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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126338
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】照明用レンズ、および、照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20220823BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20220823BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220823BHJP
   G02B 3/02 20060101ALI20220823BHJP
   G02B 3/04 20060101ALI20220823BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220823BHJP
   F21Y 105/16 20160101ALN20220823BHJP
【FI】
F21S2/00 630
F21V5/00 510
G02B3/00
G02B3/02
G02B3/04
F21Y115:10 500
F21Y105:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024360
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
(57)【要約】
【課題】グレアを抑えつつ良好な均斉度を得ること。
【解決手段】道路の路面を照明する照明器具に設けられ、前記照明器具が備える発光素子の光を制御し、前記道路の交通方向の延びた横長対称配光を形成する照明用レンズであって、前記発光素子の光が出射する凸状の出射面22と、前記発光素子を覆い前記出射面22の側に凹む入射面24と、を備え、前記出射面22は、前記交通方向における両方の肩部22Aに、内部に凸部を含むサグ部50が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面を照明する照明器具に設けられ、前記照明器具が備える発光素子の光を制御し、前記道路の交通方向の両方向に延びた横長対称配光を形成する照明用レンズであって、
凸状の出射面と、
前記発光素子を覆い前記出射面の側に凹む入射面と、
を備え、
前記出射面は、
前記交通方向における両方の肩部に、内部に凸部を含むサグ部が形成されている、
ことを特徴とする照明用レンズ。
【請求項2】
前記サグ部は、前記凸部よりもレンズ光学中心に近い方と遠い方のそれぞれに第1サグ部および第2サグ部を有し、第1サグ部の底面曲率が第2サグ部の底面曲率より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の照明用レンズ。
【請求項3】
前記道路の交通方向に沿った断面において、前記サグ部における外形の光源光軸に対する角度変化は連続的に変化している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の照明用レンズ。
【請求項4】
前記サグ部は、
光源光軸を含み前記道路の交通方向に沿った断面において、
前記発光素子の中心を基点として前記光源光軸からの傾斜角度が40度から75度の範囲内に設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明用レンズ。
【請求項5】
前記サグ部は、
レンズ光軸の方向から視たときに、レンズ光学中心を基点として20度の範囲内に形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の照明用レンズ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の照明用レンズを備えたことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用レンズ、および、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
道路などの路面を照明する照明器具において、設置間隔(スパン)を広げることで設置台数を減らすために、路面の交通方向における照射範囲を、より遠方まで広げた広スパン型の器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、道路照明において、照明器具が発する光を歩行者や運転者などが直接見ることでまぶしさを感じる「グレア」が従来から問題になっている。特に、設置間隔が長くなるほど、車両の運転手から照明器具を見た時の仰角が小さくなるため、広スパン照明器具では特にグレアが問題になる。
そして、グレアについては、照明器具の直下を0度、水平方向を90度と定義した正弦等光度曲線において、鉛直角が75度以上の範囲の光が問題となることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また鉛直角が75度以上の範囲の光を完全にカットしたカットオフ形照明器具と、まぶしさに考慮しないノンカットオフ形照明器具とを比較した実験の結果、80%以上の被験者がカットオフ形器具でまぶしさが低減されていると回答したとの事例もある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-187303号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】斎藤辰弥、芹田和尚“まぶしさの計算”、照明学会雑誌、一般社団法人照明学会、1964年、第48巻、第10号、p.498-504
【非特許文献2】斎藤辰弥“高速道路の照明”、電気学会雑誌、一般社団法人電気学会、1964年、第84巻、第905号、p.167-176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
道路照明において、重要な性能指標の1つに路面輝度の均斉度がある。
しかしながら、上記カットオフ形照明器具と、上記ノンカットオフ形照明器具とを比較した場合、均斉度はノンカットオフ形のほうが優れており、グレアを抑えつつ、規定の均斉度を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、グレアを抑えつつ良好な均斉度が得られる照明用レンズ、および、照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、道路の路面を照明する照明器具に設けられ、前記照明器具が備える発光素子の光を制御し、前記道路の交通方向の延びた横長対称配光を形成する照明用レンズであって、前記発光素子の光が出射する凸状の出射面と、前記発光素子を覆い前記出射面の側に凹む入射面と、を備え、前記出射面は、前記交通方向における両方の肩部に、内部に凸部を含むサグ部が形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記照明用レンズにおいて、前記サグ部は、前記凸部よりもレンズ光学中心に近い方と遠い方のそれぞれに第1サグ部および第2サグ部を有し、第1サグ部の底面曲率が第2サグ部の底面曲率より大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記照明用レンズにおいて、前記道路の交通方向に沿った断面において、前記サグ部における外形の光源光軸に対する角度変化は連続的に変化していることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記照明用レンズにおいて、前記サグ部は、光源光軸を含み前記道路の交通方向に沿った断面において、前記発光素子の中心を基点として前記光源光軸からの傾斜角度が40度から75度の範囲の間に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記照明用レンズにおいて、前記サグ部は、レンズ光軸の方向から視たときに、レンズ光学中心を基点として20度の範囲内に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記照明用レンズを備えたことを特徴とする照明器具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グレアを抑えつつ良好な均斉度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るトンネル照明器具の全体構成を示す斜視図である。
図2】トンネル照明器具の設置状態を示す図である。
図3】光源ユニットの斜視図である。
図4】光源ユニットが備えるレンズ部を拡大して示す平面図である。
図5図4のV-V線断面を示す断面図である。
図6図4のVI-VI線断面を示す断面図である。
図7図4のVII-VII線断面からレンズ部を視た断面視図である。
図8】トンネル照明器具、比較例および比較例の正弦等光度曲線を示す図である。
図9】鉛直角と光度の関係について、本実施形態に係るトンネル照明器具と従来製品との比較を示す概念図である。
図10図4に示すレンズ板が異なる光源ユニットの斜視図である。
図11図10におけるレンズ部を拡大して示す平面図である。
図12図11のXII-XII線断面を示す断面図である。
図13図11のXIII-XIII線断面を示す断面図である。
図14】レンズ板の裏面の側を視た斜視図である。
図15図14のレンズ部を拡大して示す図である。
図16】迷光の発生メカニズムの説明図である。
図17図10に示すレンズ板を用いて配光制御したトンネル照明器具の正弦等光度曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るトンネル照明器具1の全体構成を示す斜視図である。図2はトンネル照明器具1の設置状態を示す断面図である。
トンネル照明器具1は、図1に示すように、その正面が出射面1Aとして構成されており、図2に示すように、当該出射面1Aを路面に対面させた姿勢でトンネルAの壁面A1に設置され、出射面1Aから照明光を出射することで路面を照明する。
【0017】
本実施形態のトンネル照明器具1は、図1に示すように、トンネルA(道路)の交通方向Dに長手方向を有する略直方形状の筐体2と、当該筐体2の出射面1Aの側に形成された出射開口(図示せず)を塞ぐ略矩形板状の透光性材から成るカバー3と、当該カバー3を開閉可能に支持する開閉機構4と、閉状態のカバー3を筐体2に係止する留め具5と、を備えている。
【0018】
またトンネル照明器具1は、筐体2の両端のそれぞれに取付板6を備え、図2に示すように、これらの取付板6をボルトで壁面A1に固定することで所定の取付角度α(例えば20度から50度までの範囲の角度)でトンネルAに設置される。なお、取付角度αは、トンネル照明器具1の光軸(以下、器具光軸FAという)と、トンネル照明器具1の光学中心(以下、器具光学中心OAという)を起点とした鉛直直下方向GAと、が成す角度である。
【0019】
かかる筐体2の内部には、照明光を放射する光源ユニット10が配置されており、また、光源ユニット10の点灯制御を行うための装置や、電源関係の部品といった、一般的なトンネル照明器具が備える部材も筐体2に収められている。なお、トンネル照明器具1が備える光源ユニット10の数は任意である。
【0020】
図3は光源ユニット10の構成を示す斜視図である。また図4は光源ユニット10が備える1つのレンズ部20を拡大して示す平面図であり、図5図4のV-V線断面を示す断面図、図6図4のVI-VI線断面を示す断面図である。
光源ユニット10は、図3に示すように、光源基板12と、当該光源基板12に重ねて設けられたレンズ板14と、を備えている。
光源基板12は、図5および図6に示すように、発光素子の一例であるSMD(Surface Mount Device)型の複数のLED30と、当該LED30が実装された回路基板32とを備えている。
【0021】
レンズ板14は、図3に示すように、例えば光学的に透明な樹脂材料の樹脂成型によって形成された部材であり、平板状のベース板40の表面40Aに、光制御部である複数のレンズ部20が設けられた部材である。各レンズ部20は、図5および図6に示すように、LED30を個々に覆う位置に設けられ、当該LED30の放射光を制御する照明用レンズである。これらレンズ部20の構成は同一であり、それぞれが筐体2を中心にトンネルA(道路)の交通方向Dの両方向に対称に延びた横長対称配光を形成する。
具体的には、レンズ部20は、図4に示すように、平面視において交通方向Dに延びた繭形に近い形状の凸レンズであり、また、交通方向Dにおける中心線である第1軸線C1を対称軸とした線対称形状を成し、この第1軸線C1上に設定されている光学中心(以下、レンズ光学中心OBという)にLED30が配置されることで交通方向Dの両方向に対称に当該LED30の放射光を出射する。
【0022】
加えて、本実施形態のレンズ部20は、少なくとも20メートル以上の設置間隔でトンネル照明器具1を設置した場合に、グレアが抑えられ、なおかつ、路面輝度の総合均斉度が0.4以上となるように配光制御している。
【0023】
かかるレンズ部20は、図4図5および図6に示すように、平面視長円形状である凸状の出射面22と、当該出射面22の側に凹む入射面24と、を備えている。当該入射面24内には、LED30の少なくとも発光部が収められ、LED30の殆どの放射光が入射面24に入射される。
【0024】
図5に示すように、交通方向Dに直交する断面において、入射面24は、LED30の光軸(以下、光源光軸FBという)に対し、鉛直直下方向GAの側が高くなるように傾斜しており、当該入射面24に入射したLED30の放射光が当該鉛直直下方向GAの反対側に屈折され、より多くの光がトンネル照明器具1から遠い側の路面や壁面A1に向けられている。これにより、トンネル照明器具1から遠い側の路面や壁面A1において一定以上の路面の平均輝度や均斉度、壁面輝度が得られる十分な光度が振り分けられ、遠い側の路面や壁面A1の視認性が十分に確保される。
【0025】
図6に示すように、交通方向Dの断面において、出射面22は、両端部に、交通方向Dの遠方の側に屈折させて光を出射する曲面形状の肩部22Aを有し、これにより、光が交通方向Dの両方向の遠方に向けて肩部22Aから出射され、トンネル照明器具1の設置間隔を広スパン化できる横長配光が形成される。なお、肩部22Aの曲率等の曲面形状は、トンネル照明器具1の設置間隔に応じて適宜に設計される。
【0026】
また、同図6に示すように、交通方向Dにおける出射面122の略中央であって、光源光軸FB(レンズ光学中心OB)と交差する中央部22Bには、入射面24の側に凹む凹部60が設けられている。これにより、LED30の光源光軸FB近傍の光が凹部60によって交通方向Dの遠方側に屈折して出射されるため、当該遠方で十分な光量を確保することができる。
【0027】
図7図4のVII-VII線断面からレンズ部20を視た断面視図であって、サグ部50の構成を示す図である。
図4および図7に示すように、レンズ部20の出射面22には、両端の肩部22Aのそれぞれに、当該肩部22Aから出射される光に作用するサグ部50が形成されている。かかるサグ部50は、図4に示すように、肩部22Aにおいて、レンズ光学中心OBを通って交通方向Dに平行な第2軸線(第1軸線C1に直交する第2軸線)C2上をレンズ部20の端部20Tまで延びる凹み部である。
【0028】
サグ部50の第1軸線C1に平行な断面形状は、例えば放物曲線に近いU字状を成している。
一方、第2軸線C2の方向において、サグ部50の表面は凹凸形状を含んでいる。具体的には、図4および図7に示すように、サグ部50は、その凹み内に、レンズ光学中心OBからレンズ部20の端部20Tに向かって順に連続した、第1凸部52、第1サグ部53、サグ間凸部54、第2サグ部55、および第2凸部56を含んでいる。第1凸部52、サグ間凸部54および第2凸部56はいずれも曲面状に膨出した部位であり、第1サグ部53および第2サグ部55は曲面状に凹んだ部位である。そして、第1サグ部53、サグ間凸部54および第2サグ部55の連続によって2段サグ形状がサグ部50の凹み部内に形成されている。
また、図7に示すように、サグ部50は、レンズ光学中心OBに近い方の第1サグ部53の底面53Aの曲率(底面曲率)が当該レンズ光学中心OBから遠い方の第2サグ部55の底面55Aの曲率(底面曲率)より大きくなっている。
一方、サグ部50の凹み部の縁に相当する外形部50Aについては、図7に示すように、道路の交通方向Dに沿った断面において、LED30の光源光軸FBに対する角度変化が連続的に(すなわち、外形部50が凹凸を含まない曲線状に)変化している。
【0029】
そして、かかるサグ部50が肩部22Aに形成されることで、交通方向Dの遠方におけるグレアが抑えられ、かつ、0.4以上の総合均斉度が得られている。
なお、サグ部50は、光源光軸FBを含み、道路の交通方向Dに沿った断面において、LED30の発光中心30Aを基点とした光源光軸FBからの傾斜角度γ(図7)が40度から75度の範囲内に設けられていることが好ましく、本実施形態では、γが約42度から約73度の範囲の間に亘ってサグ部50が設けられている。
また、図4に示すように、出射面22には、上記サグ部50の他に、複数の凹部25が形成されているが、これの凹部25は、配光分布形状を最適化するためのものであり、これらの凹部25が無くとも、グレアの抑制効果、及び、0.4以上の総合均斉度は得られている。
【0030】
図8は、所定の取付角度αで設置されたトンネル照明器具1の正弦等光度曲線を示す図である。なお、正弦等光度曲線の水平角φが0°、180°の方向は、図5で示す方向Gに相当し、水平角φが90°の方向は、方向Gに直交し交通方向Dに平行な方向である。
同図に示すように、上記レンズ部20の配光制御により、水平角φが90度であって鉛直角θが60度以上の範囲RAの光度が低下していることが分かる。この範囲RAは、グレアに影響を与える鉛直角θの範囲である75度以上を含み、この範囲RAの光度が低下することで、水平角φが90度の方向、すなわち交通方向Dの遠方から視たグレアが低減されることになる。なお、本実施形態のトンネル照明器具1では、相対閾値増加(TI)が15%以下となっており、視機能低下グレアが十分に抑えられている。
【0031】
また上記レンズ部20の配光制御により、鉛直角θが70度以下の範囲であって、水平角φ=90度の両側(より正確には水平角φ=80度、110度)のそれぞれの範囲RBには輝度のピークが生じ、これにより、路面輝度の均斉度が向上し、0.4以上の総合均斉度が得られている。
【0032】
ここで、サグ部50によって減光される鉛直角θの範囲は、当該サグ部50の第2軸線C2方向の溝幅WA(図4)によって変わり、溝幅WAが広くなるほど、減光される鉛直角θの角度範囲が低角度側に拡がる。そして、図4に示すように、レンズ部20の出射面22をレンズ光軸FCの方向から視て、レンズ光学中心OBを基点とした角度βの範囲を規定した場合、この角度βが20度以下となる範囲よりも溝幅WAが広くなると、グレアを感じにくい鉛直角θの角度範囲RθB(図9)も減光されてしまうこととなり、路面の照明に悪影響が生じる。
したがって、サグ部50は、角度βが20度以下となる範囲内に形成されることが好ましい。
一方、溝幅WAが狭いほどグレアの低減効果を発揮する方向の範囲を絞ることができるものの、レンズ部20の形成が困難になり、製造難易度が高くなってしまう。
そこで、本実施形態のサグ部50は、角度βが17度となる範囲に対応する溝幅WAで形成されており、これにより、通常と同じ方法および品質で生産できるようになっている。
【0033】
図9は、鉛直角と光度の関係について、本実施形態のトンネル照明器具1と従来製品との比較を示す概念図である。なお、従来製品は、レンズ部20(レンズ板14)に代えて従前の光学制御系を有し、本実施形態と同等の設置間隔で設置可能な広スパン型のトンネル照明器具である。
同図に示すように、本実施形態のトンネル照明器具1は、レンズ部20の肩部22Aにサグ部50が設けられることで、グレアが問題となる鉛直角θの角度範囲RθAで光度が従来製品と同程度に抑えられる一方で、グレアを感じにくい角度範囲RθBの光度が大きくなり、路面輝度の均斉度を向上させることができる。
【0034】
このように、本実施形態のレンズ部20は、交通方向Dにおける両方の肩部22Aに、内部にサグ間凸部54を含むサグ部50が形成されている。
これにより、グレアが問題となる角度範囲RθAの光度が抑えられる一方で、グレアを感じにくい角度範囲RθBの光度が大きくなるため、グレアを抑えつつ、路面輝度の均斉度を向上させることができる。
【0035】
また本実施形態のレンズ部20において、サグ部50は、レンズ光学中心OBを基点として20度の角度範囲内に形成されているため、グレアを感じにくい角度範囲RθBでの減光を防止できる。
【0036】
ところで、本実施形態のレンズ板14のように、光透過性のベース板の表面にレンズ部を形成したレンズ板によれば、LED30の放射光の殆どを透過させて照明に利用するように光学設計することで、路面輝度の均斉度や照明率が効率良く高められるようになる。
【0037】
一方、LED30は完全な点光源ではなく、発光部が有限の大きさを有することにより、レンズ板において、光学設計通りの射出光とは異なる迷光が発生することがある。
発明者は、トンネルAの壁面A1や路面に、運転者に悪影響を与える虞がある輝度ムラを生じさせるような迷光も発生し得ることを見出し、鋭意検討した結果、かかる迷光の一因が、レンズ板のベース板にあることを突き止め、このベース板に起因して生じる迷光を抑えることができるレンズ板を発明した。
以下、かかるレンズ板について説明する。
【0038】
図10は、レンズ板114を備えた光源ユニット110を示す斜視図である。
光源ユニット110は、図4に示した光源ユニット10と比較すると、レンズ板114の構成が異なる点を除き、同一の構成を有する。
レンズ板114は、光学的に透明な樹脂材料の樹脂成型によって形成された部材であり、平板状のベース板140の表面140Aに、光制御部である複数のレンズ部120が設けられた部材である。各レンズ部120は、図4に示したレンズ板14のレンズ部20と同様に、LED30を個々に覆う位置に設けられ、当該LED30の放射光を制御する照明用レンズであり、それぞれが筐体2を中心にトンネルA(道路)の交通方向Dの両方向に対称に延びた横長対称配光を形成する。
【0039】
図11図10におけるレンズ部120を拡大して示す平面図である。図12図11のXII-XII線断面を示す断面図である。図13図11のXIII-XIII線断面を示す断面図である。
レンズ部120は、図11図12および図13に示すように、平面視長円形状であり断面視凸状の出射面122と、当該出射面122の側に凹む入射面124と、を備えている。入射面124内には、レンズ光学中心OBに光源光軸FBを合わせて、当該LED30の少なくとも発光部が収められることで、LED30の殆どの放射光が入射面124に入射する構成となっている。さらに、図13に示すように、交通方向Dの断面において、出射面122は、両端部に、交通方向Dの遠方の側に屈折させて光を出射する曲面形状の肩部122Aを有している。これにより、光が交通方向Dの両方向の遠方に向けて肩部122Aから出射され、トンネル照明器具1の設置間隔を広スパン化できる横長配光が形成される。
【0040】
また、交通方向Dにおける出射面122の略中央であって、光源光軸FB(レンズ光学中心OB)と交差する中央部122Bには、入射面124の側に凹む凹部160が設けられている。これにより、LED30の光源光軸FB近傍の光が凹部160によって交通方向Dの遠方側に屈折して出射され、当該遠方で十分な光量が確保される。
【0041】
かかるレンズ部120は、図4に示したレンズ部20と異なり、グレア抑制効果を有する上記サグ部50を有していないものの、レンズ部20と同様に0.4以上の総合均斉度が得られるように配光制御している。加えて、かかるレンズ部120は、17メートル程度の設置間隔でトンネル照明器具1を設置した場合に、車線軸均斉度が0.6以上となるように配光制御している。
【0042】
図14はレンズ板114の裏面の側を視た斜視図であり、図15図14のレンズ部120を拡大して示す図である。
これらの図に示すように、レンズ板114において、ベース板140の裏面140Bには、迷光を抑える拡散部170が各レンズ部120の周囲に設けられている。
【0043】
詳述すると、発明者は、鋭意検討により、迷光は、レンズ部120の出射面122で出射せずに、LED30の側に反射した光がベース板140の裏面140Bで全反射した非制御の光に原因があるとの知見を得た。
具体的には、図16に示すように、LED30の光がレンズ部120の出射面122の内側でレンズ部120内に向けて反射され(図中、光S1)、その反射された光S1がベース板140の裏面140Bでレンズ部120に向けて全反射され(図中、光S2)、その反射された光S2がレンズ部120の出射面122からからイレギュラーな方向に出射され(図中、光S3)、この光S3が迷光となる。
【0044】
そこで、図15に示すように、裏面140Bにおいて、ベース板140の裏面に戻ってくる光S1が入射する領域TA(レンズ部120に対応する領域)に、上記拡散部170が設けられている。レンズ部120が対称配光を形成する場合、かかる領域TAは、レンズ部120を挟んだ交通方向Dにおける両側において入射面124の縁部124Aと隣接した領域となり、また各領域TAは第1軸線C1について対称となる。
【0045】
かかる拡散部170は、裏面140Bの領域TA内に多数のディンプル172を形成し、かつ、各ディンプル172の間の隙間に平面状の平面部174を設けることで構成されており、各ディンプル172、及び平面部174が、そこに戻ってきた光S1の反射方向を変えたり、光源基板12の側へ透過したりすることで、光S1が拡散され、これにより迷光が抑えられることとなる。
【0046】
かかる、ディンプル172の凹み形状は適宜であるが、当該凹み形状は半球状または円錐状であることが好ましい。また、ディンプル172の最大直径と深さの比率は1:1程度であることが好ましい。さらに、拡散部170において、個々のディンプル172の大きさは小さく数が多いことが好ましいが、製造難易度が高くならないようするには最大直径が1mm以上であることが好ましい。
【0047】
図17は、レンズ板114を用いて配光制御したトンネル照明器具1の正弦等光度曲線を示す図である。同図には、レンズ板114が拡散部170を備える場合と、拡散部170を備えない場合のそれぞれの正弦等光度曲線を示している。
同図に示すように、レンズ板114に拡散部170が無い場合、範囲RCにおいて、迷光による光度ムラが生じている。正弦等光度曲線はトンネル照明器具1の光度分布を示すものであるが、壁面A1や路面の反射率が全面にわたってほぼ一定である場合、範囲RCに光度ムラが存在すると、当該光度ムラによって、範囲RCに対応する箇所の壁面A1や路面に輝度ムラを生じることになる。特に、路面がアスファルトの舗装面である場合、コンクリートの路面よりも鏡面反射率が高く、より強く輝度ムラが生じてしまう。
一方、レンズ板114に拡散部170が有る場合には、当該範囲RCにおける光度ムラが解消していることが分かり、これにより、コンクリートの路面のみならず、アスファルト舗装の路面であっても、輝度ムラが防止されることが分かる。
【0048】
このように、レンズ板114によれば、ベース板140の裏面140Bには、レンズ部120に対応する領域TAに、光を拡散する拡散部170が設けられているため、ベース板140での光S1の全反射による迷光を抑えることができ、トンネルAの壁面A1や路面の輝度ムラを抑えることができる。
【0049】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0050】
本発明は、トンネルAに設置されるトンネル照明器具に限らず、道路の路面を照明する任意の照明器具に適用できる。
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0051】
1 トンネル照明器具(照明器具)
10、110 光源ユニット
12 光源基板
14、114 レンズ板
20、120 レンズ部(照明用レンズ)
22、122 出射面
22A、122A 肩部
24、124 入射面
30 LED(発光素子)
40、140 ベース板
50 サグ部
54 サグ間凸部(凸部)
140B 裏面
170 拡散部
172 ディンプル
174 平面部
D 交通方向
FB 光源光軸
FC レンズ光軸
OB レンズ光学中心
図1
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図5
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図17