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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126311
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】カートの移動補助装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20220823BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B62B3/00 D
B62B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024312
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000145068
【氏名又は名称】株式会社寺岡精工
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】飯田 竜太
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA02
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
3D050KK11
(57)【要約】
【課題】自律走行カートを手動で簡易に移動させることのできる移動補助装置を提供する。
【解決手段】移動補助装置12は、駆動装置により回転駆動する駆動輪71、回転自由な補助輪72、及び、当該駆動輪71と補助輪72が取り付けられたフレーム103を備えたカート1を移動させるための移動補助装置であって、カート1をフレーム103の底面側から持ち上げ、駆動輪71を走行面から浮かせる持上部130と、移動補助装置12を走行させるための車輪150と、を有する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により回転駆動する駆動輪、回転自由な補助輪、及び、当該駆動輪と補助輪が取り付けられたフレームを備えたカートを移動させるための移動補助装置であって、
前記カートを前記フレームの底面側から持ち上げ、前記駆動輪を走行面から浮かせる持上部と、
前記移動補助装置を走行させるための車輪と、を有する、
カートの移動補助装置。
【請求項2】
前記持上部によって持ち上げられた前記フレームを、前記駆動輪を走行面から浮かせた状態に支持する支持部、をさらに有する、
請求項1記載のカートの移動補助装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記フレームを支持する支持面と、当該支持面の幅方向の両側縁部から上方に延び出したフランジと、を備える、
請求項2記載のカートの移動補助装置。
【請求項4】
前記持上部と前記支持部が設けられた基体部と、
前記車輪を備えると共に、前記基体部が直角に連結し、内側に前記カートを案内する一対の棒状の側端部と、をさらに有し、
前記側端部は、前記基体部が連結する箇所を挟んで、前記カートが案内される側の一端部と、前記カートが案内されない側の他端部とで構成され、当該一端部が当該他端部よりも長く設けられている、
請求項2又は3記載のカートの移動補助装置。
【請求項5】
前記持上部は、前記基体部の略中央に設けられ、
前記支持部は、前記持上部を挟んだ両脇に設けられている、
請求項4記載のカートの移動補助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートを移動させるための移動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫では慢性的な人手不足の問題が生じており、自律走行カートの需要が高まっている。
しかし、自律走行カートにおいては、故障時やバッテリー残量無しなどで駆動輪が動かなくなったとき、手動で動かそうにも駆動部の抵抗(ギヤやモーターの抵抗)があるためフリーの車輪だけのときよりも重たく、移動が困難である。
そこで、特許文献1に記載の無人搬送台車では、駆動輪を路面から浮かせ、フリーの車輪だけで走行させられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-185225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、自律走行カートごとに駆動輪の昇降機構を設けるとコストがかかるし、機構が複雑化する。
【0005】
そこで本発明は、自律走行カートを手動で簡易に移動させることのできる移動補助装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るカートの移動補助装置は、駆動装置により回転駆動する駆動輪、回転自由な補助輪、及び、当該駆動輪と補助輪が取り付けられたフレームを備えたカートを移動させるための移動補助装置であって、前記カートを前記フレームの底面側から持ち上げ、前記駆動輪を走行面から浮かせる持上部と、前記移動補助装置を走行させるための車輪と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る移動補助装置によって移動させるカートの一例を示す外観斜視図である。
図2】上記カートの変形例を示す外観斜視図である。
図3】上記ピッキングシステムの構成を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る移動補助装置を示す外観斜視図であって、(a)正面側・左側面側から見た斜視図、(b)背面側・左側面側から見た斜視図、である。
図5】上記移動補助装置の側端部の間に上記カートを収めた状態を示す外観斜視図である。
図6】上記移動補助装置により上記カートを支持した状態を示す外観斜視図である。
図7】(a)上記移動補助装置の側端部の間に上記カートを収めた状態を示す左側面図、(b)上記移動補助装置により上記カートを支持した状態を示す左側面図、である。
図8】ピッキングシステムにおいて、上記カートの走行経路の例を示す概念図である。
図9】上記移動補助装置を不要としたカートの内部機構の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る移動補助装置について、図を参照して説明する。
本実施形態に係る移動補助装置は、商品等のピッキング作業を補助するピッキングシステムにおいて、商品を搬送するカート(自律走行カート)を移動させるための専用装置である。
●ピッキングシステムの概要
ピッキングシステムは、多種類の商品が収容されている倉庫内において、商品を載せて搬送するためのカートを走行させ、倉庫からのピッキング作業を補助するシステムである。ピッキングシステムは、複数のカートを管理し、採集すべき商品の種類と数の情報を、複数のカートに割り当てる。また、ピッキングシステムは、各カートに収容すべき商品を示す情報、すなわちピッキング作業指示を、ピッキング作業者に伝達する。ピッキングシステムは、電気的な駆動部を有し自律的に走行する自律走行カートと、作業者が手動で移動させる手動カートと、を含んでよい。
【0009】
●自律走行カートの一例
本実施形態に係る移動補助装置を使用可能なカートの一例について説明する。
図1に示されるように、カート1は、商品を搬送する装置である。カート1は、自身に搭載される制御部20又は上位装置からの指示に基づいて自律走行を行う。以降の説明において、カート1による搬送方向を+Y方向、カート1の幅方向であって搬送方向に直交する方向を+X方向、鉛直方向を+Z方向とする。
なお、図2に示すカート1Aは、移動補助装置を使用可能なカートの他の一例であるが、サブディスプレイ51を備えるほかはカート1と同様に構成されており、適宜参照することがある。
【0010】
カート1は、底面に複数の車輪を有し、車輪の上方において上下2段の平板が略中央の支柱で連結された形状の装置である。当該支柱の下部には、カート1を制御する制御部20および各機能部に印加するバッテリーが積載されている。カート1は、商品を計量するはかり部10(10a、10b、10c、10d)を複数有する。本実施形態においては、上段にはかり部10a、10b、が進行方向前後に並設され、下段にはかり部10c、10dが制御部20を挟んで進行方向前後に配設されている。
【0011】
カート1は、はかり部10を複数有する。本実施形態においては、はかり部10は4個であり、それぞれ独立して計量可能である。はかり部10の上面は平板状になっており、それぞれにコンテナが載置される。コンテナは、例えば、各面が複数の細長い平板と蝶番とが連結されて構成される、折り畳み可能なコンテナ、所謂折り畳みコンテナである。コンテナは、上方が開口した箱状の部材であり、コンテナの内部にピッキングされた商品が収容される。はかり部10は、コンテナに収容された商品をコンテナごとに計量する。はかり部10は、コンテナの重量をあらかじめ記憶しておき、風袋引き処理をすることで商品自体の重量を計測してもよい。
【0012】
なお、本実施形態に係るカート1は、はかり部10が上下2段に構成され、各段において進行方向に沿って2個のはかり部10が設けられているが、はかり部10はカート1の幅方向に沿って複数、例えば2個設けられていてもよい。また、コンテナを複数のはかり部10にまたがるように載置することで、各はかり部10に1個ずつコンテナを載置する使用形態に比べて大容量のコンテナを搬送することもできる。
【0013】
カート1の上段であって、進行方向後部には、作業者がカート1に対する各種操作を行う作業台110が設けられている。作業台110には、主として、作業者がカート1を手動で移動させる際に把持するグリップ101、コンテナに貼付するラベルを発行する印字機構部41、タッチパネルディスプレイ5、バーコードを読み取るスキャナ61、物理的なボタン操作部7等が配設されている。
【0014】
作業台110の下面側には、図3に示す印字機構部41が保持されており、当該印字機構部41は、ラベルロールから引き出されるラベルに印字を行う。印字されたラベルは、カート1の側方から排出される。なお、コンテナ等当該ラベルの貼付対象物にESL(Electric Shelf Label、電子棚札)を連結する態様の場合には、印字機構部41を有さない構成であってもよい。この場合、ピッキングシステム100がESLの表示内容を変更する処理を行う。
【0015】
タッチパネルディスプレイ5は、図3に示すように液晶表示器5aとタッチパネル5bが互いに積層された構造となっており、同一面でデータの表示と入力とができるようになっている。液晶表示器5aは各種データの表示を行う。タッチパネル5bは操作者の指が触れると、触れた位置を検出し、検出した位置に応じた入力を受け付ける。液晶表示器5aは、作業者に対して、ピッキングすべき商品の情報又はカート1の状態等を表示する。スキャナ61は、商品、倉庫内の棚、コンテナ、ラベル等のバーコードを読み取り可能である。スキャナ61は、ワイヤレスのハンディスキャナ61aの他、作業台110の上方に固定され、作業台110上の一部を読取領域とする固定スキャナ61bを含んでいてもよい。固定スキャナ61bは、例えば印字機構部41により発行されるラベルを下方にかざすことで、バーコードを読み取ることができる。
【0016】
カート1の底面には、駆動輪71と、複数の回転自由な補助輪72が配設されている。カート1の進行方向に沿って、前方と後方に補助輪72が設けられ、その間に駆動輪71が設けられている。
駆動輪71は、カート1の底面、進行方向略中央部であって、制御部20の下方に配設されている。駆動輪71は、幅方向に対をなして並設され、所定の駆動装置により、それぞれが独立して回転駆動する。駆動輪71は、制御部20により制御され、カート1を自律走行させる。
複数の補助輪72は、カート1の底面周縁部に配設され、カート1を支持するとともに、カート1の移動に伴って回転する。なお、本実施形態では、補助輪72は計4つ設けられているが、駆動輪71を挟んで進行方向の前後に設けられている限り、その数は問わない。
【0017】
また、カート1は、棒状のサインポール102を有する。サインポール102は、進行方向後部であって左側方に配設され、上方に伸び出ている。サインポール102は、1又は複数の色で明滅可能であり、カート1の状態や異常の有無を作業者に報知する報知部の例である。
【0018】
また、カート1の下方には、カート1全体を外側から囲うフレーム103が設けられている。フレーム103は少なくとも、所定の部材を介在させて駆動輪71と一体的に構成されており、フレーム103が持ち上げられると、駆動輪71が走行面から離間する。また、フレーム103は、カート1の後部側においては、移動補助装置12が挿し込まれるように&#21085;き出しになっているのに対し、カート1の前部側においては、接触センサ91によって隠れている。これにより、移動補助装置12の使用時、移動補助装置12の取付位置が分かりやすいし、間違ってカート1の前部側に取り付けられるようなこともない。
【0019】
カート1の前方には、図1乃至図3に示されるように、少なくとも進行方向における前方の物体を検知する非接触センサ81、82および接触センサ91が配設されている。なお、非接触センサ82については図示を省略しているが、説明の便宜のために符号を付している。
非接触センサ81は、カート1の前方および側方の一部にある物体を検知するセンサである。非接触センサ81は、例えばレーザレンジファインダおよび超音波センサを併用して構成されている。この構成によれば、黒色の壁、ガラス、および鏡であっても検知することができる。非接触センサ81は、例えばカート1が走行可能な経路を認識し、カート1の走行可能なマップを生成するために用いることができる。また、非接触センサ81は、前方の障害物や人等を非接触で検知し、当該検知に応じて駆動輪71を減速又は停止させる。
【0020】
非接触センサ82は、平面上の物体を検知可能な2Dセンサであり、接触センサ91を内蔵するバンパーの下方に設けられている。この非接触センサ82は、非接触センサ81と異なり、マップの生成には用いられないが、走行面に近い高さの平面で前方の障害物や人等を非接触で検知することができる。これにより、カート1が障害物等に衝突したり、駆動輪71や補助輪72が障害物等を巻き込んだりするのを防ぐことができる。なお、この非接触センサ81についても、その検知結果に応じて駆動輪71を減速又は停止させてもよい。
【0021】
接触センサ91は、カート1前部のバンパーに内蔵され、バンパーの物体への接触を検出するセンサである。接触センサ91は、例えばスイッチセンサである。接触センサ91の検知に応じて駆動輪71を停止させる。接触センサ91によっても、カート1の衝突による事故を防止することができる。
【0022】
図3は上記カート1の構成を示すブロック図である。カート1は、制御部20と、はかり部10と、印字部40と、操作部50と、読取部60と、駆動部70と、物体検知部80と、衝突検知部90と、を備えている。はかり部10はロードセル11を備え、商品の重量を計量する。印字部40は印字機構部41を有している。印字機構部41は、ラベルの印字を行い、印字したラベルをラベル発行部から排出(発行)する。操作部50はボタン操作部7およびタッチパネル5bにより実現される。読取部60はスキャナ61を備え、バーコード等の情報を読み取る。
【0023】
制御部20は、CPU21と、ロードセル制御部22と、印字制御部23と、操作制御部24と、表示制御部25と、ROM26と、RAM27と、読取制御部28と、駆動制御部29と、物体検知制御部30と、衝突検知制御部31と、通信処理部32と、を備えている。CPU21はバスを介して制御部20が備える各部と相互に接続されている。
【0024】
CPU21は、ROM26が記憶する制御プログラムとRAM27が記憶する各種情報を読み出し、読み出した制御プログラムと各種情報とに基づいて各部の制御を行う。またCPU21は、必要な情報をRAM27に記憶させる。ROM26は、例えば、CPU21において実行される各種プログラム等の各種情報を記憶している。RAM27は、CPU21が用いる情報を記憶する一時記憶領域である。またRAM27は、各種ファイルを記憶する記憶手段である。
【0025】
なお、CPU21は、操作制御部24を介してタッチパネル5bおよびボタン操作部7に入力される情報を取得する入力制御部でもある。タッチパネル5bとボタン操作部7は、それぞれ、入力手段の例である。
【0026】
また、CPU21は、タッチパネル5bに表示する下記する画面G1の表示内容を変更する出力制御部でもある。出力制御部は、オペレータに伝達する種々の情報を出力する構成であり、上述の通り液晶表示器5aを制御して情報を表示する構成に代えて、又は加えて、音等のその他の方法を用いてもよい。また、出力制御部は、サインポール102の明滅態様の制御を行ってよい。
【0027】
ロードセル制御部22は、はかり部10が備えるロードセル11の制御を行う。印字制御部23は印字部40の制御を行う。操作制御部24は、タッチパネル5bとボタン操作部7の制御を行う。タッチパネル5bは、液晶表示器5aに表示された下記する画面等の所定部分をタッチすることで、所望の操作を指示する。表示制御部25は、液晶表示器5aの制御を行う。読取制御部28は、読取部60が備えるスキャナ61の制御を行う。駆動制御部29は、駆動部70が備える駆動輪71の制御を行う。物体検知制御部30は、物体検知部80が備える非接触センサ81、82の制御を行う。衝突検知制御部31は、衝突検知部90が備える接触センサ91の制御を行う。
【0028】
通信処理部32は、外部装置と無線通信を行う機能部である。通信処理部32は、例えばネットワークNWを通じて管理装置2と情報の送受信を行う。管理装置2は、サーバ又はクラウドコンピュータ等の上位装置である。通信処理部32は、当該カート1に計画されている、積載される商品の識別情報、当該商品が収容される倉庫内の位置情報、すなわちレーン、棚、ならびに棚内における段および列の情報、ならびに積載される商品の量等の情報を受信する。また、通信処理部32は、当該カート1に計画されている走行経路を受信する。さらに、通信処理部32は、タッチパネル5bを介して入力される作業者の識別情報を管理装置2に送信してもよい。
なお、上述の情報の一部又は全部は、管理装置2が記憶し、カート1に送信する構成に代えて、カート1の制御部20に記憶されていてもよい。
【0029】
なお、作業者によって移動される手動カートは例えば、上述の自律走行式のカート1の構成から駆動制御部29、駆動部70および駆動輪71を除いて構成され、その他の構成はカート1と同様である。また、手動カートは、自律走行式のカート1の駆動制御部29又は駆動部70を無効化したものであってもよい。
【0030】
●自律走行カートの他の例
なお、上記したカート1は一例であって、本実施形態に係る移動補助装置12は他の例に係るカートについても広く使用可能である。
図2は、そのような他の実施例に係るカート1Aを示している。このカート1Aには、上段の進行方向側の端部にサブディスプレイ51が設けられている。このサブディスプレイ51は、進行方向側に表示面が配設されており、進行方向側から表示面を視認及び操作することができる。なお、サブディスプレイ51上で視認及び操作できる内容は、タッチパネルディスプレイ5と同様なものとすることができる。
【0031】
これにより、作業者がカート1Aの進行方向側に立って商品の積み下ろし等の作業をする際、サブディスプレイ51によって所定の内容の確認や操作を行うことができる。一方、タッチパネルディスプレイ5は、進行方向とは逆向きに表示面が配設されており、作業者が進行方向とは逆側で作業をする際には、当該タッチパネルディスプレイ5によって所定の内容の確認や操作を行うことができる。これにより、作業者はわざわざタッチパネルディスプレイ5側あるいはサブディスプレイ51側に回り込んでタッチパネルディスプレイ5あるいはサブディスプレイ51を確認したり操作したりする必要がなく、便利である。
なお、サブディスプレイ51が設けられている側で作業者が作業する際の利便性の向上から、サブディスプレイ51側にもスキャナ61を設けてもよい。
【0032】
●移動補助装置の構成
図4は、本実施形態に係る移動補助装置12を示している。
移動補助装置12は、カート1を部分的に持ち上げることによってカート1の駆動輪71を走行面から浮かせ、自律走行不能に陥るなどしたカート1を移動させるものである。
この移動補助装置12は、平面視H字状の本体120、カート1を持ち上げる持上部130、カート1をフレーム103により支持する支持部140、及び本体120に取り付けられた車輪150から構成される。
【0033】
本体120は、互いに平行な一対の側端部121、及び当該一対の側端部121を連結する基体部122によって構成される。
一対の側端部121と基体部122は、いずれも棒状の部材であり、押出成形した金属等からなる。
【0034】
一対の側端部121には、長さ方向の両端の下面側に車輪150が取り付けられている。
また、一対の側端部121の一端側の内側には、カート1の後部が案内されるようになっている。ここで、一対の側端部121は、カート1を挟み込むように案内するのに十分な長さを有しており、一対の側端部121の間に案内されたカート1が幅方向に抜け出ないようになっている。
【0035】
基体部122は、一対の側端部121に対して直角に設けられており、当該一対の側端部121を、その長さ方向の略中央部より僅かに端部側へ偏った位置において連結している。即ち、側端部121は、基体部122が連結する箇所を挟んで、カート1が案内される側の一端部と、カート1が案内されない側の他端部とで構成され、当該一端部が当該他端部よりも長く設けられている。これにより、いずれの側からカート1を案内するべきかが分かりやすいし、カート1を案内する側の長さを長くとっているので、側端部121の内側にカート1を案内したときに、カート1が移動補助装置12から外れたり、がたついたりしにくい。この基体部122は、側端部121と同様に棒状の部材であり、その長さは、カート1の幅と同等か、それよりも僅かに大きい。これにより、一対の側端部121の間にカート1を挟み込むように案内することができる。
【0036】
なお、本実施形態において、基体部122は、一対の側端部121を、その長さ方向の略中央部よりも僅かに端部側へ偏った位置において連結しているが、他の実施形態では、一対の側端部121を、その長さ方向の略中央部において連結してもよい。少なくとも、一対の側端部121の端部よりも中央側に寄った位置において、基体部122が一対の側端部121を連結している限り、持上部130によってカート1を持ち上げたり、支持部140上にカート1を支持したりした際に、一対の側端部121の一端側の車輪150が走行面から浮く(所謂ウィリーした状態となる)など、移動補助装置12がバランスを崩して不安定な姿勢となるのを防ぐことができる。
【0037】
基体部122の上面側には、持上部130と支持部140が設けられている。
持上部130は、カート1をフレーム103の底面側から持ち上げるための部材であり、矩形状からなる薄板状の部材によって構成され、基体部122の略中央に設けられている。この持上部130は、その長さ方向が側端部121の長さ方向と平行となるように基体部122上に設けられている。
【0038】
また、持上部130は、長さ方向の一端側に偏った位置で折曲しており、折曲によって短手側と長手側に分けられている。このうち、短手側はカート1のフレーム103の底面側に挿し込まれ、フレーム103を底面側から直接持ち上げる挿込部131を構成する。一方、長手側は、上面側から荷重がかけられ、折曲部を支点として当該荷重を梃の原理で挿込部131に伝達させる荷重付与部132を構成する。
このような持上部130では、折曲している箇所を支点として、その両端側の挿込部131と荷重付与部132が対蹠的に上下動する。
【0039】
なお、挿込部131は、移動補助装置12がカート1に後部から取り付けられた際、その表面をフレーム103の底面に当接させてフレーム103を支持するところ、その長さが当該当接するフレーム103の底面の長さに即したものとなっており、また、その傾きや位置も当該フレーム103の底面にちょうど当接するように設計されている。これにより、接触センサ91が前方に設けられているカート1の前部側から移動補助装置12を取り付けようとしても、挿込部131がフレーム103の底面側に届かず、カート1の前部側に移動補助装置12を取り付けて使用してしまうという誤用を防ぐことができる。
また、持上部130の荷重付与部132と基体部122の間には、適宜の厚みを有するゴムやバネなどの弾性体を介在させてもよい。これにより、荷重付与部132に荷重をかけた際、荷重付与部132が下がりすぎ、走行面に当接して走行面を傷めたり、荷重付与部132が折れたりするのを防ぐことができる。
【0040】
支持部140は、持上部130によって持ち上げられたカート1のフレーム103を、カート1の駆動輪71を走行面から浮かせた状態に支持する部分であり、持上部130挟んだ両脇であって、基体部122の両端側に一対、設けられている。
この支持部140は、基体部122上から直角に立設した一対の立設部141と、一対の立設部141の上端を連結し、フレーム103を支持する支持面142、当該支持面142の幅方向の両側縁部から上方に僅かに延び出したフランジ143から構成される。
【0041】
支持面142の幅は、支持するフレーム103の幅よりも僅かに大きく、これにより、一対のフランジ143の間に挟まれた支持面142上にフレーム103を支持することができる。また、支持面142の幅は、フレーム103の幅よりも大きすぎないことで遊びが小さく、移動補助装置12によりカート1を支持し、移動補助装置12ごとカート1を移動させる際に、カート1がぐらついたりすることがない。
支持部140の支持面142上にカート1のフレーム103が支持されると、フランジ143によってフレーム103の移動が規制され、フレーム103が支持部140上からずり落ちるのを防ぐことができる。
【0042】
車輪150は所謂フリーローラであり、移動補助装置12を動かすと、これに応じて走行面上を回転する。
なお、本実施形態においては、車輪150をフリーローラとしたが、他の実施形態においては、所定の駆動装置によって駆動する駆動輪とすることもできる。
また、車輪150には、車輪150の回転を規制するためのロック機構などが設けられていてもよい。ロック機構により、移動補助装置12上にカート1を持ち上げる際など、適宜に車輪150をロックすることで、不意に移動補助装置12が動いたりせず、安全に作業を行うことができる。
【0043】
●移動補助装置の使用例
図5乃至図7を参照して、移動補助装置12の使用例について説明する。
まず、図5及び図7(a)に示すように、カート1の後部側に移動補助装置12を用意し、一対の側端部121の間にカート1の後部を収める。このとき、フレーム103が移動補助装置12の基体部122に当接する程度に十分深く、カート1の後部を一対の側端部121の間に収める。これにより、持上部130の挿込部131は、フレーム103の下方に潜り込むように挿し込まれる。また、カート1の後部は、一対の側端部121の間に固定される。
【0044】
この状態から、図6及び図7(b)に示すように、作業者が荷重付与部132を踏むなどして荷重付与部132に荷重をかけると、折曲部を支点として、挿込部131が上方に持ち上がる。これにより、挿込部131の上面側がフレーム103の底面に当接し、さらに挿込部131はフレーム103を底面側から持ち上げ、カート1の駆動輪71を走行面から浮かせる。
さらに、持上部130によって持ち上げられたフレーム103は、支持部140側へ傾斜している挿込部131の上面を滑り落ち、支持部140の支持面142上に支持される。
【0045】
フレーム103の一部が移動補助装置12の支持部140上に支持され、カート1と移動補助装置12が一体となった状態では、カート1は、進行方向側の補助輪72のみによって走行面に当接し、駆動輪71と後部側の補助輪72が走行面から浮いた状態に傾斜している。
ここで、カート1のフレーム103は、支持部140のフランジ143によってカート1の進行方向に沿った移動を規制されており、移動補助装置12によってカート1を移動させる際にも支持部140上からずり落ちることがない。また、カート1の後部側の補助輪72が移動補助装置12の略中央にくるようになっており、重心が安定している。
作業者は、この状態でカート1を押して所望の場所に移動させることができる。
【0046】
なお、移動補助装置12によってカート1を所望の場所に移動させた後、カート1を移動補助装置12から降ろす際には、支持面142上のフレーム103を僅かに持ち上げ、フランジ143を乗り越えさせる。これにより、走行面から浮いていた駆動輪71と後部側の補助輪72が走行面に再び当接し、移動補助装置12をカート1から離すことができる。なお、このようにカート1を移動補助装置12から降ろす際、持上部130を踏むなどして下方に押し下げれば、梃の原理により、わずかな力でフレーム103を持ち上げてフランジ143を乗り越えさせることができる。
【0047】
以上の本実施形態に係る移動補助装置12によれば、カート1の後部を持ち上げることによって、カート1の略中央にある駆動輪71を走行面から浮かせ、進行方向の補助輪72と移動補助装置12の車輪150によってカート1を移動させることができる。
カート1ごとに駆動輪71を昇降させる機構を設けるとコストがかかるため、どのような機構を備えたカート1にも対応できる移動補助装置12を1台または複数台、使用することでコストを抑えつつ、自由にカート1を移動させられる。
【0048】
なお、本実施形態では持上部130によってフレーム103を持ち上げると共に、支持部140によって支持するものとしたが、駆動輪71を浮かせることができれば、フレーム103以外の他の部分を被持上部あるいは被支持部として持ち上げて支持するようにしてもよい。フレーム103とは別に、持上部130によって持ち上げると共に、支持部140によって支持する部分又は部材をカート1に設けてもよい。
【0049】
●倉庫内におけるカート走行の概要
図8に示すように、倉庫Wは、ピッキングエリアA10、充電エリアA1、オリコンエリアA2、ピッキング開始エリアA3、搬送エリアA4および保留エリアA5に大別される。各エリアは、カート1の作業内容上呼び分けているに過ぎず、物理的に区画されているものでなくてもよい。なお、各エリアは、開閉する扉などにより物理的に区画されていてもよい。
【0050】
充電エリアA1は、カート1のバッテリーに充電を行うエリアである。バッテリーは、カート1に搭載された状態で充電可能であってもよいし、カート1から取り外して充電してもよい。充電エリアA1は、カート1に搭載されているバッテリーを、蓄電されたバッテリーに交換する作業が行われるエリアであってもよい。カート1は、充電エリアA1からオリコンエリアA2に移動する。
【0051】
オリコンエリアA2は、カート1に空のコンテナを搭載するエリアである。空のコンテナは、オリコンエリアA2に、折り畳まれて複数積層して収容されている。オリコンエリアA2の作業者は、コンテナを組み立てて商品が収容できる形状に成形し、カート1のはかり部10に積載する。コンテナは、すべてのはかり部10に搭載されてもよいし、当該カート1のピッキング計画に基づいて、商品の積載が計画されているはかり部10にのみ搭載されてもよい。この場合、オリコンエリアA2において、カート1の液晶表示器5aに、当該カート1において積載が計画されているはかり部10の情報が表示されてもよい。この情報は、例えばタッチパネル5bの操作により表示される。また、カート1は、当該カート1がオリコンエリアA2に存在していることを認識して積載が計画されるはかり部10の情報を表示してもよいし、当該表示を促す操作子をタッチパネル5bに表示してもよい。コンテナが搭載されたカート1は、ピッキング開始エリアA3に移動する。
【0052】
ピッキング開始エリアA3は、ピッキングエリアA10の入口に区画されるエリアである。カート1は、ピッキング開始エリアA3を通ってピッキング作業を開始する。ピッキング作業者がカート1と併走しながらピッキング作業を行う態様においては、ピッキング作業者はピッキング開始エリアA3においてカート1との併走を開始する。ピッキング作業者がタッチパネル5b又はボタン操作部7によりログイン処理を行うと、ピッキング作業者とカート1とが紐づけられる。
【0053】
ピッキング作業者とカート1とが紐づけられると、当該ピッキング作業者の識別情報又は属性に応じて、当該カート1のピッキング計画が決定されてもよい。
ピッキング作業者およびカート1が紐づけられた後、カート1はピッキングエリアA10に移動する。
【0054】
ピッキングエリアA10は、ピッキング対象となる商品を収容する複数の棚Sが載置され、ピッキング作業者がピッキング作業を行うエリアである。複数の棚Sは、エリアの壁沿い又は内部に載置されており、複数の棚Sは、カート1が走行可能な通路を区画している。すなわち、複数の棚Sの間は、カート1が走行可能な通路Tとなっている。倉庫W内において、カート1が走行可能な領域と、走行が不可能な領域とを区画した地図情報を、走行マップともいう。
【0055】
カート1は、ピッキングシステムから受信したり、直接入力された所定の走行経路に係るデータに基づき、ピッキングエリアA10において走行と停止を繰り返し、ピッキング作業を補助する。具体的には、カート1は、ピッキング対象の商品が収容される棚Sまで自律走行を行い、棚Sの近傍で停止する。ピッキング作業者は、液晶表示器5aに表示されるピッキング作業指示を閲覧してピッキング対象の商品を特定し、指示個数をカート1上のコンテナへ投入する。ピッキングが完了すると、カート1は、次のピッキング対象商品が収容される棚Sまで自律走行を行う。
【0056】
このとき、ピッキング作業者は、カート1とともに併走してもよく、1人のピッキング作業者に対して複数のカート1が併走してもよい。カート1の台数は、ピッキングシステム100がピッキング計画に含まれる商品の容積を計算することで、算出される。この構成によれば、作業者1人に対し複数のカート1に対してピッキング作業ができるため、一度に大量の商品を運搬できる。
【0057】
また、ピッキング作業者は、棚S近傍でカート1を待機してもよい。この場合には、ピッキング作業者のカート1へのログイン処理は不要である。この構成によれば、ピッキング作業者はカート1と併走する必要がないため、疲労が低減される。また、ピッキング作業が高頻度で必要なエリアには多くのピッキング作業者を配置し、低頻度のエリアには配置するピッキング作業者を少なくすることで、少ない人数で効率よくピッキング作業を行うことができる。
なお、このように運用する場合には、サブディスプレイ51を有する上記カート1Aの使用が有用である。即ち、作業者が棚Sで待ち受けて、カート1がそこへ向かってくる場合、カート1が到着しないと、どのアイテムをピックアップするかわからないという問題があった。これに対して、カート1Aにより、進行方向に向けて設置されたサブディスプレイ51に棚番を表示させれば、カート1Aを待ち受けていた作業者は、サブディスプレイ51によりカート1Aの前方からピック商品を認識できる。
【0058】
ピッキング作業指示に含まれるピッキング作業が完了すると、カート1は、搬送エリアA4へ移動する。
【0059】
搬送エリアA4は、ピッキングが完了したコンテナを搬出するエリアである。搬送エリアA4は、搬送エリアA4外部へ伸び出るコンベアが配設されている。例えば、コンテナは、搬送エリアA4の搬送作業者によりカート1から降ろされ、コンベアを介して倉庫W外へ払い出される。
コンテナが降ろされたカート1は、オリコンエリアA2に移動する。次の作業がある場合には、カート1には空のコンテナの搭載指示が表示され、オリコンエリアA2において搭載を待機する。次の作業がない場合、又はカート1のバッテリー容量が所定値以下である場合には、カート1は充電エリアA1に移動する。所定値とは、例えば次の作業での使用が予測されるバッテリー容量である。
【0060】
なお、満載になったコンテナは、ピッキング作業の際にコンテナを搬送していたカート1により搬送エリアA4に運搬されてもよいし、ピッキングエリアA10において別のカート1に乗せ換えられ、このカート1がコンテナを搬送エリアA4に運搬してもよい。この構成によれば、満載になったコンテナは同じカート1に積載される別のコンテナが満載になるのを待つことなく搬送エリアA4に運搬されるので効率がよい。また、ピッキング作業の際にコンテナを搬送するカート1は、積載しているコンテナを別のカート1に乗せ換えた後オリコンエリアA2に移動すればよく、搬送エリアA4への移動が不要になる。この態様は、ピッキング作業者が棚S近傍でカート1を待機する際、特に有用である。
【0061】
保留エリアA5は、ピッキングエリアA10において計画を充足する商品がピッキングできなかった場合に、コンテナを保管するエリアである。保留エリアA5にコンテナが保管される状況として、例えば、ピッキング対象の商品が、棚Sへの補充の遅れ、又は欠品などの理由により棚Sに十分在庫されておらず、ピッキングできない場合等がある。カート1は、ピッキングが完了できなかったコンテナが少なくとも1個ある場合には、搬送エリアA4に移動する前に、ピッキングエリアA10から保留エリアA5に移動する。保留エリアA5に貯留されたコンテナは、棚Sに商品が補充されると、カート1に再度搭載され、ピッキング作業が行われる。
【0062】
●移動補助装置を不要とした自律走行カートの一例
上述したカート1では、自律走行不能に陥るなどしたとき、移動補助装置12によってカート1の駆動輪71を走行面から浮かせると共に、カート1を移動補助装置12ごと移動させられるようにした。一方、他の例では、カート1自体に、駆動輪71を走行面から浮かせあり、走行面に降ろしたりする機構を備えさせ、カート1を手動で移動可能となるようにすることもできる。
【0063】
図9は、そのような自律走行カートの一例に係るカート1Bを示している。
なお、上述した駆動輪71を走行面から浮かせる機構(後述する昇降機構160)の説明の便宜のため、図9はカート1Bの内部機構を示しているが、カート1Bはこれ以外に、上述したカート1が備えた作業台110、印字機構部41、タッチパネルディスプレイ5、スキャナ61などを適宜に備えている。
【0064】
カート1Bは、駆動輪71を走行面から浮かせたり、逆に走行面に下ろしたりするための昇降機構160を備えている。
昇降機構160は、操作レバー161、従動部162、突起部163、及び突出ローラ164から構成されている。
操作レバー161は、従動部162の長さ方向の一端側に設けられている。この操作レバー161は、従動部162の長さ方向に沿って外側へ引っ張ったり、内側に押し込んだりすることができ、従動部162はこれに応じて、その長さ方向に変位する。
【0065】
従動部162は、カート1Bの幅方向に長さを有する棒状の部材であり、その両端部の上面側には一対の突起部163が設けられている。
一対の突起部163はいずれも、上面側を上底とする台形状からなり、台形の脚に相当する部分は傾斜面を構成している。
【0066】
突出ローラ164は、駆動輪71が取り付けられている部材、あるいは当該部材に取り付けられた所定の部材に取り付けられた回転自由な部材である。この突出ローラ164を上方に持ち上げると、これに連動して駆動輪71が走行面から浮き上がるようになっている。
また、突出ローラ164は、従動部162の上方に突出して設けられており、従動部162がその長さ方向に変位すると、突起部163によって上方に持ち上げられる。
【0067】
本例において、図9(a)は、駆動輪71が走行面に当接している状態を示している。このとき、操作レバー161はカート1Bの内側に押し込まれており、突出ローラ164と突起部163は互いに離れている。
図9(b)に示すように、この状態から操作レバー161が外側に引っ張られると、従動部162がこれに連動して外側に移動する。このとき、突出ローラ164は突起部163に当接した後、突起部163の傾斜面にガイドされながら回転して突起部163の上方へ持ち上げられる。駆動輪71は、突出ローラ164が上方に持ち上げられるのに連動して走行面から離間する。
【0068】
操作レバー161が外側に完全に引っ張られた状態では、突出ローラ164は、突起部163の上面に支持された状態となっており、操作レバー161を押し込んで突出ローラ164を突起部163の上面から降ろさない限り、駆動輪71は走行面から浮いた状態にある。この状態においては、カート1Bの四つの補助輪72のみが走行面に当接しており、カート1bを容易に手動で移動させることができる。
【0069】
このように、作業者は適宜に操作レバー161を操作することにより、駆動輪71を走行面に当接させてカート1Bを自律走行させたり、駆動輪71を走行面から浮かせて手動で容易に移動させたりすることができる。
【0070】
●移動補助装置を不要とした自律走行カートの他の一例
上述したカート1Bでは、手動操作可能な昇降機構160を設け、これにより駆動輪71を昇降可能としたが、駆動輪71を昇降させる昇降機構を駆動電源等の駆動装置によって制御可能なものとしてもよい。即ち、他の例に係るカート(説明の便宜のため、「カート1C」と称する)は、駆動輪71を制御する制御部、当該制御部による制御に応じて駆動輪71を昇降させる昇降機構を備え、タッチパネルディスプレイ5や別途設けた操作ボタンから所定の操作が実行されると、制御部によって昇降機構が制御され、駆動輪71が昇降させられる。
なお、昇降機構の制御に関して、駆動輪71の駆動装置とは異なる予備、あるいは非常用の駆動装置を設けてもよい。これにより、駆動輪71を駆動させる駆動装置の故障やバッテリー切れなどにもかかわらず、昇降機構を制御することができる。
【0071】
このようなカート1Cにおいては、カート1Cが所定の状態になった場合に、制御部が昇降機構を制御して駆動輪71を昇降させるようになっていてもよい。
ここで、所定の状態とは例えば、故障による走行不能状態、バッテリー残量がなくなり駆動輪71を駆動させられない状態、カート1Cが倉庫内において認識する自己位置を喪失した状態など、作業者が手動でピッキングカートを押す必要がある状態である。
【0072】
また、カート1Cの作業状況や作業データに応じて、制御部が昇降機構を制御して駆動輪71を昇降させるようになっていてもよい。例えば、作業者がカート1Cによって作業するに際し、駆動輪71を駆動させる自律走行カートとしてカート1C使用するのか、フリーの補助輪72のみで移動する手動式カートとして扱うのかを判断して、駆動輪71を昇降させる。
【0073】
より具体的には、作業に際して、タッチパネルディスプレイ5には、自走式で作業を行うのか、手動で作業を行うかの案内が出力される。作業者は、作業データとカート1Cを紐づけしたときの作業の状況や作業データに応じて、いずれの態様で作業を行うかを決定する。
ここで、作業の状況や作業データとは、ピッキング商品の重さ、走行距離、作業の内容などである。
【0074】
ピッキング商品の重さの観点では、ピッキング作業を行う4つのコンテナの総重量が多くなることがわかっている場合、または、カート1Cに重量の重いコンテナを集めて組み合わせた場合には、カート1Cを自律走行カートとして使用すべく、昇降機構を制御して駆動輪71を走行面に降ろす。逆に、軽い商品のコンテナであることがわかっている場合、または、総重量が軽い商品を組み合わせた場合には、カート1Cを手動で使用すべく、昇降機構を制御して駆動輪71を走行面から浮かせる。
【0075】
走行距離の観点では、作業者がピッキング作業を行うのに倉庫内をあちこち歩き回らなければいけない状況を回避すべく、作業データから走行距離を割り出し、所定の走行距離以上の場合はカート1Cを自律走行カートとして使用し、距離が短い場合には手動式カートとして使用するものとして、それぞれの態様に応じて駆動輪71を昇降させる。
作業の内容の観点では、作業データからその日の処理数が多いとき(多くなりそうなとき)は自律走行カートとして運用するカート1Cの台数を多くする。また、作業データからその日の作業者の数を見て、作業者が少ないとき(少なくなりそうなとき)は自律走行カートとして運用するカート1Cの台数を多くする。
【0076】
以上により、1台のカート1Cを自走式または手動に切り替えてピッキング作業を行うような現場において、作業の状況や作業データで使い分けをすることができる。
【0077】
<付記>
自律走行カートは、
前記自律走行カートの底部に設けられ、(前記ピッキングカートが受信した走行経路に基づいて所定の位置まで自動的に走行する)駆動装置によって駆動する第1の車輪(駆動輪71)と、
前記自律走行カートの底部に設けられた回転自由な第2の車輪(補助輪72)と、
前記第1の車輪を上昇または下降させる昇降機構と、を備える、
ことを特徴とする。
【0078】
前記昇降機構を制御する制御部、をさらに備え、
前記制御部は、前記自律走行カートが所定の状態になった場合に、前記昇降機構により前記第1の車輪を上昇させる、
ものとしてもよい。
【0079】
自律走行カートは、
物品(商品)のピッキング作業の指示を表示して、操作を受け付ける第1の表示部(タッチパネルディスプレイ5)と、
物品のピッキング作業の指示を表示する第2の表示部(サブディスプレイ51)と、を備え、
前記第1の表示部は、前記自律走行カートの進行方向とは逆向きに表示面が配設され、
前記第2の表示部は、前記自律走行カートの進行方向に表示面が配設される、
ことを特徴とする。
【0080】
●実施形態総括
本発明は、カートを移動させるための移動補助装置に関する。
【0081】
物流倉庫では慢性的な人手不足の問題が生じており、自律走行カートの需要が高まっている。
しかし、自律走行カートにおいては、故障時やバッテリー残量無しなどで駆動輪が動かなくなったとき、手動で動かそうにも駆動部の抵抗(ギヤやモーターの抵抗)があるためフリーの車輪だけのときよりも重たく、移動が困難である。
そこで、特開平08-185225号公報に記載の無人搬送台車では、駆動輪を路面から浮かせ、フリーの車輪だけで走行させられるようにしている。
【0082】
しかしながら特開平08-185225号公報に記載の無人搬送台車のように、自律走行カートごとに駆動輪の昇降機構を設けるとコストがかかるし、機構が複雑化する。
【0083】
そこで本発明は、自律走行カートを手動で簡易に移動させることのできる移動補助装置を提供することを目的の一つとする。
【0084】
上記目的を達成するため、本発明に係るカートの移動補助装置は、駆動装置により回転駆動する駆動輪、回転自由な補助輪、及び、当該駆動輪と補助輪が取り付けられたフレームを備えたカートを移動させるための移動補助装置であって、前記カートを前記フレームの底面側から持ち上げ、前記駆動輪を走行面から浮かせる持上部と、前記移動補助装置を走行させるための車輪と、を有する。
【0085】
また、前記持上部によって持ち上げられた前記フレームを、前記駆動輪を走行面から浮かせた状態に支持する支持部、をさらに有するものとしてもよい。
【0086】
また、前記支持部は、前記フレームを支持する支持面と、当該支持面の幅方向の両側縁部から上方に延び出したフランジと、を備えるものとしてもよい。
【0087】
また、前記持上部と前記支持部が設けられた基体部と、前記車輪を備えると共に、前記基体部が直角に連結し、内側に前記カートを案内する一対の棒状の側端部と、をさらに有し、前記側端部は、前記基体部が連結する箇所を挟んで、前記カートが案内される側の一端部と、前記カートが案内されない側の他端部とで構成され、当該一端部が当該他端部よりも長く設けられているものとしてもよい。
【0088】
また、前記持上部は、前記基体部の略中央に設けられ、前記支持部は、前記持上部を挟んだ両脇に設けられているものとしてもよい。
【0089】
本発明に係る移動補助装置によれば、カートの後部を持ち上げることによって、カートの略中央にある駆動輪を走行面から浮かせ、進行方向の補助輪と移動補助装置の車輪によってカートを移動させることができる。
カートごとに駆動輪を昇降させる機構を設けるとコストがかかるため、どのような機構を備えたカートにも対応できる移動補助装置を1台または複数台、使用することでコストを抑えつつ、自由にカートを移動させられる。
【符号の説明】
【0090】
1 :カート
5 :タッチパネルディスプレイ
7 :ボタン操作部
10 :はかり部
51 :サブディスプレイ
60 :読取部
61 :スキャナ
71 :駆動輪
72 :補助輪
81 :非接触センサ
91 :接触センサ
101 :グリップ
102 :サインポール
103 :フレーム
110 :作業台
12 :移動補助装置
120 :本体
121 :側端部
122 :基体部
130 :持上部
131 :挿込部
132 :荷重付与部
140 :支持部
141 :立設部
142 :支持面
143 :フランジ
150 :車輪
160 :昇降機構
161 :操作レバー
162 :従動部
163 :突起部
164 :突出ローラ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9