィルムであって、コーティング層は樹脂と硬化剤から得られる構造とを有し、
該コーティング層上に導電性支持体としてアルミニウム基材を配置し、該導電性フィルムと該導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である導電性フィルム。
【請求項2】
コーティング層が、ポリエステル樹脂とヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤から得られる構造とを有し、コーティング層の厚さが100nm以上、200nm以下である請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
65℃、90%RHの条件下に500時間曝した後のコーティング層面の表面抵抗値がE+8Ω/□以下である請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の導電性フィルムのコーティング層上に、電気剥離性粘着層および導電性支持体が積層されてなる積層体。
【請求項5】
導電性フィルムと導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である請求項4に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムおよびそれを用いた積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造工程等において、歩留まり向上のためのリワークや、使用後に部品を分解して回収するリサイクル等に関する要望が増している。このような要望に応えるべく、電子部品製造工程等で部材間を接合するうえで、一定の接着力とともに一定の剥離性をも伴った両面粘着シートが利用される場合がある。
【0003】
接着力と剥離性を実現する両面粘着シートとして、接着剤層に電圧を印加することにより剥離する電気剥離用粘着剤組成物からなる電気剥離型粘着剤層を備える粘着シート(電
気剥離型粘着シート)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような粘着シートは、電気剥離型粘着剤層のみからなってもよいが、取扱い性や流
通性を考慮すると、基材を備える粘着シートであることが好ましい。
【0006】
また、電気剥離型粘着剤層に電圧を印加するためにこの基材は導電性を有する必要が
あるが、例えば基材として金属箔を用いた場合には、粘着シートの打ち抜き加工時にバリ
が発生しやすくなる。このようなバリが存在すると、金属箔と被着体とが短絡し、電気剥
離型粘着剤層に電圧を印加できなくなる恐れがある。
【0007】
したがって、電気剥離型粘着シートに用いる基材としては、例えばプラスチックフィルムなどの基材の上に、金属蒸着薄膜などの導電層を形成した基材を用いることが好ましい。
【0008】
しかし、このような構成では、プラスチックフィルムと金属蒸着層との密着不足により、電気剥離型粘着層剥離の際にプラスチックフィルムと金属蒸着層との間で剥離する恐れがある。
【0009】
また、長期間放置した後においても剥離する必要がある為、温湿下に長期間保管した後も導電性を有し、電圧印加した場合に良好に電気剥離型粘着剤層と剥離する導電性フィルムが望まれていた。
【0010】
従って、本発明の目的は、プラスチックフィルムと金属蒸着層との密着性に優れ、長期間、温湿下に保管した後も良好な電気剥離性を有する導電性フィルム及びそれを用いた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、
(1)プラスチックフィルムの少なくとも片面に銅蒸着層、アルミニウム蒸着層およびコーティング層をこの順に有する導電性フィルムであって、コーティング層は樹脂と硬化剤から得られる構造とを有し、
該コーティング層上に導電性支持体としてアルミニウム基材を配置し、該導電性フィルムと該導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である導電性フィルム。
(2)コーティング層が、ポリエステル樹脂とヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤から得られる構造とを有し、コーティング層の厚さが100nm以上、200nm以下である上記(1)に記載の導電性フィルム。
(3)65℃、90%RHの条件下に500時間曝した後のコーティング層面の表面抵抗値がE+8Ω/□以下である上記(1)または(2)に記載の導電性フィルム。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の導電性フィルムのコーティング層上に、電気剥離性粘着層および導電性支持体が積層されてなる積層体。
(5)導電性フィルムと導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である上記(4)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温高湿下に長時間曝しても、良好な密着性、導電性、電気剥離性を保持する導電性フィルム及びそれを用いた積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】導電性フィルムに電気剥離性粘着層、および導電性支持体を積層した積層体の一例の層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に銅蒸着層、アルミニウム蒸着層およびコーティング層をこの順に有する導電性フィルムであって、コーティング層は樹脂と硬化剤から得られる構造とを有し、
該コーティング層上に導電性支持体としてアルミニウム基材を配置し、該導電性フィルムと該導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下である。
【0015】
本発明の導電性フィルムにおいて、プラスチックフィルムは、コーティング及び蒸着加工適性を有していれば、特に種類を限定する必要はない。プラスチックフィルムの代表的な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン2.6ナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、6ナイロン、12ナイロンなどの脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどや、これらの重合体と他の有機物との共重合体などからなるフィルムやシートがある。これらフィルムの中で、加工適性及び強靱性、耐熱耐寒性、耐化学薬品性等を考慮した場合、本発明の導電性フィルムにおいて、プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムであることが好ましい。
【0016】
プラスチックフィルムは、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤などを含有してもよい。
【0017】
プラスチックフィルムの厚さは、特に限定されないが、蒸着加工等の機械加工適性を考慮した場合、6~100μmであることが望ましい。
【0018】
プラスチックフィルムは、その表面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、イオン処理、アンカーコート等の表面改質処理が施されていてもよい。後述の銅蒸着層とプラスチックフィルムの長時間の温湿下後の密着性、および製造時のコストの観点から、表面改質処理がプラズマ処理であることが好ましい。プラズマ処理の方法としては、基材フィルムを連続的に走行させながらプレーナーマグネトロン方式のプラズマ処理電極によりプラズマ処理を行う方法が好ましい。
【0019】
本発明の導電性フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に銅蒸着層を有する。銅蒸着層の付着量は、5ng/cm2以上、20ng/cm2以下であることが好ましい。銅蒸着層の付着量が5ng/cm2以上であると、後述するアルミニウム蒸着層との十分な密着が得られやすくなる。また、銅蒸着層の付着量が20ng/cm2以下であると工業生産性が向上する。
【0020】
銅蒸着層の付着量の測定方法は、導電性フィルムを幅10cm、長さ10cmに切断したカットサンプルを作成し、カットサンプルを硝酸20mlに24時間浸漬した後、得られた溶液の銅の吸光度(324.8nm)を原子吸光分光光度計(島津製作所社製AA-6300タイプ)で測定して、銅蒸着層の付着量を算出する。4枚のカットサンプルを使用して得られた値の平均値を銅蒸着層の付着量(ng/cm2)とする。銅蒸着層の付着量を上述の範囲にする方法としては、特に、限定されないが、例えば、銅を含有した塗布液をプラスチックフィルムにコーティングした後、溶媒を除去する方法、銅を含有した液をスプレーによりプラスチックフィルムに噴霧する方法、銅をプラスチックフィルムにブラスト処理する方法、真空雰囲気中で、銅をスパッタリングする方法などがあげられる。プラスチックフィルムに銅蒸着層を作製した後、巻き取り、その後、後述するアルミニウム蒸着層を設けても良いし、プラスチックフィルムを巻き出した後、銅蒸着層を作製し、そのままインラインでアルミニウム蒸着層を設けても良い。プラスチックフィルム面の付着ガス、水蒸気、オリゴマー、異物などを除去、清浄化し、プラスチックフィルム表面に銅蒸着層を作製する観点、及びコスト面から、真空雰囲気中で、プラスチックフィルムを巻きだした後、銅のスパッタリングを行い、銅蒸着層を形成した後、連続的にアルミニウム蒸着層を設ける方法が好ましい。銅蒸着層をスパッタリング行う方法としては、プレーナー型のマグネトロン電極の材質に、銅を用いて、電極表面上に強い磁界を発生させながら、プラズマ雰囲気下で銅をインラインでプラスチックフィルムム上にスパッタすることが、好ましい。
【0021】
本発明の導電性フィルムは、アルミニウム蒸着層を有する。アルミニウム蒸着層の形成方法は、銅蒸着層を形成後に連続して形成されることがコスト的に好ましく、銅蒸着層を形成後、連続して、真空雰囲気下で、アルミニウムを蒸発させ、プラスチックフィルムに蒸着させる方法がより好ましい。
【0022】
アルミニウム蒸着層の厚さは、30nm以上、200nm以下であることが好ましい。アルミニウム蒸着層の厚さが、30nm以上であると十分な導電性が得られやすくなり、電気剥離性が向上しやすくなる。また、アルミニウム蒸着層の厚さが200nm以下であると、蒸着加工適性が向上し、コストを抑制しやすくなる。アルミニウム蒸着層の厚さは、導電性フィルムを断面方向にミクロトームを用いて透過型電子顕微鏡用の小片を取り出し、透過型電子顕微鏡(TEM、メーカー:日本電子(株)製、タイプ名:JEM-10111、加速電圧100V、倍率200,000倍)を用いて、前記小片の断面を観察して得られたTEM観察画像のアルミニウム蒸着層の厚さを3か所測定し、得られた値の平均値をアルミニウム蒸着層の厚さとする。
【0023】
本発明の導電性フィルムは、コーティング層を有する。コーティング層は、例えば、樹脂と硬化剤の反応により形成することができる。コーティング層の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。中でも、硬化剤との反応効率が高く、強固なコーティング層を形成しやすい点から、コーティング層の樹脂が、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0024】
硬化剤としては、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤などが挙げられる。中でも、長期間の温湿下保管に対する耐久性、およびポットライフの面から、硬化剤がヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという場合がある)硬化剤であることが好ましい。
【0025】
コーティング層の形成方法としては特に限定されないが、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、ダイコート法及びバーコート法などの方法を用いることが出来る。
【0026】
コーティング層の厚さは、100nm以上、200nm以下であることが好ましい。コーティング層の厚さが100nm以上であると、65℃、90%RHの条件下に500時間曝した後のコーティング層面の表面抵抗値がE+8Ω/□以下になりやすい。また、コーティング層の厚さが、200nm以下であると、表面抵抗値がE+8Ω/□以下となりやすい。
【0027】
本発明の導電性フィルムは、65℃、90%RHの条件下に500時間曝した後のコーティング層面の表面抵抗値がE+8Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値がE+8Ω/□以下であることにより、十分な導電性が得られやすくなる。表面抵抗値は小さいほど好ましいため、下限は特に限定されないが、通常、E+5Ω/□であり、より好ましくはE+1Ω/□である。表面抵抗値を上記範囲とするための手段としては、例えば、コーティング層の厚さを上記範囲にする方法が挙げられる。
【0028】
本発明の積層体は、本発明の導電性フィルムのコーティング層上に、電気剥離性粘着層および導電性支持体が積層されてなる。
【0029】
本発明の積層体における導電性支持体の例としては、アルミニウム、銅、銀、金等の金属、これら金属の合金、導電性金属酸化物(酸化インジウムスズ等)からなる箔(膜厚100μm未満)や板(膜厚100μm以上)等、これら金属又は合金が混合されるかコーティングされた繊維を含有した布、これら金属又は合金を含有した樹脂シート、これら金属、合金又は導電性金属酸化物から成る層を備えた樹脂板などが挙げられる。
【0030】
本発明の積層体において、電気剥離性粘着層とは、アクリル系粘着剤又はポリエステル系粘着剤と電解液とを含む電気剥離性粘着剤組成物(以下、単に粘着剤組成物という)のことをいう。アクリル系粘着剤及びポリエステル系粘着剤としては、電位剥離性粘着層が粘着性を有する限り、特に限定されない。これら粘着剤は新たに合成した粘着剤を使用してもよく、市販の粘着剤を使用してもよい。
【0031】
本発明の導電性フィルムおよび本発明の積層体は、導電性フィルムと導電性支持体に5Vの電圧を印加した場合に該導電性フィルムと導電性支持体との密着強度が、65℃、90%RHの条件下に500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても5.0N/25mm以下であることが好ましい。500時間曝す前と曝した後のいずれにおいても密着強度が5.0N/25mm以下であることにより、電気剥離性粘着層以外での剥離が発生しにくくなる。密着強度の下限は、特に限定されないが、通常2.0N/25mm程度である。本発明において、密着強度は、後述の[評価方法]の1)剥離性(密着強度の測定方法)の項に記載する条件で測定する。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
[積層体の作製方法]
積層体の作製方法を示す。
【0034】
(アクリル系ポリマーの調製)
n-ブチルアクリレート(三菱化学社製)91質量部、アクリル酸(三菱化学社製)8質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(日本触媒社製)1質量部とからなるモノマー混合物と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、純正化学社製)0.2質量部と、溶剤(酢酸エチル:トルエン(質量比)=9:1)186質量部とを、窒素気流中、85℃で5時間重合反応させてアクリル系粘着剤を得た。得られたアクリル系粘着剤は、樹脂分(アクリル系ポリマー:質量平均分子量約80万)を35質量%含み、7000mPa・sの粘度を有していた。
【0035】
(粘着材組成物の調製)
上記アクリル系粘着剤100質量部(アクリル系ポリマー35質量部)に、イソシアネート系架橋剤としてコロネートL-55E(日本ポリウレタン社製)2.0質量部と、イオン性液体A(1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学社製);イオン導電率1.8×10-3S/cm)3.5質量部と、移動促進剤としてポリエチレングリコール(PEG、平均分子量400、第一工業製薬社製)3.5質量部とを添加し、常温で10分間攪拌し、脱泡することで粘着剤組成物を得た。
【0036】
上記粘着剤組成物を、導電性フィルムのコーティング層上にコートし、100℃で2分間乾燥させることで、導電性フィルムのコーティング層上に層の厚さ40μmの電気剥離性粘着剤層を形成した。得られた電気剥離性粘着層上に導電性支持体としてアルミニウム基材(100μm メーカー名:竹内金属箔工業(株)、タイプ名:A1N30H-O)に貼り合わせ、導電性フィルムのプラスチックフィルム上を2kgゴムローラーの自重で5往復させ、電気剥離性粘着層とアルミニウム基材を密着させた後、40℃の雰囲気下、3日間保管し、積層体を得た。
【0037】
〔評価方法〕
1)剥離性(密着強度の測定方法)
積層体を幅25mm、長さ300mmにカットして試験片を得た。得られた試験片を65℃、90%RHの条件下に500時間保管した試験片と保管前試験片の導電性フィルムとアルミニウム基材にそれぞれ電極を取り付け、直流電源(メーカー名:エー・アンド・デイ、タイプ名:AD-8724D)を用いて5Vの電圧、2.5Aの電流を3分間印加した。万能型引張試験機(メーカー名:オリエンテック社製、タイプ名:テンシロンUTM-4-100)を用いて、上記積層体の電気剥離性粘着層とアルミニウム基材との密着強度を剥離角度180°、引張速度300mm/sで測定した。得られた密着強度が5.0N/25mm以下のものの剥離性を○、5.0N/25mmを超えるものの離性を×とした。
【0038】
2)表面抵抗値
低抵抗率計((株)三菱ケミカルアナリテック製 ロレスタAX MCP-T370)を用い、直流4端子法にて導電性フィルムのコーティング層面の表面抵抗値を測定した。65℃、90%RH、500時間保管後の表面抵抗値及び保管前の表面抵抗値を測定した。表面抵抗値がE+8Ω/□以下の時、判定を〇、表面抵抗値がE+8Ω/□を超えた場合、判定を×とした。
【0039】
3)銅蒸着層の付着量測定方法
導電性フィルムを幅10cm、長さ10cmに切断したカットサンプルを作成し、カットサンプルを硝酸20mlに24時間浸漬した後、得られた溶液の銅の吸光度(324.8nm)を原子吸光分光光度計(島津製作所製AA-6300タイプ)で測定して、付着量を算出した。これらの算出を異なる4枚のカットサンプルを使用して行い、得られた値の平均値を付着量(ng/cm2)とした。
【0040】
4)アルミニウム蒸着層の厚さ、コーティング層の厚さの測定方法
導電性フィルムを断面方向にミクロトームを用いて透過型電子顕微鏡用の小片を取り出し、透過型電子顕微鏡(TEM、メーカー:日本電子(株)製、タイプ名:JEM-10111、加速電圧100V、倍率200,000倍)を用いて、前記小片の断面を観察してTEM観察画像を取得した。得られたTEM観察画像のアルミニウム蒸着層の厚さを3か所測定し、得られた値の平均値をアルミニウム蒸着層の厚さ、コーティング層の厚さを測定し、得られた値の平均値をそれぞれの層の厚さとした。
【0041】
〔実施例1〕
東レ(株)製厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(タイプ名:T62)の片面に連続式真空蒸着装置を用いてプラズマ放電下で、10ng/cm2の銅蒸着層を形成した後、連続して、層の厚さが49nmとなるようにアルミニウム蒸着層を形成し、アルミニウム蒸着フィルムを得た。このようにして得られたアルミニウム蒸着フィルムのアルミニウム蒸着層上にポリエステル樹脂(大日精化社製PET-2)とHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系硬化剤(大日精化社製VMD硬化剤)との混合物を、グラビアコーターを用いてコーティング層の厚さが、150nmになるようにコーティングしてコーディング層を形成し、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例2〕
コーティング層の厚さを、100nmに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
〔実施例3〕
コーティング層の厚さを、200nmに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
〔比較例1〕
銅蒸着層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
〔比較例2〕
コーティング層の厚さを95nmに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例3〕
コーティング層の厚さを210nmに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例4〕
コーティング層を作製しなかった以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムを用いて、上記[積層体の作製方法]に基づいて、積層体を作製した。得られた導電性フィルムの表面抵抗値、および積層体の剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0048】